(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714144
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】磁気抵抗センサおよび装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/39 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
G11B5/39
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-22169(P2014-22169)
(22)【出願日】2014年2月7日
(62)【分割の表示】特願2011-59180(P2011-59180)の分割
【原出願日】2011年3月17日
(65)【公開番号】特開2014-116068(P2014-116068A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】12/727,698
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディミタール・ベリコフ・ディミトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジオン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアム・コビントン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ウェッセル
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−032382(JP,A)
【文献】
国際公開第03/079331(WO,A1)
【文献】
米国特許第07035062(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/39
H01L 43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗センサであって、
第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された3層スタックとを備え、前記スタックは、非磁性層によって隔てられた第1の強磁性層および第2の強磁性層を含み、
前記3層スタックの後端に隣接するバックバイアス磁石と、
前記3層スタックと前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも一方との間の絶縁層とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れる電流が前記3層スタックを通して流れるときに浮上面近傍に制限されるように、前記絶縁層は前記3層スタックを部分的に覆い、
前記3層スタックの長さは、前記3層スタックの幅の2倍以上である、磁気抵抗センサ。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記3層スタックを完全に覆い、前記浮上面近くの前記絶縁層の一部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れる電流が前記3層スタックを通して流れるときに前記浮上面近傍に制限されるように、絶縁状態から導電状態に変換されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記第1の電極と前記3層スタックの一部との間の第1の絶縁層を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記絶縁層はさらに、前記第2の電極と前記3層スタックの一部との間の第2の絶縁層を含む、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記第1および第2の強磁性層それぞれの磁化の配向は、互いにほぼ垂直であり、浮上面に対して約45度である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記非磁性層は導電体である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記非磁性層は、Cu、Ag、Au、またはその合金のうち1つを含む、請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記非磁性層は電気絶縁体である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
前記非磁性層は、Al2Ox、TiOxおよびMgOからなる群より選択される、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記第1および第2の強磁性層は自由層である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項11】
前記自由層は、FeCoB、NiFeCo、CoFeHf、NiFe、FeCoまたはその合金のうち1つを含む、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
上部電極と、
下部電極と、
上部電極と下部電極との間に配置された3層スタックとを備え、前記スタックは、非磁性層によって隔てられた第1の強磁性層および第2の強磁性層を含み、
