(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記還元作用を示す有機リン化合物を、キャビティ・トランスファー・ミキサーによる混合によって粒子形で存在する前記ポリマーPMに添加することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱変形性の熱可塑性樹脂の、殊にイミド化されたポリメチルメタクリレートを基礎とする成形材料の製造、処理および使用に関する。本発明は、例えば光導体に適用するための成形体に処理した後に、熱負荷下でも高い透明度(>90%)、低いヘーズ(<1%)および黄色度の僅かな上昇のみを示す成形材料を記載する。
【0002】
殊に本発明は、請求項1の上位概念に従った成形材料の製造法に関する。
【0003】
イミド化ポリメチルメタクリレートを基礎とするポリマーは、透明度が高く、かつ、その際に特に耐熱変形性である熱可塑性樹脂の固有のグループである。この材料からの成形体は、他の高透明性の熱可塑性樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)からの成形体より明らかに高い温度にずっとさらされることができる。当然、より高い熱負荷によって変色する危険性も高まる。この高性能の熱可塑性樹脂を、例えばランプのカバー用に使用できるようにするために、該樹脂を、黄色度の上昇として目で確認できる、熱により引き起こされる変色から保護することが必要不可欠である。該黄色度は、DIN 6167(D65/10)に従って、もしくはASTM D 1925に従って測定される。
【0004】
しかしながら、例えば光導体としてのような他の適用において、比較的高い温度での黄変に対するこの安定性は、唯一の決定的な判断基準ではない。たしかに、例えば光導体の場合、熱安定性(殊に長期安定性)は重要な役割も果たすが、しかし、高い透明度を同時に示しながら黄色度およびヘーズが同時に低下することと比較して、むしろ大して重要ではない役割を果たす。この関連において、および本出願内では、該ヘーズはISO 14782(first edition 1999-08-15)に従って決定され、かつ該透明度はISO 13468−2に従って測定される。
【0005】
RD 321 114には、イミド化を酸素不含の雰囲気で実施することによって、ポリメタクリルイミドの黄色化を軽減する方法が記載される。この場合、酸素の除去は、経済的に好ましくない、煩雑な蒸留法によってのみ達成されることができる。
【0006】
EP−A 576 877には、低い黄色度を有するポリメタクリルイミドおよびポリアクリルイミドを基礎とするポリマーが記載され、その際、ホスフィン酸またはリン酸の無機塩が、該イミド化反応に際して添加される。
【0007】
該イミド化反応は、メタクリル酸および/またはアクリル酸のC
1〜C
20−アルキル基を基礎とするポリマーと、アンモニアまたはアルキル置換された第一級アミンとの反応から成る。該反応は、高い圧力および高い温度にて溶融状態でまたは溶解状態で行われる。EP−A 576 877に従って、該リン化合物は該反応混合物に添加され、それによりこれらの過酷な条件にさらされる。結果物は、比較的僅かな黄化を示す成形材料である。しかし、本出願人によるこの従来技術の再検査において、これらの成形材料から製造された成形体が熱負荷に際して明らかな黄変現象を示すことがわかった。それは初めだけ黄色度に関して低いレベルにある;しかし、熱負荷の継続とともに、該黄色度は漸次的に増大し始める。予め添加される還元性リン化合物による安定化作用は、ここではほとんど認めることができない。それゆえ、これは該イミド化条件下で実質的に使い果たされているか、または分解したものと想定され得る。
【0008】
該リン化合物の使用量は、それに応じて高い(作用損失を調整するためと推測される):イミド化されるべきポリマーの量に対して、有利には0.1〜1質量%の量が使用される。添加の量を増やすことは、ほとんど考慮されない。なぜなら、その際に該ポリマーの他の特性が悪化させられるからである:本出願人の認識によれば、すでに0.1質量%を上回る還元性リン化合物を添加した場合ですらポリマー中で混濁が生じる。
