【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1を示す拡幅装置の側断面図、
図2は拡幅装置の正面図、
図3は
図1のA−A線断面図、
図4は
図1のB−B線断面図、
図5は
図1のC−C線断面図、
図6は
図1のD−D線断面図である。
【0019】
図1乃至
図6に示すように、断面が円形の既設トンネル10の内壁一部(拡幅部)に断面が矩形(縦長)のエントランス11が設置され、このエントランス11の内周面にはエントランスパッキン12が取着されている。
【0020】
そして、エントランス11内には、当該エントランス11と断面形状が相似形の筒状の装置本体13が既設トンネル10の径方向(
図1中左右方向)へ少なくとも前進可能に嵌装される。この装置本体13を前進させる複数本の推進ジャッキ14が既設トンネル13内の架台15上に反力受けとなる支持枠28を介して横向きに設置される。
【0021】
前記装置本体13には、当該装置本体13内を前後方向へ仕切る隔壁16が設けられ、この隔壁16に上,下二段に亘ってカッター支持筒17A,17Bがそれぞれシール装置18A,18Bを介して貫通している。各カッター支持筒17A,17Bはその筒軸方向中間部が隔壁16後方の装置本体13の左右両部に枢支(枢支点O
1,O
2参照)され、隔壁16後方の装置本体13にそのヘッド部が取着されたスイングジャッキ19A,19Bにより
図1中上下方向(トンネル高さ方向)に揺動可能になっている。
【0022】
また、各カッター支持筒17A,17Bは内筒20aと外筒20bとからなる二重筒で形成され、図示しない伸縮機構により内筒20aが外筒20bに対して伸縮可能になっている。そして、隔壁16前方に位置する内筒20aの先端部に、装置本体13の前進方向に沿った垂直面内で回転する(
図1中反時計方向に回転する)ドラムカッター(通称パドルカッター)22A,22Bが取着される。
【0023】
このドラムカッター22A,22Bは、内蔵された図示しないモータで回転可能になっているが、カッター支持筒17A,17B側に設けたモータの回転力がギア機構等の動力伝達手段を介して伝達されることで回転する構成でも良い。
【0024】
前記シール装置18A,18Bは、カッター支持筒17A,17Bの揺動を許容する開口23a,23bを有すると共にカッター支持筒17A,17Bの揺動支点(枢支点O
1,O
2参照)を中心とした円に沿って円弧状に形成されて隔壁16に所定の隙間を有して一体的に組み込まれた二重壁状のガイド板24a,24bと、これらのガイド板24a,24bの隙間に摺動可能に挿入されて当該ガイド板24a,24bの開口23a,23bを閉塞可能にカッター支持筒17A,17Bの外周にフランジ状に固設された閉塞板25と、からなる。
【0025】
そして、前記隔壁16の
図1中下部に吸込口26aを貫通させて隔壁16前方の装置本体13内の掘削土砂を取り込む排出コンベア26が装置本体13内の左,右両部に二本設置される。尚、
図4及び
図5中27は各ドラムカッター22A,22Bが各カッター支持筒17A,17Bの伸長により装置本体13から突出した時に作動して各ドラムカッター22A,22Bのカッター幅を増大させるオーバカッタジャッキで、
図1中30は拡副部(トンネル)である。
【0026】
このように構成されるため、既設トンネル10の所定の拡幅部位を拡幅する際には、先ず、予め既設トンネル10の内壁に設置されたエントランス11内に拡幅装置の装置本体13を嵌装する。この装置本体13の嵌装前後に必要に応じて既設トンネル10の拡幅部における既設の覆工部材(セグメント等)を取り除く。
【0027】
次に、装置本体13内に、ドラムカッター22A,22B付きのカッター支持筒17A,17Bを、スイングジャッキ19A,19Bと共に組み付けると共に、排出コンベア26をセットする。
【0028】
その後、既設トンネル10内に設置した架台15上に支持枠28を介して複数本の推進ジャッキ14を取り付けて拡幅のための準備が終了する。
【0029】
準備が終了した
図1の状態から、ドラムカッター22A,22Bを図示しないモータ駆動により回転させると共にスイングジャッキ19A,19Bの伸縮によりカッター支持筒17A,17Bを枢支点O
1,O
2を中心に揺動させながら、図示しない伸縮機構によりカッター支持筒17A,17B(厳密には内筒20a)を徐々に伸長させて拡幅部位における切羽の掘削を開始する。
【0030】
掘削された土砂は装置本体13内の下部に取り込まれ、取り込まれた掘削土砂は排出コンベア26により装置本体13外に排出され、図示しない排出手段により外部に排出される。この際、隔壁16におけるカッター支持筒17A,17Bの貫通部は、シール装置18A,18Bのガイド板24a,24bにおける開口23a,23bがカッター支持筒17A,17Bの揺動下にあっても閉塞板25で常時閉塞されるので、既設トンネル10内への浸水等は確実に阻止される。また、エントランス11においては、エントランスパッキン12により、既設トンネル10内への浸水等は確実に阻止される。
【0031】
カッター支持筒17A,17Bが最大限に伸長したら(
図1中のドラムカッター22A,22Bの鎖線状態参照)、今度は、ドラムカッター22A,22Bの回転、揺動下で全ての推進ジャッキ14を伸長させて装置本体13を前進させ、掘削を推し進める。
【0032】
そして、全ての推進ジャッキ14の最大ストローク後、所要の推進ジャッキ14を一本毎あるいは数本纏めて順次収縮し、これにより出来た装置本体13との間隙に図示しない覆工部材のピース(セグメントピース等)を挿入して、最終的にリング状の覆工部材を組み立てる。その後、全ての推進ジャッキ14を再び伸長してリング状の覆工部材を介して当該装置本体13を前進させ、これを繰り返すことで所定の長さの拡幅部30が掘削される。即ち、既設トンネル10の拡幅部位において所定の幅に亘って拡幅されるのである。
【0033】
このように本実施例によれば、カッター支持筒17A,17Bの伸長と揺動によりドラムカッター22A,22Bによる掘削範囲の増大が図られるので、ドラムカッター22A,22Bの大きさ及び個数の削減が可能となり、拡幅装置の簡略化によりコストダウンが図れる。
【0034】
また、カッター支持筒17A,17Bの伸縮如何に拘わらず、リング状の覆工部材を用いるあるいは継ぎ足すことで、装置本体13を任意に前進させて拡幅長さの増大が図れるので、汎用性も高まる。
【0035】
尚、上述した拡幅装置を既設トンネル10の長手方向に複数連接して既設トンネル10の長手方向へ所定長さに亘って拡幅部30を形成するようにしても良いことは言うまでもない。