(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口面に嵌め合わされる蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在される変形可能なシールガスケットとを備えた基板収納容器であって、
容器本体の開口面内周と蓋体のいずれか一方に、シールガスケット用の取付溝を形成するとともに、他方には、シールガスケットに接触するシール形成面を形成し、
シールガスケットは、取付溝に嵌められる基体と、この基体から突出する延出片と、この延出片の先端部から曲がりながら伸びてシール形成面に接触する第一のシール片と、延出片の先端部以外の部分から突出する第二のシール片とを含み、この第二のシール片を延出片に略直交させてシール形成面に隣り合って続いているシール用の隣接面に接触させるようにし、開口面に蓋体が嵌め合わされた容器本体の内部圧力が増大した場合に、シール用の隣接面に第二のシール片を強く接触させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
容器本体と蓋体のいずれかに、気体を置換する給排バルブを取り付け、容器本体を正面の開口したフロントオープンボックスに形成してその正面の周縁部を断面略Z字形に屈曲させ、この周縁部内周の段差肩面をシール形成面とするとともに、このシール形成面に隣り合って続いている容器本体の後方の周壁内面をシール用の隣接面とし、
容器本体の背面に対向する蓋体の対向面周縁部に取付溝をエンドレスに形成した請求項1記載の基板収納容器。
シールガスケットの第二のシール片を基体方向に曲げ、この第二のシール片の先端部を基体方向に指向させるとともに、第二のシール片の中央部付近を第一のシール片方向に向けるようにした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを上下に並べて整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在されてシールする弾性変形可能なシールガスケットとを備え、表面に電子回路が形成される途中の半導体ウェーハを一時的に保管したり、工場の工程間を搬送されたり、あるいは航空機等で輸送される(特許文献1、2、3、4、5参照)。
【0003】
容器本体は、所定の成形材料によりフロントオープンボックスに成形され、底板に、容器本体の内部の気体を空気から窒素ガス等の不活性ガスやドライエアに置換する複数の給排バルブが装着されており、この複数の給排バルブの給排作用により、半導体ウェーハ表面の酸化や腐食等の変質が防止される。
【0004】
容器本体の開口した正面は、その周縁部が断面略Z字形に屈曲形成されて外側に張り出し、この周縁部内周の段差肩面に、シールガスケット用のシール形成面が形成されている。また、蓋体は、容器本体の開口した正面に対応する正面矩形に形成され、周縁部にシールガスケット用の取付溝が周設されている。
【0005】
シールガスケットは、蓋体の取付溝に嵌入される枠形の基体と、この基体から突出して取付溝の内面に圧接される嵌合突起と、基体に形成されて取付溝から突出するシール片とを備え、これら基体、嵌合突起、及びシール片が所定の成形材料により一体形成されている。このシールガスケットは、基板収納容器の外部から内部にパーティクル等が流入するのを確実に防止する観点から、シール片が容器本体の外側に湾曲しながら伸長して容器本体のシール形成面に密接し、基板収納容器の内部にパーティクル等が流入するのを防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、容器本体内に対するパーティクル等の流入を防止するのを主眼にシールガスケットが形成されているので、以下に示す問題がある。
先ず、容器本体の外側にシールガスケットのシール片が湾曲しながら伸びるので、容器本体内にパーティクル等が流入するのを有効に防ぐことができるものの、容器本体の内部圧力が増大すると、シール片の先端部が変形して容器本体内の気体が漏れ易くなることがある。
【0008】
この場合に、基板収納容器内の空気を不活性ガスに置換しようとすると、内部圧力の増大と共に、不活性ガスが短時間で外部に漏洩することがあるので、気体の置換作業が遅延し、作業の効率化を図ることができないという問題が生じる。具体的には、基板収納容器内の酸素濃度や水分量が所定の値まで低下するのに長時間を要し、作業効率が悪化することとなる。この弊害を解消すべく、基板収納容器の気体の置換が不完全なままで運用しようとすると、半導体ウェーハが変質して製品の歩留まりが低下してしまうという問題が新たに生じるおそれがある。
