(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転振動ダンパの出力フランジが軸方向でクラッチ装置を少なくとも部分的に取り囲むように回転振動ダンパの出力フランジが軸方向で加工成形されていることにより、回転振動ダンパとクラッチ装置とが、少なくとも部分的に入れ子式に互いに内外に係合して形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
クラッチ装置を操作するためのハイドロリック式またはニューマチック式の操作ユニットが設けられていて、該操作ユニットが、カバー軸受けを介してクラッチに結合されており、操作ユニットのハウジングが半径方向で変速機ハウジングに支持されていて、緊締装置を介して軸方向で変速機ハウジングへ押圧されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
クラッチ装置が、2つの個別クラッチを備えたツインクラッチとして構成されており、両個別クラッチのうちの一方の個別クラッチの入力ケージが、外側歯列を有しており、該外側歯列が、回転振動ダンパの出力フランジに設けられた内側歯列と共に、駆動装置と変速機との間でトルクを伝達するための軸方向の差込み歯列を形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図2】
図1に示したツインクラッチのための操作時における、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内部の力伝達経路を示す概略図である。
【
図3】
図1および
図2に示したツインクラッチの支承部を示す概略図である。
【
図4】遊びなしの摩擦板支持体を備えた本発明の別の実施形態によるツインクラッチを示す半割断面図である。
【
図5】組み立てられた摩擦板支持体を示す断面図である。
【
図6】組み立てられた摩擦板支持体の別の実施形態を示す断面図である。
【
図7】内部で閉じられた力伝達経路と、ダブルリングピストン(「CSC」)を介した操作装置とを有する、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図8】オイル供給部における軸方向クリアランス補償機構を備えた変速機軸固定のツイン湿式クラッチを有する、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図9】半径方向のオイル供給部を備えた、軸方向で浮動式に支承されたツイン湿式クラッチを有する、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図10】フレックスプレート支承部を備えた、軸方向で浮動式に支承された別のツイン湿式クラッチを有する、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図11】フレックスプレートとパイロットとを備えた、軸方向で浮動式に支承された別のツイン湿式クラッチを有する、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図12】乾式のZMSを備えた、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図13】乾式のZMSを備えていて、しかも外側の多板クラッチK1の外側摩擦板支持体とクラッチカバーとの間のスラスト軸受けが不要にされている、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図14】内部で閉じられた力伝達経路と、湿式作動式のZMSと、遠心力振り子(「FKP」)とを備えた、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図15】内部で閉じられた力伝達経路と、湿式作動式のZMSと、遠心力振り子(「FKP」)とを備えていて、しかも
図14に示した金属薄板つめもしくは緊締つめが不要にされている、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【
図16】半径方向外側の個別クラッチのクラッチケージがZMSの出力フランジと共に軸方向の差込み歯列を形成していて、ツインクラッチが、クランク軸とZMSとの間の結合機能とツインクラッチのための支承機能とを同時に引き受ける接続ハブを有している、本発明のさらに別の実施形態によるツインクラッチの半割断面図である。
【0008】
図1には、半径方向で入れ子式に互いに内外に嵌め合わされた、内外の2つの湿式作動式の多板クラッチK1,K2から成るツインクラッチ1が示されている。多板クラッチK1は半径方向外側に配置されていて、多板クラッチK2は半径方向内側に配置されている。ツインクラッチ1は、このツインクラッチ1に前置されたデュアルマスフライホイール(詳細には図示しない)の出力ハブ2によって駆動される。デュアルマスフライホイール(Zweimassenschwungrad;以降「ZMS」と呼ぶ)は回転振動ダンパもしくは回転振動減衰器の1例である。このZMSとツインクラッチ1との間には、クラッチカバー3が設けられている。このクラッチカバー3は湿室4を乾室5から分離している。パワートレーン内に後続して配置された変速機(図示しない)の変速機ハウジング7に対するクラッチカバー3の静的なシールもしくは固定用シールは、有利にはOリング6またはその他の固定用シールエレメントを介して行われる。ツインクラッチ1に対しては、動的なシールエレメントもしくは運動用のシールエレメントである半径方向軸シールリング8を介してシールが行われると有利である。
【0009】
ZMSの出力ハブ2は軸方向の差込み歯列を介してクラッチハブ9に相対回動不能に結合されている。クラッチハブ9は、半径方向の入れ子構造において外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体(プレートキャリヤ)10に結合されている。有利な1実施形態では、クラッチハブ9と入力側の摩擦板支持体10(以下、簡単に「クラッチケージ」とも呼ぶ)とが一体に形成されており、すなわち有利には1つの共通の金属薄板から非切削式の成型加工により成形されている。この場合、クラッチハブ9の範囲とクラッチケージの範囲とには、あとで非切削加工または切削加工により軸方向の歯列が形成される。
【0010】
多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10(=外側の入力摩擦板支持体10)およびこの摩擦板支持体10に相対回動不能に結合されたクラッチハブ9は、ラジアル軸受け16を介して第1の変速機入力軸15(中実軸として形成されている)に半径方向で支持されている。
【0011】
入力側の摩擦板支持体10は複数の歯列範囲を有している。これらの歯列範囲には、外側の多板クラッチK1の摩擦板ユニットの入力側の摩擦板が掛け込まれているので、外側の入力側の摩擦板11は相対回動不能でかつ軸方向では移動可能に配置されている。外側の入力側の摩擦板11は外側の出力側の摩擦板12に対して交互に配置されており、この場合、外側の入力側の摩擦板11と、これらの外側の入力側の摩擦板11に対して交互に配置された外側の出力側の摩擦板12とは、一緒になって多板クラッチK1の摩擦板ユニットを形成している。外側の出力側の摩擦板12は外側の多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13に相対回動不能にかつ軸方向移動可能に結合されている。多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13はハブ14を有しており、このハブ14はツインクラッチ変速機(詳細に図示しない)の第1の変速機入力軸15に結合されている。
【0012】
外側の多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10は、この摩擦板支持体10に掛け込まれた結合金属薄板17を介して、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の入力側の摩擦板支持体18に結合されている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の入力側の摩擦板は、内側の入力摩擦板支持体18に設けられた歯列範囲に相対回動不能にかつ軸方向移動可能に掛け込まれている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2の前記内側の入力側の摩擦板は内側の出力側の摩擦板に対して交互に配置されており、これらの内側の出力側の摩擦板は、多板クラッチK2の内側の出力側の摩擦板支持体19に相対回動不能にかつ軸方向移動可能に配置されている。内側の出力側の摩擦板支持体19はハブ範囲を有しており、このハブ範囲において内側の出力側の摩擦板支持体19は第2の変速機入力軸20(中空軸として形成されている)に結合されている。
【0013】
