【実施例】
【0038】
以下実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<発泡性樹脂粒子の発泡剤含有量>
発泡性樹脂粒子を5〜20mg精秤し、測定試料とする。この測定試料を180〜200℃に保持された熱分解炉(島津製作所社製:PYR−1A)にセットし、測定試料を密閉後、120秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得る。予め測定しておいた発泡剤成分の検量線に基づいて、得られたチャートから発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量(重量%)を算出する。
ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:信和化工社製「Shimalite 60/80 NAW」(φ3mm×3m)
カラム温度:70℃
検出器温度:110℃
注入口温度:110℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:60ml/min
【0039】
<予備発泡条件>
スチームで予熱した常圧予備発泡機(機内容積50L)に発泡性樹脂粒子500〜2000g投入し、撹拌しながら約0.02MPaの設定でスチームを導入しつつ、空気も供給して、約2〜3分間で所定の嵩密度(嵩倍数)まで発泡させる。
【0040】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
約5gの予備発泡粒子の重量(a)を小数以下2位で秤量する。次に、最小メモリ単位が5cm
3である500cm
3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れる。これにメスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に巾約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具をあてて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取る。次いで、式(b)/(a)により予備発泡粒子の嵩倍数を求める。
【0041】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定する。次いで、式(b)/(a)により発泡成形体の倍数を求める。
【0042】
<発泡成形体の透過率>
(1)方法A
発泡成形体を表皮部分について50×50×5mm(±1mm以内)にカット(スライス)してサンプルを得る。
図7に示すように、UVライト1(SEN LIGHTS CORP社製HLR100T−2、ランプ:HL100)が、分光放射計2(携帯型分光放射計(英弘精機社製MS−720))の受光部3の真上になるよう、かつ、UVライト1先端から受光部3までが、90±5mmになるようにUVライト1と分光放射計3を設置する。図中、4は光源、5はランプカバーを意味する。
まず、分光放射計1により、365nmの波長の光についての原光放射度を測定する。その後、サンプルを受光部3に載せ、365nmの波長の光についての透過放射度を測定する。得られた原光放射度とサンプルの透過放射度を以下式に代入することより、個々のサンプルの透過率を求める。本明細書での透過率は、1サンプルについて3回測定した値の平均値を意味する。
透過率(%)=サンプルの透過放射度(365nm)÷原光放射度(365nm)×100
上記算出式にて得られた、透過率の平均値が3.0%以下であれば良好な紫外線遮断性があると判断する。
【0043】
(2)方法B
発泡成形体を表皮部分について、40×40×約1mm(厚さ)にカットスライスする。スライスした試料を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV−2450PC)を用いて透過率を測定する。1つの試料に付き測定箇所を変更しながら、3点以上測定する。測定条件は、測定波長範囲800〜200nm、スリット幅2.0nm、可視光紫外光源切換え波長360nmとし、光源としてハロゲンランプ及び重水素ランプを使用する。
得られた測定結果から、1測定点ごとに、以下の式1及び2で表されるように、500nmの透過率に対する350nmの透過率(比率A)及び800nmの透過率に対する350nmの透過率(比率B)をそれぞれ算出する。次いで、3つ以上の測定点の比率Aと比率Bの平均値を求める。
【0044】
比率Aが1/2以下、及び/又は、比率Bが1/3以下である場合、良好な紫外線遮断性があると判断する。なお、この判断は、500nm及び800nmの透過率が1.0%以下の場合について行う。
(式1)(350nmの透過率)%/(500nmの透過率)%=1/2以下
(式2)(350nmの透過率)%/(800nmの透過率)%=1/3以下
【0045】
<発泡成形体の紫外線吸収剤検出量>
高速溶媒抽出装置(Dionex製)を用いて試料より紫外線吸収剤をアセトニトリル液中に抽出する。得られた抽出液中の紫外線吸収剤の量を超高速液体クロマトグラフにて測定する。得られた値より、下式により発泡成形体中の紫外線吸収剤検出量を算出する。
発泡成形体の紫外線吸収剤検出量(重量%)
=抽出液中紫外線吸収剤濃度(μg/mL)×50(mL)/0.2(g)/10000
なお、抽出条件及び測定条件は次の通りである。
(i)抽出条件
測定装置:高速溶媒抽出装置 ASE−350(Dionex製)
抽出温度:100℃
抽出溶媒:アセトニトリル/抽出セル=10mL
抽出圧力:10.5MPa
昇温時間:5min/静置時間:15min
リンス量:25%
パージ時間:70sec/3回(サイクル数)
抽出用試料準備方法:精秤値が0.2gになるように、小カッターにて幅2mm(長さは約2.5cm、高さは約5〜15cm)の短冊状に裁断することで試料0.2gを得る。
【0046】
(ii)測定条件
測定装置:日立ハイテクノロジーズ社製超高速液体クロマトグラフLaChromUltra
カラム :LaChromUltra C18 2μm(2.0mmI.D.*50mmL)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(A=0.05%TFA B=アセトニトリル)、移動相流量(0.6mL/min)、移動相条件(0→2min=Bconc.50%、2→4min Bconc.50%→100%、4→10min=Bconc.100%)、ポンプ温度(室温)、測定時間(10min)、検出(UV=225nm)、注入量(2μL)
測定用抽出液作製方法:アセトニトリルによる抽出液を50mLに定容する。定容された抽出液を、直径0.20μmの非水系クロマトディスクによりろ過することで、測定用抽出液とする。
【0047】
<発泡成形体の落球衝撃強度>
