(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5714162
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ヒートローラ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-171919(P2014-171919)
(22)【出願日】2014年8月26日
【審査請求日】2014年9月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591221167
【氏名又は名称】ミツマ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124280
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆雄
【審査官】
杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−286541(JP,A)
【文献】
特開平10−161453(JP,A)
【文献】
特開2004−012529(JP,A)
【文献】
特開2002−137101(JP,A)
【文献】
特開2005−182023(JP,A)
【文献】
特開平08−248798(JP,A)
【文献】
特開平06−308847(JP,A)
【文献】
特開2003−278741(JP,A)
【文献】
特開2007−004028(JP,A)
【文献】
特開2011−248145(JP,A)
【文献】
特開平08−278715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートロール定着装置に用いられるヒートローラであって、
外周面に離型層が設けられている中空円筒状のローラ本体と、ローラ本体の両端の内側にそれぞれ嵌合固定された補強部材と、前記ローラ本体の内側に、外周がローラ本体の内周面と接するように配置したコイル状のスプリングとを有し、
前記ローラ本体は、一端から他端にわたって、同一内径及び同一外径を有する中空円筒体により構成され、
前記補強部材は、前記ローラ本体の内周面に嵌合される円筒状補強部と、円筒状補強部の一端に一体的に形成され、円筒状補強部と直交すると共に内向きに突出するリング状補強部とを有することを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートローラにおいて、さらに、前記ローラ本体の一端に連結したギィアを有し、当該ギィアは、前記ローラ本体及び前記補強部材の円筒状補強部の両方に結合されていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヒートロール定着装置において、前記ローラ本体及び補強部材はアルミニウムにより構成されていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項4】
ヒートロール定着装置に用いられるヒートローラの製造方法であって、
中空円筒状のアルミニウムの素管を用意する工程と、
前記アルミニウムの素管の外周面を一端から他端にわたって一様に研磨し、全長にわたって同一内径及び同一外径を有するローラ本体を製造する工程と、
前記アルミニウムの素管の内側空間内に、外周が素管の内周面と接するようにコイル状のスプリングを配置する工程と、
前記素管の内周面に嵌合される円筒部と、円筒部の一端に一体的に形成され、円筒部の内側方向に突出するリング状の補強部とを有する補強部材を用意し、前記素管の両端に補強部材をそれぞれ嵌合して位置決め固定する工程と、
前記補強部材が嵌合されたローラ本体の外周面に離型層を形成する工程とを含むことを特徴とするヒートローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームアップタイムが短縮されると共に消費電力量が削減されたヒートローラ及びヒートロール定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタにおいて、ヒートロール定着装置が広く実用化されている。ヒートロール定着装置においては、ウォームアップタイムを短縮すること及び消費電力量を削減することが強く望まれている。ヒートローラのウォームアップタイムを短縮すると共に消費電力を削減するためには、ヒートローラの肉厚を薄くし、熱容量をできるだけ小さくする必要がある。薄肉化が図られたヒートローラとして、ローラ本体の内側空間内に同軸状にスパイラル状のコイルバネを配置したヒートローラが既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知のヒートローラでは、アルミニウムの中空円筒状の素管をローラ本体として用い、ローラ本体の両端に絞り加工により小径部が形成され、小径部にギィアや軸受が取り付けられている。両端の小径部間にはコイル状のバネが配置されている。そして、ローラ本体の通紙エリアを形成する中央の外周面を旋盤加工により研磨することにより、薄肉化されたヒートローラが製造されている。このヒートローラは、小径の両端部の肉厚は厚く設定され、通紙エリアの肉厚は薄く設定されているため、薄肉化が図られると共に両端の機械的連結部の強度が確保される利点がある。
