特許第5713737号(P5713737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713737
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ノイズを低減した力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/12 20060101AFI20150416BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20150416BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20150416BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20150416BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   G01P15/12 D
   G01P15/18
   G01P15/08 101C
   H01L29/84 A
   B81B3/00
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-56506(P2011-56506)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2011-191304(P2011-191304A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】1051831
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509248165
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミ−ク エ オ エネルジー アルテルナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100158148
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 淳
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ワルサー
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム ジョルダン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ロベール
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−294218(JP,A)
【文献】 特開平10−160754(JP,A)
【文献】 特許第5615383(JP,B2)
【文献】 特公平7−97644(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の力を検出するマイクロ電気機械又はナノ電気機械検出装置であって、
支持部(4)と、
測定される力の影響下で、前記力の方向に移動可能な振動質量体であって、少なくとも1つの旋回軸リンクにより前記支持部に連結された、少なくとも1つの振動質量体(2、102、302、402、502、602)と、
前記振動質量体の運動を検出する手段(10、110、310、410、510、610)と、
前記旋回軸リンクの軸線(Z)と前記振動質量体に対する力の働きの重心(G)との間の距離を高周波数で変化させることができるアクチュエータとを備え、
前記振動質量体(2、102、302、402、502、602)は、互いに対して移動可能な少なくとも第1部分(2.1、102.1、302.1、402.1、502.1、602.1)と第2部分(2.2、102.2、302.2、402.2、502.2、602.2)とを備え、
前記アクチュエータ(14、414)は、前記振動質量体の前記第1部分(2.1、102.1、302.1、402.1、502.1、602.1)に対して、前記振動質量体の前記第2部分(2.2、102.2、302.2、402.2、502.2、602.2)を、測定される力の方向とは異なる、励振軸と称する方向に移動させることができることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの励振周波数は、数kHz付近であることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ(14)は、前記第1部分(2.1)と前記第2部分(2.2)との間に配置され、前記第2部分に力を働かせることを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ(414)は、前記支持部と前記第2部分(402.2)との間に配置され、前記励振軸方向にのみ移動可能な中間振動質量体(418)を介して、前記第2部分に力を働かせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、静電型、圧電型、又は磁気型のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、容量型、圧電型、磁気型、ピエゾ抵抗型、周波数型、又は他の型のものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の検出装置。
【請求項7】
前記検出手段(10)は、少なくとも1つのピエゾ抵抗ゲージを備え、
前記旋回軸リンクの軸線(Z)の両側に配置された2つのピエゾ抵抗ゲージを備えることが有利であることを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記振動質量体(2)の前記第2部分(2.2)は、前記振動質量体(2)の平面内で移動可能であり、
