特許第5713908号(P5713908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713908発泡性樹脂粒子の製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713908
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】発泡性樹脂粒子の製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20150416BHJP
   C08J 9/22 20060101ALI20150416BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20150416BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20150416BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20150416BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08J9/18
   C08J9/22
   C08K5/07
   C08K5/3475
   C08L23/00
   C08L25/04
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-530828(P2011-530828)
(86)(22)【出願日】2010年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2010065237
(87)【国際公開番号】WO2011030731
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2012年2月6日
【審判番号】不服2014-2668(P2014-2668/J1)
【審判請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2009-207345(P2009-207345)
(32)【優先日】2009年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松村 英保
(72)【発明者】
【氏名】岡 貴司
【合議体】
【審判長】 田口 昌浩
【審判官】 須藤 康洋
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−155161(JP,A)
【文献】 特開平11−255946(JP,A)
【文献】 特開2007−270116(JP,A)
【文献】 特開2005−97555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-42
C08K5/07,3475
C08L23/00,25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性樹脂粒子となりうる樹脂粒子に発泡剤を含浸させる時に、前記樹脂粒子に紫外線吸収剤を接触させることにより紫外線遮蔽性を有する発泡性樹脂粒子を得る発泡性樹脂粒子の製造方法であり、
前記樹脂粒子がポリスチレン系樹脂を含み、
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であり、前記樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部使用される発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む樹脂粒子である請求項1に記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂120〜560重量部とを含む樹脂粒子である請求項1又は2に記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法により得られた発泡性樹脂粒子を嵩倍数5〜60倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の予備発泡粒子を型内発泡させることにより得られ、かつ紫外線吸収剤を含む発泡性樹脂粒子から得られる発泡成形体であり、
前記発泡成形体は、その表皮から5mmの厚さにカットされた試料において、3%以下の365nmの波長の光の透過率を有し、
前記発泡性樹脂粒子がポリスチレン系樹脂を含み、
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であり、前記樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部使用される発泡成形体。
【請求項6】
前記樹脂が、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む請求項5に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂粒子の製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、紫外線吸収機能が付与された発泡性樹脂粒子の製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明の発泡性樹脂粒子から得られた発泡成形体は、紫外線によりダメージを受けることがある電気製品を輸送及び/又は保管する容器に適している。
【背景技術】
【0002】
種々の製品又はその部品が、輸送や保管時の破損から保護するために、容器に入れられている。そのような容器には、通常樹脂製の容器が使用され、特に衝撃に対して緩衝性を有する発泡成形体製の容器が好適に使用される。
ところで、製品の場合、その製造場所と販売場所が離れていることがある。部品の場合、部品の製造場所と、その部品を製品に組み込む場所が離れていることがある。近年、経済のグローバル化に伴って、それら場所が国境を越えることがある。そのため製品又は部品の輸送や保管が長期間に及ぶことがある。例えば、電気製品は、紫外線の照射により劣化することが知られている。輸送や保管が長期間に及ぶ場合、紫外線に電気製品が晒される機会が増えることになる。従って、容器には、優れた衝撃に対する緩衝性に加えて、輸送時や保管時に晒される紫外線に対する遮蔽性が求められている。
【0003】
紫外線吸収剤を付与した発泡成形体を製造するために、樹脂成分に予め紫外線吸収剤を存在させる方法を検討した文献として、特開2002−155161号公報(特許文献1)が挙げられる。この文献では、樹脂成分と紫外線吸収剤との混合を押出機で行い、押出されたペレットに発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−155161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報は、紫外線吸収剤を耐候性の向上を目的として使用している。また、紫外線吸収剤は、押出機により樹脂成分と混合されている。そのため、得られる発泡成形体は、ある程度の紫外線を遮蔽できる。しかし、効率よく、簡易に紫外線吸収剤を樹脂成分に混合でき、紫外線遮蔽性を更に向上させるとともに、耐衝撃性を兼ね備えた発泡成形体及びそれを製造するための発泡性樹脂粒子の製造方法の提供が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