【0009】
また、基板収納容器が航空機で輸送される場合、航空機の高度の影響により外部の気圧が低下すると、この低下に伴い、基板収納容器の内部圧力が相対的に高まり、基板収納容器内の気体が漏出するおそれがある。このとき、航空機が着陸すると、基板収納容器の内圧が外圧よりも低下して減圧状態となり、容器本体に蓋体がシールガスケットを介して吸着してしまい、蓋体の取り外しが困難になる。
【0010】
さらに、従来における基板収納容器は、容器本体のシール形成面にシールガスケットの長いシール片が強く密接して一定のシール性を確保するが、容器本体から蓋体が取り外される際、シール形成面にシール片がそのまま貼り付くことがある。このシール片の貼り付きは、シールガスケットの材質にも左右されるが、シール形成面に対するシール片の圧接が主な原因である。シール形成面にシール片が貼り付くと、蓋体の取り外しに支障を来たし、その結果、半導体ウェーハの加工や処理の中断を招くという問題が生じる。
【0011】
本発明は上記に鑑みなされたもので、気体を効率的に置換してその作業の迅速化や効率化を図ることができ、しかも、容器本体からの蓋体の取り外しを容易にして基板を円滑に加工等することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口面に嵌め合わされる蓋体と、これら容器本体と蓋体との間に介在される変形可能なシールガスケットとを備えたものであって、
容器本体の開口面内周と蓋体のいずれか一方に、シールガスケット用の取付溝を形成するとともに、他方には、シールガスケットに接触するシール形成面を形成し、
シールガスケットは、取付溝に嵌められる基体と、この基体から突出する延出片と、この延出片の先端部から曲がりながら伸びてシール形成面に接触する第一のシール片と、延出片の先端部以外の部分から突出する第二のシール片とを含み、この第二のシール片を延出片に略直交させて
シール形成面に隣り合って続いているシール用の隣接面に接触させるようにし、開口面に蓋体が嵌め合わされた容器本体の内部圧力が増大した場合に、シール用の隣接面に第二のシール片を強く接触させるようにしたことを特徴としている。
【0013】
なお、容器本体の正面に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構を備えることができる。
また、容器本体と蓋体のいずれかに、気体を置換する給排バルブを取り付け、容器本体を正面の開口したフロントオープンボックスに形成してその正面の周縁部を断面略Z字形に屈曲させ、この周縁部内周の段差肩面をシール形成面とするとともに、
このシール形成面に隣り合って続いている容器本体の後方の周壁内面をシール用の隣接面とし、
容器本体の背面に対向する蓋体の対向面周縁部に取付溝をエンドレスに形成することができる。
【0014】
また、シールガスケットの基体に、取付溝の対向する内面に接触するリブを突出形成し、第一のシール片の先端部に、シール形成面に接触する突起を形成することもできる。
また、シールガスケットの延出片に、第二のシール片に隣接する柔軟性付与溝を
形成し、この柔軟性付与溝により、第二のシール片の柔軟性を向上させることが可能である。
さらに、シールガスケットの第二のシール片を基体方向に曲げ、この第二のシール片の先端部を基体方向に指向させるとともに、第二のシール片の中央部付近を第一のシール片方向に向けることが可能である。
【0015】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも単数複数の半導体ウェーハ(φ200、300、450mmタイプのシリコンウェーハや再生ウェーハ等)、液晶基板、液晶セル、石英ガラス等が含まれる。また、容器本体は、フロントオープンボックスタイプが主ではあるが、トップオープンボックスタイプやボトムオープンボックスタイプでも良い。この容器本体は、蓋体同様、透明、不透明、半透明を特に問うものではない。シールガスケット用の取付溝は、蓋体に形成される場合、蓋体の周縁部、具体的には、蓋体の裏面周縁部、あるいは蓋体の周壁に形成される。
【0016】