前記懸架手段(12)は、前記平面内で変形する少なくとも1つのバネにより形成されることを特徴とする請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記振動質量体(102)の前記第2部分(102.2)は、前記振動質量体(102)の平面外で運動し、
前記懸架手段(112)は、前記平面外に変形する少なくとも1つのバネにより構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の検出装置。
【請求項10】
前記第1部分(2.1)はフレームを形成し、このフレームの内部に、前記第2部分(2.2)が懸架されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の検出装置。
【請求項11】
2つの前記振動質量体(502)を備え、
前記振動質量体(502)の各々は、互いに接続され、互いに対して移動可能な第1部分及び第2部分を備え、
前記第1部分どうしは、アーム(530)により剛結合され、
前記アーム(530)上に前記旋回軸リンクが形成され、
前記検出手段(510)は、前記アームの運動を検出し、
前記2つの第2部分は、互いに同相で運動することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の検出装置。
【請求項12】
互いに対して移動可能な少なくとも第1部分及び第2部分を有する振動質量体を備え、
前記旋回軸リンクは、前記第1部分(402.1)上に形成され、
前記アクチュエータ(414)は、前記支持部と前記第2部分(402.2)との間に配置され、前記励振軸の方向にのみ移動可能な中間振動質量体(418)を介して前記第2部分(402.2)に力を働かせ、
前記第1部分及び前記第2部分は、励振が無い状態で、前記旋回軸リンクの軸線(Z)と交差しかつ前記質量体の重心(G)を通る軸線が、検出される力の方向に直交するように、互いに対して配置されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の検出装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの振動質量体(2)は、ビームにより懸架され、
前記旋回軸リンクの軸線(Z)は、前記装置の平面にほぼ直交していることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の検出装置。
【請求項14】
前記ピエゾ抵抗ゲージ(10)と前記振動質量体(2)との機械的接続は、前記重心(G)と前記旋回軸リンクの軸線(Z)とを含む平面上又は該平面に可能な限り近くに配置されることを特徴とする請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
前記振動質量体(102)は、トーションシャフトにより懸架され、
前記トーションシャフトの軸は、前記平面内に含まれる
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の検出装置。
【請求項16】
反作用電極(428)及び/又は共振周波数を調整するための電極(428)を備えたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の検出装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の検出装置により形成される加速度計。
【請求項18】
直流電圧と前記励振周波数の2倍の周波数の交流電圧とが印加されて、直交バイアスを補償する電極を備えたことを特徴とする請求項17に記載の加速度計。
【請求項19】
真空下で実現されることを特徴とする請求項17又は18に記載の加速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズを低減したMEMS又はNEMSセンサに関する。
【0002】
本発明の分野は、とりわけ遠隔的に動作する体積力又は面積力マイクロセンサ/ナノセンサの分野であり、とりわけ慣性マイクロセンサ/ナノセンサの分野であり、さらに具体的には加速度計、磁力センサ、又は静電力センサの分野である。
【背景技術】
【0003】
マイクロ電気機械システム(MEMS: MicroElectroMechanical Systems)又はナノ電気機械システム(NEMS: NanoElectroMechanical Systems)の加速度計は、加速度の影響下で運動する懸架された振動質量体を備える。「ピエゾ抵抗」加速度計は、質量体の運動に感応し、かつ抵抗率を変化させることにより加速度を測定することが可能なピエゾ抵抗ゲージをも備える。
【0004】
米国特許出願公開第2007/0084041号明細書(特許文献1)には、ピエゾ抵抗ゲージを実装した加速度計が記載されている。この加速度計内では、可動質量体が、旋回軸リンクを構成する固定ビームの端に懸架されている。ゲージは、このビームと平行に延び、質量体の運動中に変形する。この構造により、レバーアーム(てこの腕)効果を利用することができる。従って、システムの形状に依存する要因による加速度に起因して懸架質量体に働く力に対して、ピエゾ電気ゲージに働く力が増幅される。
【0005】
ピエゾ抵抗ゲージを有する加速度計は、安価で容易に実現可能であり、単純な処理電子装置しか必要としないという利点を有する。それにも関わらず、これらは低周波数での使用が困難である。実際に、1/fと呼ばれる一種のノイズは、ピエゾ抵抗ゲージ内で低周波数で支配的であり、低周波数で非常にノイズの多い応答と特定用途に不適合なバイアスドリフトとを発生させる。このため、多くの場合、容量性の加速度計が好ましい。
【0006】
上述したノイズは、そのスペクトル密度が周波数に反比例するため、「1/f」と呼ばれる。
【0007】
ピエゾ抵抗ゲージによる検出を行う加速度計内のノイズ源は次のとおりである:
− ブラウンノイズ、
− ジョンソンノイズ
− 1/fノイズ、及び
− 測定電子装置によるノイズ。
【0008】
ピエゾ抵抗加速度計内で支配的なノイズは、1/fノイズである。なぜなら、1/fノイズはゼロ周波数に近いバンド幅にまとまっているからである。
【0009】
