(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載されている従来の加熱調理器は、調理物から発生する煙を排気させるためのシロッコファンが、グリル庫と連通している排気ダクトに配置されているため、耐熱性を確保する必要があり、ステンレス等の金属製にしなければならないという問題点があった。
【0005】
また、上記のような金属製のファンを回転させるためには、トルクの強いくまとりモーター等を用いる必要があるので、必然的に構造が複雑となり、このような排気機構を構成するにはコストが増大するという問題点もあった。また、このようなトルクの強いくまとりモーターは発熱量が高いので、このくまとりモーター自体を冷却するためのファンが必要になる場合があるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、耐熱性のある金属製のファンを用いることなく、排気機構の構成を簡易にした加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、本体と、該本体
の内部に形成され、調理物を加熱調理するためのグリルと、該グリル内で発生した煙及び油等を排気口へ導いて、外部に排出させるための排気ダクトと、該排気ダクト外に設置され、ファン風を生成するファンと、該ファンを固定し、該ファンの送風方向を一定方向に固定するファンカバーと、を備え、前記排気ダクトは、前記ファンが設置されたファン設置空間に連通するダクト開口部を有し、前記ファンは、前記ダクト開口部に向けて送風し、前記ファン風が前記排気ダクト内に吹き込まれるように配置され
、前記ファンから吹き出された前記ファン風のうち、前記ダクト開口部を通過せずに吹き戻ってきた前記ファン風が、前記ファンが配置された配置部分と前記ファンとの間隙から前記ファンの一次側に戻ることを防止するラビリンス構造を更に備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ファンを、排気ダクト内に配置せず、排気ダクト外に設置したことによって、耐熱性のある金属製のファンを用いる必要がなく、さらに、そのファンを回転駆動させるためにくまとりモーター等のトルクの強いモーターを用いる必要もないので、排気機構の構成を簡易にすることが可能となり、コストを低減することができる。
【0009】
また、ファンを仮固定するのみでは、送風方向の動きを完全に規制はできないところ、ファンカバーによって、ファンが完全に固定することができ、送風方向の動きを規制することができる。また、これによって、ファンの送風方向が一定に定まり、ダクト開口部に向かって安定してファン風を送り込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
(加熱調理器の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の全体外観図であり、天面部102を本体部101から分離した状態を示す図である。なお、本実施の形態においては、誘導加熱調理器を加熱調理器の一例として説明する。
【0012】
図1で示されるように、本実施の形態に係る加熱調理器は、本体部101及び天面部102によって構成されている。
【0013】
本体部101は、その本体1内の上部に左加熱コイル30、右加熱コイル40及び中央加熱コイル50の3つの加熱コイルが配置されている。そして、本体1の前面部右側には、上記のそれぞれの加熱コイルの加熱動作を操作するための左操作ダイヤル31、右操作ダイヤル41及び中央操作ダイヤル51が設置されている。具体的には、ユーザーは、左操作ダイヤル31によって左加熱コイル30の加熱動作を、右操作ダイヤル41によって右加熱コイル40の加熱動作を、そして、中央操作ダイヤル51によって中央加熱コイル50の加熱動作を操作する。また、本体1の前部左側には、グリル部103が構成されており、後述するグリル庫60内に調理物を出し入れするためのグリル扉11が設置されている。そして、この本体1左下側の内部には、グリル部103のグリル室(図示せず)が構成されている。さらに、本体1の後部側には、本体1に内蔵されている回路基板、並びに、左加熱コイル30、右加熱コイル40及び中央加熱コイル50を冷却するための冷却風を本体1内部に吸気するための吸気口8、グリル部103のグリル庫60内の調理物から発生する煙を排気するためのグリル排気口9a、そして、上記の冷却風を本体1外部に排気するための冷却風排気口9bが形成されている。
【0014】
天面部102は、トッププレート2、各加熱口における動作状態又は設定情報等を表示する表示パネル6、並びに、設定情報等の変更又はグリル部103の加熱動作を操作するための操作パネル7によって構成されている。また、トッププレート2の上面には、鍋等の被加熱物を載置して調理するための左加熱口3、右加熱口4及び中央加熱口5が構成されている。この左加熱口3、右加熱口4及び中央加熱口5は、それぞれ、左加熱コイル30、右加熱コイル40及び中央加熱コイル50の直上の位置となるように配置されている。そして、天面部102の後部側には、吸排気口カバー10が設置されており、この吸排気口カバー10を介して、吸気口8から空気が吸気され、グリル排気口9a及び冷却風排気口9bからそれぞれ排気される。
