(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
LDMOSトランジスタは、IGBTと共に、バイポーラ型のパワートランジスタに比べて大電流、高耐圧、スイッチング特性が優れ使いやすいことからDC−DCコンバータなどのスイッチング電源や照明機器のインバータ回路、モーターのインバータ回路等に広く使用されている。なお、LDMOSトランジスタとは、Lateral Double Diffused Metal Oxide Semiconductorの略称で横型二重拡散ゲートMOSトランジスタを意味する。また、ESDとはElectro−Static Dischargeの略称で静電気放電を意味する。
【0003】
係るLDMOSトランジスタの断面構造は、例えば
図12(B)に簡略化して示したとおりである。同図は、NチャネルMOSトランジスタの構成で表示している。即ち、N型半導体層51、N−型ドリフト層52、N+型ドレイン層57、P型ベース層53、N+型ソース層56、P+型コンタクト層58、ゲート絶縁膜54及びゲート電極55から構成される。
図12(A)は
図12(B)からP+型コンタクト層58を除いた構成である。LDMOSトランジスタの動作を考えるとP+型コンタクト層58の存在しない
図12(A)の構成で十分とも思える。
【0004】
しかし、
図12(A)に示すP+型コンタクト層58が存在しないLDMOSトランジスタにおいて、N+型ドレイン層57に正の高電圧+Vdを印加し、N+型ソース層56を接地し、ゲート電極55に正電圧を印加してLDMOSトランジスタをオンさせた場合以下の問題が生じる。即ち、LDMOSトランジスタをオンして、N+型ソース層56からN+型ドレイン層57に向け電子電流を流すと、以下に示す理由により、N+型ソース層56をエミッタ、P型ベース層53をベース、N+型ドレイン層57等をコレクタとする寄生NPNトランジスタがオンして、LDMOSトランジスタのゲート電極55で制御できない不要な電流が増加するという問題である。
【0005】
LDMOSトランジスタがオンするとN+型ソース層56から電子がチャネル層を通りN−型ドリフト層52内に流れ込み、N−型ドリフト層52内の高電界により加速されN+型ドレイン層57に流れ込む。この場合、N−型ドリフト層52で加速された電子は高エネルギーを有するホットエレクトロンになりN−型ドリフト層52内等で格子等に作用して多数の電子、正孔対を発生させる。
図12(A)の丸印で囲ったe
―はホットエレクトロンであり、e
―、e
+はホットエレクトロンの作用により発生した電子−正孔対である。
【0006】
このようにして発生した電子はN+型ドレイン層57に流れ込むが、正孔は接地電位をもつN+ソース層56に向かって流れる。N+型ソース層56に達した正孔はそのポテンシャルバリアに阻まれ、N+ソース層56の周辺のP型ベース層53内に分布することになり該P型ベース層53の電位は、接地電位であるN+型ソース層56の電位より高くなる。
【0007】
その結果、前述のN+型ソース層56をエミッタ、P型ベース層53をベース、N+型ドレイン層57をコレクタとするNPN寄生トランジスタは、ベース層となるP型ベース層53の電位がエミッタ層となるN+型ソース層56の電位より高くなるのでオンし、N+型ソース層56からP型ベース層53に向け電子電流が流れる。P型ベース層53に流れ込んだ電子電流は正電圧+Vdを有するN+型ドレイン層57に流れ込む。結果的にLDMOSトランジスタのゲート電極55で制御できない不要な電流が増大するという問題が発生する。
【0008】
それに対して、
図12(B)に示すP+型コンタクト層58がN+型ソース層56と並列に且つP型ベース層53内まで延在して形成されている場合、上記NPN寄生トランジスタがオンするという問題は生じにくい。ホットエレクトロンによりN−型ドリフト層52内で電子−正孔対が発生し、電子がN+型ドレイン層57に流れ込むのは
図12(A)の場合と変わらないが正孔については事情が異なる。
【0009】
接地電位のN+型ソース層56に向かう正孔の殆どは、
図12(A)の場合と異なりN+型ソース層56に並列に且つP型ベース層53内まで延在して形成された正孔のポテンシャルバリアとならないP+型コンタクト層58が存在するので、そこに向かって流れ込む。従って、N+型ソース層56の電位とN+型ソース層56の近傍のP型ベース層53の電位の電位差は小さくなり、上述のようなNPN寄生バイポーラがオンする確率は低くなる。
【0010】
しかし、通常電源電圧より極端に大きいESDによる大きな正のサージ電圧がN+型ドレイン層57に印加されたとき、前記寄生NPNトランジスタがオン状態にならなければ
