特許第5714111号(P5714111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714111酸化鉄ナノカプセル、酸化鉄ナノカプセルの製造方法及びこれを利用したMRI造影剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714111
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】酸化鉄ナノカプセル、酸化鉄ナノカプセルの製造方法及びこれを利用したMRI造影剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20150416BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61K49/00 C
   C01G49/02 Z
   A61K9/51
   A61K47/48
   A61K47/12
   A61K47/36
   A61K47/20
   A61K47/34
   A61K47/32
【請求項の数】22
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-525844(P2013-525844)
(86)(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公表番号】特表2013-537876(P2013-537876A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】KR2011006396
(87)【国際公開番号】WO2012030134
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年4月11日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0084061
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】595137310
【氏名又は名称】ハンファ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ボン−シク
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンギュ
(72)【発明者】
【氏名】クォン ウンビュル
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュユン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン ワンジェ
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0222594(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0085834(KR,A)
【文献】 国際公開第2006/028129(WO,A1)
【文献】 Biomaterials, 2008, Vol.29, No.29, pp.4012-4021
【文献】 Langmuir, 2009, Vol.25, No.4, pp.2060-2067
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
A61K 49/00−49/22
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性リガンドが結合された複数の酸化鉄ナノ粒子が生分解性高分子及び界面活性剤を含むカプセル物質に封入された酸化鉄ナノカプセルであり、下記の関係式1、2、3、4及び5を満たし、前記生分解性高分子が、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)及びポリラクチド−コ−グリコリド(poly(lactide-co-glycolide))の中から選ばれる1又は2以上を含む、酸化鉄ナノカプセル。
(関係式1)
10≦100*D(IO)/C(IO)
(関係式2)
2.5≦100*D(Cap)/C(Cap)
(関係式3)
重量%≦F(IO)≦35重量%
(関係式4)
1nm≦D(IO)≦25nm
(関係式5)
50nm≦D(Cap)≦200nm
(前記関係式1中、D(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の平均サイズであり、C(IO)は、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布において標準偏差であり、前記関係式2中、前記D(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルの平均サイズであり、C(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルのサイズ分布において標準偏差で、前記関係式3中、F(IO)は、酸化鉄ナノカプセル封入された酸化鉄ナノ粒子の重量%であり、前記関係式4中、D(IO)は、前記関係式1の定義と同一で、前記関係式5中、D(Cap)は、前記関係式2の定義と同一である。)
【請求項2】
記の関係式をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸化鉄ナノカプセル
関係式7)
5≦100*D(Cap)/C(Cap)
(前記関係式7のD(Cap)及びC(Cap)は、関係式2の定義と同一である。)
【請求項3】
機溶媒に0.1ないし20重量%の酸化鉄ナノ粒子が分散され0.1ないし20重量%の生分解性高分子が溶解された酸化鉄ナノ粒子分散液と、界面活性剤水溶液とを混合及び乳化して乳化液を製造し、前記乳化液に水を添加して製造されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化鉄ナノカプセル。
【請求項4】
疎水性リガンドは、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、オクタン酸(octanoic acid)及びデカン酸(decanoic acid)の中から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセル。
【請求項5】
界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート及びアルキルジフェニルオキシドジスルホネートの中から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセル。
【請求項6】
生分解性高分子の分子量(Mw)は、1,000ないし250,000であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセル。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI T2造影剤。
【請求項8】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI T2肝造影剤。
【請求項9】
下記のa1)〜c)ステップを含んだ乳化拡散法を利用した酸化鉄ナノカプセルの製造方法であって、
a1)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解した後、前記極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を添加し超音波処理して、酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップ、
b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップ、
c)前記乳化液に水を添加して、酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップ
前記ステップa1)の酸化鉄ナノ粒子が下記の関係式1及び4を満たし、前記生分解性高分子がポリラクチド、ポリグリコリド及びポリラクチド−コ−グリコリドの中から選ばれる1又は2以上を含む、酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
(関係式1)
10≦100*D(IO)/C(IO)
(関係式4)
1nm≦D(IO)≦25nm
(前記関係式1中、D(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の平均サイズであり、C(IO)は、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布において標準偏差であり、前記関係式4中、D(IO)は、前記関係式1の定義と同一である)
【請求項10】
下記のa2)〜c)ステップを含んだ乳化拡散法を利用した酸化鉄ナノカプセルの製造方法であって、
