特許第5713717号(P5713717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713717
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】エレベーター交通流検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20150416BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B66B3/00 N
   B66B3/00 L
   B66B1/18 S
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-30638(P2011-30638)
(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-166929(P2012-166929A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2012年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 浩
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】小堀 真吾
(72)【発明者】
【氏名】諸井 勝
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020784(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123470(WO,A1)
【文献】 特公平05−012274(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段と、
前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段とを備え、
前記交通流特徴情報は、同一階の乗場に同時に到達する乗客の人数の割合である階床ごとの同時発生人数の割合を含む、エレベーター交通流検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター交通流検出装置であって、
前記交通流特徴情報を格納する交通流特徴情報記憶装置をさらに備え、
前記詳細交通流検出手段は、前記信号変化履歴情報と、前記交通流特徴情報記憶装置に格納されている前記交通流特徴情報とに基づいて前記交通流を求め、
前記詳細交通流検出手段が求めた前記交通流に基づいて、前記交通流特徴情報記憶装置に格納されている前記交通流特徴情報を更新する交通流特徴情報更新手段をさらに備える、エレベーター交通流検出装置。
【請求項3】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段と、
前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段とを備え、
前記交通流特徴情報は階床ごとの同時発生人数の割合を含み、
前記詳細交通流検出手段は、
前記信号変化履歴情報に基づいて、前記エレベーターのかごが一方向に移動している期間における、前記エレベーターの乗場呼び及びかご呼びへの応答と、乗客発生開始時刻と、乗降人数とを階床ごとに求める大局的状況検出手段と、
前記大局的状況検出手段で求めた階床ごとの乗降人数を、前記大局的状況検出手段で求めた階床ごとの乗場呼び及びかご呼びへの応答に基づいて補正し、当該補正された乗降人数たる補正乗降人数を取得する大局的補正手段と、
前記交通流特徴情報と、前記乗客発生開始時刻及び前記補正乗降人数とに基づいて、前記期間における乗客ごとの乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階を求める乗客情報検出手段と、
一の前記期間及びそれに前後する他の前記期間における、前記乗客情報検出手段に用いられなかった前記補正乗降人数と、前記交通流特徴情報とに基づいて、前記一の期間について前記乗客情報検出手段により求められた前記乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階を補正して、前記交通流を求める個人別補正手段と
を備える、エレベーター交通流検出装置。
【請求項4】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段と、
前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段とを備え、
前記交通流特徴情報は階床ごとの同時発生人数の割合を含み、
乗客が前記エレベーターのかごに乗車してから降車するまで当該乗客を追跡することにより得られた追跡信号を解析することにより、乗客ごとの乗車階及び降車階を示す乗客乗降情報を生成する乗客追跡データ解析手段をさらに備え、
前記詳細交通流検出手段は、
前記追跡信号が取得できた場合には、前記信号変化履歴情報と、前記追跡信号が取得できた乗客の前記乗客乗降情報とに基づいて乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を求め、前記追跡信号の取得が失敗した場合には、前記信号変化履歴情報と、前記交通流特徴情報とに基づいて前記交通流を求める、エレベーター交通流検出装置。
【請求項5】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段と、
前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段とを備え、
前記詳細交通流検出手段は、
前記信号変化履歴情報に基づいて、前記エレベーターのかごが一方向に移動している期間における、前記エレベーターの乗場呼び及びかご呼びへの応答と、乗客発生開始時刻と、乗降人数とを階床ごとに求める大局的状況検出手段と、
前記大局的状況検出手段で求めた階床ごとの乗降人数を、前記大局的状況検出手段で求めた階床ごとの乗場呼び及びかご呼びへの応答に基づいて補正し、当該補正された乗降人数たる補正乗降人数を取得する大局的補正手段と、
前記交通流特徴情報と、前記乗客発生開始時刻及び前記補正乗降人数とに基づいて、前記期間における乗客ごとの乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階を求める乗客情報検出手段と、
一の前記期間及びそれに前後する他の前記期間における、前記乗客情報検出手段に用いられなかった前記補正乗降人数と、前記交通流特徴情報とに基づいて、前記一の期間について前記乗客情報検出手段により求められた前記乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階を補正して、前記交通流を求める個人別補正手段と
