【課題を解決するための手段】
【0022】
以下、本発明の酸化鉄ナノカプセル、その製造方法及びこれを利用した造影剤を詳細に説明する。このとき、使用される技術用語及び科学用語において他の定義がないならば、この発明が属する技術分野における通常の知識を有した者が通常理解している意味を有し、下記の説明において本発明の要旨を不明にする恐れがある公知機能及び構成についての説明は省略する。
【0023】
本発明に係る酸化鉄ナノカプセルは、疎水性リガンド(ligand)が結合された複数の酸化鉄ナノ粒子が生分解性高分子及び界面活性剤を含むカプセル物質に封入された酸化鉄ナノカプセルであり、下記の関係式1、2、3、4及び5を満たす特徴がある。
【0024】
(関係式1)
5≦100*D
m(IO)/C
v(IO)
(関係式2)
2.5≦100*D
m(Cap)/C
v(Cap)
(関係式3)
0.5重量%≦F(IO)≦50重量%
(関係式4)
1nm≦D
m(IO)≦25nm
(関係式5)
50nm≦D
m(Cap)≦200nm
(前記関係式1中、D
m(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の平均サイズであり、C
v(IO)は、酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布において標準偏差(standard deviation)で、前記関係式2中、前記D
m(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルの平均サイズであり、C
v(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルのサイズ分布において標準偏差であり、前記関係式3中、F(IO)は、酸化鉄ナノカプセルで封入された酸化鉄ナノ粒子の重量%であり、前記関係式4中、D
m(IO)は、関係式1の定義と同一で、前記関係式5中、D
m(Cap)は、関係式2の定義と同一である。)
【0025】
このとき、前記サイズは、直径を意味し、D
m(IO)は、疎水性リガンドが付着された状態の酸化鉄ナノ粒子の平均直径を意味し、C
v(IO)において酸化鉄ナノ粒子のサイズ分布は、疎水性リガンドが付着された状態の酸化鉄ナノ粒子の直径分布を意味し、F(IO)は、複数の酸化鉄ナノカプセルに封入された酸化鉄ナノ粒子の平均封入量を意味する。
【0026】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルに封入された疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子は、関係式4を満たす特徴がある。直径が1nm未満である酸化鉄は、磁化値が極めて小さいから、T2造影性能が大きく低下して、造影剤として使用し難く、直径が25nmを超過する場合に、酸化鉄ナノ粒子の磁化値は高いが、強磁性体になって外部磁場が除去された状態でも残留磁化を維持するので、粒子間凝集がひどく起きることができるから造影剤としての使用に適していない。
【0027】
前記酸化鉄ナノ粒子の表面に結合された前記疎水性リガンドは、前記酸化鉄ナノ粒子の表面を安定化させる役割を果たし、前記酸化鉄ナノ粒子と結合された前記疎水性リガンドは、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、オクタン酸(octanoic acid)及びデカン酸(decanoic acid)の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0028】
前記疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子において、疎水性リガンドの質量比率は5重量%ないし60重量%であり、好ましくは10重量%ないし40重量%、さらに好ましくは20重量%ないし30重量%である。
【0029】
疎水性リガンドが5重量%未満である場合に、酸化鉄ナノ粒子の表面を十分に覆うことができなくて、酸化鉄粒子の凝集及び沈殿を防止できないから、溶媒への分散性を低下させ、疎水性リガンドが60重量%超過の場合に、カプセル内の封入率を大きく減少させるという短所がある。
【0030】
また、本発明において、酸化鉄ナノカプセルに封入される疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子は、関係式1を満たすという特徴がある。前記関係式1中、100*D
m(IO)/C