【0015】
図2は、
図1のA−A’断面図であり、
図3は、
図2の断面図の斜視図である。なお、
図2のA−A’断面図は、天面部102を本体部101に設置した状態を示すものとする。
【0016】
図2及び
図3で示されるように、本体1の前部左側には、前述したように、グリル部103が構成されており、このグリル部103の上部後方には排気ダクト70が形成されている。また、この排気ダクト70の下方には、後述するように、排気ダクト70内にファン風を送り込むための機構であるファンユニット部104が構成されている。
【0017】
グリル部103は、調理物を加熱調理するための空間であるグリル庫60、その調理物に対して上方から加熱する上ヒーター61a、下方から加熱する下ヒーター61b、及び、グリル庫60内に調理物を出し入れするためのグリル扉11によって構成されている。この上ヒーター61a及び下ヒーター61bは、例えば、シーズヒーターによって構成されている。さらに、グリル部103は、調理部をグリル庫60内に調理物を載置するためのグリル網(図示せず)等を備えている。
【0018】
また、グリル部103の上部後方には、排気ダクト70が形成されており、この排気ダクト70は、前述のグリル排気口9aに連通している。この排気ダクト70とグリル庫60との境界には、脱煙フィルター71が設置されており、また、排気ダクト70の底面は仕切り板72によって構成されている。脱煙フィルター71は、グリル庫60内の調理物から発生した煙が、排気ダクト70内へ入り込む際に、この煙に含まれる粉塵及び油等を取り除き、さらに、煙を脱臭する機能を有するものである。仕切り板72は、排気ダクト70とファンユニット部104とを仕切るものであり、この仕切り板72の後部側には、排気ダクト70と後述するファン風路84とを連通させる仕切り板開口部72aが形成されている。
【0019】
ファンユニット部104は、排気ダクト70にファン風を送り込むためのユニットであり、ファンケース80、ファン81、ファンカバー82、及び弾性体85(
図8において後述)によって構成されている。ファンケース80は、ファンユニット部104の外形を形成するものであり、その内部に、ファン81、ファンカバー82及び弾性体85等を収納している。ファン81は、外形が直方体形状を呈する樹脂製等の非金属製のプロペラファンであり、その回転駆動によってファン風を生成し、ファン風路84へファン風を送り出し、仕切り板72の仕切り板開口部72aを介して、排気ダクト70内にファン風を送り込むものである。ファンカバー82は、
図4〜
図6において後述するが、ファン81を上方から付勢して固定するものである。また、ファン81の回転によってファン風を生成するためには、空気を外部から吸気する必要があるが、ファン81の下方であるファンユニット部104の底部に、ファン81の回転によって吸気するための底部吸気口83が形成されている。また、ファン81の回転によって生成されたファン風を送り出す空間であるファン風路84が形成されており、ファン風は、このファン風路84を経由して排気ダクト70内に送り込まれる。
なお、ファン81は、プロペラファンとしているがこれに限定されるものではなく、非金属製のターボファン又はシロッコファン等のその他のファンでもよい。
【0020】
なお、仕切り板開口部72aは、本発明の「ダクト開口部」に相当する。
【0021】
(ファンユニット部104の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器のファンユニット部104の外観斜視図であり、
図5は、同ファンユニット部104の分解斜視図であり、
図6は、
図4のB−B’断面図であり、そして、
図7は、
図6のC−C’断面図である。以下、
図4〜
図7を参照しながら、ファンユニット部104の構成について説明する。
【0022】
ファン81は、ファン風の向きが仕切り板72の仕切り板開口部72aへ向かうように、その底面が所定の角度をもって、ファンケース80に固定される。このとき、ファン81は、仕切り板開口部72aの直下とならない位置に固定する。このファン81の固定方法について説明すると共に、ファンユニット部104の構成を説明する。ファンケース80には、ファン81を収納する収納部分が形成されており、この収納部分にファン81が収納されると、ファン81の底面は、ファン底受け部80aによって下方から支持される。また、ファン81の側面部にはスポンジ等の弾性体85(