【0003】
薄肉化が図られた別のヒートローラとして、ヒートローラの中央の通紙エリアの肉厚を薄くし、ギィア及び軸受が装着される両端部の肉厚を厚くしたヒートローラも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このヒートローラでは、ローラ本体の外径は全長にわたって同一径に設定され、内径については、中央部が大きい内径に形成され、両端部は小さい内径に形成され、両端部の肉厚が厚くなるように構成されている。そして、ローラ本体の内側空間内にコイルバネが配置され、ローラ本体の機械的強度が補強されている。
【0004】
さらに、別のヒートローラとして、通紙エリアを形成する中央部の肉厚が薄く、ギィアが連結された端部の肉厚を厚くしたヒートローラも提案されている(例えば、特許文献3参照)。この既知のヒートローラでは、ローラ本体の外径は全長にわたって同一径に設定し、ローラ本体のギィアが連結された端部の内径を中央の内径よりも小さくして、端部の肉厚が厚くなるように構成されている。
【特許文献1】特開平10−116675号公報
【特許文献2】特開2011−248145号公報
【特許文献3】特開2005−70548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のヒートローラでは、所定の寸法のアルミニウム素管をローラ本体として用い、両端部を絞り加工により小径化し、通紙エリアを形成する中央部が大きい外径に設定しているので、ローラ本体の外径の大きい中央部分の外周面だけを研磨することができ、これにより、中央の通紙エリアの肉厚は薄く、両端部の肉厚が厚くなるように構成することができる。しかしながら、ヒートロール定着装置では、ヒートローラに対して加圧ローラが圧着され、加圧ローラ側から圧着力が作用する。この圧着力の作用により、ローラ本体の両端の小径部と中央の大径部との間の結合部に応力集中が発生し、結合部が破損する問題があった。すなわち、絞り加工により小径部を形成する場合、段差の肩部の肉厚が局所的に薄くなるため、ギィアが連結される小径部と大径の通紙エリアとの間の段差を形成する結合部の機械的強度が局所的に弱くなってしまう。このため、ローラ本体の外周面の研磨量が大きいと、機械的強度が局所的に低いことに起因して、動作中に結合部が破損する不都合が発生した。従って、ローラ本体の外周面の研磨量に限界があり、薄肉化に限界があった。
【0006】
特許文献2に記載されたヒートローラは、ローラ本体の両端部の肉厚を厚くし、ローラの中央だけが薄肉化されている。このようなヒートローラを製造するためには、ローラ本体の内周面を研磨して薄肉化しなければならない。しかしながら、旋盤加工により、ローラの内周面を研磨することは極めて困難な作業である。特に、研磨加工中に、ローラ本体の外周側はフリーな状態にあり、旋盤のバイトを内周側から外方に向けて押し当てると、ローラ自体が半径方向外向きに変位するため、全長にわたって均一な厚さに研磨することは極めて困難であった。また、アルミニウムの素管を用いた場合、ローラ本体の厚みが薄くなると、ローラ自体が破断してしまい、薄肉化に限界があった。
【0007】
特許文献3に記載されたヒートローラは、ギィアが連結された端部の肉厚が厚くし、ローラの通紙エリアを形成する中央は薄肉化されている。しかしながら、このようなヒートローラを製造するためには、特許文献2と同様に、ローラ本体の内周面を研磨する必要があり、薄肉化に限界があると共に研磨作業が極めて困難になる欠点があった。
【0008】
本発明の目的は、機械的強度を確保しつつ、薄肉化を図ることが可能なヒートローラ及びその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるヒートローラは、ヒートロール定着装置に用いられるヒートローラであって、
外周面に離型層が設けられている中空円筒状のローラ本体と、ローラ本体の両端の内側にそれぞれ嵌合固定された補強部材と、
前記ローラ本体の内側に、外周がローラ本体の内周面と接するように配置したコイル状のスプリングとを有し、
