(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩又はエステルと(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステルの質量比率が、(A)と(B)の合計100質量%基準で、(A)が60〜95質量%、(B)が40〜5質量%であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記脂肪族モノカルボン酸の金属塩又は脂肪族ジカルボン酸の金属塩が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、機械的性質、電気的性質、軽量性、成形加工性等の優れた特性により、電気・電子機器、OA機器、車輌用部品、建築用部材、農業用資材、雑貨等の広範な分野で使用されている。熱可塑性樹脂は、生産性の高い溶融成形加工(押出成形や射出成形等)に適用でき、各種の成形体に成形され、利用されている。
【0003】
そして、近年、OA機器、電気・電子機器等の形状の多様化や複雑化、精密化及び高度化に伴い、それらの部品やハウジング(筐体)等においては、形状が高度に複雑化しており、成形体を金型から脱型することが困難となる場合があり、さらに、脱型ができず、成形体に穴があいたり、脱型できても、成形体に変形を生じたり、白化や歪みが残留して、成形体の寸法精度、強度、外観が低下する等の問題がある。
また、成形時における成形体の離型性の良し悪しが、成形体の生産性に大きな影響を及ぼすこととなり、離型性向上の要求は非常に高いものがある。
【0004】
熱可塑性樹脂の成形時の離型性を改善するためには、離型剤(滑剤)を配合するのが一般的であり、従来より、脂肪族カルボン酸の金属塩等の各種の離型剤が知られている。しかしながら、従来の通常のモノカルボン酸塩で十分な離型性を発揮させようとすると、発生ガス量が多くなり、また、押出の際にはストランドの安定性に悪影響を及ぼし、また、成形体の外観が悪化するという問題がある。
【0005】
特許文献1には、ポリアミド樹脂に、炭素数10〜20の脂肪族カルボン酸の塩および炭素数22以上の脂肪族カルボン酸またはその誘導体(具体的には2価のアルコールとのエステル)を配合することが提案されているが、複雑な形状の成形体においては充分でないことがあり、成形体形状設計の制約や冷却時間を長くする等の成形条件での対応が必要となる場合があり、また、離型性と発生ガスの両方を十分満足できるとはいい難い。
このように、特に複雑な射出成形体においても、外観不良、剥離不良、物性低下等の問題を引き起こさず、少量添加で、離型性とガス発生の両方をバランスよく満足し、良好な外観性状の成形体を提供できるものは、未だ提案されていないというのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態および例示物を示して詳細に説明するが、本発明は当該実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明は、
ポリアミド樹脂100質量部に対し、(A)炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩又はエステル、及び(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステルを(A)と(B)の合計で0.1〜5質量部含有することを特徴とする。
【0013】
[熱可塑性樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂ポリアリレート、液晶性ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル樹脂;
ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;
【0014】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン樹脂、環状オレフィン共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;
ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリオキシメチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、各種エラストマー等が挙げられる。
また、これらは単独使用だけでなく、ポリマーブレンドや共重合したものを使用しても良い。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、これらの中でも、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、特にはポリアミド樹脂が好ましい。
【0016】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミドMP6/6T、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6T等が挙げられ、各種のポリアミド樹脂を使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂として、特に好ましいポリアミド樹脂は、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の縮合原料であるキシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンを単独またはこれらを混合して用いてもよく、メタキシリレンジアミン50〜100モル%とパラキシリレンジアミン50〜0モル%の範囲で用いるのが好ましい。パラキシリレンジアミンが50モル%を越えると得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点が高くなりすぎ、成形時の加熱による熱劣化を引き起こしやすく、成形が困難になりやすい。
【0018】
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを混合して使用する場合は、好ましくは、パラキシリレンジアミンを10〜50モル%、メタキシリレンジアミンを90〜50モル%の割合で、より好ましくはパラキシリレンジアミンを15〜45モル%、メタキシリレンジアミンを85〜55モル%の割合で使用する。最も好ましくは、パラキシリレンジアミンを20〜40モル%、メタキシリレンジアミンを80〜60モル%の割合で使用する。パラキシリレンジアミンの量が、10モル%未満では十分な融点の向上が見られにくい場合があり、50モル%を越えると融点が高くなりすぎ、重合時および成形時に熱劣化等の不都合を生じるおそれがあるので好ましくない。混合ジアミンにおけるジアミンとしては、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミン以外に、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよび脂環族ジアミン等の他のジアミンを混合して使用してもよく、他のジアミンの使用割合は、好ましくは全ジアミンの10モル%以下であり、より好ましくは全ジアミンの5モル%以下である。脂肪族ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、脂環族ジアミンとしては、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0019】
もう一方の縮合原料であるα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸としては、好ましくは炭素原子数6〜12の脂肪族二塩基酸であり、具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられ、このうち特に好ましいのは、アジピン酸である。また、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸以外に少量の芳香族二塩基酸を使用することもでき、芳香族二塩基酸としては、1,5−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、芳香族二塩基酸を使用する場合の使用量は、好ましくは、全二塩基酸の10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下である。
