(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714009
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】インフレータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20150416BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20150416BHJP
C06D 5/00 20060101ALI20150416BHJP
C06B 31/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
C06D5/00 Z
C06B31/00
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-522797(P2012-522797)
(86)(22)【出願日】2010年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-500204(P2013-500204A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】US2010001101
(87)【国際公開番号】WO2011014220
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年2月25日
(31)【優先権主張番号】12/511,554
(32)【優先日】2009年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597065363
【氏名又は名称】オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】メンデンホール, イヴァン, ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】ルンド, ゲイリー, ケー.
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−343192(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0145921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
B60R 21/264
C06D 5/00
C06B 31/00
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体と、
前記生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料と、
前記処理済みガスがインフレータアセンブリから出ることを可能にする少なくとも1つのアセンブリ出口開口と
を備えるインフレータアセンブリであって、
前記ガス発生固体の火炎温度が1670K以下であり、前記ガス発生固体が、
有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つであって、
前記有機燃料が、少なくとも炭素元素、水素元素、および酸素元素を含み、アミド、イミン、ヒドロキシル、およびカルボキシル酸からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含み、
塩素酸塩、あるいは過塩素酸塩、あるいはアルカリ金属、あるいは硝酸アルカリ土類金属を含まず、
かつ少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有するものであり、
5〜50組成重量パーセントの相対量で存在する前記有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つと、
10〜30組成重量パーセントの副燃料と、
25〜70組成重量パーセントの塩基性金属硝酸塩酸化剤と、
0を超え〜15組成重量パーセントの金属酸化物冷却剤と
を含む、
インフレータアセンブリ。
【請求項2】
有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つが、10〜20組成重量パーセントの相対量で存在する、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項3】
前記ガス発生固体が15〜20の重量パーセントの硝酸グアニジンを含有する請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項4】
前記ガス発生固体が塩基性硝酸銅を含有する請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項5】
前記塩基性金属硝酸塩酸化剤が塩基性硝酸銅であり、前記塩基性硝酸銅が30〜65組成重量パーセントの相対量で存在する、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項6】
前記ガス発生固体が、酸化銅、酸化鉄、および酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項7】
前記有機燃料がさらに窒素元素を含む請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項8】
前記有機燃料が酸性有機燃料のアミン塩、グアニジニウム塩、およびグアニル尿素塩の1つである請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項9】