半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の出力側の摩擦板支持体19は、波形ばね21を介して(および構造上必要である場合には結合部材22を介しても)、スラスト軸受け23を挟んで、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13に押圧される。波形ばねの代わりに、別のばねエレメント、たとえば皿ばねユニットを使用することもできる。半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13は、別のスラスト軸受け24を挟んで、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の入力側の摩擦板支持体10もしくはクラッチハブ9に押圧される。半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の入力側の摩擦板支持体10は、さらに別のスラスト軸受け25を挟んでクラッチカバー3に押圧される。クラッチカバー3はリテーナエレメントもしくは位置固定エレメント26を介して変速機ハウジング7に支持される。特に
図1から判るように、軸受け23,24,25は有利にはスラスト(ニードル)軸受けとして形成されている。結合部材22は、両出力側の摩擦板支持体の間の冷却オイルのための流路が可能となるように形成されている。
【0014】
変速機入力軸15,20は本実施形態では、同軸的にかつ入れ子式に互いに内外に係合して配置されている。この場合、外側の変速機入力軸20は支持軸受け38を介して変速機ハウジング7に支持されており、内側の変速機入力軸15は支承部を介して外側の中空の変速機入力軸20内に支持されている。
【0015】
ツインクラッチ1はさらに操作装置27を有している。この操作装置27は内外の両多板クラッチK1,K2のための中央の1つのクラッチレリーザもしくはクラッチ解放器として形成されている。操作装置27はハウジング28を備えており、このハウジング28は支承球面(Lagerballus)29を介して変速機ハウジング7に支持されている。本実施形態においてダブルリングピストン締結器(「ダブルCSC」とも呼ばれ、CSCは、「Concentric Slave Cylinder」を表す)として構成された操作装置27は、円環状でかつ互いに同心的に配置された2つのピストン31,32を有している。用語「クラッチ解放器」もしくは「クラッチ締結器」とはこの場合、限定的に解釈されるものではなく、むしろこの技術分野において汎用の言い回しに基づくものである。「クラッチ締結器」もしくは「クラッチ解放器」としての操作装置の機能は、「ノーマリオープン(normally-open)」式のクラッチ、つまり通常では解放されているクラッチを操作したいのか、または「ノーマリクローズド(normally-closed)」式のクラッチ、つまり通常では締結されているクラッチを操作したいのかによってのみ決定され、すなわちクラッチが操作力なしの状態において解放されているのか、または締結されているのかによってのみ決定されている。操作装置の構成は、これによってほとんど影響を与えられていない。なぜならば、ノーマリオープンからノーマリクローズドへの変更のためには、レバーばねもしくは皿ばねの載着点を適合させるだけで済むからである。
【0016】
図1〜
図4に示した操作装置27の種々の実施形態は、両円環状のピストン31,32が互いに沿ってスライドする構成を示している。これによって、多板クラッチK1の外側のピストン31の内径は同時に多板クラッチK2の内側のピストン32のためのシール面を成している。択一的には、両ピストンが1つの円環状のウェブにより互いに分離されていて、このウェブに沿ってシール部材が滑動するような構成も考えられる。このような択一的な構成では、ピストン31,32が相互に影響を与え合うことをシール部材によって回避することができる。
【0017】
しかし、操作装置27の前で説明した可能な構成は、操作装置の可能となる多数の構成のうちの数例であるに過ぎない。すなわち、リングピストンの代わりに、別の横断面形状および/または複数の個々のピストンが周面に沿って分配されて設けられていてもよい。また、このピストン/シリンダユニットの代わりに、電気式もしくは電気機械式のクラッチ解放器を設けることもできる。さらに、機械式の操作装置、特にレバー操作式の装置が設けられていてもよい。
【0018】
リングピストン31,32のピストンシール部材は本実施形態では、エラストマシール部材として形成されている。エラストマシール部材は形状接続式の結合部、すなわち係合に基づいた嵌合による結合部を介して各リングピストンに結合されている。形状接続式の結合部としては、たとえばピストンに設けられた円錐状の溝と、この溝内に嵌め込まれる、エラストマシール部材に設けられた対応するキーまたはエラストマシール部材自体との対偶が考えられる。択一的には、たとえばPTFEから成る封入されたシール部材またはピストンに直接に固着射出成形されたエラストマシール部材も考えられる。
【0019】
環状のリングピストン31,32は締結器ハウジング28によって収容される。この場合、図面には詳細に図示されていない、締結器ハウジング28に設けられた複数の孔は、圧力オイルを介してリングピストン31,32を操作するために働く。
【0020】
付加的に、締結器ハウジング28は、クラッチベル4内部での支承球面29によるピストンの半径方向の位置決めを引き受ける。
【0021】
操作装置27の各操作ユニットは、それぞれ操作軸受け33,34を介して力伝達装置に結合されている。この力伝達装置を用いて、各操作力は各多板クラッチK1,K2に伝達される。本実施形態では、各力伝達装置が、それぞれ実質的に剛性的なポット形押圧部材であるプレッシャポット35A,35Bを有しており、このプレッシャポット35A,35Bは各操作軸受け33,34に接触している。念のため付言しておくと、当然ながら各プレッシャポット35A,35Bはある程度の弾性を有していて、この弾性がある程度のばね作用を生ぜしめる。しかし、ツインクラッチのこの場合の操作力を基準にして云えば、プレッシャポット35A,35Bは「実質的に剛性的である」とみなすことができる。さらに、各力伝達装置はそれぞれレバーばね36A,36Bを有しており、このレバーばね36A,36Bは各プレッシャポット35A,35Bに接触している。レバーばね36A,36Bはそれぞれ対応する多板クラッチK1,K2の所属の摩擦板支持体に懸吊されており、この場合、この懸吊点はレバーばね36A,36Bのための各旋回支点を形成している。このレバーばね36A,36Bのてこ比により、操作ユニットにより形成された操作力の力変換もしくは力増幅が行われる。各力伝達装置はさらにプレッシャ片37A,37Bを有している。このプレッシャ片37A,37Bは所属のレバーばね36A,36Bに接触していて、各多板クラッチK1,K2の摩擦板ユニットの摩擦板と作用結合されている。プレッシャ片37A,37Bは多板クラッチK1,K2の摩擦板ユニットに操作力を伝達する。プレッシャ片37A,37Bは半径方向外側の範囲において、入力側の各摩擦板支持体に設けられた歯列内に軸方向移動可能に懸吊されていて、この歯列によって半径方向でセンタリングされる。操作力のこのようなレバー変換の代わりに、操作軸受けと摩擦板ユニットとの間に配置されているプレッシャポットを介した直接的な操作、つまり1:1のてこ比における操作も考えられる。
【0022】
操作装置27のハウジング28には、外側の周壁範囲において支持軸受け30(「カバー軸受け」とも呼ぶ)が配置されている。この支持軸受け30はポット形引張り部材であるプルポット31を介して、半径方向外側の多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10(「クラッチケージ」)に結合されている。この場合、支持軸受け30/カバー軸受けの内側リングもしくは内レースは、ハウジング28に形成されたつばを介してハウジングに支持されており、支持軸受け/カバー軸受けの外側リングもしくは外レースはプルポット31に支持されており、この場合、多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10から戻された操作力がハウジング28に伝達可能となる。このことは
図2において破線により描かれている。
【0023】
操作力をプルポット31と共に締結器ハウジング28へ戻す支持軸受け30は、バヨネット結合部を介して締結器ハウジング28に結合されると有利である。
【0024】
両ピストンのいずれか一方のピストンもしくは両ピストンが圧力負荷されると、当該ピストンはクランク軸(
図1で見てZMSの出力ハブの左側に配置されている)の方向に運動し、このときに所属のプレッシャポット35A,35Bの連行部を介して各レバーばね36A,36Bを操作する。レバーばね36A,36Bは所属のプレッシャ片37A,37Bを介して操作力を摩擦板ユニットに導入する。この操作力は半径方向内側に配置された多板クラッチK2において、入力摩擦板支持体18と、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力側の摩擦板支持体と、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10との間の結合部材17(「結合金属薄板」とも呼ぶ)とを介して伝達される。この入力側の摩擦板支持体10は操作力をプルポット31へ伝達する。このプルポット31は支持軸受け30を介して締結器ハウジング28に結合されている。