【0009】
ここで言及した方法に際しての該還元性リン化合物の分解の徴候として、EP−A 576 877に従った本出願人の試験において、ホスフィンの発生を、殊に高い使用濃度の場合に検出したことが当てはめられることになる。それに従って、ここで起こる分解反応の一つとして、次亜リン酸塩の不均化反応が想定される。
【0010】
同様の技術分野に属するEP−A 0 776 932から、黄色度を減少させる安定剤として無機次亜リン酸塩の添加が公知である。もっぱら無機の還元作用を示すリン化合物は、イミド化反応中に使用されるのではなくて、後でポリメチルメタクリルイミドに添加される。EP−A 0 776 932の例において記載された黄色度を達成するために使用される安定剤(次亜リン酸ナトリウム)の量は、0.5質量%または1質量%である。しかしながら、かかる高い安定剤濃度の場合、安定化されたPMMIは、比較的高く、かつ一連の適用において妨げとなるヘーズ値を有する。例えば、EP−A 0 776 932の例、殊に例8〜10から読み取れられることは、次亜リン酸ナトリウムの含量の上昇とともにヘーズも上昇することである。2000ppmの含量の場合、例えば約10のヘーズ値が測定される。しかしながら、これらは特定の適用(例えば光導体用)には、およそ不適格である。
【0011】
EP−A 0 776 932に記載の安定化された成形材料は、<2または<1の黄色度も示す成形体の製造を可能にするにも関わらず、比較的高い温度および/または比較的長い負荷継続時間にて僅かな黄色度および安定性の高い持続性を有するのに加えて、非常に低いヘーズ(曇り度)と高い透明度も有する、改善された、殊にさらに安定な成形材料の需要も存在する。
【0012】
なかでも熱負荷下でプラスチック成形材料の変色を妨げるとされる還元性の有機リン化合物の使用は公知である(例えばKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd. Ed., Vol. 3, page 133, Wiley, New York, 1978を参照のこと)。場合により該化合物は、処理前、つまり配合工程に際して該成形材料にも添加される。例えば、日本国公開特許出願JP 60 123 547によると、比較的高い温度での射出成形条件下で、メチルメタクリレート単位、スチレン単位および無水マレイン酸−モノマー単位からのコポリマーの変色の改善が、かかるコポリマーに射出成形による処理前に少なくとも1つのホスファフェナントレンの誘導体および酸化分解に対する安定剤として付加的に立体障害フェノール、チオプロピオン酸エステルまたはリン酸エステルが混ぜられる場合に観察される。
【0013】
日本国公開特許公報JP 60 120 735は、メチルメタクリレート、ビニル芳香族化合物および重合導入された環状酸無水物からのコポリマーを記載し、該コポリマーには、熱安定性を高めるために、および熱応力下でのかかるコポリマーの変色を回避するために、溶融物中に、例えば射出成形において、リン酸エステルおよび立体障害フェノールを基礎とするさらなる安定剤が添加される。
【0014】
日本国公開特許公報JP 03 167 245には、メチルメタクリレート、N−置換マレインイミドおよびさらなる共重合可能なモノマーからのコポリマーの、アルキル置換トリアリールホスファイト、ジアルキルペンタエリトリトールホスファイトならびにホスファフェナントレンの誘導体の群から選択された化合物による安定化が特許請求される。
【0015】
日本国公開特許公報JP 63 163 306は、光学的な光導体ファイバー用のコア材料としてメチルメタクリレートおよびC
8〜C
20−アルキルメタクリレートからのコポリマーを包含し、該コポリマーは、安定剤としてホスファイト、例えば立体障害ジアリールペンタエリトリトールジホスファイトまたはチオホスファイトを、熱負荷下に際しての変色を改善するために含有する。
【0016】
ここで挙げられる4つの日本国特許には、例外なく立体障害された有機ホスファイトが記載されるかまたは立体障害フェノールと一緒に有機ホスファイトが記載される。
