(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714102
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンにおいて使用される翼アセンブリを修理する方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20150416BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20150416BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20150416BHJP
B23P 6/00 20060101ALI20150416BHJP
B23P 17/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D5/14
F01D25/00 X
B23P6/00 Z
B23P17/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-515353(P2013-515353)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-530341(P2013-530341A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】US2011037682
(87)【国際公開番号】WO2011159437
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年6月10日
(31)【優先権主張番号】12/817,400
(32)【優先日】2010年6月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギェヴァ、ペチャ エム
(72)【発明者】
【氏名】ビーデ、ハルシャワルダン エス
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィー、 トーマス エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ムンシ、ムリナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス、スティーヴン ジェイ
【審査官】
寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0269316(US,A1)
【文献】
特開2003−056359(JP,A)
【文献】
特開2008−168420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/00
F01D 5/12−28
B23P 6/00
B23P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンにおいて使用される翼アセンブリを修理する方法であって、前記翼アセンブリは基材によって輪郭が示され、翼と、前記翼が延びるプラットホームとを含んでおり、前記方法は、
ウォータージェットによる材料除去によって前記翼アセンブリの隅肉領域に近接する前記翼アセンブリを起点として前記基材の所定量を除去することを含み、前記隅肉領域は前記翼と前記プラットホームとの間の接合部を含み、前記翼と前記プラットホームとの間の交差部にあり、
前記隅肉領域に近接する以外の前記翼アセンブリの基材を含む前記基材の残りの部分はそのままにしておき、
前記除去は、前記翼の前縁から後縁まで除去される前記基材の量を変化させることを含み、
前記翼の前記前縁および後縁に近接して除去される前記基材の量は、前記翼の前記前縁と後縁との間の中間部の位置において除去される前記基材の量より少ないことを含む方法。
【請求項2】
前記除去は、
前記翼から前記基材の第1の部分を除去し、
前記プラットホームから前記基材の第2の部分を除去することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記翼から前記基材の第1の部分を除去することは、前記翼と前記プラットホームとの間の前記交差部から半径方向外側の25.4mm(1インチ)の位置から開始して基材を除去することを含み、
