特許第5713691号(P5713691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713691
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/02 20060101AFI20150416BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F25B39/02 H
   F25B1/00 396B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-5754(P2011-5754)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-145302(P2012-145302A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−100962(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/104506(WO,A1)
【文献】 特開昭63−220096(JP,A)
【文献】 特開平11−264629(JP,A)
【文献】 特開2010−078289(JP,A)
【文献】 特開2006−003001(JP,A)
【文献】 特開2009−121759(JP,A)
【文献】 特開昭63−220094(JP,A)
【文献】 特開2003−130567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 29/00,39/02
F28F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、フィンとこのフィンを貫通し冷媒が流れる伝熱管とを有するフィンチューブ熱交換器、及び減圧装置を備え、前記フィンチューブ熱交換器は少なくとも蒸発器として使用可能に構成されている冷凍サイクル装置において、
冷媒として非共沸混合冷媒を使用し、
前記フィンチューブ熱交換器は、前記伝熱管が前記フィンを貫通しながらUターンを繰り返して複数往復するように構成されると共に、
蒸発器として使用される場合に冷媒流入側となるフィンにおける伝熱管同士の間隔を、冷媒流出側となるフィンにおける伝熱管同士の間隔よりも大きくなるように構成し、前記フィンチューブ熱交換器への空気の流れ方向上流側には前記冷媒流出側となるフィンが、空気の流れ方向下流側には前記冷媒流入側となるフィンが配置されている
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記フィンチューブ熱交換器は、前記冷媒流入側となるフィンと前記冷媒流出側となるフィンとが空気の流れ方向に二列に配置されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記フィンチューブ熱交換器は、前記フィンが一列に構成され、前記フィンのうち、冷媒流入側となる上方のフィン部と、冷媒流出側となる下方のフィン部を貫通するように前記伝熱管が設けられていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の冷凍サイクル装置において、前記フィンチューブ熱交換器は複数のスリットが形成されたスリットフィンで構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置
【請求項5】
請求項4に記載の冷凍サイクル装置において、前記フィンチューブ熱交換器が蒸発器として使用される場合に、前記冷媒流入側となるフィンは、一部にスリットを設けない部分を有するスリットフィンで構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項4に記載の冷凍サイクル装置において、前記フィンチューブ熱交換器が蒸発器として使用される場合に、前記冷媒流入側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量を、前記冷媒流出側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量より小さく構成したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項7】
請求項1〜の何れかに記載の冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル装置は、室外機と室内機を有する空気調和機であって、前記室外機の熱交換器がフィンチューブ熱交換器で構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項8】