【0017】
JP 010 79 202には、MMA/無水マレイン酸を基礎とするコポリマーのイミド化が開示される。ホスファイト安定剤の存在における生じた反応生成物の脱気により、低い黄色度を有する成形材料がもたらされることが指摘される。
【0018】
JP 05 070 652 Aは、安定剤として様々な有機ホスファイトおよびホスホナイトを、イミド化されたポリアクリレートおよびポリメタクリレートの処理に際して使用することを開示する。相応する安定剤は、後でポリマーマトリックス中に配合導入工程によって組み込まれる。
【0019】
EP 463 754には、トリアルキルホスファイトまたは脂肪族の二環式ジホスファイトの使用により、PMMIの黄色度の軽減がもたらされることが記載される。さらに、これらの安定剤がPMMIの長期色安定性も引き起こすことが記載される。
【0020】
EP 396 336 Aは、立体障害オルガノホスファイトおよび−ホスホナイトの使用を開示する。特許出願EP 463 754A1において、ここでもイミド化に際して安定剤を添加する可能性が言及されるが、しかしながら、安定剤を後で組み込むことしか記載されない。
【0021】
最後にDE 4 219 479 Aは、次亜リン酸塩が製造中に添加された場合に、黄色度安定作用を示すことを特許請求する。しかし該特許は、もっぱら無機次亜リン酸塩に限定される。そのうえ該特許中では、リン含有の有機安定剤の添加により、光学的特性(なかでも黄色度)の悪化がもたらされることが言及される。
【0022】
ポリメチルメタクリルイミド(PMMI)成形材料は、物理的特性の固有の組み合わせによって際立っており、かつ車両−および光学領域における種々の特別な適用のために使用される。高い耐熱変形性、透明性および良好な耐候性が、PMMI成形材料に、これらの市場セグメントで特別な地位を付与する。
【0023】
その高い耐熱変形性の前提として、PMMI成形材料の製造(PMMAの反応押出)および加工に際して非常に高いエネルギー供給が必要とされる。ポリマー分子のみならず試薬(もしくは除去されるべき副生成物)もさらされる、剪断および加熱によって生ずる熱負荷は、種々の副反応をもたらす(なかでも分解反応)。それに従って、光学的特性の悪化(なかでも固有色の損失、透明度損失)の原因となり得る様々な不飽和構造が発生し得る。一般的に、ポリマーコンパウンドの定義にて、非常に頻繁に様々な安定剤が使用されることが公知である。それらの使用によって、材料特性の悪化が防止または制御されることができる。
【0024】
ここに記載および議論される従来技術に鑑みて、本発明の課題は、適した安定剤または安定化パッケージの使用によって、PMMI成形材料と同様に成形体も光学値に関して明らかに改善することであった。そのうえ、この良好な光学的特性は、PMMI成形体の使用時間中も引き続き保持されるべきである。さらに、本発明の成形材料は、一工程での簡単な方法によって製造されることができるべきである。特に、本発明の課題は、黄色度あるいはその持続性を、好ましくない混濁を甘受する必要がないように改善することであった。
【0025】
これらの課題ならびに明示的には記載されていないものの、冒頭の議論から容易く導き出され得るさらなる課題は、請求項1の上位概念に従う熱負荷に際して改善された色安定性を有する成形材料FMの製造法にて、請求項1の特徴を示している部分の特徴部により解決される。好ましい方法の変更態様は、方法に関する該独立請求項を引用する請求項の主題である。
【0026】
冒頭に記載した方法にて、該リン化合物が、式II
【化1】
[式中、R
4およびR
5は、互いに無関係に、水素または芳香族6員環を意味し、該芳香族6員環は、C
1〜C
4−アルキル基で5回まで置換されていてよく、その際、該基R
4またはR
5の少なくとも1個は水素ではなく、かつR
6は、水素またはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたはアンモニウムであり、それは4つまでのC
1〜C
4−アルキル基および/またはC
