特許第5714168号(P5714168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5714168
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ケーブル送り込み装置及び剥線装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   H02G1/12 301J
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-208726(P2014-208726)
(22)【出願日】2014年10月10日
【審査請求日】2014年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595123678
【氏名又は名称】三立機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】中根 亮一
(72)【発明者】
【氏名】中根 昭
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−192435(JP,A)
【文献】 特開平11−196514(JP,A)
【文献】 特開2004−159445(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02053714(EP,A1)
【文献】 米国特許第05105702(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルを上ロールと下ロールとの間に挟持して送り込むとともに、前記上ロール及び下ロールのそれぞれの軸方向の間隙に配置されたカッターで前記外皮を引き切りすることにより該外皮を剥離する剥線装置のケーブル送り込み装置であって、
前記上ロールは、前記間隙を挟んで第1の回転軸に取り付けられた第1のロールと第2のロールとを具備し、
前記下ロールは、前記間隙を挟んで第2の回転軸に取り付けられた第3のロールと第4のロールとを具備し、
前記第1のロール及び前記第2のロールは、その周面の前記間隙側に形成され、前記多芯ケーブルを挟持するための曲線状突起部と該曲線状突起部の外側に形成されたガイド用凸部とをそれぞれ有し、前記第3のロール及び第4のロールは、その周面に前記曲線状突起部に対向して形成された該曲線状突起部に対応する形状の曲線状部と前記ガイド用凸部に対向して形成された該凸部に対応する形状の凹部とをそれぞれ有する
ことを特徴とするケーブル送り込み装置。
【請求項2】
前記多芯ケーブルの径に対応して前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙を調整する空隙調整手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル送り込み装置。
【請求項3】
前記多芯ケーブルの外皮の厚さに対応して前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙に突出する前記カッターの突出量を調整する突出量調整手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル送り込み装置。
【請求項4】
樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルの外皮を引き切りにより剥離する剥線装置であって、
第1の間隙を有して第1の回転軸に取り付けられた上ロールと、第2の間隙を有して第2の回転軸に取り付けられた下ロールとを有し、前記上ロールと前記下ロールとの間に前記多芯ケーブルを挟持して送り込むケーブル送り込み装置と、
前記上ロールの第1の間隙に配置され、刃先が前記上ロールと前記下ロールとの空隙に突出する第1のカッターと、
前記下ロールの第2の間隙に配置され、刃先が前記上ロールと前記下ロールとの空隙に突出する第2のカッターと、
前記第1のカッターの刃先の前記上ロールと前記下ロールとの空隙に対する突出量を調整する第1の突出量調整手段と、
前記第2のカッターの刃先の前記上ロールと前記下ロールとの空隙に対する突出量を調整する第2の突出量調整手段と、
前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙を調整する空隙調整手段と、
前記上ロール及び前記下ロールを回転駆動する駆動手段と、
を具備し、
