特許第5714052号(P5714052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714052
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ダイヤモンド表面のプラズマエッチング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150416BHJP
   C30B 29/04 20060101ALI20150416BHJP
   C30B 33/08 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   H01L21/302 104Z
   C30B29/04 A
   C30B29/04 V
   C30B33/08
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-95241(P2013-95241)
(22)【出願日】2013年4月30日
(62)【分割の表示】特願2009-546059(P2009-546059)の分割
【原出願日】2008年1月22日
(65)【公開番号】特開2013-211562(P2013-211562A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2013年5月28日
(31)【優先権主張番号】0701186.9
(32)【優先日】2007年1月22日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0705523.9
(32)【優先日】2007年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0705524.7
(32)【優先日】2007年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0709716.5
(32)【優先日】2007年5月21日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0713464.6
(32)【優先日】2007年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503458043
【氏名又は名称】エレメント シックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、チー − レオン
(72)【発明者】
【氏名】グー、エルダン
(72)【発明者】
【氏名】スカーズブルック、ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】フリエル、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン、マーティン デイビッド
【審査官】 粟野 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−220524(JP,A)
【文献】 特開2002−075960(JP,A)
【文献】 特開2006−080376(JP,A)
【文献】 特開2005−263592(JP,A)
【文献】 R.Ramesham,Air-Microwave Plasma Etching of Polycrystalline Diamond Thin Films,Journal of the Electrochemical Society,米国,Electrochemical Society,1992年 7月,Vol.139, No.7,1988〜1993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
C30B 29/04
C30B 33/00−33/12
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド表面を準備するステップと、ダイヤモンド表面に不活性ガス及びハロゲン含有ガスから成る混合ガスを使用して誘導結合プラズマエッチングを施すステップとを含む、エッチングされたダイヤモンド表面を作製する方法。
【請求項2】
前記ハロゲン含有ガスが塩素(Cl)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスがArである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマエッチングが、0.5mTorr(0.0667Pa)〜100mTorr(13.3Pa)の範囲内で行われる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン含有ガスが、前記混合ガス中に、40容量%〜70容量%の範囲内の濃度で存在する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ダイヤモンドがCVDダイヤモンドである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ダイヤモンドが単結晶CVDダイヤモンドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ダイヤモンドが多結晶CVDダイヤモンドである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド表面をプラズマエッチングによって加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、その硬度及び化学的不活性のため、複雑な構造に成形することが困難な材料である。ダイヤモンドは従来、細かいダイヤモンドの砂及び粉末を研磨媒体として使用するラッピング及び研磨などの宝石細工の技法によって成形されてきた。かかる加工の1つの典型的な製品は、宝石としての多面体に加工された天然のダイヤモンドである。宝石細工プロセスによって成形される工業製品の例は、高出力COレーザー用の出力窓として使用される多結晶ダイヤモンド板である。これらの事例のすべてにおいて、完成ダイヤモンド製品は大きく平らな(即ち、横方向に数十マイクロメーターを超える長さで拡がった)、性能に影響を及ぼす表面のフィーチャー(surface feature)を見かけ上は含まない、表面を有する。
【0003】