5〜C
8−シクロアルキル基で置換されていてよい]の化合物から成る群から選択された有機リン化合物OPであることによって、容易くは予見し得ない形で、比較的大きいおよび/または比較的長い時間の熱応力に際しても、色安定性の顕著な持続性を有し、かつ同時に有利なヘーズと高い透明度も有する色安定性の成形材料FMを提供することに成功する。PMMI成形材料のこの特性プロフィールは、その組み合わせについてこれまで他になかった。
【0027】
本発明による方法のための出発生成物は、ポリ(メタ)アクリルイミドを基礎とする既製のポリマーPMである。該ポリマーPMは、式I
【化2】
[式中、R
1およびR
2は、水素およびメチルであり、かつR
3は、水素、C
1〜C
18−アルキル、C
5〜C
8−シクロアルキル、C
6〜C
10−アリール、C
6〜C
10−アリール−C
1〜C
4−アルキルを意味し、その際、これらの基は、C
1〜C
4−アルキル、C
1〜C
4−アルコキシおよびハロゲンから成る群から選択された基で3回まで置換されていてよい]の単位を含有する。
【0028】
該ポリマーPMの製造法は、本発明に関係しておらず、これに関する従来技術を前提とする。該出発生成物の製造は、例えばDE−A 40 02 904、EP−A 234 726、US−A 4 246 374、US−A 3 246 374、EP−A 396 336およびEP−A 576 877に開示される。
【0029】
式Iで記載される構造は、ポリマー中に少なくとも5質量%、有利には少なくとも30質量%、特に有利には少なくとも60質量%で含まれており、その際、該イミド基は、有利にはメチル(R
3=メチル)で置換されている。式IにおけるR
1およびR
2も、有利にはメチル基である。それに応じて、特に有利なポリマーは、(N−メチル)ジメチルグルタルイミド単位を含有する。製造に基づき、ポリマー中にはグルタルイミド単位のみならず、少量の酸−および無水物単位、ならびに残留する(メタ)アクリルエステルも含まれていてよい。スチレン、α−メチルスチレン、メタクリロニトリル、酢酸ビニルまたは他のエチレン性不飽和コモノマー、例えばエチレンまたはブタジエンを含有するポリマーでイミド化が実施される場合、それらは反応の影響を受けないままであり、かつ本発明による方法のための出発生成物PMのポリマー組成の成分を形成する。
【0030】
ポリ−N−メチルメタクリルイミドを基礎とする有利なポリマーは、特に耐熱変形性の熱可塑性樹脂である。そのビカット値は、該イミド基のメチル化度に応じて120℃〜200℃超である。前者の値は、約5%の低いイミド化度の場合に、後者の値は、高いイミド化度の場合に得られ、その際、該イミド基の置換基の一部のみがメチル基である。
【0031】
還元作用を示す有機リン化合物OPは、式II
【化3】
[R
4、R
5およびR
6は、互いに無関係に、これらに関して上記記載の意味を想定してよい]に従う。
【0032】
還元作用を示す有機リン化合物OPは、酸化数+1のリンを含有する。工業的に簡単に入手可能なのは、この場合、ホスフィン酸の塩(次亜リン酸塩)ならびに該遊離酸自体である。これらは該ホスフィン酸の有機誘導体であることが明示的に言及される。その際、該塩または該遊離酸がオルト形またはメタ形で存在するか、または例えばダイマーとしても存在するかどうかは重要でない。使用可能なのは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩およびアンモニウム塩であり、その際、該アンモニウムイオンは、4個までのC
1〜C
4−アルキル基および/またはC
5〜C
8−シクロアルキル基で置換されていてよい。
【0033】
加工処理のために特に重要なのは、リン(酸化数1)を基礎とし、なお付加的に遊離P−H結合を有する、式IIの安定剤である。これに属するのは、R
4またはR
5が水素である、式IIの化合物である。かかる構造の物質は、場合によっては、既製のPMMI成形体のための安定剤として特に適している。式(II)の化合物のなかで、基R
4またはR