a2)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解するステップ、
a3)前記極性有機溶媒より沸点の低い非極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を分散するステップ、
a4)前記生分解性高分子が溶解された極性有機溶媒と前記酸化鉄ナノ粒子が分散された非極性有機溶媒とを混合した後、蒸留により前記非極性有機溶媒を除去して酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップ、
b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップ、
c)前記乳化液に水を添加して酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップ
前記ステップa3)の酸化鉄ナノ粒子が下記の関係式1及び4を満たし、前記生分解性高分子がポリラクチド、ポリグリコリド及びポリラクチド−コ−グリコリドの中から選択される1又は2以上を含む、酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
(関係式1)
10≦100*D(IO)/C(IO)
(関係式4)
1nm≦D(IO)≦25nm
(前記関係式1中、D(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の平均サイズであり、C(IO)は、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布において標準偏差であり、前記関係式4中、D(IO)は、前記関係式1の定義と同一である。)
【請求項11】
c)ステップ後、透析及び凍結乾燥により酸化鉄ナノカプセル粉末を製造するステップがさらに行われることを特徴とする請求項又は10に記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項12】
酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、乳化ステップ及び拡散ステップのそれぞれにおいて行われる撹拌により制御されることを特徴とする請求項11のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項13】
乳化ステップの撹拌は8000rpm以上で行われ、拡散ステップの撹拌は100rpm以上で行われることを特徴とする請求項12に記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項14】
酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、a4)ステップの蒸留後に残留する非極性有機溶媒の残留量により制御されることを特徴とする請求項10に記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項15】
a4)ステップでの蒸留により極性有機溶媒:非極性有機溶媒の体積比は、100:1以下に制御されることを特徴とする請求項14に記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項16】
酸化鉄ナノカプセルに封入された酸化鉄ナノ粒子の封入量は、酸化鉄ナノ粒子分散液の酸化鉄ナノ粒子の濃度及び生分解性高分子の濃度により制御されることを特徴とする請求項15のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項17】
酸化鉄ナノ粒子分散液は、0.1ないし20重量%の酸化鉄ナノ粒子及び0.1ないし20重量%の生分解性高分子を含有することを特徴とする請求項16のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項18】
疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子は、熱分解法で製造されたことを特徴とする請求項17のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項19】
極性有機溶媒は、エチルアセテート、メチレンクロライド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート及びベンジルアルコールの中から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする請求項18のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項20】
非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン及びオクタンの中から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする請求項10に記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項21】
界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネートの中から選ばれる1又は2以上を含むことを特徴とする請求項20のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【請求項22】
界面活性剤水溶液の濃度は、1ないし10重量%であり、乳化液の生分解性高分子:界面活性剤の重量比は100:10ないし10000であることを特徴とする請求項21のいずれかに記載の酸化鉄ナノカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対照度に優れたMRI造影剤用酸化鉄ナノカプセル及びその製造方法に関し、詳細に、少ない量で優れた対照度を有し、生体滞留時間が適合し、機能化が容易なMRI造影剤用酸化鉄ナノカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超常磁性ナノ粒子は、特に、ナノ−バイオ分野において磁気共鳴画像(MRI)造影剤、細胞分離、磁気温熱治療(Hyperthermia)、薬物伝達、バイオセンサーなどの多様な応用分野に適用が可能であるから、多くの注目を受けている。
【0003】
超常磁性ナノ粒子の合成方法には、共沈法(coprecipitation)、水熱合成法(hydrothermal synthesis)、熱分解法(thermal decomposition)などがあり、共沈法及び水熱合成法は、塩化鉄(II)と塩化鉄(III)溶液を水溶上において直接反応して沈殿させる方法であって、酸化鉄ナノ粒子を容易に製造できるものの、サイズを制御し難いという短所がある。
【0004】
ヒョン・テクファン等(Hyeon,T.et al.)は、特許文献1(PCT/KR2005/004009)にて無毒性の金属塩を反応物として利用して均一なナノ粒子をサイズ選択過程無しで大量合成する熱分解方法を開発した。しかしながら、この方法は、ナノ粒子の表面にオレエート(oleate)が付着されて水相中に分散し難いので、バイオ研究応用がむずかしいという短所がある。
【0005】
疎水性リガンドが付着された金属酸化物ナノ粒子を水相中に分散するための方法として、リガンド交換技術(ligand exchange)、両親媒性物質を利用したセルフアセンブリー(self-assembly)ナノ粒子製造技術、高分子を利用したカプセル化技術(Encapsulation)などがある。
【0006】
AMAG社のFeridex、Bayer−Schering社のResovistとして代表される従来の商用超常磁性ナノ粒子系肝造影剤は、共沈法で製造したものであって、造影性能を表す酸化鉄ナノ粒子のサイズを調節し難く、サイズ分布が均一でないから、造影剤の対照度の向上がむずかしいという短所がある。また、酸化鉄が封入されたカプセルの形状及びサイズの調節が容易でないから、静脈注射の際、生体内の分布を調節し難い。
【0007】
チョン・ジンウなどは、特許文献2(韓国公開特許第10−2006−0021536)において熱分解法で合成した酸化鉄ナノ粒子を多作用基リガンドで安定化する水溶性ナノ粒子製造技術を開示した。前記方法は、付着領域−交差連結領域−活性成分結合領域からなるリガンドをオレエートと交換する方法により酸化鉄ナノ粒子を個別的にコーティングするので、肝造影剤に適したサイズに制御し難く、T2弛緩性能を向上させる酸化鉄ナノ粒子の凝集効果を認めることができない。
【0008】
ハム・スンジュなどは、特許文献3(韓国登録特許第0819377)において熱分解法で合成したナノ粒子を両親媒性化合物で水分散させて造影剤として使用する技術を開示した。前記方法は、疎水性−親水性部分を含む両親媒性化合物として磁性ナノ粒子を捕集する方法であって、物質が両親媒性化合物に限定され、造影剤として求められるナノ粒子のサイズ、サイズ分布、酸化鉄ナノ粒子の封入率などを制御し難いので、造影性能の向上が困難である。
【0009】
ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)は、乳酸(lactic acid)とグリコール酸(glycolic acid)との共重合体であり、優れた生体適合性と生分解性特性により注射剤としてFDA承認を得た物質であって、最近、多様な薬物伝達分野及び医療分野に応用されている。PLGAは、周辺の水分子と加水分解反応を起こして、エステル結合(ester linkage)が切れ分解される特性を表し、これによって、数カ月以内に分解されて生体から容易に排出される。
【0010】
本発明は、対照度に優れた肝診断用MRI造影剤に関し、さらに詳細には、生分解性高分子を利用してオレイン酸がコーティングされた酸化鉄ナノ粒子を均一なサイズにコーティングする製造方法を開発し、これをMRI肝造影剤として利用する方法についたものである。
【0011】
KAISTのキム・ジョンドク教授が2005年に出願した韓国登録特許第0702671(特許文献4)は、生分解性高分子のうちの一つであるPLA、PGA、PLGAなどを利用して酸化鉄ナノ粒子を乳化−拡散方法でカプセル化する方法を開示したが、共沈法で製造した酸化鉄ナノ粒子を使用している。したがって、酸化鉄ナノ粒子の表面にオレエートが付着されない形態であり、これをカプセル化に適用する方法が異なる。また、最大封入率が5%を超過する場合に、ナノ粒子の凝集現象によりカプセルのサイズが大きくなり、これを調節できないという問題が生じると記述している。
【0012】
B.S.Jeon等は、2009年発表した論文(J.Nanosci.Nanotechnol.,9,7118-7122(2009);非特許文献1)においてナノ粒子の表面に付着される有機酸の種類をオレイン酸、ドデカン酸、オクタン酸などで調節して、乳化−拡散法の封入率を増加させながらもナノ粒子のサイズを維持する方法を開示しているが、最大封入率が7重量%に限定されると記述している。
【0013】
上述したように、市販されている肝造影剤は、共沈法で製造した超常磁性酸化鉄ナノ粒子を使用し、最近開発されている熱分解方法で製造した酸化鉄ナノ粒子は、結晶性が高く均一なサイズを有するので、磁化度とMR造影性能が高いという長所があるが、製造工程上疎水性であるオレエートがナノ粒子の表面に付着されて水溶液に分散が難しく、したがってバイオ応用分野に適用し難いという短所がある。
【0014】
特に、バイオ応用研究の中でも造影剤のような注射剤の剤形は、最終粒子のサイズ及びサイズ分布、ゼータ電位、密度などの物理化学的特性により、薬物動力学(Pharmacokinetics)が大きく変わるので、これを目的通りに正確に調節する技術が必要である。
【0015】
オレエートが付着された酸化鉄ナノ粒子を水溶液に分散させるために、リガンド交換、両親媒性物質を利用した高分子ミセル、リポソーム、デンドリマーなどを利用する多様な方法が研究されたが、MR対照度が充分でなく、粒子サイズの調節が容易でないから、生体内での時間の経過によるMR挙動が均一でないという短所がある。
【0016】
また、酸化鉄ナノ粒子の分散方法で混ざらない二相(O/W)を強制乳化させた後、有機溶媒が濃度差により水相への拡散を進行する時に、有機溶媒に溶解されていた高分子と活性物質とが共に拡散されて高分子カプセルを形成する乳化−拡散法があるが、オレエートが付着された酸化鉄ナノ粒子は、部分水混和性溶媒への分散が難しいから、封入率が低いという短所がある。
【0017】
特に、封入率が0.5重量%より低い場合に、1mg Fe/mlの造影剤を製造するために、200mgカプセル/ml以上の濃度で製造しなければならないので、注射剤の浸透圧と粘度が高まることによって、注射時に痛みを伴ったり激しい場合に浸透圧ショックを起こすことができる。
【0018】
また、生体注入時にナノカプセルのサイズが大きなマイクロメータサイズのカプセルは、毛細血管を塞いで組織の壊死を誘発する等の副作用が発生してナノカプセルの均一度を調節することが極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際出願PCT/KR2005/004009号
【特許文献2】韓国公開特許第10−2006−0021536号
【特許文献3】韓国登録特許第0819377号
【特許文献4】韓国登録特許第0702671号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J.Nanosci.Nanotechnol.,9,7118−7122(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、伝統的な乳化−拡散法の限界であった低い封入率問題を解決して、高い封入率を有するものの、カプセルのサイズが小さく、極めて均一な酸化鉄ナノカプセル及びその製造方法を提供することであり、水溶液内で極めて優れた安定性を有し、組織への吸収及び分布が再現性あるように調節され、低い濃度で非常に優れたMRI造影性能を有し、生体内副作用が防止されて、安全性に優れた酸化鉄ナノカプセル及びその製造方法を提供することであり、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下、本発明の酸化鉄ナノカプセル、その製造方法及びこれを利用した造影剤を詳細に説明する。このとき、使用される技術用語及び科学用語において他の定義がないならば、この発明が属する技術分野における通常の知識を有した者が通常理解している意味を有し、下記の説明において本発明の要旨を不明にする恐れがある公知機能及び構成についての説明は省略する。
【0023】
本発明に係る酸化鉄ナノカプセルは、疎水性リガンド(ligand)が結合された複数の酸化鉄ナノ粒子が生分解性高分子及び界面活性剤を含むカプセル物質に封入された酸化鉄ナノカプセルであり、下記の関係式1、2、3、4及び5を満たす特徴がある。
【0024】
(関係式1)
5≦100*D(IO)/C(IO)
(関係式2)
2.5≦100*D(Cap)/C(Cap)
(関係式3)
0.5重量%≦F(IO)≦50重量%
(関係式4)
1nm≦D(IO)≦25nm
(関係式5)
50nm≦D(Cap)≦200nm
(前記関係式1中、D(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の平均サイズであり、C(IO)は、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布において標準偏差(standard deviation)で、前記関係式2中、前記D(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルの平均サイズであり、C(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルのサイズ分布において標準偏差であり、前記関係式3中、F(IO)は、酸化鉄ナノカプセルで封入された酸化鉄ナノ粒子の重量%であり、前記関係式4中、D(IO)は、関係式1の定義と同一で、前記関係式5中、D(Cap)は、関係式2の定義と同一である。)
【0025】
このとき、前記サイズは、直径を意味し、D(IO)は、疎水性リガンドが付着された状態の酸化鉄ナノ粒子の平均直径を意味し、C(IO)において酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布は、疎水性リガンドが付着された状態の酸化鉄ナノ粒子の直径分布を意味し、F(IO)は、複数の酸化鉄ナノカプセルに封入された酸化鉄ナノ粒子の平均封入量を意味する。
【0026】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルに封入された疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子は、関係式4を満たす特徴がある。直径が1nm未満である酸化鉄は、磁化値が極めて小さいから、T2造影性能が大きく低下して、造影剤として使用し難く、直径が25nmを超過する場合に、酸化鉄ナノ粒子の磁化値は高いが、強磁性体になって外部磁場が除去された状態でも残留磁化を維持するので、粒子間凝集がひどく起きることができるから造影剤としての使用に適していない。
【0027】
前記酸化鉄ナノ粒子の表面に結合された前記疎水性リガンドは、前記酸化鉄ナノ粒子の表面を安定化させる役割を果たし、前記酸化鉄ナノ粒子と結合された前記疎水性リガンドは、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、オクタン酸(octanoic acid)及びデカン酸(decanoic acid)の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0028】
前記疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子において、疎水性リガンドの質量比率は5重量%ないし60重量%であり、好ましくは10重量%ないし40重量%、さらに好ましくは20重量%ないし30重量%である。
【0029】