1/fノイズは、分解能を制限し得る。1/fノイズは、バイアスドリフトを発生させることもできる。
【0010】
A. Barlian, “Review: Semiconductor Piezoresistance for Microsystems”, Proceedings of the IEEE, vol 97 (3), p 513-552, 2009(非特許文献1)には、加速度計の1/fノイズは、製造方法のパラメータ、例えば不純物添加又はアニール(焼きなまし)温度を調整することにより、低減することが可能である旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0084041号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A. Barlian, “Review: Semiconductor Piezoresistance for Microsystems”, Proceedings of the IEEE, vol 97 (3), p 513-552, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって、本発明の目的の1つは、1/fノイズを低減したMEMS又はNEMSセンサ、例えばピエゾ抵抗加速度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的は、旋回軸リンクの周りで可動な質量体と、該可動質量体部の運動を検出する手段とを備えるセンサにより達成される。該可動質量体は2つの部分からなり、一方の部分は他方の部分と比較して高周波数で運動し、これにより旋回軸リンクの軸線と高周波数で運動する部分の重心との間の距離が高周波数で振動的に変化し、1/fノイズを低減することが可能となる。
【0015】
実際に、周波数に反比例するスペクトル密度を有する1/fノイズは、抵抗の導電率の揺らぎに起因する。このことは、次式のように表される:
【数1】
(V2/Hz)、ここで、Vbは抵抗の印加電圧を示し、αはHoogeの係数と呼ばれる現象論的係数であり、Nは抵抗内の電荷キャリア数である。よって、このノイズは、抵抗の体積が小さくなるほど重大になる。
【0016】
加速度は、一般に100Hz未満の周波数で低速に変化する。可動質量体内に、高周波励振の影響下で運動する部分を作ることにより、低周波信号に加えて、高周波信号を生成することが可能になる。そして、この高周波信号により、1/fノイズを低減することが可能になる。これにより1/fノイズはもはや、センサの分解能を制限するものではあり得ない。
【0017】
言い換えれば、1つの部分が高周波数で励振可能であるような複合可動質量体を用いる。そして、この振動子は、従来の準静的成分と動的成分とにより励振される。
【0018】
よって、本発明に係る力センサは、少なくとも1つの解放質量体を備え、少なくとも1つの解放質量体は、測定される力の方向に自由度を有し、少なくとも1つの旋回軸により固定部に接続されている。解放質量体は、この質量体の他の部分に対して移動可能な少なくとも1つの部分を備える。少なくとも1つの部分は、少なくとも1つの懸架要素により他の部分に接続され、測定される力の方向とは異なる方向の、可動部分の運動を可能とする。センサは、上記可動部分用の高周波励振手段及び上記力の検出手段も備える。
【0019】
可動部分の構造は、測定したい力に依存する。該構造は、加速力の場合は質量体とすることができ、又は磁力の場合は完全に若しくは部分的に磁気材料製の質量体とすることができる。測定したい力に感応する「部材」/材料を、高周波数で運動する部分に配置することが好ましい。該部材/材料は、他の部分に配置することも可能である。
【0020】
質量体の可動部分と少なくとも1つの懸架要素との寸法決めは、可動部分が動くことにより重心の運動を引き起こすようにする。重心の運動により、該可動部分の運動周波数で検出される、測定される力に起因する信号の変調が引き起こされる。この変調は、力の動的成分に相当する。
【0021】
センサは、面内のピエゾ抵抗検出又は面外の検出を行う加速度計であることが有利である。
【0022】
よって、本発明の主題は、所定方向の力を検出するマイクロ電気機械又はナノ電気機械検出装置であって、該マイクロ電気機械又はナノ電気機械検出装置は、支持部と、測定される力の影響下で該力の方向に移動可能な少なくとも1つの振動質量体であって、少なくとも1つの旋回軸リンクにより上記支持部に連結された振動質量体と、該振動質量体の運動を検出する手段と、上記旋回軸リンクの軸線と上記振動質量体に対する力の働きの重心との間の距離を変化させることができる手段又はアクチュエータとを備える。
【0023】
「力の働きの重心」とは、測定したい力に対する、質量体の感応部分の重心を意味する。一般的に、この重心は、質量体の重心に相当するが、特定の場合、特に質量体が不均質である場合、例えば磁力センサの場合、この重心は質量体の重心とは異なり得る。
【0024】
上記距離を変化させる手段は、高周波数でこの距離を変化させることができることが有利である。
【0025】
上記振動質量体は、互いに対して移動可能な少なくとも第1及び第2部分を備えることが好ましい。上記手段は、振動質量体の第1部分に対して、振動質量体の第2部分を、測定される力の方向とは異なる、励振軸と称する方向に移動させることができる励振手段を備える。
【0026】
励振手段の励振周波数は、例えば数kHz付近である。
【0027】
1つの好適例では、励振手段は第1部分と第2部分との間に配置され、第2部分に力をかける。
【0028】
他の好適例では、励振手段は支持部と第2部分との間に配置され、励振軸方向にのみ移動可能な中間振動質量体を介して、第2部分に力をかける。
【0029】
例えば、励振手段は、静電型、圧電型、又は磁気型のものである。検出手段は、容量型、圧電型、磁気型、ピエゾ抵抗型、周波数型などのものである。検出手段は、少なくとも1つのピエゾ抵抗ゲージを備えることができ、旋回軸リンクの軸線の両側に配置された2つのピエゾ抵抗ゲージを備えることが有利である。
【0030】