5の1つが水素であり、かつ他方の基が芳香族6員環、好ましくはフェニル基であるものも特に重要である。ベンゼンホスフィン酸もベンゼンホスフィン酸の塩と同様に特に効果的であると判明した。
【0034】
本発明の方法のもう一つの変更態様において、式IIの2つ以上の化合物の組み合わせが有用であると判明した。特別な一方法は、好ましくは、還元作用を示す有機リン化合物OPとして、ベンゼンホスフィン酸をベンゼンホスフィン酸ナトリウムと混合した形で有する。
【0035】
有利なのはまた、式IIの化合物と、その他のリン化合物との組み合わせである。例えば、無機または有機のホスファイトとの組み合わせが特に好ましい観点を与える。
【0036】
特に効果が期待でき、かつ低コストで得られるのは次亜リン酸ナトリウムである。式IIの化合物との組み合わせにおけるその使用は、本発明の有利な一実施態様である。文献によれば、それは不均化反応下で容易に熱分解するにも関わらず、本発明のために有効であることが実証された。
【0037】
さらに安定なのは、次亜リン酸アルカリ土類金属塩、例えば次亜リン酸カルシウムである。式IIの化合物との組み合わせにおけるこの塩の使用も特に有利な一実施態様である。当然のことながら、塩混合物も使用されることができる。
【0038】
還元性無機リン化合物の使用に関する従来技術と比較して、本発明により極めて少ないその濃度ですら十分であることは意外である。例えば、該ポリマーに対して0.005質量%ですでに認められる効果が得られる。最大効果は、すでに0.02〜0.05質量%で達成されることができる。たいていの場合、0.5質量%より高い濃度、好ましくは0.1質量%より高い濃度を選択することは適切ではない。1質量%を超える還元性有機リン化合物OPを添加することは目的に適ってはいない。なぜなら、この場合、例えばポリマー中での混濁または悪化した耐候性といった、すでにある種の特性の悪化が観察され得るからである。それに従って、ポリマーのPMに対して少なくとも0.005質量%かつ0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満の還元作用を示す有機リン化合物の濃度が有利である。
【0039】
式IIの有機リン(I)と無機リン化合物、好ましくは次亜リン酸塩とからの混合物が使用される場合、この使用量は幅広い範囲にわたって変化してよい。
【0040】
適切には、式IIの化合物および無機リン化合物の全体量は、0.005質量%〜1質量%の範囲にあり、その際、無機リン化合物に対する式IIの化合物の比(w/w)は、100:1〜>1:1である。適切な比は、5:1〜>1:1の範囲にある。
【0041】
本発明による有機還元性リン化合物OPは、一般に溶解した状態で加えられる。たいていの場合、メタノールおよび/またはエタノールまたは他のアルコールまたはアルコール/水−混合物が溶媒として最も適している。好ましくは、該還元性リン化合物は、可能な限り濃縮された溶液の状態で適用される。基準値として50質量%の濃度が挙げられる。それは室温で通常用いられる。溶解温度および適用温度に応じて、他の濃度、例えば30質量%〜65質量%も可能もしくは必要となる。該リン化合物の濃縮溶液である還元性試剤のそのように低い体積ですら、明らかにポリマーバッチ全体にわたって均一に分散されることができるのは意想外である。
【0042】
しかし、該還元性有機リン化合物を粉末の形で、すなわち溶媒を使用せずに加えることも可能である。
【0043】
還元性リン化合物の混合物の成分を連続して該ポリマーに添加することが原則的に可能であるとしても、一般にはまず、該成分の混合物または溶液を製造して、これを一工程において該ポリマーに添加する。均一な分散のために、一成分安定剤がより好ましい。
起こりうる黄色化の光学的な中和のために青色顔料または青色の着色剤を添加することが完全に回避され得る。
【0044】
該還元作用を示す有機リン化合物OPの混入は、本発明により、処理の後の時点で行われる。それによって脱色剤の早期分解が回避可能とされる。なかでも、従来技術のように、イミド化に際して高い熱負荷にはさらされない。反応押出機中への添加は決して行われず、常に反応ゾーン通過後に行われる。