前記上ロールは、その周面の前記第1の間隙側に形成され、前記多芯ケーブルを挟持するための曲線状突起部を有する第1のロールと、前記曲線状突起部の外側に形成されたガイド用凸部を有する第2のロールとからなり、前記下ロールは、その周面の前記曲線状突起部に対向して形成された該曲線状突起部に対応する形状の曲線状部を有する第3のロールと、前記ガイド用凸部に対向して形成された該凸部に対応する形状の凹部を有する第4のロールとからなることを特徴とする剥線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルの外皮を引き切りにより剥離する剥線装置のケーブル送り込み装置及び剥線装置に関し、特に多芯ケーブルの外皮の引き切りによる剥離を確実かつ迅速に行うことを可能にしたケーブル送り込み装置及び剥線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等に含まれる複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯電線、複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯光ファイバケーブル(以下、多芯ケーブルという)が利用可能な有効資源として注目されている。しかし、多芯ケーブルは、樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した構成を有しているので、資源としての再利用に際しては、まず、多芯ケーブルの外皮を剥離して、その中の芯線を取り出さなければならない。
【0003】
従来、複数の細線を被覆部材で被覆してなる電線の被覆部材を剥離して、中の細線を取り出す技術として、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0004】
すなわち、特許文献1に示す「被覆電線の被覆剥離装置と剥離方法」においては、ワイヤーハーネス用電線150を回転刃10、10の刃先に案内する被覆電線案内手段35,36と、ワイヤーハーネス用電線150の被覆部材の長手方向に略対称位置の2箇所に切れ目を入れる対向した回転刃10、10と、対向した回転刃10、10の下流側に位置し、切れ目を入れたワイヤーハーネス用電線150をさらに圧延する対向した圧延ローラ30、30とを備えて構成されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示された構成においては、外径3mm程度のワイヤーハーネス用の電線からの細線の取り出しはできても、外径15mmから80mm程度の多芯ケーブルからの芯線の取出しには対応できない。
【0006】
そこで、出願人は、図8乃至図11に示すようなケーブル送り込み装置を用いた剥線装置を製造した。この剥線装置のケーブル送り込み装置は、図8(A)に示すような複数の芯線110を束ねて外皮120で被覆した剥線対象である多芯ケーブル100を上ローラ200と下ローラ300との間に挟持して送り込むことにより、多芯ケーブル100の外皮120を引き切りにより剥離するもので、上記上ローラ200及び下ローラ300は、図9に示すように構成されている。
【0007】
すなわち、上ローラ200は、間隙230を設けて回転軸200aに取り付けられた傘型の歯車ローラ210と同じく傘型の歯車220とからなり、間隙230に図示しない第1のカッターが配置される。また、下ローラ300は、間隙330を設けて回転軸300aに取り付けられた傘型の歯車ローラ310と同じく傘型の歯車320とからなり、間隙330に図示しない第2のカッターが配置される。また、上ローラ200と下ローラ300の上流側には、剥離対象である多芯ケーブル100をガイドするガイド部材400が設けられている。
【0008】
上記上ローラ200と下ローラ300の断面形状を示すと図10のようになり、上記上ローラ200と下ローラ300の間に多芯ケーブル100が挟持された状態が図11に示される。ここで、多芯ケーブル100は、上ローラ200と下ローラ300の間で押し潰され、上側は歯車ローラ210の歯部211と歯車ローラ220の歯部221で支持され、下側は歯車ローラ320の歯部311と歯車ローラ320の歯部321で支持されて送り込まれる。なお、図11において、図11(A)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ20(20mm)の場合を示し、図11(B)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ50(50mm)の場合を示し、図11(C)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ80(80mm)の場合を示す。
【0009】
しかしながら、上記構成の傘型の歯車を用いたケーブル送り込み装置においては、以下の問題があった。
【0010】
1)剥線対象である多芯ケーブル100の外皮120は変形しやすい樹脂で形成されているため、図11に示す傘型の歯車ローラ210、220、310、320を用いても十分なグリップ力が得られない。すなわち、歯車ローラ210、220のX方向の長さは、剥線対象である多芯ケーブル100の径が小さい場合に対応するために、その寸法に制限があり(歯車ローラ210、220のX方向の寸法を長くすると、多芯ケーブル100の径が小さい場合に、上ローラ200を形成する歯車ローラ210、220が下ローラ300の歯車ローラ310と接触する)、このために多芯ケーブル100の径が大きくなると上ローラ200による十分なグリップ力が得られなくなる。また、歯車ローラ210、220、310、320を用いた場合、多芯ケーブル100の外皮120との接触面積が小さくなり、この点からも十分なグリップ力が得られない。