疎水性リガンドが5重量%未満である場合に、酸化鉄ナノ粒子の表面を十分に覆うことができなくて、酸化鉄粒子の凝集及び沈殿を防止できないから、溶媒への分散性を低下させ、疎水性リガンドが60重量%超過の場合に、カプセル内の封入率を大きく減少させるという短所がある。
【0030】
また、本発明において、酸化鉄ナノカプセルに封入される疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子は、関係式1を満たすという特徴がある。前記関係式1中、100*D(IO)/C(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の均一度(uniformity)を意味する。前記均一度は、100/変動係数(C.V.;Coefficient of Variance)で定義され、前記変動係数は、標準偏差/平均値で定義される。これにより、前記関係式1の酸化鉄ナノ粒子の均一度は、100/酸化鉄ナノ粒子の変動係数であり、前記酸化鉄ナノ粒子の変動係数は、酸化鉄ナノ粒子サイズ分布での標準偏差/酸化鉄ナノ粒子の平均サイズとなる。
【0031】
前記酸化鉄ナノ粒子の均一度が前記関係式1を満たすことによって、前記酸化鉄ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子が50nm以上の均一なサイズに凝集(aggregation)されて、造影性能(R2)を増加させるようになる。
【0032】
さらに詳細に、酸化鉄ナノ粒子の均一度が5以上である場合に、溶解性が一定な、目標サイズだけの酸化鉄粒子を使用するから、カプセル内封入率を増加させてカプセルの造影性能を増加させることができ、均一度が5以下である場合に目標サイズの他、ナノ粒子の比率が高まるようになって、造影性能が低下する。すなわち、目標サイズより小さなナノ粒子は磁化度が低いから、カプセルの造影性能を低下させる結果を表し、目標サイズより大きなナノ粒子は、溶媒への分散性が低下するので、カプセルへの封入率を減少させて、凝集効果(Aggregation effect)が消えるにともなって造影性能が低下する。
【0033】
製造例1において製造した均一度が10.1である10nm酸化鉄ナノ粒子を利用して得たT2弛緩性能は345.7mM−1−1であったが、製造例1で製造した10nm酸化鉄ナノ粒子と製造例2で製造した4nm酸化鉄ナノ粒子とを混合して、均一度が2.8に低い混合ナノ粒子を利用して製造したナノカプセルは、T2弛緩性能が202.8mM−1−1で造影性能が顕著に減少する。
【0034】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルは、関係式5を満たす特徴がある。本発明に係る酸化鉄ナノカプセルを含有する造影剤を血管に注入する場合、生体内吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)及び除去(Elimination)は、酸化鉄ナノカプセルのサイズに大きく影響を受ける。直径が50nm未満であるナノカプセルは、多量のナノカプセルが目的する組織の他にリンパ節に分布する危険があり、直径が200nmを超過する場合、ナノカプセルにより血管がふさがる危険があり、肝組織への吸水率が低いために、造影剤、特に肝造影剤としての使用に適していない。
【0035】
また、本発明において、酸化鉄ナノカプセルは、関係式2を満たす特徴がある。前記関係式2中、100*D(Cap)/C(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルの均一度(uniformity)を意味し、詳細に前記関係式2の酸化鉄ナノカプセルの均一度は、100/酸化鉄ナノカプセルの変動係数であり、前記酸化鉄ナノカプセルの変動係数は、酸化鉄ナノカプセルサイズ分布での標準偏差/酸化鉄ナノカプセルの平均サイズとなる。
【0036】
前記酸化鉄ナノカプセルの均一度が前記関係式2を満たすことによって、MRI造影のための注入時に、目的する組織以外の組織への吸収を抑制でき、これにより同じ注入量で目的する組織を優れた造影性能で観察できるようになる。
【0037】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルは、関係式3を満たす特徴がある。本発明の酸化鉄ナノカプセルは、前記関係式3のようにナノカプセルに非常に高含有量で酸化鉄ナノ粒子が封入されていることによって、低い濃度で本発明の酸化鉄ナノカプセルを含有する造影剤でも非常に優れた造影性能を有するという特徴があり、特に、商用造影剤の人体投与量である0.42mg Fe/Kgを基準としても、造影剤に含まれた酸化鉄ナノカプセルの濃度を画期的に低くすることができる。本発明の酸化鉄ナノカプセルが前記関係式3を満たすことによって、造影剤の原価低減はもちろん、造影剤の人体投入により引き起こされる副作用及びショックが防止される特徴がある。
【0038】
さらに特徴的に、前記酸化鉄ナノカプセルは、下記の関係式6及び7をさらに満たす。
(関係式6)
10≦100*D(IO)/C(IO)
(関係式7)
5≦100*D(Cap)/C(Cap)
(前記関係式6のD(IO)及びC(IO)は、関係式1の定義と同一であり、前記関係式7のD(Cap)及びC(Cap)は、関係式2の定義と同一である。)
【0039】
本発明の酸化鉄ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子の均一度が前記関係式6を満たすことによって、ナノカプセルで封入される複数の酸化鉄ナノ粒子がより均一に凝集され、また、酸化鉄ナノカプセルの均一度が前記関係式7を満たすことによって、目的する組織以外の他組織にナノカプセルが吸収されて、造影性能を低下させることをさらに効果的に防止する。このとき、前記関係式6または7において前記酸化鉄ナノ粒子の均一度は実質的に1000以下で、前記ナノカプセルの均一度は1000以下である。
【0040】
より特徴的に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルは、下記の関係式8をさらに満たす。
(関係式8)
7重量%≦F(IO)≦35重量%
(前記関係式8のF(IO)は、関係式3の定義と同一である。)
【0041】
このとき、前記高い酸化鉄ナノ粒子の封入量は、有機溶媒に0.1ないし20重量%、好ましくは0.5ないし8重量%の酸化鉄ナノ粒子が分散され、0.1ないし20重量%、好ましくは0.5ないし8重量%、さらに好ましくは0.5ないし4重量%の生分解性高分子が溶解された酸化鉄ナノ粒子分散液と、界面活性剤水溶液とを混合及び乳化して乳化液を製造し、前記乳化液に水を投入して前記酸化鉄ナノカプセルを製造することによって達成される特徴がある。
【0042】
本発明において酸化鉄ナノ粒子のカプセル化物質は、生分解性高分子を含む。生分解性高分子は、人体に無害であり、生体適合性に優れたものであれば何でも使用可能であり、その例としてポリラクチド(Polylactide、PLA)、ポリグリコリド(Polyglycolide、PGA)、及びこれらの共重合体であるポリラクチド−コ−グリコリド(poly(lactide-co-glycolide)、PLGA)の中から選ばれるか、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0043】
特に、PLGAは、人体での無害性、安定性及び生体親和性が確認されており、FDAで注射剤として承認を受けた物質であって疎水性を有するので、水によく溶けない薬物の伝達体として多くの研究がなされている。また、PLAとPGAの比率に応じて生体内での分解速度を調節できるので、疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子を捕集して生体に伝達するのに適切なカプセル化物質の一つである。
【0044】
生分解性高分子の分子量(Mw)は、1,000ないし250,000であることを使用することができ、好ましくは2,000ないし100,000であり、さらに好ましくは5,000ないし20,000であることを使用することができる。
【0045】
本発明において酸化鉄ナノ粒子のカプセル化物質は、界面活性剤を含有し、前記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネートの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。前記カプセル化物質に含まれていた界面活性剤は、高分子−酸化鉄ナノ粒子有機溶液のエマルション形成及びナノサイズへの拡散役割を行い、前記酸化鉄ナノカプセルの生体安定性及び分散安定性のために、前記カプセル化物質に含まれた生分解性高分子:界面活性剤の重量比は100:10ないし10000、好ましく100:100ないし1000であることが好ましい。
【0046】
本発明は、上述した酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI用T2造影剤を提供し、さらに特徴的に上述した酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI用T2肝造影剤を提供する。