樹脂粒子の製造方法としては、例えば、押出法、懸濁重合法、乳化重合法等の種々の方法が知られている。本発明者等は、紫外線吸収剤の添加時期について検討した結果、紫外線吸収剤の添加時期を、樹脂粒子の製造時ではなく、発泡剤の含浸時にすることで、高い次元で紫外線の遮蔽性と耐衝撃性とを兼ね備えた発泡成形体を提供しうる発泡性樹脂粒子が得られることを意外にも見出し、本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、発泡性樹脂粒子となりうる樹脂粒子に発泡剤を含浸させる時に、前記樹脂粒子に紫外線吸収剤を接触させることにより紫外線遮蔽性を有する発泡性樹脂粒子を得る発泡性樹脂粒子の製造方法であり、
前記樹脂粒子がポリスチレン系樹脂を含み、
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であり、前記樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部使用される発泡性樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られた発泡性樹脂粒子を嵩倍数5〜60倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記予備発泡粒子を型内発泡させることにより得られ、かつ紫外線吸収剤を含む発泡性樹脂粒子から得られる発泡成形体であり、
前記発泡成形体は、その表皮から5mmの厚さにカットされた試料において、3%以下の365nmの波長の光の透過率を有し、
前記発泡性樹脂粒子がポリスチレン系樹脂を含み、
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であり、前記樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部使用される発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂粒子と紫外線吸収剤の接触時期を、発泡剤の含浸時とすることで、簡易に効率よく紫外線吸収剤を樹脂粒子に吸収させることができる。従って、本発明によれば、紫外線の遮蔽性と耐衝撃性とを兼ね備えた発泡成形体を提供しうる発泡性樹脂粒子を得ることができる。
また、紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であり、樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部使用された場合、より紫外線の遮蔽性を向上した発泡成形体を提供しうる発泡性樹脂粒子を得ることができる。
更に、樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む樹脂粒子である場合、ビーズライフを改善するためにポリスチレン系樹脂成分を増やしても、紫外線の遮蔽性を維持しつつ、耐衝撃性及び耐割れ性に優れた発泡成形体を提供しうる発泡性樹脂粒子を得ることができる。
【0009】
また更に、樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂120〜560重量部とを含む樹脂粒子である場合、紫外線の遮蔽性を維持しつつ、よりビーズライフの改善と耐衝撃性及び耐割れ性を高い次元で両立可能な発泡性樹脂粒子を得ることができる。
上記発泡性樹脂粒子を嵩倍数5〜60倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子は、高い次元で紫外線の遮蔽性と耐衝撃性とを兼ね備えた発泡成形体を提供しうる予備発泡粒子である。
本発明の発泡成形体は、高い次元で紫外線の遮蔽性と耐衝撃性とを兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図2】実施例2の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図3】実施例3の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図4】実施例4の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図5】比較例1の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図6】実施例7の発泡成形体への照射光の波長と透過率の関係を表すグラフである。
図7】発泡成形体の紫外線の透過率の測定装置の概略図である。
図8】UVライト、実施例1及び比較例1の発泡成形体の波長毎の放射度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発泡性樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子の製造方法では、樹脂粒子と紫外線吸収剤との接触が、発泡剤の含浸時に行われる。ここで、紫外線吸収剤の樹脂粒子への接触は、発泡剤の含浸時に、紫外線吸収剤が樹脂粒子の周辺に存在することにより行われる。紫外線吸収剤は、発泡剤の含浸時と同時に添加してもよく、発泡剤の含浸前の予め樹脂粒子の存在する系に添加してもよい。
(1)樹脂粒子
樹脂粒子は、発泡性樹脂粒子となりうる粒子、言い換えると、発泡剤を含浸可能な粒子であれば特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これら樹脂の混合物等の樹脂成分からなる樹脂粒子が挙げられる。更に、樹脂成分には、本発明の効果を妨げない範囲で、ゴム成分(ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体等)が含まれていてもよい。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を使用できる。また、ポリオレフィン系樹脂は、架橋していてもよい。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。上記例示中、低密度は、0.91〜0.94g/cm3であることが好ましく、0.91〜0.93g/cm3であることがより好ましい。高密度は、0.95〜0.97g/cm3であることが好ましく、0.95〜0.96g/cm3であることがより好ましい。中密度はこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0013】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、もしくはスチレンを主成分とし、スチレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体である。主成分とはスチレンが全モノマーの70重量%以上を占めることを意味する。他のモノマーとしては、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が例示される。例示中、アルキルとは、炭素数1〜8のアルキルを意味する。
【0014】
樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを同時に含むことが好ましい。この場合、使用されるポリオレフィン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はスチレン−メクリル酸アルキルエステル共重合体であることが好ましい。
