(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着フィルムの熱硬化前の25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上10000MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の半導体装置用フィルムロール。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本実施形態に係る半導体装置用フィルムロールについて、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。
【0034】
図1は、本実施形態に係る半導体装置用フィルムロールの概略を表す斜視図である。
【0035】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置用フィルムロール10は、円柱状の巻き芯12に半導体装置用フィルム20がロール状に巻き取られたものである。半導体装置用フィルム20の巻き取りは、巻き取るべき半導体装置用フィルム20の巻き始めの端縁(セパレータ22の端縁(
図2(a)参照))を巻き芯12に接着し、その後、巻き芯12を巻取方向に回転させることにより行われる。
【0036】
半導体装置用フィルム20の巻き取りは、半導体装置用フィルム20に巻き取り張力を加えながら行なうことが好ましい。巻き取り張力としては、好ましくは、8〜100N/m、より好ましくは10〜90N/m、さらに好ましくは15〜80N/mとすることができる。巻き取り張力を8N/m以上にすると、半導体装置用フィルム20に歪みに起因した皺や、巻き端面の乱れの発生を防止することができる。その一方、巻き取り張力を100N/m以下にすると、半導体装置用フィルム20に過度な張力が加わり伸長するのを防止することができる。
【0037】
図2(a)は、巻き芯に巻き取る前の半導体装置用フィルムの概略を示す平面図であり、
図2(b)は、その部分断面図である。半導体装置用フィルム20は、複数のダイシングフィルム付き接着フィルム30が所定の間隔をおいてセパレータ22上に積層された構成を有している。ダイシングフィルム付き接着フィルム30は、ダイシングフィルム32上に接着フィルム40が積層された構造を有している。ダイシングフィルム32は、基材33上に粘着剤層34が積層された構造を有している。
【0038】
図3は、
図1の拡大部分断面図である。
図3に示すように、ロール状に巻回された半導体装置用フィルム20には、ダイシングフィルム付き接着フィルム30が積層されている部分と、積層されていない部分とに段差19が存在する。また、セパレータ22上の複数のダイシングフィルム付き接着フィルム30は、互いに横方向にずれながら積層されている。そのため、セパレータ22を介して、1のダイシングフィルム付き接着フィルム30に、他のダイシングフィルム付き接着フィルム30のエッジが押し当てられている。
【0039】
半導体装置用フィルム20では、セパレータ22上に積層されているダイシングフィルム付き接着フィルム30の枚数が350枚以下であり、300枚以下が好ましく、200以下がより好ましい。半導体装置用フィルム20は、上述の通り、ある程度の張力を加えながらロール状に巻き取られる。そのため、巻き数が多いと、下層の接着フィルム40(はじめの方に巻かれた接着フィルム40)ほど大きな圧力が加わる。
しかしながら、半導体装置用フィルムロール10では、セパレータ22上に積層されているダイシングフィルム付き接着フィルム40の枚数が350枚以下である。従って、下層の接着フィルム40に大きな圧力が加わることを防止できる。その結果、接着フィルム40への転写痕を抑制することができる。
【0040】
半導体装置用フィルムロール10の直径r2は、250mm以下であることが好ましく、230mm以下であることがより好ましく、200mm以下であることがさらに好ましい。半導体装置用フィルムロール10の直径r2が250mm以下であると、下層の接着フィルム40に加わる圧力をより小さくすることができる。
【0041】
接着フィルム40の厚さは、80〜150μmであることが好ましく、90〜140μmであることがより好ましく、100〜130μmであることがさらに好ましい。接着フィルム40の厚さが、80μm以上と比較的厚い場合、ロール状に巻いた際の転写痕はつき易い。しかしながら、セパレータ22上に積層されているダイシングフィルム付き接着フィルム400の枚数が350枚以下であるため、接着フィルム40の厚さが80μm以上であっても、転写痕は充分に抑制される。また、接着フィルム40の厚さが、150μm以下であると、接着フィルム40のエッジが過度に他の接着フィルム40に押し当てられて巻き跡が転写されることを防止できる。
【0042】
巻き芯12の直径r1は、一般的に、70〜100mmの範囲内である。なかでも、下層の接着フィルム40に過度の圧力がかかるのを防止する観点から、80mm以上であることが好ましい。また、フィルムロールの直径が大きくなり過ぎて、取り扱い性が低下するのを防止する観点から、100mm以下であることが好ましい。
【0043】
巻き芯12の構成材料は特に限定されず、例えば、金属製やプラスチック製等のものを使用することができる。
【0044】
半導体装置用フィルム20が備える接着フィルム40は、被着体上に固定された第1半導体素子を包埋し、かつ該第1半導体素子とは異なる第2半導体素子を被着体に固定するために用いることができる。具体的には、後述するように、包埋用の接着フィルム40(
図5F参照)として使用することができる。この用途に使用する場合、「包埋用の接着フィルムとして使用する」ということにする。
また、半導体装置用フィルム20が備える接着フィルム40は、半導体素子を被着体に固定するために用いることができる。例えば、後述する第1接着フィルム54(
図5A参照)として使用することができる。以下、この用途に使用する場合、「ダイボンドフィルムとして使用する」ということにする。
【0045】
接着フィルム40をダイボンドフィルムとして使用する場合、接着フィルム40の厚さは、5〜80μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましく、20〜50μmであることがさらに好ましい。すなわち、接着フィルム40をダイボンドフィルムとして使用する場合、厚さを比較的薄くすることができる。
接着フィルム40をダイボンドフィルムとして使用する場合、厚さを比較的薄くすることができるため、セパレータ22上に積層するダイシングフィルム付き接着フィルム30の枚数は、350枚以下が好ましく、300枚以下がより好ましく、200枚以下がさらに好ましい。
また、接着フィルム40をダイボンドフィルムとして使用する場合、厚さを比較的薄くすることができるため、半導体装置用フィルムロール10の直径r2は、250mm以下であることが好ましく、230mm以下であることがより好ましく、200mm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
接着フィルム40を包埋用の接着フィルムとして使用する場合、接着フィルム40の厚さは、80〜150μmであることが好ましく、90〜140μmであることがより好ましく、100〜130μmであることがさらに好ましい。すなわち、接着フィルム40を包埋用の接着フィルムとして使用する場合、ある程度の厚さを要する。
接着フィルム40を包埋用の接着フィルムとして使用する場合、ある程度の厚さを要するため、セパレータ22上に積層するダイシングフィルム付き接着フィルム30の枚数は、200枚以下が好ましく、150枚以下がより好ましく、100枚以下がさらに好ましい。
また、接着フィルム40を包埋用の接着フィルムとして使用する場合、ある程度の厚さを要するため、半導体装置用フィルムロール10の直径r2は、250mm以下であることが好ましく、230mm以下であることがより好ましく、200mm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
<接着フィルム>
接着フィルム40の構成は特に限定されず、例えば接着フィルムの単層のみからなる接着フィルムや、複数の接着フィルムを積層した多層構造の接着フィルム等が挙げられる。
【0048】
接着フィルム40は接着機能を有する層であり、その構成材料としては熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用したものが挙げられる。また、熱可塑性樹脂単独でも使用可能である。
