【文献】
新井 盛夫,「表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサー (BIACORE TM) による生体分子相互作用の解析 ―血栓止血領域研究への利用―」,日本血栓止血学会誌,1997年10月 1日,Vol. 8, No. 5,p. 397-405
【文献】
稲川 淳一, 森本 香織,「表面プラズモン共鳴センサーを用いる薬物スクリーニングと初期薬物動態の同時解析」,分析化学,社団法人日本分析化学会,2002年 6月 5日,Vol. 51, No. 6,p. 461-468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2以上の結合挙動基準を満たす応答曲線に関連する相互作用パラメータが、いずれの結合挙動基準も満たさないか或いは1つの結合挙動基準を満たす応答曲線に関連する相互作用パラメータとグラフィカルに識別できる、請求項1記載の方法。
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されると、前記プログラムコード手段が、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に従って、分析物とリガンドとの相互作用についての1以上の相互作用パラメータを求める、コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
別段定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的な用語及び科学的な用語は、本発明に関する当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。又、単数形で記載されたものであっても、別途記載しない限り、複数形を含む。
【0010】
本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0011】
上述の通り、本発明は、分子結合の相互作用についての複数のデータセットから、分子結合の相互作用に対する定常状態の結合データを評価して、相互作用についての1つ以上の相互作用パラメータを求めることに関し、定常状態の結合データ以外の、データセットからの他の相互作用のデータが、データセットの定常状態の結合データの信頼性を推測するのに用いられる。通常、実験的な結合データは、センサーに基づく技術により得られ、そのような技術は、分子の相互作用を詳しく調べ、相互作用が進行するに従いリアルタイムで結果を提示する。しかし、本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明が用いられることになる全般的な状況が説明される。
【0012】
化学センサー又はバイオセンサーは通常、標識を伴わない技術に基づき、例えば、固定された層の質量、屈折率、又は厚さのような、センサー表面の特性の変化を検出するが、ある種の標識を用いるセンサーも存在する。典型的なセンサー検出技術は、限定はされないが、光学的な、熱光学的な、圧電性の、又は音波による方法(例えば、表面音波(SAW)及び水晶振動子マイクロバランス(QCM)による方法を含む)のような、質量検出の方法と、電位差測定、電気伝導度測定、電流測定、及び容量/インピーダンスによる方法のような、電気化学的な方法とを含む。光学的な検出方法については、代表的な方法には、反射光学的な方法のような、表面の質量濃度を検出する方法が含まれ、反射光学的な方法は、外部反射の方法と内部反射の方法の両方を含み、これらは角度、波長、偏光、又は位相を分解するものであり、例えば、エバネッセント波による偏光解析法及びエバネッセント波による分光法(EWS、又は内部反射分光法)である。これらの偏光解析法と分光法の両方が、表面プラズモン共鳴(SPR)を介したエバネッセント場の増強、ブリュースター角屈折率測定、臨界角屈折率測定、漏れ全反射(FTR)、散乱内部全反射(STIR)(散乱増強標識を含みうる)、導光体センサーを含んでもよく、臨界角分解イメージング、ブリュースター角分解イメージング、SPR角度分解イメージングなどのような、外部反射イメージング、エバネッセント波に基づくイメージングを含んでもよい。さらに、例えば表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)、エバネッセント波蛍光(TIRF)及びリン光に基づく、光度測定及びイメージング/顕微鏡による方法が、「それ自体」で、又は反射による方法と組み合わせて、導波路干渉計、導波路漏洩モード分光法、反射干渉分光法(RIfS)、伝送干渉計、ホログラフィック分光法、及び原子間力顕微鏡(AFR)とともに、言及されうる。
【0013】