【0015】
ポリスチレン系樹脂は、樹脂粒子中、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して120〜560重量部の範囲で含まれることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂の含有量が560重量部より多いと、発泡成形体の耐割れ性が低下することがある。一方、120重量部より少ないと、耐割れ性は大幅に向上するが、発泡性樹脂粒子の表面からの発泡剤の逸散が速くなる傾向がある。そのため、発泡剤の保持性が低下することによって発泡性樹脂粒子のビーズライフが短くなることがある。より好ましいポリスチレン系樹脂の含有量は140〜450重量部、更に好ましい含有量は150〜400重量部である。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを同時に含ませる方法としては、例えば、両樹脂を押出機中で混練する方法、ポリオレフィン系樹脂からなる粒子に、水性媒体中で、スチレン系モノマーを含浸させ、次いでそのモノマーを重合させる方法等が挙げられる。この内、後者の方法は、より均一に両樹脂を混合でき、かつより球形に近い粒子が得られる観点から好ましい。ここで、後者の方法により得られた樹脂粒子をポリオレフィンとポリスチレンからなる複合樹脂粒子と称する。
以下では、上記後者の方法を説明する。
【0017】
まず、原料としてのポリオレフィン系樹脂粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、ポリオレフィン系樹脂粒子を作製できる。通常、使用するポリオレフィン系樹脂の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。以下では、ポリオレフィン系樹脂粒子をマイクロペレットとも記す。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂には、ラジカル補足剤が含まれていてもよい。ラジカル捕捉剤は、予めポリオレフィン系樹脂に添加しておくか、もしくは溶融押出と同時に添加してもよい。ラジカル補足剤としては、重合禁止剤(重合抑制剤を含む)、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカルを捕捉する作用を有する化合物で、水に溶解し難いものが好ましい。
ラジカル補足剤の使用量としては、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.005〜0.5重量部であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂粒子は、他に、タルク、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤等を含んでいてもよい。
【0019】
次に、ポリオレフィン系樹脂粒子を重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら重合させる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0020】
スチレン系モノマーは、スチレン及び置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用できる。また、スチレン系モノマーは、スチレンと、置換スチレンとの混合物、スチレンと共重合可能な少量の他のモノマー(例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、マレイン酸モノないしジアルキル(アルキル部分の炭素数1〜4程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノないしジアクリル酸ないしメタクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイド等)との混合物が使用できる。これら混合物中、スチレンが優位量(例えば、50重量%以上)を占めることが好ましい。
なお、スチレン系モノマーには、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アジピン酸ジオクチル、等の溶剤(可塑剤)を添加してもよい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂粒子へのスチレン系モノマーの含浸は、重合させつつ行ってもよく、重合を開始する前に行ってもよい。この内、重合させつつ行うことが好ましい。なお、含浸させた後に重合を行う場合、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面近傍でのスチレン系モノマーの重合が起こり易い。また、ポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸されなかったスチレン系モノマーが単独で重合し易い。その結果、多量の微粒子状のポリスチレン系樹脂粒子が生成する場合がある。
【0022】
スチレン系モノマーの重合には、油溶性のラジカル重合開始剤を使用できる。この重合開始剤としては、スチレン系モノマーの重合に汎用されている重合開始剤を使用できる。
重合開始剤を重合容器内の水性媒体に添加する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、
(1)重合容器とは別の容器内でスチレン系モノマーに重合開始剤を溶解して含有させ、このスチレン系モノマーを重合容器内に供給する方法、
(2)重合開始剤をスチレン系モノマーの一部、イソパラフィン等の溶剤又は可塑剤に溶解させて溶液を作製する。この溶液と、所定量のスチレン系モノマーとを重合容器内に同時に供給する方法、
(3)重合開始剤を水性媒体に分散させた分散液を作製する。この分散液とスチレン系モノマーとを重合容器内に供給する方法
等が挙げられる。
上記重合開始剤の使用量は、通常スチレン系モノマーの使用総量の0.02〜2.0重量%添加することが好ましい。
【0023】
水性媒体中には、水溶性のラジカル重合禁止剤を溶解させておくことが好ましい。水溶性のラジカル重合禁止剤はポリオレフィン系樹脂粒子表面におけるスチレン系モノマーの重合を抑制するだけでなく、水性媒体中に浮遊するスチレン系モノマーが単独で重合するのを防止して、ポリスチレン系樹脂の微粒子の生成を減らすことができるからである。
水溶性のラジカル重合禁止剤としては、水100gに対して1g以上溶解する重合禁止剤が使用できる。
上記水溶性のラジカル重合禁止剤の使用量としては、水性媒体の水100重量部に対して0.001〜0.04重量部が好ましい。
なお、上記水性媒体中に無機系分散剤等の分散剤と界面活性剤とを添加しておくことが好ましい。
【0024】
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系モノマーの懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、攪拌翼を供えた重合容器が好適に使用される。
また、攪拌翼の形状についても特に限定はなく、具体的には、V型パドル翼、ファードラー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内では、パドル翼が好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