請求項1〜何れかに記載の冷凍サイクル装置において、前記非共沸混合冷媒は、R134a、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、R152a、R290、R600a、R744、R32のうちの冷媒を少なくとも2種類以上混合した混合冷媒であることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機や冷凍機などの冷凍サイクル装置に関し、特に非共沸混合冷媒を使用する冷凍サイクル装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー枯渇や地球温暖化が問題視され、空気調和機や冷凍機で使用される冷媒に対しても、COP(成績係数)が高く環境負荷がより小さいものが求められている。特に、地球温暖化問題に対する注目度は高く、冷媒が漏れても直接的影響の少ない、即ちGWP(地球温暖化係数)が低く、しかも間接的影響も少ない、即ち消費エネルギーも小さい冷媒が求められている。一方、冷媒は、人体に近いところで使用されることもあり、無毒性、低燃焼性等の安全面における配慮も重要となっている。
【0003】
以上のことを考慮し、空気調和機などの冷凍サイクル装置に使用される冷媒の開発や選定が行われており、冷凍サイクル装置における体積能力の確保やCOP値、安全性等が重要な選定項目となる。しかし、単独の冷媒では、必要な性能、低環境負荷、安全性が得られない場合、複数の冷媒を混合して、目的の特性を得るようにしたものもある。例えば、COPが高く、直接的な環境負荷も小さいが、燃焼性のある冷媒と、COPは低いが消化性のある冷媒を混合することで、要求性能を確保し、燃焼性も低くした混合冷媒を得ることが可能となる。
【0004】
しかし、このような混合冷媒では、飽和域において温度勾配を有することになり、蒸発過程で、蒸発器の入口温度が極端に低下し、逆に出口温度は高くなるという現象が生じる。空気を熱源とするヒートポンプ式の暖房機(空気調和機など)では、暖房時における室外機の熱交換器(蒸発器)での冷媒入口温度が低くなるため、空気中の水分が熱交換器に付着して凍結する着霜現象が起きやすくなる。このため、着霜による空気流路の閉塞が発生し、冷媒と空気との熱交換が十分できなくなり、空気調和機の性能が低下する。このため、暖房能力が低下して快適性を損ねる。
【0005】
そこで、特許文献1のものでは、フィンチューブ蒸発器において、冷媒温度が低くなる冷媒流入側のフィンは、着霜し難く空気流路を確保し易いコルゲートフィン等のスリットなしフィンを使用し、冷媒温度が高くなる冷媒流出側のフィンは、熱伝達率の高いスリットフィンを用いるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−100962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものでは、蒸発器となる熱交換器への着霜を防止するため、冷媒温度が低くなる冷媒流入側のフィンをコルゲート等のスリットなしフィンにし、フィンで凝縮した水滴が、連続した表面を伝わってスムーズに滴下するようにして、フィン表面における着霜を防止するようにしている。しかし、スリットのないフィンでは熱交換性能が低いため、熱交換器全体での性能低下は避けられないという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、蒸発器において飽和域温度勾配が生じて冷媒入口温度が低下しても、着霜によるフィン間空気流路の閉塞を起こり難くし、それによって性能低下を抑制することのできる冷凍サイクル装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴は、圧縮機、フィンとこのフィンを貫通し冷媒が流れる伝熱管とを有するフィンチューブ熱交換器、及び減圧装置を備え、前記フィンチューブ熱交換器は少なくとも蒸発器として使用可能に構成されている冷凍サイクル装置において、冷媒として非共沸混合冷媒を使用し、前記フィンチューブ熱交換器は、前記伝熱管が前記フィンを貫通しながらUターンを繰り返して複数往復するように構成されると共に、蒸発器として使用される場合に冷媒流入側となるフィンにおける伝熱管同士の間隔を、冷媒流出側となるフィンにおける伝熱管同士の間隔よりも大きくなるように構成したことにある。
【0010】
前記フィンチューブ熱交換器は、前記冷媒流入側となるフィンと前記冷媒流出側となるフィンとが空気の流れ方向に二列に配置され、空気の流れ方向上流側には前記冷媒流出側となるフィンが、空気の流れ方向下流側には前記冷媒流入側となるフィンが配置されるようにすると良い。