一般に利用可能なバイオセンサーには、スウェーデン・ウプサラのBiacore ABにより製造され販売される、前述のBIACORE(登録商標)システム装置が含まれ、これは、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づき、結合するリガンドと対象の分析物との間の表面の結合の相互作用を、リアルタイムで観測することを可能にする。この文脈において、「リガンド」とは、所与の分析物に対して既知又は未知のアフィニティを有する分子であり、表面上に固定された、任意の捕捉する又は捕獲する物質を含み、「分析物」は、リガンドへの任意の特定の結合対象物を含む。
【0014】
以下の詳細な説明及び例では、本発明はSPR分光法に関して、より具体的にはBIACORE(登録商標)システムに関して例示されるが、本発明はこの検出方法に限定されないことを理解されたい。むしろ、検知表面上に固定されたリガンドへの分析物の結合を定量的に示す、検出表面における変化が測定されうる限り、分析物が検知表面上に固定されたリガンドに結合する、アフィニティに基づくあらゆる検出方法を用いることができる。
【0015】
SPRの現象はよく知られており、ある条件下で、光が屈折率の異なる2つの媒体の間の境界で反射すると、SPRが発生する、と言えば十分であろう。その境界は、通常銀又は金の金属膜で被覆されている。BIACORE(登録商標)装置では、媒体は試料及びセンサーチップのガラスであり、センサーチップのガラスは微小流体の流動システムにより試料と接触している。金属膜は、チップ表面上の薄い金の層である。SPRにより、特定の反射角で反射される光の強度が、低減する。反射される光の強度が最小になるこの角度は、反射された光とは反対側、すなわちBIACORE(登録商標)システム及び試料側の表面の近くの屈折率とともに変化する。
【0016】
BIACORE(登録商標)システムの概略的な図が、
図1に示されている。センサーチップ1は、流路5を通る、例えば抗原のような分析物4を有する試料の流れに曝される、例えば抗体のような捕捉分子(リガンド)3を支持する金属膜2を有する。光源7(LED)からの単色のp偏光した光6は、プリズム8によりガラス/金属境界9に結合され、その境界9で光が全反射する。反射された光線10の強度は、光検出ユニット11(光検出アレイ)により検出される。
【0017】
BIACORE(登録商標)装置の技術的な側面及びSPRの現象についての詳細な議論は、米国特許第5313264号で見出すことができる。バイオセンサーの検知表面の基質の被覆についてのより詳細な情報は、例えば、米国特許第5242828号及び5436161号で与えられる。加えて、BIACORE(登録商標)装置とともに用いられるバイオセンサーチップの技術的な側面についての詳細な議論を、米国特許第5492840号で見出すことができる。
【0018】
試料中の分子が、センサーチップ表面上の捕捉分子に結合すると、表面の濃度と、したがって屈折率とが変化し、SPRの反応が検出される。相互作用の進行中、時間に対して応答をプロットすることで、相互作用の進行の度合が定量的に得られる。そのようなプロット、又は反応速度若しくは結合の曲線(結合等温線)は、通常センサグラムと呼ばれ、当技術分野では「アフィニティ軌跡」又は「アフィノグラム」と呼ばれることもある。BIACORE(登録商標)システムでは、SPRの応答の値は、レゾナンスユニット(RU)で表現される。1RUは、反射光の強度が最小になる角度の0.0001°の変化を表し、ほとんどのタンパク質及び他の生体分子では、センサー表面上での約1pg/mm
2の濃度の変化に相当する。分析物を含む試料がセンサー表面に接触すると、センサー表面に結合した捕捉分子(リガンド)が、「会合」と呼ばれる段階で分析物と相互作用する。この段階は、試料が最初にセンサー表面と接触させられるに従って、RUの増大によりセンサグラム上で示される。逆に、「解離」は通常、試料の流れが例えば緩衝液の流れで置き換えられると、発生する。この段階は、分析物が表面に結合したリガンドから解離するに従って、時間とともに生じるRUの低下により、センサグラム上で示される。
【0019】
センサーチップ表面での可逆的な相互作用の代表的なセンサグラム(結合曲線)が
図2に提示され、固定された捕捉分子すなわちリガンド、例えば抗体を有する検知表面が、試料中の結合の対象、すなわち分析物と相互作用する。上で言及された他の検出の原理に基づくバイオセンサーシステムにより生成される結合曲線は、外観が類似する。垂直軸(y軸)は(ここではレゾナンスユニット、RUで)応答を示し、水平軸(x軸)は(ここでは秒で)時間を示す。最初は、緩衝液が検知表面を通過し、センサグラム中のベースライン応答Aを与える。試料を注入する間、分析物との結合による信号の増大が観測される。結合曲線のこの部分Bは、通常「会合段階」と呼ばれる。最終的に、会合段階の終わり又は終わり近くで定常状態の条件に達し、共鳴信号がCで安定する(しかし、この状態に常に到達しなくてもよい)。