を備える、エレベーター交通流検出装置。
【請求項6】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段と、
前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段と、
乗客が前記エレベーターのかごに乗車してから降車するまで当該乗客を追跡することにより得られた追跡信号を解析することにより、乗客ごとの乗車階及び降車階を示す乗客乗降情報を生成する乗客追跡データ解析手段とを備え、
前記詳細交通流検出手段は、
前記追跡信号が取得できた場合には、前記信号変化履歴情報と、前記追跡信号が取得できた乗客の前記乗客乗降情報とに基づいて乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を求め、前記追跡信号の取得が失敗した場合には、前記信号変化履歴情報と、前記交通流特徴情報とに基づいて前記交通流を求める、エレベーター交通流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの交通流を検出するエレベーター交通流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーター群管理制御での最適な制御ルールやパラメータの調整や、モダニゼーションでの効果予測など様々な目的として、エレベーターの運行シミュレーションが行われている。この運行シミュレーションでは、設定した制御ルールやパラメータ下において、乗客を模擬的に発生させるなどしてエレベーターの動き(交通流)を検出し、そのパラメータなどを評価する。
【0003】
一般に、乗客が、乗場階においてかごの到着を要求するための乗場呼び出しボタンを押して乗場呼びを行うと、エレベーター群管理制御装置は、複数台のかごの中からその乗場呼びに応答するかごを決定する。それゆえ、乗客が乗場呼びボタンを押した乗場階すなわち乗車階と、その時刻すなわち乗客発生時刻とがエレベーターの交通流に大きく関わる。また、その乗客が、到着したかご内において行先階ボタンを押すことで指定される降車階も、エレベーターの交通流に大きな影響を与える。したがって、シミュレーションの精度を向上させるために、シミュレーションにおける乗客発生時刻、乗車階及び降車階を、実際の乗客発生時刻、乗車階及び降車階に近づけることが求められている。
【0004】
さて、このようなエレベーターの運行シミュレーションの技術が、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1に開示の技術では、エレベーター制御装置からの運行状態に関する信号と、カメラなどの撮像装置によって取得されるかご内乗客の位置情報との変化状況に基づいて、乗客ごとの乗車階、降車階を検出し、階床相互交通量を計数する。特許文献2に開示の技術では、エレベーター制御装置からの制御信号等に基づいて、戸開して戸閉するごとの乗車人数及び降車人数を検出し、当該検出した人数に補正を行い、階床別乗降人数を計数する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−12274号公報
【特許文献2】特開平6−40675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、各乗客の乗車及び降車を検出するための撮像装置が必要であることから、それが設置できないエレベーターでは適用することができないという問題がある。また、この技術では、乗車及び降車は求められるが、乗客ごとの乗客発生時刻は求められないことから、シミュレーションを精度良く行うことができない。
【0007】
また、特許文献2に開示の技術では、撮像装置を設けなくても階床別乗降人数を計数することはできるが、乗客ごとの乗車階、降車階、乗客発生時刻を求めるものではないことから、シミュレーションを精度良く行うことができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、撮像装置を不要にして、乗客ごとの乗車階、降車階、乗客発生時刻を求めることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベーター交通流検出装置は、エレベーターを制御するエレベーター制御装置から、当該エレベーターの制御に関する信号を受け、前記信号を解析することにより、当該信号の変化の履歴を示す信号変化履歴情報を生成する信号データ解析手段を備える。前記エレベーター交通流検出装置は、前記信号変化履歴情報と、前記エレベーターの交通流の統計的な特徴を示す交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む前記エレベーターの交通流を求める詳細交通流検出手段を備え、前記交通流特徴情報は、同一階の乗場に同時に到達する乗客の人数の割合である階床ごとの同時発生人数の割合を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベーター制御装置からの制御に関する信号に基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含むエレベーターの交通流を求める。したがって、カメラなどの撮像装置を用いてかご内の各乗客を追跡することによって得られる追跡信号は必須ではなく、撮像装置がなくても乗客ごとのエレベーターの交通流を求めることができる。また、乗客発生時刻、乗車階及び降車階を乗客ごとに求めることができることから、エレベーターの運行に関するシミュレーションを精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るエレベーター交通流検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】信号履歴テーブルの例を示す図である。
図3】交通流特徴情報の例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る詳細交通流検出手段の構成を示すブロック図である。
図5】大局的状況テーブルの例を示す図である。
図6】大局的補正手段の処理手順を示すフローチャートである。
図7】乗客情報検出手段の処理手順を示すフローチャートである。
図8】個人別補正手段の処理手順を示すフローチャートである。
図9】乗客ごとのエレベーター交通流のテーブルを示す図である。
図10】実施の形態2に係るエレベーター交通流検出装置の構成を示すブロック図である。
図11】追跡乗客テーブルの例を示す図である。