1つの好適例では、振動質量体の第2部分は、振動質量体の平面内で移動可能であり、懸架手段は、この平面内で変形する少なくとも1つのバネにより形成される。
【0031】
他の好適例では、振動質量体の第2部分は、振動質量体の平面外で運動し、懸架手段は、この平面外で変形する少なくとも1つのバネにより形成される。
【0032】
このバネは、ビーム又は一組のビームにより形成することができる。
【0033】
第1部分は、例えば、内部に第2部分が懸架されるフレームを形成する。
【0034】
検出装置は、2つの振動質量体を備えることができる。2つの振動質量体はそれぞれ、互いに接続され互いに対して移動可能な第1部分及び第2部分を備える。第1部分どうしはアームにより剛結合され、アーム上に旋回軸接続が形成され、検出手段はこのアームの運動を検出し、2つの可動な第2部分は、互いに同相で運動する。
【0035】
他の好適例では、検出装置は、互いに対して移動可能な第1部分及び第2部分を少なくとも有する振動質量体を備えることができる。旋回軸リンクは第1部分上に形成される。励振手段は、支持部と第2部分との間に配置されるとともに、励振軸方向にのみ移動可能な中間振動質量体を介して第2部分に力をかける。これら2つの部分は、励振が無い状態で、旋回軸リンクの軸線と交差しかつ質量体の重心を通る軸線が、検出される力の方向に直交するように、互いに対して配置される。
【0036】
さらに、少なくとも1つの振動質量体は、ビームにより懸架することができる。旋回軸リンクの軸線は、装置の平面にほぼ直交している。
【0037】
ピエゾ抵抗ゲージと振動質量体との機械的接続は、上記重心と旋回軸リンクの軸線とを含む平面上又は該平面に可能な限り近く配置することが有利である。
【0038】
1つの代案好適例では、振動質量体は、トルクシャフトにより懸架される。トルクシャフトの軸はこの平面内に含まれる。
【0039】
旋回軸リンクの軸線がこの平面内に含まれる場合、ピエゾ抵抗検出の場合、ゲージは、この平面に直交する方向に、この軸線に対してオフセットしている。
【0040】
検出装置は、反作用電極及び/又は共振周波数を調整するための電極を備えることができる。
【0041】
本発明の主題は、本発明に係る力測定装置により形成される加速度計でもある。
【0042】
加速度計は、現在技術において知られている種類の直交バイアスを補償する電極を備えることができる。この電極には、直流電圧及び交流電圧が印加される。該交流電圧は、励振周波数の2倍の周波数を有する。
【0043】
加速度計は、真空中で実現可能であることが有利である。
【0044】
ピエゾ抵抗検出又は他の種類の検出モードを用いるこの種のセンサは、環境(例えば車内)からの振動に対してさらにロバスト(頑健)であるという利点をも有する。なぜなら、センサは環境の寄生振動の強度が潜在的に低いような周波数で動作するからである。他の利点は、このセンサは、ジャイロスコープの電子装置と同一の電子装置と共に真空下で動作することができるということである。従って、MEMSジャイロスコープと加速度計との両方を、同じ慣性ユニット内に統合したい場合、本発明の加速度計を用いることにより、ジャイロスコープと同時にこれらを真空「パッケージ化」し、同一の電子装置、例えば、時間多重化の場合、各センサの信号を交互に測定する電子装置と同じ電子装置を用いることが可能になる。
【0045】
本発明は、以下の説明及び次の図面を読むことにより、さらに良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】面内励振、面内検出の場合における、本発明に係る検出装置の実施形態の斜視上面図である。
図1B図1Aの部分詳細図である。
図2A】面外励振、面内検出の場合における、本発明に係る検出装置の他の実施形態の斜視上面図である。
図2B図2Aのセンサの部分詳細図である。
図3】面外検出、面内励振の場合における、本発明に係る検出装置の実施形態の斜視上面図である。
図4図1の検出装置に反作用電極を設けた検出装置の実施形態の斜視上面図である。
図5A】コリオリ力、及び加速度の準静的成分の影響に対してロバストな、本発明に係る検出装置の実施形態の斜視上面図である。
図5B図5Aの検出装置の部分詳細図である。
図6A】コリオリ力、及び加速度の準静的成分の影響に対してロバストな、本発明に係る検出装置の実施形態の斜視上面図である。
図6B図6Aの検出装置の部分詳細図である。
図7】現在技術の加速度計の上面図である。
図8A】本発明に係る検出装置を製造する方法の例の概略図である。
図8B】本発明に係る検出装置の製造方法の例の概略図である。
図8C】本発明に係る検出装置の製造方法の例の概略図である。
図8D】本発明に係る検出装置の製造方法の例の概略図である。
図8E】本発明に係る検出装置の製造方法の例の概略図である。
図8F】本発明に係る検出装置の製造方法の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の説明において、例として説明する検出装置は、例えば加速度計であるが、これに限定されるものではない。本発明に係る検出装置は、例えば磁力など、他の大きさを測定することを可能にする。
【0048】
図1Aは、平面内の加速度計A1の実施形態を示す図である。加速度計A1の感度軸は、Yで示し、すなわち測定される加速度の方向であり、
で示す矢印により記号化されている。方向Xは、後に説明する励振方向を示す。この図示する例では、方向XとYは直交し、検出装置の検出面を規定する。
【0049】
加速度計A1は、アーム6により支持部4から懸架される質量体2を備え、その重心をGで示す。
【0050】
アーム6は、ヒンジ8を介して支持部4に接続され、平面XYに対して直交する軸Zを有する旋回接続を形成する。
【0051】
質量体2は、加速により動き出し、旋回軸Zの周りを方向Yに移動するように構成されている。
【0052】
この図示する例では、ヒンジは2つのビーム8.1及び8.2によって形成される。ビーム8.1及び8.2は、平面内でフレキシブルであり、一端が支持部4上で2つの離れた箇所で固定され、他端がアーム6上に共通点で固定され、アーム6の共通取り付け点で旋回軸Zを規定する。この構成は、質量体2の、軸Zの周りの純粋又は事実上純粋な回転を得ることができるという、有利な効果を有する。