JIS K 7211に準拠し、所定の倍数の発泡成形体から切り出した215mm(長さ)×40mm(幅)×20mm(厚さ)の試験片を支点間の間隔150mmの上に載置する。試験片に321gの剛球を落とすことにより、落球衝撃強度、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。なお、試験片は、6面とも表皮はないものとする。
【0048】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
H50:50%破壊高さ(cm)
Hi:高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d:試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i:Hiのときを0とし、1つずつ増減する高さ水準
(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)(いずれか多いほうのデータを使用する。なお、同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負を、破壊しなかったデータを使用するときは正をとる。
【0049】
実施例1
(樹脂粒子の製造)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂粒子(日本ポリエチレン社製LV−211、メルトフローレート0.3g/10分、酢酸ビニル含量6.2重量%)100重量部に、珪酸カルシウム0.3重量部とステアリン酸カルシウム0.1重量部とを加えて、押出機にて均一に混練した。混練物を水中カット方式により造粒ペレットとした(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂粒子は100粒あたり80mgに調整した)。
内容積100リットルの攪拌機付き耐圧容器に、上記ペレット40重量部、純水120重量部、ピロリン酸マグネシウム0.45重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を加えて混合物を得た。混合物を攪拌してペレットを純水中に懸濁させた。
次いで、この懸濁液に、ラジカル重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.03重量部を20重量部のスチレンモノマーに溶解させた混合液を30分かけて滴下した。滴下後30分間保持した後、反応系の温度を135℃まで上昇させ、2時間保持した後、常温まで冷却した。
【0050】
次いで、この懸濁液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.16重量部を加えた後、反応系の温度を90℃に昇温した。ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.02重量部、ジクミルパーオキサイド0.8重量部を40重量部のスチレンモノマーに溶解させて混合液を得た。この混合液を上記昇温後の反応系に4時間かけて滴下することで、スチレンモノマーをペレットに吸収させながら重合した。その後、反応系を90℃で3時間保持した後、135℃に昇温させ、その温度で3時間保持することで重合を完結させた。上記重合を完結させた後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を得た。
【0051】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸及び予備発泡)
内容積50リットルの耐圧で密閉可能なV型ブレンダーに、ポリエチレン改質ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN P)0.10重量部、ジイソブチルアジペート0.5重量部、脂肪族第4級アンモニウム塩(第一工業製薬社製カチオーゲンES−OW)2.0重量部を加え、密閉し撹拌しながら、ブタン14重量部を圧入した。そして、器内を60℃で2時間保持した後、冷却して発泡性樹脂粒子を取り出した。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。
取り出した発泡性樹脂粒子は直ちに、バッチ式予備発泡機で嵩倍数30倍に予備発泡して予備発泡粒子とし、その後温度23℃の恒温室にて保管した。
【0052】
(発泡成形)
得られた予備発泡粒子の型内発泡成形を行った。300mm(幅)×400mm(長さ)×30mm(厚さ)の金型内に予備発泡粒子を導入し、0.7kgf/cm
2の水蒸気を30秒導入して加熱した。加熱後、発泡成形体の発泡圧が0.05kgf/cm
2以下に低下するまで冷却を行い、倍数30倍の発泡成形体を取り出した。
取り出した発泡成形体を、35℃の雰囲気下で6時間以上放置した。得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図1に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0053】
実施例2
紫外線吸収剤として、オクタベンゾン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製CHIMASSORB 81)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図2に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0054】
実施例3
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN 328)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図3に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0055】
実施例4
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN 571)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図4に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
【0056】
実施例5
発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸を以下のように湿式で行うこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.5重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量とを表1に示す。
(湿式含浸)