【0049】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ボリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0050】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はエイコシル基等が挙げられる。
【0051】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0052】
(熱硬化性樹脂)
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0053】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型,ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0054】
さらに前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0055】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは0.8〜1.2当量である。すなわち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0056】
なお、本実施形態においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む接着フィルムが特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の好適な配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が100〜1300重量部である。
【0057】
(架橋剤)
本実施形態の接着フィルムは、予めある程度架橋をさせておくため、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0058】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部が好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、このようなポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0059】
(無機充填剤)
また、本実施形態の接着フィルムには、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリ力が好適に用いられる。また、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛等からなる導電性微粒子を添加して導電性接着フィルムとすることにより、静電気の発生を抑制することができる。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1〜80μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
前記無機充填剤の含有量は、接着フィルムを組成する成分(溶媒を除く。)の合計重量に対し10〜80重量%に設定することが好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。
【0061】
(熱硬化触媒)
接着フィルムの構成材料として熱硬化触媒を用いてもよい。その含有量としては、接着フィルムがアクリル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む場合、アクリル樹脂成分100重量部に対し0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。含有量を上記下限以上にすることにより、ダイボンディング時においては未反応であったエポキシ基同士を、後工程において重合させ、当該未反応のエポキシ基を低減ないしは消失させることができる。その結果、被着体上に半導体素子を接着固定させ剥離のない半導体装置の製造が可能になる。その一方、配合割合を上記上限以下にすることにより、硬化阻害の発生を防止することができる。
【0062】
前記熱硬化触媒としては特に限定されず、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、トリフェニルボラン系化合物、トリハロゲンボラン系化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0063】
前記イミダゾール系化合物としては、2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z)、2−ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2−ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS−PW)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ−PW)等が挙げられる(いずれも四国化成(株)製)。
【0064】
前記トリフェニルフォスフィン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p−メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン等のトリオルガノフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(商品名;TPP−PB)、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−MC)、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MOC)、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−ZC)等が挙げられる(いずれも北興化学社製)。また、前記トリフェニルフォスフィン系化合物としては、エポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示すものであることが好ましい。エポキシ樹脂に対し非溶解性であると、熱硬化が過度に進行するのを抑制することができる。トリフェニルフォスフィン構造を有し、かつエポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示す熱硬化触媒としては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)等が例示できる。なお、前記「非溶解性」とは、トリフェニルフォスフィン系化合物からなる熱硬化触媒がエポキシ樹脂からなる溶媒に対し不溶性であることを意味し、より詳細には、温度10〜40℃の範囲において10重量%以上溶解しないことを意味する。
【0065】
前記トリフェニルボラン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリ(p−メチルフェニル)フォスフィン等が挙げられる。また、トリフェニルボラン系化合物としては、更にトリフェニルフォスフィン構造を有するものも含まれる。当該トリフェニルフォスフィン構造及びトリフェニルボラン構造を有する化合物としては特に限定されず、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリボレート(商品名;TPP−MK)、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−ZK)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(商品名;TPP−S)等が挙げられる(いずれも北興化学社製)。
【0066】
前記アミノ系化合物としては特に限定されず、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレート(ステラケミファ(株)製)、ジシアンジアミド(ナカライテスク(株)製)等が挙げられる。
【0067】
前記トリハロゲンボラン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリクロロボラン等が挙げられる。
【0068】
(他の添加剤)
なお、本実施形態の接着フィルムには、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば灘燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0069】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0070】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0071】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0072】
