(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714138
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】分離可能な連結結合部と固定部とを含む電気装置
(51)【国際特許分類】
H01R 12/75 20110101AFI20150416BHJP
H01R 12/88 20110101ALI20150416BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20150416BHJP
H01R 13/05 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
H01R12/75
H01R12/88
H01R13/639 Z
H01R13/05 A
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-558353(P2013-558353)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公表番号】特表2014-512068(P2014-512068A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012052797
(87)【国際公開番号】WO2012123221
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】102011005544.4
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハインリヒ
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−071694(JP,U)
【文献】
実開昭62−100684(JP,U)
【文献】
米国特許第3701071(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/75
H01R 12/88
H01R 13/05
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置であって、
露出された少なくとも1つのコンタクト領域(51,52,53,54)と第1のケーシング(4)とを備えた支持体基板(2)と、
実装状態で前記少なくとも1つのコンタクト領域に接触する少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)と第2のケーシング(30)とを備えたダイレクトプラグイン部材(3)と、
前記第1のケーシング(4)に設けられた第1の連結部(61)と前記第2のケーシング(30)に設けられた第2の連結部(62)とを含む分離可能な第1の連結結合部(6)と、
前記ダイレクトプラグイン部材(3)を前記第1のケーシング(4)に固定する固定部(8)と
を含み、
前記固定部(8)は、前記第1のケーシング(4)に設けられている第1の鉤部(81)と、前記ダイレクトプラグイン部材(3)に設けられている第2の鉤部(82)とを含み、
前記第2の鉤部(82)は第2の連結結合部(7)によって前記第2のケーシング(30)に配置されている、
ことを特徴とする電気装置。
【請求項2】
前記第1の連結結合部(6)の前記第1の連結部(61)および前記第2の連結部(62)はそれぞれ鉤状に構成されている、請求項1記載の電気装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)は全て同じ構造を有する、請求項1または2記載の電気装置。
【請求項4】
前記支持体基板(2)の前記露出された少なくとも1つのコンタクト領域(51,52,53,54)と前記ダイレクトプラグイン部材(3)の前記少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)とは複数の列をなすように配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気装置。
【請求項5】
前記第2の連結結合部(7)はフィルムヒンジまたは機械的ヒンジである、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)は、実装状態では、前記支持体基板(2)の平面に対して所定の角度(α)で配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)は1つずつ弧状端部領域(35)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気装置。
【請求項8】
前記各弧状端部領域(35)に点状コンタクト(36)が設けられている、請求項7記載の電気装置。