図7参照)が張り付けられており、また、ファン81の収納部分の底部から上方に向かってファン係止リブ80bが立設されており、ファン81を収納した際、ファン係止リブ80bに弾性体85が当接し、このファン係止リブ80bによって、弾性体85を介してファン81が付勢されて仮固定される。ファン81は、このファン係止リブ80b及び弾性体85によって仮固定されると、送風方向に対する垂直方向(ファン81の底面と平行な方向)の動きが規制されると共に、弾性体85による摩擦力によって、送風方向の動きもある程度規制されることになる。
【0023】
ファン81がファンケース80に仮固定された状態から、さらに、ファンカバー82がファン81の上面から被せられる。このファンカバー82は、その側面を形成するファンカバー側壁部82cによってファン係止リブ80bの外側が囲われる態様で設置される。また、ファンカバー82の上面には、ファンカバー開口部82aが形成されており、このファンカバー開口部82aを介してファン風が吹き出される。また、ファンカバー開口部82aの周縁は、ファン81の上面と平行に、かつ、内側に向って延設されたファンカバー上面付勢部82eが形成されている。このファンカバー上面付勢部82eによって、ファン81が上面から押さえられる態様となる。そして、ファンケース80側に形成されたファンケースねじ締め部80c、及び、ファンカバー側壁部82cの外側に形成されたファンカバーねじ穴部82fがねじによって締め付けられることによって、ファンカバー82がファンケース80に固定されると共に、ファン81が完全に固定される。すなわち、ファンカバー82がねじ締めによって固定されることによって、ファン81は、ファンカバー上面付勢部82eによって送風方向の動きが規制されることになる。以上のようなファン81の固定方法によって、ファン81は、その底面が所定の角度をもって固定されることになる。
【0024】
以上のように、ファン81をファンケース80に仮固定するのみでは、送風方向の動きを完全に規制はできなかったが、ファンカバー82によってファン81が完全に固定されるので、送風方向の動きを規制することができる。また、このファンカバー82によってファン81を完全に固定することによって、ファン81の送風方向が一定に定まり、仕切り板開口部72aに向かって安定してファン風を送り込むことができる。さらに、ファン81は、仕切り板72の仕切り板開口部72aの直下とならない位置に固定されているので、仕切り板開口部72aから油等が滴下した場合に、その油等が付着することを抑制することができるので、ファン81の故障を抑制できる。
【0025】
また、所定の角度をもって固定されたファン81の上面のうち最も下方に位置する縁に対応するファンカバー開口部82aの縁には、ファンカバー82が設置された際においてファン81の送風方向と平行な面であるディフューザー82bが形成されている。このディフューザー82bは、ファン81の送風方向に対する整流作用を有するものである。
なお、ディフューザー82bは、ファン81の送風方向と平行な面としたが、これに限定されるものではなく、ファン81の送風方向を任意の方向に制御するために異なる角度の面としてもよい。
【0026】
また、ファンカバー82のファンカバー側壁部82cの下端から、ファン81の底面と平行、かつ、ファン81から外側に向かってファンカバーフランジ部82dが延設されている。このファンカバーフランジ部82dの作用については、
図9で示されるラビリンス構造において詳述する。
【0027】
なお、ファン係止リブ80b、ファンカバー側壁部82c及びファンカバーフランジ部82dは、それぞれ本発明の「リブ」、「側壁部」及び「フランジ部」に相当する。また、ファン底受け部80a及びファン係止リブ80bは、本発明の「ファンが配置された配置部分」に相当する。
【0028】
(ファンユニット部104のラビリンス構造)
図8は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器のファンユニット部104におけるラビリンス構造を示す図である。
前述したように、弾性体85が張り付けられたファン81を、ファンケース80の収納部分に収納した状態、すなわち仮固定状態において、ファン81を回転駆動させた場合、仕切り板開口部72aを介して排気ダクト70内に送り込まれるファン風がある一方、仕切り板72等に当たって押し返されるものもある。この場合、押し返されたファン風は、ファン81とファン係止リブ80bとの間に位置する弾性体85を通過して、ファン81の一次側に戻ってしまう場合がある。このような状態になると、ファン風が効率的に排気ダクト70内に送り込まれないことになり、グリル庫60内で発生する煙を効率的に排気できなくなる。
【0029】
