(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714108
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】アルミニウム電解セル用のカソードブロックおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25C 3/08 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
C25C3/08
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-521157(P2013-521157)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-532773(P2013-532773A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2011063082
(87)【国際公開番号】WO2012013772
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年1月25日
(31)【優先権主張番号】102010038669.3
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512298708
【氏名又は名称】エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100182534
【弁理士】
【氏名又は名称】バーナード 正子
(72)【発明者】
【氏名】マーティン クーハー
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌシュ トマラ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヒルトマン
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭57−501377(JP,A)
【文献】
特表昭59−500974(JP,A)
【文献】
特表2001−518977(JP,A)
【文献】
特開平05−263285(JP,A)
【文献】
特開平10−203869(JP,A)
【文献】
特開昭52−119615(JP,A)
【文献】
特表昭61−501456(JP,A)
【文献】
特表2007−538149(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00− 7/08
C04B 35/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトと、TiB2とを含む複合層を含み、
当該TiB2が、単峰性の粒度分布で存在し、d50が、10と20μmとの間であることを特徴とする、アルミニウム電解セル用のカソードブロック。
【請求項2】
上記TiB2のd90は、20と40μmとの間であることを特徴とする、請求項1に記載のカソードブロック。
【請求項3】
上記TiB2のd10は、2と7μmとの間であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカソードブロック。
【請求項4】
上記TiB2粉末の粒度分布のスパン=(d90−d10)/d50は、0.65と3.80との間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のカソードブロック。
【請求項5】
上記複合体層が、カソードブロック全体を形成していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のカソードブロック。
【請求項6】
上記カソードブロックは、少なくとも2つの層を有し、このとき、上記複合体層は上記カソードブロックの上側の層を形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のカソードブロック。
【請求項7】
上記カソードブロックは、上側の層よりも少ないTiB2粉末を含むか、またはTiB2粉末を含まない、少なくとも1つのさらなる層を有していることを特徴とする、請求項6に記載のカソードブロック。
【請求項8】
上記上側の層は、上記カソードブロックの全高の、10から50%の高さを有することを特徴とする、請求項6または7に記載のカソードブロック。
【請求項9】
上記カソードブロックの少なくとも1つの層における嵩密度が、炭素成分に関して、1.68g/cm3より大きいことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のカソードブロック。
【請求項10】
上記嵩密度は、1.71g/cm3より大きいことを特徴とする、請求項9に記載のカソードブロック。
【請求項11】
カソードブロックの製造方法であって、
