特許第5713836号(P5713836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713836
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】回転電機及び回転電機の結線基板
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   H02K3/46 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-172127(P2011-172127)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2013-38879(P2013-38879A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2013年3月15日
【審判番号】不服2014-5036(P2014-5036/J1)
【審判請求日】2014年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山口 寛太
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131025(JP,A)
【文献】 特開平8−79999(JP,A)
【文献】 特開2010−11690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子及び固定子と、前記固定子の巻線の端部を所定の結線パターンで結線処理する結線基板と、を有する回転電機であって、
前記結線基板は、
同心円状に配置され、前記巻線の端部と接続される複数の円弧状の導電部材と、
前記導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する円環状の絶縁部材と、を有し、
前記導電部材は、
導電材とこれを被覆する被覆材とを有する被覆平角線であり、前記巻線の端部を回転軸方向に貫通させる貫通孔の周囲は前記被覆材が剥離されており、且つ、
前記複数の導電部材は、
同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の前記導電部材の間に一体的に設けられ、内周側の前記導電部材の同心円の接線方向に直線状に延びる直線部を有する前記導電部材を含む
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記絶縁部材は、
前記導電部材の貫通孔に対応する位置にテーパ孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記導電部材は、
円周方向における少なくとも一方側の端部に凹状曲面を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
回転子及び固定子を有する回転電機に設けられ、前記固定子の巻線の端部を所定の結線パターンで結線処理する回転電機の結線基板であって、
同心円状に配置され、前記巻線の端部を所定のパターンで接続するための複数の円弧状の導電部材と、
前記導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する円環状の絶縁部材と、を有し、
前記導電部材は、
導電材とこれを被覆する被覆材とを有する被覆平角線であり、前記巻線の端部を回転軸方向に貫通させる貫通孔の周囲は前記被覆材が剥離されており、且つ、
前記複数の導電部材は、
同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の前記導電部材の間に一体的に設けられ、内周側の前記導電部材の同心円の接線方向に直線状に延びる直線部を有する前記導電部材を含む
ことを特徴とする回転電機の結線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、回転電機及びその結線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固定子の巻線の端部を結線基板にて結線処理する回転電機が記載されている。この結線基板は、絶縁材により円板状に形成され、一方端面に円弧状の溝を径方向に複数個有し、他方端面に溝に連通する挿入孔を備えた絶縁部材(結線板)と、帯状導体の側面にU字状の溝を有する端子片を設け、絶縁部材の溝に帯状導体を挿入し、端子片を挿入孔より突出させた導電部材(相別用導電部材)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−158199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記結線基板は、端子片が絶縁部材より径方向外周側に突出した構成となっている。また、内周側の導電部材の端子片が外周側の導電部材と干渉しないように、端子片を軸方向に迂回して設けるか、あるいは各相ごとに導電部材を軸方向にずらして配置する必要がある。