v(IO)は、酸化鉄ナノ粒子の均一度(uniformity)を意味する。前記均一度は、100/変動係数(C.V.;Coefficient of Variance)で定義され、前記変動係数は、標準偏差/平均値で定義される。これにより、前記関係式1の酸化鉄ナノ粒子の均一度は、100/酸化鉄ナノ粒子の変動係数であり、前記酸化鉄ナノ粒子の変動係数は、酸化鉄ナノ粒子サイズ分布での標準偏差/酸化鉄ナノ粒子の平均サイズとなる。
【0031】
前記酸化鉄ナノ粒子の均一度が前記関係式1を満たすことによって、前記酸化鉄ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子が50nm以上の均一なサイズに凝集(aggregation)されて、造影性能(R2)を増加させるようになる。
【0032】
さらに詳細に、酸化鉄ナノ粒子の均一度が5以上である場合に、溶解性が一定な、目標サイズだけの酸化鉄粒子を使用するから、カプセル内封入率を増加させてカプセルの造影性能を増加させることができ、均一度が5以下である場合に目標サイズの他、ナノ粒子の比率が高まるようになって、造影性能が低下する。すなわち、目標サイズより小さなナノ粒子は磁化度が低いから、カプセルの造影性能を低下させる結果を表し、目標サイズより大きなナノ粒子は、溶媒への分散性が低下するので、カプセルへの封入率を減少させて、凝集効果(Aggregation effect)が消えるにともなって造影性能が低下する。
【0033】
製造例1において製造した均一度が10.1である10nm酸化鉄ナノ粒子を利用して得たT2弛緩性能は345.7mM
−1s
−1であったが、製造例1で製造した10nm酸化鉄ナノ粒子と製造例2で製造した4nm酸化鉄ナノ粒子とを混合して、均一度が2.8に低い混合ナノ粒子を利用して製造したナノカプセルは、T2弛緩性能が202.8mM
−1s
−1で造影性能が顕著に減少する。
【0034】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルは、関係式5を満たす特徴がある。本発明に係る酸化鉄ナノカプセルを含有する造影剤を血管に注入する場合、生体内吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)及び除去(Elimination)は、酸化鉄ナノカプセルのサイズに大きく影響を受ける。直径が50nm未満であるナノカプセルは、多量のナノカプセルが目的する組織の他にリンパ節に分布する危険があり、直径が200nmを超過する場合、ナノカプセルにより血管がふさがる危険があり、肝組織への吸水率が低いために、造影剤、特に肝造影剤としての使用に適していない。
【0035】
また、本発明において、酸化鉄ナノカプセルは、関係式2を満たす特徴がある。前記関係式2中、100*D
m(Cap)/C(Cap)は、酸化鉄ナノカプセルの均一度(uniformity)を意味し、詳細に前記関係式2の酸化鉄ナノカプセルの均一度は、100/酸化鉄ナノカプセルの変動係数であり、前記酸化鉄ナノカプセルの変動係数は、酸化鉄ナノカプセルサイズ分布での標準偏差/酸化鉄ナノカプセルの平均サイズとなる。
【0036】
前記酸化鉄ナノカプセルの均一度が前記関係式2を満たすことによって、MRI造影のための注入時に、目的する組織以外の組織への吸収を抑制でき、これにより同じ注入量で目的する組織を優れた造影性能で観察できるようになる。
【0037】
上述したように、本発明の酸化鉄ナノカプセルは、関係式3を満たす特徴がある。本発明の酸化鉄ナノカプセルは、前記関係式3のようにナノカプセルに非常に高含有量で酸化鉄ナノ粒子が封入されていることによって、低い濃度で本発明の酸化鉄ナノカプセルを含有する造影剤でも非常に優れた造影性能を有するという特徴があり、特に、商用造影剤の人体投与量である0.42mg Fe/Kgを基準としても、造影剤に含まれた酸化鉄ナノカプセルの濃度を画期的に低くすることができる。本発明の酸化鉄ナノカプセルが前記関係式3を満たすことによって、造影剤の原価低減はもちろん、造影剤の人体投入により引き起こされる副作用及びショックが防止される特徴がある。
【0038】
さらに特徴的に、前記酸化鉄ナノカプセルは、下記の関係式6及び7をさらに満たす。
(関係式6)
10≦100*D
m(IO)/C
v(IO)
(関係式7)
5≦100*D
m(Cap)/C
v(Cap)
(前記関係式6のD
m(IO)及びC
v(IO)は、関係式1の定義と同一であり、前記関係式7のD
m(Cap)及びC
v(Cap)は、関係式2の定義と同一である。)
【0039】
本発明の酸化鉄ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子の均一度が前記関係式6を満たすことによって、ナノカプセルで封入される複数の酸化鉄ナノ粒子がより均一に凝集され、また、酸化鉄ナノカプセルの均一度が前記関係式7を満たすことによって、目的する組織以外の他組織にナノカプセルが吸収されて、造影性能を低下させることをさらに効果的に防止する。このとき、前記関係式6または7において前記酸化鉄ナノ粒子の均一度は実質的に1000以下で、前記ナノカプセルの均一度は1000以下である。