内容積5リットルの耐圧で密閉可能な撹拌機付き耐圧容器中の水100重量部に、複合樹脂粒子100重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.04重量部、アルキルモノエタノールアミン(日油社製ナイミーンL−201)0.3重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(TINUVIN P)0.10重量部を加え、撹拌し懸濁させた。
その後、ブタン14重量部を容器内に圧入した。その後、懸濁液の温度を70℃まで昇温させ、3時間保持した。冷却後、得られた発泡性樹脂粒子を取出した。
【0057】
比較例1
紫外線吸収剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図5に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値とを表1に示す。
【0058】
比較例2
実施例5のように湿式で発泡剤の含浸を行うこと以外は比較例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.6重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値とを表1に示す。
【0059】
実施例6
紫外線吸収剤の添加量を
0.3重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.8重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0060】
実施例7
紫外線吸収剤の添加量を0.05重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.2重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定し、結果を
図6に示す。また、方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0061】
実施例8
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.0重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0062】
実施例9
(参考例)
紫外線吸収剤の添加量を0.005重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0063】
実施例10
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例5と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.9重量部であった。また、得られた発泡成形体の表皮部分の透過率を測定した。方法Aによる透過率と、測定結果から算出した350nm、500nm及び800nmでの透過率(方法B)と、比率A及びBと、落球衝撃値と、紫外線吸収剤検出量を表2に示す。
【0064】
実施例11
予備発泡粒子の嵩倍数及び発泡成形体の倍数を15倍としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.8重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0065】
実施例12
(樹脂粒子の製造)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂として、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ポリエチレン社製の商品名「NF−444A」、メルトフローレート(MI)=2.0g/10分、密度:0.912g/cm
3)を用いた。この樹脂を押出機に投入して溶融混練した。混練物を水中カット方式により造粒ペレットとした(略球状、ポリエチレン系樹脂粒子は100粒あたり約60mgに調整した)。
内容積100リットルの撹拌機付き耐圧容器に、ピロリン酸マグネシウム0.8重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を水100重量部に分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子100重量部を分散させて懸濁液を得た。
【0066】
次に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2重量部を予めスチレンモノマー100重量部に溶解して第1のスチレンモノマー溶液を得た。上記懸濁液の温度を60℃に調節し、第1のスチレンモノマー溶液を30分かけて定量で懸濁液に添加した。この後、60℃で1時間攪拌してポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。次に分散液の温度を130℃に昇温し、130℃を2時間保持してスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させた。
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35重量部をスチレンモノマー300重量部に溶解させて第2のスチレンモノマー溶液を得た。第2のスチレンモノマー溶液を、先の重合系に1時間あたり60重量部の割合で5時間かけて連続的に滴下した。第2のスチレンモノマー溶液中のスチレンモノマーを、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合させた。上記重合後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を得た。
【0067】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸及び予備発泡)
ジイソブチルアジペートの量を0.9重量部とし、ブタンの量を18重量部とし、脂肪族第4級アンモニウム塩を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.1重量部であった。発泡性樹脂粒子を実施例1と同様にして予備発泡させることで嵩倍数50倍の予備発泡粒子を得、その後温度23℃の恒温室にて保管した。
【0068】
(発泡成形)
実施例1と同様にして型内発泡成形を行い、倍数50倍の発泡成形体を得た。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0069】
実施例13
紫外線吸収剤の添加量を0.02重量部としたこと以外は実施例12と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は9.1重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0070】