コークスおよび場合によってはさらなる炭素含有材料、並びに、TiB2粉末を含む出発原料の用意と、当該出発原料の混合と、カソードブロックの成形と、炭化およびグラファイト化と、冷却と、の工程を含み、
単峰性の粒度分布を有し、d50が10と20μmとの間であるTiB2粉末が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
d90が、20と40μmとの間であるTiB2粉末が使用されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
d10が、2と7μmとの間であるTiB2粉末が使用されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
その粒度分布のスパン=(d90−d10)/d50が、0.65と3.80との間であるTiB2粉末が使用されることを特徴とする、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
使用される上記コークスは、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間に、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスを含むことを特徴とする、請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
炭素成分の嵩密度が、1.68g/cm3より大きいカソードブロックが得られることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解セル用のカソードブロックおよびその製造方法に関する。
【0002】
金属アルミニウムの製造方法として、ホール‐エルー法が知られている。この電解法では、電解セルの底部は、典型的には、単一のカソードブロックを複数用いたカソード面により形成されている。上記カソードは、下方から、カソードブロックの下側の同じ長さの細長い凹部に収容されている鋼バーを介して接続されている。
【0003】
カソードブロックの製造は、従来、コークスを、無煙炭、炭素またはグラファイトなどの炭素含有粒子と、混合、圧縮、および炭化することにより行われている。場合により、高温でのグラファイト化工程が続き、これにより、炭素含有粒子およびコークスが、少なくとも部分的にグラファイトに変化する。
【0004】
グラファイト化された炭素およびグラファイトは、しかし、液体アルミニウムに対してぬれにくいか、またはまったくぬれない。これにより、電解セルの所要電流は増大し、これに伴いエネルギー需要も増大する。
【0005】
上記問題を解決するために、これまでに、カソードブロックの上側の層に、TiB
2を含めることが行われている。これは、例えば、DE112006004078に記載されている。このような、TiB
2‐グラファイト‐複合体である上側の層は、溶融アルミニウムと直接接触し、これに伴い、カソードから溶融アルミニウムへの電流注入に対して決定的な意味を持つ。TiB
2およびこれに類似の硬質材料は、グラファイト化された状態におけるカソードのぬれ性の向上を実現し、これに伴い、電解プロセスのエネルギー効率の向上を実現する。加えて、硬質材料は、カソードの嵩密度および硬さを向上させ、その結果、特に、溶融アルミニウムおよび氷晶石融液に対する、耐摩耗性が向上する。
【0006】
TiB
2‐粉末およびこれに類似の硬質材料粉末(耐熱硬質材料(RHM)とも称する。)は、しかし、加工が困難である。これらを用いて製造された、全体的にまたはその上側の層がTiB
2‐グラファイト‐複合体層であるカソードブロックは、加えて、不均質となる傾向がある。
【0007】
したがって、本発明の課題は、溶融アルミニウムに対してぬれ性が良く、優れた耐摩耗性を有し、容易に製造することができるTiB
2‐グラファイト‐複合体‐カソードおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
上記課題は、請求項1に係るカソードブロックにより解決される。
【0009】
本発明に係る、グラファイトと例えばTiB
2などの硬質材料とを含む複合層を含む、アルミニウム電解セル用のカソードブロックは、当該硬質材料が、単峰性の粒度分布で存在し、分布の平均粒度d
50は、10と20μmとの間であり、特に、12と18μmとの間であり、特に、14と16μmとの間であることを特徴としている。
【0010】
驚くべきことに、本発明の枠組みにおいて、かかるd
50によれば、硬質材料粉末は、一方では、グラファイト化後にカソードブロックの非常に良好なぬれ性を実現する大きな活性表面を有し、しかし、他方では、硬質材料粉末の複合体成分としてのグラファイト‐硬質材料‐複合体における加工に好ましくない影響を与えるという欠点を有さないことが明らかになった。本発明において用いられる硬質材料粉末が有していない、上記欠点とは、
‐例えば、粉末の混合容器への充てん時または粉末の輸送時における発塵傾向
‐特に、混合時、例えば、コークスとの湿式混合時(ここでは、湿式混合とは、特に、液相としてのピッチとの混合を意味する。)における凝集粒子の形成