このため、結線基板には、径方向及び軸方向においてさらなる小型化の余地があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、結線基板を小型化できる回転電機及びその結線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、回転子及び固定子と、前記固定子の巻線の端部を所定の結線パターンで結線処理する結線基板と、を有する回転電機であって、前記結線基板は、同心円状に配置され、前記巻線の端部と接続される複数の円弧状の導電部材と、前記導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する円環状の絶縁部材と、を有し、前記導電部材は、導電材とこれを被覆する被覆材とを有する被覆平角線であり、前記巻線の端部を回転軸方向に貫通させる貫通孔の周囲は前記被覆材が剥離されており、且つ、前記複数の導電部材は、同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の前記導電部材の間に一体的に設けられ、内周側の前記導電部材の同心円の接線方向に直線状に延びる直線部を有する前記導電部材を含む、回転電機が適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、回転子及び固定子を有する回転電機に設けられ、前記固定子の巻線の端部を所定の結線パターンで結線処理する回転電機の結線基板であって、同心円状に配置され、前記巻線の端部を所定のパターンで接続するための複数の円弧状の導電部材と、前記導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する円環状の絶縁部材と、を有し、前記導電部材は、導電材とこれを被覆する被覆材とを有する被覆平角線であり、前記巻線の端部を回転軸方向に貫通させる貫通孔の周囲は前記被覆材が剥離されており、且つ、前記複数の導電部材は、同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の前記導電部材の間に一体的に設けられ、内周側の前記導電部材の同心円の接線方向に直線状に延びる直線部を有する前記導電部材を含む、回転電機の結線基板が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転電機によれば、結線基板を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の回転電機の全体構成を表す縦断面図である。
図2】結線基板の全体構成を表す軸方向反負荷側から見た平面図である。
図3図2中III−III断面による結線基板の断面図である。
図4】結線基板の全体構成を表す軸方向負荷側から見た平面図である。
図5】結線基板による結線パターンを説明するための説明図である。
図6】実施形態の回転電機の結線図である。
図7】被覆平角線を渦巻状に成型した状態を表す図である。
図8】渦巻状の被覆平角線を絶縁材で被覆した状態を表す図である。
図9】被覆平角線を所定の位置で分断した状態を表す図である。
図10】分断した被覆平角線に貫通孔を設けた状態を表す図である。
図11】固定子より巻線の端部を引き出した状態を表す図である。
図12】固定子の巻線端部を対応する導電部材の貫通孔に貫通させた状態を表す図である。
図13】結線基板を固定子に固定し、巻線端部の余分な部分を切断した状態を表す図である。
図14】巻線端部を半田付けにより導電部材に固定した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<回転電機の全体構成>
まず、図1を用いて本実施形態の回転電機1の全体構成について説明する。図1に示すように、回転電機1は固定子2と回転子3を備えている。固定子2は、回転子3と径方向に対向するようにフレーム4の内周面に設けられており、積層鉄心体5と、積層鉄心体5が挿通されたボビン6と、ボビン6に巻き回された巻線7とを有している。ボビン6は、積層鉄心体5と巻線7とを電気的に絶縁するために、樹脂等の絶縁性材料で構成されている。ボビン6の反負荷側(図1中左側)には、巻線7の端部7aを所定の結線パターンで結線処理する円環状の結線基板100が設けられている。巻線端部7aは、半田Hにより結線基板100に固定されている。結線基板100は、樹脂15によって覆われている。
【0012】
回転子3は、ヨーク8と永久磁石9を有しており、回転軸10の外周面に設けられている。回転軸10は、負荷側ブラケット11に外輪が嵌合された負荷側軸受12と、反負荷側ブラケット13に外輪が嵌合された反負荷側軸受14とにより回転自在に支持されている。
【0013】
以下では、回転電機1が、12個の巻線7が円環状に組まれた固定子2を有する三相交流電動機である場合を一例として説明する。
【0014】
<結線基板の構成>
次に、図2乃至図4を用いて結線基板100の構成について説明する。図2に示すように、結線基板100は、固定子2の巻線端部7aと接続される同心円状に配置された複数の円弧状の導電部材110と、これら導電部材110を被覆する円環状の絶縁部材120とを有している。詳細は後述するが、複数の導電部材110は、単一の線材である被覆平角線101(図7参照)を渦巻状に成型し、所定の箇所で分断する(欠損させる)ことで形成されている。すなわち、導電部材110は、欠損部により分断された導電性の線材を半径方向に多重に配置した構成とも言うことができる。なお、実際には被覆平角線101の分断時に絶縁部材120についても欠損部が生じているが、図2では煩雑防止のため図示を省略している。
【0015】
図2に示す例では、各導電部材110は半径方向に4重となるように略同心円状に配置されている。最も内周側に配置された6つの導電部材110a〜110fは、渡り線用の導電部材であり、同心円R1の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。導電部材110a〜110fの外周側に配置された2つの導電部材110n,110nは、中性点用の導電部材であり、同心円R2の円周方向に沿って配置されている。導電部材110n,110nのさらに外周側に配置された導電部材110u,110vは、それぞれU相用及びV相用の導電部材であり、同心円R3の円周方向に概略沿うように配置されている。最も外周側に配置された導電部材110wは、W相用の導電部材であり、同心円R4の円周方向に沿って配置されている。以下適宜、各導電部材を、渡り線用導電部材110a〜110f、中性点用導電部材110n、U相用導電部材110u、V相用導電部材110v、W相用導電部材110wと呼称する。