【0047】
本発明に係るMRI用T2造影剤は、上述したサイズ及び分布を有する超常磁性酸化鉄ナノ粒子が極めて高い封入率で封入された酸化鉄ナノカプセルを含有することによって、低い濃度で非常に高いT2造影効果を有し、酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布が制御されて目的する組織に効果的に分布して造影性能を向上させ、人体内の副作用が防止されるという効果がある。本発明の酸化鉄ナノカプセルを含有した造影剤において、上記目的する組織は肝臓である特徴がある。
【0048】
以下、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法を詳述する。本出願人は、後述する第1様態及び第2様態の製造方法を基盤に努力に努力を重ねて数多くの実験を繰り返した結果、酸化鉄ナノ粒子の封入率を制御する主因子、封入される酸化鉄ナノ粒子の凝集を制御する主因子、酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布を制御する主因子を導き出した。
【0049】
本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法は、乳化拡散法(emulsification-diffusion method)を利用して製造され、本発明に係る製造方法の第1様態である下記の製造方法(I)及び本発明に係る製造方法の第2様態である下記の製造方法(II)を含む。
【0050】
詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法(I)は、a1)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解した後、前記極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を添加し超音波処理して、酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップと、b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップと、c)前記乳化液に水を添加して酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップと、を含んで行われる特徴がある。
【0051】
さらに詳細に、本発明の第1様態は、乳化拡散法の有機相(Oil phase)を提供する、水と部分的に混和する特性(部分水混和性、partially water-miscible)を有する、極性有機溶媒(第1溶媒)に生分解性高分子をまず溶解して、有機溶媒の極性が弱まった生分解性高分子溶解液を製造した後、前記生分解性高分子溶解液に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を添加し超音波処理(ultrasonication)して、酸化鉄ナノ粒子分散液を製造する。
【0052】
以後、乳化拡散法の水相(Water phase)を提供する水に界面活性剤を溶解させて製造された界面活性剤水溶液と前記酸化鉄ナノ粒子分散液とを混合して、均質機(homogenizer)を利用して乳化するステップが行われる。
【0053】
前記乳化ステップにて製造された乳化液に水を添加して、前記乳化液の酸化鉄−生分解性高分子−界面活性剤を水相に拡散させて酸化鉄ナノカプセルを製造する。
【0054】
詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法(II)は、a2)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解するステップと、a3)前記極性有機溶媒より沸点の低い非極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を分散するステップと、a4)生分解性高分子が溶解された極性有機溶媒と酸化鉄ナノ粒子が分散された非極性有機溶媒とを混合した後、蒸留により非極性有機溶媒を除去して酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップと、b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップと、c)前記乳化液に水を添加して、酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップとを含んで行われる特徴がある。
【0055】
上述した第1様態または第2様態において、前記製造方法は、c)ステップ後、透析及び凍結乾燥により酸化鉄ナノカプセル粉末を製造するステップがさらに行われることができる。
【0056】
関係式1及び関係式4を満たす酸化鉄ナノ粒子であり、前記酸化鉄ナノ粒子分散液に用いられる酸化鉄ナノ粒子は、疎水性リガンドが表面に結合された酸化鉄ナノ粒子であって、鉄を中心原子にして疎水性有機酸基がリガンドで結合されている鉄錯体を熱分解して製造されることが好ましい。
【0057】
前記酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、前記乳化ステップ及び拡散ステップのそれぞれにおいて行われる撹拌により制御される特徴がある。詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルを製造するために、前記乳化ステップの撹拌は、8000rpm以上、好ましく8000rpmないし26000rpmであり、前記拡散ステップの撹拌は、100rpm以上、好ましく100rpmないし2500rpmで行われる。
【0058】
さらに詳細に、均質機による乳化工程は、2分ないし15分の時間の間に8,000rpm以上、好ましく8000rpmないし26000rpmの撹拌速度で反応物を撹拌することが好ましい。撹拌時間が2分未満である場合に混合溶液が十分に撹拌されない場合もあり、撹拌時間が15分以上の場合に、水と接触した高分子の硬化現象により、拡散工程でカプセルが円滑に拡散されない場合もある。撹拌速度が8,000rpm未満である場合に、初期エマルションの液滴サイズが増加して拡散工程を行っても最終カプセルのサイズが300nm以上になるという問題がある。
【0059】
本発明に係る製造方法における前記拡散ステップは、乳化された溶液に水を添加して溶媒と酸化鉄−高分子−界面活性剤粒子を拡散させてナノカプセルを製造するステップである。乳化溶液に水を添加すると、エマルションは、周囲の水が多くなりながら瞬間的に過飽和状態を経験するようになり、数百nmサイズの小さな有機溶媒塊がエマルションの表面から分離されて、最終的にカプセルを形成する。このとき、前記拡散ステップにて投入される水は、乳化ステップにて製造された乳化液の体積を基準に2倍ないし15倍の水が投入されることが好ましい。
【0060】
このとき、水の投入により行われる拡散ステップでの撹拌速度は、100rpm以上、好ましく100rpmないし2500rpmであることが好ましい。撹拌速度が100rpm未満である場合に、剪断力が小さくてエマルションの周囲環境を速く変えることができないために、カプセルの平均サイズが増加し、サイズの均一度が増加するという問題がある。
【0061】
特徴的に、本発明の製造方法のうち、第2様態において、前記酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、前記a4)ステップの蒸留後に残留する非極性有機溶媒の残留量により制御される。このとき、蒸留温度は、前記非極性有機溶媒の沸点より高く、前記極性有機溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい
【0062】
前記蒸留により、沸点の低い非極性有機溶媒が選択的に除去されるが、このとき、蒸留時間を調節して残留する非極性有機溶媒の量を制御できる。前記極性有機溶媒に残留する非極性有機溶媒の量は、乳化ステップでのエマルションサイズ及び分布だけでなく、拡散ステップにおいて酸化鉄−高分子−界面活性剤粒子の拡散駆動力に影響を及ぼし、ナノカプセルのサイズ及び分布を制御する。
【0063】
ナノカプセルのサイズ及び分布を制御するために、前記a4)ステップでの蒸留により、極性有機溶媒:非極性有機溶媒の体積比は、100:1以下に、実質的に100:0.001〜1に制御されることが好ましい。このとき、前記蒸留による極性有機溶媒:非極性有機溶媒の体積比を制御すると同時に、上述した前記乳化ステップ及び拡散ステップのそれぞれで行われる撹拌条件もまた満たすことが好ましい。
【0064】