【0011】
また、前記フィンチューブ熱交換器は、前記フィンが一列に構成され、前記フィンのうち、冷媒流入側となる上方のフィン部と、冷媒流出側となる下方のフィン部を貫通するように前記伝熱管が設けられるようにしても良い。
【0012】
なお、前記フィンチューブ熱交換器は複数のスリットが形成されたスリットフィンで構成されていることが好ましい。ここで、前記フィンチューブ熱交換器が蒸発器として使用される場合に、前記冷媒流入側となるフィンは、一部にスリットを設けない部分を有するスリットフィンで構成すると良い。或いは、前記冷媒流入側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量を、前記冷媒流出側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量より小さく構成するようにしても良い。
【0013】
本発明の第2の特徴は、圧縮機、フィンとこのフィンを貫通し冷媒が流れる伝熱管とを有するフィンチューブ熱交換器、及び減圧装置を備え、前記フィンチューブ熱交換器は少なくとも蒸発器として使用可能に構成されている冷凍サイクル装置において、冷媒として非共沸混合冷媒を使用し、前記フィンチューブ熱交換器は、前記伝熱管が前記フィンを貫通しながらUターンを繰り返して複数往復するように構成されると共に、複数のスリットが形成されたスリットフィンで構成されており、蒸発器として使用される場合に冷媒流入側となるフィンは、一部にスリットを設けない部分を有するスリットフィンで構成されていることにある。
【0014】
ここで、一部にスリットを設けない部分を有する前記スリットフィンは、前記スリットを設けない部分が、伝熱管を挿入するためにスリットフィンに設けられた穴の間の中央部付近に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の第3の特徴は、圧縮機、フィンとこのフィンを貫通し冷媒が流れる伝熱管とを有するフィンチューブ熱交換器、及び減圧装置を備え、前記フィンチューブ熱交換器は少なくとも蒸発器として使用可能に構成されている冷凍サイクル装置において、冷媒として非共沸混合冷媒を使用し、前記フィンチューブ熱交換器は、前記伝熱管が前記フィンを貫通しながらUターンを繰り返して複数往復するように構成されると共に、複数のスリットが形成されたスリットフィンで構成されており、蒸発器として使用される場合に冷媒流入側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量を、冷媒流出側となるフィンに形成された前記スリットの切り起し量より小さく構成したことにある。
【0016】
ここで、前記冷媒流出側となるフィンに切り起されて形成されたスリットは前後2枚のフィン間に等間隔に配置されるように構成すると良い。
【0017】
なお、上記において、冷凍サイクル装置は、室外機と室内機を有する空気調和機であって、前記室外機の熱交換器がフィンチューブ熱交換器で構成されているものに好適である。また、前記非共沸混合冷媒としては、R134a、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、R152a、R290、R600a、R744、R32のうちの冷媒を少なくとも2種類以上混合した混合冷媒などを使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸発器において飽和域温度勾配が生じて冷媒入口温度が低下しても、着霜によるフィン間空気流路の閉塞を起こり難くし、それによって性能低下を抑制することのできる冷凍サイクル装置を得ることができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の冷凍サイクル装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図。
図2図1に示すフィンチューブ熱交換器の構成を示す要部の斜視図。
図3】本発明の実施例2を説明する図で、(a)は冷媒流出側のフィンの構成を示す要部正面図、(b)は冷媒流入側のフィンの構成を示す要部正面図。
図4】本発明の実施例3を説明する図で、(a)はフィンの要部正面図、(b)及び(c)は(a)図のフィンを矢印A方向から見た図で、(b)は冷媒流出側のフィンにおけるフィンの構成を示す図、(b)は冷媒流入側のフィンの構成を示す図。
図5】本発明の実施例4を説明するフィンチューブ熱交換器を示す斜視図で、図2に相当する図。
図6】冷凍サイクル装置としての一般的な空気調和機を示す冷凍サイクル構成図。