ソース−ドレイン間絶縁破壊が起こり、LDMOSトランジスタが破壊してしまう。係るESDによる大きな正のサージ電圧がN+型ドレイン層57に印加された場合の問題点と対策が以下の特許文献1に開示されている。
【0011】
即ち、ESDによる大きな正のサージ電圧がN+型ドレイン層57に印加された場合、強電界のN+型ドレイン層57近傍でアバランシェ降伏が起こり大量の電子−正孔対が発生する。発生した電子はN+型ドレイン層57に流れ込み、正孔はP型ベース層53内に流れ込む。
【0012】
P型ベース層53内に流れ込んだ正孔によりPベース層53の電位がN+型ソース層56の電位より高くなる。この結果、N+型ソース層56をエミッタ層、P型ベース層53をベース層、N+型ドレイン層57等をコレクタとする寄生NPNトランジスタがオン状態になる。
【0013】
この寄生NPNトランジスタがオン状態になることにより、N+型ソース層56とN+型ドレイン層57の間の電圧が低い電圧にクランプされ、ESDによる素子の破壊を阻止している。しかしN+型ドレイン層57の近傍で局所的な電流集中が起こり、この領域での熱的な暴走が生じる。
【0014】
このため十分なESD耐量が得られず、極端な場合、N+型ドレイン層57近傍が破壊されるという問題がある。これに対してN+型ドレイン層57に隣接して不図示のP+型アノード層を形成し、ESD耐量を向上させたLDMOSトランジスタを実現するという内容である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は
図3と同一構成でX3が1.5μm前後になるLDMOSトランジスタである。そのことを
図1〜
図11に基づいて以下に説明する。本発明は、中心部に複数の等間隔に形成された開口部を有するラダー状の形状からなるN+型ソース層3の面積拡大に関する。特にP+型コンタクト層4で埋設された該開口部の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xと、該距離Xの増加と共に増大し最後に飽和するHBM耐量、即ちESD耐量の関係に関する。従って、図面もドレイン領域の記載は省略し、ソース領域も1本のN+型ソース層3を中心とする簡略化した図面で説明する。
【0024】
図1〜
図4は1本のN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離XをX1からX4まで拡大した場合の図面である。
図1はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離がX1、具体的には0.6μmの場合を示している。N+型ソース層3の開口部7の幅は1.2μmで
図1〜
図4で共通である。
【0025】
図1(A)はその平面図を示し、
図1(B)は
図1(A)のA−A断面図でありN+型ソース層3の開口部7を含んでいる。開口部7には層間絶縁膜6に形成されたコンタクト溝8からボロン等がイオン注入されP+型コンタクト層4が形成される。また、
図1(C)は
図1(A)のB−B断面図でありN+型ソース層3の一部がコンタクト溝8から露出する。露出したN+ソース層の下方には開口部7に形成されたP+型コンタクト層4に連続するP型層4aが形成される。
【0026】
図2はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離XをX2、具体的には1.6μmにした場合を示している。コンタクト溝8の幅を含め他の構成は
図1と同様である。従って、
図1の場合に比してN+型ソース層3の全体の幅が2μm広くなっており電流が流れやすくなっている。
【0027】
図3はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離X3が
図2と同様、即ち1.6μmであるが、
図3(B)に示すように、層間絶縁膜6に形成されたコンタクト溝8の幅がN+型ソース層3の開口部7の幅より広くなる。また、該コンタクト溝8の両端の外側の層間絶縁膜6の下のそれぞれ0.6μm部分のN+型ソース層3のみが層間絶縁膜6で被覆される点で、その部分は
図1に似た構成となる。
【0028】
しかし、この場合でもN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離X3は
図2の場合のX2と同様で1.6μmである。
図2の場合、N+型ソース層3の開口部7とコンタクトホール8の開口幅が同一であるため、フォトリソ工程におけるマスクずれによりN+型ソース層3の開口部7内がP+型コンタクト層4で完全に埋設されない場合がある。そのため、正孔吸収能力にバラツキが生じる恐れがある。
【0029】
それに対して