ダイヤモンドに対して宝石細工プロセスを使用することは、加工表面が加工のために使用されるダイヤモンド粒子のサイズにほぼ等しい深さに及ぶ「損傷された区域(damage zone)」を有するようになるという欠点を有する。
【0004】
細かい三次元の表面の構造的フィーチャー(three−dimensional surface structural feature)を必要とする用途のためには、宝石細工の方法は適当ではない。ダイヤモンドがほとんどすべての化学薬品に対して耐性であるため、マイクロエレクトロニクス産業において幅広く使用されているものなどの液体化学エッチング法は、適用することができない。
【0005】
高温ガス相エッチング法が、ダイヤモンドをエッチングするために使用されてきた。化学蒸着(CVD)ダイヤモンド合成に先立って基材をエッチングするために高温(>700℃)において水素−アルゴン−酸素プラズマ及び水素−アルゴンプラズマを使用することが、国際公開第01/96633号に開示されている。かかるエッチングは、表面下の損傷層に付随する損傷フィーチャーを優先的にエッチングし、したがって、エッチングプロセスの結果として粗度Rが一般に顕著に増大する。
【0006】
通常の反応性イオンエッチング(RIE)プロセスにおいては、多数のイオンが生成され、それらはターゲットに向かって加速され、スパッタリング及び関連するプロセスによって物理的に材料を除去する。このプロセスは材料間選択性が低いことがあるので、表面のパターニングのためには必ずしも理想的とは限らない。欧州特許第1555337号は、酸素−フッ化炭素(O−CF)混合ガスを1.33〜13.3Pa(約10〜100mTorr)の圧力において使用して機械的に加工されたCVD成長用の単結晶ダイヤモンド表面を調製するための反応性イオンエッチング(RIE)の使用を開示している。
【0007】
RIEと対照的に、エッチングガスをフリーラジカル(即ち中性種)及びイオン(即ち荷電種)の混合物に分解するためにプラズマが使用される誘導結合プラズマ(ICP)エッチングは非常に化学的なプロセスである。プラズマは、エッチングされる基材からは遠く離れている。プラズマとエッチングされるダイヤモンドとの間でプラズマ中で発生したイオンの大部分が除去される。よって、ダイヤモンドに到達する種の大半は中性である。したがって、その結果もたらされるエッチングは物理的(例えばプラズマからのイオンによる表面からのスパッタリング)というよりはむしろ、主に化学的(例えば揮発性生成物に導く表面反応)である。拡がった格子欠陥を有する領域(例えば損傷を受けた領域)中にある原子などの基材中においてより高いエネルギー状態にある原子は、エッチングしやすく、したがってこの種のエッチングは一般に拡がった格子欠陥の領域を優先的にエッチングし、表面を粗くする。
【0008】
天然の単結晶ダイヤモンドにパターンを付けるためのアルゴン−酸素混合ガスを用いる誘導結合プラズマ(ICP)エッチングの使用は、H.W.Choiらの「プラズマエッチングによって作製された天然ダイヤモンドマイクロレンズの性質(Properties of natural diamond microlenses fabricated by plasma etching)」、Industrial Diamond Review、2号、2005年、29頁で報告されており、化学蒸着法によって作製された多結晶ダイヤモンドにパターンを付けるための使用は、M.Karissonらの「誘導結合プラズマドライエッチングの使用によるダイヤモンドへの連続レリーフ回折構造の転写(Transfer of continuous−relief diffractive structure into diamond by use of inductively coupled plasma dry etching)」、Optics Letters、26巻(2001年)、1752〜1754頁で報告されている。英国特許出願GB2281254は、ダイヤモンドに対するプラズマエッチング法における酸素とフッ素含有ガスとの混合物の使用を開示している。エッチングされた表面の粗度についての開示は行われていない。
【0009】
Ar/Cl混合ガスを使用する窒化ガリウム(GaN)のICPエッチングは、H.W.ChoiらのJournal of Applied Physics、97巻(2005年)、063101頁で報告されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来の宝石細工の方法、ラッピング若しくは研磨又は研磨だけによって作成されてもよい元の表面から又は成長させられた表面からプラズマエッチングによってダイヤモンド表面を作製する方法である。本発明は、本発明の方法を使用して作製されたダイヤモンド表面又はダイヤモンド表面の部分にも及ぶ。
【0011】
本発明に対する第1の態様によれば、元のダイヤモンド表面を準備するステップと、元のダイヤモンド表面にプラズマエッチングを施して元の表面から材料を少なくとも2nm除去し、プラズマエッチングされた表面を作製するステップとを含み、材料の最大深さが除去されたエッチングされた表面の位置におけるプラズマエッチングされた表面の粗度Rが、
a.プラズマエッチングされた表面のRは元の表面の粗度Rの1.5倍未満である、又は
b.プラズマエッチングされた表面のRは1nm未満である、
という条件の少なくとも1つを満たすダイヤモンド表面を製造する方法が提供される。
【0012】
好ましくは両方の条件が満たされる。
【0013】
第2の態様において、本発明は、機械的に加工された元のダイヤモンド表面を準備するステップと、元のダイヤモンド表面にプラズマエッチングを施して元の表面から材料を少なくとも2nm除去し、プラズマエッチングされた表面を作製するステップとを含み、該プラズマエッチングされた表面が機械加工に起因する残留損傷を実質的に含まない、ダイヤモンド表面を製造する方法を提供する。
【0014】
本発明の第1及び第2の態様において、好ましくはダイヤモンドはCVDダイヤモンドであり、最も好ましくは単結晶CVDダイヤモンドである。
【0015】
好ましくは少なくとも1つの構造的フィーチャーが表面の一部又は全部の中にエッチングされる。
【0016】
好ましくはプラズマエッチングは、等方性エッチング、好ましくは誘導結合プラズマエッチングを利用する。プラズマエッチングにおいて使用される混合ガスは、不活性ガス及びハロゲン含有ガスを含有することができる。好ましくは不活性ガスはアルゴンである。
【0017】
ハロゲン含有ガスは塩素を含有することができ、その場合、好ましくはハロゲン含有ガスは分子状塩素(Cl)である。