【0045】
1つの可能性は、イミド化反応の終了直後に、該還元作用を示す有機リン化合物を、該反応押出機に後接続されたベント式押出機中に混入することである。計量供給箇所は、すでに脱気された溶融物中への添加が行われるように選択される。この添加法の利点は、付加的な処理工程が必要でなく、かつシームレスに該反応に続くことである。
【0046】
さらなる1つの可能性は、該還元作用を示す無機リン化合物を、配合に際して既製のポリマーに添加することである。
【0047】
この本発明による方法の実施のために、該ポリマーは、可能であれば粒子形で存在することが望ましい。適しているのは、例えば特に顆粒またはそれに種々の粉砕度における粉砕物である。有利には1〜5mmの平均粒径が選択される。該還元作用を示す有機リン化合物と粒子形で存在するポリマーPMとの混合は、通常初めに、低速混合ユニット、例えばドラムミキサー、ドラムフープミキサーまたはダブルチャンバー式プローシェアーミキサー中で行われる。特に有利なのは、いわゆるキャビティ・トランスファー・ミキサー(Cavity-Transfer-Mischer)である。該低速ユニットは、界面を無くすことなく混合する(Ullmanns Enzyklopaedia der technischen Chemie,4th edition,vol.2,page 282〜311,Verlag Chemie,Weinheim,New York,1980)。この混合物は、後に続く溶融物の処理工程において熱可塑性に処理される。このために加熱可能な混合ユニットが、それに適した温度で、一般に250〜350℃の間の温度で使用される。例えば、かかる加熱可能な混合ユニットは、揺動軸ならびに場合により付加的に剪断ピンを有する一軸押出機または多軸押出機である。この方法により、例えば1〜5mmの粒度での本発明による成形材料FMが製造されることができる。
【0048】
さらなる1つの添加変法は、すでに造粒または粉砕された形で存在するイミド化されたポリ(メタ)アクリレートを別個の押出機中で再び溶融し、かつ該還元作用を示す有機リン化合物OPを該溶融物に添加することである。この場合、例えばそれは溶液としてポンプ供給されることができる。この場合、冷却および切断後に、同様に本発明による成形材料FMが得られる。好ましくは、この添加変法は、直後に続く形状付与処理と結び付けられることができる。
【0049】
本発明による成形材料FMは、成形体FKへと処理される。そのために慣例の技術方法、例えば射出成形、押出成形、プレス成形、焼結、ならびに他の形状付与法も適している。該成形体の形態に制限は設けられていない。その高い耐熱変形性に従って、使用の重点が置かれるのは、当然のことながら、高い温度にさらされる成形体、例えば照明技術における光導体適用またはレンズ、ならびに自動車の温度負荷がかかった領域における成形部材、例えばヘッドランプレンズ、バックアップライトまたはフォグライト等である。
【0050】
該還元性有機リン化合物を混入する方法は、一般に単独の、簡単な方法工程である。なぜなら、安定剤は一成分として添加されるからである。製造法自体に影響を及ぼす必要がないことは好ましい。というのも、該ポリマーは慣用の生成物であり、かつ工業規模においてすでに製造されるからである。該還元性有機リン化合物OPの量および化学的性質に関して、該方法は低コストである。安定剤は少ししか必要とされず、特にそれは費用がかからない。
【0051】
重要なのは応用技術的な利点である。例えば、本発明による成形体は、本発明による方法の実施後に実際には無色である。該成形体の黄色度またはYi(yellowness index)−それはDIN 6167(D65/10)に従ってもしくはASTM D 1925に従って測定される−は2以下、有利には1以下である。本発明による処理に供されなかった、すなわち、還元作用を示す無機リン化合物を添加せずに配合された試験体は、一般に3を上回る黄色度を有する。
【0052】