‐硬質材料とコークスとの異なる物質密度に基づく偏析、でありうる。
【0011】
これらの欠点がないことの他にも、本発明において用いられる硬質材料粉末は、特に優れた流動性または注入性を有する。これは、硬質材料粉末を、従来のコンベヤー装置に特に好適なものとし、例えば、混合装置に搬送可能である。
【0012】
10と20μmとの間のd
50、および単峰性の粒度分布を有する硬質材料粉末の優れた加工性により、カソードブロックのための硬質材料粉末複合体の製造は、著しく容易になる。得られたカソードブロックは、生成形品中のコークス、および、グラファイト化されたカソードにおける硬質材料粉末の分布に関して、非常に良好な均質性を示す。
【0013】
より好ましくは、耐火性の硬質材料のd
90は、20と40μmとの間であり、特に、25と30μmとの間である。これにより、硬質材料粉末のぬれ特性および加工特性がさらに向上するという有利な結果が得られる。
【0014】
有利には、耐火性の硬質材料のd
10は、2と7μmとの間であり、特に、3と5μmとの間である。これにより、硬質材料粉末のぬれ特性および加工特性がさらに向上するという有利な結果が得られる。
【0015】
さらに、単峰性の粒度分布の特性決定のために、その分布の幅は、以下のようにして計算される、所謂スパン値により記述することができる。
スパン=(d
90−d
10)/d
50
耐火性の硬質材料粉末のスパンは、有利には、0.65と3.80との間であり、特に、1.00と2.25との間である。これにより、硬質材料粉末のぬれ特性および加工特性がさらに向上するという有利な結果が得られる。
【0016】
有利には、上記複合体層が、カソードブロック全体を形成していることが意図されうる。これにより、カソードブロックの製造のために、単一の生組成物のみが必要であって、同様に単一の混合工程のみが必要である。
【0017】
代替的に、有利には、上記カソードブロックは、少なくとも2つの層を有していてもよく、このとき、上記複合体層は上記カソードブロックの上側の層を形成する。この上側の層は、本発明のカソードブロックの使用において、電解セルの溶融物に直接接触する。
【0018】
好ましくは、上記カソードブロックは、上側の層よりも少ない硬質材料粉末を含むか、または硬質材料粉末を含まない、少なくとも1つのさらなる層を有している。これにより、使用される価格の高い硬質材料粉末の量を減らすことができる。上記さらなる層は、上記カソードをアルミニウム電解セルに使用するときに、直接溶融アルミニウムに接触せず、これに伴い、優れたぬれ性および耐摩耗性を示す必要はない。
【0019】
好ましくは、上記上側の層は、上記カソードブロックの全高の、10から50%、特に、15から45%の高さを有する。上記上側の層の高さが、約20%のように小さい場合、価格の高い硬質材料の必要量が少ないため、有利である。
【0020】
代替的に、上記上側の層の高さが、約40%のように大きい場合、硬質材料を有する層は、高い耐摩耗性を有するため有利である。この高い耐摩耗性を有する材料の高さが上記カソードブロックの全高との関係で大きいほど、上記カソードブロック全体の耐摩耗性は大きくなる。
【0021】
好ましくは、本発明のカソードブロックは、コークス、例えばTiB
2などの硬質材料、および場合によってはさらなる炭素含有材料を含む出発原料の用意、カソードブロックの成形、炭化およびグラファイト化、ならびに冷却との工程を含む方法により製造される。ここで、上記コークスは、本発明によれば、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間に、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスを含む。
【0022】
グラファイト化の工程では、上記カソードブロック内の炭素の少なくとも一部が、グラファイトに変化する。
【0023】
驚くべきことに、かかる方法により製造されたカソードブロックの寿命は、従来の方法により製造されたカソードブロックよりも、明らかに長いことが示された。
【0024】
好ましくは、本発明に係る方法で製造されたカソードブロックは、炭素成分の嵩密度が、1.68g/cm
3より大きく、特に好ましくは、1.71g/cm
3より大きく、特に、上限は1.75g/cm
3である。
【0025】
より大きい嵩密度は、より長い寿命に有利に寄与すると考えられる。その理由は、一方では、カソードブロックの単位体積ごとにより多くの質量が存在し、これにより、所定の単位時間ごとの摩耗量における、所定の摩耗時間の後の残留質量がより大きいことにある。他方では、より大きい嵩密度は、対応する低い空隙率を示し、腐食性の媒体として作用する電解質の浸入が妨げられると考えられる。
【0026】
上述した2つ目の層は、RHMの添加により、グラファイト化の後、例えば、1.80g/cm
3より大きい嵩密度を示すものであってもよい。
【0027】