【0018】
好ましくは、本発明による方法において、
ダイヤモンドの元の表面に対して垂直方向にエッチングされた構造的フィーチャー(structural feature)の最大深さは好ましくは20μm未満であり、
構造的フィーチャーの最小の横方向寸法は、好ましくはそのフィーチャーの最大深さの少なくとも0.5倍である。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、ダイヤモンド表面を準備するステップと、ダイヤモンド表面に不活性ガス及びハロゲン含有ガスを含有する混合ガスを使用して誘導結合プラズマエッチングを施すステップとを含む、エッチングされたダイヤモンド表面を作製する方法が提供される。
【0020】
好ましくはダイヤモンドはCVDダイヤモンド、最も好ましくは単結晶CVDダイヤモンドである。
【0021】
或いはダイヤモンドは多結晶CVDダイヤモンドであってもよい。
【0022】
本発明に対する第4の態様によれば、ダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも2nmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を有し、エッチングされた表面は1nm未満のRqを有する単結晶ダイヤモンドが提供される。
【0023】
好ましくはダイヤモンドはCVDダイヤモンドである。
【0024】
エッチングの方法は、好ましくは本明細書において前記された本発明に対する第1、第2及び第3の態様による方法である。
【0025】
本発明に対する第5の態様によれば、ダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも0.5μmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を含み、エッチングされた表面は5nm未満の表面粗度Rを有する多結晶CVDダイヤモンドが提供される。
【0026】
エッチングの方法は、好ましくは本明細書において前記された本発明に対する第1、第2及び第3の態様による方法である。
【0027】
多結晶CVDダイヤモンドは、光学デバイスにおける使用のためであってよい。
【0028】
プラズマエッチングプロセスは、少なくとも約2nm、好ましくは少なくとも約5nm、好ましくは少なくとも約10nm、好ましくは少なくとも約20nm、好ましくは少なくとも約50nm、好ましくは少なくとも約100nm、好ましくは少なくとも約200nm、好ましくは少なくとも約500nm、好ましくは少なくとも約1000nmを、元の表面又は元の表面の部分から除去する。
【0029】
プラズマエッチングプロセスは、好ましくは約2nm〜約50μmの間、より好ましくは約2nm〜約20μmの間、さらにより好ましくは約2nm〜約10μmの間、さらにより好ましくは約2nm〜約5μmの間を、元の表面から除去する。
【0030】
本発明のプラズマエッチングされた表面は、粗度R(エッチング後)と、粗度R(エッチング前)の元の表面を有し、R/Rは、好ましくは約1.5未満、より好ましくは約1.4未満、より好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.1未満である。通常エッチング前に、Rは、約10nm未満のRに、より通常には約3nm未満に、より通常には約1nm未満に、より通常には約0.5nm未満に調整される。
【0031】
及びR測定値は、ダイヤモンドの同じ区域について得る。「同じ区域(same area)」によって、当技術分野において知られている通り、測定の一般的有効性を検証するために必要な場合に複数の測定及び統計的解析を使用する、合理的に実用的な程度に密接した等価な区域が意味されている。
【0032】
このプラズマエッチングの特に並外れた利点は、特に当初の表面Rを約1nm未満のR、より特別には約0.5nm未満、より特別には約0.3nm未満に調整されている表面に適用される場合に、ダイヤモンド表面のRを向上させることができ、したがって極めて低い表面粗度値へのルートを提供することである。これらの状況下において、本発明のプラズマエッチングされた表面は、粗度R、及び粗度Rqのエッチング前の元の表面を有し、R/Rは小さく、好ましくは約1.0未満、より好ましくは約0.8未満、より好ましくは約0.6未満、より好ましくは約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、より好ましくは約0.3未満となる。
【0033】
したがって、本方法は、好ましくは約1nm未満、好ましくは約0.5nm未満、好ましくは約0.3nm未満、好ましくは約0.2nm未満、好ましくは約0.1nm未満のR値を有するプラズマエッチングされたダイヤモンド表面を提供する。さらに、低いRを有するこのプラズマエッチングされたダイヤモンド表面は、好ましくは、露出エッチング試験によって検出された欠陥の数が1mm当り約100未満であるように、加工損傷をほとんど含まない。
【0034】
本発明の目的のためには、表面の粗度はR値によって記載される。Rは、「二乗平均平方根」(又はRMS)粗度としても知られている。Rは表面プロフィールの中心線又は中心面からの偏差の二乗の平均値の平方根と定義され:
=√((y+y+...+y)/n)
式中のyなどは表面プロフィールの中心線又は中心面からの偏差の二乗であり、nは測定の数である。
【0035】
表面はそのR値(「平均粗度」又は「中心線平均」とも呼ばれる)によっても定量化されることができ:
=(│y│+│y│+...│y│)/n
式中の│y│などは表面プロフィールの中心線又は中心面からの偏差の絶対値であり、nは測定の数である。
【0036】
表面プロフィールの中心線又は中心面からの偏差がガウス分布を有する表面については、R=1.25×Rである。
【0037】
及びRは、線に沿って(一次元測定)又は面積にわたって(二次元測定)測定され得る。面積測定は本質的に一連の平行線測定である。
【0038】
本発明の目的のためには、R値は普通には約1μm×約1μmの面積又は2μm×2μmの面積にわたって原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ測定装置を使用して測定される。ある種の状況下では、スタイラスプロファイロメーターを使用して0.08mmの走査長にわたってRを測定することがより適切であると考えられている。
【0039】