該黄色度の代わりに、60×45×3mmの寸法を有する射出成形されたスラブの透過度も光学的特性を特徴づけるのに考慮してよい。本発明により製造されたスラブの透過度は、透過度92%の理論値付近にあり、すなわち、イミド化度に応じて86〜92%である。有利なのは、>90%の、極めて有利には>90%〜92%の範囲の、それにも増して有利には90.5%のまたは90.5%〜92%の範囲の透過度の値である。
【0053】
しかしながら、本発明による方法の決定的な利点は、優れたヘーズと同時に高い透明度との組み合わせにおける継続的な熱負荷下での該成形体の優れた色安定性である。たしかに、黄色度の上昇は必ずしも全てが回避可能ではないけれども、それは一般に従来技術のものより明らかに低い。そのうえまた、本発明はヘーズの不所望な上昇を極力軽減する。成形体FKの色安定性は、貯蔵時間1000時間まで160℃にて循環空気乾燥炉中で試験スラブを熱負荷にかけることによって検査される。特定の時間間隔において、該黄色度は再検査され、その際、該黄色度上昇の曲線が作成されることができる。本発明による成形体は、平均して毎時<0.02のみの黄色度上昇を示す。それどころか毎時0.01未満の黄色度上昇が可能である。本出願人の試験において−例を参照のこと−800時間にわたる160℃の熱負荷に際して、<1.5の黄色度、多くの場合に<1.0の黄色度が達成された。
【0054】
本発明による成形材料FMは、光学的に要求度の高い成形部材の製造に際しても使用される。特に長い流路および/または複雑な成形部材形状にはまさに高い処理温度が必要である。ここで、本発明による還元性有機リン化合物OPは、該成形部材の黄変に対する安定性をその製造中にもたらす。
【0055】
本発明の対象はまた、上記方法に従って得られるような成形材料FMから得られる成形体FKである。
【0056】
有利な実施形態において、かかる成形体は、<2、有利には<1の黄色度を有すことを特徴とする。ヘーズは、有利には<1.5%、特に有利には<1%である。
【0057】
好ましい態様において、本発明の成形体は、>89%〜92%、>90.5%〜92%の範囲の透明度を有することを特徴とする。
【0058】
極めて有利には、成形体FKは、光導体適用にて使用される成形体であり、極めて適切には光導波体である。
【0059】
以下で本発明を、例および場合により比較例を手掛かりにして詳述する。
【0060】
例1(安定剤添加なしの比較)
非常に効果的な混合部を有する反応押出機と、2つのベントゾーンおよび付属のバキュームラインを有するベント式押出機とから成る反応押出装置で、重合類似の反応、すなわちイミド化を実施した。1時間当たりにつき、該反応押出機中にPMMA成形材料10kgを入れた。該混合セクションの第一の部分には、液体用の供給箇所が存在する。この供給箇所に、反応媒体としてメチルアミン3000gを毎時供給した。平均反応時間は、250℃の温度にて5分間であった。反応の終了後、反応混合物を、ガス状および揮発性成分を除去するベント式押出機中で放圧し、そして最終的にストランドを押出し、冷却し、かつ顆粒へと切断した。
【0061】
得られた生成物から、射出成形機Arburg 221で、相当数の試験体65×40×3mmを射出成形して、そこからDIN 6167およびISO 14782に従って黄色度、透明度およびヘーズを測定した。ISO 306,process B 50に従って測定されたビカット軟化温度は172.4℃であった。4個の射出成形された試験体を循環空気加熱炉に装入して、160℃で1000時間貯蔵した。そのつど144h、336h、504h、768hおよび1008hの貯蔵時間後に、1個の試験体を取り出し、かつ冷却した。引き続き、黄色度、透明度およびヘーズを測定した。以下の結果が得られた:
【表1】
【0062】
安定剤なしの場合、貯蔵されなかった該供試体ですら黄色度は明らかに高すぎることが認められる。しかしながら、ヘーズおよび透明度の値はなお許容範囲にある。加熱貯蔵において、該黄色度は大きく上昇する。透明度およびヘーズも、該供試体の熱負荷の継続時間が増すとともに悪化する。
【0063】
例2(本発明による)
既製のPMMI顆粒への有機次亜リン酸塩の添加