図7】非共沸混合冷媒の一例におけるp−h線図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を説明する前に、まず冷凍サイクル装置として一般的な空気調和機の構成を図6により説明する。図において、1は室外機、2は前記室外機1と液接続配管310及びガス接続配管320で接続された室内機である。室外機1には、圧縮機100、四方弁120、フィンチューブ熱交換器130、膨張弁140が順次冷媒配管で接続されて設けられている。また、前記フィンチューブ熱交換器130に室外空気を供給するための室外ファン150も設けられている。前記室内機2には、室内熱交換器210と、この室内熱交換器210に室内空気を供給するための室内ファン220が設けられている。
【0021】
このような空気調和機において、暖房時には、図中に破線で示す矢印方向に冷媒が流れる。即ち、圧縮機100から吐出された冷媒は四方弁120を通り、室外機1側からガス接続配管320を経て、室内機2側の室内熱交換器210に入り、室内ファン220により送り込まれる室内空気を加熱すると共に、冷媒自身は冷却凝縮される。凝縮された冷媒は室内機2側から液接続配管310を通って、再び室外機1側に導かれ、膨張弁140で圧力と温度を下げられ、フィンチューブ熱交換器130に入る。このフィンチューブ熱交換器130では、室外ファン150により供給された室外空気により、前記低温、低圧の冷媒は加熱されて蒸発し、四方弁120を通り、圧縮機100に再び吸入されて圧縮される。
なお、冷房時には上記と逆の動作となり、図中に実線で示す矢印方向に冷媒が流れる。
【0022】
ここで、上記冷媒として、例えばプロパンとCO2の混合冷媒を考える。プロパンはCOPが高く、GWPも低い冷媒であるが燃焼性が高いため、不燃のCO2を混合することにより燃焼性を下げることが可能となる。プロパンとCO2の混合割合は、質量分率で50%:50%とする。
【0023】
図7は、上記プロパンとCO2の混合冷媒を用いた場合の暖房時のp−h線図(モリエル線図)である。図7のp−h線図上に示したA〜Dは、図6の冷凍サイクル構成図に示したA〜Dの位置に対応している。熱源の空気温度を15℃と想定すれば、蒸発器の一番高い図中A点は10℃程度となる。ここで問題となるのが、D点、即ち蒸発器となるフィンチューブ熱交換器130における冷媒の入口側温度である。熱源空気温度が15℃程度でありながら、D点は−10℃程度となり、空気中の水分がフィンチューブ熱交換器130に凍結付着する着霜現象が起こる。この着霜は時間と共に進行して増大し、フィンチューブ熱交換器の1枚1枚のフィン間に形成されている空気流路は、前記霜で塞がれたり、流路面積が減少するため、冷媒と室外空気との熱交換量が減少し、熱交換性能を著しく低下させてしまう。
以下、この課題を解決するための本発明の具体的実施例を図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0024】
図1及び図2は本発明の冷凍サイクル装置の実施例1を説明する図で、図1は冷凍サイクル装置としての空気調和機の冷凍サイクル構成図、図2図1に示すフィンチューブ熱交換器130の構成を示す要部の斜視図である。この実施例では、冷媒として、プロパンとCO2の非共沸混合冷媒を用いているものとして説明する。なお、図1において図6と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【0025】
本実施例においては、室外機1に設けられ暖房時に蒸発器となる前記フィンチューブ熱交換器(室外熱交換器)130は、フィンとこのフィンを貫通し冷媒が流れる伝熱管とを有するものであって、前記フィンは冷媒の流通方向に分割されており、暖房時に上流側(冷媒流入側)となるフィン130aと暖房時に下流側(冷媒流出側)となるフィン130bとに分かれている。また、フィンチューブ熱交換器を構成している前記のフィン130a,130bにはそれぞれ多数のスリットが形成されたスリットフィンを使用している。
【0026】
図2図1に示す室外熱交換器130を構成するフィンの詳細構造を示す図である。図2において、3は室外熱交換器130の冷媒流入側となるフィン130aと冷媒流出側となるフィン130bを貫通する伝熱管(冷媒配管)である。この実施例では、冷媒流入側の前記フィン130aと冷媒流出側の前記フィン130bとは、室外空気の流れ方向に二列に配置され、室外空気の流れ方向上流側には冷媒流出側の前記フィン130bが、室外空気の流れ方向下流側には冷媒流入側の前記フィン130aが配置されている。
【0027】