【0053】
検出装置は、質量体2の運動を検出する手段10をも備える。この図示する例では、検出手段10は、一端がアーム6に機械的に接続され、他端が支持部4に機械的に接続されたピエゾ抵抗ゲージにより形成される。
【0054】
この図示する例では、ピエゾ抵抗ゲージ10は、測定される加速度の方向Yと平行である。他の構成は、このゲージを軸Xと平行に設けることが可能である。
【0055】
加速度計A1は、横方向の運動、すなわち方向Yに直交する方向の運動に対する感度はあまり高くない。なぜなら、横方向の運動は、ゲージ10に対して曲げ応力を加え、ゲージ10は曲げ応力に対する感度があまり高くないからである。
【0056】
さらに、加速度計は、温度に対する感度もあまり高くない。なぜなら、アームが膨張する場合も、アームはゲージ10に対して曲げ応力を加え、ゲージ10は曲げ応力に対する感度があまり高くないからである。
【0057】
ゲージが旋回軸Zと振動質量体2の重心Gとを通る軸上でアームに接続されるように、アームは横方向の凹部11を備えることが特に有利である。この構成は、振動質量体2の運動により加えられる応力の強度の全部又はほとんど全部が、歪みゲージ10のY軸方向の変形に寄与するという利点を有する。実際に、第1の実施形態の場合のように、ゲージ10を、旋回接続及び重心Gを通る軸に対してオフセットして固定する場合、変形応力の一部分は、曲げ応力を圧縮応力又は引張り応力と組み合わせてゲージに与える。しかしながら、この曲げ応力は、ピエゾ抵抗ゲージ10の電気抵抗の振動変化にほとんど又は全く関与しない。
【0058】
可動質量体2は、互いに対して可動な第1部分2.1及び第2部分2.2を備える。
【0059】
この図示する例では、第1部分2.1はアーム6が固定されるフレームを構成し、第2部分2.2はフレーム2.1の内部に配置される。第2部分2.2は、弾性懸架手段12を介して、フレーム2.1から懸架される。弾性懸架手段12は、第2部分2.2が方向Xに移動可能であるように方向Xに変形し、第2部分2.2をフレーム2.1の中心に位置するアイドル位置に戻すことが可能である。
【0060】
この図示する例では、第2部分2.2の重心は、質量体2の重心と合っている。簡単のため、第2部分の重心もGで示す。しかしながら、本発明は、質量体の重心と可動部分の重心とが合わないような、あらゆるシステムに適用することができる。
【0061】
この図示する例では、弾性手段は、可動部分2.2の4角に配置された4つのバネによって形成され、可動質量体2を形成する平板内に直接形成される。
【0062】
加速度計A1は、フレーム2.1に対して第2部分2.2を方向Xに動かす手段14も備える。以下の説明では、これらの手段14は「励振手段」と称し、第2部分2.2は「可動部分2.2」と称す。よって、可動部分2.2とフレーム2.1との間に、特に可動部分2.2のX軸方向の両端とフレーム2.1に対向する面との間に、遊びを設ける。
【0063】
励振手段14は、高周波数(すなわちセンサのバンド幅より大幅に高い周波数であり、このバンド幅は測定したい信号の最大周波数である)、例えば2、3kHz付近で、可動部分2.2を動かす。
【0064】
この図示する例では、励振手段14は、静電型のものである。可動部分2.2は、方向Xの各端に突出フィンガー14.1を備え、突出フィンガー14.1は、14の固定部分とは反対側の面内に形成されたフィンガー14.2と嵌合する。可動部分と励振手段14との間に電圧を印加することにより、可動部分2.2がフレーム2.1に対してX軸方向に移動する。この実施形態では、フレーム2.1は、X方向に移動せず、実際にはヒンジにより保持される。例えば圧電励振手段、磁気励振手段など、他のあらゆる適合した励振手段を実現することができる。
【0065】
フレーム2.1内での可動部分2.2の運動は、この可動部分の重心位置の変化を引き起こす。この重心は、図示する例では、質量体の重心Gと合っている。
【0066】
加速度計A1は、電子的手段(図示せず)も備える。電子的手段は、励振手段14を制御する一方で、ピエゾ抵抗ゲージの抵抗変化を処理し、これらの抵抗変化を加速度値に変換する。さらに、ゲージに直流電圧又は交流電圧を印加し、ゲージ内を巡回する電流の変化を測定し、この電流変化の測定値を処理する手段(図示せず)が、加速度計A1に関連する。ゲージは、出力電圧がゲージの相対抵抗変化に比例するホイートストン・ブリッジの中に組み込むことができる。
【0067】
ここで、加速度計の動作について説明する。
【0068】
加速度計は、加速度を測定したい物体、例えば自動車に固定する。加速度計は、そのY軸が、測定される加速度
の方向と平行となるように配向される。
【0069】
物体が加速度
で加速しているとき、加速度計もこの加速度
を観測し、その結果可動質量体2を方向Yに動かす。すなわち、質量体は旋回軸Zの周りに振動する。
【0070】
現在技術の加速度計では、加速度によってピエゾ抵抗ゲージに働く力は次式のように書ける:
【数2】
ここで、
F: ピエゾ抵抗ゲージ10に働く力;
m: 可動質量体2の質量、
a: 加速度、
Lg: Gで示す可動部分の重心と旋回軸Zとの間の距離、
d: 旋回軸Zとアーム6上のピエゾ抵抗ゲージの固定点との間の距離。
【0071】
第2部分2.2の重心位置がX軸方向に変化することにより、距離Lgも測定中に変化する。よって、距離Lgは、重心Gと静止した旋回軸Zとの間の距離に相当する静的成分L0と、可動部分2.2の運動の振幅を表すxで示す動的成分とを有する。
【0072】
よって、振動質量体は、2つの振動子と同等である:第1の振動子は、励振中であると称し、X方向に動くとともにバネ12により保持される可動部分2.2から成り、第2の振動子は、検出中であると称し、Y方向に動くとともに、軸8及びゲージ10により形成されるバネにより保持される可動質量体2部分2.1から成る。
【0073】
よって、検出方向Yの振動子は、L0に比例する準静的成分と、xに比例し、検出中に振動の伝達関数により増幅される高周波成分とによって励振される。