図12】追跡成功乗客情報検出手段の処理手順を示すフローチャートである。
図13】実施の形態3に係るエレベーター交通流検出装置の構成を示すブロック図である。
図14】個別乗客情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るエレベーター交通流検出装置10及びその周辺の構成要素を示すブロック図である。図1に示されるように、このエレベーター交通流検出装置10は、信号データ解析手段11と、交通流特徴情報記憶装置12と、詳細交通流検出手段13と、交通流情報出力手段14とを備える。エレベーター交通流検出装置10は、エレベーター(図示せず)を制御するエレベーター制御装置1と間接的に接続されており、エレベーター制御装置1から、エレベーターの制御に関する信号が入力される。
【0013】
本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10は、エレベーター制御装置1からの当該信号に基づいて、乗客が発生した時刻である乗客発生時刻と、乗車階と、降車階とを含むエレベーターの交通流を、乗客ごとに求めることが可能となっている。つまり、このエレベーター交通流検出装置10は、撮像装置を設けなくても、シミュレーションを精度良く行うことが可能な、乗客ごとのエレベーターの交通流を求めることできる。以下、このようなエレベーター交通流検出装置10について詳細に説明する。
【0014】
複数の乗場階のそれぞれには、かごの到着を要求する操作(乗場呼び)を受け付ける複数の乗場呼び装置(図示せず)が設置され、複数台のかごのそれぞれには、かごの行き先となる階を指定する操作(かご呼び)を受け付ける複数のかご呼び装置(図示せず)が設置されている。上述のエレベーター制御装置1は、複数の乗場呼び装置、及び、複数のかご呼び装置と接続されており、これらで受け付けた乗場呼び及びかご呼び等に基づいて、複数台のかごを制御する。なお、ここでは、エレベーター制御装置1は、複数台のかごを一括して制御するエレベーター群管理装置であるものとして説明する。しかし、これに限ったものではなく、エレベーター制御装置1は、かごごとに設けられ、対応するかごを制御するものであってもよい。
【0015】
エレベーター制御装置1がエレベーターを制御する際、エレベーター制御装置1からエレベーターには、当該エレベーターに動作指示する制御信号が出力され、当該エレベーターからエレベーター制御装置1には、当該エレベーターで検出された検出信号が出力される。エレベーター制御装置1は、エレベーターからの検出信号に基づいて、エレベーターに出力すべき制御信号を生成する。本実施の形態では、エレベーター制御装置1からエレベーター交通流検出装置10に入力される、上述の制御に関する信号は、複数種類の当該制御信号及び当該検出信号を含んでいるものとする。ただし、制御に関する信号は、カメラなどの撮像装置を用いてかご内の各乗客を追跡することによって得られる追跡信号が除かれているものとする。エレベーター制御装置1は、当該制御に関する信号を、信号データ記憶装置2に出力する。
【0016】
信号データ記憶装置2には、エレベーター制御装置1から出力された制御に関する信号のデータが、時刻情報付き、または、時系列で記録される。
【0017】
信号データ解析手段11は、信号データ記憶装置2に格納された信号データ(つまり、エレベーター制御装置1からの制御に関する信号)を受け、当該信号データを解析することにより、当該信号データに変化があるかを検出する。そして、信号データ解析手段11は、当該信号データの変化を検出した場合には、当該信号の変化の履歴を示す信号履歴テーブル(信号変化履歴情報)を生成する。なお、信号データ解析手段11は、信号データ記憶装置2に格納されている信号データの全部を解析するようにしてもよいし、信号データの一部、例えば指定された範囲内のデータを解析するようにしてもよい。
【0018】
図2は、信号データ解析手段11によって生成される信号履歴テーブルの例を示す図である。この例では、制御に関する信号に含まれる信号のうち、いずれかの信号の値が変化するごとに、その変化に関する時刻、かご番号、信号種別、及び信号値がフィールド51〜54にそれぞれ書き込まれる。なお、信号履歴テーブルには、図2に示されるフィールドの他に、日付フィールドなどを設けてもよい。次に、図2に示されるテーブルでの各フィールドについて詳しく説明する。
【0019】
時刻フィールド51の値は、変化した時刻を示す。この時刻フィールド51における時刻は、絶対的な時刻であってもよいし、あるデータ(信号)を取得開始した時刻などの基準に対する相対的な時刻であってもよい。かごフィールド52の値は、各かごに固有に付与された番号を示す。
【0020】
信号種別フィールド53は、制御に関する信号の種別を示し、信号値フィールド54の値は、信号種別フィールド53により示される信号種別によって異なる内容を示す。例えば、信号種別フィールド53において「かご位置」と示されていれば、信号値フィールド54の値は、かごが位置する階床を示す。また、信号種別フィールド53において「戸全閉」と示されていれば、信号値フィールド54における「1」は、戸が全閉でない状態から全閉状態に変わったことを示し、「0」は、戸が全閉状態から全閉でない状態に変わったことを示す。信号種別フィールド53において「かご呼び登録(7F)」と示されていれば、信号値フィールド54における「1」は、7Fへのかご呼びが登録されたことを示し、「0」は、登録されていた7Fへのかご呼びが、かごが7Fに到着したことなどにより解消されたことを示す。
【0021】
信号種別フィールド53において「乗場呼び登録(1F)」と示されていれば、信号値フィールド54における「1」は、1Fへの乗場呼びが登録されたことを示し、「0」は、登録されていた1Fへの乗場呼びが、かごが1Fに到着したことなどにより解消されたことを示す。信号種別フィールド53において「乗車人数検出」と示されていれば、信号値フィールド54の値は、かごに乗車された人数を示す。なお、信号種別フィールド53に示される信号種別は、以上に説明したもの以外の信号種別をさらに含んでいてもよい。
【0022】
以上、信号データ解析手段11は、信号の値が変化するごとに、その変化に関する情報を信号履歴テーブルに書き込むものとして説明した。しかし、これに限ったものではなく、信号データ解析手段11は、一定時間ごとの信号の情報を信号履歴テーブルに書き込んでもよく、あるいは、いずれかの信号が変化したときの変化後の全ての信号の情報を信号履歴テーブルに書き込んでもよい。
【0023】
交通流特徴情報記憶装置12は、エレベーターの交通流の特徴を示す交通流特徴情報を格納している。
【0024】