また、前記伝熱管3は、フィンチューブ熱交換器130の上部に設けられた伝熱管3aと、その下方に設けられた伝熱管3bの2パスで構成されている。なお、前記伝熱管3は1パス或いは3パス以上に構成しても良い。ここで、パスとは冷媒が流れる流路で、例えば2パスとは、伝熱管3が熱交換器上流側で2つに分岐されて、熱交換器内を平行に流れる流路が2つになっているものをいう。
【0028】
各伝熱管3a,3bは、まず冷媒流入側となるフィン130aの上部側に接続され、空気流路を形成するように一定の間隔で重ねて配置された多数のフィンを水平方向に一端側(手前側)から他端側に貫通した後下方側にUターンし、再び手前側に延びて1往復し、再び下方側にUターンして他端側に延びて、以下同様の往復を繰り返す。これを数往復繰り返した後、伝熱管3aは、次に冷媒流出側となるフィン130b側に延びて、今度は上方側にUターンを繰り返して同様に数往復するように構成されている。この結果、冷媒は、冷媒流入側となるフィン130aの上部側に流入した後、このフィン130aと交差するように配設された伝熱管3a内を下方に流れ、その後冷媒流出側となるフィン130b側に流れて、このフィン130bを交差するように配設された伝熱管3a内を上方に流れ、フィン130bの上部側から流出するように流れる。
【0029】
この実施例では、フィン130a側を貫通する伝熱管3aは2往復に構成され、フィン130b側を貫通する伝熱管3aは3往復に構成されている。この結果、水平方向に延びる部分の伝熱管同士の間隔は、フィン130a側の伝熱管同士の間隔L1がフィン130b側の伝熱管同士の間隔L2よりも大きくすることができる。
【0030】
非共沸混合冷媒を使用すると、室外熱交換器130における冷媒流入側の温度は冷媒流出側よりも低くなるため、冷媒流入側の伝熱管3aやその伝熱管付近のフィン130aに霜が着きやすい。即ち、伝熱管周りの温度が一番低いため、伝熱管を起点として霜が成長する傾向にある。本実施例ではこの部分の伝熱管の間隔L1を大きくしているので、伝熱管の周囲には着霜しても、霜の着きにくい領域が増え、霜による空気流路の閉塞が起きにくくなる。従って、フィン間の空気流路を十分に確保可能となる。従って、冷媒流入側における冷媒と室外空気との熱交換量を確保できるから熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0031】
フィンチューブ熱交換器130における冷媒流出側の温度は冷媒流入側よりも高くなるため、冷媒流出側では伝熱管3aやフィン130bには霜が着きにくい。そこで、本実施例ではこの部分の伝熱管の間隔L2をフィン130a側よりも小さくして、より熱交換性能が向上するようにしている。
【0032】
なお、伝熱管3aの下方側に設けられた伝熱管3bについても、伝熱管3aと同様の構成になっているので、その説明は省略する。伝熱管を3パス以上設けている場合(伝熱管3bの下方に更に伝熱管を設けているもの)でも各伝熱管の構成は同様にすることが好ましい。
【0033】
また、本実施例に使用される非共沸混合冷媒としては、R134a(沸点−26℃)、HFO−1234yf(沸点−29℃)、HFO−1234ze(E)(沸点−18℃)、R152a(沸点−24℃)、R290(プロパン,沸点−42℃)、R600a(イソブタン,沸点−11℃)、R744(CO2,沸点−78℃)、R32(沸点−52℃)のうちの2種類以上の冷媒を混合した混合冷媒であることが好ましい。例えば、代表的な非共沸混合冷媒としては、R407C,HFO−1234yfとR32との混合冷媒、HFO−1234ze(E)とR32との混合冷媒、R290(50%)とR744(50%)との混合冷媒などがある。
上記実施例1において、その他の構成については図6で説明したものと同じであるので、その説明を省略する。
【0034】
本実施例によれば、暖房時に蒸発器となる室外熱交換器をフィンチューブ熱交換器で構成すると共に、非共沸混合冷媒を使用することで飽和域温度勾配が生じ、冷媒温度が低くなってしまう冷媒流入側のフィン130aにおける伝熱管同士の間隔を、冷媒温度が高くなる冷媒流出側フィン130bにおける伝熱管同士の間隔よりも大きく構成しているので、冷媒流入側フィンでの着霜による空気流路の閉塞を抑制することができる。この結果、非共沸混合冷媒を用い、室外空気を熱源として暖房する冷凍サイクル装置において、空気流路が閉塞されることによる性能低下が起きにくくなり、従来のものより高い省エネルギー化を実現でき、快適性も向上することができる効果が得られる。
【実施例2】
【0035】
図3は本発明の冷凍サイクル装置の実施例2に用いるフィンの構成を示す図である。この実施例においては、図3に示すフィンチューブ熱交換器130におけるフィンの構成以外の部分については、図1図2に示した冷凍サイクル装置(空気調和機)と同様であるので、フィン以外の部分の説明は省略する。