【0016】
U相用導電部材110uは、その大部分が同心円R3に沿って配置されているが、一部が同心円R4に沿って配置されている。U相用導電部材110uのうち、同心円R3に沿った部分を内周部110ui、同心円R4に沿った部分を外周部110uoと呼称する。U相用導電部材110uは、それら同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の内周部110uiと外周部110uoとの間に一体的に設けられた、内周部110uiの接線X方向に直線状に延びる直線部110ucを有する構成となっている。
【0017】
同様に、V相用導電部材110vは、その大部分が同心円R3に沿って配置されているが、一部が同心円R2に沿って配置されている。V相用導電部材110vのうち、同心円R2に沿った部分を内周部110vi、同心円R3に沿った部分を外周部110voと呼称する。V相用導電部材110vは、それら同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の内周部110viと外周部110voとの間に一体的に設けられた、内周部110viの接線Y方向に直線状に延びる直線部110vcを有する構成となっている。
【0018】
また図3に示すように、導電部材110(被覆平角線101)は、その断面形状が略四角形となっており、導電材111とこれを被覆する被覆材112とを有している。図2及び図3に示すように、各導電部材110は、その長手方向両端部における幅方向略中心位置に巻線端部7aを回転軸方向に貫通させる貫通孔113を有しており、この貫通孔113に貫通された巻線端部7aが導電部材110の結線側(反負荷側)の表面に半田Hで固定されている。このとき、導電部材110における貫通孔113の周囲は被覆材112が剥離されており、当該剥離部分に半田Hが設けられる。
【0019】
絶縁部材120は、例えば樹脂材料によるインサート成型によって形成された円環状の部材であり、各導電部材110を回転軸方向に略垂直である同一平面上となるように所定の位置に固定すると共に、各導電部材110間の絶縁を確保する。図2及び図3に示すように、絶縁部材120は、導電部材110の少なくとも結線側表面を露出させ、それ以外の表面を被覆するように設けられている。なお、図3に示すように、実際には各導電部材110は絶縁部材120によって半径方向に所定の隙間を有するように配置されているが、図2ではこの隙間の図示を省略している。
【0020】
図3及び図4に示すように、絶縁部材120は、導電部材110の貫通孔113に対応する位置にテーパ孔121を有している。このテーパ孔121は、絶縁部材120の反結線側(負荷側)の表面122に設けられており、この表面122より導電部材110の貫通孔113に向けて孔径が徐々に小さくなるように形成されている。固定子5の巻線端部7aは、このテーパ孔121を介して導電部材110の貫通孔113に固定子5側より挿入される。
【0021】
<結線パターン>
次に、図5及び図6を用いて結線基板100による結線パターンについて説明する。なお、図5及び図6に図示する各巻線の符号はそれぞれ対応関係にあり、ここでの説明では例えばU1に対応する巻線7については巻線U1と呼称する。
【0022】
図5及び図6に示すように、結線基板100は、三相各相をその一端の中性点で接続するスター結線を2系統有する結線パターンで、固定子2の巻線端部7aを結線する。具体的には、U相の一方側の系統である巻線U1及び巻線U2の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110cにより接続され、U相の他方側の系統である巻線U3及び巻線U4の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110fにより接続されている。同様に、V相の一方側の系統である巻線V1及び巻線V2の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110eにより接続され、V相の他方側の系統である巻線V3及び巻線V4の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110bにより接続されている。また同様に、W相の一方側の系統である巻線W1及び巻線W2の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110dにより接続され、W相の他方側の系統である巻線W3及び巻線W4の一方側の端部7a同士が渡り線用導電部材110aにより接続されている。
【0023】
また、巻線U2,V2,W2の他方側の端部7a同士が中性点用導電部材110nにより接続されており、同様に巻線U4,V4,W4の他方側の端部7a同士が中性点用導電部材110nにより接続されている。また、巻線U1の他方側の端部7aと巻線U3の他方側の端部7aとがU相用導電部材110uを介してU相に接続されており、巻線V1の他方側の端部7aと巻線V3の他方側の端部7aとがV相用導電部材110vを介してV相に接続されており、巻線W1の他方側の端部7aと巻線W3の他方側の端部7aとがW相用導電部材110wを介してW相に接続されている。
【0024】
<結線基板及び回転電機の製造方法>