熱硬化前の接着フィルム40の25℃における貯蔵弾性率は、10MPa以上10000MPa以下が好ましく、50MPa以上7000MPa以下がより好ましく、100MPa以上5000MPa以下がさらに好ましい。上記上限の採用により、接着フィルムとしての柔軟性を付与することができる。同時に、上記下限の採用により、ダイシング後ピックアップ前の時点で、隣接する接着フィルム付き半導体素子の接着フィルム同士が、再融着することを防ぐことができる。このように25℃における貯蔵弾性率を上記範囲とすることで、接着フィルムとしての柔軟性とピックアップ性を良好することができる。貯蔵弾性率の測定方法は実施例記載の通りである。
【0073】
<ダイシングフィルム>
ダイシングフィルム32は、上述の通り、基材33上に粘着剤層34が積層された構造を有している。
【0074】
(基材)
上記基材33はダイシングフィルム付き接着フィルム40の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。粘着剤層34が紫外線硬化型である場合、基材33は紫外線に対し透過性を有するものが好ましい。
【0075】
また基材33の材料としては、上記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。上記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材33を熱収縮させることにより粘着剤層34と接着フィルム40との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0076】
基材33の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0077】
基材33は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材33には、帯電防止能を付与するため、上記の基材1上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材33は単層又は2種以上の複層でもよい。
【0078】
基材33の厚さは、フィルムの搬送性を確保し、且つ、ピックアップ工程での拡張時においても裂け・破れ・塑性変形の発生を防止するために、50〜150μmが好ましく、より好ましくは、80〜140μmであり、さらに好ましくは、100〜130μmである。
【0079】
なお、基材33には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤等)が含まれていてもよい。
【0080】
(粘着剤層)
粘着剤層34の形成に用いる粘着剤は、接着フィルム40を剥離可能に制御できるものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性接着剤を用いることができる。上記感圧性接着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0081】
上記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステルを主モノマー成分として用いたものが挙げられる。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0082】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどがあげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0083】
さらに、上記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0084】
上記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0085】
また、上記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、10重量部程度以下、さらには0.1〜10重量部配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、上記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0086】
粘着剤層34は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、粘着剤層34の半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分のみを紫外線照射することにより他の部分との粘着力の差を設けることができる。
【0087】
ここで、接着フィルム40は、平面視で貼り付ける半導体ウェハと同一の形状又は1まわり大きい形状とすることができる。この場合、接着フィルム40の形状に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層34を硬化させることにより、半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分の粘着力を容易に低下させることができる。粘着力の低下した前記部分に接着フィルム40が貼付けられる為、粘着剤層34の前記部分と接着フィルム40との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、紫外線を照射していない部分は十分な粘着力を有している。紫外線を照射していない部分には、ウェハリングが固定される。
【0088】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、上記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化性粘着剤を例示できる。
【0089】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その重量平均分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、上記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0090】
また、放射線硬化型粘着剤としては、上記説明した添加型の放射線硬化性粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化性粘着剤があげられる。内在型の放射線硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0091】
上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、上記例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
【0092】
上記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法があげられる。
【0093】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと上記化合物のいずれの側にあってもよいが、上記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、上記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0094】
上記内在型の放射線硬化性粘着剤は、上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に上記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0095】
上記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェニル−1,2―プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0096】
なお、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層34の表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、上記粘着剤層34の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0097】