前記有機燃料が、バルビツール酸、シアヌル酸、オキサミド、ビウレット、ヒダントイン、アラントイン、マロンアミド、コハク酸アミド、パラバン酸、ジグリシン、およびイミド尿素からなる群から選択される環状アミドである、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項10】
前記有機燃料が、フロログルシノール、マンニトール、マルチトール、およびソルビトールからなる群から選択されるヒドロキシ含有化合物である、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項11】
前記有機燃料が、グリシン、マロン酸、およびコハク酸からなる群から選択されるカルボキシル酸である、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項12】
前記有機燃料がニトロ官能基およびシアノ官能基を含まない請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項13】
前記一定量のガス処理材料の少なくとも一部がチャンバ内部に配置され、前記チャンバ内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成する、請求項1に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項14】
内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体と、
前記生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料と、
前記処理済みガスが前記インフレータアセンブリから出ることを可能にする少なくとも1つのアセンブリ出口開口と
を備えるインフレータアセンブリであって、
前記ガス発生固体の火炎温度が1670K以下であり、前記ガス発生固体が、
有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つであって、
前記有機燃料が、少なくとも炭素元素、水素元素、および酸素元素を含み、アミド、イミン、ヒドロキシル、およびカルボキシル酸からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含み、
塩素酸塩、あるいは過塩素酸塩、あるいはアルカリ金属、あるいは硝酸アルカリ土類金属を含まず、
かつ少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有するものであり、
10〜20組成重量パーセントの相対量で存在する前記有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つと、
10〜20組成重量パーセントの硝酸グアニジンと、
25〜70組成重量パーセントの塩基性硝酸銅酸化剤と、
0を超え〜15組成重量パーセントの金属酸化物冷却剤と
を含む、
インフレータアセンブリ。
【請求項15】
膨張可能な車両乗員安全拘束機構を膨張させるための小型で軽量のインフレータアセンブリであって、
内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体と、
前記生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料と、
前記処理済みガスが前記インフレータアセンブリから出て、関連の膨張可能な車両乗員安全拘束機構まで進むことを可能にする少なくとも1つのアセンブリ出口開口と
を備えるインフレータアセンブリであって、
前記ガス発生固体の火炎温度が1670K以下であり、前記ガス発生固体が、
有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つであって、
前記有機燃料が、少なくとも炭素元素、水素元素、酸素元素、および窒素元素を含み、少なくとも1つのアミド官能基を含み、
塩素酸塩、あるいは過塩素酸塩、あるいはアルカリ金属、あるいは硝酸アルカリ土類金属を含まず、
かつ少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有するものであり、
5〜50組成重量パーセントの相対量で存在する前記有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つと、
10〜30組成重量パーセントの硝酸グアニジンと、
25〜70組成重量パーセントの塩基性硝酸銅酸化剤と、
0を超え〜15組成重量パーセントの、酸化銅、酸化鉄、および酸化亜鉛からなる群から選択される金属酸化物冷却剤と
を含む、
インフレータアセンブリ。
【請求項16】
有機燃料、前記有機燃料の遷移金属塩、および前記有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つが、10〜20組成重量パーセントの相対量で存在し、
硝酸グアニジンが、15〜20組成重量パーセントの相対量で存在し、
塩基性硝酸銅酸化剤が、30〜65組成重量パーセントの相対量で存在する、
請求項15に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項17】
前記有機燃料が、バルビツール酸、シアヌル酸、オキサミド、ビウレット、ヒダントイン、アラントイン、マロンアミド、コハク酸アミド、パラバン酸、ジグリシン、およびイミド尿素からなる群から選択される環状アミドである、請求項15に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項18】
前記有機燃料がニトロ官能基およびシアノ官能基を含まない請求項15に記載のインフレータアセンブリ。
【請求項19】