【0025】
半径方向外側に配置された多板クラッチK1では、導入された操作力が直接に入力側の摩擦板支持体10を介してプルポット31に戻され、ひいては支持軸受け30を介して締結器ハウジング28に戻される。
【0026】
すなわち、本実施形態におけるダブルCSCは、駆動ユニットの方向でプレッシャポットに作用する押圧力を発生させる。この場合、締結器ハウジング28には、相応する大きさの、逆方向に向けられた反力が形成され、プルポットと支持軸受け30とを介して再び同じ量と同じ方向とを有する操作力がハウジングへ戻される。すなわち、支持軸受け30が締結器ハウジング28に操作力を伝達することにより、ツインクラッチ1内で内部の力の流れ、すなわち力伝達経路が閉じられる。
図2には、多板クラッチK2を操作するための操作力のこのような経過が破線L1により概略的に描かれている。すなわち、この場合、多板クラッチK1,K2を操作するために、半径方向のオイル供給の場合に外部の力が発生せず、もしくは軸方向のオイル供給の場合に外部の力がほとんど発生しない。それゆえに、ツインクラッチ1はクラッチベルまたはエンジン側における操作力の支持を必要としない。
【0027】
ハイドロリック媒体(操作モジュール)は操作装置に、クラッチベルに結合されているフィッティングもしくは取付け具(Fitting)を介して供給される。
【0028】
支持軸受け30内部の軸受け摩擦により締結器ハウジング28の回転が生ぜしめられないようにするために、締結器ハウジング28はクラッチベル4の内部にトルク支持部を有している。トルク支持部としてはこの場合、圧力供給のための取付け具を使用することができる。択一的には、クラッチの組立て時にクラッチベル底部内に係合するピンまたはこれに類する構成部分による別個の支持部が設けられていてよい。
【0029】
図3には、
図1に示した実施形態によるツインクラッチ1の半径方向および軸方向の支承部が矢印P1〜P5により概略的に図示されている。
【0030】
半径方向で見て、ツインクラッチ1の、エンジン回転数によって回転する全てのコンポーネントが変速機側では締結器ハウジング28に、エンジン側では中実軸もしくは第1の変速機入力軸15にそれぞれ支承されている。矢印P1はこの場合、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10およびこの構成部分に結合された構成部分の、連結器ハウジング28における支持を示している。連結器ハウジング28は、矢印P2で示したように、支承球面29を介してベル底部(変速機ハウジングに設けられている)に支持されている。支承球面29は中実軸15と変速機側の支承ベースとの間の角度補償部を成している。矢印P3により示したように、中実軸15はエンジン側では軸受け16を介して、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10を支持している。中実軸15および中空軸20の各変速機入力回転数で回転するクラッチコンポーネント14,19は、これらの軸に装着されたハブ/ハブ範囲を介して半径方向に支承されている。支承球面29は、外側の変速機入力軸における半径方向の支持部により、有利には外側の変速機入力軸に配置されたラジアルニードル軸受けを介して代えることができる。
【0031】
軸方向で見て、ツインクラッチ1はクラッチカバー3に支持されている。この場合、支持力は波形ばね21により付与される。軸方向の支承点は矢印P4,P5により示されている。波形ばね21は、中空軸20に取り付けられた位置固定リングと、多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体19のハブとに支持されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体19はスペーサディスク22を介してこの軸方向力を、出力側の摩擦板支持体13もしくはそのハブ範囲14に設けられたスラストニードル軸受け23に導く。多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体13はスラストニードル軸受け24を介して多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10に支持されており、この入力側の摩擦板支持体10は別のニードル軸受け25を介してクラッチカバー3に支持されている。これによってクラッチシステム1は常にクラッチカバー3において位置調整されている。波形ばね21を介して、軸方向振動および公差を補償することができる。スラストニードル軸受け23,24,25はスラストワッシャにより代えることもできる。本実施形態におけるツインクラッチ1の前で説明した軸方向支承部は、前で説明した、内部で閉じられた力伝達経路とは無関係に使用され得る、すなわち別形式の操作力伝達経路においても使用され得ると共に、一般にツイン(湿式)クラッチのための別個に使用可能な解決手段を成している。
【0032】
図4には、操作力伝達経路コンセプトの点では既に前で説明した実施形態に完全に相当しているツインクラッチ装置を備えたトルク伝達装置の別の実施形態が示されている。すなわち、操作装置に関する前で説明した全ての特徴は、
図1〜
図3に示した実施形態と
図4に示した実施形態との間で一致している。さらにこの場合も、操作ハウジング28を変速機ハウジング7に半径方向で支持しかつ軸方向ずれを補償するために、支承球面が設けられている。しかし、
図4に示した実施形態は、内燃機関から到来する回転むらもしくは回転不整を減衰するために使用されるエレメント:ZMSおよび/または遠心力振り子の点で、前記実施形態とは異なっている。すなわち、
図4に示した実施形態では、デュアルマスフライホイール(ZMS)39も遠心力振り子40も、クラッチベル4内に、すなわち湿室内に配置されている。湿室はクラッチカバー41によって乾室に対して仕切られている。クラッチカバー41は本実施形態ではクラッチの軸方向支承のためには設けられていない。それどころか、クラッチカバー41はシール装置6,8を介して湿室4と乾室5とを分離するための分離部を成しているに過ぎない。
【0033】
ZMS39は一次側のZMS金属薄板42を有している。このZMS金属薄板42はこの場合、ポット状に形成されている。ZMS金属薄板42の半径方向内側の範囲には、パイロットピン43が配置されている。パイロットピン43はクランク軸45に設けられた切欠き44内に係合していて、組立て時に一次側のZMS金属薄板42をセンタリングする。一次側のZMS金属薄板42の半径方向外側の範囲は複数のポケット状の範囲を有しており、これらのポケット状の範囲内には、ばねエレメントが収容されている。この場合、エネルギ蓄え器46の、これらのポケットには接触していない端範囲は二次側のZMSフランジ47に作用結合されている。二次側のZMSフランジ47はリベット49を介して、ほぼ円筒状の歯列金属薄板48に結合されており、この場合、この歯列金属薄板48は半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体(=クラッチケージ)として働く。
【0034】
入力側の摩擦板支持体48は、結合金属薄板50を介して、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力側の摩擦板支持体51に結合されている。この結合金属薄板50はさらに遠心力振り子40に結合されている(本実施形態では一体に形成されている)ので、ZMS39と遠心力振り子40とは、一緒になって歯列金属薄板48に結合されていて(有利にはリベット49を介して)、したがって互いに並列に接続されている。
【0035】
歯列金属薄板48は、ポット形引張り部材であるプルポット52を介して支持軸受け53(=カバー軸受け)に結合されており、この支持軸受け53は締結器ハウジング28(既に前で説明したものと同様)に配置されている。
【0036】
多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体54は中実軸15に相対回動不能に配置されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体55は中空軸20に相対回動不能に配置されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体55は、波形ばね21を介して位置固定エレメント21Aおよび結合部材22と相まって、出力側の摩擦板支持体54に対してスラスト軸受けの介在下に前負荷されている。多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体54は別のスラスト軸受けの介在下に一次側のZMSフランジ42(「ZMS金属薄板」とも呼ぶ)に対して負荷されている。一次側のZMS金属薄板42には、ドライブプレート56が不動に配置されている。このドライブプレート56はねじ締結部57を介してフレックスプレート58に結合されており、この場合、フレックスプレート58は別のねじ締結部59を介してクランク軸45に結合されている。