シールガスケットは、エンドレスの枠形でも良いが、可撓性を有する細長い必要数の線条でも良い。このシールガスケットの第二のシール片は、延出片に略直交するが、この略直交には、厳密な意味の直交と、おおよそ直交すると認められる状態のいずれもが含まれる。また、シール形成面に隣接する隣接面は、シール形成面の下方又は後方に位置する面であることが好ましい。さらに、基板収納容器には、FOUPやFOSB等のタイプがあるが、特に問うものではなく、いずれでも良い。
【0017】
本発明によれば、容器本体の開口面に蓋体が嵌め合わされると、シールガスケットの第一のシール片が撓んでシール形成面に接触し、容器本体と蓋体との間にシールが形成されて容器本体の外部から内部への塵埃等の流入を規制する。この際、第二のシール片は、シール形成面に隣接する隣接面に接触して容器本体の内部から外部に気体が漏れ出るのを規制する。この第二のシール片は、容器本体の内部圧力が増大すると、容器本体の隣接面に強く接触し、密封性を向上させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、
シールガスケットの第二のシール片がシール形成面に隣り合って続いているシール用の隣接面に接触して容器本体の内部から外部に気体が漏れ出るのを規制したり、容器本体の内部圧力が増大した場合に、シール用の隣接面に強く接触して密封性を向上させるので、基板収納容器内の気体を効率的に置換してその作業の迅速化や効率化を図ることができるという効果がある。また、容器本体からの蓋体の取り外しを容易にすることにより、基板を円滑に加工等することができる。
【0019】
また、請求項2記載の発明によれば、容器本体の開口した正面に蓋体を深く嵌め合わせると、シールガスケットの第一のシール片が撓んでその先端部等を容器本体のシール形成面に密接し、第二のシール片が傾斜して容器本体の隣接面に接触するので、容器本体の内部から外部に気体が漏洩するのを防止することができる。
【0020】
また、請求項3記載の発明によれば、柔軟性付与溝の形成により、第二のシール片の撓み量や変形量の増大が期待できる。
さらに、請求項4記載の発明によれば、隣接面に対して第二のシール片をより撓ませて接触範囲を拡大することができ、しかも、第二のシール片の形状の多用化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図5に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面7に嵌合される蓋体20と、これら容器本体1と蓋体20との間に介在される弾性変形可能なシールガスケット30と、容器本体1の正面7に嵌合された蓋体20を施錠する施錠機構40とを備え、シールガスケット30の基体31から延出片33を突出させ、この延出片33に第一、第二のシール片35・37をそれぞれ一体形成することにより、蓋体20が嵌合された容器本体1の内外にパーティクルや気体が流通するのを防止するようにしている。
【0023】
半導体ウェーハWは、
図1に示すように、例えばφ300mmの薄く丸いシリコンウェーハからなり、周縁部に位置決め用のノッチが選択的に切り欠かれており、図示しない専用のロボットにより取り扱われる。この半導体ウェーハWは、容器本体1内に水平に収納され、容器本体1の上下方向に25枚又は26枚が所定のピッチで整列する。
【0024】
容器本体1、蓋体20、施錠機構40、及びこれらの構成部品は、所定の成形材料、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂により成形される。成形材料には、必要に応じ、導電性カーボン、導電繊維、金属繊維、導電性高分子等からなる導電剤、各種の帯電防止剤や紫外線吸収剤等が適宜添加される。
【0025】
容器本体1は、
図1に示すように、正面7の開口したフロントオープンボックスに形成され、内部両側、換言すれば、周壁を形成する両側壁の内面に、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対の支持片2が相対向して対設されるとともに、この一対の支持片2が上下方向に所定のピッチで配列されており、各支持片2が前後方向に細長い平坦な板形に形成される。
【0026】
容器本体1の底板の前部両側と後部両側とには、