【請求項9】
支持体基板(2)であって、
露出された少なくとも1つのコンタクト領域(51,52,53,54)とケーシング(4)とを含み、
前記ケーシング(4)に第1の連結部(61)が設けられており、
前記第1の連結部(61)は、第2の連結部(62)とともに、分離可能な第1の連結結合部(6)を形成するように構成されており、
前記ケーシング(4)には、第1の鉤部(81)が配置されており、
前記第1の鉤部(81)は、固定部(8)の第2の鉤部(82)に噛み合い可能であり、
前記第2の鉤部(82)は、第2の連結結合部(7)によってダイレクトプラグイン部材(3)のケーシング(30)に配置されている、
ことを特徴とする支持体基板(2)。
【請求項10】
ダイレクトプラグイン部材(3)であって、
少なくとも1つの直接コンタクト(31,32,33,34)とケーシング(30)とを含み、
前記ケーシング(30)に第2の連結部(62)が設けられており、
前記第2の連結部(62)は、第1の連結部(61)とともに、分離可能な第1の連結結合部(6)を形成するように構成されており、
前記ダイレクトプラグイン部材(3)の前記ケーシング(30)には、第2の鉤部(82)が配置されており、
前記第2の鉤部(82)は、固定部(8)の第1の鉤部(81)に噛み合い可能であり、
前記第2の鉤部(82)は、第2の連結結合部(7)によって前記ダイレクトプラグイン部材(3)の前記ケーシング(30)に配置されている、
ことを特徴とするダイレクトプラグイン部材(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、プリント回路板などの電気部品のマルチダイレクトコンタクトを改善することに関連しており、特に、改善された直接コンタクトおよび改善されたダイレクトプラグイン部材を含む支持体基板に関する。
【0002】
最近、ダイレクトプラグイン部材を支持体基板、例えばプリント回路板へ直接に差し込む形式のダイレクトプラグインコンタクトが使用される機会が増大している。この場合、プリント回路板上では複数のコンタクト領域がプリント回路板の縁部近傍に一列に配置される。これにより、複数のコンタクト領域はプリント回路板上で相応の長さを有することになり、複雑な配線が生じる。なぜなら、プリント回路板上の各コンタクト領域と各素子との間の経路を、コンタクト領域の個数に応じて増大させなければならないからである。また、ダイレクトコンタクトにおける別の問題として、通常、ダイレクトプラグイン部材を前もってプリント回路板の各コンタクト領域へ押しつけておかなければならないことが挙げられる。このとき、ダイレクトプラグイン部材の直接コンタクトは差し込み過程の区間長さを超えてプリント回路板のコンタクト領域に当接する。このため、差し込み過程のたびに直接コンタクトの表面およびプリント回路板のコンタクト面が摩擦を受け、差し込み過程が多数回になると著しく摩耗する。ここで、例えば制御装置の製造における差し込み過程において、制御装置に重大な損傷が生じることが確認されている。
【0003】
発明の開示
本発明の請求項1の特徴を有する電気装置は、従来技術に比べて、ダイレクトプラグイン部材の差し込み時ないし引き出し時に摩擦を生じる区間長さが大幅に低減されるという利点を有する。このため、ダイレクトプラグイン部材の直接コンタクトおよび支持体基板のコンタクト領域での摩耗現象が著しく低減される。よって、本発明では、ダイレクトプラグイン部材を支持体基板から取り外し、また差し込むことも問題なく繰り返し行える。また、コンタクト領域ないし直接コンタクトの表面に用いられる通常金から成る保護層をより薄くできるというさらなる利点も得られる。こうして、コストの大幅な節約が達成される。なお、従来技術で行われていた押しつけ過程に代えて傾動過程を行うことにより、いっそうのコスト節約も達成される。
【0004】
これらの利点のために、本発明の電気装置は、露出された複数のコンタクト領域とケーシングとを備えた支持体基板、例えばプリント回路板と、実装状態で支持体基板の複数のコンタクト領域に接触する複数の直接コンタクトとケーシングとを備えたダイレクトプラグイン部材とを含む。また、分離可能な第1の連結結合部が設けられており、この第1の連結結合部は、支持体基板のケーシングに設けられた第1の連結部とダイレクトプラグイン部材のケーシングに設けられた第2の連結部とを含む。さらに、ダイレクトプラグイン部材を支持体基板のケーシングに固定する固定部が設けられている。これにより、例えば自動車の振動に起因するダイレクトプラグイン接続の望ましくない脱落が防止される。
【0005】
従属請求項には本発明の有利な実施形態が示されている。
【0006】
有利には、分離可能な第1の連結結合部は鉤状の第1の連結部と鉤状の第2の連結部とを含む。第2の連結部は第1の連結部に対して相補的形状となるように構成される。これにより、簡単かつ迅速に結合および分離の可能な第1の連結部を形成することができる。