【0037】
操作装置27は操作ユニットを有している。この操作ユニットは本実施形態ではピストンシリンダユニットとして形成されている。既に前で説明したように、このピストンシリンダユニットはそれぞれ、プレッシャポットとレバーばねとプレッシャ片とから成る力伝達装置を介して両多板クラッチK1,K2の各摩擦板ユニットに作用する。
【0038】
図4に示した前記ツインクラッチ100を備えたトルク伝達装置は、フレックスプレート58を介してドライブプレート56と相まって内燃機関のクランク軸45に結合されている。ドライブプレート56とフレックスプレート58とは、ねじ締結部57を介して互いに結合されている。ドライブプレート56と一次側のZMS金属薄板42とは、直接に、有利にはオイル密に、たとえば溶接により互いに結合されていて、軸方向で両部材の間に接続された、半径方向軸シールリング8を備えたクラッチカバー41を収容している。一次側のZMS金属薄板42はドライブプレート56との結合部の半径方向内側で一貫して閉じられているので、一次側のZMS金属薄板42は、カバーに設けられた比較的大きな切欠きにより開放される範囲において湿室のシールを引き受ける。
【0039】
ZMSの一次側のコンポーネントは組立ての理由からパイロットピン43を介して直接にクランク軸45に支承されている。しかし、パイロットピン43は、組立てを容易にする選択的な特徴であるに過ぎないと解されるべきである。
【0040】
ZMSの二次側のZMSフランジ47は本実施形態では同時に多板クラッチK1の端部摩擦板をも成している。
【0041】
多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体48は(既に説明したように)、リベット締結された変化形として形成されている。
【0042】
図5および
図6には、リベット締結された摩擦板支持体の実施形態が示されている。
【0043】
図5には、組み立てられた摩擦板支持体134(
図4に示した入力側の摩擦板支持体に比較可能)の細部が断面図で示されている。摩擦板支持体134はフランジ部分113aと、支持ディスク136と、軸方向でこれら両部材の間に配置されて全周にわたって分配された複数の結合エレメント190とから形成される。図示の実施形態では、結合エレメント190が、予め曲げ成形された金属薄板部分191から形成されている。これらの金属薄板部分191は軸方向に延びるリベットピン192,193を有しており、これらのリベットピン192,193はフランジ部分113aもしくは支持ディスク136に設けられた対応する開口194,195を貫いて案内されていて、外部からフランジ部分113aもしくは支持ディスク136にリベット締結されている。金属薄板部分191の、周方向に向けられた端部は、歯面196を形成するために半径方向内側に向かって縁曲げされているか、または曲げられているので、金属薄板部分191の横断面には歯面プロファイル(歯面輪郭)が形成されており、この歯面プロファイルには摩擦板138が懸吊されている。このためには、これらの摩擦板138が相補的な外側プロファイル197を有しているので、摩擦板138は摩擦板支持体134においてセンタリングされており、この摩擦板支持体134に加えられるトルクは摩擦板138に伝達される。これらの摩擦板138は、出力側の摩擦板支持体142に相対回動不能でかつ軸方向では制限された範囲で移動可能に懸吊されている摩擦板140と共に交互に積層されている。
【0044】
図6には、前で説明した摩擦板支持体に対して択一的な、摩擦板支持体135aの形の構成が、組み立てられた状態で図示されている。この摩擦板支持体135aは、
図5に示した結合エレメント190と比較可能に構成された結合エレメント198を有している。これらの結合エレメント198は端部摩擦板172aと支持ディスク136との間にリベット締結されている。さらに
図6には、軸方向に延長されたピン186を備えた結合エレメント190aが示されている。この結合エレメント190aは、たとえば複数の周方向位置において
図5に示した結合エレメント190の代わりに使用され、これにより摩擦装置185への摩擦板支持体134のアクセスを可能にする。この場合、ピン186は摩擦リング187を周方向でクラッチユニットのハウジングに対して連行し、こうして摩擦装置を制御する。
【0045】
個々の歯列付き金属薄板は、
図4に示した実施形態では互いに異なる2つの長さを有していて、全周にわたって交互に分配されている。短い方の歯列付き金属薄板は両多板クラッチK1,K2の入力側の摩擦板支持体48,51の結合金属薄板50とリベット締結されている。長い方の歯列付き金属薄板は、操作力を締結器ハウジング28に戻すプルポット52に結合されている。これらの段付けされた歯列付き金属薄板により、遠心力振り子がZMSの二次側のフランジに回動遊びなしに結合されていることが達成される。これによって、プルポット52は多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体48に形状接続的にかつ摩擦接続的に結合されていて、発生した操作力を受け止めることができる。
【0046】
図7には、内部で閉じられた力伝達経路を有しかつカバー軸受けを介してクラッチに一緒に組み込まれた、ハウジング固定のCSCとしてのダブルリングピストン締結器を介して操作されるツイン湿式クラッチが図示されている。この場合、基本的な構造は
図1に示した実施形態に相当している。以下に詳細に説明するように、ダブルリングピストン締結器のピストンは本実施形態では調節ディスクを介して両多板クラッチK1,K2の摩擦板ユニット内に締結力を導入する。内側の多板クラッチK2では、操作力が外側摩擦板支持体(=入力摩擦板支持体)と中間ウェブ(結合金属薄板214)とを介して外側の多板クラッチK1の外側摩擦板支持体に伝達される。操作力はこの外側摩擦板支持体から位置固定リング229とクラッチカバー220(=プルポット)とを介してカバー軸受け221へ戻る。カバー軸受け221は位置固定リング230を介してCSCへこの力を戻し、これによって力伝達経路を閉じる。外側の多板クラッチK1では、摩擦板ユニットの後で外側摩擦板支持体211と、位置固定リング229と、クラッチカバー220と、カバー軸受け221と、カバー軸受け221とCSCハウジングとの間の位置固定リング230とを介して前記力を戻す。したがって、操作時に力は周辺へ導入されない。
【0047】
図7には、乗用車または貨物自動車(トラック)のような自動車のパワートレーンにおいて、駆動軸200を備えた駆動ユニット(図示しない;本実施形態ではクランク軸を備えた内燃機関)との間に設けられたトルク伝達装置の半割断面図が示されている。駆動軸200はZMSの入力側201に結合されており、この場合、入力側201はスタータリングギヤ202をも支持している。入力側201の半径方向外側の範囲には、ばねエレメント204(たいていの場合、円弧ばね)のためのほぼ閉じられた収容範囲203が設けられている。円弧ばね204内には、ZMSの出力部分205が係合しており、この場合ZMS出力部分205は付加はずみ質量体206とリベット締結されている。ZMS出力側205は半径方向内側でフランジ範囲207に結合されている。このフランジ範囲207は半径方向内側に歯列を有している。この歯列はクラッチハブ208に設けられた半径方向外側に位置する歯列と噛み合っている。ZMSの出力側に設けられたフランジ範囲207と、以下に詳しく説明するツイン湿式クラッチの入力側であるクラッチハブ208との間の歯列は、組立て時における、エンジンに結合されたZMS(エンジン構成アッセンブリ)と、変速機に結合されたツイン湿式クラッチ(変速機構成アッセンブリ)との間の分離平面を成している。この分離平面には、相対回動不能な結合が形成されていると同時に、軸方向の移動可能性が与えられている。クラッチハブ208は半径方向内側で、ラジアル軸受け209のための軸受け座部(本実施形態ではニードル軸受けスリーブ)を備えて形成されており、この場合、クラッチハブ208はラジアル軸受け209を介して内側の変速機入力側210に軸方向で支承されている。この場合、ラジアル軸受け209の軸受け外レースはクラッチハブ208内に不動に収容されており、転動体は変速機入力側210の相応する周面に沿って直接に転動する。
【0048】
クラッチハブ208は、半径方向の入れ子式の内外嵌め合い構造において半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体211に軸方向不動でかつ相対回動不能に結合されている(本実施形態では溶接されている)。入力摩擦板支持体211とクラッチハブ208との間には、さらに付加的にスリーブ状の構成部分212が締付け固定されている。このスリーブ状の構成部分212は、クラッチカバー213とZMS出力フランジとの間のシール個所をシールする半径方向軸シールリングのための転動面を提供している。クラッチハブ208は半径方向内側の範囲において閉じられていて、こうしてクラッチカバーが「開いている」範囲における湿室のシールを引き受ける。