有利には、2種類のコークスは、第1のコークスおよび第2のコークスを含み、上記第1のコークスは、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間に、第2のコークスよりも、より強い収縮および/または膨張を示す。これにより、上記のより強い収縮および/または膨張は、有利な異なる体積変化の挙動を引き起こし、この異なる体積変化の挙動が、同様の収縮および/または膨張を示すコークスが混合されている場合よりも、より強い圧縮を実現するために特に適していると考えられる。このとき、上記のより強い収縮および/または膨張は、任意の温度領域に関係する。したがって、例えば、炭化において、上記第1のコークスのより強い収縮のみが起こってもよい。他方では、例えば、追加的に、または、代わりに、炭化とグラファイト化との間の移行領域におけるより強い膨張が起こってもよい。代わりに、または、追加的に、冷却時に異なる体積変化の挙動が存在してもよい。
【0028】
好ましくは、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間の、第1のコークスの収縮および/または膨張は、体積に関して、第2のコークスよりも少なくとも10%大きく、特に、少なくとも25%大きく、特に少なくとも50%大きい。したがって、例えば、第1のコークスの収縮が10%大きい場合、室温から2000℃までの収縮は、第2のコークスでは1.0体積%であり、第1のコークスでは1.1体積%である。
【0029】
有利には、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間の、第1のコークスの収縮および/または膨張は、体積に関して、第2のコークスよりも少なくとも100%大きく、特に、少なくとも200%大きく、特に少なくとも300%大きい。したがって、例えば、第1のコークスの収縮が300%大きい場合、室温から1000℃までの収縮は、第2のコークスでは1.0体積%であり、第1のコークスでは4.0体積%である。
【0030】
また、第1のコークスが収縮し、第2のコークスがこれに反して同一の温度間隔で膨張する場合も、本発明の方法に含まれる。300%大きい収縮および/または膨張には、したがって、例えば、第2のコークスが1.0体積%収縮し、第1のコークスがこれに対して2.0体積%膨張する場合も含まれる。
【0031】
代替的に、本発明の方法の、少なくとも1つの任意の温度間隔において、第1のコークスの代わりに、第2のコークスが、第1のコークスについて上述したように、より強い収縮および/または膨張を示してもよい。
【0032】
好ましくは、本発明のカソードブロックは、コークスを含む出発原料の用意、カソードブロックの成形、炭化およびグラファイト化、ならびに冷却との工程を含む方法により製造される。ここで、上記コークスは、1.68g/cm
3を超えるカソードブロックへの圧縮のために、好ましくは、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間に異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスを含む。2種類のコークスの異なる体積変化の挙動により、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間の圧縮過程において、類似する収縮挙動を示す、個々のコークス粒子相互間の固定または他の方法による結合が阻害されうると考えられる。これにより、個々の粒子は、圧縮に有利な位置に移動し、よって、コークス粒子、または続く工程で当該コークス粒子から生じる粒子の、従来の製造方法よりも大きい充てん密度を達成することができると考えられる。
【0033】
この変形態様では、アノードに向かう層が硬質材料を含む多層ブロックの利点が、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスの使用と組み合わされる。熱処理工程の間の熱膨張挙動におけるわずかな違いは、カソードブロックの生産時間および棄却率を減少させる。したがって、さらに有利には、使用における熱応力およびその結果起こる損傷に対する耐久性もまた高められる。
【0034】
好ましくは、上記2種類のコークスの少なくとも1つは、石油コークスまたはコールタールピッチコークスである。
【0035】
好ましくは、コークスの全量に対する、第2のコークスの量の割合は重量パーセントで、50%と90%との間である。この量の範囲であれば、第1のコークスおよび第2のコークスの異なる体積変化の挙動は、特に、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間の圧縮に良好に作用する。第2のコークスの可能な量の範囲は、50から60%であってもよく、60から80%であってもよく、80から90%であってもよい。
【0036】
有利には、コークスに、少なくとも1つの炭素含有材料、および/またはピッチ、および/または添加物が添加される。これは、コークスの加工性の点においても、製造されるカソードブロックの後の特性の点においても有利である。