【0074】
ゲージには、準静的な力
【数3】
と、Ffexcで示す動的な力とが働く。Ffexcは、次式のように書くことができる:
【数4】
ここで、m2.2は可動質量体2.2の質量であり、fexcは励振中の振動子の運動の周波数であり、この振動子はその共振周波数で励振されていることが好ましく、fdetは検出中の振動子の共振周波数であり、Qdetは検出中の振動子の振動Q値である。
【0075】
よって、力Ffexcは、電子的手段に対して高周波信号を形成し、これにより加速度計の1/fノイズの低減が可能になる。
【0076】
実際には、周波数に反比例するスペクトル密度を有する1/fノイズは、抵抗の導電率揺らぎに起因する。1/fノイズは、以下のように表される:
【数5】
(V2/Hz)、ここで:
Vb: 抵抗の印加電圧、
α: Hoogeの係数と呼ばれる現象論的係数、
N: 抵抗内の電荷キャリア数。
【0077】
可動質量体2内に可動部分2.2を実現することにより得られる高周波信号により、1/fノイズの影響が低減される。
【0078】
準静的信号を用いる現在技術の加速度計の場合、ノイズは、低周波数の周波数範囲上で次式のように積分される:
【数6】
ここで、f0は1 Hzを大幅に下回る最小周波数であり、BPはセンサのバンド幅(測定したい加速度の最大周波数)である。
【0079】
本発明に係る加速度計の場合、信号は、周波数fexcと周波数fexc+BPとの間の高周波数で次式のように積分される:
【数7】
【0080】
よって、明らかに次の関係式が得られる。
【数8】
【0081】
図2A及び2Bは、面内加速度計A2の他の実施形態を示す。
【0082】
この実施形態では、可動質量体は、X方向に整列した2つのトーション(ねじり)アーム106を用いて懸架れている。よって2つのトーションアーム106は、感度軸であるY軸に対して垂直である。
【0083】
さらに、可動部分102.2は、方向Z、即ち面外に移動可能であり、かつ方向Xには移動可能でない。そのために、弾性懸架手段112は、面外運動を可能にし、アイドル位置に向けて可動部分102.2に復元力が働くように、図1Aの例の弾性懸架手段12から改変されている。弾性懸架手段112は、例えば4つのビームで形成される。各ビームは、一端がフレーム102.1の内面と接続され、他端が可動部分102.2と接続され、屈曲して機能する。この図示する例では、フレーム102.1及び可動部分102.2は単一部品であり、ビームは可動部分102.2内にエッチングされている。可動部分102.2内では、各ビームは直に隣接するビームに直交する。
【0084】
図2Aに示すように、ピエゾ抵抗ゲージ110は、Y方向の加速力の存在下で可動質量体102が動かされてビーム106のねじれが発生するときに、効果的に変形するように、一端が固定部に取り付けられ、他端がピエゾ抵抗ゲージ110の軸に直交するトーションアーム106に取り付けられ、かつトーションアーム106のねじれ軸を含まない平面内にある。各ねじれアーム106の2つの反対側の面上には、2つのゲージ110が固定され、両者は可動質量体102.2の回転により変形される。
【0085】
2つのゲージ110は、差動的に装着することが有利であり、これにより温度変化の影響をなくすことが可能となることが有利である。
【0086】
2つのゲージを差動的に装着することは、全ての実施形態で実行することができる。
【0087】
図1Aの例に関しては、フレーム102.1に対して、可動部分102.2をZ軸方向に励振する手段(図示せず)を設ける。
【0088】
可動質量体102の可動部分102.2がアイドル状態にあるとき、可動部分102.2の重心、ゆえに図示する例における可動質量体102の重心は、ねじり軸上にあるため、アーム106をねじり変形させない。可動部分102.2が励振手段によってZ軸方向に動かされると、重心Gは図2Aの例示で上向き又は下向きにオフセットする。加速度により発生する力は、トーションアーム106のねじれを発生させ、ゆえにゲージ内に歪みを発生させる。
【0089】
その結果、ゲージ110に準静的信号及び高周波数の動的信号が生じる。これにより1/fノイズの影響を低減することが可能になる。この影響を十分に低減することにより、1/fノイズはもはや加速度の分解能を制限し得なくなる。
【0090】
図3は、Z軸加速度の測定を可能にする面外加速度計A3の実施形態を示している。よって、加速度計A3の感度軸は、可動質量体302の平面に垂交するZ軸である。
【0091】
加速度計A3の構造は、加速度計A1の構成に非常に近く、可動質量体がY軸ヒンジ306を介して支持部から懸架されている点で後者と異なる。
【0092】
ゲージ310が設けられ、質量体302へのゲージ310の固定位置は、ヒンジ306により形成される旋回軸Yに対してZ方向にオフセットしている。
【0093】
可動部分302.2は、平面内で励振される。
【0094】
この動作は、加速度計A1の動作と似ており、繰り返し説明しない。
【0095】
図4は、加速度計A4の他の実施形態を示す。
【0096】
加速度計A4は、面内加速度計であり、その構造は加速度計A1の構成に近い。加速度計A4は、可動部分の励振手段414がもはや質量体402.2を直接的に動かさないが、中間振動質量体と称する部分418を動かす点で、加速度計A1と異なる。部分418は、質量体402.2から分離され、励振方向Xにのみに移動可能である。このX方向の励振運動は、ビーム420を介して質量体402.2に伝達される。これにより、励振と検出とを、機械的に分離することが可能となる。よって、励振手段414はもはや、検出方向のフレーム420の運動を妨げる恐れがなくなる。
【0097】
このために、励振手段414は、2つの嵌合くし状部416、418を備える。一方のくし状部416は支持部に固定され、他方のくし状部418は可動部分402.2に固定され、軸Xを有する接続アーム420により可動部分402.2に接続される。フレーム402.1は、接続アーム420を通過させるための開口部422を備える。
【0098】
可動部分402.2は、手段412によりフレーム402.1内で懸架される。
【0099】