次に、図7乃至図14を用いて結線基板100及び回転電機1の製造方法について説明する。まず、図7に示すように、単一の被覆平角線101を渦巻状に成型する。この際、曲率半径が連続して変化する単純な渦巻形状でもよいが、内周側の同心円Rに沿った円弧部分の接線方向に直線状に延びる直線部101a〜101cを有する渦巻形状とすると望ましい。後者のような形状とすることで、被覆平角線101の直線部101a〜101c以外の部分を同心円R1〜R4上に配置することができ、この後の貫通孔113の穿孔作業や巻線端部7aとの結線作業を容易にすることができる。なお、前述したように被覆平角線101は導電材111と被覆材112とを有し、断面形状が略四角形となっている。また、図7に示す直線部101b,101cが図2に示す直線部110vc,110ucにそれぞれ対応している。
【0025】
なお、図7に示す例では被覆平角線101を半径方向に4重となるように巻いているが、巻数をこれに限定するものではなく、結線基板100の結線パターン等に応じて適宜の巻数に設定される。
【0026】
次に、例えば渦巻状に成型した被覆平角線101を金型に固定して樹脂材料をインサート成型することによって、被覆平角線101を絶縁材で被覆する。この際、被覆平角線101の少なくとも結線側表面が露出されるように被覆する。これにより、図8に示すように、絶縁部材120が形成される。
【0027】
次に、図9に示すように、絶縁材で被覆した被覆平角線101を図5に示した結線パターンとなるように所定の円周方向位置で分断する。本実施形態では、分断により形成される各導電部材110の長手方向両端部に巻線端部7aとの結線位置が位置するように、被覆平角線101に所定の長さを有する欠損部S(図9中に破線で図示)を例えばドリル又はパンチプレスを用いて形成する。その結果、分断により形成された各導電部材110は、円周方向における両端部に、ドリル又はパンチプレスの形状に応じた凹状曲面114を有している。なお、前述したように被覆平角線101の分断時に絶縁部材120についても欠損部が生じるが、図9(後述の図10図12図13図14も同様)では煩雑防止のため絶縁部材120の欠損部の図示を省略している。
【0028】
なお、本実施形態のように欠損部Sを必ずしも所定の長さを有するように形成する必要はなく、例えば単なる丸孔状あるいは四角孔状の長さの短い欠損部Sとしてもよい。また、ドリルやパンチプレス以外の工具を用いて分断してもよい。さらに、各導電部材110の端面形状を曲面でなく平面に形成してもよい。すなわち、各導電部材110同士の絶縁が確保できる程度に被覆平角線101が分断されていれば、欠損部Sの形状や長さは限定されない。
【0029】
次に、図10に示すように、各導電部材110にドリル等を用いて巻線端部7aを回転軸方向に貫通させる貫通孔113を設ける。貫通孔113は、各導電部材110の長手方向両端部における幅方向略中心位置に設けられる。また、各導電部材110における貫通孔113の周囲の被覆材112をサンドペーパーやナイフ等を用いて剥離する。さらに、絶縁部材120の反結線側の表面122における貫通孔113に対応する位置に、ドリル等を用いてテーパ孔121を設ける。以上の工程により、結線基板100が製造される。
【0030】
次に、図11に示すように、固定子2より各巻線7の端部7aをそれぞれ回転軸方向に沿って反負荷側(図11中紙面の手前側)に引き出した状態とする。この際、各巻線7について巻き始めと巻き終わりに対応する2つの端部7aが引き出される。
【0031】
次に、図12に示すように、固定子2より引き出した各巻線端部7aを、絶縁部材120に設けたテーパ孔121を介して対応する導電部材110の貫通孔113にそれぞれ貫通させる。その後、図13に示すように、結線基板100を固定子2のインシュレータ(図示省略)に接着剤等により固定し、巻線端部7aが各導電部材110の結線側表面より若干突出する程度の長さとなるように、その不要な部分を切断する。そして、図14に示すように、半田付けを行って各巻線端部7aを半田Hにより各導電部材110にそれぞれ固定する。以上により、結線基板100が固定子2に取り付けられ、回転電機1が製造される。
【0032】
なお、以上の製造工程は、絶縁部材120を形成する際に被覆平角線101を金型に固定する等の手作業が必要な部分を除き、大方を自動化することが可能である。
【0033】
<実施形態の効果>
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。すなわち、回転電機1においては、結線基板100の各導電部材110が貫通孔113を有しており、この貫通孔113に固定子2の巻線端部7aが回転軸方向に貫通されることによって、巻線端部7aが導電部材110に直接的に接続される。これにより、巻線端部7aと導電部材110を接続するための端子部材が不要となるため、当該端子部材を絶縁部材120より径方向外周側に突出して設けるような構成に比べ、結線基板100の径方向寸法を小さくすることができる。また、端子部材を絶縁部材120の外周側に突出させる場合、内周側の導電部材110の端子部材が外周側の導電部材110と干渉しないように、端子部材を回転軸方向に迂回して設けるか、あるいは各相ごとに導電部材110を回転軸方向にずらして配置する必要があるため、結線基板100の軸方向寸法が大きくなる。本実施形態においては、固定子2の巻線端部7aが各導電部材110に対して回転軸方向に貫通して接続されるため、端子部材を回転軸方向に迂回して設けたり、導電部材110を各相ごとに回転軸方向にずらして配置する必要がない。したがって、結線基板100の軸方向寸法を小さくすることができる。このように、結線基板100を径方向及び軸方向において小型化することができる。その結果、回転電機1を小型化することができる。