前記プラットホームから前記基材の第2の部分を除去することは、前記プラットホームの長さに沿って前記翼と前記プラットホームとの交差部から25.4mm(1インチ)の位置まで基材を除去することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記翼の前記前縁に近接して除去される前記基材の量は、前記翼の前記後縁において除去される前記基材の量よりも多い請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記除去後にその結果として生じる構造体の隅肉領域における曲率半径は、少なくとも6.604mm(0.26インチ)である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記除去後にその結果として生じる構造体の前記隅肉領域における前記曲率半径は、前記除去前の前記隅肉領域における曲率半径と同じである請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンで使用される翼アセンブリの修理に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンなどのターボ機械においては、空気が圧縮機部で圧縮され、燃料と混合され、その後、燃焼器部で燃焼されて、高温燃焼ガスを生成する。この高温燃焼ガスはエンジンのタービン部内部で膨張され、その燃焼ガスからエネルギーが取り出されて圧縮機部に動力を供給し、さらに発電機を回転させて電力を生み出すなどの有用な仕事をする。
【0003】
燃焼器部において生成された高温燃焼ガスは、タービン部内部の一連のタービン段を通って移動する。タービン段は、静止翼アセンブリ列、すなわち複数の静翼を備え、その後方に回転翼アセンブリ列、すなわち複数のタービン動翼を備えており、これらのタービン動翼は高温燃焼ガスからエネルギーを取り出し、圧縮機部に動力を供給し、出力パワーを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼アセンブリの一様式であるタービン動翼は根元端部の半径方向内側のプラットホームから翼の半径方向外側の部分まで延びる翼を含み、この翼の前縁および後縁で合流する対向する圧力側壁および吸引側壁を含む。使用後、翼がプラットホームと交差する場所に隣接する領域が過熱および酸化に起因して破損して、すなわち亀裂が生じて、修復や交換が必要となるような状態が見受けられていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ガスタービンエンジンにおいて使用される翼アセンブリを修理する方法が提供される。前記翼アセンブリは基材によって輪郭が示され、翼と、前記翼が延び出すプラットホームとを含む。ウォータージェットによる材料除去によって前記翼アセンブリの隅肉領域に近接する前記翼アセンブリを起点として前記基材の所定量を除去する。前記隅肉領域は前記翼と前記プラットホームとの間の接合部を含み、前記翼と前記プラットホームとの間の交差部にある。前記隅肉領域に近接する以外の前記翼アセンブリの基材を含む前記基材の残りの部分はそのままにしておく。前記基材の所定量の除去後にその結果として生じる構造体の隅肉領域における曲率半径は、前記基材の所定量の前記除去前の隅肉領域における曲率半径と少なくとも同一の大きさである。
【0006】
前記基材の所定量の前記除去前に前記翼アセンブリから少なくとも1つの被膜をはがしてもよい。
【0007】
前記基材の所定量の前記除去は、前記翼から前記基材の第1の部分を除去し、前記プラットホームから前記材料の第2の部分を除去することを含んでもよい。
【0008】
前記翼から前記基材の第1の部分を除去することは、前記翼と前記プラットホームとの間の前記交差部から半径方向外側の約1インチの位置から開始して基材を除去することを含んでもよい。
【0009】
前記プラットホームから前記基材の第2の部分を除去することは、前記プラットホームの長さに沿って前記翼と前記プラットホームとの交差部から約1インチの位置まで基材を除去することを含んでもよい。
【0010】
前記基材の所定量の前記除去は、前記基材の外面から測定して約0.030インチから約0.080インチまでの前記隅肉領域の前記基材の深さに対応する材料の量を除去することを含んでもよい。
【0011】
前記基材の所定量の前記除去は、前記基材の外面から測定して約0.060インチの前記隅肉領域の前記基材の深さに対応する材料の量を除去することを含んでもよい。
【0012】
前記基材の所定量の前記除去は、前記翼の前縁から前記翼の後縁まで除去される前記基材の量を変化させることを含んでもよい。
【0013】
前記翼の前記前縁および後縁に近接して除去される前記基材の量は、前記翼の前記前縁と後縁との間の概ね中間部の位置において除去される前記基材の量より少なくてもよい。
【0014】
前記翼の前記前縁に近接して除去される前記基材の量は、前記翼の前記後縁において除去される前記基材の量よりも多くてもよい。
【0015】