本発明に係る製造方法(第1様態または第2様態を含む)において、前記酸化鉄ナノカプセルに封入された酸化鉄ナノ粒子の封入量は、前記ナノ粒子分散液の酸化鉄ナノ粒子の濃度及び生分解性高分子の濃度により制御されるという特徴がある。また、前記ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子の凝集度もまた前記酸化鉄ナノ粒子分散液に含まれた酸化鉄ナノ粒子の濃度及び生分解性高分子の濃度により制御される。前記関係式8を満たす酸化鉄ナノカプセルを製造するために、前記ナノ粒子分散液は、0.1ないし20重量%、好ましく0.5ないし8重量の酸化鉄ナノ粒子及び0.1ないし20重量%、好ましく0.5ないし8重量%、さらに好ましく0.5ないし4重量%の生分解性高分子を含有することを特徴がある。
【0065】
前記極性有機溶媒は、水と部分的に混ざる特性(部分水混和性)を有する有機溶媒であって、エチルアセテート、メチレンクロライド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート及びベンジルアルコールの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0066】
本発明の第2様態において、前記非極性有機溶媒は、前記極性有機溶媒より極性が低い有機溶媒のことを意味し、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン及びオクタンの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0067】
前記生分解性高分子は、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)及びポリラクチド−コ−グリコリド(poly(lactide-co-glycolide))の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含み、前記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート(polysorbate)、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(alkyldiphenyloxide disulfonate)の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0068】
このとき、前記界面活性剤水溶液の濃度は、1ないし10重量%であり、前記乳化液において前記生分解性高分子:界面活性剤の重量比は100:10ないし10000、好ましく100:100ないし1000であることが好ましい。
【発明の効果】
【0069】
本発明は、伝統的な乳化−拡散法の限界であった低い封入率問題を解決して、疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子も非常に高い封入率で高分子/界面活性剤ナノカプセルに封入される特徴がある。特に、伝統的な乳化−拡散法の場合、封入率が5重量%以上のとき、酸化鉄ナノ粒子間の凝集によってナノカプセルの平均サイズが大きくなり、サイズ均一度が小さくなり、それによりナノカプセルの水溶液内の安定性が大きく減少して、数時間内に速く沈殿がおきる現象があった。しかしながら、本発明は、封入率が高まっても平均サイズを200nm以内にしつつサイズ均一度が5以上であるナノカプセルを作ることができ、ナノカプセルの水溶液内安定性が大きく増加して、数日内にも沈殿がおきない。
【0070】
本発明に係るナノカプセルをMRI造影剤として適用する際、カプセル内の酸化鉄ナノ粒子の凝集効果(Aggregation effect)を上げることができるので、造影性能を既存の造影剤の造影性能限界を超えることができる水準に上げることができる。また、同時にカプセルのサイズを調節できるので、造影剤として利用する際、目的組織への吸収及び分布を再現性あるように調節でき、サイズ均一度が高いから200nm以上の大きな粒子の形成を防止するので、生体内で毛細血管を塞ぐ現象などの副作用を阻止できるから、安全性が極めて優れている。また、酸化鉄ナノ粒子の高い封入率は、全体造影剤の濃度を下げ、それにより浸透圧と粘度を下げることができるので、造影剤を投与される患者の安全と便宜性を大きく増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】製造例1で製造された疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
図2】製造例2で製造された疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1で製造されたPLGA−酸化鉄ナノカプセルの水相分散イメージで、カプセル化前・後の分散様相を観察した光学写真である。
図4】実施例1で製造されたPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡写真である。
図5】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体外造影性能評価を示したグラフ及び磁気共鳴画像である。商用造影剤であるFeridexの結果を比較として示す図である。
図6】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体内造影性能評価を示した磁気共鳴画像であり、pre、1HR、2HRは注入前、注入後1時間、注入後2時間に測定された結果を意味する。
図7】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの投与量別体内造影性能評価を示したグラフであり、商用造影剤であるFeridexの結果を比較として示す図である。
図8】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの封入率別体内造影性能評価を示したグラフであり、商用造影剤であるResovistの結果を比較として示す図である。
図9】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルのサイズ別体内造影性能評価を示したグラフであり、商用造影剤であるResovistの結果を比較として示す図である。
図10】実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの濃度と培養時間の経過による細胞生存率を示すグラフであり、商用造影剤であるFeridexの結果を比較として示す図である。
図11】比較例1で製造した酸化鉄ナノ粒子の均一度が2.8のPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡写真である。
図12】比較例2で製造した酸化鉄ナノ粒子の封入率が0.5重量%以下であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡写真である。
図13】比較例3で製造したサイズが200nm以上であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体内造影性能評価イメージとグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
さらに、前記技術の当業者は、本発明の根本的な概念とその実行を容易に修正または変更できる。
【0073】
(製造例1)
オレエートが付着された10nm単分散酸化鉄ナノ粒子の大量生産
塩化鉄10.8gとオレイン酸ナトリウム36.5gをエタノール80ml、蒸留水60ml、ヘキサン140mlを含む混合溶媒に溶解させ、57℃にその混合物を加熱し、1時間の間に同じ温度に維持させた。この過程の間に、水相で初期の緋色が澄み、初期の透明な有機相が赤い光を帯びるが、これはオレイン酸鉄錯体を含む上部有機層が分離され、その後前記ヘキサンは蒸発され、その結果、粘性を有した液体形態になった。オレイン酸鉄錯体36g(製造された粘性を有した液体)をオクタデセン200gとオレイン酸5.7gの混合物に添加した。
【0074】
前記結果により生じた混合物を真空で室温から2.5℃/minの昇温速度で70℃まで加熱した後、同じ温度で1時間の間に維持させることによって、反応物以外の残余溶媒と水分を除去した。その後、窒素雰囲気下で2.5℃/minの速度で320℃まで加熱した後、同じ温度で1時間の間に維持しながら熟成させ、この過程を経る間に激烈に反応がおき、初期の赤色溶液が黒褐色になるが、これはオレイン酸鉄錯体が完全に分解され、酸化鉄ナノ粒子が生成されたことを表す。反応が終了した後、自然冷却過程を経ながら自動点火温度以下(150℃)になったとき、空気を注入して酸化させた。
【0075】
前記結果として生じたナノ粒子を含む溶液は、室温まで冷却され、体積比1:5のヘキサンとアセトン混合溶液を母液の体積の3倍に該当する量を加えて黒い色沈殿物が生じ、その後遠心分離(rpm=2,000)により分離された。
【0076】
前記結果として生じた上層液を捨てた。この洗浄過程は、最小2回以上繰り返し、前記残余物に含まれたヘキサン及びアセトンは乾燥により除去し、この結果として生じた生産物は、ヘキサン中に容易に再分散される酸化鉄ナノ粒子を形成した。図1に最終生成された酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡イメージを示し、平均サイズは10nm、サイズ均一度は10.1であった。