図3では、P+型コンタクト層4形成用マスクでもあるコンタクト溝8の幅がN+型ソース層3の開口部7の幅より大きい。そのため、係るコンタクト溝8からボロン等をイオン注入することによりN+型ソース層3の開口部7内は完全にP+型コンタクト層4で埋設される。この場合、コンタクト溝8内に露出したN+型ソース層3の下方にもボロン等がイオン注入されP+型コンタクト層4と連続するP型層4aが形成される。
【0030】
図4はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離XがX4、具体的には2.6μmまで更に拡張された場合を示している。層間絶縁膜6にN+型ソース層3の開口部7より大きなコンタクト溝8を形成し、両端0.6μmを除いてN+型ソース層3を露出するのは
図3の場合と同様である。
【0031】
次に、
図1〜
図4に示すように、N+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xを増加させた場合、LDMOSトランジスタのESD耐量がどのように改善されるか、その様子をHBM耐量+で以下に比較する。ESDは静電荷を帯びた人または物体等が半導体デバイスに接触した場合に放電される高エネルギーパルスと考えられる。
【0032】
係るESD耐量を比較する場合、HBM(Human body model)耐量とMM(Machine model)耐量で比較する方法があるが、HBM耐量で比較するのが一般的である。人間は内部容量C=100pF、皮膚抵抗R=1.5kΩを有する帯電体であるとして、
図5に示すテスト回路でHBM耐量を測定する。即ち、同図でC=100pFのコンデンサCを電圧V
ESDでチャージしておきスイッチを右側に倒しR=1.5kΩの抵抗を通して被テストデバイスにパルス状のV
ESDを印加し放電する。
【0033】
係るテスト回路で測定した
図1〜
図4の各サンプルLDMOSトランジスタのHBM+耐量を
図6、
図7に示す。HBM+耐量とは、具体的にはLDMOSトランジスタの不図示のN+型ドレイン層に大きな正のESDパルスが入力した場合のLDMOSトランジスタの破壊耐量である。
【0034】
図6はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xを変化させた
図1、
図3及び
図4の場合に対応するHBM+耐量の分布を示している。
図6(A)はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xが0.6μmである
図1の場合のHBM+の分布を示す。平均値が1330Vと低い。
【0035】
それに対して
図6(B)はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xが1.6μmである
図3の場合のHBM+耐量の分布を示している。その平均値は2143Vまで改善されている。
図6(B)は
図3に対応しているが、
図3と
図2の場合のHBM+耐量の分布を比較したのが
図7である。
【0036】
図7(B)が
図6(B)と同一サンプルであり
図3の場合に対応する。また、
図7(A)が
図2の場合に対応する。両者に60V程度の差が見られるがバラツキの範囲で、ほぼ同等のHBM+耐量と判断する。
【0037】
最後に
図6(C)はN+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xが2.6μmの
図4の場合に対応するHBM+耐量の分布である。
図6(B)に比して30V程度低くなっているがバラツキの範囲と考える。
【0038】
上記
図6のHBM+耐量の結果から、N+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xを所定の距離より伸ばしてもHBM+耐量がそれに従って増加し続けるものではなく所定のレベルに飽和することが判明した。
【0039】
N+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xを横軸に、HBM+耐量を縦軸に表示した関係を、
図6、
図7に基づいて、
図8に整理したグラフで示す。同図より、N+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xを1.5μm前後に設計することにより最大のHBM+耐量2100V前後となる本実施形態のLDMOSトランジスタが実現できることが分かる。
【0040】
図8の距離Xが1.6μmの位置での×印は、
図3(A)のN+型ソース層3の複数の開口部7を連続させ、
図9(A)に示すようにストライプ状の1本の開口溝9にした場合のHBM+耐量の平均値を示している。HBM+耐量の分布は
図10(B)に示される。
図3に対応するHBM+耐量の分布である
図10(C)に比し平均値は2000V近傍でほぼ良好だが、HBM+耐量がより低い状態に分布し不利なことが分かる。
【0041】
図11に、N+型ソース層3の開口部7を大きくした点のみが