粘着剤層34の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の観点から1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜40μm、さらには好ましくは5〜30μmである。
【0098】
また、基材33の厚さと粘着剤層34の厚さの合計、すなわち、ダイシングフィルム32の厚みは、搬送性、チップ切断面の欠け防止や接着フィルムの固定保持の観点、ピックアップ性の観点から55〜180μmが好ましく、より好ましくは、70〜150μmであり、さらに好ましくは、100〜130μmである。
【0099】
(セパレータ)
セパレータ22には、複数のダイシングフィルム付き接着フィルム30が積層される(
図2(a)参照)。セパレータ22は、本発明のセパレータに相当する。セパレータ22は、実用に供するまで接着フィルム40を保護する保護材としての機能を有している。ダイシングフィルム付き接着フィルム30は、接着フィルム40上に半導体ウェハを貼着する際にセパレータ22から剥がされる。セパレータ22としては、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム、紙等が使用可能である。
【0100】
セパレータ22の25℃での引張貯蔵弾性率は1GPa以上であることが好ましく、1GPa〜10GPaの範囲内がより好ましく、1GPa〜5GPaの範囲内がさらに好ましい。セパレータ22の25℃での引張貯蔵弾性率を1GPa以上にすることにより、接着フィルム40へのセパレータ22を介した巻き跡の転写がより抑制できる。また、セパレータ22の25℃での引張貯蔵弾性率を10GPa以下にすることにより、接着フィルム40のセパレータ22のへの貼り合わせの際にセパレータ22に折れが発生することをより抑制することができ、接着フィルム40を傷つけたり、フィルム間に気泡が混入することを防止することができる。
【0101】
セパレータ22の厚さは、10〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましく、30〜40μmであることがさらに好ましい。前記セパレータの厚さが10μm以上であると、セパレータを介した巻き跡の転写がより抑制できる。一方、前記セパレータの厚さが60μm以下であると、半導体装置用フィルムロールの径の増大を抑制できる。
【0102】
<半導体装置用フィルムの製造方法>
次に、本実施形態に係る半導体装置用フィルム20の製造方法について、以下に説明する。
図4(a)〜
図4(c)は、半導体装置用フィルムの製造過程を説明するための概略図である。
本実施の形態に係る半導体装置用フィルム20の製造方法は、基材33上に粘着剤層34を形成してダイシングフィルム32を作製する工程と、基材セパレータ42上に接着フィルム40を形成する工程と、接着フィルム40を、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜く工程と、ダイシングフィルム32の粘着剤層34と接着フィルム40を貼り合わせ面として積層させる工程と、リングフレームに対応した円形状にダイシングフィルム32を打ち抜く工程と、接着フィルム40上の基材セパレータ42を剥離することによりダイシングフィルム付き接着フィルム30を作製する工程と、セパレータ22上に、所定の間隔をおいてダイシングフィルム付き接着フィルム30を貼り合わせる工程とを含む。
【0103】
ダイシングフィルム32の作製工程は、例えば、次の通りにして行われる。先ず、基材33は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0104】
次に、基材33上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層34を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて適宜設定され得る。具体的には、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、第1基材セパレータ38上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層34を形成してもよい。その後、基材33上に粘着剤層34を第1基材セパレータ38と共に貼り合わせる。これにより、第1基材セパレータ38で粘着剤層34が保護されたダイシングフィルム32が作製される(
図4(a)参照)。作製されたダイシングフィルム32は、ロール状に巻回された長尺の形態を有していてもよい。この場合、ダイシングフィルム32に弛みや巻ズレ、位置ズレが生じない様に、その長手方向や幅方向に引張張力を加えながら巻回するのが好ましい。但し、引張張力を加えることにより、ダイシングフィルム32は引張残留歪みが残存した状態でロール状に巻回される。尚、ダイシングフィルム32の巻き取りの際に、前記引張張力が加わることによりダイシングフィルム32が延伸される場合があるが、巻き取りは延伸操作を目的とするものではない。
【0105】
粘着剤層34として、紫外線硬化型粘着剤からなり、かつ、予め紫外線硬化されたものを採用する場合は、次の通りにして形成する。即ち、基材33上に紫外線硬化型の粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層を形成する。塗布方法、塗布条件、及び乾燥条件は前記と同様に行うことができる。また、第1基材セパレータ38上に紫外線硬化型の粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層を形成してもよい。その後、基材33上に粘着剤層を転写する。更に、粘着剤層に所定条件下で紫外線を照射してもよい。紫外線の照射条件としては特に限定されないが、通常は積算光量が30〜1000mJ/cm
2となる範囲内が好ましく、50〜800mJ/cm
2となる範囲内がより好ましく、100〜500mJ/cm
2となる範囲内がさらに好ましい。積算光量を前記数値範囲内に調節することで、接着フィルム40とダイシングフィルム32の間の剥離力を適当な値に制御することができる。
【0106】
接着フィルム40の作製工程は次の通りにして行われる。即ち、接着フィルム40を形成するための接着剤組成物溶液を基材セパレータ42上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成する。その後、塗布膜を所定条件下で乾燥させ、接着フィルム40を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて適宜設定され得る。具体的には、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、第2セパレータ44上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて接着フィルム40を形成してもよい。その後、基材セパレータ42上に接着フィルム40を第2セパレータ44と共に貼り合わせる。これにより、基材セパレータ42上に接着フィルム40及び第2セパレータ44が順次積層された積層フィルムが作製される(
図4(b)参照)。この積層フィルムは、ロール状に巻回された長尺の形態を有していてもよい。この場合、接着フィルム40に弛みや巻ズレ、位置ズレが生じない様に、その長手方向や幅方向に引張張力を加えながら巻回するのが好ましい。
【0107】
次に、接着フィルム40を、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜き、ダイシングフィルム32に所定の間隔をあけて複数貼り合わせる(
図4(c)参照)。即ち、ダイシングフィルム32から第1基材セパレータ38を剥離すると共に、打ち抜かれた接着フィルム40から第2セパレータ44を剥離し、接着フィルム40と粘着剤層34とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる。このとき、ダイシングフィルム32又は接着フィルム40の少なくとも何れか一方に対し、周縁部に引張張力を加えながら圧着を行う。また、ダイシングフィルム32がロール状に巻回された長尺のものである場合、ダイシングフィルム32に対しては、その長手方向において極力引張張力を加えずに搬送するのが好ましい。フィルムの引張残留歪みを抑制するためである。但し、ダイシングフィルム32に弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生を防止する観点からは、10〜25Nの範囲内で引張張力を加えてもよい。当該範囲内であれば、ダイシングフィルム32に引張残留歪みが残存していても、ダイシングフィルム32と接着フィルム40の間の界面剥離が発生するのを防止することができる。