【0077】
(製造例2)
オレエートが付着された4nm単分散酸化鉄ナノ粒子の大量生産
溶媒としてヘキサデセン100gを使用したことと、最終昇温温度が280℃であることを除いては、製造例1に記載されたことと同じ工程を利用して酸化鉄ナノ粒子を大量合成した。
【0078】
前記結果として生じたナノ粒子は、ヘキサンやトルエンのような無極性有機溶媒に容易に再分散された。図2に最終生成された酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡イメージを示し、これを分析した結果、平均サイズは4nm、サイズ均一度は6.15であった。
【実施例1】
【0079】
生分解性高分子溶液の溶解度変化を利用したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの製造
高分子末端がカルボキシル基で分子量が5,000であるPLGA200mgをエチルアセテート10mlに入れて、10分間撹拌して完全に溶解させた。製造例1で製造された単分散酸化鉄ナノ粒子200mgを前記溶液に添加した後、45℃で60分間超音波処理してPLGA−酸化鉄ナノ粒子溶液を製造した。酸化鉄ナノ粒子が溶媒に完全に分散されなかったときには、不透明な褐色を表し5分以内に大部分が沈殿するが、酸化鉄ナノ粒子が超音波処理により完全に分散された場合には、濃く透明な黒色光を表し、数日以上沈殿物が生じなかった。
【0080】
製造したPLGA−酸化鉄ナノ粒子溶液10mlをプルロニックF−127(P2443,Sigma,Cas No.10 9003−11−6)5重量%水溶液20mlと混合して、均質機20,000rpmで7分間乳化させた。乳化過程が終わった溶液を時間の遅滞無しで直ちに200mlビーカーに入れて500rpmで撹拌しながら、100mlの蒸留水を一度に添加した後に20分間撹拌を維持した。以後、製造された溶液を透析膜に入れて2日間撹拌し反応残余物を除去した後、−20℃で凍結した後に凍結乾燥してナノカプセル粉末を得た。
【0081】
図3は、前記製造方法で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの水相分散イメージである。カプセル化前にオレエートが付着された酸化鉄ナノ粒子がヘキサン層にだけ分布したことに対して、カプセル化後にPLGAとプルロニックF−127に安定化したナノカプセルは、水層に安定的に分布することを観察でき、数週間沈殿なしで安定であることを観察した。
【0082】
図4は、前記製造方法で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡イメージであって、カプセルの平均サイズが111.6nmであり、サイズ均一度は12.5で非常に均一に生成され、酸化鉄ナノ粒子がカプセル中に10.3重量%の封入率で均一に分布することを観察した。
【実施例2】
【0083】
非極性有機溶媒と蒸留を利用したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの製造
高分子末端がカルボキシル基で分子量が20,000であるPLGA200mgをエチルアセテート150mlに入れて10分間撹拌して完全に溶解させて第1溶液を製造し、製造例1で生産された単分散酸化鉄ナノ粒子200mgを非極性有機溶媒であるヘキサン100mlに添加して1時間の間に超音波処理して、完全に分散させて第2溶液を製造した。以後、第1溶液と第2溶液とを混合して30分間撹拌し、二溶液が相分離無しで完全に混合されることを観察した。
【0084】
第1溶液と第2溶液とが混合された混合溶液をヘキサンの沸点より高くエチルアセテートの沸点より低い72度に加熱して、残留溶液が約10mlになるまで蒸留して、PLGA−酸化鉄ナノ粒子溶液を製造した。ヘキサンは、エチルアセテートと共沸点を有し、共に蒸留されるが、気化速度がさらに速いので、最終溶液が10ml残った場合に残留ヘキサンの比率は1体積%以下であり、酸化鉄ナノ粒子が最終残留したエチルアセテートに分散されることを確認した。
【0085】
製造したPLGA−酸化鉄ナノ粒子溶液10mlをプルロニックF−127 5重量%水溶液20mlと混合して均質機20,000rpmで7分間乳化させた。乳化過程が終わった溶液を時間の遅滞無しで直ちに200mlのビーカーに入れて500rpmで撹拌しながら100mlの蒸留水を一度に添加した後、20分間撹拌を維持した。以後、製造された溶液を透析膜に入れて2日間撹拌し、反応残余物を除去した後、−20℃で凍結した後凍結乾燥してナノカプセル粉末を得た。
【0086】
本実験方法により製造されたPLGA−酸化鉄ナノカプセルのうち、酸化鉄ナノ粒子の封入率は10.3重量%で非常に高いながらも、平均サイズ178.4nm、サイズ均一度7.2に極めて均一なナノカプセルを製造することができた。
【実施例3】
【0087】
封入率が大きなPLGA−酸化鉄ナノカプセルの製造
PLGA40mg、エチルアセテート3ml、酸化鉄ナノ粒子200mg、プルロニックF−127 5重量%水溶液6ml、乳化時の撹拌速度26,000rpmを使用したことを除いては、実施例1に記載されたことと同じ工程を利用してナノカプセルを製造した。
【0088】
本実験方法により製造されたPLGA−酸化鉄ナノカプセルは、平均サイズ168.9nm、サイズ均一度6.4に均一なサイズのカプセルが形成された。特に酸化鉄ナノ粒子の封入率は、既存の乳化−拡散合成法で酸化鉄ナノ粒子の凝集により限界点と考えられた7重量%を大きく超えて27.4重量%に非常に高く現れた。
【実施例4】
【0089】
平均サイズが小さなPLGA−酸化鉄ナノカプセルの製造
PLGA40mg、エチルアセテート3ml、酸化鉄ナノ粒子40mg、プルロニックF−127 5重量%水溶液6ml、乳化時の撹拌速度26,000rpmを使用したことを除いては、実施例1に記載されたことと同じ工程を利用してナノカプセルを製造した。
【0090】
本実験方法により製造されたPLGA−酸化鉄ナノカプセルのうち、酸化鉄ナノ粒子の封入率は8.8重量%に非常に高く、平均サイズ90.9nm、サイズ均一度7.2に非常に小さいながらも均一なナノカプセルが製造された。
【実施例5】
【0091】
ナノカプセルの体外磁気共鳴弛緩性能の測定
実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルを利用して、MRI T2肝造影剤として使用可能性を評価するために、4.7T磁気共鳴画像診断機(Biospec 47/40,Bruker Biospin MRI GmbH)でBGA12 gradient coilを利用して、体外(invitro)T2弛緩性能を評価した。酸化鉄−PLGAナノカプセル粉末の鉄濃度をICP−AESを介して分析した後、これを0.01M PBS(Phosphate Buffered Saline,pH7.4)溶液に1〜4μgFe/mlの濃度で分散した。最初の溶液を1/2ずつ希薄して全体5種のサンプルを製造した後、これを250μlのチューブに入れて一度にT2弛緩時間を測定した。T2弛緩時間の測定は、MSME(Multi Slice Multi Echo sequence)パルス列を利用し、具体的なパラメーターは、次の通りである。
【0092】
TR(repetition time)=10,000ms,TE(echo time)=8〜2048ms(8ms間隔で256回)、FOV=60x40mm,Resolution=0.234x0.156mm/pixel,slice thickness=1mm,number of acquisition=1,Matrix size=128x128
【0093】
図5は、実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体外造影性能評価を示したグラフ及び磁気共鳴画像であって、本発明の製造方法で作ったカプセルの造影性能が商用造影剤に比べて非常に高いことを確認することができる。
【実施例6】
【0094】
ナノカプセルの体内磁気共鳴弛緩性能の測定
実施例1で製造した酸化鉄−PLGAナノカプセルを利用して、MRI T2肝造影剤として使用可能性を評価するために、4.7T磁気共鳴画像診断機(Biospec 47/40,Bruker Biospin MRI GmbH)でBGA12 gradient coilを利用して体内(invivo)T2弛緩性能を評価した。
【0095】
体内MR実験は、5週齢の雄Balb/cmouseを利用して行い、マウスの体重は、約20〜25gであった。マウスを麻酔した後MRI機器に水平に入れてCoronal planeを観察し、同じ面の肝組織を詳細に観察するために、全体実験時間の間に呼吸麻酔してマウスの動きがほぼない状態を維持した。酸化鉄−PLGAナノカプセル粉末の鉄濃度は、ICP−AESを介して分析した後、0.01M PBS溶液に分散させ、作られたPLGA−酸化鉄ナノカプセル溶液200μlをマウスの尾静脈(tail vein)を介して一度に注入し、最終溶液の容量(dosage)は、マウスの重さを考慮して1mg Fe/kgになるように実験した。T2弛緩時間測定は、RARE(Rapid Acquisition with Refocused Echoes)パルス列を利用し、具体的なパラメーターは次の通りである。