図1に示す貫通孔3がそれぞれ厚さ方向に穿孔され、各貫通孔3に、容器本体1の内部の気体を空気から窒素ガス等の不活性ガスやドライエアに置換する給排バルブ4が着脱自在に装着されており、この複数の給排バルブ4の給気あるいは排気作用により、半導体ウェーハ表面の酸化や腐食等の変質が防止される。
【0027】
各給排バルブ4は、特に限定されるものではないが、例えば容器本体1の貫通孔3にOリングを介して螺嵌される円筒形の本体筒を備え、この本体筒の内部に、弁座が形成されるとともに、この弁座に接離する弁体がコイルバネを介し上下動可能に挿入されており、本体筒の開口した両端部のうち、少なくとも一端部には、パーティクル等を除去するフィルタがカバーキャップを介して装着される。
【0028】
容器本体1の底板下面には、平面略Y字形、三角形、多角形等のボトムプレート5が下方から装着され、このボトムプレート5の前部両側と後部中央とには、V字溝を備えた位置決め具がそれぞれ装着されており、各位置決め具が図示しない半導体加工装置の位置決めピンに上方から嵌合して基板収納容器を高精度に位置決めするよう機能する。また、容器本体1の天井の中央部には
図1に示すように、平面矩形のロボティックフランジ6が着脱自在に装着され、このロボティックフランジ6が図示しない工場の天井搬送機構に把持される。
【0029】
容器本体1の開口した正面7は、
図1、
図4、
図5に示すように、周縁部が断面略Z字形に屈曲形成されて幅方向あるいは高さ方向の外側に張り出し、この周縁部内周の張り出した段差肩面がシールガスケット30用の平坦なシール形成面8に形成されており、このシール形成面8に隣接して区画する容器本体1後方の面、すなわち、容器本体1の周壁内面がシール用の隣接面9に形成される。容器本体1の正面周縁部における内周面の上部両側と下部両側とには、
図1に示すように、施錠機構40用の施錠穴10がそれぞれ凹み形成される。
【0030】
容器本体1の背面壁内面には、必要に応じ、非常時に半導体ウェーハWの周縁後部に干渉可能な複数のリアリテーナが選択的に配列形成される。また、容器本体1の両側壁外面には、握持用の操作ハンドル11がそれぞれ着脱自在に装着され、各側壁外面の下部には、搬送用のサイドレール12が選択的に装着される。
【0031】
蓋体20は、
図1等に示すように、容器本体1の正面7に対応する正面略矩形の蓋本体21と、この蓋本体21の開口した表面(正面)を被覆する表面プレート28とを備え、これら蓋本体21と表面プレート28との間に施錠機構40が介在して設置されており、容器本体1の開口した正面7に図示しない蓋体開閉装置により圧入して着脱自在に嵌合される。
【0032】
蓋本体21は、
図1に示すように、断面略皿形に形成され、周壁の上部両側と下部両側とに、容器本体1の施錠穴10に対向する施錠機構40用の出没孔22がそれぞれ貫通して穿孔されており、容器本体1の背面壁に対向する裏面の中央部には、半導体ウェーハWの周縁前部を弾性片23で水平に保持する縦長のフロントリテーナ24が着脱自在に装着される。
【0033】
蓋本体21の裏面の周縁部は、
図4や
図5に示すように、容器本体1のシール形成面8に対向し、断面略U字形の取付溝25が枠形に周設されており、この取付溝25にシールガスケット30が嵌入される。取付溝25の相対向する一対の内面のうち、一方の内面(例えば、蓋本体21の裏面寄りの内面)26には、シールガスケット30用の細長い係止突起27が選択的に形成され、この係止突起27がシールガスケット30の脱落を防止する。
【0034】
表面プレート28は、同図に示すように、正面略矩形に形成され、蓋体20の取り付け取り外し時に蓋体開閉装置に保持される。この表面プレート28の両側部中央には、左右一対の操作孔29がそれぞれ貫通して穿孔され、各操作孔29に蓋体開閉装置の操作キーが挿通して施錠機構40を施錠操作あるいは解錠操作する。
なお、表面プレート28は、必要に応じ、蓋体開閉装置の複数の吸着パッドに選択的に真空吸着される。
【0035】
シールガスケット30は、
図1ないし
図5に示すように、蓋体20の取付溝25に嵌入される基体31と、この基体31から突出する変形可能な延出片33と、この延出片33から湾曲しつつ伸長してシール形成面8に圧接変形する第一のシール片35と、延出片33から突出する変形可能な第二のシール片37とを一体に備え、これら基体31、延出片33、第一、第二のシール片35・37がエンドレスの枠形に形成される。