前記ローラ本体は、一端から他端にわたって、同一内径及び同一外径を有する中空円筒体により構成され、
前記補強部材は、前記ローラ本体の内周面に嵌合される円筒状補強部と、円筒状補強部の一端に一体的に形成され、円筒状補強部と直交すると共に内向きに突出するリング状補強部とを有することを特徴とする。
【0010】
両端の肉厚が厚く中央部の肉厚が薄いローラ本体を製造することは、研磨加工上困難であり、薄肉化に限界がある。そこで、本発明では、ローラ本体の全長にわたって一定の肉厚のローラ本体を用いる。すなわち、全長にわたって均一な肉厚のローラ本体は、素管の外周面を旋盤加工することにより容易に製造することが可能であり、薄肉化されたローラ本体を製造することができる。例えば、引き抜き加工により製造され厚さが0.5mmのアルミニウムの素管に旋盤加工を施すことにより、厚さが0.3mmのローラ本体を製造することができる。
【0011】
一方、ローラ本体の一端にはギィアが連結され、ギィアを介して回転駆動力が伝達される。この場合、ローラ本体の肉厚が薄い場合、ギィアとローラ本体との間の連結力が不足し、多数枚複写した場合ギィアとの連結部が疲労して破損するおそれがある。この問題を解決するため、本発明では、ローラ本体の両端部に補強部材を嵌合する。補強部材として、ローラ本体の内周面と係合する円筒状の補強部を有する補強部材を用いれば、ローラ本体の両端部の肉厚が見かけ上厚くなる効果が生じるので、ギィアとローラ本体との間の連結力を増強することが可能になる。
【0012】
さらに、薄肉化した際の課題として、加圧ローラによる圧着力に起因して発生する撓みや変形の課題がある。すなわち、ヒートロール定着装置では、ヒートローラに対して加圧ローラを圧着するため、ヒートローラを薄肉化した場合、機械的強度が不足し、ヒートローラが変形したり心円度が低下するおそれがある。本発明者が、この課題について種々の実験及び解析を行った結果、ヒートローラを回転自在に支持する軸受付近に応力集中が生じ、影響を受け易いことが判明した。そこで、本発明では、ヒートローラの端部の強度不足を補強する補強部材として、ヒートローラの内周面に嵌合される円筒状補強部の一端に内側に突出するリング状補強部を一体的に設ける。リング状補強部の配置位置は、ローラ軸線方向に見て、加圧ローラの端部又は加圧ローラの端部よりも若干中央寄りの位置に設定することが最良である。すなわち、円筒状のローラ本体の内周にリング状の補強部材を設けた場合、外部応力に対して機械的強度が増大する効果を発揮する。すなわち、リング状の補強部材は、外部から半径方向内向きに作用する外部応力に対して高い自己保持性能を有し、外部応力に伴う変形を強く抑制する効果を発揮する。従って、薄肉化に伴って、ヒートローラ自体の機械的強度が低下しても、リング状補強部を加圧ローラの端部の近傍に設けることにより、見かけ上当該部位の厚さを厚くした場合と同様な効果が発揮され、ローラの変形等の問題点が解消される。さらに、ヒートローラに対して加圧ローラを圧着した場合、加圧ローラには中央部が引っ込むような形態の撓みが発生し、加圧ローラからの圧着力は主としてその両端に集中する。従って、ローラ本体に設けたリング状補強部を加圧ローラの端部よりも中央側に位置決めすれば、加圧ローラからの圧着力はリング状補強部及び円筒状補強部を介して軸受に伝達される。一方、軸受は強固な機械的強度を有し、ハウジングに固定されている。この結果、ローラ本体に不所望な応力集中が局所的に発生する不具合が解消される。さらに、補強部材を製造する際、0.5〜1.0mm程度の厚さのプレートを用い、プレス加工することにより円筒状補強部及びリング状補強部を一体的に有する補強部材を容易に製造することができ、ヒートローラの熱容量が増大することなく、局所的に機械的強度を増強することが可能になる。
【0013】
さらに、本発明の補強部材は、円筒部と、その一端に一体的に設けたリング状補強部とで構成され、例えば厚さが0.5mm〜1mm程度のアルミニウムのプレートをプレス加工によりで形成することができる。或いは、アルミニウムの円筒体の端部をプレス加工によりリング状補強部を形成することができる。よって、製造コストも安価になる利点が達成される。
【0014】
本発明によるヒートローラの変形例は、ローラ本体の内側には、外周がローラ本体の内周面と接するようにコイル状のスプリングが配置されていることを特徴とする。本願人から提案された特許文献1に記載されているように、コイル状のスプリングは、半径方向の外方から作用する押圧力に対して高い機械的強度を有している。従って、ヒートローラの通紙エリアの内部空間にコイル状のスプリングを配置すれば、ヒートローラが薄肉化されても、ヒートローラの中央部の撓みや変形を確実に防止することが可能になり、精度の高い真円度を維持することができる。尚、コイルバネを設けることは、A−3サイズの複写機やプリンタにおいて効果的であり、A−4サイズの複写機においては、必要に応じて設けることができる。