【0037】
好ましくは、上記さらなる炭素含有材料は、グラファイト含有材料を含む;特に、上記さらなる炭素含有材料は、例えば、グラファイトなどのグラファイト含有材料からなる。上記グラファイトは、合成グラファイトおよび/または天然グラファイトでありうる。上記さらなる炭素含有材料によれば、コークスが主成分であるカソードの体積の不可避な収縮の低減が実現される。
【0038】
有利には、上記炭素含有材料は、コークスと炭素含有材料との合計量に対して、1から40重量%、特に、5から30重量%含まれる。
【0039】
好ましくは、コークスおよび場合によって炭素含有材料の量を、合計で100重量%とすると、これらにピッチを、追加的に、5から40重量%、特に、15から30重量%(全生混合物100重量%に対して)添加する。
【0040】
有利には、添加物は、圧縮補助油などの油、またはステアリン酸でありうる。これらは、上記コークスと場合によってはさらなる成分との混合を容易にする。
【0041】
好ましくは、上記コークスは、上述した2つの層のうちの少なくとも1つの層、すなわち、1つめの層および/または2つめの層において、生成したグラファイトが1.68g/cm
3より大きくなるように圧縮するために、炭化、および/またはグラファイト化、および/または冷却の間に、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスを含む。これにより、希望および/または必要に応じて、両方の層または両方の層の一方が、本発明により、2種類の異なるコークスを用いて製造される。これにより、希望または必要に応じて、嵩密度および嵩密度比率を調整することが可能となる。例えば、2つめの層を1種類のコークスのみを用いて製造するが、追加的にTiB
2を硬質材料として含める一方で、もっぱら、1つめの層を、本発明により、2種類のコークスを用いて製造することができる。これにより、両方の層の嵩密度および/または膨張挙動を適合させることができ、このことは層間の結合の耐久性を有利に高めることができる。
【0042】
本発明のさらに有利な発展および進展について、以下に、好適な実施例および図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】ここで、唯一の
図1は、本発明において使用されたTiB
2‐粉末の粒度分布を、a)体積密度分布q3として、および、b)累積体積分布Q3として、示す。
【0044】
本発明のカソードブロックを製造するために、ピッチと混合されたコークスを、単峰性の粒度分布を有し、d
50が15μm、d
90が30μm、であって且つd
10が5μmのTiB
2‐粉末と混合する。このときの粒度分布のスパン値は1.67である。生重量に対するTiB
2‐粉末の重量割合は、例えば10から30重量%であり、例えば20重量%である。上記混合物を、後のカソードブロックの形状に十分に一致する型に充てんし、および振動締固めし、またはブロックに圧縮する。得られた生成形品を、2300から3000℃、特に2500から2900℃の範囲、例えば2800℃の最終温度まで加熱する。これにより炭化工程およびその後にグラファイト化工程が実現され、その後に冷却される。生成したカソードブロックは、液体アルミニウムおよび氷晶石融液に対して、非常に優れたぬれ挙動および非常に高い耐摩耗性を有する。
【0045】
代替的に、単一のコークスの代わりに、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスが用いられる。両方のコークスのこの異なる体積変化の挙動は、複合体のグラファイトの嵩密度を向上させ、これに伴い得られたカソードブロックの耐摩耗性が、TiB
2‐粉末だけを使用する場合よりもさらに向上する。
【0046】
さらなる変形態様では、上記型に、まず部分的に、コークス、グラファイトおよびTiB
2の混合物が充てんされ、場合により振動締固めされる。その後、できた初期層、すなわち後のカソードにおいて、アノードに向かい、これに伴い溶融アルミニウムと直接接触する、上側の層となる初期層の上に、コークスとグラファイトとの混合物が充てんされ、再び締固めされる。得られた上側の初期層は、後のカソードにおいて、アノードに対して反対側に位置する、下側の層となる。この2層材は、最初の実施例と同様に炭化およびグラファイト化される。
【0047】
さらなる代替態様では、下側の層のコークスとして、異なる体積変化の挙動を示す2種類のコークスが用いられる。このようにして得られたカソードブロックの耐摩耗性は、アルミニウムに対して特に高い。これは、従来のTiB
2‐複合体材よりも、カソードの上側の層と下側の層との間の嵩密度の差が小さいことによる。
【0048】
本明細書、実施例および特許請求の範囲に挙げられた特徴点のすべてが、任意の組み合わせで、本発明に寄与する。本発明は、しかし、挙げられた例に限定されるものではなく、ここに具体的に記述されていない変形も含まれる。特に、例えば、ZrB
2、HfB
2、または他の遷移金属ホウ化物などのTiB
2以外の他の硬質材料粉末も含まれる。