前記3層スタックの後端に隣接するバックバイアス磁石を備え、
前記上部電極と前記下部電極との間を流れる電流が前記3層スタックを通して流れるときに浮上面近傍に制限されるように、前記上部電極および前記下部電極のうちの少なくとも一方は、前記3層スタックの一部とのみ電気的に接触し、
前記3層スタックの長さは、前記3層スタックの幅の2倍以上である、装置。
【請求項13】
前記上部電極と前記3層スタックの一部との間の絶縁層をさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記下部電極と前記3層スタックの一部との間の絶縁層をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記上部電極と前記3層スタックの一部との間の絶縁層と、前記下部電極と前記3層スタックの一部との間の絶縁層とをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
絶縁層が前記3層スタックを完全に覆い、前記浮上面近くの前記絶縁層の一部は、前記上部電極と前記下部電極との間を流れる電流が前記3層スタックを通して流れるときに前記浮上面近傍に制限されるように、絶縁状態から導電状態に変換されている、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記第1および第2の強磁性層それぞれの磁化の配向は、互いにほぼ垂直であり、浮上面に対して約45度である、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記非磁性層は導電体である、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記非磁性層は電気絶縁体である、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記第1および第2の強磁性層は自由層である、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
磁気データ記憶および検索システムにおいて、磁気記録ヘッドは典型的に、磁気ディスクに格納されている磁気的に符号化された情報を検索するための磁気抵抗(MR)センサを有する読取部を含む。ディスクの表面からの磁束が、MRセンサの1つまたは複数の検知層の磁化ベクトルの回転を引起し、これによってMRセンサの電気抵抗率が変化する。この検知層は「自由」層と呼ばれることが多い。なぜなら、検知層の磁化ベクトルは外部の磁束に反応して自由に回転するからである。MRセンサの抵抗率の変化は、電流をMRセンサに流してMRセンサにかかる電圧を測定することによって検出できる。次に、外部回路が、電圧情報を適切なフォーマットに変換し、必要に応じてこの情報を操作してディスク上で符号化された情報を復元する。
【0002】
(1)異方性磁気抵抗(AMR)センサ、(2)スピンバルブセンサおよび多層巨大磁気抵抗(GMR)センサを含む巨大磁気抵抗(GMR)センサ、ならびに(3)トンネル巨大磁気抵抗(TGMR)センサという3つの一般的なカテゴリで特徴付けることができるMRセンサが開発されてきた。
【0003】
トンネルGMR(TGMR)センサは、センサの磁性層が、磁性層と磁性層の間で電子をトンネルさせるのに十分薄い絶縁膜によって隔てられている点を除いてGMRセンサに類似する、一連の交互にされた磁性層と非磁性層とを有する。TGMRセンサの抵抗は、磁性層の磁化の相対的な配向に依存し、磁性層それぞれの磁化が平行である構成では最小であり、磁性層それぞれの磁化が反平行である構成では最大である。
【0004】
すべての種類のMRセンサにおいて、磁化回転はディスクからの磁束に応じて生じる。磁気ディスクの記録密度は増加し続けておりこれに伴ってディスク上のトラックおよびビットの幅を小さくしなければならない。このため、MRセンサをより一層小さくするとともにシールドとシールドの間隔をより狭くすることが必要になる。MRセンサ、特に寸法が約100ナノメートル(nm)未満のセンサがさらに小型化されると、こういったセンサは、磁気ディスクからの印加磁場に対して望ましくない磁気応答をする可能性がある。MRセンサは、たとえ小さなセンサでも、磁気ノイズがなくディスクに書込まれたデータを正確に復元するのに十分な振幅を信号に与えるように、設計しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GMRおよびTGMR読取機は、自由層と参照層の間の抵抗を利用して媒体の漂遊磁界を検出することにより、格納された情報を読出すことができる。参照層の磁化は、強磁性ピン止め(pinned)層による反強磁性結合相互作用を通して固定され、この強磁性ピン止め層も反強磁性(AFM)材料によってピン止めされる。上記参照層およびピン止め層は、これらの間にある反強磁性結合層とともに、いわゆる合成反強磁性(SAF)構造である。この種の構成には2つの重大な欠点がある。第1に、複雑な多層構造であるため、シールドとシールドの間隔が大きい。シールドとシールドの間隔の継続的縮小が要求されているが、この要求は、センサ内の個々の層の厚みの減少に伴い現れる不安定性によって制限される。たとえば、AFM材料のピン止め(pinning)強度は、その厚みの減少に伴い低下する。結果として、参照層が十分にピン止めされていないときには、ピン止めが弱いSAF構造はセンサノイズの増加につながる。従来のGMRおよびTGMRセンサのもう1つの欠点は、ABS面において永久磁石(PM)を使用して適切な自由層バイアス状態を作り出さねばならないことである。読取機のシールドとシールドの間隔を小さくするには、PMの厚みを減少させねばならないため、所望のPMバイアス磁界を得るのがますます困難になる。
