【実施例1】
【0017】
まず、実施例1の摩擦攪拌接合装置の全体構成を説明する。
なお、この実施例1の摩擦攪拌接合装置は、回転ツールをこれらの軸心が水平面上にあるようにした、いわゆる横型のもので、
図1に示すように、一対の被接合部材として円筒状タンク(本発明の円筒体に相当)1における一端を閉塞したタンク本体1aの開口部に蓋体1bを摩擦攪拌接合して閉塞する場合を例にとって説明する。
【0018】
この実施例1の摩擦攪拌接合装置は、
図1、2に示すように、タンク本体1aの開口端部付近の外周面に当接し、タンク本体1aをこの軸心が水平面上で回転可能に支持する3つのワーク受けローラ2と、タンク本体1aの芯出しをした状態でタンク本体1aの閉塞側端部を回転自在に支持するセンター出し治具3と、タンク本体1aの開口端部に予め仮止めされた蓋体1bをチャック装置4で挟持して円筒状タンク1を軸心Qまわりに回転させる電動モータ(本発明の回転手段に相当)5と、回転ツール6と、接合くずDの巻き付き防止手段7と、を備えている。なお、ワーク受けローラ2は、3個に限らず1個でも2個以上でもよい。
【0019】
回転ツール6は、これより小径で先端部に一体に設けられたピン6aを、タンク本体1aと蓋体1bの被接合箇所Pに対し、その側面から水平面上で押圧しながら、回転ツール6を介してピン6aを電動モータ6aで高速回転させながら円筒状タンク1を回転(回転ツール6との相対移動)させることにより、発生した摩擦熱で円筒状タンク1の被接合箇所Pを塑性流動させて該被接合箇所Pを接合する。
すなわち、この実施例1では、回転ツール6は、一定の高さ位置に固定された状態でその軸心方向(水平方向)に進退可能かつ回転可能な状態に設けられている。なお、回転ツール6の軸心方向の進退は、図示しない電気モータにて行う。
【0020】
巻き付き防止手段7は、タンク本体1aと蓋体1bの摩擦攪拌接合時に被接合箇所から発生する接合くずD(
図3、4を参照)の回転ツール6への巻き付きを防止する役目をなす。
すなわち、この巻き付き防止手段7は、この実施例1では、板状でほぼ垂直な巻き付き防止面7cを有し、円筒状タンク1の被接合箇所Pと回転ツール6との間に、被接合箇所から所定の隙間Wを有して配置されている。
そして、この巻き付き防止手段7の巻き付き防止面7cには、回転ツール6がスムーズに貫通可能でかつ回転に支障のない程度でできるだけ小さな径の貫通穴7aが設けられることにより、
図3、4に示すように、回転ツール6がこの貫通穴7aを貫通してピン6aを被接合箇所Pに押圧しながら回転可能となっている。
また、この巻き付き防止手段7は、その下端の水平片7bを基台8にボルトなどで固定されることにより、一定の高さ、かつ被接合箇所Pから一定距離離れた位置に固定されている。
【0021】
次に、この実施例1の摩擦攪拌接合装置の作用を説明する。
この実施例1の摩擦攪拌接合装置では、上述のように構成されるため、
図1、2に示すように、円筒状タンク1は、タンク本体1aの開口端部に蓋体1bを予め仮止めした状態で、タンク本体1aの閉塞側端部をセンター出し治具3で回転自在に支持する一方、蓋体1bをチャック装置4で挟持するとともに、タンク本体1aの開口端部付近を3つのワーク受けローラ2で回転自在に支持した状態でセットされる。
【0022】
次に、
図3、4に示すように、回転ツール6を軸方向に進め、巻き付き防止手段7に設けられた貫通穴7aを貫通して先端のピン6aをタンク本体1aと蓋体1bの被接合箇所Pに対し、その側面から押圧する。
そして、この状態で電動モータ6aを駆動して回転ツール6およびピン6aを高速回転させながら、電動モータ5を駆動して円筒状タンク1を回転(回転ツール6との相対移動)させていくことにより、発生した摩擦熱で円筒状タンク1の被接合箇Pを塑性流動させ、これにより被接合箇所Pを摩擦攪拌接合する。
【0023】
また、摩擦攪拌接合中に被接合箇所から発生した接合くずDが側方に伸びていくが、この場合、被接合箇所Pの側方に配置された回転ツール6が回転しているのでこれに巻き付こうとする。しかしながら、接合くずDが巻き付き防止手段7の巻き付き防止面7cの貫通穴7aの開口縁部等に当接することで回転ツール6から順次折り取られて下方へ落下して行く。これにより、摩擦攪拌接合中の接合くずDが回転ツール6に伸びて行って巻き付くのが抑止される。
【0024】
以上のように、実施例1の摩擦攪拌接合装置にあっては、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施例の摩擦攪拌接合装置にあっては、回転ツール6が貫通可能に円筒状タンク1の側方に配置され、摩擦攪拌接合時に円筒状タンク1の被接合箇所Pから発生する接合くずDの回転ツール6への巻き付きを防止する巻き付き防止手段7を設けたので、摩擦攪拌接合中の接合くずDが回転ツール6に巻き付くといった不具合を解決することができる。
【0025】
(2) また、本実施例の摩擦攪拌接合装置にあっては、巻き付き防止手段7を巻き付き防止面7cを有する構成としたので、安価かつ容易に巻き付き防止手段7を得ることができる。
【0026】
(3) また、本実施例の摩擦攪拌接合装置にあっては、円筒状タンク1を水平状態で回転可能に配置し、回転ツール6を巻き付き防止手段7を貫通した一定の高さで被接合箇所Pから一定距離離れた位置に固定可能とすることで、被接合部材が円筒体である場合に、この円周方向に沿って用意かつ安価に摩擦攪拌接合することが可能になる。
【0027】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0028】
たとえば、巻き付き防止手段7を回転ツール6の進退および上下左右方向の移動に同期させて、回転ツール6の一体的に移動可能とすることで、被接合部材が円等体ではなくこの被接合箇所Pが非円形の場合であっても、上記実施例同様に摩擦各版接合を行うことができる。この場合、巻き付き防止手段7は、回転ツール6を進退させる部材に固定するのが望ましい。