前記基材の所定量の前記除去後にその結果として生じる構造体の前記隅肉領域における前記曲率半径は、前記基材の所定量の前記除去前の前記隅肉領域における曲率半径とほぼ同じでよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、ガスタービンエンジンにおいて使用される翼アセンブリを修理する方法が提供される。前記翼アセンブリは基材によって輪郭が示され、翼と、前記翼が延び出すプラットホームとを含む。ウォータージェットによる材料除去によって前記翼アセンブリの隅肉領域に近接する前記翼アセンブリを起点として前記基材の所定量を除去する。前記隅肉領域は前記翼と前記プラットホームとの間の接合部を含み、前記翼と前記プラットホームとの間の交差部にある。前記隅肉領域に近接する以外の前記翼アセンブリの基材を含む前記基材の残りの部分はそのままにしておく。前記基材の所定量の前記除去は、前記翼の前縁から前記翼の後縁まで除去された前記基材の量を変化させることを含む。
【0017】
前記基材の所定量を除去後にその結果として生じる構造体の隅肉領域における曲率半径は、少なくとも約0.26インチでよい。
【0018】
本明細書は本発明を示し、その権利を主張する特許請求の範囲で完結しているが、本発明は以下の添付図面を参照する以下の記載によってより良く理解されるであろう。添付図面において、同一の参照番号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によって修理される翼アセンブリの斜視図である。
【
図2】
図1に示す翼アセンブリの一部の拡大斜視図であって、部分的に断面を示す。
【
図3】本発明の実施形態による翼アセンブリを修理する工程を示すフローチャートである。
【
図4A】
図2の線4−4における断面図で、本発明の実施形態によって翼が修理される前後の翼アセンブリの隅肉領域における曲率半径を図示する。
【
図5】本発明の別の実施形態によって修理される翼アセンブリの一部の拡大斜視図であって、部分的に断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の好適な実施形態の詳細な説明において、その一部をなす添付図面を参照する。添付図面は例示のみを目的とするものであり、本発明が実施される特定の好適な実施形態の限定を意味するものではない。本発明の要旨および範囲を逸脱しない範囲でその他の実施形態も使用可能であり、変更も可能である。
【0021】
図1は、ガスタービンエンジン(不図示)において使用されるように構成された翼アセンブリ10を示す。ガスタービンエンジンの組立て状態において、翼アセンブリ10は回転翼アセンブリ列の1つを形成し、この回転翼アセンブリ列はエンジンのタービン回転子(不図示)を中心として周方向に広がっている。軸方向に離れた複数の回転翼アセンブリ列が典型的に提供される。従来の燃焼器アセンブリ(不図示)において生成される高温燃焼ガスは、複数の翼アセンブリ列を使用するエンジンのタービン部(不図示)に放出される。複数の静止翼を含む静止翼アセンブリ列(不図示)は、高温燃焼ガスを対応する複数の回転翼アセンブリ列に導く。この場合、回転翼アセンブリ列が回転し、それに対応してタービン回転子を回転させる。
【0022】
図1に示す翼アセンブリ10は、一例として示された翼12を含むタービン動翼を含む。翼12は翼アセンブリ10のプラットホーム16から半径方向外側に向かって延びており、本実施形態では、その根元端部14においてプラットホーム16と一体的に接合されている。翼12は、翼アセンブリ10の隅肉領域18においてプラットホーム16と接合されている。隅肉領域18は、翼12とプラットホーム16との間の接合部を含み、翼12とプラットホーム16との交差部19にある。翼アセンブリ10は、プラットホーム16に一体的に接続されている脚17(
図2参照)をさらに含んでいる。脚17は、取付け部(不図示)に接続され、この取付け部は、回転子の一部を形成するロータディスク(不図示)に接合するように構成される。翼アセンブリ10の複数の列は、エンジンの作動中に回転子を回転させるように複数の円板に接合される。
【0023】
図1および
図2に示すように、翼12は、概ね凹形の圧力側壁20と、それに対向する概ね凸形の吸引側壁22とを含む。翼12の圧力側壁20および吸引側壁22は、翼12の前縁24に設けられた第1の位置と、前縁24に対向する翼12の後縁26に設けられた第2の位置とにおいて合流する。圧力側壁20および吸引側壁22は、翼12の対向する前縁24および後縁26の間で、弦方向C、すなわち通常エンジンの軸方向に延びる(
図1参照)。前縁24および後縁26は、翼12の根元端部14から根元端部14に対向する翼12の先端28への距離Sだけ半径方向に延びる(
図1参照)。
【0024】
翼アセンブリ10は基材30によって輪郭が示され、基材30は翼12の構造壁12A、16A、および17A、プラットホーム16、および脚を形成する(