図3は、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている交通流特徴情報の例を示す図である。ここでは、交通流特徴情報として、乗車階を基準とした降車階の割合(分布)として、3Fで乗車した乗客が1F、2F、4F〜7Fのそれぞれで降車した割合(分布)が示されており、これらの値を全て加算すると「1.00」となっている。なお、図示していないが、3F以外についても、乗車階を基準とした降車階の割合(分布)が同様に交通流特徴情報記憶装置12に記憶されている。また、図示していないが、降車階を基準とした乗車階の割合(分布)も同様に交通流特徴情報記憶装置12に記憶されている。
【0025】
なお、割合(分布)は、曜日別に記憶されていてもよいし、時間帯別に記憶されていてもよい。また、各全階床の割合ではなく、主階、オフィス階、食堂階といった階床用途別の割合としてもよい。また、階床ごとの同時発生人数の割合が交通流特徴情報記憶装置12に記憶されていてもよい。これらの情報は、当該エレベーター固有の情報であってもよいし、当該エレベーターと類似する他のエレベーターの情報が用いられてもよい。なお、例えば、交通流特徴情報が詳細交通流検出手段13に格納されているような場合には、交通流特徴情報記憶装置12は必ずしも備えられていなくてもよい。
【0026】
詳細交通流検出手段13は、信号データ解析手段11によって生成された信号履歴テーブルと、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている交通流特徴情報とに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含むエレベーターの交通流を求める。
【0027】
図4は、詳細交通流検出手段13の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、詳細交通流検出手段13は、大局的状況検出手段21と、大局的補正手段22と、乗客情報検出手段23と、個人別補正手段24とを備える。以下、詳細交通流検出手段13の各構成要素について詳細に説明する。なお、詳細交通流検出手段13は、乗客ごとのエレベーターの交通流を求める処理(スキャン処理)を、例えば、かごの進行方向が反転してから次に反転するまでの期間ごとに行う。以下の説明においては、その期間を「スキャン期間」と呼ぶこともある。
【0028】
大局的状況検出手段21は、信号履歴テーブルに基づいて、かごが一方向に移動している期間(スキャン期間)における、エレベーターの乗場呼び及びかご呼びへの応答と、乗客発生開始時刻と、乗降人数(乗車人数及び降車人数)とを階床ごとに求め、これらを示す大局的状況テーブルを作成する。
【0029】
図5は、大局的状況検出手段21で作成される大局的状況テーブルの例を示す図である。この例では、かごが1Fから7Fに向かう上方向に運転された場合に大局的状況検出手段21が作成する大局的状況テーブルが示されている。階床71は、各階床の階数を示すものであり、階床71ごとに、応答区分フィールド72、乗客発生開始時刻フィールド73、乗車人数フィールド74、降車人数フィールド75のそれぞれに値が書き込まれる。
【0030】
応答区分フィールド72の値が「乗場」である場合には、乗場呼びへの応答によりその階床71に停止したことを示し、その値が「かご」である場合には、かご呼びへの応答によりその階床71に停止したことを示し、その値が「乗場・かご」である場合には、乗場呼び及びかご呼びの両方への応答によりその階床71に停止したことを示す。そのフィールド72での値が空欄である場合には、その階床71でかごが停止しなかったことを示す。
【0031】
乗客発生開始時刻フィールド73の値は、その階床71で乗車した乗客によって乗場呼びの登録がされたときの時刻(以下「乗客発生開始時刻」と呼ぶこともある)を示す。例えば、乗場呼びへの応答により所望の階床71に停止した場合には、その階床71でかごが停止する以前で最も近い時刻であって、そのスキャンの進行方向での乗場呼びが登録された時刻を、乗客発生開始時刻とする。そのフィールド73での値が空欄である場合には、その階床71でかごが停止しなかったことを示す。
【0032】
乗車人数フィールド74の値は、その階床71からエレベーターに乗車した乗客の人数を示す。この値には、例えば、直前に停止した階床での戸閉完了時から、乗客が乗車した階床での戸閉完了時までの間における、最小負荷量(最小の乗客の重量)と最大負荷量(最大の乗客の重量)との差を、一人当たりの荷重、例えば60Kgで除算して得られた値が用いられる。
【0033】
降車人数フィールド75の値は、その階床71に降車した乗客の人数を示す。この値には、例えば、直前に停止した階床での戸閉完了時から、乗客が降車した階床での戸閉完了時までの間における、最小負荷量と、当該戸閉完了時の負荷量との差を、一人当たりの荷重、例えば60Kgで除算して得られた値が用いられる。なお、ある階床において乗車及び降車の両方が行われた場合に、乗車した人数、及び、降車した人数を区別して求める方法は、例えば、引用文献2に開示されている。
【0034】
大局的補正手段22は、大局的状況検出手段21で求めた階床ごとの乗降人数を、大局的状況検出手段21で求めた階床ごとの乗場呼び及びかご呼びへの応答に基づいて補正し、当該補正された乗降人数(以下、「補正乗降人数」と呼ぶこともある)を取得する。つまり、大局的補正手段22は、大局的状況検出手段21で求めた乗降人数を、乗場呼び及びかご呼びに対する応答との整合性を踏まえて補正することによって、補正乗降人数を取得する。
【0035】
図6は、大局的補正手段22が、階床ごとの乗降人数に対して当該補正を行う際の処理手順を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS201において、大局的補正手段22は、大局的状況テーブルの乗車人数フィールド74の値を補正する。ここで、乗場呼びへの応答について検討すると、例えば、乗場呼びへの応答により停止した階では乗車した乗客がいる可能性が高いと考えられる。一方、乗場呼びへの応答によらずに停止した階では乗車した乗客がいない可能性が高いと考えられる。そこで、例えば、応答区分フィールド72の値が「乗場」または「乗場・かご」である階床に関し、乗車人数フィールド74の値が「0人」である場合には、その値を「1人」に補正する。一方、例えば、応答区分フィールド72の値が「かご」または空欄である階床に関し、乗車人数フィールド74の値が1人以上である場合には、その値を「0人」に補正する。
【0037】