【0015】
本発明によるヒートローラの製造方法は、ヒートロール定着装置に用いられるヒートローラの製造方法であって、
中空円筒状のアルミニウムの素管を用意する工程と、
前記アルミニウムの素管の外周面を一端から他端にわたって一様に研磨し、全長にわたって同一内径及び同一外径を有するローラ本体を製造する工程と、
前記アルミニウムの素管の内側空間内に、外周が素管の内周面と接するようにコイル状のスプリングを配置する工程と、
前記素管の内周面に嵌合される円筒部と、円筒部の一端に一体的に形成され、円筒部の内側方向に突出するリング状の補強部とを有する補強部材を用意し、前記素管の両端に補強部材をそれぞれ嵌合して位置決め固定する工程と、
前記補強部材が嵌合したローラ本体の外周面に離型層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
参考として記載する本発明によるヒートロール定着装置は、軸受を介してフレームに支持されたヒートローラと、ヒートローラの内側空間に配置したハロゲンランプと、バネを介してヒートローラと圧着するように配置した加圧ローラとを有するヒートロール定着装置において、
前記ヒートローラは、中空円筒状のローラ本体と、ローラ本体の両端の内側にそれぞれ嵌合固定した補強部材と、ローラ本体の一端に連結したギィアとを有し、
前記ローラ本体は、一端から他端にわたって、同一内径及び同一外径を有する中空円筒体により構成され、
前記補強部材は、前記ローラ本体の内周面と係合する円筒状補強部と、円筒状補強部の一端に一体的に形成され、円筒状補強部と直交すると共に内向きに突出するリング状補強部とを有し、
前記リング状補強部は、ローラ軸線方向において、前記加圧ローラの端部又はその近傍に位置決めされ、
前記ギィアは、前記ローラ本体及び前記補強部材の円筒状補強部の両方に結合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、全長にわたって一様な肉厚を有するローラ本体を用いているので、旋盤加工により肉厚の薄いローラ本体を製造することができ、一層薄肉化を図ることが可能になる。この結果、ウォームアップタイムを相当短縮することが可能になる。さらに、ローラ本体の端部の内側に補強部材を嵌合装着しているので、薄肉化に伴う機械的強度不足を補強することができる。特に、補強部材として、ローラ本体の内周面と嵌合する円筒状補強部と、円筒状補強部の一端に一体的に形成したリング状補強部とを有する補強部材を用い、リング状補強部は加圧ローラの端部又はその近傍に位置するように位置決めしているので、ギィアとの連結力が確保できると共に加圧ローラからの圧着力によるローラ変形や破損が有効に防止される。すなわち、円筒状補強部とリング状補強部とが一体化された補強部材を用いると共にリング状の補強部が加圧ローラの端部とほぼ一致するように配置しているので、これら3つの構成要素が有機的に一体的になり、薄肉化されたヒートローラが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるヒートロール定着装置の一例を示す線図的断面図である。
【
図4】本発明のヒートローラの製造工程を示す図である。
【0019】
図1は本発明によるヒートローラを具えるヒートロール定着装置の一例を示す線図的断面図である。ヒートロール定着装置は、記録紙上に形成されたトナー像を定着するヒートローラ1と、ヒートローラ1の内側空間内に配置され、ヒートローラ1を内周側から加熱するハロゲンランプ2と、ヒートローラ1と圧着するように配置した加圧ローラ3とを有する。記録紙上に形成されたトナー像は、ヒートローラ1と加圧ローラ3との間を通過し、ヒートローラから供給される熱により記録紙上に定着される。
【0020】
ヒートローラ1は、アルミニウムの中空円筒状のローラ本体10を有する。ローラ本体10は、旋盤加工により例えば肉厚が0.3mmに研磨された中空円筒状のアルミ管を用いることができる。ローラ本体10は、その全長にわたって同一の内径及び同一の外径を有し、一端から他端にわって一定の肉厚に形成する。ローラ本体10の外周面には離型層11が形成される。離型層として、フッ素樹脂層を用いることができ、或いはフッ素樹脂チューブを装着して離型層とすることもできる。
【0021】
ローラ本体10の両端は、ハウジング(図示せず)に固定した2つの軸受12a及び12bにより回転可能に支持する。ローラ本体の両端には、ローラ本体の強度を補強するための補強部材13及び14を嵌合する。これら補強部材は、ローラ本体の内周に嵌合装着される円筒状補強部13a及び14aとリング状補強部13b及び14bとをそれぞれ有し、ローラ軸線方向において、リング状補強部13b及び14bが加圧ローラ3の端部又はそれよりも若干中央寄りに位置するように位置決めする。さらに、ローラ本体の一端にはギィア15が連結され、ギィアを介してヒートローラに回転駆動力が伝達される。