前記一定量のガス処理材料の少なくとも一部がチャンバ内部に配置され、前記チャンバ内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成する、請求項15に記載のインフレータアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、膨張ガスの提供または供給に関し、具体的には、車両の衝突時に乗員の動きを拘束するために車両内で使用される何らかの膨張可能な受動拘束システムに望まれるような、膨張ガスを提供または供給するためのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
操作者による介入を必要とせずに非展開状態から展開状態に自己作動する安全拘束システム、すなわち「受動拘束システム」によって車両乗員を保護することがよく知られている。そのようなシステムは、一般にクッションまたはバッグなどの形態で膨張可能な車両乗員拘束機構または要素を具備し、または含み、一般に「エアバッグクッション」と呼ばれる。実際、そのようなエアバッグクッションは、典型的には、衝突時など車両が突然の減速を受けたときにガスによって膨張または伸張するように設計される。そのようなエアバッグクッションは、望ましくは、乗員と車両内部の特定の部分、例えばドア、ハンドル、計器盤などとの間で、車両内の1つまたは複数の位置で展開することができ、乗員が車両内部のそのような部分に激しく衝突するのを防止または回避する。例えば、典型的または一般的な車両エアバッグクッション設備の位置は、ハンドル内、車両ドアの上など車両のルーフラインに沿って、車の乗員側のダッシュボード内、および座席取付けエアバッククッションの場合などには車両座席内にある。膝当ておよび頭上エアバッグなどの形態での他のエアバッグクッションも、他の様々な身体部位または特定の様々な身体部位を衝突から保護するように機能する。
【0003】
エアバッグクッションに加えて、膨張可能な受動拘束システム設備は典型的にはガス発生器も含み、これは一般に「インフレータ」とも呼ばれる。作動時、そのようなインフレータデバイスは、望ましくは、関連のエアバッグクッションを膨張するために使用される典型的にはガスの形態での膨張流体を提供する働きをする。
【0004】
膨張可能な拘束システムで使用されるものなど、エアバッグクッションを膨張するのに使用するための様々なタイプおよび形態のインフレータアセンブリまたはデバイスが当技術分野で開示されている。他のタイプの既知のインフレータデバイスは、可燃性の火工ガス発生材料から膨張ガスを生成し、この材料は、点火時にエアバッグを膨張するのに十分な量のガスを発生する。
【0005】
そのようなインフレータアセンブリで使用されるガス発生材料は、望ましくは、所要の作業インパルスを実現するために所望の時間内に十分なガス質量の流れを生成または提供する。実際には、ガスの温度が、発生剤ガスが行うことができる作業量に影響を及ぼすことがあり、現に影響を及ぼす。焼損および/または他の形態の熱損傷など、起こり得る関連の厄介な問題により、過剰に高いガス温度は一般に回避すべきと考えられる。さらに、高いガス温度で適用すると、ガスが伝熱の影響を過剰に受ける、および/または伝熱に過剰に敏感になることがあり、その結果、関連の膨張可能な拘束デバイスに関する収縮特性が過剰に速いものになることがある。高温材料の影響を緩和するために、インフレータアセンブリの質量の大部分を少なくとも部分的にヒートシンクとして機能する、またはヒートシンクとなるような使用にまわすことが一般的である。残念ながら、そのような実施は、システムの効率にもインフレータの重量にも望ましくない影響を与えることがある。
【0006】
上記のことに加え、現代の車両ならびにそれに含まれるアセンブリおよび構成要素、例えば車両乗員安全拘束システム内に含まれるインフレータアセンブリの製造および組立てを単純化するまたは容易にすること、ならびにそれらの設計および開発の関連コストを減少させることが課題として引き続き残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、改良されたインフレータアセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体を含むインフレータアセンブリが提供される。アセンブリはまた、生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料と、処理済みガスがインフレータアセンブリから出ることを可能にする少なくとも1つのアセンブリ出口開口とを含む。
【0009】
ガス発生固体は、1670K以下の火炎温度を有し、有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つを含む。有機燃料は、少なくとも炭素元素、水素元素、および酸素元素と、アミド、イミン、ヒドロキシル、およびカルボキシル酸からなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを含む。有機燃料はさらに、少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有する。少なくとも1つの有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体は約5〜約50組成重量パーセントの相対量で存在する。ガス発生固体はまた、
約10〜約30組成重量パーセントの副燃料と、
約25〜約70組成重量パーセントの塩基性金属硝酸塩酸化剤と、
0〜約15組成重量パーセントの金属酸化物冷却剤と
を含む。
【0010】
さらに、このインフレータアセンブリの重量および体積は、少なくとも1800Kの火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリに比べて少なくとも約20〜約40パーセント小さい。
【0011】