【0006】
2つの自由層を有する3層読取機は、これらの問題に対する1つの解決策である。3層構造では、磁化がハサミ状の配向である2つの自由層を用いて媒体の磁束を検出する。合成反強磁性(SAF)および反強磁性(AFM)層は不要であり、自由層のバイアスは、自由層双方の端部が浮上面(air bearing surface)にあるときの、後端の永久磁石と減磁場の組合せから生じる。PMは、ABS面よりも奥にあるので、PM材料特性およびバイアス磁界を犠牲にすることなくシールドとシールドの間隔をより小さくする機能は妨げられない。ストライプ高さおよび後端の磁気バイアスが小さい3層読取機は、高い読出信号を有するが、磁気的には不安定でプロセス変動の影響を非常に受けやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
磁気抵抗センサは、キャップ層と、非磁性層によって隔てられた第1の強磁性層および第2の強磁性層と、シード層とを含む3層スタックを備える。この3層センサは、スタックの後端に配置されたバックバイアス磁石によってバイアスされる。スタックを通る電流が浮上面近傍に制限されて感度が増すように、絶縁層が3層スタックを部分的に覆う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】磁気読取/書込ヘッドの浮上面(ABS)に垂直な面に沿う、磁気読取/書込ヘッドおよび磁気ディスクの概略断面図である。
【
図2】
図1の磁気読取/書込ヘッドのABSの概略図である。
【
図3】面に垂直に電流を流す(CPP)典型的な3層センサスタックのABSの概略図を示す。
【
図4】
図3に示される断面A−Aに沿うセンサスタックの概略断面図である。
【
図5】
図3の断面B−Bに沿う、ストライプ高さが小さい3層センサの概略断面図である。
【
図5A】
図5の3層センサの磁界強度のグラフである。
【
図6】
図3の断面B−Bに沿う、ストライプ高さが大きい3層センサの概略断面図である。
【
図6A】
図6の3層センサの磁界強度のグラフである。
【
図7】本発明に従う3層センサの4つの異なる実施例のうちの1つの概略断面図である。
【
図8】本発明に従う3層センサの4つの異なる実施例のうちの1つの概略断面図である。
【
図9】本発明に従う3層センサの4つの異なる実施例のうちの1つの概略断面図である。
【
図10】本発明に従う3層センサの4つの異なる実施例のうちの1つの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
図1は、磁気読取/書込ヘッド10の浮上面(ABS)に垂直な面に沿う、磁気読取/書込ヘッド10および磁気ディスク12の概略断面図である。磁気読取/書込ヘッド10の浮上面ABSは、磁気ディスク12のディスク面16に対向する。磁気ディスク12は、磁気読取/書込ヘッド10に対して、矢印Aで示す方向に移動または回転する。好ましくは、浮上面ABSとディスク面16との間隔は、磁気読取/書込ヘッド10と磁気ディスク12との接触を回避しつつ最小にされる。
【0010】
磁気読取/書込ヘッド10の書込部分は、上部極18と、絶縁体20と、導電コイル22と、下部極/上部シールド24とを含む。導電コイル22は、上部極18と上部シールド24との間の適所で、絶縁体20を利用して保持される。導電コイル22は、
図1では2層のコイルとして示されているが、磁気読取/書込ヘッド設計の分野では周知のように、任意の数の層のコイルで形成してもよい。
【0011】
磁気読取/書込ヘッド10の読取部分は、下部極/上部シールド24と、下部シールド28と、磁気抵抗(MR)スタック30とを含む。MRスタック30は、下部極24および下部シールド28それぞれの終端の間に位置する。下部極/上部シールド24は、シールドとしての機能と、上部極18と共に使用される共有極としての機能双方を有する。
【0012】
図2は、磁気読取/書込ヘッド10の浮上面ABSの概略図である。
図2は、
図1の磁気読取/書込ヘッド10の浮上面ABSに沿って現れる、磁気読取/書込ヘッド10の磁気的に重要な要素の場所を示す。
図2において、磁気読取/書込ヘッド10のすべての間隔および絶縁層は、明確にするために省略している。下部シールドと28と下部極/上部シールド24との間を離すことによってMRスタック30の場所を設けている。検知電流を、下部極/上部シールド24および下部シールド28を介してMRスタック30を通して流す。
図1および
図2において検知電流が下部極/上部シールド24および下部シールド28を通して注入されている間、他の構成は、MRスタックを下部極/上部シールド24および下部シールド28から電気的に絶縁し、さらなるリードが検知電流をMRスタック30に与える。検知電流がMRスタック30を通して流れると、読取センサは抵抗応答を示し、結果として出力電圧が変化する。検知電流はMRスタック30の面に対して垂直に流れるので、磁気読取/書込ヘッド10の読取部は、面に垂直に電流を流す(CPP(current perpendicular to plane))タイプの装置である。磁気読取/書込ヘッド10は例示にすぎず、本発明に従い他のCPP構成を使用してもよい。
【0013】