しかしながら、本実施の形態においては、ファン81の仮固定の状態から、さらにファンカバー82を被せ、前述したように、ファン係止リブ80bの外側をファンカバー側壁部82cが囲い、さらに、ファンカバー側壁部82cの下端にファンカバーフランジ部82dを形成している。これによって、仕切り板72等に当たって押し返されたファン風が、弾性体85まで到達するまでには、ファンカバーフランジ部82dとファンケース80との隙間、及び、ファン係止リブ80bとファンカバー側壁部82cとの隙間を通過しなければならない。このように、これらの隙間がほとんど無いように構成し、弾性体85に到達するまでの風路を入り組んだ構造とする、すなわち、ラビリンス構造とすることによって、ファン風が弾性体85まで到達するまでの圧損が極めて高くなり、ほとんど弾性体85に到達することがない。このようなラビリンス構造を構成することによって、ファン風が、ファン81の一次側に戻ることを抑制することができ、効率的にファン風を排気ダクト70内に送り込むことが可能となって、グリル庫60内で発生する煙を効率的に排気することができる。なお、ファン81によって生成したファン風の流れ、及び、グリル庫60内の調理物から発生した煙の流れについては、
図9において詳述する。
【0030】
(グリル庫60内で発生した煙の排気動作)
図9は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器のグリル庫60内で発生した煙の排気動作を示す図である。以下、
図9を参照しながら、煙の排気動作について説明する。
【0031】
グリル部103のグリル庫60内において、調理物が加熱調理される場合、ファン81はモーター(図示せず)によって回転駆動する。このファン81の回転駆動によって、底部吸気口83から、外部の空気が、ファンユニット部104内に吸い込まれ、ファン81の上面からファン風として、ファン風路84に吹き出される。このとき、ファン81は、ファン風路84と排気ダクト70とを連通する仕切り板開口部72aに直接向かうようにファン風を吹き出し、このファン風は、仕切り板開口部72aを通過して、排気ダクト70内に吹き込まれる。
【0032】
ここで、仕切り板開口部72aの開口面積は、排気ダクト70から煙・油等が侵入しないように十分な風速及び風量が得られるように形成する。仕切り板開口部72aの開口面積を大きくし過ぎると、グリル庫60内で発生する煙を排気させるだけの十分な風速を得ることができず、一方、小さくし過ぎると、グリル庫60内で発生する煙を排気させるだけの十分な風量を得ることができないからである。
【0033】
排気ダクト70に流れ込んだファン風は、排気ダクト70内を流通してグリル排気口9aへ向かう気流を生成する。この気流内の圧力は、その周辺の空間の圧力に対して負圧となり、この負圧に誘因される態様で、グリル庫60内で発生した煙がこの気流に向かう流れ(誘引風)が発生する。この際、誘引風は、脱煙フィルター71を通過する際に、この脱煙フィルター71によって、誘引風に含まれる粉塵及び油等が取り除かれ、さらに、脱臭される。脱煙フィルター71を通過した誘引風は、排気ダクト70内のファン風によって生成された気流に向かって排気ダクト70内を流れ、その気流と合流する。そして、気流に合流した誘引風は、グリル排気口9aに向かって流れて外部に排出される。
【0034】
(実施の形態1の効果)
以上のような構成のように、ファン81を、排気ダクト70内に配置せず、排気ダクト70外のファンユニット部104に設置したことによって、耐熱性のある金属製のファンを用いる必要がなく、さらに、そのファン81を回転駆動させるためにくまとりモーター等のトルクの強いモーターを用いる必要もないので、排気機構の構成を簡易にすることが可能となり、コストを低減することができる。
【0035】
また、ファン81によって生成されたファン風を、排気ダクト70への入口となる仕切り板開口部72aまで、ファン風路84の壁への衝突を抑制させつつ、仕切り板開口部72aへ直接送り込むことができるので、圧損を低減させることができる。
【0036】
また、ファン81をファンケース80に仮固定するのみでは、送風方向の動きを完全に規制はできないところ、本実施の形態においては、ファンカバー82によって、ファン81が完全に固定することができ、送風方向の動きを規制することができる。また、これによって、ファン81の送風方向が一定に定まり、仕切り板開口部72aに向かって安定してファン風を送り込むことができる。
【0037】
また、ファン81を仕切り板72の仕切り板開口部72aの直下とならない位置に固定したことによって、仕切り板開口部72aから油等が滴下した場合に、その油等が付着することを抑制することができるので、ファン81の故障を抑制できる。
【0038】
また、ファン81が収納かつ固定されるファンケース80及びファンカバー82によってラビリンス構造を構成することによって、ファン風が、ファン81の一次側に戻ることを抑制することができ、効率的にファン風を排気ダクト70内に送り込むことが可能となって、グリル庫60内で発生する煙を効率的に排気することができる。
【0039】
さらに、ファン81にファンカバー82を被せることによって、排気ダクト70から水又は油等がファンユニット部104内に侵入した場合に、水又は油かかりを低減することができる。
【0040】
なお、本実施の形態に係る加熱調理器として誘導加熱調理器を例に示したが、これに限定されるものではなく、ガス式加熱調理器又はオーブン等のその他の加熱調理器であってもよいのは言うまでもない。