【0036】
本実施例では、図1に示すフィンチューブ熱交換器130に用いるフィン130aに相当するフィン(冷媒流入側のフィン)が、図3の(b)図に示すフィン132aであり、図1のフィン130bに相当するフィン(冷媒流出側のフィン)が図3の(a)図に示すフィン132bである。
【0037】
図3の(a)図に示す冷媒流出側の前記フィン132bは、前記実施例1に示したフィン130a,130bと同様のスリットフィンであり、フィンの表面に空気の流れと交差するように多数のスリット4が切り起されて形成されている。なお、5は伝熱管が挿入される穴である。
【0038】
(b)図に示す冷媒流入側の前記フィン132aも、多数のスリット4が切り起されて形成されたスリットフィンであるが、このフィン132aは、伝熱管を挿入する穴5の間の中央部付近に、スリットのない部分6が空気の流通方向に設けられており、この部分には広い空気流路が確保されるようにしている。(a)図に示すフィン132bでは、ある1枚のフィンのスリット4に生成された霜は、隣接する他の1枚のフィンのスリットに生成された霜と接触しやすいため、フィン間に形成されている空気流路が霜で閉塞されやすい。これに対して、(b)図のフィン132aのようにスリットのない部分6を設けた構成とすることにより、スリットのない部分6には広い空気通路となる空間が形成されているため、この部分では霜が生成したり、霜が生長しにくくなる。従って、霜による閉塞を防止或いは抑制して空気流路を確保することができるから熱交換性能の低下を抑制できる。
【0039】
なお、冷媒流出側のフィン132bにおいては冷媒温度が冷媒流入側よりも高くなるため、冷媒流出側では伝熱管やフィン132bには霜が着きにくい。従って、フィン132bについてはスリットのない部分を設けず、スリット部分の面積を大きくして、より熱交換性能が向上するようにしている。
【0040】
このように構成することでも、実施例1と同様の効果を得ることができる。
更に、上記実施例1と組合せて、冷媒流入側のフィンは、伝熱管同士の間隔を大きく構成すると共に、この冷媒流入側のフィンには、図3(b)図に示したようにスリットがない部分6を設ける構成にすることも有効であり、霜による空気流路の閉塞をより確実に防止することができる。
【実施例3】
【0041】
図4は本発明の冷凍サイクル装置の実施例3に用いるフィンの構成を示す図である。この実施例3においてもフィンチューブ熱交換器130におけるフィンの構成以外の部分については、図1図2に示した冷凍サイクル装置と同様であるので、フィン以外の部分の説明は省略する。
【0042】
図4において、(a)はこの実施例に使用される冷媒流入側のフィン133aまたは冷媒流出側のフィン133bの要部正面図であり、(b)及び(c)は(a)図のフィンを矢印E方向から見た図で、(b)は冷媒流出側のフィン133bにおけるフィンの構成を示す図、(c)は冷媒流入側のフィン133aの構成を示す図である。
【0043】
本実施例では、(b)図に示すように、冷媒流出側のフィン133bは、各1枚毎のフィンそれぞれに切り起されて形成されたスリット4bが、前後の2枚のフィン間に等間隔に配置されるように構成され、それによってフィン間の空気流路にスリット4bが偏らず均等に存在するので高い熱交換性能が得られるフィンに構成されている。
【0044】
冷媒流入側のフィン133aは(c)図に示すように、冷媒流出側のフィン133bに形成したスリット4bに比べ全体的に高さの低いスリット4aが設けられている。このように構成することにより、冷媒流入側のフィンではスリット4aがフィン側に偏って配置されるから、前後2枚のフィン間にはスリットが存在しない広い空気流路7が形成される。従って、この部分は霜で閉塞されにくく、空気流路を確保することができるから熱交換性能の低下を抑制できる。
【0045】
本実施例は上述したように、着霜しやすい冷媒流入側のフィン133aでは、フィン間の空気流路となる部分に、切り起し量を小さくしたスリット4aを設けることで空気流路が閉塞されるのを抑制し、着霜しにくい冷媒流出側のフィン133bには等間隔に配置されたスリット4bを設けるようにして、高い熱交換性能が得られるようにしている。従って、本実施例においても、上記実施例1や実施例2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、この実施例3と前記実施例1と組み合わせ、冷媒流入側のフィンは、伝熱管同士の間隔を大きく構成すると共に、この冷媒流入側のフィンには、図4(c)図に示したように切り起し量を小さくしたスリット4aを有するフィン133aを使用することも有効であり、霜による空気流路の閉塞をより確実に防止できる。