図2参照)。基材30は、翼、プラットホーム、および脚の構造壁、12A、16A、17Aのそれぞれを同じ材料で構成してもよい。基材30は、エンジンのタービン部の高温環境に耐えられる耐高熱材料で構成することが好ましい。例えば、基材30は、ステンレス鋼系合金またはニッケルまたはコバルト系超合金で構成することができる。
【0025】
なお、1つ以上の層または被膜(不図示)を基材30上に施してもよい。例えば、遮熱コーティング(TBC)および接着被膜を基材30上に施して、基材30上に耐高熱被膜を提供してもよい。詳細には後述するように、そのような層または被膜は、本明細書で説明する翼アセンブリを修理する方法の前に基材30からはがすのが好ましい。
【0026】
エンジンの作動時には上述したように、亀裂および/またはその他の表面欠陥が基材30に発生する、すなわち、基材30の過熱および酸化により引き起こされる場合がある。亀裂および/またはその他の表面欠陥が発生しやすいと判明した領域の1つは、翼アセンブリ10の隅肉領域18である。本明細書に記載の翼アセンブリ10を修理する方法を使用すれば、翼アセンブリ10の構造的な剛性を保ちつつ、亀裂/表面欠陥を除去することができる。
【0027】
図3は、
図1および
図2を参照して本明細書に記載された翼アセンブリ10などの翼アセンブリを修理する方法50を示す。本発明の一態様では、修理されるべき翼アセンブリ10は、圧力側壁20および/または吸引側壁22の隅肉領域18に近接して1つ以上の亀裂/表面欠陥が形成される。
【0028】
ステップ52において、TBC被膜や接着被膜などの1つ以上の被膜を翼アセンブリ10からはがす。例えば、化学的な除去処理、例えば酸浴槽に翼アセンブリ10を浸すことによって、TBCおよび接着被膜を除去する。この場合の化学的な除去処理は、基材30に悪影響を及ぼさないものが好ましい。
【0029】
ステップ54において、翼アセンブリ10の基材30の所定量を、従来のウォータージェットフライス盤を用いるなどのウォータージェットによる材料除去によって除去する。本発明の一態様によれば、翼アセンブリ10の隅肉領域18に近接する基材30の部分30A(
図4参照)のみを除去し、隅肉領域18に近接する以外の基材30を含む基材30の残りの部分30B(
図1、2、および4参照)はそのままにしておく。基材30の残りの部分30Bはそのままにしておくので、翼アセンブリ10の構造的な剛性は損なわれない。すなわち、翼アセンブリ10全体に相当する基材30を除去しなければならない場合は、翼アセンブリ10が脆弱となってエンジンにおける動作に耐えられなくなるであろう。
【0030】
本発明の一態様によれば、
図4を参照すると、ステップ54における基材30の所定量の除去は、基材30の第1の部分30A
1を隅肉領域18に近接する翼12を起点として除去し、隅肉領域18に近接するプラットホーム16を起点として基材30の第2の部分30A
2を除去する。一例として、翼12とプラットホーム16との交差部19から半径方向外側の約1インチの位置L
1から開始して基材30の第1の部分30A
1を除去する。基材30の第1の部分30A
1の除去は位置L
1から開始し、翼12とプラットホーム16との交差部19に近接する基材30に向かって徐々に掘削する。交差部19に近接して除去される基材30の量は、約0.030インチから約0.080インチの深さD(
図4参照)に相当し、この深さDは約0.060インチであることが好ましい。ここで深さDは基材部分30Aの除去後の基材30の外面O
S2と基材部分30Aを除去する前の基材30の外面O
S1との距離として計測される。基材30の第2の部分30A
2の除去は、プラットホーム16の横の長さL(
図1参照)に沿って交差部19から約1インチ離れた位置L
2から開始してもよい。除去される基材30の第2の部分30A
2の量は、交差部19に近接する深さDから徐々に減らし、位置L
2において外面O
S2と同化するようにしてもよい。
【0031】
図4Aにおいて、基材部分30Aの除去後の隅肉領域18における翼アセンブリ10の曲率半径R
1は、基材部分30Aの除去前の隅肉領域18における翼アセンブリ10の曲率半径R
2と少なくとも同一であり、好ましくは、ほぼ等しい大きさである。本発明の一態様によれば、曲率半径R
1およびR
2は約0.26インチであるが、翼アセンブリ10の構成およびそれが使用されるエンジンに応じてより大きくしてもよく、または小さくしてもよい。基材部分30Aの除去後の隅肉領域18における曲率半径R
1は基材部分30Aの除去前の隅肉領域18の曲率半径R
2とほぼ等しいので、翼アセンブリ10を通過する高温燃焼ガスの流れの空気力学は、基材部分30Aの除去によって変化することはほぼない。これは、翼アセンブリ10の元のすなわち基材部分30Aの除去前の構成および形状がエンジンのタービン部内を通過する燃焼ガスの効率的な流れを実現するように設計されているので、好ましい。したがって、曲率半径R