【0108】
また、ダイシングフィルム32と接着フィルム40の貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は30〜80℃が好ましく、30〜60℃がより好ましく、30〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。
【0109】
次に、接着フィルム40上の基材セパレータ42を剥離し、引張り張力を加えながらセパレータ22に貼り合せる。続いて、所定の間隔をおいてリングフレームに対応した円形状にダイシングフィルム32を打ち抜く。これにより、プリカットされたダイシングフィルム付き接着フィルム30が所定の間隔をおいてセパレータ22に積層された半導体装置用フィルム20(
図2(a)参照)が作製される。
【0110】
ダイシングフィルム付き接着フィルム30(接着フィルム40)のセパレータ22への貼り合わせは、圧着により行うことが好ましい。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましく、20〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、0.2〜10kgf/cmがより好ましい。
【0111】
なお、ダイシングフィルム32の粘着剤層34上に貼り合わされる第1基材セパレータ38、接着フィルム40の基材セパレータ42、及びその接着フィルム40上に貼り合わされる第2セパレータ44としては特に限定されず、従来公知の離型処理されたフィルムを用いることができる。第1基材セパレータ38及び第2セパレータ44は、それぞれ保護材としての機能を有している。また、基材セパレータ42は、接着フィルム40をダイシングフィルム32の粘着剤層34上に転写する際の基材としての機能を有している。これらの各フィルムを構成する材料としては特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
【0112】
<半導体装置の製造方法>
[第1実施形態]
第1実施形態では、被着体と第1半導体素子との電気的接続をワイヤーボンディング接続により図る態様を説明する。
【0113】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第1固定工程及び第1ワイヤーボンディング工程を経て、少なくとも1つの第1半導体素子が実装(固定)された被着体を予め準備しておき(被着体準備工程)、この第1半導体素子を、ダイシング及びピックアップを経た接着フィルムにより、前記第1半導体素子を包埋しながら前記第1半導体素子とは異なる第2半導体素子を前記被着体に固定する。
図5A〜
図5Hは、それぞれ本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
【0114】
(第1固定工程)
図5Aに示すように、第1固定工程では、少なくとも1つの第1半導体素子52を被着体50上に固定する。第1半導体素子52は第1接着フィルム54を介して被着体50に固定されている。
図5A中では第1半導体素子52は、1つのみ示されているものの、目的とする半導体装置の仕様に応じて2つ、3つ、4つ又は5つ以上の複数の第1半導体素子52を被着体50に固定してもよい。
【0115】
(第1半導体素子)
第1半導体素子52としては、第2段目に積層される半導体素子(第2半導体素子62;
図5F参照)より平面視寸法が小さい素子であれば特に限定されず、例えば半導体素子の一種であるコントローラやメモリチップやロジックチップを好適に用いることができる。コントローラは積層されている各半導体素子の作動を制御することから、一般的に多数のワイヤーが接続される。半導体パッケージの通信速度はワイヤー長の影響を受けるところ、本実施形態では第1半導体素子52が被着体50に固定され最下段に位置するので、ワイヤー長を短縮することができ、これにより半導体素子の積層数を増加させても半導体パッケージ(半導体装置)の通信速度の低下を抑制することができる。
【0116】
第1半導体素子52の厚さは特に限定されないものの、通常100μm以下の場合が多い。また、近年の半導体パッケージの薄型化に伴い75μm以下、さらには50μm以下の第1半導体素子52も用いられつつある。
【0117】
(被着体)
被着体50としては、基板やリードフレーム、他の半導体素子等が挙げられる。基板としては、プリント配線基板等の従来公知の基板を使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本実施形態はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0118】
(第1接着フィルム)
第1接着フィルム54としては、前記包埋用接着フィルムを用いてもよく、従来公知の半導体素子固定用の接着フィルムを用いてもよい。ただし、包埋用接着フィルムを用いる場合、第1接着フィルム54は半導体素子を包埋する必要がないので、厚さを5μmから60μm程度に薄くして用いればよい。
【0119】
(固定方法)
図5Aに示すように、第1半導体素子52を、第1接着フィルム54を介して被着体50にダイボンドする。第1半導体素子52を被着体50上に固定する方法としては、例えば被着体50上に第1接着フィルム54を積層した後、この第1接着フィルム54上に、ワイヤーボンド面が上側となるようにして第1半導体素子52を積層する方法が挙げられる。また、予め第1接着フィルム54が貼り付けられた第1半導体素子52を被着体50上に配置して積層してもよい。
【0120】
第1接着フィルム54は半硬化状態であるので、第1接着フィルム54の被着体50上への載置後、所定条件下での熱処理を行うことにより、第1接着フィルム54を熱硬化させて第1半導体素子52を被着体50上に固定させる。熱処理を行う際の温度は、100〜200℃で行うのが好ましく、120℃〜180℃の範囲内で行うのがより好ましい。また、熱処理時間は0.25〜10時間で行うことが好ましく、0.5〜8時間で行うことがより好ましい。
【0121】
(第1ワイヤーボンディング工程)
第1ワイヤーボンディング工程は、被着体50の端子部(例えばインナーリード)の先端と第1半導体素子52上の電極パッド(図示せず)とをボンディングワイヤー56で電気的に接続する工程である(
図5B参照)。ボンディングワイヤー56としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となるように加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。
【0122】
(ウェハ貼合せ工程)
一方、半導体装置用フィルムロール10から、ダイシングフィルム付き接着フィルム30を剥離する。次に、
図5Cに示すように、ダイシングフィルム付き接着フィルム30における包埋用接着フィルム40上に半導体ウェハ60を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼合せ工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0123】
(ダイシング工程)
次に、
図5Dに示すように、半導体ウェハ60のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ60を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ62を製造する(ダイシング工程)。ダイシングは、例えば半導体ウェハ60の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシングフィルム32まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、ダイシングフィルム付き接着フィルム30により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ60の破損も抑制できる。また、包埋用接着フィルム40を用いているので、ダイシング後の再接着を防止することができ、次のピックアップ工程を良好に行うことができる。
【0124】
(ピックアップ工程)