ステップS202において、大局的補正手段22は、大局的状況テーブルの降車人数フィールド75の値を補正する。ここで、かご呼びへの応答について検討すると、例えば、かご呼びへの応答により停止した階では降車した乗客がいる可能性が高いと考えられる。一方、かご呼びへの応答によらずに停止した階では降車した乗客がいない可能性が高いと考えられる。そこで、例えば、応答区分フィールド72の値が「かご」または「乗場・かご」である階床に関し、降車人数フィールド75の値が「0人」である場合には、その値を「1人」に補正する。一方、例えば、応答区分フィールド72の値が「乗場」または空欄である階床に関し、降車人数フィールド75の値が1人以上である場合には、その値を「0人」に補正する。
【0038】
次に、図4に示される乗客情報検出手段23について説明する。乗客情報検出手段23は、交通流特徴情報(図3)と、補正後の大局的状況テーブルに含まれる乗客発生開始時刻及び補正乗降人数とに基づいて、上述のスキャン期間における乗客ごとの乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階を求める。なお、以下の説明においては、乗客情報検出手段23で求められる乗客発生開始時刻、乗車階及び降車階をまとめて、「乗客レコード」と呼ぶこともある。この乗客レコードを用いて乗客情報検出手段23の処理を言い換えると、本実施の形態に係る乗客情報検出手段23は、交通流特徴情報と、大局的状況テーブルに含まれる乗客発生開始時刻及び補正乗降人数に基づいて、スキャン期間における乗客ごとの乗客レコードを求める。
【0039】
図7は、乗客情報検出手段23が、乗客ごとの乗客レコードを求める際の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS301において、乗客情報検出手段23は、乗車可能階と降車可能階との組合せの中で、進行方向に合う妥当な組合せがあるかを判定する。ここで、乗車可能階は、例えば、大局的状況テーブルの乗車人数フィールド74が1人以上である階床71とし、降車可能階は、例えば、大局的状況テーブルの降車人数フィールド75が1人以上である階床71とする。妥当な組合せについては、例えば、進行方向が上方向である場合は降車可能階が乗車可能階よりも上の階床となる組合せを妥当な組合せとし、進行方向が下方向である場合は降車可能階が乗車可能階よりも下の階床となる組合せを、妥当な組合せとする。あるいは、例えば、図3に示される乗車階を基準とした降車階の割合(分布)において、乗車階61を乗車可能階とし、降車階62を降車可能階とした場合の割合が所定の閾値以上となる組合せを、妥当な組合せとする。妥当な組合せがある場合にはステップS302に移行し、妥当な組合せがない場合にはステップS305に移行する。
【0041】
ステップS302〜S304において、乗客情報検出手段23は、乗客1人分の乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含む上述の乗客レコードを求める。
【0042】
具体的には、ステップS302において、乗客情報検出手段23は、降車可能階の中から、乗客レコードを求める対象とすべき乗客の乗車階を決定する。例えば、乗客情報検出手段23は、降車可能階のうち、妥当に組み合わせられる降車可能階があり、かつ、その降車可能階の数が最も少ない乗車可能階を、対象乗客の乗車階として決定する。
【0043】
ステップS303において、乗客情報検出手段23は、ステップS302で決定した乗車階と妥当な組合せをなす降車可能階の中から、対象乗客の降車階を決定する。当該乗車階と妥当な組合せをなす降車可能階が1つしかない場合には、その降車可能階を、対象乗客の降車階として決定する。
【0044】
一方、当該乗車階と妥当な組合せをなす降車可能階が複数ある場合には、例えば、交通流特徴情報(図3)において割合が最も高い組合せの降車可能階を、対象乗客の降車階として決定する。例えば、ステップS302で決定した乗車階が3Fであり、当該乗車階と妥当な組合せをなす降車可能階が5F、6F、7Fであった場合について説明すると、図3に示される交通流特徴情報において、割合が最も高い降車可能階は6Fであることから、乗客情報検出手段23は、6Fを、対象乗客の降車階として決定する。
【0045】
ステップS304において、乗客情報検出手段23は、対象乗客の乗客レコードを作成する。本実施の形態では、乗客情報検出手段23は、ステップS302で決定された乗車階と、ステップS303で決定された降車階と、図5に示される対応する乗客発生開始時刻フィールド73に示されている乗客発生開始時刻とからなる乗客レコードを作成する。それから、乗客情報検出手段23は、大局的状況テーブル(図5)において、乗客レコードの元となった、乗車人数フィールド74及び降車人数フィールド75の値を、それぞれ1人分減らす。ステップS304の処理が終了した後は、ステップS301に移行する。そして、ステップS301で妥当な組合せがないと判定されるまで、ステップS301〜S304の処理を繰り返す。
【0046】
ステップS305において、乗客情報検出手段23は、対象スキャン期間の乗車可能階のうち、ステップS301で妥当な組合せをなすと判定されなかった乗車可能階がある場合には、当該乗車可能階を示す「降車不明レコード」を作成する。あるいは、乗客情報検出手段23は、対象スキャン期間の降車可能階のうち、ステップS301で妥当な組合せをなすと判定されなかった降車可能階がある場合には、当該降車可能階を示す「乗車不明レコード」を作成する。
【0047】
具体的には、乗客情報検出手段23は、降車可能階と対応付けられずに乗車可能階が残存することにより、乗車人数フィールド74において1人以上の値が書き込まれている場合には、その階床を乗車階とし、降車階を不明とする降車不明レコードを、その人数分だけ作成する。なお、この降車不明レコードは、ステップS304の乗客レコードと同様に、当該乗車階に対応する乗客発生開始時刻フィールド73に示されている乗客発生開始時刻を有しているものとする。また、乗客情報検出手段23は、乗車可能階と対応付けられずに降車可能階が残存することにより、降車人数フィールド75において1人以上の値が書き込まれている場合には、その階床を降車階とし、乗車階を不明とする乗車不明レコードを、その人数分だけ作成する。なお、以下の説明においては、降車不明レコード及び乗車不明レコードを合わせて、「情報欠落レコード」と呼ぶこともある。
【0048】
次に、図4に示される個人別補正手段24について説明する。個人別補正手段24は、一のスキャン期間及びそれに前後する他のスキャン期間における、乗客情報検出手段に用いられなかった残余の補正乗降人数と、交通流特徴情報(図3)とに基づいて、当該一のスキャン期間について乗客情報検出手段23により求められた乗客ごとの乗客レコードを補正する。つまり、個人別補正手段24は、一のスキャン期間及びそれに前後する他のスキャン期間における情報欠落レコードと、交通流特徴情報とに基づいて、当該一のスキャン期間の乗客レコードを補正する。