【0007】
また有利には、各直接コンタクトは全て同じ構造を有する。このため、ダイレクトプラグイン部材の構造を特に簡単にすることができる。同じ部材を複数個製造することにより、大幅なコスト節約が達成されるからである。
【0008】
さらに有利には、支持体基板の露出された複数のコンタクト領域は複数の列をなすように配置される。これにより特に支持体基板のコンタクト領域の配置長さを低減できる。
【0009】
有利には、固定部は、支持体基板のケーシングに設けられた第1の鉤部と、第2の連結結合部によってダイレクトプラグイン部材のケーシングに設けられた第2の鉤部とを含む。なお、第2の鉤部は第1の鉤部に対して相補的形状となるように構成されている。特に、当該第2の鉤部をダイレクトプラグイン部材のケーシングに固定している第2の連結結合部は、フィルムヒンジまたは機械的ヒンジである。特に有利には、フィルムヒンジはプラスティックから成り、さらに2つの部分の連結結合部をきわめて薄くできるので、特に有利である。ここで有利には、フィルムヒンジはプラスティック材料から製造される。
【0010】
特に有利には、第2の連結結合部はダイレクトプラグイン部材のケーシングの幅全体にわたって延在する。
【0011】
また有利には、各直接コンタクトは、実装状態では、支持体基板のうち各コンタクト領域が配置されている平面に対して所定の角度で配置される。当該角度は、有利には60°以下、特には約45°であり、きわめて平坦な形状のダイレクトプラグイン部材に対しては有利には30°以下である。
【0012】
さらに有利には、各直接コンタクトは、実装状態で支持体基板の各コンタクト領域に接触する弧状端部領域を1つずつ有する。有利には、各直接コンタクトの各弧状端部領域に、点状接触のための点状コンタクトが設けられる。点状コンタクトは例えば弧状端部領域からの打ち抜きによって形成される。
【0013】
本発明は、さらに、第1の連結部を備えたケーシングと少なくとも1つのコンタクト領域とを含む支持体基板に関する。第1の連結部は、第2の連結部と協働して分離可能な第1の連結結合部を形成するように構成されている。
【0014】
本発明は、さらに、第2の連結部を備えたケーシングと少なくとも1つの直接コンタクトとを含むダイレクトプラグイン部材に関する。第2の連結部は、第1の連結部と協働して分離可能な第1の連結結合部を形成するように構成されている。
【0015】
本発明は有利には自動車用制御装置において用いられる。
【0016】
図面
以下に本発明の有利な実施例を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の電気装置の実装状態での実施例の概略的断面図である。
【
図2】本発明の実施例によりダイレクトプラグイン部材を支持体基板へ実装する過程の第1のステップの概略的断面図である。
【
図3】本発明の実施例によりダイレクトプラグイン部材を支持体基板へ実装する過程の第2のステップの概略的断面図である。
【
図4】本発明の実施例によりダイレクトプラグイン部材を支持体基板へ実装する過程の第3のステップの概略的断面図である。
【
図5】本発明の実施例によりダイレクトプラグイン部材を支持体基板へ実装する過程の第4のステップの概略的断面図である。
【0018】
以下に
図1−
図5に則して本発明の有利な実施例の電気装置1を詳細に説明する。
【0019】
図1に示されているように、電気装置1は、プリント回路板として構成された支持体基板2を含む。支持体基板2は、ケーシング4と、コンタクトパッドとして構成された複数のコンタクト領域51,52,53,54とを含む。複数のコンタクト領域51,52,53,54はここではそれぞれ列をなすように(
図1では図平面に対して垂直な列をなすように)配置されているので、複数列のコンタクト領域が設けられている。この場合、全てのコンタクト領域が外部へ向かって露出されるように構成されており、つまり、各コンタクト領域は完全にはケーシング領域によって包囲されていない。
【0020】
さらに、電気装置1は、ケーシング30と、複数の直接コンタクト31,32,33,34とを含むダイレクトプラグイン部材3とを含む。ここで、直接コンタクト31,32,33,34は、
図1の実装状態において、それぞれコンタクト領域51,52,53,54に接触している。この場合、各直接コンタクトは各コンタクト領域の平面に対して約45°の角度αで配置されている。
【0021】
支持体基板2のケーシング4とダイレクトプラグイン部材3のケーシング30との間に第1の連結結合部6が構成されている。第1の連結結合部6は支持体基板2のケーシング4に設けられた第1の連結部61とダイレクトプラグイン部材3のケーシング30に設けられた第2の連結部62とを含む。第1の連結部61は第1の鉤部として構成されており、第2の連結部62は第1の鉤部に対して相補的な形状で構成された対応する第2の鉤部として構成されている。
