特許第5714125号(P5714125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714125
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】フロントエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/203 20060101AFI20150416BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20150416BHJP
   B62D 1/04 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B60R21/203
   B60R21/217
   B62D1/04
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-547030(P2013-547030)
(86)(22)【出願日】2012年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2012076097
(87)【国際公開番号】WO2013080671
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-263142(P2011-263142)
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一朗
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−145112(JP,A)
【文献】 特開2011−213251(JP,A)
【文献】 特開2004−026135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/203
B60R 21/217
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールと、該ステアリングホイールの中央に取り付けられるエアバッグモジュールとを含むフロントエアバッグ装置であって、
前記エアバッグモジュールは、エアバッグと、該エアバッグを収容するハウジングとを含み、
前記ステアリングホイールは、
前記ハウジングに掛けられ、前記エアバッグモジュールの位置を規制する位置決めフックと、
前記ハウジングへ向かって伸び、前記エアバッグモジュールが該ステアリングホイールから外れる方向へ移動した場合において、該ハウジングに掛かることで該エアバッグモジュールの脱落を防ぐ保持フックと、備え、
前記ハウジングは、
前記位置決めフックが掛けられる位置決めタブであって、たわんで傾くことで該位置決めフックと連結または解除可能な位置決めタブと、
前記場合において前記保持フックが掛けられる弾性体、を備え、
前記位置決めタブは、前記弾性体の近傍に設けられていて、
前記位置決めタブはさらに、該位置決めタブの形状を延長する延長部を有し、
前記ステアリングホイールはさらに、前記延長部を外部から視認可能にする窓部を有し、
前記位置決めタブは、前記傾くことで、前記解除に加えて、前記弾性体の前記保持フックとの接触が避けられるよう該弾性体を押し曲げて移動させることを特徴とするフロントエアバッグ装置。
【請求項2】
前記位置決めタブはさらに、前記弾性体へ向かって突出した形状であって、該弾性体を前記移動させる押出部を有することを特徴とする請求項1に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記位置決めタブが前記傾けるよう、該位置決めタブの傾く側に間隙を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項4】
前記位置決めタブは、前記弾性体の端部近傍に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項5】
前記押出部の前記弾性体側の縁が、その上部へゆくほど該弾性体へ向かって突出するよう傾斜を描いていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項6】
前記押出部の前記弾性体側の縁が、その上部へゆくほど該弾性体へ向かって突出するよう弧を描いていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項7】
前記押出部の前記弾性体側の縁が、その上部へゆくほど該弾性体へ向かって突出するようS字曲線を描いていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項8】
前記延長部は、その上端面に所定の工具を挿し込み可能な溝部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項9】
前記延長部は、その上端面に所定の工具を挿し込み可能な穴部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項10】
前記延長部は、前記傾く方向とは反対側の面が、該延長部が延びている方向に対して該傾く方向へ向かって傾斜を描いていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項11】