語句「構造的フィーチャー(structural feature)」又は「形態的フィーチャー(topographic feature)」は、本明細書を通じて有用な機能を提供するためにダイヤモンド中に制御された方法でエッチングされた望ましいフィーチャー又は構造を指すために使用される。特にこれは、「損傷フィーチャー(damage feature)」と呼ばれる表面下の損傷の異方性エッチングからダイヤモンドの表面に生じるフィーチャーとははっきり異なる。
【0040】
本発明についてはいくつかの用途分野があり、それぞれが本発明によって与えられる利点の特定の組合せを使用している:
i)トランジスターのトレンチゲートなどの電子構造における使用のために適当な構造的フィーチャーの調整。電子構造におけるかかる構造的フィーチャーは好ましくは深さが約2nm〜約100nmの範囲内、より好ましくは深さが約2nm〜約30nmの範囲内である。本発明の方法は低く且つ制御されたエッチング速度を提供することができ、好ましくは約0.08μm/分未満、より好ましくは約0.06μm/分未満、より好ましくは約0.04μm/分未満のエッチング速度を有し、このエッチング速度はICPコイル出力と共に比較的直線的に変化する。さらに、インキュベーション時間、又はエッチング開始時の外部工程条件の適用からエッチングを得るまでの間の遅延時間は短く、通常約5秒間未満、より通常には約3秒間未満で、且つ一貫しており、それによって正確なエッチング深さの制御が達成され得る。本発明のエッチングの等方性はエッチング後のいかなる損傷フィーチャーの存在も表面を顕著に粗くすることのない、又はより好ましくはエッチングされた表面は、上記の通り、最初に調整された表面よりもずっと滑らかな表面を与える。
ii)マイクロレンズなどの光学的用途、及び、特に滑らかな曲表面を有する、比較的大きい形態的フィーチャーを必要とする他の用途における使用のためのダイヤモンドの表面における構造的フィーチャーの調整。かかる形態的フィーチャーは、好ましくは形成されたそのフィーチャーの深さ又は垂直的高さが約200nm〜約20μmの範囲内、より好ましくは形成されたそのフィーチャーの深さ又は垂直的高さが約500nm〜約5μmの範囲内である。本発明の方法は、好ましくは約0.08μm/分を超える、より好ましくは約0.10μm/分を超えるエッチング速度を有し、このエッチング速度はICPのコイル出力と共に比較的直線的に変化する。さらに、インキュベーション時間、又はエッチング開始時の外部工程条件の適用からエッチングを得るまでの間の遅延時間は短く、通常約5秒間未満、より通常には約3秒間未満であり、且つ一貫しており、それによって正確なエッチング深さの制御が達成され得る。本方法の特別な利点は、様々な厚さのマスクを適用し、少なくともある領域においてエッチングがマスクを破ってダイヤモンドまでの貫通を可能にすることによって使用される低いエッチング選択性である。低いエッチング選択性は、比較的厚いマスクの層を使用することを可能にし、ダイヤモンド中の同じ最終の構造的フィーチャーのために、この層を適用するときの許容範囲及び困難を低減する。この種の用途におけるエッチング選択性は、好ましくは約0.16未満、より好ましくは約0.14未満、より好ましくは約0.12未満、より好ましくは約0.10未満、より好ましくは約0.09未満である。エッチング選択性は次の通りに定義される:
(マスクのエッチング速度)/(ダイヤモンドのエッチング速度)
本発明のエッチングの等方性はエッチング後のいかなる損傷フィーチャーの存在も表面を顕著に粗くすることのない、又はより好ましくはエッチングされた表面は、上記の通り、最初に調整された表面よりもずっと滑らかな表面を与える。
iii)さらなるエピタキシャル成長のため、好ましくはCVDダイヤモンドのさらなる成長のため、又は例えばショットキーダイオード、三次元電子デバイス(フィールド効果トランジスターなど)、放射線検出器、センサーその他への電気的接触のための損傷を含まない表面を調整するための表面又は表面領域の調整。かかる調整は、表面の損傷を顕著に減少させるために十分な深さの除去を必要とし、したがって表面の損傷層と同じ程度の厚さである必要がある。通常表面の損傷層は約0.2μm〜約20μmの範囲内の厚さを有する(又は非常に積極的な宝石細工技法ではもっと厚い)。したがって、好ましくはエッチングは材料のある厚さを表面から除去し、除去される材料の厚さは少なくとも約0.2μm、より好ましくは少なくとも約0.5μm、より好ましくは少なくとも約1.0μm、より好ましくは少なくとも約2μm、より好ましくは少なくとも約5μm、より好ましくは少なくとも約10μmである。表面の損傷層は通常宝石細工加工の最後のステップ用に使用される最も大きいダイヤモンド砂粒子のサイズとほぼ同じ厚さを有し、例えばサイズが1〜2μmのダイヤモンド砂を用いて研磨された表面のスケイフ(scaife)は、通常厚さ約2μmの表面損傷層を有する。したがって、本発明の方法によってエッチング後に残る宝石細工加工からの損傷の量を最小限度にするためには、本発明の方法によって除去される材料の量は、好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約0.2倍、より好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約0.5倍、より好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約0.8倍、より好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約1.0倍、より好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約1.5倍、より好ましくは最大の砂粒子のサイズの少なくとも約2倍でなければならない。かかるエッチング後に低く留まる表面粗度には、ダイヤモンド表面中にエッチングされた損傷フィーチャーから生じる過剰成長した層中の欠陥を避けるという利便がある。特に、表面が単結晶ダイヤモンドである場合は、表面は好ましくは約10nm未満、より好ましくは約5nm未満、より好ましくは約2nm未満、より好ましくは約1nm未満、より好ましくは約0.5nm未満、より好ましくは約0.3nm未満のエッチング後の表面粗度Rを有する。或いは、表面が多結晶CVDダイヤモンドである場合は、表面は好ましくは約40nm未満、より好ましくは約20nm未満、より好ましくは約10nm未満、より好ましくは約5nm未満、より好ましくは約2nm未満、より好ましくは約1nm未満のエッチング後の表面粗度Rを有する。本発明の方法は、制御されたエッチング速度を提供することができ、エッチング速度は好ましくは約0.08μm/分を超え、より好ましくは約0.10μm/分を超え、このエッチング速度はICPのコイル出力と共に比較的直線的に変化する。さらに、インキュベーション時間、又はエッチング開始時の外部工程条件の適用からエッチングを得るまでの間の遅延時間は短く、通常約5秒間未満、より通常には約3秒間未満であり、且つ一貫しており、それによって正確なエッチング深さの制御が達成され得る。本発明のエッチングの等方性はエッチング後のいかなる損傷フィーチャーの存在も表面を顕著に粗くすることのない、又はより好ましくはエッチングされた表面は、上記の通り、最初に調整された表面よりもずっと滑らかな表面を与える。