例1のように処理を行ったが、ただし、ベンゼン次亜リン酸(BHPS)のメタノール溶液10.4%(質量%)を、後接続されたベント式押出機中に0.2KG/hの計量供給速度で添加するという変更点を加えた。計量供給箇所は、揮発性および脱ガス性の成分が除去された溶融物中への添加が行われるように選択した。PMMI成形材料中での該BHPSの最終濃度は3000ppmであった。得られた顆粒から、例1に従って試験体を製造し、かつ1000hの期間にわたって160℃で熱的負荷をかけた。以下の結果が得られた:
【表2】
【0064】
ベンゼン次亜リン酸の使用によって良好な透明度、低いヘーズおよび黄色度を達成できることが認められる。加熱貯蔵において、透明度およびヘーズの値は、ほんの僅かしか変化しない。たしかに黄色度は上昇するが、しかし、達成され得る基準は許容範囲にある。
【0065】
例3(本発明による)
既製のPMMI顆粒への有機次亜リン酸塩の添加
例2のように処理を行ったが、ただし、ベンゼン次亜リン酸のメタノール溶液8.4%(質量%)を、後接続されたベント式押出機中に0.2KG/hの計量供給速度で添加するという変更点を加えた。PMMI成形材料中での該BHPSナトリウム塩の最終濃度は2200ppmであった。
【0066】
以下の結果が得られた:
【表3】
【0067】
ベンゼン次亜リン酸ナトリウム塩の使用によって同様に良好な透明度、低いヘーズおよび黄色度を達成できることが認められる。
【0068】
例4(比較例)
既製のPMMI顆粒への無機次亜リン酸塩の添加
例2のように処理を行ったが、ただし、次亜リン酸ナトリウムのメタノール溶液3.75%(質量%)を、後接続されたベント式押出機中に0.08KG/hの計量供給速度で添加するという変更点を加えた。PMMI成形材料中での該次亜リン酸ナトリウムの最終濃度は250ppmであった。
【0069】
以下の結果が得られた:
【表4】
【0070】
例5(比較例)
既製のPMMI顆粒への無機次亜リン酸塩の添加
例2のように処理を行ったが、ただし、次亜リン酸ナトリウムのメタノール溶液3.75%(質量%)を、後接続されたベント式押出機中に0.26KG/hの計量供給速度で添加するという変更点を加えた。PMMI成形材料中での該次亜リン酸ナトリウムの最終濃度は750ppmであった。
【0071】
以下の結果が得られた:
【表5】
【0072】
例4および5(比較例)の場合、次亜リン酸ナトリウムおよびPMMI溶融物は−該PMMI溶融物と良好な相溶性を示し、かつ、それによって分子レベルで均一に該溶融物中に分散され得る有機安定剤(例2および3)とは対照的に−互いに融和性ではないことが認められる。該無機安定剤をPMMI中に混入した場合、次亜リン酸ナトリウムの結晶がポリマー中に形成される。それによって招かれる光散乱により、成形体の濁り度(ヘーズ)が上昇し、かつ光導体としての該成形体の適用が妨げられることになる。
【0073】
例6〜8(本発明による)および例9〜11(比較例)
安定剤のその後の配合
得られた顆粒15kgを、30lのステンレス鋼容器中に注入し、かつ安定剤の相応する量を量り入れた(表5〜6を参照のこと)。ここで、安定剤の添加は、イミド化反応の終了後に、しかし配合前に行った。タンブルミキサーで、該成分を4分間完全混和し、かつ25mm(=d)二軸押出機のホッパーに入れた。この32×dの長さの二軸押出機により混合物を配合した。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
例6〜8を手掛かりにして、たしかに、有機安定剤によるPMMIのその後の安定化が黄色度の低下をもたらすことが認められる。しかしながら、ヘーズは、例えば例2(BHPS遊離酸 3000ppm)を、例7(BHPS遊離酸 1000ppm)および例8(BHPS遊離酸 1500)と比較した場合、増大している。このことからベント式押出機中への安定剤の計量供給(例2および3)を行うことが好ましいと推論することができる。
【0077】
また例9〜11からは、次亜リン酸ナトリウムの含量の上昇とともにヘーズも上昇すること、BHPSが安定剤として使用される例と比較して、該ヘーズはより悪化していることが読み取れる。