【0020】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、最も好ましくは1.8〜2.8である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下し、また表面外観が低下しやすい。
なお、本発明における相対粘度とは、96%硫酸中、濃度1g/100ml、温度25℃の条件で測定される値である。
【0021】
[(A)炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩又はエステル]
炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸としては、飽和または不飽和の、直鎖または分岐の、いずれの脂肪族モノカルボン酸でもよく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等を挙げることができる。
前記脂肪族モノカルボン酸の中で、炭素数が16〜32の飽和脂肪族モノカルボン酸であり、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等を好ましく挙げることができる。
【0022】
脂肪族モノカルボン酸の金属塩としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が好ましく挙げられ、また、アルカリ土類金属塩としては、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩が好ましく挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、ナトリウム塩、カルシウム塩である。
【0023】
一方、脂肪族モノカルボン酸のエステルとしては、アルコールとのエステルが好ましく、アルコールとしては、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられ、これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0024】
このようなアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールオクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0025】
炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩もしくはエステル(A)として、より好ましい化合物の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸ナトリウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸ナトリウム、リグノセリン酸エチル、セロチン酸カルシウム、セロチン酸ナトリウム、セロチン酸エチル、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸エチル、メリシン酸カルシウム、メリシン酸ナトリウム、メリシン酸エチル等が挙げられる。
【0026】
[(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステル]
炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸としては、飽和または不飽和の、直鎖または分岐の、いずれの脂肪族ジカルボン酸でもよく、例えば、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘキサデセン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、オクタデカジエン二酸、オクタデカントリエン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、エイコサジエン二酸、エイコサトリエン二酸、エイコサテトラエン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、トリアコンタンサン二酸等を挙げることができる。
前記脂肪族ジカルボン酸の中で、炭素数が16〜32の飽和脂肪族ジカルボン酸であり、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、トリアコンタン二酸等を好ましく挙げることができる。
【0027】
脂肪族ジカルボン酸の金属塩としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が好ましく挙げられ、また、アルカリ土類金属塩としては、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩が好ましく挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、ナトリウム塩、カルシウム塩である。
脂肪族ジカルボン酸の金属塩は、両方のカルボン酸が金属塩になっていてもよく、また片方のみが金属塩となっていてもよい。
【0028】
一方、脂肪族ジカルボン酸のエステルとしては、アルコールとのエステルが好ましく、アルコールとしては、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられ、これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0029】
このようなアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールオクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0030】
(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステルとして、より好ましい化合物の具体例としては、オクタデカン二酸カルシウム、オクタデカン二酸ナトリウム、ノナデカン二酸カルシウム、ノナデカン二酸ナトリウム、エイコサン二酸カルシウム、エイコサン二酸ナトリウム、ドコサン二酸カルシウム、ドコサン二酸ナトリウム、テトラコサン二酸カルシウム、テトラコサン二酸ナトリウム、ヘキサコサン二酸カルシウム、ヘキサコサン二酸ナトリウム、オクタコサン二酸カルシウム、オクタコサン二酸ナトリウム、トリアコンタン二酸カルシウム、トリアコンタン二酸ジナトリウム等が挙げられる。なお、この例示におけるナトリウム塩は、ジナトリウム塩、モノナトリウム塩またこれらの混合物を意味する。
【0031】
上記(A)炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩又はエステル、及び(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステルの含有量は、両者の合計で、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲である。含有量が0.1質量部未満で離型性向上効果が充分に発揮されず、金型からの離型性の不良等で成型加工性が低下する。また、5質量部を超えると成形時のガス発生量が多くなり、樹脂組成物の外観に悪影響を及ぼす。さらに金属塩またはエステル化合物の可塑化効果により物性に影響を及ぼす場合もある。好ましい含有量は0.15〜4質量部、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0032】
また、(A)炭素数が12以上の脂肪族モノカルボン酸の金属塩またはエステルと(B)炭素数が12以上の脂肪族ジカルボン酸の金属塩またはエステルは、その質量比率が、(A)と(B)の合計100質量%基準で、(A)が60〜95質量%、(B)が40〜5質量%であることが好ましい。