【0041】
エッチングされた構造的フィーチャーのダイヤモンドの主表面に垂直な方向の最大深さは好ましくは約20ミクロン未満、より好ましくは約10ミクロン未満、より好ましくは約5ミクロン未満、より好ましくは約2ミクロン未満、より好ましくは約1ミクロン未満、より好ましくは約500nm未満、より好ましくは約200nm未満、より好ましくは約100nm未満、より好ましくは約60nm未満であり、エッチングされた構造的フィーチャーの最小の横方向寸法は好ましくは最大深さの少なくとも約0.5倍、より好ましくは最大深さの少なくとも約1倍、より好ましくは最大深さの少なくとも約2倍、より好ましくは最大深さの少なくとも約5倍、より好ましくは最大深さの少なくとも約10倍、より好ましくは最大深さの少なくとも約15倍である。
【0042】
一実施形態において、本発明は、元のダイヤモンド表面を準備するステップと、元のダイヤモンド表面にプラズマエッチング、好ましくは等方性プラズマエッチング、より好ましくは誘導結合プラズマエッチングを施し、元の表面から材料を少なくとも2nm除去してプラズマエッチングされた表面を作製するステップとを含み、材料の最大深さが除去されたエッチングされた表面の位置においてプラズマエッチングされた表面の粗度Rが、
a.プラズマエッチングされた表面のRは元の表面の粗度Rの1.5倍未満である、又は
b.プラズマエッチングされた表面のRは1nm未満である
の条件の少なくとも1つを満たすダイヤモンド表面を作製する方法を提供し、ここで、好ましくはプラズマエッチングにおいて使用される混合ガスは不活性ガス、好ましくはアルゴン及びハロゲン含有ガス、好ましくは塩素を含有する。
【0043】
本発明は、もう1つの態様によって、ダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも約2nmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を有する単結晶ダイヤモンドを提供し、このエッチングされた表面は約1nm未満のRを有する。
【0044】
本発明は、もう1つの態様によって、ダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも約0.5μmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を含む多結晶CVDダイヤモンドを提供し、このエッチングされた表面は約5nm未満の表面粗度Rを有する。
【0045】
一実施形態において、本発明はダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも約2nmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を有する単結晶ダイヤモンドを提供し、このエッチングされた表面は約1nm未満、好ましくは約0.5nm未満、好ましくは約0.3nm未満、好ましくは約0.2nm未満、好ましくは約0.1nm未満のRを有する。
【0046】
もう1つの実施形態において、本発明はダイヤモンドの表面又は表面の一部分からエッチングによって少なくとも約0.5μmが除去されたことからもたらされるエッチングされた表面又はエッチングされた表面の部分を含む多結晶CVDダイヤモンドを提供し、このエッチングされた表面は約5nm未満、好ましくは約2nm未満、好ましくは約1nm未満、好ましくは約0.5nm未満、好ましくは約0.3nm未満、好ましくは約0.2nm未満、好ましくは約0.1nm未満の表面粗度Rを有する。
【0047】
プラズマエッチングされる表面は、ダイヤモンド表面の全範囲の形態又は、電子デバイス、マイクロレンズ、微小電気機械システム(MEMS)、X線光学素子などの光学素子を作製するための方法の部分として表面中にエッチングされた構造的フィーチャーなどの表面の一部分の形態のいずれかであり得る。
【0048】
本発明の方法は、プラズマエッチング工程を経た後は、基本的にラッピング及び研磨又は研磨だけのどちらかの宝石細工プロセスなどの従来の方法によって調製されたダイヤモンド表面に特徴的な損傷を含まない、表面又は表面の構造的フィーチャーをもたらす。
【0049】
表面下の損傷の程度は故意の異方性熱露出エッチングを使用して露出させ定量化することができる。露出エッチングは損傷されたダイヤモンドの領域を優先的に酸化させ、したがってかかる領域を確認し、その後定量化することを可能にする。機械的加工からの表面下の損傷を含む領域は通常露出エッチングによって暗くなり黒くなることさえある。
【0050】
露出エッチングは以下のステップから成る。
(i)通常の冶金用顕微鏡を用いて50倍の拡大率で反射光を使用して表面を調べて表面のフィーチャーが存在しないことを確認するステップと、
(ii)表面を空気−ブタン炎にさらし、ダイヤモンドの表面を通常約800℃〜約1000℃の温度に約10秒間上げるステップと、
(iii)通常の冶金用顕微鏡を用いて50倍の拡大率で反射光を使用して表面を調べ、露出エッチングによって検出した損傷フィーチャーを下記の要領でカウントしてそれらの数密度を決定するステップと、
(iv)ステップ(ii)及び(iii)を繰り返し、測定された欠陥の密度を前回のサイクルの密度と比較して次の条件が満たされるまで繰り返すステップ:カウントされた欠陥の数密度が前回のサイクルにおいて決定された数密度の約150%以下、好ましくは約120%以下であればすべての欠陥が検出されたとみなされ、記録される測定値は最後の2回のサイクルの測定値の平均値であるが、そうでなければ再度サイクルを繰り返す。
【0051】
欠陥の数密度は次の方法によって測定される。