図3の場合と異なるLDMOSトランジスタの構成を示す。P+型コンタクト層4が形成された開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離が
図1と同様の0.6μmまで短くなる。その結果、
図10(A)に示すように、HBM+耐量は同図(C)に示す
図3のHBM+耐量の平均値より600V弱程度低いものとなる。
【0042】
N+型ソース層3の開口部7の端部からN+型ソース層3の端部までの距離Xが大きくなるとHBM+耐量が大きくなる理由について以下に説明する。
図1(B)に比し、
図3(B)等に示すように距離Xが大きくなることは、
図1(B)に比し
図3(B)等のソース面積が拡大することであり、N+型ソース層3に一様に電流が流れやすくなる。また、距離Xが大きくなると、HBM+の異常に高いサージ電圧によりアバランシェ降伏時に発生しN+型ソース層3に集結する大量の正孔を、瞬時にP+型コンタクト層4で吸収しきれない現象が生じうる。
【0043】
または、大量の正孔がP+型コンタクト層4に流れ込むためその通路となるN+型ソース層3の下部のP型ベース層2に電位勾配が生じる。即ち、N+型ソース層3とP型ベース層2とで形成するPN接合が順方向バイアスされる。結果的に、N+型ソース層3をエミッタ、P型ベース層2をベース、N+型ドレイン層をコレクタとする寄生NPNトランジスタがオンする。
【0044】
一旦、N+型ソース層3の一部で寄生NPNトランジスタがオンすると拡張され広い電流経路を有するN+型ソース層3の全面に寄生NPNトランジスタのオン状態が拡がり、LDMOSトランジスタがHBM+によるサージ電圧から保護される。従って、高いHBM+耐量が確保できる。
【0045】
一方で
図1(B)に示すように、距離Xが0.6μmと短い場合は上記アバランシェ降伏時に生じた正孔はその大半が瞬時にP+型コンタクト層4に吸収される等して上記寄生NPNトランジスタがオンし難い。例え、N+型ソース層3の一部で寄生NPNトランジスタがオンしたとしてもN+型ソース層3の面積が小さいためN+型ソース層3の全体で寄生NPNトランジスタがオンすることはない。従って、HBM+耐量も低いものにならざるを得ない。
【0046】
寄生NPNトランジスタのオン状態は一定の幅を有するパルス電圧を印加しその応答を観察するTLP(Transmission Line Pulse)法により確認できる。寄生NPNトランジスタがオンするとその場所が発光することからエミッション顕微鏡で確認できる。
【0047】
図1(B)のように距離Xが0.6μmと小さい場合はN+ソース層3の局部的な場所でスポット状の発光が何点か確認される。N+型ソース層3の面積が小さいことからその広がりも見られない。それに対して、
図3(B)のように距離Xが1.6μと大きい場合は、N+型ソース層3の全面に渡って細かい発光点が一様に分布しているのが見られる。
【0048】
即ち、距離Xが大きくなると、始めは局部的なスポット状の発光ポイントが短時間内にN+型ソース層3の全体に拡がり、N+型ソース層3は細かい発光点の集合体になる。この発光状況からN+型ソース層3の広い範囲で寄生NPNトランジスタがオンしているのが確認できる。
【0049】
係るTLP法とエミッション顕微鏡を使用し、
図3(B)のN+型ソース層3の開口部7にP+型コンタクト層4を形成した場合と、
図9のN+型ソース層3の開口溝9にP+型コンタクト層4を形成した場合の寄生NPNトランジスタのオン状態を示す発光状態の差も確認できる。
図3(B)の場合は開口部7の両側のN+型ソース層3が発光するが、
図9の場合は開口溝9の片側のみが発光しているのが確認された。
【0050】
図9の場合は開口溝9によりN+型ソース層3が分断されており、その片側で寄生NPNトランジスタのオン状態になったとしても反対側に伝播しにくいからである。また、
図9では、開口部7が開口溝9になることによりP+型コンタクト層4の面積が増大し正孔がより吸収されやすくなり寄生NPNトランジスタがオンしにくくなっているからである。
【0051】
更に、N+型ソース層3の開口部7同士の間隔を不規則にしたときの発光状態についてTLP法とエミッション顕微鏡を使用して調査した所、開口部7同士の間隔が広い部分で発光状態が強く、狭い部分では発光状態が弱くなることが観察された。この結果は、HBM+耐量のばらつきに結びつく。従って、開口部7同士の間隔は均一にすべきであることが判明した。
【0052】
更に言えば、開口部7同士の均一な間隔は、当該間隔部分での発光状態が不均一な状態から均一な状態に変わる間隔に設定することがHBM+耐量のばらつき改善等の観点から有効である。
【0053】