【0025】
また、スチレン系モノマーをマイクロペレット中にて重合させる際の水性媒体の温度は、特に限定されないが、使用するポリオレフィン系樹脂の融点の−30〜+20℃の範囲であることが好ましい。より具体的には、70〜140℃が好ましく、80〜135℃がより好ましい。更に、水性媒体の温度は、スチレン系モノマーの重合開始から終了までの間、一定温度であってもよいし、段階的に上昇させてもよい。水性媒体の温度を上昇させる場合には、0.1〜2℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
更に、架橋したポリオレフィン系樹脂からなる粒子を使用する場合、架橋は、スチレン系モノマーを含浸させる前に予め行なっておいてもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させている間に行なってもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させた後に行なってもよい。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂の架橋に用いられる架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。なお、架橋剤は、単独でも二種以上併用してもよい。また、架橋剤の使用量は、通常、ポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)100重量部に対して0.05〜1.0重量部が好ましい。
架橋剤を添加する方法としては、例えば、架橋剤をポリオレフィン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤又はスチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
【0027】
(2)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、公知の紫外線吸収剤をいずれも使用できる。具体的には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ−(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール等のベンゾトリアゾール系、オクタベンゾンのようなベンゾフェノン系、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールのようなトリアジン系、マロン酸エステル系等の紫外線吸収剤が挙げられる。この中でもベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0028】
紫外線吸収剤は、発泡剤の含浸時に、含浸系に存在している。紫外線吸収剤は、発泡剤の含浸と共に、樹脂粒子と接触することで、樹脂粒子の表面層にコーティングされると共に、内部に浸透するものと発明者等は考えている。その使用量は、樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部より少ない場合、得られる発泡性樹脂粒子に含まれる紫外線吸収剤の量が少なくなり、その結果、所望の紫外線遮蔽性が得られないことがある。0.5重量部より多い場合、通常使用される発泡成形体の厚さから考えると、それ以上添加しても効果は同等程度のものしか得られないことや、生産時の取り扱いが不便であることや、耐衝撃性の低下が危惧される。より好ましい使用量は、0.02〜0.4重量部である。
【0029】
(3)発泡剤
発泡剤としては、公知の種々の揮発性発泡剤が使用できる。具体的には、ヘキサン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、工業用ペンタン、石油エーテル、ノルマルブタン、イソブタン、プロパン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の単独又は混合物が挙げられる。特に、ブタン、ペンタンを用いることが好ましい。
更に、発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤としては、例えば、シクロヘキサン、d−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、樹脂粒子100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。
【0030】
発泡剤の含浸は、例えば、加圧下又は常圧下、30〜140℃の温度で、それ自体公知の方法により0.5〜6時間行うことができる。例えば、V型、C型あるいはDC型等の回転混合機により、密閉耐圧の容器中で樹脂粒子を流動させ、発泡剤を導入して含浸させる方法、攪拌機付密閉耐圧容器中で樹脂粒子を発泡剤に浸漬して含浸させる方法、重合による樹脂粒子製造後の密閉系の容器中に、発泡剤を圧入して含浸させる方法等が挙げられる。
【0031】
発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は、樹脂粒子100重量部に対して、7.5〜11重量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が7.5重量部未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は融着率が低下し、耐割れ性が低下することがある。一方、11重量部を超えると、嵩倍数65倍以上の低嵩密度の予備発泡粒子を得ることができる。しかし、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、8〜10.5重量部の範囲である。
【0032】
(4)発泡性樹脂粒子の平均粒子径
発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、800〜2400μmであることが好ましい。800μmを下回る平均粒子径の発泡性樹脂粒子は、その粒子を得る際に収率が悪く、その結果コストアップすることがある。また、発泡剤の保持性が低下してビーズライフが短くなる傾向がある。2400μmを越えると、複雑な形状をした発泡成形体を成形する際、金型への充填性が悪くなる傾向がある。好ましい平均粒子径は、1200〜2000μmである。
【0033】
(予備発泡粒子)
次に、発泡性樹脂粒子を嵩倍数5〜60倍に予備発泡させることで予備発泡粒子を得ることができる。具体的には、発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子を、必要に応じて、水蒸気等の加熱媒体を用いて加熱して所定の嵩密度に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
予備発泡粒子は、嵩倍数5〜60倍(嵩密度0.016〜0.2g/cm3)を有している。好ましい嵩倍数は10〜55倍である。嵩倍数が60倍より大きいと、予備発泡粒子の独立気泡率が低下して、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、5倍より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の重量が増加することがある。
【0034】
(発泡成形体)