本明細書において、用語「定常状態」は、用語「平衡」と同義に用いられることに留意されたい(実際には、システムが平衡ではなくても、結合は長時間一定でありうるので、他の文脈では、用語「平衡」は、理想的な相互作用モデルを表現するために取っておかれることがある)。試料注入の終わりで、試料は緩衝液の継続的な流れに置き換えられ、信号の低下は、表面からの分析物の解離又は放出を反映したものである。結合曲線のこの部分Dは、通常、「解離段階」と呼ばれる。分析は再生段階で終了し、再生段階において、結合した分析物を表面から除去できる溶液がセンサー表面に注入されるとともに、(理想的には)リガンドの活性を保つ。これは、センサグラムの部分Eにより示される。緩衝液の注入によりベースラインAが回復し、表面は新しい分析の準備ができている。
【0020】
会合段階B及び解離段階Dの外形からそれぞれ、結合反応速度及び解離反応速度に関する情報が得られ、Cにおける共鳴信号の大きさは、アフィニティを表す(応答は、表面の質量濃度の変化に関連する相互作用の結果である)。ここで、このことが以下でより詳細に説明される。
【0021】
表面結合速度
拡散又は質量の移動が制限されず擬一次速度式に従う、分析物Aと表面に結合した(固定された)捕捉分子、すなわちリガンドBとの間の可逆反応を仮定する。
【0022】
A+B⇔AB
この相互作用モデル(通常ラングミュア型と呼ばれる)は、分析物(A)が一価かつ均質であり、リガンド(B)が均質であり、全ての結合事象が独立であるということを仮定し、実際に、大部分の場合に適用可能である。
【0023】
分析物の注入中の、分析物Aの表面濃度の変化速度(=形成された錯体ABの濃度の変化速度)は、分析物Aの流入速度と流出速度の合計である。
【0024】
【数1】
ここで[A]は分析物Aの濃度、[B]はリガンドBの濃度、[AB]は反応錯体ABの濃度、k
aは会合速度定数、k
dは解離速度定数である。
【0025】
時間t後、表面における結合していないリガンドBの濃度は[B
T]−[AB]であり、[B
T]はリガンドBの全体又は最大の濃度である。式(1)に代入すると、
【0027】
検出器の応答ユニット(ABが検出される)については、これは以下のように表すことができる。
【0028】
【数3】
ここで、Rは時間tでのレゾナンスユニット(RU)での応答であり、Cは溶液中の結合していない分析物(A)の初期の、すなわち体積濃度であり、R
maxは分析物(A)が表面上のリガンド(B)に全て結合した場合に得られる(RU単位の)応答であり、飽和応答とも呼ばれる。式(3)を並べ替えると、
【0029】
【数4】
が得られ、Rはレゾナンスユニット(RU)での応答である。積分された形では、式は
【0031】
ka及びkdの計算
ここで、式(4)に従って、dR/dtが結合した分析物の濃度Rに対してプロットされると、傾きは−(k
aC+k
d)であり、縦軸の切片はk
aCR
maxである。体積濃度Cが既知であり、飽和応答R
maxが求められている(例えば、大量の過剰な分析物で表面を飽和させることで)場合、会合速度定数k
a及び解離速度定数k
dを計算することができる。しかし、より便利な方法は、好ましくはコンピュータプログラムによる、積分された関数(5)のフィッティング、又は微分方程式(4)の数値計算及びフィッティングである。
【0032】
k
dは、以下のように求めることもできる。解離の速度は、
【0033】
【数6】
のように表すことができ、積分された形では、
【0034】
【数7】
であり、R
0は、解離段階の開始時(緩衝液による表面の洗浄が始まるとき)の応答である。
【0036】
【数8】
のように線形化することができ、tに対してln[R/R
0]をプロットすると、傾き=−k
dの直線が得られる。しかし、より便利には、解離速度定数k
dは、指数関数の速度式(7)をフィッティングすることで求められる。
【0037】
信頼性のある反応速度定数を得るために、通常、上で説明された分析が、複数の異なる分析物濃度に対して、適宜、センサー表面における1つ以上の他のリガンド濃度で、繰り返される。
【0038】
アフィニティの計算
アフィニティは、会合定数K
A=k
a/k
dにより、又は、解離定数(平衡定数とも呼ばれる)K
D=k
d/k
aにより表現される。
【0039】
あるいは、会合定数K
Aは式(3)から求めることができ、ここで平衡状態ではdR/dt=0であり、
k
dR
eq=k
aC(R
max−R
eq) (9)
が得られ、R
eqは平衡状態における検出器の応答である。k
a/k
d=K
Aなので、式(9)に代入して整理すると、
【0041】
複数の濃度において結合反応が行われる場合、K
Aは、データの非線形なカーブフィッティングにより得ることができる。あるいは、例えば、反応速度データに信頼性がない場合、又は会合若しくは解離が正確に測定するには速すぎる場合、R
eq/CをR
eqに対してプロットしてもよく、これにより傾き=−K