前記保持フックは、前記エアバッグモジュールが外れる方向へ沿って前記伸びていて、
前記ハウジングは、前記弾性体の前記移動を前記保持フックの前記伸びている方向に対する直交方向へのみ許容するガイド部を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ステアリングホイールはさらに、外装であって該ステアリングホイールの前記エアバッグモジュールとは反対側に取り付けられるステアリングカバーを含み、
前記窓部は、前記ステアリングカバーに設けられた開口部を含んでいることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【請求項13】
前記窓部は、前記延長部における前記傾く方向とは反対側を前記視認可能にすることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のフロントエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールと、ステアリングホイールの中央に取り付けられるエアバッグモジュールとを含むフロントエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ほぼすべての車両(自動車)にエアバッグが搭載されている。エアバッグには設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば、運転者を保護するために一般的に用いられるフロントエアバッグは、ステアリングホイールの中央付近に設置されている。その場合、フロントエアバッグは、これを収容するハウジング内に小さく折り畳まれ、さらにカバーで覆われて設置される。
【0003】
上記のようにして構成されているフロントエアバッグの多くは、エアバッグモジュールとしてステアリングホイールとは別体になっている。例えば特許文献1のエアバッグ装置は、ステアリングホイールとは別体である。このエアバッグ装置のケースの裏面には取付杆部と呼ばれる棒状のばね鋼が取り付けられていて、このばね鋼をステアリングホイールのフックに連結させることで、エアバッグ装置はステアリングホイールに取り付けられている。ばね鋼はたわむことが可能であって、これらばね鋼およびフック部を利用することで、特許文献1のエアバッグ装置はステアリングホイールに容易に取り付け、かつ、取り外すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−145112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のエアバッグ装置は、ステアリングホイールの裏側から取外し治具を挿し込み、この取外し治具を操作してばね鋼とフックとの連結を解除させることで、エアバッグ装置をステアリングホイールから取り外す構造になっている。このような着脱可能な構造のエアバッグ装置は、車両の運用開始後においてもエアバッグのメンテナンスが可能になるため便利であるが、より簡単な作業での取外しが可能になればさらに好ましい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、ステアリングホイールからエアバッグモジュールをより簡単な作業で取り外すことができるフロントエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるフロントエアバッグ装置の代表的な構成は、車両のステアリングホイールと、ステアリングホイールの中央に取り付けられるエアバッグモジュールとを含むフロントエアバッグ装置であって、エアバッグモジュールは、エアバッグと、エアバッグを収容するハウジングとを含み、ステアリングホイールは、ハウジングに掛けられ、エアバッグモジュールの位置を規制する位置決めフックと、ハウジングへ向かって伸び、エアバッグモジュールがステアリングホイールから外れる方向へ移動した場合において、ハウジングに掛かることでエアバッグモジュールの脱落を防ぐ保持フックと、備え、ハウジングは、位置決めフックが掛けられる位置決めタブであって、たわんで傾くことで位置決めフックと連結または解除可能な位置決めタブと、上記の場合において保持フックが掛けられる弾性体と、を備え、位置決めタブは、弾性体の近傍に設けられていて、位置決めタブはさらに、位置決めタブの形状を延長する延長部を有し、ステアリングホイールはさらに、延長部を外部から視認可能にする窓部を有し、位置決めタブは、傾くことで、解除に加えて、弾性体の保持フックとの接触が避けられるよう弾性体を押し曲げて移動させることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、各部材同士を組み付けた後にエアバッグモジュールのみを取り外す場合、ステアリングホイールの窓部に例えばドライバに代表される一般的な工具を挿し込み、この工具で延長部を押し込んで位置決めタブを傾けさせるだけの簡単な作業でエアバッグモジュールを取り外すことができる。したがって、エアバッグのメンテナンスを行う際などに、作業にかかる労力や時間が低減できる。
【0009】
上記の位置決めタブはさらに、弾性体へ向かって突出した形状であって、弾性体を移動させる押出部を有するとよい。この押出部によれば、弾性体をより大きく移動させることができるため、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0010】