【0036】
シールガスケット30は、所定の成形材料、例えばポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、ウレタン系エラストマー等からなる熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム、EPDM、シリコーン系ゴムにより成形される。
【0037】
係る成形材料には、シールガスケット30に導電性や帯電防止性を付与したい場合、炭素繊維、金属繊維、金属酸化物、各種の帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、シールガスケット30の表面固着性を改善したい場合には、カーボン、ガラス繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等が適宜配合される。
【0038】
シールガスケット30の基体31は、蓋本体21の取付溝25に対応して嵌入される断面矩形に形成され、内周面が取付溝25の底面に接触し、外周面が取付溝25から露出する。この基体31の表裏面のうち、取付溝25の係止突起27に対向しない面には、複数の位置決めリブ32が並べて突出形成され、この複数の位置決めリブ32が取付溝25の対向する他方の内面に圧接して変形することにより、シールガスケット30の位置ずれや脱落が有効に防止される。各位置決めリブ32は、必要に応じ、断面三角形や断面半円形等に形成される。
【0039】
延出片33は、基体31の外周面から直線的に突出して容器本体1のシール形成面8方向に垂直に伸長する。この延出片33には、第二のシール片37の根元の末端部に隣接する一対の柔軟性付与溝34がそれぞれ断面半円形に切り欠かれ、各柔軟性付与溝34が第二のシール片37の可撓性や柔軟性を向上させるよう機能する。
【0040】
第一のシール片35は、略円弧形に湾曲して延出片33の先端部に一体形成され、容器本体1の背面壁方向やシール形成面8方向に広がりながら指向しており、先端部に断面円形の球状突起36が一体的に膨出形成される。この球状突起36は、容器本体1のシール形成面8に圧接してシールすることにより、容器本体1の外部から内部にパーティクル等(
図5の細い矢印参照)が流入するのを防止する。
【0041】
第二のシール片37は、延出片33の先端部以外の部分、例えば中間部付近から直線的に突出し、シール形成面8や延出片33に直交してシール形成面8に隣接する隣接面9に接触するとともに、シール形成面8と隣接面9の間の角部を第一のシール片35との間に挟持する。この第二のシール片37は、隣接面9に接触してシールすることにより、容器本体1の内部から外部に不活性ガス等の気体(
図5の太い矢印参照)が漏出するのを防止する。
【0042】
施錠機構40は、
図1に示すように、蓋本体21の内部両側に回転可能に軸支され、蓋体20の表面側から蓋体開閉装置の操作キーに回転操作される左右一対の回転プレート41と、蓋本体21に内蔵され、各回転プレート41の回転に連動して上下方向に往復動する複数の動力伝達プレート42と、蓋本体21の出没孔22付近と各動力伝達プレート42の先端部とに揺動可能に連結軸支され、蓋本体21の出没孔22から出没する複数の施錠爪43とを備えて構成される。
【0043】
このような施錠機構40は、容器本体1の正面7に嵌合した蓋体20の施錠時には、各回転プレート41が一方向に回転して動力伝達プレート42を蓋体20の周壁方向にスライドさせ、各施錠爪43が蓋本体21の出没孔22から揺動突出して容器本体1の施錠穴10に係止することにより、蓋体20が強固に施錠される。これに対し、蓋体20の解錠時には、各回転プレート41が反対方向に回転して動力伝達プレート42を元の位置にスライド復帰させ、各施錠爪43が容器本体1の施錠穴10から離隔して蓋本体21の出没孔22内に揺動退没し、蓋体20が解錠されて取り外し可能な状態となる。
【0044】
上記構成において、容器本体1の開口した正面7に蓋体20を嵌合してシールする場合には、先ず、容器本体1の開口した正面7に蓋体20が蓋体開閉装置に保持された状態で浅く嵌合される(
図4参照)。この際、蓋体20は、完全に嵌合されていない状態なので、
図4に示すように、容器本体1のシール形成面8にシールガスケット30の球状突起36が接触せず、容器本体1の隣接面9に第二のシール片37が非接触の関係となる。