【0096】
TR(repetition time)=3,500ms,TE(echo time)=36ms,FOV=60x40mm,Resolution=0.234x0.156mm/pixel,slice thickness=1mm,number of acquisition=4,Matrixsize=256x256
【0097】
PLGA−酸化鉄ナノカプセルのT2減衰効果を定量的に評価するために、肝組織の一断面を選定して肝部分全体をROI(Region of Interests)に選定し、信号強度(Signal Intensity,SI)を分析した。獲得した信号強度の信頼度を最大化させるために、アガロース(Agarose)1重量%溶液を200μlのチューブに入れて冷却させて固形化させた後、マウスの腹腔周辺に固定して対照群として利用した。PLGA−酸化鉄ナノカプセルのT2弛緩性能は、下記式1で計算してグラフで示した。
【0098】
[式1]
T2減衰効果(△R2)=100*[1−(SNR)/(SNR)](SNR:Signal to Noise Ratio)
(SNR)=(SI of ROI)/(SI of Agarose)
(SNR)=(SI of ROI)/(SI of Agarose)
【0099】
前記式1中、SI of ROIは、関心領域である肝での信号強度を意味し、SI of Agaroseは、肝組織に対する対照群として利用するアガロースの信号強度を意味し、tは、造影剤投入後にt時間が経過した後の信号強度を意味し、0は、造影剤投入直前の信号強度を意味する。
【0100】
実施例1において製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルと商用造影剤の造影性能を図4に比較して示した。商用造影剤の最大T2減衰効果は、(△R2max)約58%であることに対して、本発明により製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルは、最大減衰効果が約73%に現れて商用造影剤に比べてT2減衰効果が非常に優れたことを観察し、少ない量でも肝疾患部位を正確に診断できることを確認した。
【0101】
図6は、実施例1において製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体内造影性能評価を示した磁気共鳴画像であって、本発明の製造方法で作ったカプセルの体内造影性能が商用造影剤に比べて非常に高いことを確認することができる。
【0102】
図7は、実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの投与量別体内造影性能評価を示したグラフであって、本発明の製造方法で作ったカプセルの体内造影性能が投与量別に調節され、商用造影剤に比べてすべての投与量範囲で高いことを確認することができる。特に、商用造影剤の人体投与量である0.42mg Fe/kgで商用造影剤に比べて造影性能が顕著であることを観察できる。
【0103】
図8は、実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの封入率別体内造影性能評価を示したグラフであって、本発明の製造方法で作ったカプセルの体内造影性能が封入率により調節されることを確認することができる。特に、酸化鉄ナノ粒子の封入率が19重量%〜27重量%である場合に、封入率が11重量%以下であるカプセルに比べて高いことを観察できる。
【0104】
図9は、実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルのサイズ別体内造影性能評価を示したグラフであって、本発明の製造方法で作ったカプセルの体内造影性能がカプセルのサイズにより調節されることを確認することができる。特に、カプセルのサイズが100nm以下に小さな場合に、造影性能が増加することを観察でき、したがって、カプセルのサイズ及びサイズ均一度の調節が非常に重要な変数であることが分かる。
【実施例7】
【0105】
ナノカプセルの細胞毒性の測定
実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの毒性を評価するために、細胞毒性評価試験であるMTT[3-(4,5-dimethylthiazol-2yl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)]assayを行った。人間の腎臓細胞株であるHEK293細胞と肝細胞株であるHepG2細胞を使用して試験を行い、両細胞株とも試験容器の表面に付着して増殖する付着型細胞(adherent cell)で96−wellで1x105の密度で種菌した。
【0106】
前記細胞を24時間の間に培養した後に培地を除去した後、9762ppmのPLGA−酸化鉄ナノカプセルを最大濃度にして19ppmまで半分ずつ希釈した総9種の溶液12.5μlと、培養液87.5μlをそれぞれのwellに添加した。これを24時間の間に培養させた後、培地を除去しMTT溶液20μlを添加して4時間の間に培養した。最後に、可溶化(solubilization)溶液100μlを添加して培養した後、550nmの吸光度を測定して細胞の生存率を測定した。
【0107】
図10に示したように、実施例1で製造したPLGA−酸化鉄ナノカプセルの濃度と培養時間に関係なく、すべての細胞株で高い生存率を見せて、本発明に基づいたPLGA−酸化鉄ナノカプセル造影剤使用濃度の300倍以上でも細胞毒性がないことを確認した。
【0108】
(比較例1)
酸化鉄ナノ粒子の均一度が10以下であるPLGA−酸化鉄ナノカプセル
4nm酸化鉄ナノ粒子100mgと10nm酸化鉄ナノ粒子100mgとを混合して使用したことを除いては、前記実施例1に記載されたことと同じ方法で製造した酸化鉄ナノ粒子溶液10mlを利用し、実施例3に記載されたことと同じ工程を利用してナノカプセルを製造し、酸化鉄ナノ粒子のサイズ均一度は、2.8であった。
【0109】
図11は、酸化鉄ナノ粒子の均一度が2.8であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡イメージを示している。平均サイズが4nmである酸化鉄ナノ粒子25重量%と10nmである酸化鉄ナノ粒子75重量%が封入されているカプセルの平均サイズは146nmであり、カプセルのサイズ均一度は約5.12に均一であるが、酸化鉄ナノ粒子の均一度が低くてT2弛緩性能が202.8mM−1−1に測定され、これは10nm酸化鉄ナノ粒子のみを利用して得たT2弛緩性能345.7mM−1−1に比べて大きく低い値である。
【0110】
(比較例2)
封入率が0.5重量%以下であるPLGA−酸化鉄ナノカプセル
酸化鉄ナノ粒子4mgを使用したことを除いては、前記実施例1に記載されたことと同じ方法で製造した酸化鉄ナノ粒子溶液10mlを利用し、実施例3に記載されたことと同じ工程を利用してナノカプセルを製造した。
【0111】
図12は、酸化鉄ナノ粒子の封入率が0.5重量%以下であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルの透過電子顕微鏡イメージを示している。平均サイズが10nmで、サイズ均一度が10以上である酸化鉄ナノ粒子をカプセル化した結果、平均サイズが147.6nmで、サイズ均一度が20である極めて均一なPLGA−酸化鉄ナノカプセルが製造されたが、酸化鉄の比率が極めて低いので、造影剤として利用が制限される。
【0112】
(比較例3)
平均サイズが200nm以上であるPLGA−酸化鉄ナノカプセル
前記実施例1で製造した酸化鉄ナノ粒子溶液10mlを利用し、乳化時の撹拌速度を7,000rpmで実施したことを除いては、実施例3に記載されたことと同じ工程を利用してナノカプセルを製造した。
【0113】
図13は、サイズが200nm以上であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルの体内造影性能評価イメージとグラフを示している。平均サイズが10nmで、サイズ均一度が10以上である酸化鉄ナノ粒子をカプセル化した結果、平均サイズが520.9nmで、サイズ均一度が2.2であるPLGA−酸化鉄ナノカプセルが製造された。カプセルのサイズは、100nmから数μmまで多様に現れ、特に200nm以上のPLGA−酸化鉄ナノカプセルは、T2弛緩性能が低下し、肝への分布が小さくなるので、最大T2減衰効果は(△
R2max)約34%に過ぎなかった。
【0114】
本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されるものに過ぎず、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明が属する分野で通常の知識を有した者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13