【0049】
外側の入力摩擦板支持体211(=クラッチケージ)は、結合金属薄板214を介して、半径方向の入れ子式構造において半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の入力摩擦板支持体215に結合されている。入力摩擦板支持体211,215と結合金属薄板214との間の各結合部は既に説明したものに相当している。
【0050】
外側の多板クラッチK1の出力摩擦板支持体216は、所属のフランジ範囲に形成された軸方向の差込み歯列を介して内側の変速機入力軸210に相対回動不能に、ただし軸方向移動可能に結合されている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2の出力摩擦板支持体217は同じく所属のフランジ範囲に形成された軸方向の差込み歯列を介して外側の変速機入力軸218に相対回動不能に、ただし軸方向移動可能に結合されている。本実施形態では、所属の歯列は、多板クラッチK2の出力摩擦板支持体に溶接されているハブ範囲に形成されており、この場合、このハブ範囲は付加的に突出部もしくは凹設部を有しており、これらの突出部もしくは凹設部は、冷却オイルを両多板クラッチK1,K2の出力摩擦板支持体の間に通して流れさせるために流れ通路217Aを形成している。
【0051】
さらに、ハブ範囲217と中空軸218との間には、波形ばね219のようなばねエレメントが配置されており、これによりハブ範囲/多板クラッチK2の出力摩擦板支持体には、多板クラッチK1の出力摩擦板支持体に設けられたスラスト軸受けと、クラッチハブ208に設けられた別のスラスト軸受けとを介してプリロードもしくは予荷重がかけられる。クラッチハブ208は多板クラッチK1の入力摩擦板支持体211とプルポット220とを介して、カバー軸受け221と相まってCSCのハウジング222に軸方向で支承されている。CSCのハウジング222は、ワークを加工機械にチャックするための緊締つめもしくは金属薄板つめに比較可能に機能する、ほぼ剛性的な、ポット状に形成された構成部分223を介してベル底部224に緊締される。択一的には、ポット状に形成された構成部分223に弾性的にプリロードもしくは予荷重をかけることも考えられる。緊締つめ/金属薄板つめに相当する構成部分223はこの場合、オイル供給部225を緊締するために働く。このオイル供給部225によってオイルがCSCへ供給され、そして引き続き、CSC内に設けられたピストンシリンダユニットへ供給される。
【0052】
CSCに設けられた前記ピストンシリンダユニットは操作軸受けを介して、実質的に剛性的なプレッシャポット226,227に結合されている。これらのプレッシャポット226,227は、ピストンシリンダユニットの相応する圧力負荷時に、両多板クラッチK1,K2の各摩擦板ユニットに、1:1のてこ比で作用する。
【0053】
実質的に剛性的なプレッシャポット226,227と操作軸受けとの間には、両多板クラッチK1,K2の摩擦板ユニットの通気クリアランスを調節するための調節ディスク228,229が設けられている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2のプレッシャポット227の例に図示されているように、調節ディスク228,229を半径方向で位置決めするために、プレッシャポット226,227からは、舌片が加工成形されていてよい。
【0054】
多板クラッチK2のプレッシャポット227の半径方向の案内は、結合金属薄板214に加工成形されたネック範囲を介して行われる。このネック範囲はプレッシャポット227の円筒状の範囲に対応して形成されている。
【0055】
結合金属薄板214はさらに舌片を有しており、これらの舌片には、プレッシャポット227を多板クラッチの解放方向に負荷する戻しばねが支持されている。
【0056】
多板クラッチK1のプレッシャポット226の半径方向の案内は、プルポット220に形成された円筒状の範囲を介して行われる。この場合、プレッシャポット226を解放方向で前負荷する戻しばねが、結合金属薄板214に形成されたネック範囲の端面に支持されている。
【0057】
要約すると、
図7に示した実施形態に関しては、CSCがクラッチと一緒に組立て可能なユニット(すなわち、前組立構成アッセンブリ)を形成することが判る。クラッチ/CSCから成るこの前組立構成アッセンブリは、金属薄板つめ223を介してクラッチベルのベル底部に軸方向で位置固定される。この場合、突出部228を介して半径方向のセンタリングが行われる。金属薄板つめ223は組立て時に軸方向でプリローをかけられて、運転時には、クラッチからカバー軸受けを介してCSCに導入される力およびトルクを吸収する。付加的に、金属薄板つめ223は、オイル引渡し部において軸方向でCSCに導入される押圧力を支持する。
【0058】
クラッチ/CSCから成る前組立構成アッセンブリはこの場合、CSCに設けられたセンタリングつば228を介して半径方向でベル底部に支承されている。センタリングつば228を介して支持される力は、カバー軸受け221を介してCSCハウジングに導入される。反対の側では、クラッチが、自由側軸受けとして形成されているラジアル軸受け209を介して、内側の変速機入力軸に支承されている。
【0059】
通気クリアランスを調節するために、本実施形態では、クラッチカバーに対する位置固定リング230の当付け面と、締結軸受けに対する調節ディスク228,229の当付け面との間の間隔が測定される。付加的に、外側の多板クラッチの外側摩擦板支持体に設けられた溝に対する位置固定リング229の当付け面と、プレッシャポットに対する調節ディスクの当付け面との間の間隔が測定される。これらの測定値から、必要とされる通気クリアランスを差し引いた値の差から、必要とされる調節ディスクの厚さが得られる。
【0060】
図8には、オイル供給部における軸方向クリアランス補償を有する変速機軸固定のツイン湿式クラッチの1実施形態が示されている。
【0061】
図8に示したツイン湿式クラッチの実施形態は、入力側201、円弧ばね204および出力側205ならびに付加はずみ質量体206とフランジ範囲207との結合部に関して、またツイン湿式クラッチやその操作部ならびに変速機入力軸およびベル底部の主要な特徴に関しては、既に前で
図7につき説明したものに相当している。
【0062】
しかし、ツイン湿式クラッチのクラッチハブ208′に設けられた外側歯列と結合されている内側歯列を有するZMSのフランジ範囲207′は、軸方向で一層短く形成されている。なぜならば、カバー213に設けられたラジアル軸シールリングが直接にクラッチハブ208′の外側の周面に接触していて、かつ湿室を乾室に対してシールするからである。
図8に示した構造は、さらに支承コンセプトの点で、
図7に示した構造とは異なっている。なぜならば、クラッチハブ208′は固定側軸受け209′を介して内側の変速機入力軸210′に半径方向および軸方向で支承されているからである。固定側軸受け209′の組付けのためには、クラッチハブ208′がクラッチハブカバー208′′を有しており、この場合、クラッチハブカバー208′′とクラッチハブ208′との間には、固定側軸受け209′の軸受け外レースが締付け固定されている。固定側軸受け209′の内レースは軸肩部と変速機入力軸210′に設けられた位置固定リングとの間に固定されている。外側の多板クラッチK1の入力摩擦板支持体211(=クラッチケージ)は、
図7に示した実施形態に相応して、クラッチハブ208′に結合されており、この場合(同じく
図7の構成に相応して)プルポット220はカバー軸受け221を介してCSCのハウジング222に結合されている。CSC内のピストンシリンダユニットの構成ならびに操作軸受け、調節ディスクおよび操作ポットの構成も、
図7につき説明したものに相当している。さらにクラッチハブ208′における波形ばねと2つのスラスト軸受けとを備えた湿式クラッチの軸方向の支承部は、
図7につき説明した構成に相応して構成されている。
【0063】
しかし、緊締つめ/金属薄板つめとして作用する構成部分223の代わりに、本実施形態では、フレキシブルな金属薄板300が設けられている(以降、「フレックスプレート」とも呼ぶ)。このフレキシブルな金属薄板300は、軸方向および半径方向で「軟らかい」トルク支持部として働く。CSCハウジング222は管301を介して、変速機ハウジングに設けられたオイル供給部に結合されている(ピストンシリンダユニット1つ当たり少なくとも1つの管)。この場合、管の長さは、CSCハウジング222の軸方向運動が可能となるように寸法設定されている。これにより、フレックスプレートは軸方向の力を伝達しない。
【0064】