別の特定の態様では、内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体を含むインフレータアセンブリが提供される。インフレータアセンブリはまた、生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料と、処理済みガスがインフレータアセンブリから出ることを可能にする少なくとも1つのアセンブリ出口開口とを含む。
【0012】
ガス発生固体は、1670K以下の火炎温度を有し、有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つを含む。有機燃料は、少なくとも炭素元素、水素元素、および酸素元素と、アミド、イミン、ヒドロキシル、およびカルボキシル酸からなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを含む。また、有機燃料は少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有する。少なくとも1つの有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体は約10〜約20組成重量パーセントの相対量で存在する。ガス発生固体はまた、
約10〜約20組成重量パーセントの硝酸グアニジンと、
約25〜約70組成重量パーセントの塩基性硝酸銅酸化剤と、
0〜約15組成重量パーセントの金属酸化物冷却剤と
を含む。
【0013】
さらに、インフレータアセンブリが、少なくとも1800Kの火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリに比べて少なくとも約20〜約40パーセントの範囲内で重量および体積を減少させる。
【0014】
さらに別の態様では、膨張可能な車両乗員安全拘束機構を膨張させるための小型で軽量のインフレータアセンブリが提供される。1つのそのようなインフレータアセンブリは、内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバを形成するインフレータ本体と、生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するための一定量のガス処理材料とを含む。インフレータアセンブリはさらに、処理済みガスがインフレータアセンブリから出て、関連の膨張可能な車両乗員安全拘束機構に進むことができるようにするための少なくとも1つのアセンブリ出口開口を含む。ガス発生固体は、望ましくは1670K以下の火炎温度を有し、有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の少なくとも1つを含み、有機燃料は、少なくとも炭素元素、水素元素、酸素元素、および窒素元素、ならびに少なくとも1つのアミド官能基を含む。有機燃料は、望ましくは、少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有する。少なくとも1つの有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体は、望ましくは、約5〜約50組成重量パーセントの相対量で存在する。ガス発生固体はまた、
約10〜約30組成重量パーセントの硝酸グアニジンと、
約25〜約70組成重量パーセントの塩基性硝酸銅酸化剤と、
0〜約15組成重量パーセントの、酸化銅、酸化鉄、および酸化亜鉛からなる群から選択される金属酸化物冷却剤と
を含む。
【0015】
さらに、このインフレータアセンブリの重量および体積は、少なくとも1800Kの火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリに比べて少なくとも約20〜約40パーセント小さい。
【0016】
本明細書で使用するとき、「燃料」としての特定の組成物、成分、または材料についての言及は、CO
2、H
2O、およびN
2を完全に燃焼するのに十分な酸素を一般には含まない化学物質を指すものと理解すべきである。
【0017】
それに対応して、「酸化剤」としての特定の組成物、成分、または材料についての言及は、CO
2、H
2O、およびN
2を完全に燃焼するのに十分な量を超える酸素を一般に含む化学物質を指すものと理解すべきである。
【0018】
本明細書における、「主」としての燃料または酸化剤についての言及は、それぞれ最大濃度または相対量で存在する燃料または酸化剤を一般に表すものと理解すべきである。
【0019】
他の目的および利点は、添付の特許請求の範囲および図面に関連して述べる以下の詳細な説明から当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるエアバッグインフレータアセンブリの単純化した概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図は、全体を参照番号10で表された本発明の一実施形態によるエアバッグインフレータアセンブリを示す。エアバッグインフレータアセンブリ10は、概して円筒形の外形を有し、ハウジング12を含み、該ハウジング12は、2つの構造構成要素、すなわち下側シェルまたは底部分14と上側シェルまたはディフューザキャップ部分16とから形成され、該部分は、望ましくは互いに適切に接合または固定することができる。
【0022】
ハウジング12は、ここでは参照番号18によって表される概して円筒形のチャンバを画定するように構成される。チャンバ18は、ある量または供給分のガス発生剤材料20を含有または収容し、該材料20は、以下でより詳細に示すように、ガス発生固体から構成され、ガスを生成するように反応可能である。
【0023】
必要であれば、一定量のガス処理材料がガス発生剤材料20を取り囲み、該ガス処理材料は、ガスフィルタアセンブリ22の形態であり、生成されたガスを処理して処理済みガスを生成するのに効果的である。そのようなガス処理は、1つまたは複数の微粒子の除去に関わることがあり、またはそのような除去を含むことがあり、該微粒子は、ガス発生中に生成されたもの、その他の形で発生ガス中に同伴されたもの、あるいはインフレータからの放出前に発生ガスの冷却時に生じたものである。