図3は、3層MRスタック51を含む典型的な3層CPP MRセンサ50のABSの図を示す。MRスタック51は、金属キャップ層52と、第1の自由層54と、非磁性層56と、第2の自由層58と、金属シード層60とを含む。3層MRスタック51は、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に配置される。
【0014】
動作時は、検知電流I
Sが、3層MRスタック51の層52〜60の面に対して垂直に流れ、第1の自由層54および第2の自由層56それぞれの磁化方向の間に形成される角度の余弦に比例する抵抗を受ける。次に、3層MRスタック51にかかる電圧を測定することにより抵抗の変化を求め、結果として得られる信号を用いて磁気媒体から符号化された情報を復元する。なお、3層MRスタック51構成は例示にすぎず、本発明に従い3層MRスタック51の他の層構成を使用してもよいことに留意されたい。
【0015】
3層MRスタック51における第1の自由層54および第2の自由層58それぞれの磁化の配向は、反平行であり、最初に他の磁界または磁力がない状態ではABSと平行に設定されている。自由層がこのように反平行方向に整列するのは、これら2つの自由層の間の静磁場相互作用のためであり、読取機の幅(RW)がストライプ高さ(SH)よりも大きい時に生じる。読取機の感度を高めるためには、好ましくは、2つの自由層の整列が互いに直交する整列で各々がABSに対して約45度の角度をなす。これは、各自由層をバイアスする、3層MRスタック51の後方にあるバックバイアス磁石(
図3には示されていない)によって実現される。
図3の断面A−Aに沿うCPP MRセンサ50の概略断面図である
図4は、ABSよりも奥に設けられ下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に位置するバックバイアス磁石62を示す。ABSの後方の3層センサスタック51の長さは、ストライプ高さSHであり、以下で示されるように、記載される実施例において重要な変数である。
【0016】
図3における断面B−Bに沿う、3層CPP MRセンサ50のABSに対して垂直な概略断面図が
図5に示される。示されている浮上面ABSを有する3層MRスタック51Aは、記録媒体12の上方に配置されている。示されているバックバイアス磁石62は、浮上面ABSよりも奥にある3層MRスタック51Aの上方に配置されている。
【0017】
3層MRスタック51Aの層構造は、3層MRスタック51と同一である。バックバイアス磁石62の磁化は、矢印63で示され、浮上面ABSに向かう下向きの垂直方向である。3層MRスタック51の第1の自由層FL1および第2の自由層FL2の磁化が、それぞれ矢印53Aおよび55Aによって概略的に示される。先に述べたように、バックバイアス磁石62がないとき、磁化53Aおよび55Aは、ABSに対して平行で、かつ互いに反平行であろう。バックバイアス磁石62があるときは、磁化53Aおよび55Aは強制的に図示のようなハサミ状の関係にされる。
【0018】
図5Aのグラフの曲線57Aは、3層MRスタック51Aにおける、記録媒体12からの磁界強度H
mediaを示す。
図5Aに示されるように、センサの磁界強度は、ABSからの距離の関数として指数的に低下する。
図5に示されるセンサ形状においては、読取機の幅RWは、3層スタック51Aのストライプ高さSH
Aよりも大きい。自由層FL1およびFL2の磁化53Aおよび55Aがハサミ状の関係にあるので、結果として感度が増す。なぜなら、これらの磁化はどちらも媒体の磁束H
mediaに対して自由に反応するからである。しかしながら、製造中のプロセス変動によって生じた小さな変化が、センサ出力の許容できないほど大きな変動を引起す、または、製品歩留まりを許容できないレベルまで低下させるであろう磁気的に不安定な部品さえ生じさせる可能性がある。
【0019】
図5に示されるセンサ形状の変形が
図6に示される。示されているバックバイアス磁石62は、浮上面ABSから離れて、3層MRスタック51Bの上方に配置される。3層MRスタック51Bの層構造は、3層MRスタック51と同一である。3層MRスタック51Bと3層MRスタック51Aの違いは、3層MRスタック51Bのストライプ高さSH
Bが、3層MRスタック51Bの読取機幅RWの2倍以上の長さであることである。センサスタック51Aおよび51B双方の読取機幅RWは同一である。バックバイアス磁石62の磁化は、矢印63で示され、浮上面ABSに向かう下向きの垂直方向である。第1の自由層FL1および第2の自由層FL2の磁化は、それぞれ矢印53Bおよび55Bで概略的に示される。
【0020】
3層MRスタック51Aの磁化の配向と異なり、3層MRスタック51Bの後端における各自由層の磁化は、安定しており、矢印63で示されるバックバイアス磁石62の磁化に対して平行である。3層MRスタック51Bのストライプ高さが大きいため、矢印53Bおよび55Bによって示されるように、自由層FL1およびFL2の磁化は自然に緩和されABS近くでは分岐した配向となる。これは、FL1とFL2との間の静磁相互作用のためである。3層センサスタック51Bの安定性および堅牢性は、3層MRスタック51Aのものをはるかに上回る。しかしながら、高められた安定性にはコストが伴う。ストライプ高さが増した結果、3層MRスタック51Bの長さのほとんどは、磁気抵抗検知信号に寄与しない。むしろ、センサスタックの後端が電気的分路として機能することにより、センサ出力が低下する。
【0021】
以下で述べる発明の実施例により、この問題を回避し、強固な安定性および増大した感度を有する3層読取センサを提供する。
【0022】