クラッチとCSCとから成るシステムユニットを半径方向で支持するためには、CSCハウジング222と外側の変速機入力軸218との間にラジアル軸受け302が設けられている。
【0065】
要約すると、
図8に示した実施形態に関しては、クラッチ/CSCから成るシステムユニット(前組付けアッセンブリ)が、固定側軸受けを介して内側の変速機入力軸に軸方向で位置固定されていることが判る。位置固定リングを固定側軸受けに組み付けることができるようにするために、クラッチはハブカバー208′′を有している。このハブカバー208′′は固定側軸受けをクラッチ内に位置固定して、湿室を乾室に対して分離する。さらに、CSCには、水平方向に延びる管301を介して圧力オイルが供給される。これらの管(たとえば部分クラッチ1つ当たり1つの管)はシール部材を介して両側でCSCとクラッチベルとに対してシールされている。これらの管は軸方向にクリアランスを有しており、これにより軸方向の軸運動およびクラッチ運動を補償することができる。フレックスプレート300は本実施形態では軸方向で軟らかく形成されていて、クラッチの運動に従動する。周方向においては、フレックスプレート300は比較的剛性的に形成されていて、締結軸受けの摩擦トルクをベル底部に支持する。フレックスプレートは必ずしも回転対称的な構成部分として形成されている必要はなく、CSCとベル底部とにねじ締結されている金属薄板ラグとして形成されていてもよい。
【0066】
図示されているように、クラッチは半径方向で固定側軸受けを介して内側の変速機入力軸に支承されていて、反対の側ではカバー軸受けとニードル軸受けとを介して外側の変速機入力軸とCSCハウジングとの間に支承されている。
【0067】
図9には、半径方向のオイル供給部を備えた、軸方向で浮動式に支承されたツイン湿式クラッチの実施形態が示されている。
図9に示した実施形態は多くの特徴の点で、
図8に示した実施形態と一致しているので、以下においては
図8に示したクラッチユニットと
図9に示したクラッチユニットとの間の相違点についてのみ説明する。すなわち、クランク軸200からクラッチハブ208′までの範囲は、
図8に示した実施形態と
図9に示した実施形態とにおいて同一である。両実施形態の間の第1の相違点は、
図9に示した実施形態ではクラッチハブ208′と内側の位置する変速機入力軸210′′との間の軸受け400が、軸方向の自由側軸受けとして形成されていることにある。なぜならば、たしかに軸受け400の軸受け外レースはクラッチハブカバー208′′とクラッチハブ208′との間に締付け固定されているが、しかし軸受け400の軸受け内レースは変速機入力軸210′′に固定されていないからである。
【0068】
さらに、
図8に示した実施形態と
図9に示した実施形態とは、CSCハウジング222をベル底部224に結合するフレックスプレート300が設けられている点では一致しているが、しかし
図9に示した実施形態では、別形式のオイル供給部、つまりこの場合には半径方向のオイル供給形式のオイル供給部が、半径方向に配置された管路401,402を介して変速機側のオイル供給部とCSCとの間に設けられている。半径方向において、CSCハウジング222は再びラジアルニードル軸受け302を介して外側の変速機入力軸218に支承されている。
【0069】
要約すると、
図9に示した実施形態では、クラッチ/CSCから成るシステムユニット(=前組立構成アッセンブリ)がエンジン側で自由側軸受けを介して半径方向で内側の変速機入力軸に支承されていて、変速機側ではクラッチがカバー軸受けとニードル軸受けとを介して外側の変速機入力軸とCSCハウジングとの間に半径方向で支承されている。さらに、この実施形態ではツイン湿式クラッチが軸方向で浮動式にフレックスプレート300と、デュアルマスフライホイールにおいて基本摩擦を発生させるために必要とされるばね403,404との間に懸吊されている。さらに、操作オイルは半径方向において2つの管路を介してクラッチに供給される。この場合、これらの管路は、クラッチの軸方向運動を吸収し得るように形成されている。各管路は、たとえば2つの部分管から成っており、この場合、CSCハウジング内に位置する管片はシステムユニットと一緒に組み付けられ、引き続き、第2の部分管が、クラッチベルに設けられた開口を通じて導入されて、第1の部分管と結合される。これらの管片の結合個所はそれぞれ互いに対してシールされていて、しかも管長手方向に作用する押圧力が吸収され得るように構成されている。湿室を乾室から分離するために、本実施形態では、クラッチベルの開口と第2の部分管との間に付加的なシール部材が設けられている。
【0070】
図10には、この場合にフレックスプレート支承部を備えた、軸方向で浮動式に支承された別のツインクラッチの1実施形態が示されている。
図10に示した実施形態は、前で
図7につき説明したように、クラッチハブ208と、自由側軸受け209による内側の変速機入力軸210におけるクラッチハブ208の支承部とを備えたツインクラッチを有している。さらに、
図10に示した実施形態はZMSの出力側205とクラッチハブ208との間に、
図7につき説明したものに相当する結合フランジ207を有している。さらに、スリーブ状の構成部分212が設けられており、このスリーブ状の構成部分212はやはり
図7につき説明したものである。さらに、クラッチカバー213およびツイン湿式クラッチの特徴、特にクラッチハブ208における両スラストニードル軸受けと相待った波形ばね219による軸方向の支承部およびプレッシャポット226,227による操作も、
図7につき説明したものに相当している。このことは、特にCSCハウジング222と外側の変速機入力軸218との間にも云える。
図7に示した実施形態においても、
図10に示した実施形態においても、半径方向の支承部は設けられていない。
【0071】
しかし、
図7および
図10に示した両実施形態は以下の点で互いに異なっている。すなわち、
図7に示した実施形態では、CSCハウジング222に軸方向の突出部228が設けられていて、この突出部228においてCSCハウジング222は半径方向でクラッチベル224に支承されており、それに対して
図10に示した実施形態では、フレックスプレート500が設けられていて、このフレックスプレート500がCSCハウジング2222をベル底部224に結合している。この場合、相応する組付けを容易にするために、フレックスプレート500とベル底部との間の結合個所はツイン湿式クラッチの直径の半径方向外側に配置されている。
図9に示した実施形態と比較可能に、CSCにハイドロリック媒体を供給するために管501,502を経由したオイル供給部が設けられている。この場合、変速機ハウジング側の管501は変速機ハウジングとねじ締結されている。さらに、CSC側の管はねじ結合部を介してCSCハウジング222に固定されている。管501,502は軸方向で互いに対して移動可能であって、かつ互いに対してシールされており、この場合、両管501,502はほぼ半径方向に延びている。
【0072】
要約すると、
図10に示した実施形態では、クラッチ/CSCから成るシステムユニットがエンジン側で自由側軸受けを介して半径方向で、内側の変速機入力軸に支承されている。変速機側では、クラッチは半径方向でカバー軸受けとフレックスプレートとを介してクラッチベルに支承されている。CSC側のオイル管路部分は、ねじ締結部を介してCSCに結合されていて、かつシールされている。第2の管路部分(変速機ハウジング側)はフランジを介して外側でクラッチベルにねじ締結されていて、Oリングを介してシールされている。オイル供給部はこの場合にも軸方向では軟らかく形成されており、これによりクラッチの軸方向運動を吸収することができる。システムユニットは、
図9につき既に説明したようにフレックスプレートと、デュアルマスフライホイールに設けられたばねとの間で浮動する。
【0073】
図11には、フレックスプレート支承部を備えた、軸方向で浮動式に支承されたさらに別のツインクラッチの実施形態が示されている。この場合、軸方向で浮動式の支承部とフレックスプレート支承部に対して付加的に、クランク軸とクラッチとの間でのパイロットを介した支承部も設けられている。この場合、
図11に示した実施形態の全体構成は
図10に示した実施形態による構成と同一であるが、この場合、クラッチハブ208の延長部として形成されたパイロット600が設けられている。パイロット600とクランク軸200との間には、自由側軸受け(たとえばラジアルニードル軸受け)が配置されている。
【0074】
図12には、乾式のZMSを備えた別のツイン湿式クラッチの実施形態が示されている。
図12に示した実施形態では、半径方向外側に配置された円弧ばねと、半径方向内側に配置された円弧ばねとを備えたZMSが示されている。このようなZMSは特に著しく際立った回転不整を有する内燃機関において使用され得る。しかし、ZMSの構成は、ツインクラッチの構成およびZMSとツインクラッチとの間の結合部の構成ならびにツインクラッチの操作装置に関して制約的な意味を有しない。それどころか、クランク軸200とツイン湿式クラッチとの間にZMSおよび入力側201と出力側205′とを有する別の回転振動減衰システムが設けられていることだけが重要となる。この場合、出力フランジ207′′は、ほぼ