Aが得られる(スキャッチャードプロット)。
【0044】
式(11)にK
A=1/K
Dを代入すると、
【0047】
【数12】
に変更され、「オフセット」は、屈折率の系統的誤差による、ベースラインの平行移動を補償する要素である。
【0048】
式(11)及び(12)は、平均でいくつの結合部位が1つの分析物分子によりブロックされるかを規定する、立体障害係数nを導入することによって、以下のように変更することができる。
【0050】
【数14】
ソフトウェア支援分析
反応速度及びアフィニティのデータを分析するためのソフトウェアは、市販されている。したがって、例えば、BIACORE(登録商標)装置により生成された、反応速度及びアフィニティのデータは、通常、(スウェーデン・ウプサラのBiacore ABにより提供される)専用のBIA評価ソフトウェアにより評価される。このソフトウェアは、数値積分を用いて、微分形の速度方程式を計算し、非線形回帰を用いて、フィッティングが最もよく合う変数の値を見つけることによって反応速度及びアフィニティのパラメータをフィッティングして、残差平方和を最小にする。
【0051】
測定された定常状態の結合レベルから、BIA評価ソフトウェアによりアフィニティの定数を求めることは、以下の段階を含む。
【0052】
(i)曲線の定常状態の領域で、センサグラム上の報告点から、定常状態の結合レベル(R
eq)を得る。
【0053】
(ii)Cに対してR
eqのプロットを作成する。
【0054】
(iii)このプロットを、一般的な「定常状態のアフィニティ」フィッティングモデル(例えば、式(13)又は式(14))にフィッティングして、K
A/K
D及びR
maxを得る。
【0055】
本発明
BIACORE(登録商標)装置のような、バイオセンサーを用いる相互作用スクリーニングアッセイに対して、評価に用いられる相互作用パラメータは、センサグラム中の決められた点(報告点)の応答から読み取られることが多い。しかし、センサグラムは、データの相互作用及び品質についてより多くの情報を含み、この情報は、含まれる全てのセンサグラムを評価することを正当なものにする。大量のデータセット(数百又は数千のセンサグラム)に対しては、これは非常に面倒な手順になりうる。
【0056】
バイオセンサーを用いるスクリーニングアッセイの評価におけるこの制限を評価するために、そのようなスクリーニングアッセイを評価する、コンピュータ
実装方法が提供される。一実施形態によれば、化学量論的に予測される応答に関連する応答レベルに対する基準と
共に、
データ評価に
関連したセンサグラムの形状に対
する所定の基準が提供され、これらの基準はソフトウェアによって自動的に示され、結果報告に含められる。
【0057】
一実施形態によれば、複数の分析物とリガンドとの相互作用についての相互作用パラメータを、バイオセンサーを用いて評価するための方法が提供され
るが、本方法は、
A:リガンド
が固定
化さ
れたセンサー表面を
用意する段階(
図3の
符号10)と、
B:センサー表面を複数の分析物と接触させる段階(
図3の
符号20)と、
C:複数の分析物の各々
についてセンサー応答曲線を記録する段階(
図3の
符号30)と、
D:各々のセンサー応答曲線から、相互作用パラメータを抽出する段階(
図3の
符号40)と、
E:2つ以上の結合
挙動基準に従っ
て各々のセンサー応答曲線を評価する段階(
図3の
符号50)と、
F:
相互作用パラメータを
図式的に表示する段階(
図3の
符号60)であって、
ある結合
挙動基準を満たす応答曲線に関連する相互作用パラメータ
を、別の結合
挙動基準を満たす
か或いはいずれの結合
挙動基準
も満たさない
応答曲線に関する相互作用パラメータと
グラフィカルに識別できる、段階と
を含む。
【0058】
結合
挙動基準は、実行
される具体的なアッセイに応じて、多くの方法で選択されうるが、開示される実施形態では、結合
挙動基準は、異常な結合
挙動を示す分析物を識別するために用いられ、開示される基準のいずれをも満たさない分析物は、「正常な」結合
挙動を示すと考えられる。
図4は、
薬物分子フラグメントの典型的な結合挙動を示しており、試料
注入後の
迅速な結合速度と、ベースラインまで直ちに解離する
迅速な解離速度とにより特徴付けられ
る。典型的な挙動は、矩形波に似ていることがある。
【0059】
スクリーニングアッセイ
データ
の分析
時に、アッセイ
応答は通常、試料の番号の軸に沿ってプロットされ、
所定の応答レベル
の1
本以上の線を用いて、試料を2
以上のカテゴリーに分ける。
データ
の別のグラフィカル表示法も、この結合
挙動基準と
共に用いられうることに、留意されたい。
【0060】
図5は、本発明による、
ある結合
挙動基準を満たす応答曲線に関する相互作用パラメータ
を、別の結合
挙動基準を満たす
か或いはいずれの結合
挙動基準
も満たさない