【0045】
次いで、蓋体20が蓋体開閉装置により深く圧入して嵌合され、施錠機構40が施錠操作されると、シールガスケット30の第一のシール片35が外方向に撓んで球状突起36を容器本体1のシール形成面8に密接し、容器本体1のシール形成面8と蓋体20との間にシールが形成されて容器本体1の外部から内部にパーティクル等が流入するのを有効に防止する(
図5参照)。
【0046】
この際、第二のシール片37は、第一のシール片35の撓みに伴い、外方向に斜めに傾斜し、容器本体1の隣接面9に接触して容器本体1の内部から外部に不活性ガス等の気体が漏洩するのを防止する(
図5参照)。この第二のシール片37は、容器本体1の内部圧力が増大すると、容器本体1の隣接面9に押されて圧接し、シール性をより向上させる。このような第二のシール片37の接触により、容器本体1の開口した正面7に蓋体20が嵌合され、適切なシール状態が得られることとなる。
【0047】
上記構成によれば、例え容器本体1の内部圧力が増大しても、シールガスケット30の第二のシール片37が圧接して適切にシールするので、容器本体1からの気体の漏洩を有効に防止することができる。したがって、基板収納容器内の空気を不活性ガスに置換する場合に、不活性ガスが短時間で外部に漏洩することが全くなく、気体を迅速に置換して作業の効率化を図ることができる。具体的には、基板収納容器内の酸素濃度や水分量を所定の値まで短時間で低下させることができる。
【0048】
また、基板収納容器の気体の置換が不完全なままで運用する必要がないので、半導体ウェーハWが変質して製品の歩留まりが低下するのを防止することができる。また、基板収納容器が航空機で輸送される場合に、例え基板収納容器の内部圧力が相対的に高まっても、基板収納容器内の気体が漏出するおそれを有効に排除することが可能となる。
【0049】
また、単一のシール片にパーティクル等の流入防止機能と気体の漏洩防止機能とを付与するのではなく、これらの機能に応じて第一、第二のシール片35・37を形成し、これら第一、第二のシール片35・37により個別にシールするので、第一のシール片35の長さを従来よりも短縮することが可能となる。したがって、容器本体1に蓋体20がシールガスケット30を介して吸着する事態を防ぐことができ、蓋体20の簡易な取り外しが大いに期待できる。
【0050】
さらに、第一のシール片35を適切な長さに短縮することができるので、第一のシール片35が貼り付く事態を防止することができる他、蓋体20の開閉トラブルを防止したり、半導体ウェーハWの加工や処理が中断するのを排除することが可能となる。
【0051】
次に、
図6と
図7とは本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、シールガスケット30の第二のシール片37を直線的に形成するのではなく、第二のシール片37を先細りに形成して基体31方向にやや曲げ、第二のシール片37の先端部を基体31方向に僅かに指向させるとともに、第二のシール片37の中央部38やその近傍付近を第一のシール片35方向に向けるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0052】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、第二のシール片37が内向きに僅かに湾曲するので、容器本体1の隣接面9に対して第二のシール片37をより撓ませて圧接範囲を拡大することができる。また、第二のシール片37の形状の多用化も期待できる。
【0053】
なお、上記実施形態では容器本体1の底板に複数の給排バルブ4を装着したが、蓋体20に複数の給排バルブ4を装着しても良い。また、上記実施形態では容器本体1内にシール形成面8と隣接面9とをそれぞれ形成し、蓋体20の裏面周縁部に取付溝25を形成したが、蓋体20の裏面や周面にシール形成面8と隣接面9とを形成し、容器本体1内に取付溝25を形成してシールガスケット30を嵌入しても良い。
【0054】
また、シールガスケット30の基体31における表裏面の少なくとも一方の面に、単一の位置決めリブ32を突出形成しても良い。さらに、上記実施形態では延出片33に、第二のシール片37の末端部に挟むよう一対の柔軟性付与溝34を切り欠いたが、第二のシール片37の末端部に隣接する単一の柔軟性付与溝34を切り欠くことができる。