図1に示した構成に相当する入力ハブ700に結合されている。入力摩擦板支持体701の構成も、
図1につき説明した入力摩擦板支持体13に相当している。さらに、入力ハブ700およびこの入力ハブ700に結合された多板クラッチK1の入力摩擦板支持体は、
図1に示したラジアル軸受け16に相当するラジアル軸受け702を介して内側の変速機入力軸703に半径方向で支持されている。ツイン湿式クラッチが収容されている湿室704は、ベル底部705とクラッチカバー706とによって支持され、この場合、クラッチカバー706と入力ハブ700との間には、半径方向軸シールリングが設けられている。この半径方向軸シールリングは転動面707に沿って転動する。この転動面707はクラッチハブの外側の母線もしくは外周壁線に設けられている。この転動面707は軸方向においてZMS出力フランジ207′′とクラッチハブ700との間の軸方向の差込み歯列に後続して配置されている。
【0075】
外側の多板クラッチK1の出力摩擦板支持体708および所属の出力フランジは、同じく
図1に示した実施形態における出力摩擦板支持体13および出力フランジ14に十分に相当して形成されている。さらに、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力摩擦板支持体も、
図1に示した多板クラッチK2の入力摩擦板支持体18に十分に相当して形成されている。この場合、
図12に示した実施形態では、多板クラッチK1,K2の入力摩擦板支持体の間に、
図1に示した結合金属薄板17とは異なって形成された結合金属薄板709が使用される。この結合金属薄板709は、ほぼ平坦に形成されていて、舌片709Aを有している。これらの舌片709Aは結合金属薄板709から押し出されており、半径方向内側の多板クラッチK2のプレッシャポット711の戻しばね710のための支持フィンガとして使用される。
図7および
図8に示した実施形態では、結合金属薄板214がさらに円筒状のネック範囲を有しており、このネック範囲は多板クラッチK2のプレッシャポットのためのガイドとして使用されている。
図12に示した実施形態では、この円筒状のネック範囲が不要にされており、この場合、ほぼ平坦な結合金属薄板の円筒状の端面範囲を介してガイドが行われる。
図7および
図8に示した実施形態では、円筒状のネック範囲が、同じく外側の摩擦クラッチK1のプレッシャポットの戻しばねのための支持個所として使用されていたが、この円筒状のネック範囲の代わりに、環状のエレメント712が設けられており、この環状のエレメント712は結合金属薄板709に支持されていて、位置固定リング713を介して内側の摩擦クラッチK2の入力摩擦板支持体に半径方向でセンタリングされている。環状のエレメント712は円筒状の範囲の他に半径方向に延びる範囲を有しており、この範囲には、外側の摩擦クラッチK1のプレッシャポット714の戻しばね713が支持されている。戻しばね713とプレッシャポット714との間もしくは戻しばね710と多板クラッチK1,K2のプレッシャポット711との間には、円形線材ばねエレメントが配置されている。この円形線材ばねエレメントには、ばねの各端面範囲が支持されている。
図7に示した実施形態に比較可能に、CSCのハウジング715は軸方向に延びる付設部715Aを介してベル底部705に半径方向でセンタリングされていて、緊締つめ/金属薄板つめに相応して機能する構成部分716を介してベル底部に軸方向で緊締されている。カバー軸受け717は円形線材緊締リングを介して、軸受け内レースに形成された斜面と相まって軸方向で固定されており、これにより操作力の内部の力伝達経路を形成することができる。それに対して、
図7に示した実施形態では、方形の横断面を有するスナップリングが使用されている。CSCハウジング715と中空軸718との間には、付加的な半径方向支承個所が設けられていない。
【0076】
図12に示した構造は、要約すると以下の特徴を有している:
1.トルク伝達経路内の第1のクリアランス個所が、外側の多板クラッチK1の摩擦板ユニットの背後に位置している。このクリアランス個所が摩擦システムの背後に位置しているので、この場合、運転時にチャタリングもしくはがたつきノイズが生じない。
【0077】
2.戻し圧縮ばねが、開いた円形線材リングまたは閉じた円形線材リングを介して支持されている。これにより、クラッチの操作時にばねの改善された転動特性が得られる。このことは操作システムの減じられた基本ヒステレシスをもたらす。
【0078】
3.外側の多板クラッチK1の戻し圧縮ばねが、プルポットに形成された環状のリングに支持されており、このリングは内側の多板クラッチK2の外側摩擦板支持体の位置固定リングを介してセンタリングされる。
【0079】
4.両多板クラッチK1,K2の入力摩擦板支持体を互いに結合する結合金属薄板もしくは結合ウェブに、内側の直径のところで複数のフィンガが設けられており、これらのフィンガに内側の多板クラッチの戻し圧縮ばねが支持される。
【0080】
5.スラストニードル軸受け(択一的には滑りディスクも)のセンタリングのために、金属薄板から突起が押出成形される(少なくとも3つ)。
【0081】
6.軸受け内レースを介してCSCにセンタリングされるクラッチのカバー軸受けが、スナップリングを介してCSCに、軸方向で生じた操作力を支持する。このスナップリングは方形または円形の横断面を有していてよい。円形線材スナップリングが使用されると、CSCには、方形スナップリングを使用する場合よりも小さな応力ピークしか生じない。
【0082】
7.CSCの環状のピストンは、CSCハウジングに対してクリアランス(ピストンシール部材を除く)を有しており、ピストン内径に対するピストンガイド長さの比は0.5よりも小さい。これによってピストンはハウジング内で軸方向に移動され得るだけでなく、傾動することもでき、したがってカルダン式の機能を引き受ける。公差によりかつ運転中に動的な効果によりクラッチがCSCに対して傾動すると、CSCのピストンはこの傾動を補償するか、もしくはこの傾動に従動する。
【0083】
8.冷却オイルがクラッチの出力摩擦板支持体の間でクラッチに供給される。オイルは、半径方向に延びる溝を有するプレッシャ片を通って流れる。引き続きオイルは、内側の多板クラッチの内側摩擦板支持体に設けられた開口を通流し、引き続き内側の多板クラッチの圧力室に流入する。
【0084】
9.外側の多板クラッチの入力摩擦板支持体および両部分クラッチの出力摩擦板支持体は、スラストニードル軸受け(またはスラストワッシャもしくはスライドディスク)を介して互いに対して間隔を置いて配置される。ニードル軸受けの使用時では、支障のない運転のために軸方向の最小前負荷が生ぜしめられる。この軸方向の最小前負荷は、内側の多板クラッチのクラッチハブと位置固定リングまたは外側の変速機入力軸の段部との間に位置しかつ支持されている波形ばねまたは圧縮ばねを介して形成される。前負荷ばねは、
図12に図示された構成とは異なって、たとえば
図7に図示されているようにクラッチハブの内径のところに設けられていてもよい。
【0085】
10.出力摩擦板支持体を間隔を置いて配置するためのスラスト軸受けは、外側の多板クラッチのクラッチハブに組み込まれている段部を介して支持される。
【0086】
11.外側の多板クラッチK1の外側摩擦板支持体とクラッチカバーとの間のスラスト軸受け(湿室分離)は、機能的には必要とされない。なぜならば、以下に
図13につき説明するように、波形ばねの前負荷がクラッチのカバー軸受けを介しても吸収され得るからである。
【0087】
図13には、乾式のZMSを備えた別のツイン湿式クラッチの実施形態が示されている。この場合、外側の多板クラッチK1の外側摩擦板支持体とクラッチカバーとの間のスラスト軸受けは不要にされている。なぜならば、このスラスト軸受けは、前の段落で説明したように機能的に必要とされないからである。その他の点で、
図12に示した実施形態と、
図13に示した実施形態とは互いに一致している。
【0088】
図14には、内部で閉じられた力伝達経路と、湿式作動式のZMSと、遠心力振り子(「FKP」)とを有する別のツイン湿式クラッチの実施形態が示されている。この実施形態は
図4〜
図6に示した実施形態と極めて大きな一致を有しているので、以下の説明は、これらの実施形態の間の相違点にのみ限定する。
【0089】
図14に示した実施形態は、CSCハウジング800を有している。このCSCハウジング800は軸方向の付設部801を有しており、この付設部801を介してCSCハウジング800はベル底部802に半径方向でセンタリングされている。この場合、CSCハウジング800と変速機入力軸803との間に、別の半径方向支承個所は設けられていない。軸方向でCSCハウジング800は緊締つめ/金属薄板つめに相当するエレメント804(半径方向外側に位置するねじ締結部805を有している)を介してベル底部802に対して軸方向で緊締されている。CSCハウジング800の外周面には、円形の横断面806を備えたスナップリングが設けられており、このスナップリングはカバー軸受け807の軸受け内レースのための当付け面として働く。カバー軸受け807はプルポット808を介して多板クラッチK1の入力摩擦板支持体に結合されており、この入力摩擦板支持体は結合金属薄板を介して多板クラッチK2の入力摩擦板支持体に結合されている。多板クラッチK1,K2は、ほぼ剛性的なプレッシャポットを介して、1:1のてこ比を有するレバー変換部によって操作され、この場合、プレッシャポットとCSCのピストンシリンダユニットとの間には、操作軸受けと調節ディスクとが配置されている。この場合、多板クラッチK1,K2の入力摩擦板支持体および出力摩擦板支持体の特徴ならびに操作ポット、調節ディスクおよび操作軸受けの特徴は、