本発明の発泡成形体は、紫外線吸収剤を含む発泡性樹脂粒子から得られる。また、発泡成形体は、その表皮から5mmの厚さにカットされた試料において、3%以下の365nmの波長の光の透過率を有している。要するに、この発泡成形体は、表皮から5mmの厚さの領域において高い紫外線の遮蔽性を有している。透過率は2%以下であることが好ましい。
発泡成形体は、上記予備発泡粒子を型内成形させることで得られる。具体的には、予備発泡粒子を成形機の型内に充填し、加熱して二次発泡させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する発泡成形体を得ることができる。上記成形機としては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機等を用いることができる。
【0035】
得られた発泡成形体は、電気製品等の緩衝材(クッション材)、電子部品、トナーカートリッジ、各種工業資材、食品等の搬送容器等に使用できる。発泡成形体は、紫外線吸収剤が表面だけでなく内部にも分散した発泡性樹脂粒子に由来する。そのため、透過光中の紫外線が、発泡成形体の表面で多く遮断されると共に、内部においても紫外線吸収剤を含んだセルを幾重にも散乱しながら通過することで、効率的に遮断できる。
【0036】
例えば、発泡成形体の表皮部分を1mm程度にスライスしたものについての350nm、500nm及び800nmの波長の光に対する透過率を測定した場合、本発明では、350nmでの透過率/500nmでの透過率(比率A)が1/2以下、及び/又は、350nmでの透過率/800nmでの透過率(比率B)が1/3以下の関係を有する発泡成形体を得ることができる。比率Aは、その値が低いほど、350nmの波長の光が500nmの波長の光より透過し難いことを意味する。同様に、比率Bは、その値が低いほど、350nmの波長の光が800nmの波長の光より透過し難いことを意味する。つまり、比率A及びBが低いほど、紫外線を選択的に遮蔽する効果が高いことを意味する。
【0037】
なお、比率Aは0.4〜0の範囲であることが好ましく、比率Bは0.3〜0の範囲であることが好ましい。これら範囲内に透過率が存在することで、より紫外線を選択的に遮蔽する効果が高い発泡成形体を得ることができる。
発泡成形体の形状は、特に限定されず、輸送及び/又は保管する製品の形状に応じて適宜設定できる。本発明の発泡成形体は、紫外線を効率的に遮断できるだけでなく、耐衝撃性にも優れているため、長距離の輸送や長期間の保管にも耐えることが可能である。
【実施例】
【0038】
以下実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<発泡性樹脂粒子の発泡剤含有量>
発泡性樹脂粒子を5〜20mg精秤し、測定試料とする。この測定試料を180〜200℃に保持された熱分解炉(島津製作所社製:PYR−1A)にセットし、測定試料を密閉後、120秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得る。予め測定しておいた発泡剤成分の検量線に基づいて、得られたチャートから発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量(重量%)を算出する。
ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:信和化工社製「Shimalite 60/80 NAW」(φ3mm×3m)
カラム温度:70℃
検出器温度:110℃
注入口温度:110℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:60ml/min
【0039】
<予備発泡条件>
スチームで予熱した常圧予備発泡機(機内容積50L)に発泡性樹脂粒子500〜2000g投入し、撹拌しながら約0.02MPaの設定でスチームを導入しつつ、空気も供給して、約2〜3分間で所定の嵩密度(嵩倍数)まで発泡させる。
【0040】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
約5gの予備発泡粒子の重量(a)を小数以下2位で秤量する。次に、最小メモリ単位が5cm3である500cm3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れる。これにメスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に巾約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具をあてて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取る。次いで、式(b)/(a)により予備発泡粒子の嵩倍数を求める。
【0041】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定する。次いで、式(b)/(a)により発泡成形体の倍数を求める。
【0042】
<発泡成形体の透過率>
(1)方法A
発泡成形体を表皮部分について50×50×5mm(±1mm以内)にカット(スライス)してサンプルを得る。図7に示すように、UVライト1(SEN LIGHTS CORP社製HLR100T−2、ランプ:HL100)が、分光放射計2(携帯型分光放射計(英弘精機社製MS−720))の受光部3の真上になるよう、かつ、UVライト1先端から受光部3までが、90±5mmになるようにUVライト1と分光放射計3を設置する。図中、4は光源、5はランプカバーを意味する。
まず、分光放射計1により、365nmの波長の光についての原光放射度を測定する。その後、サンプルを受光部3に載せ、365nmの波長の光についての透過放射度を測定する。得られた原光放射度とサンプルの透過放射度を以下式に代入することより、個々のサンプルの透過率を求める。本明細書での透過率は、1サンプルについて3回測定した値の平均値を意味する。
透過率(%)=サンプルの透過放射度(365nm)÷原光放射度(365nm)×100
上記算出式にて得られた、透過率の平均値が3.0%以下であれば良好な紫外線遮断性があると判断する。
【0043】
(2)方法B
発泡成形体を表皮部分について、40×40×約1mm(厚さ)にカットスライスする。スライスした試料を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV−2450PC)を用いて透過率を測定する。1つの試料に付き測定箇所を変更しながら、3点以上測定する。測定条件は、測定波長範囲800〜200nm、スリット幅2.0nm、可視光紫外光源切換え波長360nmとし、光源としてハロゲンランプ及び重水素ランプを使用する。
得られた測定結果から、1測定点ごとに、以下の式1及び2で表されるように、500nmの透過率に対する350nmの透過率(比率A)及び800nmの透過率に対する350nmの透過率(比率B)をそれぞれ算出する。次いで、3つ以上の測定点の比率Aと比率Bの平均値を求める。
【0044】
比率Aが1/2以下、及び/又は、比率Bが1/3以下である場合、良好な紫外線遮断性があると判断する。なお、この判断は、500nm及び800nmの透過率が1.0%以下の場合について行う。
(式1)(350nmの透過率)%/(500nmの透過率)%=1/2以下
(式2)(350nmの透過率)%/(800nmの透過率)%=1/3以下
【0045】
<発泡成形体の紫外線吸収剤検出量>