【0011】
2)上記のように、傘型の歯車ローラ210、220、310、320を用いたケーブル送り込み装置においては、特に、図11に示すように剥線対象である多芯ケーブル100の径が大きくなると十分なグリップ力が得られなくなるため、多芯ケーブル100の送り込みに際して多芯ケーブル100がX方向に脱線する場合があり、そのために、上ローラ200と下ローラ300の上流側に、ガイド部材400を設け、かつ、このガイド部材400のガイド幅を剥線対象である多芯ケーブル100の径に応じて調節する必要があった。
【0012】
3)剥線対象である多芯ケーブル100は、廃材であるため曲がっていたり変形している場合が多く、この場合、多芯ケーブル200がガイド部材400と接触したり、カッターの刃が心線に接触するなどして、多芯ケーブル200の送り込みがうまくいかなかったり、最悪の場合は途中で止まってしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−136427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、剥線対象である多芯ケーブルを確実に送り込むことができ、かつ多芯ケーブルの外皮の引き切りによる剥離を確実かつ迅速に行うことができるようにしたケーブル送り込み装置及び剥線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明は、樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルを上ロールと下ロールとの間に挟持して送り込むとともに、前記上ロール及び下ロールのそれぞれの軸方向の間隙に配置されたカッターで前記外皮を引き切りすることにより該外皮を剥離する剥線装置のケーブル送り込み装置であって、前記上ロールは、前記間隙を挟んで第1の回転軸に取り付けられた第1のロールと第2のロールとを具備し、前記下ロールは、前記間隙を挟んで第2の回転軸に取り付けられた第3のロールと第4のロールとを具備し、前記第1のロール及び前記第2のロールは、その周面の前記間隙側に形成され、前記多芯ケーブルを挟持するための曲線状突起部(軸方向の断面形状が曲線状の部分を有する突起部、以下同じ)と該曲線状突起部の外側に形成されたガイド用凸部とをそれぞれ有し、前記第3のロール及び第4のロールは、その周面に前記曲線状突起部に対向して形成された該曲線状突起部に対応する形状の曲線状部(軸方向の断面形状が曲線状の部分を有する部分、以下同じ)と前記ガイド用凸部に対向して形成された該凸部に対応する形状の凹部とをそれぞれ有することを特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明においては、従来の傘型の歯車ローラに代えて、その周面の前記間隙側に設けられ、前記多芯ケーブルを挟持するための曲線状突起部と該曲線状突起部の外側に設けられたガイド用凸部とをそれぞれ有する第1のロール及び第2のロールとからなる上ロールを用い、その周面に前記曲線状突起部に対向して形成された該曲線状突起部に対応する形状の曲線状部と前記ガイド用凸部に対向して形成された該凸部に対応する形状の凹部とをそれぞれ有する第3のロール及び第4のロールとからなる下ロールを用いて前記多芯ケーブルを多点で挟持するように構成したので、多芯ケーブルに対する上ロールと下ロールとによるグリップ力を大幅に改善できる。
【0017】
ここで、前記多芯ケーブルの径に対応して前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙を調整する空隙調整手段を有するように構成することができる。
【0018】
また、前記多芯ケーブルの外皮の厚さに対応して前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙に突出する前記カッターの突出量を調整する突出量調整手段を有するように構成することができる。
【0019】
また、本発明は、樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルの外皮を引き切りにより剥離する剥線装置であって、第1の間隙を有して第1の回転軸に取り付けられた上ロールと、第2の間隙を有して第2の回転軸に取り付けられた下ロールとを有し、前記上ロールと前記下ロールとの間に前記多芯ケーブルを挟持して送り込むケーブル送り込み装置と、前記上ロールの第1の間隙に配置され、刃先が前記上ロールと前記下ロールとの空隙に突出する第1のカッターと、前記下ロールの第2の間隙に配置され、刃先が前記上ロールと前記下ロールとの空隙に突出する第2のカッターと、前記第1のカッターの刃先の前記上ロールと前記下ロールとの空隙に対する突出量を調整する第1の突出量調整手段と、前記第2のカッターの刃先の前記上ロールと前記下ロールとの空隙に対する突出量を調整する第2の突出量調整手段と、前記上ロールと前記下ロールとの間の空隙を調整する空隙調整手段と、前記上ロール及び前記下ロールを回転駆動する駆動手段と、