2が曲率半径R
1とほぼ等しいので、エンジンのタービン部内を通過する燃焼ガスの効率的な流れは基材部分30Aの除去による悪影響を受けることは考えられない。
【0032】
ステップ54における基材30の所定量のウォータージェットによる材料除去において、隅肉領域18に近接する基材30の亀裂および/またはその他の表面欠陥は除去される。すなわち、亀裂/表面欠陥が位置する基材30を除去することによって、亀裂/表面欠陥自体が除去される。したがって、隅肉領域18に近接した領域での応力集中は低減し、それによって翼アセンブリ10の寿命が延びると考えられる。さらに、隅肉領域18に近接した基材30の厚さTの減少は、隅肉領域18に近接した基材30の温度勾配を減少させると考えられる。例えば、隅肉領域18に近接した基材30の厚さTが薄くなるので、隅肉領域18における翼アセンブリ10の冷却効果が改善される。また、基材30から亀裂/表面欠陥を除去することによって、それらが伝播しないようにして翼アセンブリ10のさらなる破損を防ぐことができる。なお、隅肉領域18に近接した基材30の厚さTの減少は、翼アセンブリ10の構造的な剛性を大幅に損なうとは考えられない。
【0033】
ステップ54におけるウォータージェットによる材料除去によって基材部分30Aを除去したら、ステップ56において翼アセンブリ10を検査して、隅肉領域18に近接した基材30の全ての亀裂/表面欠陥が除去されたことを確認する。除去されていた場合は、翼アセンブリ10をさらなる必要な修復処理を行ってから使用に供することが許される。除去されていなかった場合は、その翼アセンブリ10をテストまたは破棄するために別に取り分けておく。
【0034】
本明細書に記載の方法50は、隅肉領域18に近接して面亀裂および/またはその他の表面欠陥を有する翼アセンブリ10などの翼アセンブリ10を、翼アセンブリ10の構造的な剛性に悪影響を及ぼさずに、修復する効率的かつ低コストの方法を提供する。さらに、ウォータージェットによる材料除去は精密に調整して実行できる。すなわち、ウォータージェットフライス盤を使用すれば、基材部分30Aの除去の精度が高い。
【0035】
なお、本明細書に記載の発明の態様は、修復処理中に実行される。すなわち、隅肉領域18の基材30またはその付近の基材30がエンジン作動中に過熱および酸化に起因して破損した場合などに、破損した翼アセンブリ10を修復/交換する。その代わりに、方法50を実行した後の本明細書に記載の翼アセンブリ10の寸法と適合する寸法の隅肉領域を有するエンジンにおいて、新しい部品として翼アセンブリを提供してもよい。
上述した方法50によって交差部19に近接して除去された基材30の深さDは、翼12の前縁24から後縁26まで通常は一定であるが、交差部19に近接して除去される基材30の深さDは、翼12の前縁24と後縁26との間で変化させてもよい。例えば、
図5は本発明の別の態様による翼アセンブリ10’の隅肉領域18’を示し、
図1〜
図4を参照して上述したものと同様の構造体を同じ参照番号にダッシュ記号(’)を付けて示す。
【0036】
本発明の本態様によれば、翼12’の前縁24’と後縁26’との概ね中間の位置L
O1の交差部19’に近接して除去された基材30’の深さD
1(
図6A参照)は、第1の値、例えば約0.060インチである。翼12’の前縁24’付近の位置L
O2の交差部19’に近接して除去された基材30’の深さD
2(
図6B参照)は、第1の値より小さい第2の値、例えば約0.030インチである。翼12’の後縁26’付近の位置L
O3の交差部19’に近接して除去された基材30’の深さD
3(
図6C参照)は、第2の値より小さい第3の値、例えば約0.015インチである。なお、第1、第2、第3の値は例示の値として本明細書において記載しており、翼アセンブリ10’の構成に応じて変化させてもよいことに留意すべきである。
【0037】
本発明の本態様によれば、除去される基材30’の量は、翼12’の前縁24’から後縁26’にかけて変化させてもよい。これによって、既存の翼アセンブリ10と同様に、各位置L
O2およびL
O3の基材30’の厚さT
2およびT
3よりも、位置L
O1における基材厚さT
1が厚くなっている翼アセンブリ10’は有利である。したがって、隅肉領域18’に近接する基材30の部分30A’の除去後に、翼アセンブリ10’の構造的な剛性が保たれる。
【0038】
本発明の特定の実施形態を図示および説明してきたが、本発明の要旨および範囲を逸脱しない範囲で様々な他の変更および修正が可能であることは、当業者にとって自明であろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にある変更および修正が網羅されている。
【符号の説明】
【0039】
10 翼アセンブリ
12 翼
16 プラットホーム
17 脚
18 隅肉領域