さらに、中間振動質量体418と支持部との間には、例えば、一端が支持部のパッド427に固定され、他端が中間振動質量体418の側面に固定された、2つのビーム426により形成される、復元手段424が設けられる。復元手段424は、励振方向Xに変形可能であり、他の方向には剛性であるという特性を有する。
【0100】
励振振動子及び検出振動子の共振周波数fexc及びfdetは、加速度計の感度を最大化するように指定可能であることが有利である。この場合、ゲージ10に働く高周波数の力は、次式のように書かれる:
【数9】
【0101】
この図示する例では、加速度計A4は、X軸に対して可動質量体の両側に配置された、電極428をも備える。電極428は、反作用電極又はトリミング電極とすることができる。
【0102】
トリミング電極の場合、電極428は、検出振動子の固有周波数を低下させる負剛性を導入することを可能にする。よって、導入される剛性は、該電極に印加される静的な電圧の2乗に比例する。
【0103】
電極428が反作用電極である場合には、この構造は検出中に利用することができる。交流電圧を印加することにより、質量体402に働く加速力と反対の値を有する、いわゆる反作用力が発生する。よって、質量体402は、その均衡位置に制御される。センサの制御された動作により、測定の直線性を向上することが可能になり、もはやセンサの線形領域が測定手段の直線性に依存しなくなるが、反作用電極により発生させ得る最大力には依存する。この最大力は、電極に印加し得る最大電圧と電極の寸法とに依存する。
【0104】
図5A及び5Bは、加速度計A5の他の例を示す。加速度計A5は、コリオリ力と加速度の準静的成分とにあまり影響を受けない。
【0105】
加速度計A5は、2つの可動質量502を備える。この図示する例では、加速度計A5は、加速度計A4の構造に近い2つの構造体により形成される。2つの質量体502は、互いに剛結合されている。
【0106】
この図示する例では、フレーム502.1どうしが、特に図5Bに明示する軸Zを有するヒンジが形成された接続アームによって接続される。加速度計は、軸Zの両側に、一端が接続軸530に固定されたピエゾ抵抗ゲージ510も備える。
【0107】
図示するように、旋回軸Zは、構造体の重心G付近に位置する。結果として、加速度計A5は、静止時に平衡状態にある構造を有する。これにより、加速度の準静的成分にあまり敏感でなくなる。さらに、2つの励振振動子は同相で作動し、センサが回転される場合は、各質量体に生じるコリオリ力
【数10】
は、互いに相殺し合う。この構造は、加速度の準静的成分をなくし、ゆえに電子処理手段を簡略化することを可能にすることが有利である。実際には、加速度計A1〜A4の場合、ゲージ、さらに一般的には検出手段には、加速度による力の準静的寄与分による準静的な力が常に働く。この寄与分は、本発明により得られる高周波信号とは異なる周波数である。完全に線形ではない検出手段による応答の場合、高周波応答は、低周波数でゲージにかかる歪みによる影響を受け、測定の信頼性を低下させ得る。加速度計A5の均衡のとれた構成により、この影響は排除される。
【0108】
単一の可動励振部分と単一の検出質量体とを備えた、均衡のとれた加速度計構造の製造を提供することができる。
【0109】
直交性バイアスを補償するための、例えば上記で引用した電極のような反作用システムを提供することができる。これらは当業者に知られており、詳細には説明しない。なお、本発明に係る検出装置では、励振周波数の2倍の周波数を有する直流電圧及び交流電圧の印加により直交性の補償を行う。一方、現在技術のジャイロスコープの場合は、直流電圧のみを印加することにより直交性の補償を行う。
【0110】
図6A及び6Bは、加速度計A6の他の実施形態を示す。加速度計A6も、均衡のとれた構造を提供するものである。よって、コリオリ力と加速度の準静的成分の影響とに対して、一定のロバスト性を有する。
【0111】
加速度計A6は、略直方体の形状を有する可動質量体602を備える。質量体602は、軸Zを有するヒンジ608を介して支持部にヒンジで取り付けられた第1部分602.1、可動部分602.2、及び中間振動質量体を形成する中間部分602.3からなる。
【0112】
中間部分602.3は、U字型であり、U字の2つの分岐にてバネ612により懸架されており、可動部分602.2の3つの側部を包囲している。
【0113】
部分602.1は、ヒンジ608の周りを回転運動することしかできない。部分602.3は、中間質量体418と同等の方法で、励振中にX方向のみに移動する。部分602.3は、第2部分602.2を駆動して共に動く。第2部分602.2は、励振方向(X方向)及び検出方向(Zの周りの回転)に共に移動する。
【0114】
可動部分602.2と第1部分602.1との間の接続部と、中間部分602.3と可動部分602.2との間の接続部は、ビームにより形成される。ビームは、例えば可動的部に直接エッチングする。
【0115】
ピエゾ抵抗ゲージ610は、図6Bに示すようにヒンジの両側に固定される。
【0116】
方向Xに可動部分を励振する手段(図示せず)も設ける。
【0117】
加速度計A6は、例えば構造体A5より小型である。
【0118】
コリオリ力と加速度の準静的成分の影響とに対するロバスト性以外に関して、この構造により、質量体と旋回軸との間のレバーアームの削減によるブラウンノイズの最小化が可能になる。
【0119】
例として、現在技術の加速度計と本発明に係る加速度計とで、ノイズ及び性能を比較する。
【0120】
現在技術の加速度計は、例えば、図7に示すものであり、フレキシブルなビーム704により懸架されたモノリシックの可動質量体702と、ビーム704に対して作用する質量体の励振手段と、ピエゾ抵抗検出手段706とを備える。
【0121】
感応性の質量体は、次の寸法を有する:300μm × 200μm × 10μm。次の仮説も立てる:
− バンド幅: 10Hz、
− Hoogeの係数: α=10-6
− 不純物添加: 1019 不純物/cm-3
− Vb = 3V、
− ゲージの最大歪み(フルスケールを規定する): 100MPa.