を具備し、前記上ロールは、その周面の前記第1の間隙側に形成され、前記多芯ケーブルを挟持するための曲線状突起部を有する第1のロールと、前記曲線状突起部の外側に形成されたガイド用凸部を有する第2のロールとからなり、前記下ロールは、その周面の前記曲線状突起部に対向して形成された該曲線状突起部に対応する形状の曲線状部を有する第3のロールと、前記ガイド用凸部に対向して形成された該凸部に対応する形状の凹部を有する第4のロールとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、本発明の新規なケーブル送り込み装置の構成により、傘型歯車ローラを用いたケーブル送り込み装置に比較して剥線対象である多芯ケーブルに対する十分大きなグリップ力を得ることができ、これにより、剥線対象である多芯ケーブルの径に応じてガイド幅を調節するガイド部材は不要となり、また、剥線対象である多芯ケーブルがガイド部材に接触したり、カッターの刃が心線に接触するなどすることによる多芯ケーブルの送り込みができなくなるような不都合は生じず、多芯ケーブルの外皮の引き切りによる剥線を確実かつ迅速に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る剥線装置の正面図及び側面図である。
図2図2は、図1に示した剥線装置の正面断面図及び側面断面図である。
図3図3は、図1に示した剥線装置の上ローラの断面図及び側面図である。
図4図4は、図1に示した剥線装置の下ローラの断面図及び側面図である。
図5図5は、図1に示した剥線装置の上ローラと下ローラとを組み合わせた状態の断面図である。
図6図6は、図1に示した剥線装置の上ローラと下ローラとを組み合わせた状態の斜視図である。
図7図7は、図1に示した剥線装置の上ローラと下ローラとの間に多芯ケーブルを挟持した多芯ケーブルの外皮の引き切りの状態を示す断面図である。
図8図8は、多芯ケーブルの構成例及び上ローラと下ローラとの間に多芯ケーブルを挟持して送り込む状態を示す略図である。
図9図9は、従来の剥線装置の上ローラと下ローラとを組み合わせた状態の斜視図である。
図10図10は、従来の剥線装置の上ローラと下ローラとを組み合わせた状態の断面図である。
図11図11は、従来の剥線装置の上ローラと下ローラとの間に多芯ケーブルを挟持した多芯ケーブルの外皮の引き切りの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施例について、願書に添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る剥線装置を示すもので、図1(A)はその正面図、図1(B)は、その側面図である。また、図2(A)は図1に示した剥線装置の正面断面図、図2(B)はその要部側面断面図である。
【0024】
図1及び図2において、この剥線装置1は、樹脂で被覆された複数の芯線を束ねて外皮で被覆した多芯ケーブルの外皮を引き切りにより剥離する剥線装置であって、剥線対象である多芯ケーブルを上ローラ10と下ローラ20との間に挟んで送り込むことによって、多芯ケーブルの外皮を引き切りにより剥離する。
【0025】
ここで、上ローラ10と下ローラ20は、剥線対象である多芯ケーブルを送り込むケーブル送り込み装置を構成し、上ローラ10は、図2(B)に示すように、第1の間隙13を有して回転軸14に取り付けられた第1のローラ11と第2のローラ12とからなり、下ローラ20は、第2の間隙23を有して回転軸24に取り付けられた第3のローラ21と第4のローラ22とからなる。なお、上ローラ10と下ローラ20の詳細形状は、後に、図3乃至図6を参照して詳細に説明する。
【0026】
上ローラ10の第1の間隙13には、上ローラ10と下ローラ20との空隙に刃先30a(図1(B)参照)が突出する第1のカッター30が設けられ、下ローラ20の第2の間隙23には、上ローラ10と下ローラ20との空隙に刃先40a(図1(B)参照)が突出する第2のカッター40が設けられる。
【0027】
上ローラ10と下ローラ20との間の空隙に対する第1のカッター30の刃先30aの突出量は、第1の突出量調整装置31により調整され、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙に対する第2のカッター40の刃先40aの突出量は、第2の突出量調整装置41により調整される。
【0028】
ここで、第1の突出量調整装置31は、ノブ31aの回転により上ローラ10と下ローラ20との空隙に対する第1のカッター30の刃先30aの突出量を調整することができ、第2の突出量調整装置41は、ノブ41aの回転により上ローラ10と下ローラ20との空隙に対する第2のカッター40の刃先40aの突出量を調整することができる。
【0029】
なお、第1の突出量調整装置31及び第2の突出量調整装置41による第1のカッター30の刃先30a及び第2のカッター40の刃先40aの突出量の調整は、剥線対象である多芯ケーブルの外皮の厚さに対応して行われる。
【0030】