【0049】
図8は、個人別補正手段24が、乗客レコードに対して補正を行う際の処理手順を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS401において、個人別補正手段24は、情報欠落レコード同士の対応付けを行ってステップS304と同様の乗客レコードを作成する。その後、個人別補正手段24は、補完を行うことによってステップS304と同様の乗客レコードをさらに作成する。以下、このステップS401の動作について詳細に説明する。
【0051】
まず、情報欠落レコード同士の対応付けについて説明する。ここで、乗車不明レコードについて検討すると、乗車不明レコードの乗客は、1つ前のスキャン期間で乗車した可能性があると考えられる。そこで、個人別補正手段24は、各乗車不明レコードを、1つ前のスキャン期間の降車不明レコードと対応付ける。
【0052】
もし、対象スキャンの1つ前のスキャン期間に降車不明レコードが複数ある場合は、個人別補正手段24は、交通流特徴情報に含まれる、降車階を基準とした乗車階の割合(分布)を参照し、対象の乗車不明レコードの降車階と最も高い割合をなす乗車階の降車不明レコードを特定する。そして、個人別補正手段24は、対象の乗車不明レコードと、特定した降車不明レコードとはいずれも同一の乗客に関するレコードであるとみなし、両レコードを互いに対応付けてステップS304と同様の乗客レコードを作成した後、当該両レコードを情報欠落レコードから1つ削除する。このような対応付け処理を、対象スキャン期間における乗車不明レコード、及び、1つ前のスキャン期間における降車不明レコードのいずれかが無くなるまで繰り返す。
【0053】
この処理を繰り返しても、対象スキャン期間における乗車不明レコード、及び、1つ前のスキャン期間における降車不明レコードのいずれかが残っている場合がある。この場合には、個人別補正手段24は以下の補完を行う。
【0054】
例えば、対象スキャン期間における乗車不明レコードが残っている場合には、個人別補正手段24は、交通流特徴情報、つまり、降車階を基準とした乗車階の割合(分布)を参照し、当該乗車不明レコードの降車階と最も高い割合をなす乗車階を特定する。そして、個人別補正手段24は、対象の乗車不明レコードにおいて不明とされていた乗車階を、当該特定した乗車階とする補完を行うことにより、ステップS304と同様の乗客レコードを作成し、それから対象の乗車不明レコードを情報欠落レコードから1つ削除する。
【0055】
ここでは、対象スキャン期間における乗車不明レコードが残っている場合における補完について説明したが、1つ前のスキャン期間における降車レコードが残っている場合にも同様の補完を行う。なお、対象スキャン期間における降車不明レコードについては、次のスキャン期間における乗車不明レコードと上述の対応付けが行われると考えられる。そこで、対象スキャン期間における降車不明レコードについては、補完を行わずに次のスキャン期間の情報欠落レコードについてステップS401の処理が行われるまで、後述するステップS402以降の処理の対象外とする。
【0056】
以上のようなステップS401の処理により、進行方向が反対のかごに誤って乗車してしまい、進行方向が反転した後も乗車し続けている乗客についても、乗客レコードを作成することができる。
【0057】
その後、ステップS402において、個人別補正手段24は、ステップS304及びステップS401で作成した全乗客レコードの乗客発生開始時刻を補正する。例えば、ある階床で乗車した乗客が1人だけの場合には、その乗客の乗客発生時刻は、大局的状況テーブルの乗客発生開始時刻フィールド73に示される乗客発生開始時刻と一致する可能性が高いと考えられるが、乗車した乗客が2人以上いる場合には、必ずしもその全員が一度に乗場に到達したとは限らない。そこで、例えば、個人別補正手段24は、ポアソン分布に従って、各乗客レコードの乗客発生開始時刻を補正することによって、乗客発生時刻を取得する。なお、ここでは、ポアソン分布を用いたが、これに限ったものではなく、この代わりに一様分布などを用いて補正してもよい。
【0058】
個人別補正手段24は、以上のステップS401,S402による補正を行うことにより、詳細交通流検出手段13の出力とすべき、乗客ごとのエレベーターの交通流を求める。
【0059】
図1に戻って、交通流情報出力手段14は、詳細交通流検出手段13が求めた乗客ごとの交通流を示すテーブルを出力する。例えば、交通流情報出力手段14は、図9に示すように、詳細交通流検出手段13が求めた交通流を、乗客発生時刻を示す乗客発生時刻フィールド81と、乗車階を示す乗車階フィールド82と、降車階を示す降車階フィールド83とからなるテーブル形式に変換して出力する。なお、図示していないが、このテーブル(検出乗客テーブル)には、日付フィールドなど、他のフィールドを設けてもよい。
【0060】
以上のような本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10によれば、エレベーター制御装置1からの制御に関する信号に基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含むエレベーターの交通流を求める。したがって、カメラなどの撮像装置を用いてかご内の各乗客を追跡することによって得られる追跡信号は必須ではなく、撮像装置がなくても乗客ごとのエレベーターの交通流を求めることができることから、撮像装置が設置できないエレベーターにおいてもシミュレーションを行うことができる。また、乗客発生時刻、乗車階及び降車階を乗客ごとに求めることができることから、エレベーターの運行に関するシミュレーションを精度良く行うことができる。その結果、エレベーターによる人や物などの輸送を効率化することが期待できる。
【0061】
また、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10によれば、交通流情報出力手段14により、乗客ごとの交通流を示すテーブルを出力する。したがって、乗客ごとの交通流を、加工容易及び視認容易な形式で出力することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10によれば、乗降人数を、乗場呼び及びかご呼びへの応答に基づいて補正し、前後するスキャン期間における残余の補正乗降人数等に基づいて、乗客情報検出手段23が求めた乗客レコードを補正する。したがって、乗場呼び及びかご呼びへの応答、及び、前後するスキャン期間における補正乗降人数に対して整合性を取ることができることから、検出漏れや検出誤りを減らすことができる。よって、乗客ごとの交通流を低いコストで精度良く検出することができる。