図5Eに示すように、ダイシングフィルム付き接着フィルム30に接着固定された半導体チップ62を剥離するために、包埋用接着フィルム40とともに半導体チップ62のピックアップを行う(ピックアップ工程)。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ62を基材33側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ62をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0125】
ここでピックアップは、粘着剤層34が紫外線硬化型の場合、該粘着剤層34に紫外線を照射した後に行ってもよい。これにより、粘着剤層34の接着フィルム40に対する粘着力が低下し、半導体チップ62の剥離が容易になる。その結果、半導体チップを損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ等を使用することができる。また、粘着剤層34に予め紫外線が照射されている場合には、紫外線照射を行なうことなくピックアップを行なってもよい。
【0126】
(第2固定工程)
第2固定工程では、第2半導体素子62とともにピックアップした包埋用接着フィルム40を介して、別途被着体50上に固定しておいた第1半導体素子52を包埋しながら前記第1半導体素子52とは異なる第2半導体素子62を前記被着体50に固定する(
図5F参照)。包埋用接着フィルム40は、前記第1半導体素子52の厚さT
1より厚い厚さTを有している。本実施形態では、前記被着体50と前記第1半導体素子52との電気的接続がワイヤーボンディング接続により達成されることから、前記厚さTと前記厚さT
1との差を40μm以上260μm以下が好ましい。前記厚さTと前記厚さT
1との差の下限は40μm以上が好ましいものの、50μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましい。また、前記厚さTと前記厚さT
1との差の上限は260μm以下が好ましいものの、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。これにより、半導体装置全体の薄型化を図りながらも、第1半導体素子52と第2半導体素子62との接触を防止しつつ第1半導体素子52全体を包埋用接着フィルム40の内部に包埋することができ、コントローラとしての第1半導体素子52の被着体50上への固定(すなわちワイヤー長が最短となる最下段での固定)を可能にする。
【0127】
包埋用接着フィルム40の厚さTは第1半導体素子52を包埋可能なように第1半導体素子52の厚さT
1及びワイヤー突出量を考慮して適宜設定すればよいが、その下限は80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、620μm以上がさらに好ましい。一方、厚さTの上限は300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。このように接着フィルムを比較的厚くすることにより、一般的なコントローラの厚さをほぼカバーすることができ、第1半導体素子52の包埋用接着フィルム40への包埋を容易に行うことができる。
【0128】
(第2半導体素子)
第2半導体素子62としては特に限定されず、例えばコントローラとしての第1半導体素子52の作動制御を受けるメモリチップを用いることができる。
【0129】
(固定方法)
第2半導体素子62を被着体50上に固定する方法としては、第1固定工程と同様に、例えば被着体50上に包埋用接着フィルム40を積層した後、この包埋用接着フィルム40上に、ワイヤーボンド面が上側となるようにして第2半導体素子62を積層する方法が挙げられる。また、予め包埋用接着フィルム40が貼り付けられた第2半導体素子62を被着体50に配置して積層してもよい。
【0130】
第1半導体素子52の包埋用接着フィルム40への進入及び包埋を容易にするために、ダイボンド時には包埋用接着フィルム40に対する加熱処理を行うことが好ましい。加熱温度としては包埋用接着フィルム40が軟化し、かつ完全に熱硬化しない温度であればよく、80℃以上150℃以下が好ましく、100℃以上130℃以下がより好ましい。このとき0.1MPa以上1.0MPa以下で加圧してもよい。
【0131】
包埋用接着フィルム40は半硬化状態であるので、包埋用接着フィルム40の被着体50上への載置後、所定条件下での熱処理を行うことにより、包埋用接着フィルム40を熱硬化させて第2半導体素子62を被着体50上に固定させる。熱処理を行う際の温度は、100〜200℃で行うのが好ましく、120℃〜180℃の範囲内で行うのがより好ましい。また、熱処理時間は0.25〜10時間で行うことが好ましく、0.5〜8時間で行うことがより好ましい。
【0132】
このとき、熱硬化後の包埋用接着フィルム40の被着体50に対する剪断接着力は、25〜250℃において0.1MPa以上であることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましい。包埋用接着フィルム40の剪断接着力を0.1MPa以上とすると、第2半導体素子62に対するワイヤーボンディング工程における超音波振動や加熱により、包埋用接着フィルム40と第2半導体素子62又は被着体50との接着面でのずり変形の発生を抑制できる。すなわち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により第2半導体素子62が動くのを抑制し、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止することができる。
【0133】
(第3固定工程)
第3固定工程では、前記第2半導体素子62上に該第2半導体素子と同種又は異種の第3半導体素子73を固定する(
図5G参照)。第3半導体素子73は第3接着フィルム74を介して第2半導体素子62に固定されている。
【0134】
(第3半導体素子)
第3半導体素子73は、第2半導体素子62と同種のメモリチップや第2半導体素子62と異種のメモリチップであってもよい。第3半導体素子73の厚さも目的とする半導体装置の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0135】
(第3接着フィルム)
第3接着フィルム74としては、第1固定工程における第1接着フィルム54と同様のものを好適に用いることができる。第3接着フィルム74として包埋用接着フィルム40を用いる場合は、他の半導体素子の包埋が不要であるので、厚さを5μmから60μm程度に薄くして用いればよい。
【0136】
(固定方法)
図5Gに示すように、第3半導体素子73を、第3接着フィルム74を介して第2半導体素子62にダイボンドする。第3半導体素子73を第2半導体素子62上に固定する方法としては、例えば第2半導体素子62上に第3接着フィルム74を積層した後、この第3接着フィルム74上に、ワイヤーボンド面が上側となるようにして第3半導体素子73を積層する方法が挙げられる。また、予め第3接着フィルム74が貼り付けられた第3半導体素子73を第2半導体素子62上に配置して積層してもよい。ただし、後述する第2半導体素子62と第3半導体素子73との間でのワイヤーボンディングのために、第2半導体素子62のワイヤーボンド面(上面)の電極パッドを避けるように第3半導体素子73を第2半導体素子62に対してずらして固定することがある。この場合、第3接着フィルム74を先に第2半導体素子62の上面に貼り付けておくと、第3接着フィルム74の第2半導体素子62の上面からはみ出た部分(いわゆるオーバーハング部)が折れ曲がって第2半導体素子62の側面や包埋用接着フィルム40の側面に付着し、予期せぬ不具合が生じるおそれがある。従って、第3固定工程では、予め第3接着フィルム74を第3半導体素子73に貼り付けておき、これを第2半導体素子62上に配置して積層することが好ましい。
【0137】
第3接着フィルム74も半硬化状態であるので、第3接着フィルム74の第2半導体素子62上への載置後、所定条件下での熱処理を行うことにより、第3接着フィルム74を熱硬化させて第3半導体素子73を第2半導体素子62上に固定させる。なお、第3接着フィルム74の弾性率やプロセス効率を考慮して、熱処理を行わずに第3半導体素子73を固定させることもできる。熱処理を行う際の温度は、100〜200℃で行うのが好ましく、620℃〜180℃の範囲内で行うのがより好ましい。また、熱処理時間は0.25〜10時間で行うことが好ましく、0.5〜8時間で行うことがより好ましい。
【0138】
(第2ワイヤーボンディング工程)
第2ワイヤーボンディング工程は、第2半導体素子62上の電極パッド(図示せず)と第3半導体素子73上の電極パッド(図示せず)をボンディングワイヤー75で電気的に接続する工程である(
図5H参照)。ワイヤーの材料やワイヤーボンディング条件は第1ワイヤーボンディング工程と同様のものを好適に採用することができる。