上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hは、ハンドル50の回転に調整することができる。すなわち、ハンドル50を、例えば、時計方向に回転させると、上ローラ10は下降し、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hは小さくなる。反対に、ハンドル50を、例えば、反時計方向に回転させると、上ローラ10は上昇し、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hは大きくなる。
【0031】
ここで、ハンドル50による上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hの調整は、剥線対象である多芯ケーブルの径に対応して行われる。
【0032】
下ローラ20が取り付けられる回転軸24の一端にはスプロケット24bが設けられており、このプーリー24bには、図示しないモータの回転軸がチェーンを介して取り付けれられている。また、回転軸24には、歯車24aが取り付けられ、この歯車24aは、回転軸25に取り付けられた歯車25aに歯合し、歯車25aは回転軸26に取り付けられた歯車26aに歯合し、歯車26aは回転軸24に取り付けられた歯車24aに歯合している。
【0033】
したがって、図示しないモータを回転させると、これに応じて回転軸24が回転し、これに同期して回転軸14が逆回転する。ここで、回転軸25及び回転軸26は、回転軸24に軸支された回動プレート27上に取り付けられ、回転軸26は、回転軸14に軸支された回動プレート28上に取り付けられているので(図1(A)参照)、ハンドル50により上ローラ10を下降、もしくは上昇させても、歯車24aと歯車25aとの歯合、歯車25aと歯車26aとの歯合、歯車26aと歯車14aとの歯合は維持される。
【0034】
このようにして、図示しないモータによる上ローラ10及び下ローラ20の回転により剥線対象である多芯ケーブルの送り込みが行われる。
【0035】
図3は、図1に示した剥線装置1の上ローラ10の詳細を示すもので、図3(A)は、その断面図、図3(B)はその側面図を示す。
【0036】
図3において、図1に示した剥線装置1の上ローラ10は、第1の間隙13離間して図2(B)に示した回転軸14に取り付けられる第1のローラ11と第2のローラ12とから構成され、その中央には回転軸14に取り付けるための取付孔14cが設けられている。
【0037】
ここで、第1のローラ11は、その周面の第1の間隙13側に形成された曲線状突起部11aと該曲線状突起部11aの軸方向外側に形成されたガイド用凸部11bとを有している。
【0038】
また、第2のローラ12は、第1のローラ11と同様に、その周面の第1の間隙13側に形成された曲線状突起部12aと該曲線状突起部12aの軸方向外側に形成されたガイド用凸部12bとを有している。
【0039】
図4は、図1に示した剥線装置1の下ローラ20の詳細を示すもので、図4(A)は、その断面図、図4(B)はその側面図を示す。
【0040】
図4において、図1に示した剥線装置1の下ローラ20は、第2の間隙23離間して図2(B)に示した回転軸24に取り付けられる第3のローラ21と第4のローラ22とから構成され、その中央には回転軸24に取り付けるための取付孔24cが設けられている。
【0041】
ここで、第3のローラ11は、その周面に図3に示した曲線状突起部11aに対向して設けられたこの曲線状突起部11aに対応する形状の曲線状部21aと、図3に示したガイド用凸部11bに対向して設けられたこのガイド用凸部11bに対応する形状の凹部21bとを有している。
【0042】
また、第4のローラ12は、その周面に第3のローラ11と同様に、図3に示した曲線状突起部12bに対向して設けられたこの曲線状突起部12bに対応する形状の曲線状部22aと、図3に示したガイド用凸部12bに対向して設けられたこのガイド用凸部12bに対応する形状の凹部22bとを有している。
【0043】
なお、図4に示す曲線状部21a及び曲線状部22aは、曲線状突起部11a及び曲線状突起部12aの形状に対応するために、2つのピークをそれぞれ有している。
【0044】
図5は、図1に示した剥線装置1の上ローラ10と下ローラ20とを組み合わせた状態の断面図である。図5から明らかなように、上ローラ10の第1のローラ11には、曲線状突起部11aと、ガイド用凸部11bとが設けられており、下ローラ20の第3のローラ21には、上ローラ10の第1のローラ11の曲線状突起部11aに対応した形状の曲線状部21aと、上ローラ10の第1のローラ11のガイド用凸部11bに対応する形状の凹部21bとが設けられている。
【0045】
また、上ローラ10の第2のローラ12には、曲線状突起部12aと、ガイド用凸部12bとが設けられており、下ローラ20の第4のローラ22には、上ローラ10の第2のローラ12の曲線状突起部12aに対応した形状の曲線状部22aと、上ローラ10の第2のローラ12のガイド用凸部12bに対応する形状の凹部22bが設けられている。上記図5に示した上ローラ10と下ローラ20とを組み合わせた状態を斜視図で示すと図6のようになる。
【0046】