上記のハウジングは、位置決めタブが傾けるよう、位置決めタブの傾く側に間隙を有するとよい。この構成により、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0011】
上記の位置決めタブは、弾性体の端部近傍に設けられるとよい。この弾性体は、例えば棒状のスプリングなどによって実現でき、端部側に力を加えるほうが押し曲げやすい。そのため、この端部の近傍に位置決めタブを設けることで、弾性体をより少ない力で押し曲げることが可能になり、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0012】
上記の押出部は、その弾性体側の縁が、その上部へゆくほど弾性体へ向かって突出するよう傾斜を描いていてもよい。この構成によれば、延長部をたわませるほどに、押出部に押されることによる弾性体の移動距離が大きくなるので、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0013】
上記の押出部は、その弾性体側の縁が、その上部へゆくほど弾性体へ向かって突出するよう弧を描いていてもよい。この構成であると、弾性体を押して移動させる際に、弾性体と点接触するために、より円滑に移動させることができる。また、この構成によっても、延長部をたわませるほどに、押出部に押されることによる弾性体の移動距離が大きくなるので、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0014】
上記の押出部は、その弾性体側の縁が、その上部へゆくほど弾性体へ向かって突出するようS字曲線を描いていてもよい。この構成によっても弾性体と点接触し、加えて、弾性体を縁に沿わせてより円滑に移動させることができる。また、この構成によっても、延長部をたわませるほどに、押出部に押されることによる弾性体の移動距離が大きくなるので、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0015】
上記の延長部は、その上端面に所定の工具を挿し込み可能な溝部を有していてもよい。この形状の溝部であれば例えばマイナスドライバをかみ合わせることができるため、延長部を弾性体へ向かって容易に押し込むことが可能になる。
【0016】
上記の延長部は、その上端面に所定の工具を挿し込み可能な穴部を有していてもよい。例えば、単に四角形の穴であってもある程度の大きさで設けておけば、幅広い種類の工具が挿し込めるようになる。そして、工具を挿し込むことができれば、延長部を容易に押し込むことが可能になる。
【0017】
上記の延長部は、傾く方向とは反対側の面が、延長部が延びている方向に対して傾く方向へ向かって傾斜を描いていていてもよい。この構成であれば、窓部から工具を挿し込んだ際に、工具で延長部が押し込みやすくなる。したがってこの構成によれば、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0018】
上記の保持フックは、エアバッグモジュールが外れる方向へ沿って伸びていて、ハウジングは、弾性体の移動を保持フックの伸びている方向に対する直交方向へのみ許容するガイド部を有するとよい。この構成であれば、弾性体を、保持フックを避ける方向へのみに効率よく移動させることが可能になる。したがって、エアバッグモジュールの取外し作業がより容易になる。
【0019】
上記のステアリングホイールさらに、外装であってステアリングホイールのエアバッグモジュールとは反対側に取り付けられるステアリングカバーを含み、窓部は、ステアリングカバーに設けられた開口部を含んでいてもよい。この構成であれば、装置全体を車両に組み付けた後であっても、エアバッグモジュールのみを簡単に取り外すことが可能になる。
【0020】
上記の窓部は、延長部における傾く方向とは反対側を視認可能にするとしてもよい。この構成であれば、工具を使用しての延長部の押し込みが容易に行える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ステアリングホイールからエアバッグモジュールをより簡単な作業で取り外すことができるフロントエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態にかかるフロントエアバッグ装置を例示した図である。
図2図1(b)のエアバッグモジュールの概要を例示した図である。
図3図2(b)の位置決めタブの周辺を例示した斜視図である。
図4図3の位置決めタブの動作の過程を例示した図である。
図5図1(a)のB−B断面図である。
図6図4(a)の押出部の各変形例を例示した図である。
図7図3の延長部の各変形例を例示した図である。
図8図3の延長部の変形例を例示した図である。
【符号の説明】
【0023】
E1 …間隙、D3 …スプリングの方向、D4 …スプリングの方向に直交する方向、100 …フロントエアバッグ装置、102 …ステアリングホイール、104 …エアバッグモジュール、106 …金属部、108 …リング部、110 …ステアリングカバー、112a・112b …保持フック、114 …エアバッグ、116 …ハウジング、117 …孔、118 …カバー、120a・120b …スプリング、122a・122b …端部、124a・124b …位置決めタブ、126・126b・400・500・600 …延長部、128・200・300 …押出部、130・202・302 …押出部の縁、132a・132b …開口部、180 …工具、402・502・ …上端面、404 …溝部、504 …穴部