高速溶媒抽出装置(Dionex製)を用いて試料より紫外線吸収剤をアセトニトリル液中に抽出する。得られた抽出液中の紫外線吸収剤の量を超高速液体クロマトグラフにて測定する。得られた値より、下式により発泡成形体中の紫外線吸収剤検出量を算出する。
発泡成形体の紫外線吸収剤検出量(重量%)
=抽出液中紫外線吸収剤濃度(μg/mL)×50(mL)/0.2(g)/10000
なお、抽出条件及び測定条件は次の通りである。
(i)抽出条件
測定装置:高速溶媒抽出装置 ASE−350(Dionex製)
抽出温度:100℃
抽出溶媒:アセトニトリル/抽出セル=10mL
抽出圧力:10.5MPa
昇温時間:5min/静置時間:15min
リンス量:25%
パージ時間:70sec/3回(サイクル数)
抽出用試料準備方法:精秤値が0.2gになるように、小カッターにて幅2mm(長さは約2.5cm、高さは約5〜15cm)の短冊状に裁断することで試料0.2gを得る。
【0046】
(ii)測定条件
測定装置:日立ハイテクノロジーズ社製超高速液体クロマトグラフLaChromUltra
カラム :LaChromUltra C18 2μm(2.0mmI.D.*50mmL)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(A=0.05%TFA B=アセトニトリル)、移動相流量(0.6mL/min)、移動相条件(0→2min=Bconc.50%、2→4min Bconc.50%→100%、4→10min=Bconc.100%)、ポンプ温度(室温)、測定時間(10min)、検出(UV=225nm)、注入量(2μL)
測定用抽出液作製方法:アセトニトリルによる抽出液を50mLに定容する。定容された抽出液を、直径0.20μmの非水系クロマトディスクによりろ過することで、測定用抽出液とする。
【0047】
<発泡成形体の落球衝撃強度>
JIS K 7211に準拠し、所定の倍数の発泡成形体から切り出した215mm(長さ)×40mm(幅)×20mm(厚さ)の試験片を支点間の間隔150mmの上に載置する。試験片に321gの剛球を落とすことにより、落球衝撃強度、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。なお、試験片は、6面とも表皮はないものとする。
【0048】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
H50:50%破壊高さ(cm)
Hi:高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d:試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i:Hiのときを0とし、1つずつ増減する高さ水準
(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)(いずれか多いほうのデータを使用する。なお、同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負を、破壊しなかったデータを使用するときは正をとる。
【0049】
実施例1
(樹脂粒子の製造)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂粒子(日本ポリエチレン社製LV−211、メルトフローレート0.3g/10分、酢酸ビニル含量6.2重量%)100重量部に、珪酸カルシウム0.3重量部とステアリン酸カルシウム0.1重量部とを加えて、押出機にて均一に混練した。混練物を水中カット方式により造粒ペレットとした(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂粒子は100粒あたり80mgに調整した)。
内容積100リットルの攪拌機付き耐圧容器に、上記ペレット40重量部、純水120重量部、ピロリン酸マグネシウム0.45重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を加えて混合物を得た。混合物を攪拌してペレットを純水中に懸濁させた。
次いで、この懸濁液に、ラジカル重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.03重量部を20重量部のスチレンモノマーに溶解させた混合液を30分かけて滴下した。滴下後30分間保持した後、反応系の温度を135℃まで上昇させ、2時間保持した後、常温まで冷却した。
【0050】
次いで、この懸濁液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.16重量部を加えた後、反応系の温度を90℃に昇温した。ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.02重量部、ジクミルパーオキサイド0.8重量部を40重量部のスチレンモノマーに溶解させて混合液を得た。この混合液を上記昇温後の反応系に4時間かけて滴下することで、スチレンモノマーをペレットに吸収させながら重合した。その後、反応系を90℃で3時間保持した後、135℃に昇温させ、その温度で3時間保持することで重合を完結させた。上記重合を完結させた後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を得た。
【0051】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸及び予備発泡)
内容積50リットルの耐圧で密閉可能なV型ブレンダーに、ポリエチレン改質ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN P)0.10重量部、ジイソブチルアジペート0.5重量部、脂肪族第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製カチオーゲンES−OW)2.0重量部を加え、密閉し撹拌しながら、ブタン14重量部を圧入した。そして、器内を60℃で2時間保持した後、冷却して発泡性樹脂粒子を取り出した。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。
取り出した発泡性樹脂粒子は直ちに、バッチ式予備発泡機で嵩倍数30倍に予備発泡して予備発泡粒子とし、その後温度23℃の恒温室にて保管した。
【0052】
(発泡成形)
得られた予備発泡粒子の型内発泡成形を行った。300mm(幅)×400mm(長さ)×30mm(厚さ)の金型内に予備発泡粒子を導入し、0.7kgf/cm2の水蒸気を30秒導入して加熱した。加熱後、発泡成形体の発泡圧が0.05kgf/cm2以下に低下するまで冷却を行い、倍数30倍の発泡成形体を取り出した。
取り出した発泡成形体を、35℃の雰囲気下で6時間以上放置した。得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図1に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0053】
実施例2
紫外線吸収剤として、オクタベンゾン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製CHIMASSORB 81)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図2に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0054】
実施例3