【0034】
また、本実施形態では特に、導電部材110v,110uが内周側の同心円Rの接線方向に直線状に延びる直線部110vc,110ucをそれぞれ有している。このような直線部110vc,110ucを設けることによって、同心円状に配置された複数の導電部材110を、半径方向に多重に巻き回した単一の被覆平角線101を分断することによって形成することが可能となる。このように単一の線材を用いて導電部材110を形成できる結果、金属部材からの打ち抜き等によって導電部材110を形成する場合に比べ、材料の無駄を大幅に抑制でき、コストを低下することができる。
【0035】
なお、単一の線材を用いて複数の導電部材110を形成する場合、直線部を有しない単純な渦巻状とした被覆平角線101を分断することも考えられるが、この場合は形成された導電部材110の曲率半径が連続して変化することになるため、導電部材110に貫通孔113を穿孔する作業や、固定子2の巻線端部7aを貫通孔113に貫通させて接続する結線作業の難易度が上昇してしまう。これに対し、本実施形態では導電部材110v,110uが直線部110vc,110ucを有する構成とするので、直線部110vc,110uc以外の領域では、対応する導電部材110の曲率半径を一定とし、各導電部材110を同心円状に配置することができる。その結果、穿孔作業や結線作業が容易となる。また、これらの作業を自動化することも可能となる。
【0036】
また、本実施形態では特に、絶縁部材120が導電部材110に設けた貫通孔113に対応する位置にテーパ孔121を有している。このテーパ孔121により、固定子2の巻線端部7aを貫通孔113に導き入れることが可能となるので、結線作業がさらに容易となり、結線作業の自動化を促進できる。
【0037】
また、本実施形態では特に、導電部材110が円周方向における両端部に凹状曲面114を有している。このような導電部材110は、多重に巻き回した被覆平角線101を、汎用工具であるドリルやパンチプレスを用いて所定の位置で分断することによって形成することができる。したがって、特別な工具を用いることなく、容易且つ安価に導電部材110を形成することできる。
【0038】
また、本実施形態では特に、導電部材110に断面形状が四角形である被覆平角線101を用いる。これにより、例えば断面形状が円形である丸線を用いる場合に比べ、導電部材110に巻線端部7aを貫通させる貫通孔113を設けたり、所定の位置で分断する等の加工がし易くなり、導電部材110の加工性が向上する。また、固定子2の巻線端部7aを導電部材110に接続する際に半田付けを行うが、被覆平角線101を用いることで平坦な面上で半田付けを行うことができるので、作業性を向上できる。さらに、例えば被覆のない平角線を用いる場合には絶縁を確保するために導電部材110同士の半径方向の隙間を一定以上の大きさとする必要があるが、本実施形態のように被覆平角線101を用いることで、上記の隙間を極力小さくでき、結線基板100の径方向寸法をさらに小さくすることができる。
【0039】
<変形例>
なお、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態ではスター結線を2系統有する結線パターンである場合を一例として説明したが、これに限るものではなく、被覆平角線101の巻数や分断位置、結線位置を適宜変更することで、Δ結線やV結線等の種々の結線パターンに対応することができる。
【0041】
また以上では、回転電機1が12個の巻線7を有する三相交流電動機である場合を一例として説明したが、巻線7の個数は適宜変更可能であり、また単相交流電動機や直流電動機等、三相交流以外の電動機にも適用可能である。すなわち、電動機の型は限定されず、固定子の巻線の端部を所定の結線パターンで結線処理するものであれば、種々の電動機に適用することができる。
【0042】
また以上では、導電部材110に被覆材112を有する被覆平角線101を用いたが、被覆材112を有しない平角線を用いてもよい。また、必ずしも平角線である必要はなく、断面形状が四角形以外の線(丸線等)を用いてもよい。
【0043】
また以上では、単一の線材を所定の位置で分断することによって複数の円弧状の導電部材110を形成するようにしたが、これに限らない。例えば、金属部材からの打ち抜き等によって得られる円弧状又は円環状の導電部材を同心円状に配置し、それらに巻線の端部を回転軸方向に貫通させる貫通孔を設けた構成としても、本実施形態の主要な効果である結線基板100を小型化できるという効果については得ることができる。
【0044】
また以上では、回転電機1が、回転子3を固定子2の内側に備えたインナーロータ型である場合を一例として説明したが、回転子3を固定子2の外側に備えたアウターロータ型の回転電機に対しても適用可能である。さらに、回転電機1が電動機である場合を一例として説明したが、回転電機1が発電機である場合にも適用することができる。
【0045】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0046】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 回転電機
2 固定子
3 回転子
7 巻線
7a 端部
100 結線基板
101 被覆平角線(導電性の線材、平角線)
110 導電部材
110uc 直線部
110vc 直線部
113 貫通孔
114 凹状曲面
120 絶縁部材
121 テーパ孔
S 欠損部
図1
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