【0063】
<実施の形態2>
実施の形態1に係るエレベーター交通流検出装置10は、上述したように、制御に関する信号に基づいて、乗客ごとのエレベーターの交通流を求める。しかしながら、制御に関する信号は、個々の乗客の様子を直接追跡して得られるものではないので、交通流を確率的に検出することが稀にある。
【0064】
一方、個々の乗客を識別可能なカメラや光電装置などの識別装置(撮像装置)と、識別された乗客がエレベーターのかごに乗車してから降車するまで、当該乗客を追跡(検知)可能な手段とを備える乗客追跡装置を用いれば、交通流を非確率的に検出することは可能である。しかしながら、この場合には、以下のような問題点がある。
【0065】
例えば、乗客追跡装置の識別装置を各階の乗場に設置すると、複数の識別装置が必要となるのでコストが高くなり、設置できるビルも限られるという問題がある。一方、乗客追跡装置であっても、識別装置をかご内に設置可能な乗客追跡装置(以下「かご内乗客追跡装置」と呼ぶ)であれば、一般のエレベーターのかごに設けられた監視カメラを識別装置として兼用することができるので、コスト等の点では大きな問題となることはない。
【0066】
しかしながら、このかご内乗客追跡装置は、かご内の乗客を追跡(検出)するものであり、乗場での乗客の様子は追跡(検出)することができない。その結果、精度良くシミュレーションを行うのに必要な乗客発生時刻を検出することができないという問題点がある。また、乗客追跡装置が備える識別装置が、カメラや光電装置といった一般的な識別装置である場合には、その識別精度は完全であるとはいえず、追跡に失敗して交通流を検出できないケースが相当数発生することもあると考えられる。
【0067】
そこで、本発明の実施の形態2に係るエレベーター交通流検出装置10Aは、上述の確率的な検出や、追跡の失敗を解決することができるように、制御に関する信号に基づいて交通流を求めること、及び、追跡信号に基づいて交通流を求めることが可能である。以下、このような本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Aについて説明する。
【0068】
図10は、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10A及びその周辺の構成要素を示すブロック図である。図10に示されるように、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Aの構成要素は、詳細交通流検出手段13が詳細交通流検出手段13Aに変更された点と、乗客追跡データ解析手段15が追加された点とを除いて、実施の形態1に係るエレベーター交通流検出装置10の構成要素と同一である。また、詳細交通流検出手段13Aの構成要素は、大局的状況検出手段21が大局的状況検出手段21Aに変更された点と、追跡成功乗客情報検出手段25が追加された点とを除いて、実施の形態1に係る詳細交通流検出手段13の構成要素と同一である。以下、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Aの構成要素のうち、実施の形態1と同一のものについては同一の参照符号を付し、実施の形態1と共通する説明は省略する。
【0069】
かご内乗客追跡装置3は、上述したように比較的コストが低い乗客追跡装置であり、乗客がエレベーターのかごに乗車してから降車するまで当該乗客を追跡し、その追跡結果を示す追跡信号を生成するものである。
【0070】
乗客追跡データ記憶装置4には、かご内乗客追跡装置3で生成された追跡信号のデータが、時刻情報付き、または、時系列で記録される。
【0071】
乗客追跡データ解析手段15は、乗客追跡データ記憶装置4に格納された追跡信号データ(追跡信号)を解析することにより、乗客ごとの乗車階及び降車階を示す追跡乗客テーブル(乗客乗降情報)を生成する。なお、乗客追跡データ解析手段15は、乗客追跡データ記憶装置4に格納されている追跡信号データの全部を解析するようにしてもよいし、追跡信号データの一部、例えば指定された範囲内のデータを解析するようにしてもよい。
【0072】
図11は、乗客追跡データ解析手段15によって生成される追跡乗客テーブルの例を示す図である。この例では、追跡した乗客ごとの乗車時刻、乗車階、降車時刻、及び降車階がフィールド91〜94にそれぞれ書き込まれる。なお、追跡乗客テーブルには、図11に示されるフィールドの他に、日付フィールドなどを設けてもよい。以下、図11に示されるテーブルでの各フィールドについて詳しく説明する。
【0073】
乗車時刻フィールド91の値は、追跡した乗客の乗車時刻を示し、降車時刻フィールド93の値は、追跡した乗客の降車時刻を示す。なお、これらの時刻は、絶対的な時刻であってもよいし、データ(信号)を取得開始した時刻などの基準に対する相対的な時刻であってもよい。乗車階フィールド92の値は、追跡した乗客の乗車階を示し、降車階フィールド94の値は、追跡した乗客の降車階を示す。
【0074】
詳細交通流検出手段13Aは、実施の形態1で説明した信号履歴テーブルと、乗客追跡データ解析手段15が生成した追跡乗客テーブルとに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含むエレベーターの交通流を求める。以下、このような処理を行う詳細交通流検出手段13Aの構成要素について説明する。
【0075】
本実施の形態に係る大局的状況検出手段21Aは、信号履歴テーブルに基づいて、スキャン期間における乗客発生開始時刻を階床ごとに求めるとともに、追跡乗客テーブルに基づいて、当該スキャン期間における乗降人数を階床ごとに求め、これらを示す大局的状況テーブルを作成する。つまり、ここでは、図5に示される乗車人数フィールド74及び降車人数フィールド75の値が、図11に示される追跡乗客テーブルに基づいて求められる点で実施の形態1と異なる。例えば、乗車人数フィールド74の値は、追跡乗客テーブルにおいて、その階での戸開中に乗車したと示されている乗客の数とする。また、例えば、降車人数フィールド75の値は、追跡乗客テーブルにおいて、その階での戸開中に降車したと示されている乗客の数とする。
【0076】
追跡成功乗客情報検出手段25は、大局的補正手段22によって補正された大局的状況テーブルに基づいて、乗客追跡データ解析手段15で得られた追跡乗客テーブルから、追跡に失敗して生じてしまった誤った情報を削除する。そして、追跡成功乗客情報検出手段25は、削除後の追跡乗客テーブルに基づいて、乗客ごとの乗客発生開始時刻、乗車階、降車階の情報を検出する。つまり、追跡成功乗客情報検出手段25は、追跡に成功した乗客について、実施の形態1のステップS304の乗客レコードと同様の乗客レコードを各乗客について求める。