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態にかかるフロントエアバッグ装置100を例示した図である。図1(a)では、フロントエアバッグ装置100の全体を例示している。なお、図1(a)を含む以下の図面では、フロントエアバッグ装置100が車両に取り付けられた時を想定した方向として、不図示のステアリングコラム(シャフト)の方向をZ軸とし、このZ軸に直交する平面で、アナログ12時間時計の12時を車両前方側としたときにおける、9時から3時方向をX軸、6時から12時方向をY軸として例示する。
【0026】
図1(a)のフロントエアバッグ装置100は、運転者を保護するための装置であり、ステアリングホイール102と、その中央付近に取り付けられているエアバッグモジュール104とを含んで構成されている。
【0027】
エアバッグモジュール104は、ホーンスイッチとしても機能する。そのため、例えばエアバッグモジュール104とステアリングホイール102との間にはバネ部材(不図示)が設けられていて、エアバッグモジュール104はステアリングホイール102へ向かって押下げることが可能になっている。
【0028】
図1(b)は、図1(a)のフロントエアバッグ装置100の分解図である。図1(b)に示すステアリングホイール102には、金属製の芯材(金属部106)が用いられていて、運転者が把持するリング部108などは樹脂で覆われている。また、ステアリングホイール102のうち、エアバッグモジュール104とは反対側である背面側には、樹脂製のステアリングカバー110が取り付けられ、これに覆われる構成となっている。
【0029】
ステアリングホイール102の金属部106には、位置決めフック111a・111bが設けられている。位置決めフック111a・111bは、エアバッグモジュール104のハウジング116(図2(b)参照)に掛けられる部位である。これにより、ステアリングホイール102に取り付けられたエアバッグモジュール104は、ホーンスイッチとして機能するためにZ方向において多少移動可能であるものの、その移動は位置決めフック111a・111bによって所定の範囲内に制限(位置決め)されている。
【0030】
また金属部106には保持フック112a・112bが設けられている。この保持フック112a・112bは、主に、エアバッグモジュール104の脱落を防ぐために設けられた部位である。保持フック112a・112bは、エアバッグモジュール104(特に図2(b)のハウジング116)へ向かって伸びていて、例えばエアバッグ114(図2(a)参照)の作動時などに、エアバッグモジュール104が万が一ステアリングホイール102から外れる方向(Z軸方向に一致)へ移動した場合にハウジング116に掛かることで、エアバッグモジュール104の脱落を防ぐ。
【0031】
これら説明した構成を備えたステアリングホイール102にエアバッグモジュール104を連結させ、さらにステアリングカバー110を組み付けた状態が図1(a)に例示したフロントエアバッグ装置100であるが、本実施形態では、図1(a)の状態のフロントエアバッグ装置100のうち、エアバッグモジュール104のみを簡単に取り外すことのできる工夫がなされている。
【0032】
図2は、図1(b)のエアバッグモジュール104の概要を例示した図である。図2(a)は、図1(b)のエアバッグモジュール104の分解図である。図2(a)に例示したように、エアバッグモジュール104には、折り畳まれたエアバッグ114を内部に収容するハウジング116と、このハウジング116を塞ぐカバー118とが含まれている。これらハウジング116およびカバー118は合成樹脂で構成されている。
【0033】
図2(b)は、図2(a)のハウジング116を単独で、かつその裏面(ステアリングホイール102側(図1(b)参照))を例示した図である。ハウジング116の裏側のほぼ中央には孔117が設けられていて、この孔にはガス発生装置であるインフレータ(図示省略)が取り付けられる。なお、エアバッグモジュール104(図1(a)参照)はホーンスイッチとしても機能するため、ハウジング116の裏面には端子(図示省略)なども取り付けられる。
【0034】
ハウジング116の裏面には、本実施形態における弾性体として、2箇所にスプリング120a・120bが取り付けられている。このスプリング120a・120bは、図1(b)を参照して説明したようなエアバッグモジュール104がステアリングホイール102から外れる方向へ移動した場合に、保持フック112a・112bが掛かる部位である。スプリング120a・120bは、棒状に形成された金属製の部材であって、弾性を有していてたわむことができる。これらスプリング120a・120bは、通常状態においては保持フック112a・112bと接触していない。なお、棒状のスプリングは弾性体の一例であってこれに限られず、例えば板状のスプリングなどによっても実現できる。
【0035】