【0139】
(半導体装置)
以上の工程により、3つの半導体素子が所定の接着フィルムを介して多段積層された半導体装置100を製造することができる。さらに、第3固定工程及び第2ワイヤーボンディング工程と同様の手順を繰り返すことにより、4つ以上の半導体素子が積層された半導体装置を製造することができる。
【0140】
(封止工程)
所望の数の半導体素子を積層した後、半導体装置100全体を樹脂封止する封止工程を行ってもよい。封止工程は、封止樹脂により半導体装置100を封止する工程である(図示せず)。本工程は、被着体50に搭載された半導体素子やボンディングワイヤーを保護するために行われる。本工程は、例えば封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本実施形態はこれに限定されず、例えば165〜185℃で数分間キュアすることができる。また本工程に於いては、樹脂封止の際に加圧してもよい。この場合、加圧する圧力は1〜15MPaであることが好ましく、3〜10MPaであることがより好ましい。
【0141】
(後硬化工程)
本実施形態においては、封止工程の後に、封止樹脂をアフターキュアする後硬化工程を行ってもよい。本工程においては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂を完全に硬化させる。本工程における加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。封止工程又は後硬化工程を経ることにより半導体パッケージを作製することができる。
【0142】
[第2実施形態]
第1実施形態では、第1半導体素子の被着体への固定を接着フィルムにより行い、両者間の電気的接続をワイヤーボンディングにより図っていたが、第2実施形態では、第1半導体素子に設けられた突起電極を用いたフリップチップ接続により両者間の固定及び電気的接続を図っている。従って、第2実施形態は、第1固定工程における固定様式のみ第1実施形態と異なるので、以下では主にこの相違点について説明する。
【0143】
(第1固定工程)
本実施形態では、前記第1固定工程において、第1半導体素子81を被着体50にフリップチップ接続により固定する(
図6A参照)。フリップチップ接続では、第1半導体素子81の回路面が被着体50と対向するいわゆるフェイスダウン実装となる。第1半導体素子81にはバンプ等の突起電極83が複数設けられており、突起電極83と被着体50上の電極(図示せず)とが接続されている。また、被着体50と第1半導体素子81との間には、両者間の熱膨張率の差の緩和や両者間の空間の保護を目的として、アンダーフィル材84が充填されている。
【0144】
接続方法としては特に限定されず、従来公知のフリップチップボンダーにより接続することができる。例えば、第1半導体素子81に形成されているバンプ等の突起電極83を、被着体50の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、第1半導体素子81と被着体50との電気的導通を確保し、第1半導体素子81を被着体50に固定させることができる(フリップチップボンディング)。一般的に、フリップチップ接続の際の加熱条件としては240〜300℃であり、加圧条件としては0.5〜490Nである。
【0145】
突起電極83としてバンプを形成する際の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0146】
アンダーフィル材84としては従来公知の液状又はフィルム状のアンダーフィル材を用いることができる。
【0147】
(第2固定工程)
第2固定工程では、第1実施形態と同様、包埋用接着フィルム40により、前記第1半導体素子81を包埋しながら前記第1半導体素子81とは異なる第2半導体素子62を前記被着体50に固定する(
図6B参照)。本工程における条件は第1実施形態での第2固定工程と同様である。本実施形態でも、特定の溶融粘度を有する包埋用接着フィルム40を用いているので、第2半導体素子62からのフィルムはみ出しを防止しつつ、包埋用接着フィルム40の被着体50への密着性を高めてボイドの発生を防止することができる。
【0148】
包埋用接着フィルム40は、前記第1半導体素子81の厚さT
1より厚い厚さTを有している。本実施形態では前記被着体50と前記第1半導体素子81とがフリップチップ接続されることから、前記厚さTと前記厚さT
1との差は10μm以上200μm以下が好ましい。前記厚さTと前記厚さT
1との差の下限は10μm以上が好ましいものの、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、前記厚さTと前記厚さT
1との差の上限は200μm以下が好ましいものの、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。このような構成により、半導体装置全体の薄型化を図ると同時に、第1半導体素子81と第2半導体素子62との接触を防止しつつ第1半導体素子81全体を包埋用接着フィルム40の内部に包埋することができ、コントローラとしての第1半導体素子81の被着体50上への固定(すなわち通信経路長が最短となる最下段での固定)を可能にする。
【0149】
包埋用接着フィルム40の厚さTは第1半導体素子81を包埋可能なように第1半導体素子81の厚さT
1及び突起電極の高さを考慮して適宜設定すればよいが、その下限は50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。一方、厚さTの上限は250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。このように包埋用接着フィルム40を比較的厚くすることにより、一般的なコントローラの厚さをほぼカバーすることができ、第1半導体素子81の包埋用接着フィルム40への包埋を容易に行うことができる。
【0150】
続いて第1実施形態と同様、第2半導体素子62上に該第2半導体素子62と同種又は異種の第3半導体素子73を固定する第3固定工程(
図6C参照)、及び前記第2半導体素子62と前記第3半導体素子73とをボンディングワイヤー75により電気的に接続する第2ワイヤーボンディング工程(
図6D参照)を経ることにより、コントローラが最下段に積層され、その上方に半導体素子が複数段積層された半導体装置200を作製することができる。
【0151】
(その他の実施形態)
第1実施形態では、ダイシングフィルム付き接着フィルムを用いるダイシング工程及びピックアップ工程を経て第2半導体素子62を作製している。さらに、第1半導体素子52も同様にダイシングフィルム付き接着フィルムを用いて作製してもよい。この場合、第1半導体素子52を切り出すための半導体ウェハを別途準備し、その後は上記ウェハ貼合せ工程、ダイシング工程、ピックアップ工程を経て、第1半導体素子52を被着体50に固定すればよい。第3半導体素子73及びこれより上段に積層される半導体素子も同様に作製することができる。
【0152】
被着体上に半導体素子を3次元実装する場合、半導体素子の回路が形成される面側には、バッファーコート膜が形成されていてもよい。当該バッファーコート膜としては、例えば窒化珪素膜やポリイミド樹脂等の耐熱樹脂からなるものが挙げられる。
【0153】
各実施形態においては、第2半導体素子以降の半導体素子を積層する度にワイヤーボンディング工程を行う態様について説明したが、複数の半導体素子を積層させた後に、一括してワイヤーボンディング工程を行うことも可能である。なお、第1半導体素子については包埋用接着フィルムにより包埋されるので、一括のワイヤーボンディングの対象とすることはできない。
【0154】
フリップチップ接続の態様としては、第2実施形態で説明した突起電極としてのバンプによる接続に限定されず、導電性接着剤組成物による接続や、バンプと導電性接着剤組成物とを組み合わせた突起構造による接続等も採用することができる。なお、本発明では、第1半導体素子の回路面が被着体と対向して接続されるフェイスダウン実装となる限り、突起電極や突起構造等の接続様式の相違にかかわらずフリップチップ接続と称することとする。導電性接着剤組成物としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に金、銀、銅等の導電性フィラーを混合させた従来公知の導電性ペースト等を用いることができる。導電性接着剤組成物を用いる場合、被着体への第1半導体素子の搭載後、80〜150℃で0.5〜10時間程度熱硬化処理することにより第1半導体素子を固定することができる。
【0155】
上述した実施形態では、本発明の接着フィルムが、被着体上に固定された第1半導体素子を包埋し、かつ該第1半導体素子とは異なる第2半導体素子を被着体に固定するための包埋用の接着フィルム(