本発明の代表的な実施例が
図7においてCPP MRセンサ70によって示される。CPP MRセンサ70において、3層MRスタック71のストライプ高さは、
図6に示される読取機の幅RWの少なくとも2倍である。CPP MRセンサ70は、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に位置付けられた3層MRスタック71からなり、後部ギャップ磁石62が、
図4に示されるCPP MRセンサ50におけるように3層MRスタック51の後方にある。違いは、CPP MRセンサ70では絶縁層72が3層MRスタック71と下部シールド28との間に位置している点である。絶縁層72が下部シールド28の後端からABSに近いある距離のところまで延びることにより、下部シールド28から3層MRスタック57を通って下部極/上部シールド24に向かう電流の流れを狭くしている。矢印で示されるように、ABS付近の電流の流れを狭くすることによって、3層MRスタック71の後端における電気的分路が妨げられ、結果としてセンサ出力が増す。
【0023】
別の代表的な実施例が
図8に示される。CPP MRセンサ80は、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に配置され大きなストライプ高さを有する3層MRスタック71からなり、後方ギャップ磁石62が3層MRスタック71の後ろにある。この場合、絶縁層73は、下部極/上部シールド24と3層MRスタック71との間に配置される。絶縁層73は、下部シールド28の後端から、ABSに近いある距離のところまで延びることにより、矢印で示される、上部シールド24から3層MRスタック71を通って下部シールド28に向かう電流の流れを狭くしている。ABS付近の電流の流れを狭くすることによって、3層MRスタック71の後端における電気的分路が妨げられ、結果としてセンサ出力が増す。
【0024】
本発明のもう1つの代表的な実施例が
図9に示される。CPP MRセンサ90は、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に配置され大きなストライプ高さを有する3層MRスタック71からなり、後方ギャップ磁石62が3層MRスタック71の後ろにある。この場合、絶縁層73は、下部極/上部シールド24と3層MRスタック71との間に配置され、絶縁層72は、下部シールド28と3層MRスタック71との間に配置される。絶縁層72および73は、上部シールド24および下部シールド28の後端から、ABSに近いある距離のところまで延びることにより、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間、または下部シールド28と下部極/上部シールド24との間の、3層MRスタック71を通した電流の流れを狭くしている。ABS付近の電流の流れを狭くすることによって、3層MRスタック71の後端における電気的分路が妨げられ、結果としてセンサ出力が増す。
【0025】
別の実施例が
図10に示される。CPP MRセンサ100は、下部極/上部シールド24と下部シールド28との間に配置され大きなストライプ高さを有する3層MRスタック71からなり、後方ギャップ磁石62が3層MRスタック71の後ろにある。絶縁層72は下部シールド28の後端からABSまで延びている。この場合、ABS近くの絶縁層72の部分は、処理されて絶縁層72から導電部74に変換されている。導電部74は、矢印で示される、下部シールド28から3層MRスタック71を通って下部極/上部シールド24に向かう電流の流れを狭くしている。電流が3層MRスタック71を流れるときにABS付近の電流の流れを狭くすることにより、3層MRスタック71の後端における電気的分路が妨げられ、結果としてセンサ出力が増す。
【0026】
絶縁層72は、ABSが多数の工程によってラッピングされた後に、導電領域74に変換してもよい。こうした工程のうちいくつかをここで説明する。1つの方策は、同時にスパッタリングされたFeとSiO
2を絶縁層として使用することである。結果として得られるFe/SiO
2層は、非晶質であり電気抵抗がある。ABSの優先的な熱処理により、ABSをレーザビームに当てることで約350℃〜400℃という適当な温度にすると、Fe分離が生じ、ABS近くに導電チャネルが形成される。もう1つの方策は、TiO
xバリア層を絶縁層として使用することである。通常の雰囲気または水素中でTiO
x絶縁層を含むABSをラッピングすると、TiO
xに欠陥が形成されこれが導電チャネルを形成することにより、ABSで電流が流れる。
【0027】
ABSで導電チャネルに変換されてABSでセンサスタック71を通る電流の流れを狭くする絶縁層を、下部極/上部シールド24とスタック71との間および下部シールド28とスタック71との間に配置することもできる。なお、上記センサスタックは例示にすぎず、本発明に従い他の構成を使用してもよいことに留意されたい。
【0028】
本発明について代表的な実施例を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲を超えることなくさまざまな変更を行なうことができ均等物をその要素と置き換えてもよいことを、当業者は理解するであろう。加えて、数多くの修正を行ない特定の状況または材料を本発明の本質的な範囲を超えることなく本発明の教示に合わせてもよい。したがって、本発明は開示された特定の実施例に限定されるのではなく以下の請求項の範囲に含まれるすべての実施例を含むことが、意図されている。