スプリング120a・120bの端部122a・122bの近傍には、ステアリングホイール102の位置決めフック111a・111b(図1(b)参照)が掛けられる位置決めタブ124a・124bが設けられている。位置決めタブ124bを例に挙げて説明する(位置決めタブ124a・124bは同じ構成である)。位置決めタブ124bは板状に延びている部位であって、位置決めフック111bが掛けられるようその中央に開口125bがもうけられている。ハウジング116が樹脂製であるために、位置決めタブ124bも可撓性を有していて、根元付近がたわんで傾くことができる。このように傾くことが可能になっていることで、位置決めフック111bと連結し、または解除することが可能になっている。
【0036】
本実施形態では、図1(a)のエアバッグモジュール104をステアリングホイール102から取り外す場合、図2(b)の位置決めタブ124bをたわませて傾けることで、この位置決めタブ124bを位置決めフック111b(図1(b)参照)から外すだけでなく、位置決めタブ124bを介してスプリング120bを押し曲げて移動させ、スプリング120bと保持フック112b(図1(b)参照)とが引っかからないようそれらの接触を避けることが可能になっている。以下、詳細に説明する。なお、位置決めタブ124a・124bの構成は同じであって、以下では位置決めタブ124aを例に挙げて説明を行う。
【0037】
図3は、図2(b)の位置決めタブ124aの周辺を例示した斜視図である。位置決めタブ124aには、この位置決めタブ124aの形状を延長させるように、延長部126が設けられている。この延長部126は、ステアリングホイール102(図1(b)参照)からエアバッグモジュール104を取り外す場合において、位置決めタブ124aを傾けさせる際に作業員が工具180(図5参照)で押す部位である。
【0038】
また本実施形態では、延長部126のスプリング120a側であって位置決めタブ124aを傾けさせた場合にスプリング120aに接触する個所には、押出部128が設けられている。押出部128は、延長部126からスプリング120aへ向かって突出した形状になっている。
【0039】
図4は、図3の位置決めタブ124aの動作の過程を例示した図である。図4(a)は、図3の位置決めタブ124aの矢視A図である。この図4(a)には、保持フック112aを仮想線で例示している。この図4(a)の状態から延長部126を押して位置決めタブ124aをスプリング120a側へたわませると、図4(b)に例示したように、位置決めタブ124aが位置決めフック111aから外れ、さらに押出部128がスプリング120a部を押し曲げてこれを移動させ、スプリング120aと保持フック112aとの接触が避けられる状態となる。これにより、図1(a)のエアバッグモジュール104をステアリングホイール102から取り外すことが可能になる。
【0040】
本実施形態では、図4(a)に例示したように、押出部128は、スプリング120a側の縁130が、その上部へゆくほどよりスプリング120aへ向かって突出するよう傾斜を描いた形状となっている。この形状であれば、位置決めタブ124aを傾けさせるほどに、押出部128に押されることによるスプリング120aの移動距離が大きくなる。したがって、エアバッグモジュール104の取外し作業がより容易になる。
【0041】
図2(b)に例示したように、位置決めタブ124a・124bは、スプリング120a・120bの端部122a・122b近傍に設けられている。スプリング120a・120bは棒状であって、端部122a・122b側に力を加えるほうが押し曲げやすい。そのため、端部122a・122bの近傍に位置決めタブ124a・124bを設けることで、スプリング120a・120bをより少ない力で押し曲げることが可能になるよう配慮している。
【0042】
再び図3を参照する。図3に例示するように、ハウジング116のうち、位置決めタブ124aが設けられた箇所のスプリング120a側には、間隙E1が設けられている。この位置に間隙を設けることで、図4(b)のように位置決めタブ124aがたわんで傾けるよう配慮している。
【0043】
また、ハウジング116にはガイド部140が設けられている。ガイド部は、ハウジング116上における梁部140aと、梁部140aの図中下方の縁部140bとで構成されている。このガイド部140によってスプリング120aは、図4(b)に例示したZ軸方向への移動が規制され、X軸上の方向へのみ移動が許容されている。ここで、保持フック112aは、エアバッグモジュール104の取外し方向であるZ軸方向へ沿って伸びていて、スプリング120aの移動方向はこの保持フック112aの伸びているZ軸方向に対する直交方向であるX軸方向へのみ許容されている。このようにして、スプリング120aを、保持フック112aを避ける方向へのみに効率よく移動させることが可能になっている。
【0044】
図5は、図1(a)のB−B断面図である。図5に例示するように、ステアリングホイール102のうち、延長部126が重なる位置には、窓部132a・132bが設けられている。この窓部132a・132bは、延長部126を外部から視認可能にするための間隙(もしくは開口)である。本実施形態では、まず、窓部132aに工具180を挿し込み、この工具180で延長部126を押して位置決めタブ124aをたわませて傾けさせる。そしてこれにより、図4(b)を参照して説明したように、位置決めタブ124aが位置決めフック111aから外れ、さらにスプリング120aが保持フック112aと接触しないようX軸方向へ移動するため、エアバッグモジュール104をステアリングホイール102から取り外すことが可能になる。なお、使用する工具180は、棒状であれば一般的なものでよく、例えばドライバ類などが使用できる。