【0077】
図12は、追跡成功乗客情報検出手段25が、追跡に成功した乗客ごとの乗客レコードを求める際の処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
ステップS501において、追跡成功乗客情報検出手段25は、追跡乗客テーブル(図11)に含まれる情報のうち、追跡に成功した乗客以外の乗客の乗車時刻、乗車階、降車階、及び降車時刻(以下、「追跡乗客情報」と呼ぶこともある)を削除する。つまり、このステップS501において、追跡成功乗客情報検出手段25は、誤った追跡乗客情報を削除する。例えば、大局的補正手段22で補正された大局的状況テーブルにおいてある階の乗車人数が0人であるにもかかわらず、追跡乗客テーブルにおいてその階が乗車階となっている情報がある場合には、追跡成功乗客情報検出手段25は、追跡乗客テーブルから当該追跡乗客情報を削除する。
【0079】
ステップS502において、追跡成功乗客情報検出手段25は、追跡乗客テーブルに含まれる個々の追跡乗客情報について、上述の乗客レコードを作成する。本実施の形態では、追跡成功乗客情報検出手段25は、追跡乗客情報ごとに、乗車階フィールド92が示す乗車階と、降車階フィールド94が示す降車階と、乗客発生開始時刻とからなる乗客レコードとして作成する。ここで、乗客レコードをなす当該乗客発生開始時刻は、図5に示される大局的状況テーブルのうち、乗車階フィールド92が示す乗車階と同じ階床71に対応する、乗客発生開始時刻フィールド73の時刻とする。それから、追跡成功乗客情報検出手段25は、大局的状況テーブルから、乗客レコードの元となった情報を削除する。
【0080】
その後、本実施の形態に係る乗客情報検出手段23は、追跡成功乗客情報検出手段25の処理が終了した時点での大局的状況テーブルに基づいて、実施の形態1で説明した乗客レコードを作成する処理を行う。それ以外の構成要素は、実施の形態1と同様の処理を行う。
【0081】
以上のような処理により、本実施の形態に係る詳細交通流検出手段13Aは、追跡信号が取得できた場合には、制御に関する信号に基づいて生成された信号履歴テーブルと、追跡信号に基づいて生成された追跡乗客テーブルとに基づいて、乗客ごとの乗客発生時刻、乗車階及び降車階を含むエレベーターの交通流を求める。
【0082】
一方、本実施の形態に係る詳細交通流検出手段13Aは、追跡信号の取得が失敗した場合(例えば、誤った追跡乗客情報の数が所定数以上となった場合)には、実施の形態1と同様に、信号履歴テーブルと、交通流特徴情報とに基づいて乗客ごとのエレベーターの交通流を求める。
【0083】
以上のような本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Aによれば、追跡が成功した乗客に対しては、主に追跡乗客テーブルに基づいてエレベーターの交通流を検出し、追跡が失敗した乗客に対しては、主に信号履歴テーブルに基づいてエレベーターの交通流を検出する。したがって、確率的に検出される乗客、及び、追跡に失敗した乗客を減らすことができ、交通流を検出できる可能性を高めることができる。
【0084】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3に係るエレベーター交通流検出装置10Bでは、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている交通流特徴情報を更新することが可能となっている。以下、このようなエレベーター交通流検出装置10Bについて説明する。
【0085】
図13は、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10B及びその周辺の構成要素を示すブロック図である。図13に示されるように、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Bの構成要素は、交通流特徴情報更新手段16が追加されている点を除いて、実施の形態1に係るエレベーター交通流検出装置10の構成要素と同一である。以下、本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Bの構成要素のうち、実施の形態1と同一のものについては同一の参照符号を付し、実施の形態1と共通する説明は省略する。
【0086】
交通流特徴情報更新手段16は、個人別補正手段24(詳細交通流検出手段13)が求めた交通流に基づいて、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている交通流特徴情報を更新する。
【0087】
本実施の形態に係る交通流特徴情報記憶装置12は、図3に示したような乗車階を基準とした降車階の割合(分布)の他に、図14に示すような、詳細交通流検出手段13が求めた上述の交通流に相当する個別乗客情報も格納する。
【0088】
交通流特徴情報更新手段16は、例えば、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている直近1週間の個別乗客情報から、当該直近1週間の乗車階を基準とした降車階の割合(分布)を、乗車階及び降車階の全組合せについて求める。そして、交通流特徴情報更新手段16は、交通流特徴情報記憶装置12に格納されている、乗車階を基準とした降車階の割合(分布)を、当該求めた割合(分布)に更新する。なお、ここでは、乗車階を基準とした降車階の割合(分布)の更新について説明したが、降車階を基準とした乗車階の割合(分布)についても同様に更新してもよい。
【0089】
以上のような本実施の形態に係るエレベーター交通流検出装置10Bによれば、交通流を求めるのに用いられる交通流特徴情報を、過去に求めた交通流に基づいて更新する。したがって、交通流の傾向が変化した場合には、その変化を交通流特徴情報に自動的に反映させることができる。これは、ビルのテナントが入れ替わるなどしてエレベーターの交通流が変わる場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0090】
1 エレベーター制御装置、10,10A,10B エレベーター交流検出装置、11 信号データ解析手段、12 交通流特徴情報記憶装置、13,13A 詳細交通流検出手段、14 交通流情報出力手段、15 乗客追跡データ解析手段、16 交通流特徴情報更新手段、21 大局的状況検出手段、22 大局的補正手段、23 乗客情報検出手段、24 個人別補正手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14