− 共振周波数: 5 kHz、及び
− 共振加速度計のQ値: 50,000。
【0122】
【表1】
【0123】
1/fノイズには顕著な減少が見られるが、このことはもはや周波数を指定した本発明に係る加速度計の場合に特別なことではなく、分解能は4分の1となっている。次に、ブラウンノイズが支配的になる。周波数を指定していない本発明に係る加速度計の場合、分解能は現在技術の加速度計と事実上同一である。しかしながら、フルスケール上で係数20の増幅率が得られた。
【0124】
ブラウンノイズを減少させるためには、上に示すように、例えばレバーアームを削減することが可能である。
【0125】
センサとしては、検出手段にとって1/fノイズが支配的なノイズでないときでも、ピエゾ抵抗ゲージの他に、例えば容量性手段、圧電手段、磁気的手段などの検出手段を用いることができる。
【0126】
加速度計、さらに一般的には力センサは、真空下で実現することが好ましい。
【0127】
1つ以上の加速度計は、1つ以上のジャイロスコープ、特に、運動を再構成するため、真空下での動作を必要とするジャイロスコープに関連付けられることが有利である。さらに、加速度計に関連する電子手段とジャイロスコープに関連する電子手段とは、比較的似ている。よって、1つ以上のジャイロスコープと1つ以上の加速度計とを交互に制御する同一の電子手段を用いることも考えられる。
【0128】
可動質量体の2つの部分、支持部上にある、質量体の可動部分の懸架手段、ピエゾ抵抗ゲージ型の検出手段は、層の堆積及びエッチングにより、単一部品で作られることが有利である。
【0129】
ここで、このような加速度計を製造する方法を説明する。該方法の様々なステップを、概略的に図8A〜8Fに示す。
【0130】
例えば、基板802、埋め込み酸化物層(BOX: Buried Oxide Layer)804、及びシリコン層806を備えるシリコン・オン・インシュレータ(SOI: Silicon On Insulator)構造を用いる。シリコン層806は、例えば200nmに近い厚さを有する。一般的に、層806は、Si、SiGe、多結晶Ge、又は単結晶Ge製とすることができる。
【0131】
次に、シリコン層806の構造化を、例えばフォトリソグラフィーと酸化物層804で停止するエッチングとにより行う。これにより、図8Aに示すピエゾ抵抗ゲージを規定することが可能となる。
【0132】
図8Bで示す次の工程中に、酸化物層810をシリコン層806上に堆積させ、以前にエッチングしたゾーン808に充填する。次に、酸化物層810のエッチングを行い、シリコン層806上に堆積した酸化物の一部分のみを残し、トレンチ内に充填された酸化物どうしを結び付ける。エッチングは、Siで停止するドライエッチング、又は、例えば硫酸ベースの溶液を用いたウェットエッチングにより行うことができる。
【0133】
図8Cに示す次の工程中に、シリコン層812の堆積物を形成する。層812は、例えばエピタキシャル成長により得られ、代表的な厚さ1〜50μm、例えば10μmを有する。さらに一般的には、層812は、Si、SiGe、多結晶Ge、単結晶Ge、又は金属材料製とすることができる。堆積は、エピタキシー、又は物理蒸着/化学蒸着(PVD/CVD: Physical Vapor Deposition / Chemical Vapor Deposition)型の方法により行うことができる。
【0134】
図8Dに示す次の工程中に、電気接点814を形成する。そのために、金属層(例えばAlSi又はAu)を堆積させ、フォトリソグラフィーにより除去するゾーンと残すゾーンとを特定する。次に、Siで停止するドライエッチング、又はSiに対する選択的ウェットエッチングを行って金属層をエッチングし、接点814のみを残す。
【0135】
図8Eに示す次の工程中に、例えばフォトリソグラフィー及び酸化物層804上で停止するディープエッチングにより、シリコン層806及び812を構造化して、可動質量体及び旋回軸を規定する。
【0136】
図8Fに示す次の工程中に、例えば液体フッ化水素酸(HF: Hydrofluoric acid)及び/又は蒸気を用いた酸化物804のウェットエッチングにより、可動質量体、ゲージ、及び旋回軸を解放する。このことは、エッチングする時間を要する。酸化物層を基板と固定部分との間に残しながら、可動質量体、ゲージ、及び旋回軸を解放するのに必要な時間だけ、フッ化水素酸を酸化物層と接触させたままにする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F