実施例14
(樹脂粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000重量部、第三リン酸カルシウム100重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム2.0重量部を供給して分散液を得た。次いで、分散液に、攪拌下で、スチレンモノマー40000重量部、ベンゾイルパーオキサイド96.0重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0重量部を添加した。添加後で90℃に昇温してスチレン系モノマーを重合させた。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温した。昇温してから2時間後に室温まで冷却することで、ポリスチレン系樹脂粒子(A)を得た。
ポリスチレン系樹脂粒子(A)を篩分けすることで、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(B)を得た。
【0071】
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000重量部、ポリスチレン系樹脂粒子(B)500重量部、ピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.3重量部を供給した。供給物を攪拌しながら70℃に昇温した。
次に、ベンゾイルパーオキサイド4.5重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1重量部をスチレンモノマー200重量部に溶解させて溶液を得た。この溶液を上記5リットルの重合容器に供給した。供給してから30分経過後に100℃に昇温し、スチレンモノマー1300重量部を2時間かけてポンプで一定量づつ上記5リットルの重合容器内に供給した。供給後、120℃に昇温し、昇温してから2時間経過後に室温まで冷却することでポリスチレン系樹脂粒子(C)を得た。
【0072】
(発泡剤及び紫外線吸収剤の含浸)
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200重量部、ポリスチレン系樹脂粒子(C)1800重量部、ピロリン酸マグネシウム6.0重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.4重量部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(TINUVIN P)1.8重量部(ポリスチレン系樹脂に対して0.1重量部)を供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン18.0重量部及び可塑剤としてジイソブチルアジペート12.6重量部を重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。
次に、発泡剤としてn−ブタン100重量部をポリスチレン系樹脂粒子(C)が入った重合容器内に圧入して3時間保持した。この後、30℃以下まで冷却した上で重合容器内から発泡性樹脂粒子を取り出した。取り出した発泡性樹脂粒子は、乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置した。
【0073】
(予備発泡及び発泡成形)
上記発泡性樹脂粒子を使用すること以外は実施例1と同様に行った。得られた発泡性樹脂粒子中の発泡剤の含有量は8.5重量部であった。方法Aによる透過率と、落球衝撃値とを表3に示す。
【0074】
表1〜3中、評価結果中の○、△及び×は、次の基準に基づいている。即ち、発泡成形体は、紫外線遮蔽性と落球衝撃値の両者を兼ね備えていることが望ましい。よって、本明細書では、紫外線遮蔽性は、以下の条件(I)を、落球衝撃値は、以下の条件(II)を、満たすことが望ましい、と規定する。
条件(I):方法Aによる透過率が3.0%以下であること
条件(II):落球衝撃値が35cm以上であること
○、△及び×は条件(I)と(II)の観点で実施例及び比較例を以下のように評価している。
○:条件(I)と(II)の両方を満たす
△:条件(I)と(II)のどちらか一方のみを満たす
×:条件(I)を満たさない
表3中、EVAはエチレン-酢酸ビニル共重合体、PSはポリスチレン、mLLDPEはメタロセン触媒による無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、をそれぞれ意味する。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
実施例1〜14と比較例1〜2とから、発泡性樹脂粒子が紫外線吸収剤を含むことで、それを原料として得られる発泡成形体の紫外線の遮蔽性が向上していることが分かる。紫外線の遮蔽性の向上は、
図1〜6からも明らかである。即ち、図では、紫外線の波長領域である、400〜300nmの波長の光に対して、実施例1〜5は、比較例1よりも明らかに減少しているため、紫外線吸収剤を含むことで、紫外線の遮蔽性が向上していることが示されている。
【0079】
また、実施例1〜4により、紫外線吸収剤を変更しても、発泡性樹脂粒子を原料として得られる発泡成形体の紫外線の遮蔽性が向上していることが分かる。加えて、従来、紫外線吸収剤は、比較的高温を必要とする樹脂との混練により樹脂粒子中に分散させていた。しかし、実施例1〜5では、50〜70℃という低温で行われる発泡剤の含浸工程にて紫外線吸収剤を樹脂内部に含浸させている。そのため、紫外線を遮断できる発泡成形体を簡易に得られることが分かる。
更に、実施例1〜14により得られた発泡成形体は、電気製品の輸送・保管容器に十分適用可能な落球衝撃強度を有していることが分かる。
【0080】
また、実施例1と5とから、紫外線吸収剤を乾式及び湿式のいずれで付与した場合でも、良好な紫外線の遮蔽性が得られることがわかる。
更に、実施例1と6〜9から、紫外線吸収剤の量を多くすることで、紫外線の遮蔽性が向上することが分かる。
また、実施例1、12及び14から、樹脂種を変更しても、良好な紫外線の遮蔽性が得られることが分かる。なお、落球衝撃値はポリオレフィン成分が含まれているほうが良好であることが分かる。
更に、実施例1と11とから、発泡倍率を変化させても、良好な紫外線の遮蔽性が得られることが分かる。
次に、方法Aに使用したUVライトの波長毎の放射度を示すグラフを
図8(a)に、実施例1と比較例1の発泡成形体の波長毎の放射度を示すグラフを
図8(b)に示す。
図8(b)中、点線は実施例1を、実線は比較例1を示す。
図8(b)から、実施例1の発泡成形体は、365nm付近の波長の光を有意に遮蔽できていることが分かる。