【0024】
エアバッグインフレータアセンブリ10は、保定具24と、ディフューザダンパパッドクッション26と、下部ダンパパッドクッション28とを含み、これらは、エアバッグインフレータアセンブリ10内部でのガス発生剤材料20の望ましくないがたつきまたは接触を防止する働きをする。必要であれば、ディフューザダンパパッドクッション26および/または下部ダンパパッドクッション28は、点火剤組成物で処理することができ、該点火剤組成物は、作動されるガス発生剤材料20の点火を容易にする働きをすることができる。例えば、ダンパパッドクッション26は、点火剤コーティング30を含むことができ、該点火剤コーティング30がパッドの表面の少なくとも一部分に接着される。
【0025】
エアバッグインフレータアセンブリ10は、さらに、参照番号32によって全体を表される点火装置アセンブリを含み、該点火装置アセンブリ32は、点火装置雷管34および雷管アダプタまたはホルダ36の形態である。適切には、点火装置雷管34は、取付け開口38を通してチャンバ18内部の位置でハウジング12に取り付けられる、またはハウジング12と嵌合される。
【0026】
また、エアバッグインフレータアセンブリ10は、1つまたは複数のアセンブリ出口開口40を含み、該アセンブリ出口開口40は、処理済みガスがインフレータアセンブリから出ることができるようにする働きをすることができる。
【0027】
作動時、雷管34は、ガス発生剤材料20を点火および反応させる。例えば、雷管は、ディフューザダンパパッドクッション26の点火剤コーティング30を点火させることができる。そのような点火から生成される、またはそのような点火により生じた生成物は、本設計の構成によって、チャンバ18内に含有されるガス発生剤材料20と直接接触し、それによりガス発生剤材料20が点火および反応する。次いで、そのような反応によって発生または生成されたガスが、(備えられている場合には)ガスフィルタアセンブリ22を通過し、エアバッグインフレータアセンブリ10から出て関連のエアバッグクッション(図示せず)に入る。
【0028】
上述したように、エアバッグインフレータアセンブリ10は、ある量または供給分のガス発生剤材料20を含み、該ガス発生剤材料20は、ガス発生固体から構成され、ガスを生成するために反応可能である。以下に詳述するように、所要のガス発生固体は、望ましくは1670K以下の火炎温度を有し、それにより望ましいことに、より高い火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリに比べて重量および体積がかなり減少されたインフレータアセンブリが得られる。
【0029】
より特定的には、適切なガス発生固体は、本明細書において時として「低温燃焼燃料」成分と呼ぶ成分を含み、該成分は、好ましくは有機燃料、有機燃料の遷移金属塩、および/または有機燃料の遷移金属硝酸塩錯体の1つまたは複数から構成され、ここで有機燃料は、少なくとも炭素元素、水素元素、および酸素元素を含み、また、アミド、イミン、ヒドロキシ、およびカルボキシ酸からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含み、少なくとも0.5の酸素対炭素モル比および−400KJ/モル以上の生成発熱を有することが意外にも分かった。いくつかの特定の実施形態では、有機燃料は窒素元素も含む。実際には、有機燃料は、ニトロ官能基およびシアノ官能基を含まないことが望ましい。
【0030】
適切な有機燃料材料は、環状アミドを含めたアミドを含むことができる。そのような燃料材料として具体的に好ましいのは、バルビツール酸、シアヌル酸、オキサミド、ビウレット、ヒダントイン、アラントイン、マロンアミド、コハク酸アミド、パラバン酸、ジグリシン、およびイミド尿素である。他の適切な有機燃料材料としては、ヒドロキシ含有化合物を挙げることができる。そのような燃料材料として具体的に好ましいのは、フロログルシノール、マンニトール、マルチトール、およびソルビトールである。さらなる他の適切な有機燃料材料としては、カルボキシル酸を挙げることができる。そのような燃料材料として具体的に好ましいのは、グリシン、マロン酸、およびコハク酸である。いくつかの実施形態では、有機燃料は、酸性有機燃料のアミン塩、グアニジニウム塩、およびグアニル尿素塩の1つである。
【0031】
ガス発生材料固体中の低温燃焼燃料成分の量は、関連する特定の燃料材料および他の反応剤など様々な因子によって異なることがある。1つの好ましい実施形態では、ガス発生材料固体は、そのような低温燃焼燃料成分を少なくとも約5〜最大約50組成重量パーセントの相対量で含む、または含有することが望ましい。いくつかの好ましい実施形態では、低温燃焼燃料成分は、少なくとも約10組成重量パーセントの相対量で存在することが望ましく、いくつかの好ましい実施形態は、約20組成重量パーセント以下の最大低温燃焼燃料成分含有量を有する。
【0032】
本発明の実施で使用するためのガス発生固体は、望ましくは副燃料を含有し、または含み、該副燃料は、例えばガス収率を高めるおよび/または処理を容易にするのに望ましいことがある。1つのそのような好ましい副燃料は、硝酸グアニジンである。ガス発生材料固体中の副燃料の量は、関連する特定の副燃料材料および他の反応剤などの因子によって異なることがある。いくつかの実施形態では、ガス発生材料固体は、そのような副燃料組成物を少なくとも約10〜最大約30組成重量パーセントの相対量で含む、または含有することが望ましい。いくつかの好ましい実施形態では、副燃料成分は、少なくとも約15組成重量パーセントの相対量で存在することが望ましく、いくつかの好ましい実施形態は、約20組成重量パーセント以下の最大副燃料成分含有量を有する。