【0022】
加圧ローラ3は、金属のシャフトにシリコンゴム層が形成された耐熱性の弾性ゴムローラで構成する。加圧ローラの両端は、ハウジング(図示せず)に移動可能に装着された2つの軸受16a及び16bにより回転自在に支持する。軸受16a及び16bはそれぞれスプリング17a及び17bを介してハウジングに連結される。従って、加圧ローラ3は、2つのスプリングの押圧力により、ヒートローラ1と圧接して従動回転する。
【0023】
本例では、ローラ本体の内周にコイル状のスプリングが配置されていないが、必要に応じてコイル状のスプリングを配置することも可能である。特に、コイル状のスプリングは、半径方向内向きの外部応力に対して高い形状保持能力を有するため、薄肉化した場合に有効である。尚、コイル状のスプリングは、その外周がローラ本体の内周と接するように又は僅かに圧接するように形成する。
【0024】
図2は、補強部材の一例を示す図であり、
図2(A)は斜視図、
図2(B)はII−II線断面図、
図2(C)はローラ本体への取り付け方法を示し、
図2(D)はギィアが連結されている端部の構成を示す線図的断面図である。尚、2つの補強部材13及び14は構造的に共通するため、ギィアが連結される補強部材13について説明する。本発明の補強部材は、円筒体の円筒状補強部13aと、円筒状補強部13aと一体的に形成したリング形状を有するリング状補強部13bとから構成される。円筒状補強部13aは、円筒ローラ本体10の内周に嵌合され、ローラ本体10の端部の強度を増強すると共にギィアとローラ本体との連結力を増強する作用を果たす。また、リング状補強部13bは、円筒状補強部13aと一体的に形成され、半径方向内向きに突出するリング状の補強部材であり、加圧ローラからの圧着力に対する強度を増強する機能を発揮する。すなわち、構造的に、リング状の補強部材は、外部から半径方向内向きに作用する外力に対する強度が極めて高く、容易に変形しない特性がある。従って、円筒状補強部13aの先端にリング状補強部13bを形成することにより、加圧ローラ側から圧着力が作用しても、ローラ本体10の形状保持能力が増強され、ローラの変形や心円度が低下する等の不具合が解消される。
【0025】
補強部材13及び14は、例えば厚さが0.5〜1.0mm程度のアルミニウムのプレートを用い、プレス加工により一体的に製造することができる。この場合、円筒状補強部13aの外径は、ローラ本体の内径に対して公差分だけ小さくなるように設定する。製造に際し、外周研磨されたローラ本体の内側空間内に補強部材13及び14を嵌入し、円筒状補強部13aをローラ本体に固定する。固定方法として、カシメ、焼き嵌め、又はコールド嵌めを用いることができる。或いは、耐熱性接着材を用いて固定することも可能である。補強部材を固定した後、ギィアを取り付けるためのU字状の溝を形成する。その後、ローラ本体の外周面に離型層を形成する。最後に、ギィア15を取り付ける。本例では、ローラ本体及び補強部材は共にアルミニウムにより構成されているので、熱膨張係数が同一であるため、温度変化によりローラ本体と補強部材との結合力が弱くなる不都合は回避される。
【0026】
図2(D)は、ヒートローラの端部の構造を断面図として示す。本発明では、リング状の補強部13aは、ローラ軸線方向において、加圧ローラ3の端部の位置と対応するように、或いは、加圧ローラの端部よりも若干中央寄りの位置に配置するように位置決めする。
【0027】
図3は、本発明による補強部材の効果を示す図であり、
図3(A)は補強部材が装着されていないヒートローラを示し、
図3(B)は補強部材のリング状補強部が軸受付近に位置決めされた状態を示し、
図3(C)は補強部材のリング状補強軸受が加圧ローラの端部に位置決めされた状態を示す。
図3(A)に示すように、補強部材が取り付けられていない場合、ギィア15は薄肉化されたローラ本体に直接結合される。この場合、例えばローラ本体の厚さを0.3mmに設定した場合、ギィアとローラ本体との間の結合力が不足し、ギィアとの結合部が機械的疲労を起し、破損するおそれがある。一方、
図3(B)及び(C)に示すように、補強部材を設けた場合、ギィアはローラ本体及び補強部材の両方に結合されるため、ギィアとローラ本体との連結強度が増強され、結合部の破損が防止される。すなわち、補強部材を設けた場合、厚肉のローラ本体にギィアを連結した場合と同様な効果が達成される。
【0028】
次に、加圧ローラからの押圧力について説明する。