【実施例4】
【0047】
図5は本発明の冷凍サイクル装置の実施例4に用いる室外熱交換器130の構成を示す図であり、図2に相当する図である。この実施例4において、室外熱交換器130におけるフィンの構成以外の部分については、図1図2に示した冷凍サイクル装置と同様であるので、室外熱交換器130以外の部分の説明は省略する。
【0048】
上記実施例1では冷媒流入側のフィン130aと冷媒流出側のフィン130bを室外空気の流れ方向に二列に配置した例を示したが、この実施例4では、フィンチューブ熱交換器130はフィン134が一列に構成されている場合の例である。
【0049】
図5において、フィンチューブ熱交換器130を構成するフィン134のうち、冷媒流入側となる上方のフィン部134aと、冷媒流出側となる下方のフィン部134bを貫通するように伝熱管(冷媒配管)3aは設けられている。この実施例では1本の伝熱管3aのみ示しているが、伝熱管3aの下方に更に別の伝熱管(図2の伝熱管3bに相当するもの)を設けるようにして複数パスとすることもできる。
【0050】
伝熱管3aは、まず冷媒流入側となる前記上方のフィン部134aの上部側に接続され、空気流路を形成するように一定の間隔で重ねて配置された多数のフィン134を水平方向に一端側(手前側)から他端側に貫通した後下方側にUターンし、再び手前側に延びて1往復し、再び下方側にUターンして他端側に延びて、以下同様の往復を繰り返す。これを数往復(本実施例では2往復)繰り返した後、伝熱管3aは、次に冷媒流出側となる下方のフィン部134b側に入り、同様に下方側にUターンを繰り返して数往復(本実施例では2往復)するように構成されている。そして、伝熱管3aの上方から熱交換器130内に流入した冷媒は、伝熱管3aの下方から熱交換器130外に流出するようになっている。
【0051】
この実施例では、フィン134を貫通する伝熱管3aは、水平方向に延びる部分の伝熱管同士の間隔が、冷媒流入側となる上方のフィン部134a側でL1、冷媒流出側となる下方のフィン部134b側でL2となっており、フィン部134a側の前記間隔L1の方がフィン部134b側の前記間隔L2よりも大きくなるように構成されている。
【0052】
本実施例では着霜し易い冷媒流入側での伝熱管の間隔L1を大きくしているので、伝熱管の周囲には着霜しても、霜の着きにくい領域が増え、霜による空気流路の閉塞が起きにくくなるから、フィン間の空気流路を十分に確保可能となる。従って、冷媒流入側における冷媒と室外空気との熱交換量を確保できるから熱交換性能の低下を抑制することができる。一方、冷媒流出側の伝熱管の間隔L2については前記間隔L1よりも小さくし、より熱交換性能が向上するようにしている。
【0053】
伝熱管3aの下方側に別の伝熱管(3b)を設けて複数パスにする場合でも、前記別の伝熱管(3b)の構成は伝熱管3aと同様の構成にする。
【0054】
この実施例4に示すように、一列のフィンで構成されたフィンチューブ熱交換器であっても、本発明を適用することは可能であり、上記各実施例とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、図3図4に示すフィン形状のものを、図5に示すような一列のフィンで構成されたフィンチューブ熱交換器に適用することも可能であり、図3図4に示すフィン形状を単独で適用しても、或いは図5に示す実施例4の構成と組み合わせて構成することも可能である。
【0056】
以上説明した本発明の各実施例によれば、非共沸混合冷媒を用いた空気調和機などの冷凍サイクル装置において、飽和域温度勾配のために生じる蒸発器(フィンチューブ熱交換器)入口側での着霜により、空気通路を閉塞するのを抑制することができる。従って、空気通路閉塞による熱交換器での性能低下を抑制して、より高い省エネルギー化を実現できると共に、暖房運転時の快適性も向上することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:室外機、
2:室内機、
3,3a,3b:伝熱管、
4,4a,4b:スリット、
5:穴、6:スリットのない部分、
7:空気流路、
100:圧縮機、120:四方弁、
130:フィンチューブ熱交換器(室外熱交換器)、
130a,130b,132a,132b,133a,133b:フィン、
134:フィン(134a:上方のフィン部、134b:下方のフィン部)、
140:室外膨張弁、150:室外ファン、
210:室内熱交換器、220:室内ファン、
310:液接続配管、320:ガス接続配管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7