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN 328)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図3に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0055】
実施例4
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN 571)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図4に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0056】
実施例5
発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸を以下のように湿式で行うこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.5重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
(湿式含浸)
内容積5リットルの耐圧で密閉可能な撹拌機付き耐圧容器中の水100重量部に、複合樹脂粒子100重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.04重量部、アルキルモノエタノールアミン(日油社製ナイミーンL−201)0.3重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(TINUVIN P)0.10重量部を加え、撹拌し懸濁させた。
その後、ブタン14重量部を容器内に圧入した。その後、懸濁液の温度を70℃まで昇温させ、3時間保持した。冷却後、得られた発泡性樹脂粒子を取出した。
【0057】
比較例1
紫外線吸収剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図5に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値とを表1に示す。
【0058】
比較例2
実施例5のように湿式で発泡剤の含浸を行うこと以外は比較例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.6重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値とを表1に示す。
【0059】
実施例6
紫外線吸収剤の添加量を0.3重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.8重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0060】
実施例7
紫外線吸収剤の添加量を0.05重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.2重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を図6に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0061】
実施例8
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0062】
実施例9(参考例)
紫外線吸収剤の添加量を0.005重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0063】
実施例10
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例5と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0064】
実施例11
予備発泡粒子の嵩倍数及び発泡成形体の倍数を15倍としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.8重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0065】
実施例12
(樹脂粒子の製造)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂として、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ポリエチレン社製の商品名「NF−444A」、メルトフローレート(MI)=2.0g/10分、密度:0.912g/cm3)を用いた。この樹脂を押出機に投入して溶融混練した。混練物を水中カット方式により造粒ペレットとした(略球状、ポリエチレン系樹脂粒子は100粒あたり約60mgに調整した)。
内容積100リットルの撹拌機付き耐圧容器に、ピロリン酸マグネシウム0.8重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を水100重量部に分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子100重量部を分散させて懸濁液を得た。
【0066】
次に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2重量部を予めスチレンモノマー100重量部に溶解して第1のスチレンモノマー溶液を得た。上記懸濁液の温度を60℃に調節し、第1のスチレンモノマー溶液を30分かけて定量で懸濁液に添加した。この後、60℃で1時間攪拌してポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。次に分散液の温度を130℃に昇温し、130℃を2時間保持してスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させた。
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35重量部をスチレンモノマー300重量部に溶解させて第2のスチレンモノマー溶液を得た。第2のスチレンモノマー溶液を、先の重合系に1時間あたり60重量部の割合で5時間かけて連続的に滴下した。第2のスチレンモノマー溶液中のスチレンモノマーを、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合させた。上記重合後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を得た。
【0067】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸及び予備発泡)
ジイソブチルアジペートの量を0.9重量部とし、ブタンの量を18重量部とし、脂肪族第4級アンモニウム塩を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.1重量部であった。発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして予備発泡させることで嵩倍数50倍の予備発泡粒子を得、その後温度23℃の恒温室にて保管した。
【0068】
(発泡成形)
実施例1と同様にして型内発泡成形を行い、倍数50倍の発泡成形体を得た。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0069】