【0033】
本発明の実施で使用するためのガス発生固体は、望ましくは塩基性金属硝酸塩酸化剤成分を含有し、または含み、該塩基性金属硝酸塩酸化剤成分は、好ましくは塩基性硝酸銅から構成される。1つの好ましい実施形態では、ガス発生材料固体は、そのような塩基性金属硝酸塩酸化剤成分を少なくとも約25〜最大約70組成重量パーセントの相対量で含む、または含有することが望ましい。いくつかの好ましい実施形態では、塩基性金属硝酸塩酸化剤成分は、少なくとも約30組成重量パーセントの相対量で存在することが望ましく、いくつかの好ましい実施形態は、約65組成重量パーセント以下の最大塩基性金属硝酸塩酸化剤成分含有量を有する。
【0034】
本発明の実施で使用するためのガス発生固体は、望ましくは1つまたは複数の金属酸化物冷却剤を含有する、または含むこともあり、該金属酸化物冷却剤は、酸化銅、酸化鉄、および酸化亜鉛からなる群から選択される。含まれる場合には、そのような金属酸化物冷却剤は、最大約15組成重量パーセントの相対量で含まれることが望ましい。
【0035】
必要であれば、適切なガス発生固体は、スラッジ剤および/または製造補助剤として当技術分野で知られているものなど1つまたは複数の構成成分を含むこともできる。そのような適用および使用では、これらの成分は、望ましくは反応せず、したがって効果的に不活性材料または構成成分に分類される。特定の用途の具体的な条件および要件に応じて、適していることがあるそのような材料の例には、二酸化ケイ素、Eガラス繊維、酸化アルミニウム、二酸化チタンなどが含まれることがある。
【0036】
当業者には理解されるように、また本明細書で提示する教示によって説明したように、上述したような実施形態は、望ましくは、発生したガスがインフレータデバイスから出る前に、所要の発生ガス処理冷却を減らす、最小限にする、さらにはいくつかの場合にはなくすことができる。それに鑑みて、得られるインフレータアセンブリは、望ましくは、少なくとも1800Kの火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリに比べて、少なくとも約20〜約40パーセントの範囲内で重量および体積をそれぞれ減少することができる。特定の実施形態では、得られるインフレータアセンブリは、望ましくは、少なくとも1800Kの火炎温度を有するガス発生組成物を利用する他の点では同じ仕様のインフレータアセンブリよりも少なくとも約10〜約20パーセント低いチャンバ壁厚さで製造することができる。
【0037】
ガス処理材料の少なくとも一部がチャンバ内部に配置され、チャンバ内部で一定量のガス発生固体が反応してガスを生成する実施形態を特に参照して本発明を上述してきたが、当業者であれば、本明細書で提示した教示により、本発明の実施は必ずしもそれに限定されず、さらに広範実施が可能であることが分かるであろう。特に、ガス処理材料は、特定のインフレータアセンブリ内で、内部でガス発生固体が反応してガスを生成するチャンバ以外のインフレータアセンブリの一部分またはチャンバ内に含まれる、または含有されることがある。例えば、ガス処理材料は、インフレータアセンブリ内で、濾過もしくは冷却チャンバまたはディフューザチャンバなどの形態で主反応チャンバの外部にある一部分またはチャンバ内に含まれる、または含有されることがある。
【0038】
以下の実施例に関連付けて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、様々な態様を例示またはシミュレートし、該態様は本発明の実施に含めることができる。本発明の精神の範囲内にあるすべての変更が保護されることが望ましく、したがって本発明がこれらの実施例によって限定されると解釈すべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0039】
本発明によるガス発生固体(以下の表1に示す)を、実験室での混合で調製した。表1で、値は組成重量パーセント単位である。各場合に、9グラムの水中に硝酸グアニジンを70℃で溶解し、次いで他の列挙した構成成分中で撹拌することによって、それぞれのガス発生剤材料を20グラム調製した。得られた混合物を80℃で乾燥させ、次いで40メッシュスクリーンで粒化した。
【0040】
【0041】
これらのガス発生固体それぞれに関して、火炎温度(T
c)、ガス収率(Gn)、密度、ならびに低温燃焼燃料成分に関しては生成熱(ΔH)および酸素対炭素モル比(O/C)を求めた/分析した。それらを以下の表2に示す。これらのガス発生剤組成物それぞれに関するガス収率を、Martin Mariettaによってコンパイルされた市販のソフトウェアプログラム「PEP」(Propulsion Evaluation Program)を使用して各場合に計算した。
【0042】
【0043】
こうして、望ましくは高い質量流量および比較的低い火炎温度で高いガス出力を実現するガス発生固体含有インフレータアセンブリが提供される。例えば、そのようなインフレータは、発生させたガスの濾過または冷却の要件を軽減することができ、該濾過または冷却の減少は、関連の拘束システム設備の効率を改善するのに役立つことがあり、また、そのような設備のインフレータ構成要素のサイズ、重量、および/またはコストを大幅に低減することができる。
【0044】
本明細書で例示的に開示する本発明は、好適には、本明細書では具体的に開示していない要素、部分、ステップ、成分、または構成成分をなんら用いずに実施することができる。
【0045】
前述した説明では、本発明をそのいくつかの好ましい実施形態に関連して説明し、例示のために多くの詳細を提示してきたが、本発明には別の実施形態も可能であり、本明細書で述べた詳細のいくつかを、本発明の基本的な原理から逸脱することなく大きく変更することもできることを当業者は理解されよう。