【0040】
より特徴的に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルは、下記の関係式8をさらに満たす。
(関係式8)
7重量%≦F(IO)≦35重量%
(前記関係式8のF(IO)は、関係式3の定義と同一である。)
【0041】
このとき、前記高い酸化鉄ナノ粒子の封入量は、有機溶媒に0.1ないし20重量%、好ましくは0.5ないし8重量%の酸化鉄ナノ粒子が分散され、0.1ないし20重量%、好ましくは0.5ないし8重量%、さらに好ましくは0.5ないし4重量%の生分解性高分子が溶解された酸化鉄ナノ粒子分散液と、界面活性剤水溶液とを混合及び乳化して乳化液を製造し、前記乳化液に水を投入して前記酸化鉄ナノカプセルを製造することによって達成される特徴がある。
【0042】
本発明において酸化鉄ナノ粒子のカプセル化物質は、生分解性高分子を含む。生分解性高分子は、人体に無害であり、生体適合性に優れたものであれば何でも使用可能であり、その例としてポリラクチド(Polylactide、PLA)、ポリグリコリド(Polyglycolide、PGA)、及びこれらの共重合体であるポリラクチド−コ−グリコリド(poly(lactide-co-glycolide)、PLGA)の中から選ばれるか、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0043】
特に、PLGAは、人体での無害性、安定性及び生体親和性が確認されており、FDAで注射剤として承認を受けた物質であって疎水性を有するので、水によく溶けない薬物の伝達体として多くの研究がなされている。また、PLAとPGAの比率に応じて生体内での分解速度を調節できるので、疎水性リガンドが付着された酸化鉄ナノ粒子を捕集して生体に伝達するのに適切なカプセル化物質の一つである。
【0044】
生分解性高分子の分子量(Mw)は、1,000ないし250,000であることを使用することができ、好ましくは2,000ないし100,000であり、さらに好ましくは5,000ないし20,000であることを使用することができる。
【0045】
本発明において酸化鉄ナノ粒子のカプセル化物質は、界面活性剤を含有し、前記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネートの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。前記カプセル化物質に含まれていた界面活性剤は、高分子−酸化鉄ナノ粒子有機溶液のエマルション形成及びナノサイズへの拡散役割を行い、前記酸化鉄ナノカプセルの生体安定性及び分散安定性のために、前記カプセル化物質に含まれた生分解性高分子:界面活性剤の重量比は100:10ないし10000、好ましく100:100ないし1000であることが好ましい。
【0046】
本発明は、上述した酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI用T2造影剤を提供し、さらに特徴的に上述した酸化鉄ナノカプセルを含有するMRI用T2肝造影剤を提供する。
【0047】
本発明に係るMRI用T2造影剤は、上述したサイズ及び分布を有する超常磁性酸化鉄ナノ粒子が極めて高い封入率で封入された酸化鉄ナノカプセルを含有することによって、低い濃度で非常に高いT2造影効果を有し、酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布が制御されて目的する組織に効果的に分布して造影性能を向上させ、人体内の副作用が防止されるという効果がある。本発明の酸化鉄ナノカプセルを含有した造影剤において、上記目的する組織は肝臓である特徴がある。
【0048】
以下、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法を詳述する。本出願人は、後述する第1様態及び第2様態の製造方法を基盤に努力に努力を重ねて数多くの実験を繰り返した結果、酸化鉄ナノ粒子の封入率を制御する主因子、封入される酸化鉄ナノ粒子の凝集を制御する主因子、酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布を制御する主因子を導き出した。
【0049】
本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法は、乳化拡散法(emulsification-diffusion method)を利用して製造され、本発明に係る製造方法の第1様態である下記の製造方法(I)及び本発明に係る製造方法の第2様態である下記の製造方法(II)を含む。