応答曲線に関する相互作用パラメータと
グラフィカルに識別できる図を示す。開示される実施形態では、異なる結合
挙動は異なる形状により区別されるが、代替的な実施形態では、結合
挙動は例えば、異なる色
又は異なる形状と異なる色の組み合わせによって、区別されうる。
【0061】
一実施形態によれば、図中の各点は、関連する応答曲線とリンクされているので、ユーザーは単に点をマークして、応答曲線にアクセスすることができる。さらに、ユーザーは、
満足される結合
挙動基準に基づいてさらに処理するために、分析物のグループ全体を選択及び選択解除できる。
【0062】
一実施形態によれば、2つ以上の結合
挙動基準を満たす応答曲線に関連する相互作用パラメータは、1つの結合
基準を満たす
か或いはいずれの結合
基準
も満たさない応答曲線に関連する相互作用パラメータと
グラフィカルに識別できる。
【0063】
一実施形態によれば、1つの結合
挙動基準は、記録される応答が、分析物の接触時間の間
に所定の率を超える率で増大することである。
図6は、注入
時に応答の増大を示す応答曲線の例を示し、用い
ることのできる所定の率の基準の一例は、例えば「0.2RU/sより大きい」である。そのような挙動は、
図4で調査される相互作用に加えて起こる、二次的な相互作用を表しうる。
【0064】
一実施形態によれば、1つの結合
挙動基準は、分析物がセンサー表面と接触した後で、記録された応答が所定の値を超えることである。
図7は、注入の後にベースラインが上がる、この種類の基準を満たす応答曲線の例を示す。一実施形態によれば、所定の値は3RUより大きくてよい。注入後にベースラインが上がることは、(特定のフラグメントに対する)強固で非典型的な結合又は凝集を示しうる。
【0065】
一実施形態によれば、1つの結合
挙動基準は、記録された最大の応答が、分析物の相互作用に対する所定の値を超えることである。この基準は、応答曲線の形状とは直接は関連せず、むしろ、応答が、分析物の相互作用に対する計算
又は測定された最大の応答を超えるかどうかに関する。一実施形態によれば、計算
又は測定された最大の応答は、R>Rmax+5RUでよく、これは、別の化学量論的な相互作用又は追加の凝集性の相互作用を示す。
【0066】
調査者は、この種類の結合の挙動を有する試料を、さらなる調査の際に選択しないようにすることを望むことがよくあり、さらなる調査は、主要な選択物にリソースを集中させる。マークされた試料が除外されない場合でも、結合の挙動の情報が、化合物について収集されたデータに添付されることが重要である。結合の挙動のマーカーは、大量のデータセットを頻繁に評価して評価のスループットを大きく向上させ、したがって全体のスクリーニングのスループットを向上させる場合に、非常に有用な道具になると期待される。
【0067】
本明細書で開示される評価ソフトウェアでは、これらの3つのパラメータが、結果のプロットにおいて、
図4での異なる表示の2つ又は3つに対する別々の色とともに、ポイント色で示される。
【0068】
このソフトウェアによる方法では、センサグラムは点を右クリックすることで見ることができ、赤い点と組み合わされた表示についての情報が、ツールチップに示される。この情報は、結果の表及びデータエクスポート機能に送られる。
【0069】
一実施形態によれば、分子結合の相互作用を検出するための分析システムが提供され、その分析システムは、
(i)1つ以上の検知表面と、1つ以上の検知表面において分子結合の相互作用を検出するための検出手段と、結合曲線を表す検出データを生成するための手段とを含む、バイオセンサーであって、各曲線が、時間に対する結合の相互作用の進行を表す、バイオセンサーと、
(ii)上記の方法の段階A〜Hを実行するための、データ処理手段とを、含む。
【0070】
本発明は、本発明の方法を実行に移すようになされたコンピュータプログラム、特に、担体上又は担体中のコンピュータプログラムにも、拡張される。担体は、プログラムを担持できる任意のエンティティ又はデバイスであってよい。例えば、担体は、ROM、CD ROM、DVD又は半導体ROMのような記録媒体、又は磁気記憶媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク又はハードディスクを含みうる。担体は、電気ケーブル若しくは光ケーブルを介して、又は無線若しくは他の手段により搬送されうる、電気信号又は光信号のような、伝送可能な担体であってもよい。あるいは、担体は、プログラムが組み込まれる集積回路であってもよい。コンピュータシステムとともに用いるのに適切な情報を格納できる、任意の既知の又は開発された媒体を、用いることができる。
【0071】
本発明は、上で説明された本発明の特定の実施形態には限定されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により確立されることを、理解されたい。