図4につき説明したものに相当している。
【0090】
しかし、半径方向内側に位置する多板クラッチの出力摩擦板支持体809の構造は、以下に説明するように、
図4に示した多板クラッチK2の出力摩擦板支持体45とは異なっている。この出力摩擦板支持体809は個々の摩擦板を懸吊させるための軸方向の差込み歯列を備えた円筒状の部分の他に、結合フランジ810に対する結合部としての半径方向に延びる部分を有している。この半径方向に延びる範囲は軸方向の差込み歯列を介して出力フランジ809を中空の変速機入力軸803に結合している。
図14に示した実施形態では、この半径方向に延びる範囲が、摩擦板ユニットのエンジン側に配置されており、それに対して
図4に示した実施形態では、半径方向に延びる範囲が、摩擦板ユニットの変速機側に配置されている。さらに、出力摩擦板支持体809は貫通孔811を有しており、この貫通孔811を通じて多板クラッチK2の摩擦板ユニットに冷却オイルが流れるようになっている。冷却オイル流を方向付けて案内できるようにするために、金属薄板812が設けられている。この金属薄板812は結合フランジ810と出力摩擦板支持体809の円筒状の部分との間に配置されている。
【0091】
この実施形態のその他の特徴に関しては、もう一度
図4およびそれに関する説明を参照するものとする。
【0092】
図15には、内部で閉じられた力伝達経路と、湿式作動式のZMSと遠心力振り子(「FKP」)とを備えた別にツイン湿式クラッチの実施形態が示されている。この場合、
図14に示した金属薄板つめもしくは緊締つめ804は不要にされている。CSCハウジングとベル底部との間の結合部をシールするためのプリロードは、たとえばZMSおよび/または組み立てられた摩擦板支持体および/またはクランク軸とZMS−/クラッチ入力側との間の結合金属薄板に設けられた軸方向に作用する摩擦ばねにおけるプリロードの相応する設定によっても達成され得る。
【0093】
図16には、駆動軸45と少なくとも1つの変速機入力軸915,920との間の本発明によるトルク伝達装置の別の実施形態が示されている。この場合、クランク軸45はねじ締結部59を介して第1のプレート状の構成部分、つまり本実施形態ではフレックスプレート58に結合されている。このフレックスプレート58は突出部45Aを介してセンタリングされている。フレックスプレート58の半径方向外側の範囲には、別のねじ締結部57が設けられている。このねじ締結部57を介してフレックスプレート58は、ほぼプレート状の第2の構成部分、つまり本実施形態ではドライブプレート56に結合されている。
【0094】
「フレックスプレート」および「ドライブプレート」とは、制約的なものと解されるべきではなく、それぞれほぼ半径方向に延びる回転対称的な構成部分であり、この構成部分は肉厚さに比べたその長手方向延在長さに基づき、ある程度のフレキシブル性を有しており、この場合、フレックスプレートのフレキシブル性はドライブプレートのフレキシブル性よりも一般に高く設定されている。フレキシブル性の程度は、ドライブプレート/フレックスプレートの肉厚さまたは空間的な形状を介して調節され得る。駆動装置から変速機へのトルク伝達経路におけるフレックスプレートとドライブプレートとの順序は自由に選択可能であって、その都度の使用事例に適合可能であるので、本願明細書中では、可能となる両方の順序が包含される。
【0095】
フレックスプレートおよびドライブプレート56は、それぞれポット状の範囲を有している。すなわち、フレックスプレートおよびドライブプレートは、
図4に示した実施形態とは異なり、ほぼ平坦に半径方向に形成されている。これにより、フレックスプレートおよびドライブプレートをトルク伝達装置の別の構成部分の一層近くに近寄せることができる。この場合、ある程度の軸方向の入れ子式構造が達成可能となる。
【0096】
さらに、ドライブプレート56の半径方向内側の範囲は、ほぼ円筒状の範囲56Aを備えている。この円筒状の範囲56Aは半径方向軸シールリング8または一種の動的なシール部材のためのシール・当付け面として設けられており、これによりドライブプレート56とクラッチカバー41との間のシールが行われる。
【0097】
ドライブプレート56はクラッチハブ208に結合されており、本実施形態ではねじ締結されており、この場合、ドライブプレート56からクラッチハブ208への当付け面の範囲には、シール部材が設けられていてよい。ドライブプレート56は本実施形態では一貫して延びるプレートとして形成されており、特にドライブプレート56は半径方向内側の範囲において一貫して延びており、したがってこの範囲において開いたカバー41のシール機能を引き受ける。
【0098】
クラッチハブ208は軸方向に延びる範囲208Aを有しており、この範囲208Aはクラッチハブ208に対するドライブプレート56の半径方向のセンタリング部として働く。
【0099】
クラッチハブ208は本実施形態では、溶接シームを介してZMSもしくは回転振動ダンパの一次側の入力フランジ900に一般に固く結合されている。
【0100】
半径方向内側では、クラッチハブ208がラジアル軸受け(クラッチハブの範囲に軸方向で位置固定されたラジアルニードル軸受け)を介して、第1の変速機入力軸915に半径方向で支承されている。本実施形態では、変速機入力軸915が中空軸として形成されている。
【0101】
入力フランジ900と出力フランジ901とを備えた回転振動ダンパはトルク伝達経路に沿って見てクラッチハブ208の下流側で湿室(クラッチカバー41と、ドライブプレート56の半径方向内側の部分とによりシールされる)に配置されている。フレックスプレート58およびドライブプレート56に比較可能に、回転振動ダンパの入力フランジ900と出力フランジ901とはそれぞれポット状の範囲を備えており、これにより、以下に詳しく説明するクラッチ装置の一部が、軸方向および半径方向の入れ子式構造の形で収容され、ひいては軸方向の構成スペースが一層良好に利用される。
【0102】
ZMSの入力フランジ900と出力フランジ901との間には、軸方向のばね装置902が設けられている。このばね装置902はこれら両構成要素の間に軸方向力を発生させ、軸方向において入力フランジ900に対して出力フランジ901を前負荷する。
【0103】
入力フランジ900と出力フランジ901との間には、入力フランジ900と出力フランジ901との間の回転振動を減衰させるために、周方向で配置されたばねエレメント903が設けられている。
【0104】
出力フランジ901は、ポット形状を形成するために利用される円筒状の範囲901Aの他に、さらに歯列範囲901Bを有している。この歯列範囲901Bはクラッチケージ904の歯列904Aに係合している。出力フランジ901およびクラッチケージ904の歯列は、本実施形態におけるトルク伝達装置を組み立てるための分離平面を形成するための軸方向の差込み歯列を形成している。
【0105】
クラッチケージ904はこの場合、非切削式の成型加工プロセスで形成され得る。この場合、歯列範囲904Aは既にこの非切削式の成型加工時に形成され、かつ場合によっては後加工され得る。この後加工は切削加工または非切削加工により、たとえばロール成型により行われ得る。この場合、遊びなしの差込み歯列も形成可能である。遊びなしの差込み歯列に対して択一的に、周方向に作用する緊締装置を設けることもできる。
【0106】
クラッチケージ904は、既に
図8〜
図12に示した実施形態において説明したツインクラッチ装置の一部であるので、再度の説明は省略する。しかし念のため付言しておくと、
図16に示した実施形態は以下の点でツインクラッチ装置のこれまでの実施形態とは異なっている。すなわち、クラッチケージ904が入力ハブ208に半径方向で支持されており、この場合、クラッチケージ904はクラッチハブ208に沿って軸方向移動可能でかつ周方向に回転可能である。
【0107】
さらに念のため付言しておくと、操作装置の構成は
図7につき説明したものに相当しているので、繰返し説明することは省略する。
【0108】
緊締つめ905の構成も、
図7〜
図12につき説明したものに相当しているので、付加的な説明は省略する。
【0109】
上では、本発明の思想をツインクラッチ装置との関連においてのみ説明してきたが、本発明の思想、特にクラッチと操作装置とから成るユニットおよび緊締つめ/金属薄板つめの使用は、単独クラッチ(乾式の単独クラッチも湿式の単独クラッチも)と相まっても使用可能である。