図3(A)に示すように、補強部材が無い場合、ローラ本体10は軸受12により支持され、軸受はハウジングに固定される。軸受は、ハウジングに固定されているため、外部からの応力に対して固定点として作用する。この場合、加圧ローラから押圧力が作用すると、ローラ本体10は、フリーな状態に維持され、従ってローラ本体全体が変形し易い状態となる。一方、ローラ本体を支持する軸受は固定点として作用し、ローラ本体はフリーな状態にありローラ本体全体が変形し易いため、ローラ軸線方向において、軸受と隣接する部分に応力集中が発生する。そして、ローラの回転に伴い剪断力が発生し、疲労破損し易い部位が局所的に発生する。
【0029】
図3(B)に示すように、補強部材のリング状補強部が軸受12aの近傍に位置決めされた場合、ローラ本体10の軸受よりも中央寄りのローラ部分はフリーな状態に維持されるため、変形し易い状態になる。一方、軸受は固定されているため、軸受付近に応力集中が発生する。従って、リング状補強部の効果が発揮されず、疲労破損し易い欠点がある。
【0030】
これに対して、
図3(C)に示すように、リング状補強部が加圧ローラの端部付近又はそれよりも中央寄りに位置決めされた場合、加圧ローラから伝達される押圧力はリング状補強部13b及び円筒状補強部13aの両方に伝達される。この場合、リング状補強部13bが高い形状保持能力を有するため、ローラ本体の変形を抑制することができる。また、円筒状補強部13aは、固定された軸受12aにより支持されているため変形せず、従って、ローラ本体10に応力集中は発生しない。すなわち、円筒状補強部とリング状補強部とが一体化された補強部材を用いると共にリング状の補強部が加圧ローラの端部に位置決めされているので、これら3つの構成要素が有機的に一体化され、薄肉化されたヒートローラが実現される。尚、補強部材として、リング状補強部が形成されていない円筒体(本発明の円筒状補強部だけで構成される)を用いた場合、円筒体の端部が補強されていないため、加圧ローラからの押圧力により円筒体の加圧ローラと隣接する端縁部分が変形してしまい、十分な補強効果を得ることができない。
【0031】
図4は、本発明によるヒートローラの製造工程を示す図である。ステップ1において、引き抜き加工により製造されたアルミニウムの素管を所定の寸法に切断して中空円筒状の素管を用意する。例えば、肉厚が0.5mmで所定の内径を有する素管を用意する。続いて、アルミの素管の外周面を全長にわたって旋盤加工により一様に研磨し、全長にわたって同一内径及び同一外径のローラ本体を製造する。この際、アルミの素管を0.2mm研磨するだけで、肉厚が0.3mmのローラ本体を製造することができる。この工程に続いて、必要に応じて、アルミの素管の外周面を逆クラウン形状にクラウン加工することもできる。
【0032】
ステップ2において、円筒状補強部及びリング状補強部を有する補強部材を製造する。補強部材は、例えば厚さが0.5mmのアルミプレートを用意し、打ち抜き加工により円筒状補強部及びリング状補強部が一体化された補強部材を製造することができる。
【0033】
ステップ3において、補強部材をローラ本体の内周に嵌合し、固定する。固定方法として種々の方法を用いることができ、例えばカシメ加工により固定することができる。尚、補強部材を固定する前に、ローラ本体の内側にコイル状のスプリングを配置し、その後補強部材を位置決め固定することができる。尚、アルミ素管の外周研磨工程と補強部材の取り付け工程とは相前後することができ、例えばアルミ素管に補強部材を取り付けた後外周面を研磨することも可能である。
【0034】
続いて、ステップ4において、ローラ本体についてギィアを連結するための加工処理を行う。例えば、加工処理として、ローラ本体の一方の端部にU字状の溝を形成する。
【0035】
ステップ5において、ローラ本体の外周面に離型層を形成する。
【符号の説明】
【0036】
1 ヒートローラ
2 ハロゲンランプ
3 加圧ローラ
10 ローラ本体
11 離型層
12a,12b,16a,16b 軸受
13,14 補強部材
15 ギィア
17a,17b スプリング
【要約】
【課題】機械的強度を確保しつつ、薄肉化を図ることが可能なヒートローラ及びその製造方法を実現する。
【解決手段】本発明によるヒートローラは、外周面に離型層(11)が設けられている中空円筒状のローラ本体(10)と、ローラ本体の両端の内側にそれぞれ嵌合固定された補強部材(13,14)とを有する。ローラ本体は、一端から他端にわたって同一内径及び同一外径を有する中空円筒体により構成する。補強部材は、前記ローラ本体の内周面に嵌合する円筒状補強部(13a)と、円筒状補強部の一端に一体的に形成され、内向きに突出するリング状補強部(13b)とを有する。
【選択図】
図1