【0050】
詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法(I)は、a1)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解した後、前記極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を添加し超音波処理して、酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップと、b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップと、c)前記乳化液に水を添加して酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップと、を含んで行われる特徴がある。
【0051】
さらに詳細に、本発明の第1様態は、乳化拡散法の有機相(Oil phase)を提供する、水と部分的に混和する特性(部分水混和性、partially water-miscible)を有する、極性有機溶媒(第1溶媒)に生分解性高分子をまず溶解して、有機溶媒の極性が弱まった生分解性高分子溶解液を製造した後、前記生分解性高分子溶解液に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を添加し超音波処理(ultrasonication)して、酸化鉄ナノ粒子分散液を製造する。
【0052】
以後、乳化拡散法の水相(Water phase)を提供する水に界面活性剤を溶解させて製造された界面活性剤水溶液と前記酸化鉄ナノ粒子分散液とを混合して、均質機(homogenizer)を利用して乳化するステップが行われる。
【0053】
前記乳化ステップにて製造された乳化液に水を添加して、前記乳化液の酸化鉄−生分解性高分子−界面活性剤を水相に拡散させて酸化鉄ナノカプセルを製造する。
【0054】
詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルの製造方法(II)は、a2)生分解性高分子を極性有機溶媒に溶解するステップと、a3)前記極性有機溶媒より沸点の低い非極性有機溶媒に疎水性リガンドが結合された酸化鉄ナノ粒子を分散するステップと、a4)生分解性高分子が溶解された極性有機溶媒と酸化鉄ナノ粒子が分散された非極性有機溶媒とを混合した後、蒸留により非極性有機溶媒を除去して酸化鉄ナノ粒子分散液を製造するステップと、b)前記酸化鉄ナノ粒子分散液と界面活性剤水溶液とを混合して乳化し、乳化液を得る乳化ステップと、c)前記乳化液に水を添加して、酸化鉄ナノカプセルを製造する拡散ステップとを含んで行われる特徴がある。
【0055】
上述した第1様態または第2様態において、前記製造方法は、c)ステップ後、透析及び凍結乾燥により酸化鉄ナノカプセル粉末を製造するステップがさらに行われることができる。
【0056】
関係式1及び関係式4を満たす酸化鉄ナノ粒子であり、前記酸化鉄ナノ粒子分散液に用いられる酸化鉄ナノ粒子は、疎水性リガンドが表面に結合された酸化鉄ナノ粒子であって、鉄を中心原子にして疎水性有機酸基がリガンドで結合されている鉄錯体を熱分解して製造されることが好ましい。
【0057】
前記酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、前記乳化ステップ及び拡散ステップのそれぞれにおいて行われる撹拌により制御される特徴がある。詳細に、本発明に係る酸化鉄ナノカプセルを製造するために、前記乳化ステップの撹拌は、8000rpm以上、好ましく8000rpmないし26000rpmであり、前記拡散ステップの撹拌は、100rpm以上、好ましく100rpmないし2500rpmで行われる。
【0058】
さらに詳細に、均質機による乳化工程は、2分ないし15分の時間の間に8,000rpm以上、好ましく8000rpmないし26000rpmの撹拌速度で反応物を撹拌することが好ましい。撹拌時間が2分未満である場合に混合溶液が十分に撹拌されない場合もあり、撹拌時間が15分以上の場合に、水と接触した高分子の硬化現象により、拡散工程でカプセルが円滑に拡散されない場合もある。撹拌速度が8,000rpm未満である場合に、初期エマルションの液滴サイズが増加して拡散工程を行っても最終カプセルのサイズが300nm以上になるという問題がある。
【0059】