(i)カウントされる欠陥は、通常の冶金用顕微鏡を用いて50倍の拡大率で見ることができる欠陥であって特徴付けられつつある表面上に投影された1mm×0.2mmの長方形の1つの区域内に全体的に又は部分的に入るものであり、
(ii)この区域は特徴付けられる表面又は表面の部分全体にわたってランダムに選択され且つランダムに配向しており、
(iii)欠陥は最少でも5つのこうした区域中でカウントされ、
(iv)欠陥の数密度はカウントされた欠陥の合計数を調べた合計面積で割ることによって計算され、数密度を1mm当りの欠陥で与える。
【0052】
欠陥の数密度を約1mm未満の区域において測定するためには、欠陥のカウントを全面積にわたって単一回の測定として完了することによって上記の方法を適合させる。
【0053】
機械的加工に起因する残留損傷を実質的に含まないと考えられる表面については、本発明の方法によって調製された単結晶CVDダイヤモンドの表面において検出された欠陥の数密度は、1mm当り約100未満、好ましくは1mm当り約50未満、好ましくは1mm当り約20未満、好ましくは1mm当り約10未満、好ましくは1mm当り約5未満である。
【0054】
或いは、「ラザフォード後方散乱」(又は「RBS」)の技法を、サンプル中の表面下の損傷の程度を少なくとも半定量的に評価するために使用することができる。RBSの技法は当業において周知である(例えば、「Concise Encyclopedia of Materials Characterization」、R.W.Cahn及びE.Lifshin編、Pergamon(London)、1993年、199〜204頁中の論文「イオンの後方散乱分析(Ion Backscattering Analysis)」を参照されたい)。RBSは結晶性固体の表面下約1μmまで探ることができるイオンビーム技法である。表面近傍層の結晶学的完全性についての情報は「チャネリング」の使用によって得ることができ、その場合は表面層の結晶学的完全性が高いほど後方散乱のイオン収量が低く、完全な表面については、実質的に後方散乱のイオン収量がない(ここでの「実質的に」は、入射イオンの約5%未満、好ましくは約3%未満、好ましくは約2%未満、好ましくは約1%未満が後方散乱されることを意味する)。
【0055】
本発明の表面は、プラズマエッチングによって、好ましくは誘導結合プラズマ(ICP)エッチングプロセスを使用して、且つ好ましくは操作圧力が約0.5mTorr(約0.0667Pa)〜約100mTorr(約13.3Pa)の範囲内、より好ましくは約1mTorr(約0.133Pa)〜約30mTorr(約4.00Pa)の範囲内、より好ましくは約2mTorr(約0.267Pa)〜約10mTorr(1.33Pa)の範囲内において作製される。エッチング剤は、好ましくは少なくとも1つの不活性ガス、好ましくはアルゴン、及びハロゲン含有ガス、好ましくは塩素(Cl)から成る混合ガスである。好ましくはハロゲン含有ガスは、このプロセスに加えられる混合ガス中に約1容量%〜約99容量%、より好ましくは約20容量%〜約85容量%、より好ましくは約40容量%〜約70容量%の範囲内の濃度で存在する。好ましくは混合ガスの残りの大部分は、Arで補い、より好ましくはガスの残りは全部をArで補う。
【0056】
或いは不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、クリプトン若しくはキセノンであり得る、又はこれらの2つ以上の混合物を含み得る、又はこれらの1つ又は複数とアルゴンとの混合物を含み得る。
【0057】
本発明のプラズマエッチング法は、基本的に化学的な方法であり、したがってこれはすべての配向のダイヤモンド表面をほぼ同じ速度でエッチングする、即ちこの方法は「等方性」であると表現することができる。したがってこの方法は、そのポリッシングされた表面が通常表面に対して様々な配向にある粒子を含む、多結晶CVDダイヤモンドをエッチングするために使用され得る。
【0058】
本発明の方法は、電子デバイスの作製に使用される可能性がある従来のリソグラフィー法と適合し得る。例えばこれは、適当なレジストを表面に塗布し、レジストに適切なパターンを与え、次いで先に記載されたものと同じICP法を使用して表面をエッチングすることによって、ダイヤモンドの表面上に構造的フィーチャーを作製するために使用されることもあり得る。
【0059】
本発明の方法は、天然の単結晶ダイヤモンド、高圧−高温(HPHT)技法によって作製された合成の単結晶ダイヤモンド、CVD技法によって作製された合成の単結晶ダイヤモンド(「単結晶CVDダイヤモンド」)、及びCVD技法によって作製された合成の多結晶ダイヤモンド(「多結晶CVDダイヤモンド」)を含む表面に適用され得る。
【0060】
本発明の方法は、従来技術にまさる次の利点を与える。
・ 本方法は表面に構造的フィーチャーのパターンを持たせるために使用されることができ、パターン付けは標準的なリソグラフィー法を使用して行われる。
・ 本方法は、単結晶及び多結晶両方のダイヤモンドを、前者においてはディスロケーションに、後者においては粒界に起因するピットを露出させることなく、エッチングするために使用され得る。
・ 本方法は、損傷された表面を、ダイヤモンド領域を優先的に除去することなく、且つそれ故に表面を顕著に粗くすることなく、エッチングするために使用され得る。
・ 本方法は、損傷を除去し、それ故にエピタキシャル成長のための損傷を含まない表面を調製するために使用されることができる。
・ 本方法は、損傷を除去し、それ故に電気的接触の形成のための損傷を含まない表面を調製するために使用されることができる。
・ 本方法は、光学素子の表面上で使用され得る。
・ エッチング過程を受けることによって表面の粗度は顕著に増大されない。
・ エッチングによって十分な材料を除去した後に得られるダイヤモンド表面は、機械的表面加工に付随する損傷を基本的に含まないことが可能である。
【0061】
本発明のプラズマエッチングされたダイヤモンド表面は、例えば、損傷層を含まない電子デバイス製造のための基材の用意、化学蒸着によるホモエピタキシャルダイヤモンド層の合成のための基材の用意、三次元構造的フィーチャーの作製及び高性能電気的接触が表面に作製されることを可能にするための表面の調製を含む幅広い範囲の用途のために使用され得る。
【0062】
ダイヤモンドがAr−ハロゲン、特にAr−Cl混合ガスを使用してエッチングされ得ることは意外である。ダイヤモンドは非常に反応性の低い固体である。ハロゲンは500℃〜1200℃の間の温度で起こるCVD成長過程の間にダイヤモンドの表面を安定化することが知られている。不活性ガスはPVDエッチングプロセスにおいて荷電種としてしばしば使用されるが、ICPにおいては荷電種に帰するエッチングの要素は無視し得る。