図4Fに示す接着フィルム40)である場合について説明した。しかしながら、本発明の接着フィルムはこの例に限定されず、半導体素子を被着体に固定するためのダイボンドフィルム(例えば、
図5Aに示す第1接着フィルム54)であってもよい。
また、本発明の接着フィルムは、フリップチップ型半導体裏面用フィルムとして用いることもできる。フリップチップ型半導体裏面用フィルムとは、被着体(例えば、リードフレームや回路基板等の各種基板)上にフリップチップ接続された半導体素子(例えば、半導体チップ)の裏面に形成するために用いられるものである。
また、本発明の接着フィルムは、半導体素子を封止するための封止フィルムであってもよい。
【実施例】
【0156】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0157】
[実施例及び比較例]
(接着フィルムの作製)
表1に示した割合でアクリル樹脂A、エポキシ樹脂A及びB、フェノール樹脂、シリカ、及び熱硬化触媒をメチルエチルケトンに溶解して濃度40〜50重量%の接着剤組成物溶液を調製した。
【0158】
この接着剤組成物溶液を、剥離ライナとしてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ30〜45μmのフィルムを作製し、これを複数枚貼り合せることによって、表1に示す通りの厚さの接着フィルムを作製した。具体的に、厚さ120μmの接着フィルムは、厚さ40μmのフィルムを3枚貼り合わせて作成した。厚さ80μmの接着フィルムは、厚さ40μmのフィルムを2枚貼り合わせて作成した。厚さ150μmの接着フィルムは、厚さ40μmのフィルムを3枚と厚さ30μmのフィルムを1枚貼り合わせて作成した。厚さ135μmの接着フィルムは、厚さ45μmのフィルムを3枚貼り合わせて作成した。
ラミネーター装置:ロールラミネーター
ラミネート速度:10mm/min
ラミネート圧力:0.15MPa
ラミネーター温度:60℃
【0159】
なお、下記表1中の略号及び成分の詳細は以下のとおりである。
アクリル樹脂A:ナガセケムテックス社製 SG−70L
エポキシ樹脂A:東都化成株式会社製 KI−3000
エポキシ樹脂B:三菱化学株式会社製 JER YL980
フェノール樹脂:明和化成株式会社製 MEH−7800H
シリカ :アドマテックス株式会社製 SE−2050MC
熱硬化触媒 :北興化学株式会社製 TPP−K
【0160】
(接着フィルムの熱硬化前の25℃での弾性率)
熱硬化前の各接着フィルムについて、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RSA−II)を用いて25℃における貯蔵弾性率を測定した。より詳細には、接着フィルムを切断してサンプルサイズを長さ30mm×幅10mmとし、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし−30〜100℃の温度域で周波数1.0Hz、歪み0.025%、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、25℃での測定値を読み取ることにより得た。結果を表1に示す。
【0161】
(ダイシングフィルムの作製)
基材として、厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備した。
【0162】
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう。)86.4部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)13.6部、過酸化ベンゾイル0.2部、及びトルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0163】
アクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう。)14.6部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0164】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤組成物溶液を得た。
【0165】
準備した上記基材上に、得られた粘着剤組成物溶液を塗布、乾燥して厚さ30μmの粘着剤層を形成することによりダイシングフィルムを得た。
【0166】
(ダイシングフィルム付き接着フィルムの作製)
次に、前記接着フィルムを直径330mmの円形状に切り出し、前記ダイシングフィルムの粘着剤層と円形状に切り出した接着フィルムとを貼り合わせた。貼り合わせ枚数は、表1に示す通りとした。貼り合わせ条件(ラミネート条件1)は、下記の通りである。
<ラミネート条件1>
ラミネーター装置:ロールラミネーター
ラミネート速度:10mm/sec
ラミネート圧力:0.15MPa
ラミネーター温度:35℃
【0167】
次に、接着フィルム上の離型処理フィルムを剥離して、セパレータを貼り合わせた。セパレータとしては、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を用いた。このとき、位置ズレ、ボイド(気泡)等が発生するのを防止するため、セパレータに対し、ダンサーロールを用いて17Nの引張張力をMD方向に加えながら、ラミネート温度はかけずに、線圧2kgf/cmで貼り合せた。
【0168】
<半導体装置用フィルムの作製>
更に、接着フィルムが中心となるように直径370mmの円形状にダイシングフィルムを打ち抜くことにより、セパレータ上に、10mmの間隔をあけて表1に示す枚数のダイシングシート付き接着フィルムが貼り合わされた半導体装置用フィルムを得た。
【0169】
<半導体装置用フィルムロールの作成>
作成した半導体装置用フィルムを、直径が8.9cmの巻き芯に巻き取った。このときの半導体装置用フィルムに加えた巻き取り張力は、15N/mとした。また、巻き取り後のフィルムロールの直径は表1に示す通りである。これにより半導体装置用フィルムロールを得た。
【0170】
(ウェハラミネート後の気泡の有無評価)
実施例及び比較例の半導体装置用フィルムロールから、ダイシングフィルム付き接着フィルムを剥離した。具体的には、巻き始めから数えて、5枚目のダイシングフィルム付き接着フィルムを剥離した。次に、剥離したダイシングフィルム付き接着フィルムを、片面バンプ付きシリコンウェハの回路面と反対側の面に、接着フィルムを貼り合わせ面として貼り合わせた。片面バンプ付きシリコンウェハとしては、以下のものを用いた。また、貼り合わせ条件は以下の通りである。
【0171】
<片面バンプ付きシリコンウェハ>
シリコンウェハの厚さ:100μm
低誘電材料層の材質:SiN膜
低誘電材料層の厚さ:0.3μm
バンプの高さ:60μm
バンプのピッチ:150μm
バンプの材質:ハンダ
【0172】
<貼り合わせ条件>
貼り合わせ装置:DR−3000III(日東精機(株)社製)
ラミネート速度:10mm/s
ラミネート圧力:0.15MPa
ラミネーター温度:60℃
【0173】
ウェハラミネート後の気泡の有無の評価を行なった。具体的には、ウェハラミネート後のサンプルをダイシングテープ側から目視し、気泡が残っているものを×、気泡が無いものを○のようにして評価した。結果を表1に示す。
【0174】
(凹凸段差評価)
接着フィルム表面における巻跡の凹凸の測定を行った。具体的には、まず、実施例及び比較例の半導体装置用フィルムロールから、ダイシングフィルム付き接着フィルムを剥離した。巻き始めから数えて、5枚目のダイシングフィルム付き接着フィルムを剥離した。次に、表面荒さ計(Veeco社製、DEKTAK8)を用いて接着フィルム表面の凹凸を測定し、両端を平衡に補正した(0にした)時の最大値の値を読み取った。(測定速度:1.5mm/S,加重:1mg)凹凸が15μmより小さいものを○、15μm以上のものを×とした。
【0175】
【表1】
【課題】 ダイシングフィルム付き接着フィルムが所定の間隔をおいてセパレータ上に積層された半導体装置用フィルムをロール状に巻き取った際の接着フィルムへの転写痕を抑制することが可能な半導体装置用フィルムロールを提供すること。
【解決手段】 半導体装置用フィルムが円柱状の巻き芯にロール状に巻き取られた半導体装置用フィルムロールであって、半導体装置用フィルムは、ダイシングフィルムと接着フィルムとが積層されたダイシングフィルム付き接着フィルムが、所定の間隔をおいてセパレータ上に積層された構成を有しており、セパレータ上に積層されているダイシングフィルム付き接着フィルムの枚数が350枚以下である半導体装置用フィルムロール。