本発明に係る製造方法における前記拡散ステップは、乳化された溶液に水を添加して溶媒と酸化鉄−高分子−界面活性剤粒子を拡散させてナノカプセルを製造するステップである。乳化溶液に水を添加すると、エマルションは、周囲の水が多くなりながら瞬間的に過飽和状態を経験するようになり、数百nmサイズの小さな有機溶媒塊がエマルションの表面から分離されて、最終的にカプセルを形成する。このとき、前記拡散ステップにて投入される水は、乳化ステップにて製造された乳化液の体積を基準に2倍ないし15倍の水が投入されることが好ましい。
【0060】
このとき、水の投入により行われる拡散ステップでの撹拌速度は、100rpm以上、好ましく100rpmないし2500rpmであることが好ましい。撹拌速度が100rpm未満である場合に、剪断力が小さくてエマルションの周囲環境を速く変えることができないために、カプセルの平均サイズが増加し、サイズの均一度が増加するという問題がある。
【0061】
特徴的に、本発明の製造方法のうち、第2様態において、前記酸化鉄ナノカプセルのサイズ及び分布は、前記a4)ステップの蒸留後に残留する非極性有機溶媒の残留量により制御される。このとき、蒸留温度は、前記非極性有機溶媒の沸点より高く、前記極性有機溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい
【0062】
前記蒸留により、沸点の低い非極性有機溶媒が選択的に除去されるが、このとき、蒸留時間を調節して残留する非極性有機溶媒の量を制御できる。前記極性有機溶媒に残留する非極性有機溶媒の量は、乳化ステップでのエマルションサイズ及び分布だけでなく、拡散ステップにおいて酸化鉄−高分子−界面活性剤粒子の拡散駆動力に影響を及ぼし、ナノカプセルのサイズ及び分布を制御する。
【0063】
ナノカプセルのサイズ及び分布を制御するために、前記a4)ステップでの蒸留により、極性有機溶媒:非極性有機溶媒の体積比は、100:1以下に、実質的に100:0.001〜1に制御されることが好ましい。このとき、前記蒸留による極性有機溶媒:非極性有機溶媒の体積比を制御すると同時に、上述した前記乳化ステップ及び拡散ステップのそれぞれで行われる撹拌条件もまた満たすことが好ましい。
【0064】
本発明に係る製造方法(第1様態または第2様態を含む)において、前記酸化鉄ナノカプセルに封入された酸化鉄ナノ粒子の封入量は、前記ナノ粒子分散液の酸化鉄ナノ粒子の濃度及び生分解性高分子の濃度により制御されるという特徴がある。また、前記ナノカプセルに封入される酸化鉄ナノ粒子の凝集度もまた前記酸化鉄ナノ粒子分散液に含まれた酸化鉄ナノ粒子の濃度及び生分解性高分子の濃度により制御される。前記関係式8を満たす酸化鉄ナノカプセルを製造するために、前記ナノ粒子分散液は、0.1ないし20重量%、好ましく0.5ないし8重量の酸化鉄ナノ粒子及び0.1ないし20重量%、好ましく0.5ないし8重量%、さらに好ましく0.5ないし4重量%の生分解性高分子を含有することを特徴がある。
【0065】
前記極性有機溶媒は、水と部分的に混ざる特性(部分水混和性)を有する有機溶媒であって、エチルアセテート、メチレンクロライド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート及びベンジルアルコールの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0066】
本発明の第2様態において、前記非極性有機溶媒は、前記極性有機溶媒より極性が低い有機溶媒のことを意味し、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン及びオクタンの中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0067】
前記生分解性高分子は、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)及びポリラクチド−コ−グリコリド(poly(lactide-co-glycolide))の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含み、前記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート(polysorbate)、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(alkyldiphenyloxide disulfonate)の中から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合物を含む。
【0068】
このとき、前記界面活性剤水溶液の濃度は、1ないし10重量%であり、前記乳化液において前記生分解性高分子:界面活性剤の重量比は100:10ないし10000、好ましく100:100ないし1000であることが好ましい。