実施例13
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例12と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.1重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0070】
実施例14
(樹脂粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000重量部、第三リン酸カルシウム100重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム2.0重量部を供給して分散液を得た。次いで、分散液に、攪拌下で、スチレンモノマー40000重量部、ベンゾイルパーオキサイド96.0重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0重量部を添加した。添加後で90℃に昇温してスチレン系モノマーを重合させた。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温した。昇温してから2時間後に室温まで冷却することで、ポリスチレン系樹脂粒子(A)を得た。
ポリスチレン系樹脂粒子(A)を篩分けすることで、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(B)を得た。
【0071】
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000重量部、ポリスチレン系樹脂粒子(B)500重量部、ピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.3重量部を供給した。供給物を攪拌しながら70℃に昇温した。
次に、ベンゾイルパーオキサイド4.5重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1重量部をスチレンモノマー200重量部に溶解させて溶液を得た。この溶液を上記5リットルの重合容器に供給した。供給してから30分経過後に100℃に昇温し、スチレンモノマー1300重量部を2時間かけてポンプで一定量づつ上記5リットルの重合容器内に供給した。供給後、120℃に昇温し、昇温してから2時間経過後に室温まで冷却することでポリスチレン系樹脂粒子(C)を得た。
【0072】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸)
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200重量部、ポリスチレン系樹脂粒子(C)1800重量部、ピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.4重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(TINUVIN P)1.8重量部(ポリスチレン系樹脂に対して0.1重量部)を供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン18.0重量部及び可塑剤としてジイソブチルアジペート12.6重量部を重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。
次に、発泡剤としてn−ブタン100重量部をポリスチレン系樹脂粒子(C)が入った重合容器内に圧入して3時間保持した。この後、30℃以下まで冷却した上で重合容器内から発泡性樹脂粒子を取り出した。取り出した発泡性樹脂粒子は、乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置した。
【0073】
(予備発泡及び発泡成形)
上記発泡性樹脂粒子を使用すること以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.5重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0074】
表1〜3中、評価結果中の○、△及び×は、次の基準に基づいている。即ち、発泡成形体は、紫外線遮蔽性と落球衝撃値の両者を兼ね備えていることが望ましい。よって、本明細書では、紫外線遮蔽性は、以下の条件(I)を、落球衝撃値は、以下の条件(II)を、満たすことが望ましい、と規定する。
条件(I):方法Aによる透過率が3.0%以下であること
条件(II):落球衝撃値が35cm以上であること
○、△及び×は条件(I)と(II)の観点で実施例及び比較例を以下のように評価している。
○:条件(I)と(II)の両方を満たす
△:条件(I)と(II)のどちらか一方のみを満たす
×:条件(I)を満たさない
表3中、EVAはエチレン-酢酸ビニル共重合体、PSはポリスチレン、mLLDPEはメタロセン触媒による無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、をそれぞれ意味する。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
実施例1〜14と比較例1〜2とから、発泡性樹脂粒子が紫外線吸収剤を含むことで、それを原料として得られる発泡成形体の紫外線の遮蔽性が向上していることが分かる。紫外線の遮蔽性の向上は、図1〜6からも明らかである。即ち、図では、紫外線の波長領域である、400〜300nmの波長の光に対して、実施例1〜5は、比較例1よりも明らかに減少しているため、紫外線吸収剤を含むことで、紫外線の遮蔽性が向上していることが示されている。
【0079】
また、実施例1〜4により、紫外線吸収剤を変更しても、発泡性樹脂粒子を原料として得られる発泡成形体の紫外線の遮蔽性が向上していることが分かる。加えて、従来、紫外線吸収剤は、比較的高温を必要とする樹脂との混練により樹脂粒子中に分散させていた。しかし、実施例1〜5では、50〜70℃という低温で行われる発泡剤の含浸工程にて紫外線吸収剤を樹脂内部に含浸させている。そのため、紫外線を遮断できる発泡成形体を簡易に得られることが分かる。
更に、実施例1〜14により得られた発泡成形体は、電気製品の輸送・保管容器に十分適用可能な落球衝撃強度を有していることが分かる。
【0080】
また、実施例1と5とから、紫外線吸収剤を乾式及び湿式のいずれで付与した場合でも、良好な紫外線の遮蔽性が得られることがわかる。
更に、実施例1と6〜9から、紫外線吸収剤の量を多くすることで、紫外線の遮蔽性が向上することが分かる。
また、実施例1、12及び14から、樹脂種を変更しても、良好な紫外線の遮蔽性が得られることが分かる。なお、落球衝撃値はポリオレフィン成分が含まれているほうが良好であることが分かる。
更に、実施例1と11とから、発泡倍率を変化させても、良好な紫外線の遮蔽性が得られることが分かる。
次に、方法Aに使用したUVライトの波長毎の放射度を示すグラフを図8(a)に、実施例1と比較例1の発泡成形体の波長毎の放射度を示すグラフを図8(b)に示す。図8(b)中、点線は実施例1を、実線は比較例1を示す。図8(b)から、実施例1の発泡成形体は、365nm付近の波長の光を有意に遮蔽できていることが分かる。
【符号の説明】
【0081】
1 UVライト、2 分光放射計、3 受光部、4 光源、5 ランプカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8