【0022】
さらに、電気装置1は、ダイレクトプラグイン部材3を支持体基板2のケーシング4に固定する固定部8を含む。固定部8は支持体基板2のケーシング4に設けられた第1の鉤部81とダイレクトプラグイン部材3のケーシング30に設けられた第2の鉤部82とを含む。2つの鉤部81,82は相互に相補的な形状で構成されている。第2の鉤部82は第2の連結結合部7を介してダイレクトプラグイン部材3のケーシング30に接続されている。第2の連結結合部7はプラスティックから成るフィルムヒンジであり、ここで、第2の鉤部82はシーソー状に可動にケーシング30に配置されている。第2の鉤部82のうちケーシング30から遠い側には、固定部8を閉鎖するための第1の圧力面10と固定部8を開放するための第2の圧力面11とが設けられている。
【0023】
図1に示されているように、各直接コンタクト31,32,33,34は1つずつの弧状端部領域35を有しており、各弧状端部領域35のうち支持体基板2に面する側に1つずつ点状コンタクト36が配置されている。複数の直接コンタクト31,32,33,34は、
図1に示されているように全て同じ構造を有しており、それぞれケーブル9を介して電気的に接続されている。直接コンタクトはここでは公知の手法、例えばクランプ接続などによって、ケーブル9に接続することができる。
【0024】
図2−
図5には、ダイレクトプラグイン接続を行うための実装過程が詳細に示されている。
【0025】
図2には、支持体基板2とダイレクトプラグイン部材3とが分離された状態が示されている。ダイレクトプラグイン部材3は矢印Aの方向で支持体基板2へ向かって運動し、これにより分離可能な第1の連結結合部6が形成される。ここで、
図3の実装位置に示されているように、第2の連結部62は第1の連結部61に係止される。ついで、第2の圧力面11に対して圧力が印加されることにより、第2の鉤部82および第2の連結結合部7が矢印Cの方向へ旋回し、各直接コンタクトが各コンタクト領域上に載置される。
【0026】
図4に示されている次の実装ステップでは、ダイレクトプラグイン部材3が矢印Dの方向で第1の連結結合部6を中心として回動し、これにより、各直接コンタクト31,32,33,34が各コンタクト領域51,52,53,54に接触する。続いて、
図5に矢印Eで示されているように、第2の鉤部82が第2の連結結合部7を中心として旋回することによって第1の鉤部81に噛み合い、固定部8がダイレクトプラグイン部材3を支持体基板2のケーシング4に固定する。このとき、第2の鉤部82の第1の圧力面10に圧力がかかる。第2の鉤部82は、或る程度の弾性を有しているので、それほど大きな力をかけなくても第1の鉤部81の後方で閉鎖し、ダイレクトプラグイン部材3をケーシング4に固定することができる。
【0027】
なお、支持体基板2とダイレクトプラグイン部材3との間の直接接触を解消するには、まず第2の圧力面11に圧力をかけて固定部8を開放する。続いて、第1の連結結合部6を中心としてダイレクトプラグイン部材3を上方へ旋回させ、その後、第2の連結部62の係止を外すことにより、ダイレクトプラグイン部材3を支持体基板2から分離する。
【0028】
本発明によれば、押しつけ運動によらずに、ダイレクトプラグイン接続が形成される。本発明では、ダイレクトプラグイン部材3を支持体基板2のケーシング4に係止し、さらに、こうして設けられた分離可能な第1の連結結合部6を中心とした回動により、ダイレクトプラグイン接続が形成される。このため、コンタクト領域51,52,53,54ないし点状コンタクト36に対して特に薄い保護層を設けるだけで済む。この場合、複数のコンタクト領域が複数の列をなすように構成される。各コンタクト領域および各直接コンタクトを複数の列をなすように配置すると、ダイレクトプラグイン部材3の長さを大きく利用でき、実装の際の回転モーメントをそこに生じるクランク力へ転換できるという利点が得られる。これにより、小さな力をかけるのみでダイレクトプラグイン接続が実現される。
【0029】
さらに、確実な固定のために、第1の連結結合部6を中心としたダイレクトプラグイン部材3の回動を制限する1つまたは複数のストッパを設けることができることを挙げておく。また、固定部8の第1の鉤部81および第2の鉤部82を、2つの鉤部の適切な相互係止によって相応の音が発生するように構成し、この音を、組み立て工に正しいダイレクトプラグイン接続が行われたことを知らせる音響信号として利用することができる。
【0030】
第1の連結結合部6および固定部8のできるだけ高い安定性を提供するために第1の連結部61および第2の連結部62および第1の鉤部81および第2の鉤部82は、支持体基板2のケーシング4ないしダイレクトプラグイン部材3のケーシング30の幅全体にわたってチャネル状に延在するように構成される。