以上の説明で明らかなように、その中心部に開口部7を有するN+型ソース層3と該開口部7内にP+型コンタクト層4が埋設され形成されたLDMOSトランジスタではN+型ソース層3の面積を拡大することにより広い電流経路を確保することができ、N+型ソース層3の広い領域で寄生NPNトランジスタをオンさせることができる。
【0054】
特にN+型ソース層3の開口部7の端部、即ちP+型コンタクト層4の端部からN+型ソース層3の端部までの距離を所定の距離以上にすることにより寄生NPNトランジスタをN+型ソース層3の広い領域でオンさせることができHBM+耐量を最大にできる。所定の距離は、
図8で示すごとく、本実施形態では1.5μm近傍である。一般的にはTEGによりHBM耐量が飽和し始めるXを確認してLDMOSトランジスタに採用することになる。
【0055】
また、本実施形態では、P+型コンタクト層4の形成される深さは、N+型ソース層3より深くなっている。そのため、N+ソース層の開口部のない
図3(C)の位置においても、P型層4aが形成される。P型層4aは、N+型ソース層3の開口部を埋設する
図3(B)のP+型コンタクト層4とつながっており、
図3(C)の位置のP型ベース層2の電位と、
図3(B)の位置のP型ベース層2の電位との差を小さくする。
【0056】
これにより、
図3(B)の位置の寄生NPNトランジスタと
図3(C)の位置の寄生NPNトランジスタの動作しやすさの違いが小さくなるので、寄生NPNトランジスタのオン状態が拡がりやすくなり、LDMOSトランジスタがESDによるサージから保護される。
【0057】
なお、
図9のような開口溝9を形成することにより、
図3(B)、
図3(C)の位置にできる寄生NPNトランジスタの構造の違いをなくすことができるが、この場合はN+型ソース層3が左右に分断されるため、N+型ソース層3の両側の寄生NPNトランジスタがオンしにくいという問題が生じる。
【0058】
本実施形態の半導体装置であるLDMOSトランジスタの製造方法について
図3等に基づいて簡単に説明する。先ず不図示のP型半導体基板を準備し、該P型半導体基板に不図示のN+型埋め込み層を形成する。次に、所定のエピタキシャル法によりN+型埋め込み層が形成されたP型半導体基板上にN型エピタキシャル層1を形成する。
【0059】
次に、所定の方法によりN型エピタキシャル層1の表面からP型半導体基板内まで延在する不図示のP+型分離層を形成すると共に必要領域に所定の方法により不図示の素子分離絶縁膜を形成する。
【0060】
次に素子分離絶縁膜で分離された1の領域のN型エピタキシャル層1に所定のイオン注入法等によりリン(P)等をイオン注入等して不図示のN型ドリフト層を形成する。
【0061】
次に、前記素子分離絶縁膜を除いたN型エピタキシャル層1上に不図示のゲート絶縁膜を形成する。その後、前記ゲート絶縁膜上から素子分離絶縁膜上に至るゲート電極5をポリシリコン膜等で所定の方法により形成する。
【0062】
また、N型ドリフト層が形成されたN型エピタキシャル層1と素子分離絶縁膜を介して隣接するN型エピタキシャル層1に、ゲート電極5及び不図示のレジスト膜をマスクにしたイオン注入法等によりボロン(B)等をイオン注入してP型ベース層2を形成する。
【0063】
次に、ゲート電極5及びレジスト膜をマスクにしてその中心部に複数の開口部7を有するN+型ソース層3を所定のイオン注入法により砒素(As)等をイオン注入して形成する。
【0064】
この場合、開口部7の端部とN+型ソース層3の端部の距離をLDMOSトランジスタのHBM+耐量が最大になる距離に決定したのが本発明の特徴である。ここで最大のHBM+耐量とは開口部7の端部とN+型ソース層3の端部の距離が増加するに伴い増大するHBM+耐量の飽和するHBM+耐量である。
【0065】
この際、同時にN型ドリフト層に不図示のN+型ドレイン層を形成する。次に、N+型ソース層3等が形成されたP型半導体基板上を所定のCVD法等により層間絶縁膜6で被覆する。次に所定のフォトエッチング工程を経ることにより層間絶縁膜6にコンタクト溝8等を形成する。
【0066】
次にN+型ドレイン層上に形成されたコンタクト溝8等を被覆し、N+型ソース3にP+型コンタクト層4をボロン(B)等のイオン注入法で形成するためのレジストマスクCPを形成する。その後、所定のイオン注入法によりP+型コンタクト層4を形成する。この際、イオン注入のエネルギーを任意に設定することにより、P+型コンタクト層4の形成される深さがN+型ソース層3より深くなるようにする。
【0067】
次に、コンタクト溝8等が形成されたP型半導体基板上に所定のスパッタ法等でアルミニューム等からなる金属膜を堆積し、所定のフォトエッチング工程を経ることにより不図示のソース電極等を形成する。必要に応じ多層配線等を形成し、最後にパッシベーション膜を所定のCVD法等で形成等することによりLDMOSトランジスタが完成する。