【0033】
[その他成分]
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、強度と剛性、寸法安定性を向上させる目的で、無機充填材を含有することも好ましい。
無機充填材の形状は、繊維状、針状、板状、粒状または不定形状など任意である。無機充填材の具体例としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー;炭素繊維、炭素短繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛などの炭素系フィラー;チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー;タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイトなどの珪酸塩化合物;シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中では良好な表面意匠性を得る目的で、タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ガラス繊維が好ましく、タルク、マイカ、ガラス繊維がより好ましい。
また、無機充填材は、2種以上を併用してもよい。
【0034】
無機充填材の含有量は、好ましくは、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜250質量部である。無機充填材の効果を発現させるためには、少なくとも1質量部は含有させるべきである。無機充填材の含有量が1質量部未満の場合は補強効果が十分でない場合がある。また250質量部を超える場合は、表面外観や耐衝撃性が劣り、流動性が十分でない場合がある。無機充填材のより好ましい含有量は10〜200質量部、特には30〜180質量部である。
【0035】
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂組成物を使用する場合において、無機充填材が、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状である場合、その平均繊維径は、1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましく、5〜20μmが特に好ましい。このような繊維径のものを採用することにより、機械的特性をより優れたものとすることができる。また、平均繊維長は、特に制限されないが、0.01〜20mmが好ましく、0.03〜10mmがより好ましく、0.05〜6mmがさらに好ましい。平均繊維長が0.01mm未満では、繊維状無機充填材による補強効果が不十分な場合があり、平均繊維長が20mmを超えると、特にキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を使用した場合、溶融混練や強化ポリアミド樹脂組成物の成形が困難になる場合がある。
【0036】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂脂組成物は、必要に応じて、他の成分、例えば、樹脂添加剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0037】
[組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、本発明に係る熱可塑性樹脂、(A)脂肪族モノカルボン酸の金属塩(又はエステル)、及び(B)脂肪族ジカルボン酸の金属塩(又はエステル)、そして、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
【0038】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0039】
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体(樹脂組成物成形体)として用いる。この成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の例を挙げると、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品へ用いて好適である。
【0040】
前記の電気電子機器としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。
【0041】
成形体の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例および比較例において用いた原料成分は次のとおりである。
【0043】
(1)ポリアミド樹脂
・ポリメタキシリレンジアジパミド (以下、「MXD6」という。)
三菱瓦斯化学社製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14(98%硫酸中、濃度1重量%、測定温度25℃)
・ポリアミド66 (以下、「PA66」という。)
東レ社製、商品名「アミラン CM3001N」
相対粘度2.95(上記と同様の方法で測定)
【0044】
(2)無機充填材
・ガラス繊維 (以下、「GF」という。)
日本電気硝子製、商品名「CS03T−296GH」
平均繊維径9.5μm、繊維長3mm、表面処理あり
・タルク (以下、「タルク」という。)
林化成社製、商品名「ミクロンホワイト#5000S」
【0045】
(3)脂肪族モノカルボン酸金属塩又はエステル(A)および脂肪族ジカルボン酸金属塩又はエステル(B)
後記表1及び表2に記載のものを使用した。
【0046】
(実施例1〜11および比較例1〜4)
<樹脂組成物の調製>
上記原料成分を使用し、表1又は表2に示す割合で含有するポリアミド樹脂組成物を以下のように調製した。
すなわち、表1又は表2に示すGF以外の各成分を同表に示す割合にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(東芝機械社製「TEM26SS」)のホッパに投入し、GFはサイドからフィードし、温度280℃で溶融混練した。溶融樹脂組成物のストランドを、水槽にて冷却し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
上記で得られた各ペレットを使用し、以下の方法により、離型性と発生ガス量の評価を行った。
【0047】
(1)離型性の評価
以下の離型評価型による試験を行った。
上記で得られた各ペレットを、住友重機械工業製「SE50D」射出成形機を使用して、シリンダー温度295℃にて、外寸が52×32×16mmで厚みが1.5mmの箱型の評価用金型を用い、金型温度130℃、充填時間0.3秒、保圧50MPa/7秒、冷却時間は10秒で成形し、その際エジェクターピンに感圧センサーを取り付け、突き出し圧力を測定し、以下の基準で評価を行った。
×:8MPa以上 △:5〜8MPa ○:3〜5MPa ◎:3MPa以下
【0048】
(2)発生ガス量の評価
上記(1)と同様に、住友重機械工業製「SE50D」射出成形機を使用して、シリンダー温度295℃にて、外寸が52×32×16mmで厚みが1.5mmの箱型の評価用金型を用いて、金型温度130℃、充填時間0.2秒、保圧50MPa/7秒、冷却時間は10秒にて成形した箱型の成形体について、ガス焼けと充填不良の度合いを以下の基準で判定した。
○:外観不良なし。 △:外観不良あり。 ×:未充填
なお、外観不良とは、ガスによる転写不良やガス焼けが見られる場合とした。
以上の評価結果を下記表1および表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
以上の実施例と比較例を対比すれば明らかなように、本発明の(A)脂肪族モノカルボン酸の金属塩又はエステルと、(B)脂肪族ジカルボン酸の金属塩又はエステルを0.1〜5質量部含有する組成物は、離型性とガス発生の低減の両方をバランスよく満足し、優れたものであることがわかった。