【0063】
本明細書で使用する「約x」という用語は値x自体を含むものとする。
【0064】
かくして、本発明はさらに1つの態様によって、ダイヤモンド表面を準備するステップと、このダイヤモンド表面に不活性ガス、好ましくはアルゴン、及びハロゲン含有ガス、好ましくは塩素を含有する混合ガスを使用する誘導結合プラズマエッチングを施すステップとを含む、エッチングされたダイヤモンド表面を作製する方法を提供する。
【0065】
以下の図面は実施例1から6までにおいて参照されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】Ar/Cl ICPプラズマエッチングされた深さ約16nmのトレンチの走査型電子顕微鏡写真である。
図2図1のトレンチの領域の原子間力顕微鏡の画像である。
図3】Ar/Cl ICPプラズマエッチングされた深さ約53nmのトレンチの走査型電子顕微鏡写真である。
図4図3のトレンチの領域の原子間力顕微鏡の画像である。
図5】Ar/Cl ICPプラズマエッチングされたダイヤモンドマイクロレンズの原子間力顕微鏡画像に基づく線画である。
図6図5に示したダイヤモンドマイクロレンズの測定された中心横断プロフィールを理想的な球曲線を有する近似されたプロフィールと一緒に示す図である。
図7】エッチング速度及びエッチング選択性のICPのコイル出力に対してプロットしたグラフである。
図8】エッチング速度とエッチング時間の関係を示すグラフである。
図9】樹脂結合円盤を使用してポリッシングされたHPHTダイヤモンド表面の原子間力顕微鏡画像である。
図10図9のHPHTダイヤモンドサンプルのAr/Cl ICPプラズマエッチング後の原子間力顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の詳細を6つの実施例を使用して説明する。第1の実施例は一連の単結晶CVDダイヤモンド板上の基本的に損傷を含まない表面を作製するための本発明の使用を記載し、且つ得られた表面をエッチングされていないサンプルと比較している。第2の実施例は多結晶CVDダイヤモンド板上の微細な構造的フィーチャーを作製するための本発明の使用を記載している。
【0068】
(実施例1)
4枚のほぼ4mm×4mm×0.5mmの単結晶CVDダイヤモンド板を、国際公開第01/96633号で開示されている方法によって作製したもっと大きい成長させたままの単結晶CVDダイヤモンドブロックから、鋸引きした。これらの板の大きい平面状の表面(本明細書において以下「主表面(major surface)」と呼ぶ)は、{100}結晶面の数度以内に配向していた。板の端を形成しているより小さい表面(本明細書において以下「端表面(edge surface)」と呼ぶ)は、<100>方向にほぼ平行であった。
【0069】
最初に4枚の板すべての主表面を、鋳鉄ポリッシング円盤上でセルロースに基づくキャリア中に懸濁させた次第に細かくなるダイヤモンド砂を使用してラッピングした。最終のラッピング段階は15μm〜25μmのサイズ範囲内のダイヤモンド砂を使用し、スタイラスプロファイロメーターを使用して長さ0.8mmにわたって測定された粗度Rは3枚の板すべてについて100〜150nmの範囲内であった。以前の実験は、ラッピングのこの段階後に表面下の損傷層が表面下約10μmの深さに及ぶことを示していた。
【0070】
すべての板はランダムに選択され、且つそれらの主表面は従来のダイヤモンドポリッシングスケイフを使用して研磨した。2枚の鋳鉄スケイフ円盤を使用したが、1枚目はサイズ範囲2〜4μmのダイヤモンド粉末を用い、2枚目はサイズ範囲1〜2μmのダイヤモンド粉末を用いて準備した。スケイフポリッシング工程の間に除去された材料の深さは約15μmであったと決定された。スケイフ加工の完了後、スタイラスプロファイロメーター(stylus profilometer)を使用して80μmの長さにわたって測定されたR値は5nm未満であった。原子間力顕微鏡を用いて行った面積(例えば約1μm×約1μm)にわたるより正確な測定は、表1に載せたR値を与えた。
【0071】
板の1枚(「サンプル1」と呼ぶ)は、ランダムに選択され、先に記載した方法(小型の空気−ブタンブロートーチを使用して、表面を空気中で約850℃に10秒間加熱する)による熱露出エッチングを施した。欠陥は本発明の方法によってカウントした。板は表面下の損傷の重要な証拠、1mm当り100を大幅に超える欠陥を示した。
【0072】
他の3枚の板(「サンプル2」、「サンプル3」及び「サンプル4」と呼ぶ)は、誘導結合プラズマエッチングを施して材料を表面から除去した。ICPエッチングの条件は次の通りであった:約300Wのプラテン出力、約400Wのコイル出力、5mTorr(0.667Pa)のチャンバー圧力、Arについて25sccm及びClについて40sccmの流量。3枚のサンプルについて選択されたエッチング時間は、15、30及び60分間であった。エッチングされた表面から除去された材料の量、当初及び最終表面粗度Rの値は表1中にある。
表1−プラズマエッチング前後の板の特徴
【表1】
【0073】
プラズマエッチング過程の後及びRの測定後、3枚の板すべてに熱露出エッチングを施して表面下の損傷の程度を評価した。サンプル2〜4のそれぞれについて測定された欠陥の数密度は、プラズマエッチングを施されなかった板であるサンプル1において検出されたものとは異なって、それぞれの事例において10未満であった。
【0074】
(実施例2)
横方向の長さが約10mm×10mm及び厚さが約650μmの多結晶CVDダイヤモンドの2つのサンプルを、それらの成長表面上で従来の宝石細工の方法を使用して、ポリッシングした。原子間力顕微鏡によって2μm×2μmの面積にわたって測定された、ポリッシングされた板の表面粗度値Rは1.0nm及び1.0nmであった。
【0075】