【0045】
本実施形態では、窓部132a・132bには、ステアリングカバー110の開口部134a・134bが含まれている。ステアリングカバー110は、ステアリングホイール102の外装である。ステアリングカバー110にも窓部132a・132bが通じていることで、フロントエアバッグ装置100は、車両へ組み付けた後においても、その全体を分解することなく、エアバッグモジュール104のみを取り外すことが可能になっている。なお、窓部132aは、延長部126における位置決めタブ124aが傾く方向とは反対側を視認可能にさせる構成であってもよく、これにより工具180を使用しての延長部126の押し込みがより容易に行える(窓部132bについても同様)。
以上説明したように、当該フロントエアバッグ装置100は、各部材同士を組み付けた後であっても、エアバッグモジュール104のみを簡単な作業で容易に取り外すことができる。したがって、エアバッグ114のメンテナンスを行う際などに、作業にかける労力や時間を低減することが可能になっている。
【0046】
(押出部の変形例)
図6は、図4(a)の押出部128の各変形例を例示した図である。図6(a)に例示した押出部200の縁202は、図4(a)の押出部128の縁130と異なり、上部へゆくほどよりスプリング120aへ向かって突出するよう弧を描いている。この構成であると、スプリング120aを押して移動させる際に、スプリング120aと点接触するために、より円滑に移動させることができる。また、この構成によっても、延長部126をたわませるほどに、押出部200に押されることによるスプリング120aの移動距離が大きくなるので、図5を参照して説明したエアバッグモジュール104の取外し作業がより容易になる。
【0047】
図6(b)に例示した押出部300においても、縁302の形状が他の例と異なっている。押出部300の縁302は、上部へゆくほどスプリング120aへ向かって突出するようS字曲線を描いている。この構成によっても、スプリング120aと点接触し、かつスプリング120aを縁302に沿わせてより円滑に移動させることができる。また、押出部300に押されることによるスプリング120aの移動距離が大きくなるので、図5を参照して説明したエアバッグモジュール104の取外し作業がより容易になる。
【0048】
(延長部の変形例)
図7は、図3の延長部126の各変形例を例示した図である。図7(a)に例示した延長部400は、その上端面402の形状において、図3の延長部126と構成が異なっている。この延長部400は、上端面402に、工具の挿し込み用の溝部404が設けられている。例えば溝部404は、スプリング120aの方向D3に直交する方向D4へ沿って直線状に設けてもよく、この溝部404には例えばマイナスドライバをかみ合わせて、位置決めタブ124aを簡単に押し込むことが可能になっている。なお、その際、溝部404を構成する、位置決めタブ124aの傾く方向とは反対側の壁部406を低めに形成しておくと、工具で押し込んだ際に壁部406が工具へ押し付けられて破損するということが防げるため、好適である。
【0049】
図7(b)に例示した延長部500においても、上端面502の構成が他の例と異なっている。延長部500の上端面502には、穴部504が設けられている。この穴部は単に四角形の穴であるが、ある程度の大きさを確保して設けられているため、幅広い種類の工具が挿し込めるようになっている。そして、工具を挿し込むことで、位置決めタブ124aを簡単に押し込むことが可能になっている。なお、孔部504を構成する、位置決めタブ124aの傾く方向とは反対側の壁部506においても、これを低めに形成しておくと、工具で押し込んだ際に壁部506が工具へ押し付けられて破損するということが防げるため、好適である。
【0050】
図8もまた、図3の延長部126の変形例を例示した図である。図8(a)例示した延長部600は、その背面602の角度に特徴がある。図8(b)は、図8(a)の矢視C図に、図5に例示した窓部132a付近を加えた図である。この背面602は、延長部126における位置決めタブ124aが傾く方向とは反対側の面である。背面602は、延長部126が延びている方向(図中上方向)に対して傾く方向(図中左方向)へ向かって傾斜を描いている。この背面602であれば、窓部132aから工具180を挿し込んだ際に押し込みやすい。また、延長部126の真上のみに窓部138が存在していてそこから仮想線で示す工具182を挿しこんだ場合であっても、背面部602を上から押し込めば位置決めタブ124aはスプリング120aへとたわむため、都合がよい。したがってこのような構成であっても、エアバッグモジュールの取外し作業をより容易に行うことができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0052】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ステアリングホイールからエアバッグモジュールをより簡単な作業で取り外すことができるフロントエアバッグ装置に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8