多結晶ダイヤモンドの2つのサンプル中に、Ar−Cl ICPプラズマを使用してマイクロトレンチをエッチングした。マイクロトレンチのフォトレジストフィーチャーは、サンプルの表面上に標準的なリソグラフィーの方法を使用してマスクでパターンを付けた。サンプルを、以下のICPチャンバー条件を使用してエッチングした:約300Wのプラテン出力、約400Wのコイル出力、5mTorr(0.667Pa)のチャンバー圧力、Arについて25sccm及びClについて40sccmの流量。第1のサンプル中には深さ16nmのトレンチをエッチングし[図1及び図2]、第2のサンプル中には深さ53nmのトレンチをエッチングした[図3及び図4]。トレンチの壁は明確であり、明らかに荒れた端はないことが分かる。両方の事例においてエッチング速度は1秒当り約1nmであると測定され、この方法の再現性を実証している。表面の後エッチングはこれらの多結晶サンプル中に粒界の兆候を示さないことも明らかであり、エッチングが事実上等方性であることを実証している。深さ16nm及び53nmのトレンチをエッチングした後のサンプルの(原子間力顕微鏡を使用して1μm×1μmの面積にわたって測定された)R値は、それぞれ0.8及び1.1nmであり、1.0nmの予備エッチングされた表面の粗度と比較されなければならない。これは、これらの条件下においてはこのエッチング法を使用することに起因する表面の粗化はわずかである又はないことを示しており、このエッチングが等方性であることをさらに支持している。
【0076】
(実施例3)
球形マイクロレンズ構造を、Ar/Cl ICPエッチングをフォトレジストリフロー法[H.W.Choi、E.Gu、C.Liu、J.M.Girkin、M.D.Dawson、J.of Appl.Phys.97(6)巻、063101頁(2005年);C.L.Lee、H.W.Choi、E.Gu、M.D.Dawson、Dia.Rel.Mat.15巻、725頁(2006年)]と併せて使用して、単結晶IIa天然ダイヤモンドのサンプル中に作製した。まず、Shipley SPR220フォトレジスト7μmの厚さの層をダイヤモンド基材上にスピンコートした。マスクでパターンを付けた後、フォトレジストの円柱を形成した。次いでサンプルを125℃のホットプレート上に2分間置いて、フォトレジストの円柱をリフローさせた。表面張力の故に、球形レンズ構造が形成された。次いでこれらのレンズ構造を、Ar/Clプラズマを使用するICPエッチングによって、ダイヤモンド基材上に移した。使用したICPパラメーターは次の通りであった:100Wのプラテン出力、400Wのコイル出力、5mTorr(0.667Pa)のチャンバー圧力、Arについて25sccm及びClについて40sccmの流量、25分間のエッチング継続時間。
【0077】
代表的なダイヤモンドマイクロレンズの原子間力顕微鏡画像に基づく線画を図5に示す。このレンズの表面直径及び高さは、それぞれ50μm及び0.75μmであると測定された。ダイヤモンドマイクロレンズのプロフィールを、原子間力顕微鏡画像の断面スキャンを調べることによって検討した。測定されたプロフィールは次いで円の曲線と比較した。ダイヤモンドマイクロレンズの測定された断面プロフィール及び近似させた球のプロフィールが図6にプロットされている。理想的なプロフィールからの偏差は非常に小さく、マイクロレンズの断面プロフィールが形状において球形に非常に近いことを示している。
【0078】
(実施例4)
Ar/Cl ICPプラズマの(先に定義された)エッチング速度及びエッチング選択性を、次の条件を使用してICPコイル出力の関数として調べた:100W、400W及び900WのICPコイル出力、300Wで一定のICPプラテン出力、5mTorr(0.667Pa)のチャンバー圧力、Arについて25sccm及びClについて40sccmの流量、5分間のエッチング継続時間。単結晶天然ダイヤモンドサンプルをこれらの実験のために使用し、フォトレジストをマスク材料として使用した。結果は図7にプロットされている。エッチング速度はICPコイル出力と共に直線的に増加し、エッチング選択性はほぼ一定(約0.09)であることが認められた。類似のある実験においてタイプIbの合成単結晶ダイヤモンドに対するエッチング選択性も約0.09であることが見出された。これを約0.20であるAr/O ICPプラズマを使用するエッチングの選択性と比較するべきである[C.L.Lee、H.W.Choi、E.Gu、M.D.Dawson、Dia.Rel.Mat.15巻、725頁(2006年)]。したがって、同一の厚さのフォトレジストマスクを使用すると、ICP Ar/Clエッチングを使用してダイヤモンド中に作製される(マイクロレンズ及びマイクロトレンチなどの)マイクロ構造の高さ又は深さはICP Ar/Oエッチングを使用して作製されるものの約半分である。したがって、Ar/Clを使用して得られるこのより低いエッチング選択性は、微細構造の高さ又は深さについて正確な制御が要求されている、より浅い構造的フィーチャーをダイヤモンド中にエッチングするためにはより適当である。
【0079】
(実施例5)
時間の関数としてのエッチング速度を、タイプIbの合成単結晶ダイヤモンドサンプルにおいてマイクロトレンチをエッチングすることによって調べた。トレンチは3つのサンプル中で同一のフォトレジストマスクを使用して、実施例2に記載したものと同一のAr/Cl ICPプラズマ条件下でエッチングした。3つのサンプルをそれぞれ9秒、20秒、40秒間エッチングした。形成されたマイクロトレンチの深さは原子間力顕微鏡法によって測定した。それを図8にエッチング時間の関数としてプロットしている。平均エッチング速度は、データに対する単純な線形曲線近似を行うことによって引き出し、1.29±0.03nm s−1であることを見出した。この数における小さな不確かさはこの方法が再現性のあるエッチング速度をもたらすことを示しており、これは製造方法の重要な要件である。
【0080】
(実施例6)
樹脂結合ポリッシング円盤を使用して機械的に研磨されたタイプIb HPHT単結晶サンプルを、次のICPチャンバー条件を使用して10分間エッチングした:約300Wのプラテン出力、約100Wのコイル出力、5mTorr(0.667Pa)のチャンバー圧力、Arについて25sccm及びClについて40sccmの流量。図9は、ICPエッチングの前にポリッシングされたサンプルの1μm×1μmの表面積にわたる代表的な原子間力顕微鏡スキャンを示す。表面はポリッシングからもたらされるナノメートルスケールの直線状トレンチ又は溝によって特徴付けられ、この面積にわたる粗度Rは0.53nmであると測定された。図10はICPエッチング後のサンプルの1μm×1μmの表面積にわたる代表的なAFMスキャンを示している。直線状ポリッシング溝は前よりも浅くこの面積にわたる粗度Rは0.19nmであると測定された。この実施例は機械的に予備ポリッシングされたダイヤモンド表面の粗度を低減する本方法の能力を実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10