図7は、図1に示した剥線装置1の上ローラ10と下ローラ20との間に多芯ケーブル100を挟持した多芯ケーブル100の外皮の引き切りの状態を示す断面図で、図7(A)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ20(20mm)の場合を示し、図7(B)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ50(50mm)の場合を示し、図7(C)は、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ80(80mm)の場合を示している。
【0047】
図7(A)で示すように、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ20(20mm)の場合は、まず、ハンドル50を操作して、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hが20mmより僅かに小さい値になるように調整し、第1のカッター30の刃先30aの突出量及び第2のカッター40の刃先40aの突出量を、図1に示した第1の突出量調整装置31及び第2の突出量調整装置41により、剥線対象である多芯ケーブル100の外皮の厚さより僅かに大きくなるように調整する。
【0048】
この状態が図7(A)に示される。図7(A)においては、剥線対象である多芯ケーブル100は上ローラ10と下ローラ20とによって若干潰され、上ローラ10のa点とb点、下ローラ20のc点とd点の4点で支持される。
【0049】
この場合は、上ローラ10のa点とb点、下ローラ20のc点とd点の4点に多芯ケーブル100の外皮の弾発力が加わるので、十分なグリップ力を得ることができる。
【0050】
また、 図7(B)で示すように、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ50(50mm)の場合は、まず、ハンドル50を操作して、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hが50mmより僅かに小さい値になるように調整し、第1のカッター30の刃先30aの突出量及び第2のカッター40の刃先40aの突出量を、図1に示した第1の突出量調整装置31及び第2の突出量調整装置41により、剥線対象である多芯ケーブル100の外皮の厚さより僅かに大きくなるように調整する。
【0051】
この状態が図7(B)に示される。図7(B)においては、剥線対象である多芯ケーブル100は上ローラ10と下ローラ20とによって若干潰され、上ローラ10のa点、b点、g点、h点、下ローラ20のc点、d点、e点、f点の8点で支持される。
【0052】
この場合は、上ローラ10のa点、b点、g点、h点、下ローラ20のc点とd点、e点、f点の8点に多芯ケーブル100の外皮の弾発力が加わるので、十分なグリップ力を得ることができる。
【0053】
また、図7(C)で示すように、剥線対象である多芯ケーブル100の外径がφ80(80mm)の場合は、まず、ハンドル50を操作して、上ローラ10と下ローラ20との間の空隙Hが80mmより僅かに小さい値になるように調整し、第1のカッター30の刃先30aの突出量及び第2のカッター40の刃先40aの突出量を、図1に示した第1の突出量調整装置31及び第2の突出量調整装置41により、剥線対象である多芯ケーブル100の外皮の厚さより僅かに大きくなるように調整する。
【0054】
この状態が図7(C)に示される。図7(C)においては、図7の場合と同様に、剥線対象である多芯ケーブル100は上ローラ10と下ローラ20とによって若干潰され、上ローラ10のa点、b点、g点、h点、下ローラ20のc点、d点、e点、f点の8点で支持される。
【0055】
この場合も、上ローラ10のa点、b点、g点、h点、下ローラ20のc点とd点、e点、f点の8点に多芯ケーブル100の外皮の弾発力が加わるので、十分なグリップ力を得ることができる。
【0056】
このように、本発明のケーブル送り込み装置によれば、上ローラ10及び下ローラ20の新規な形状により、多芯ケーブル100の径が大きくなっても多芯ケーブル100に対するグリップ力を十分大きな値に維持することができ、これにより剥線対象である外径15mmから80mm程度の多芯ケーブルのすべてに対して十分大きなグリップ力を得ることができる。
【0057】
これにより、剥線対象である多芯ケーブルの径に応じてガイド幅を調節するようなガイド部材は不要となり、また、剥線対象である多芯ケーブルがガイド部材に接触したり、カッターの刃が心線に接触するなどにより多芯ケーブルの送り込みができなくなるような不都合は生じず、多芯ケーブルの外皮の引き切りによる剥線を確実かつ迅速に行うことができる。
【0058】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…剥線装置
10…上ローラ
11…第1のローラ
11a…曲線状突起部
11b…ガイド用凸部
12…第2のローラ
12a…曲線状突起部
12b…ガイド用凸部
13…第1の間隙
14…回転軸
20…下ローラ
21…第3のローラ
21a…曲線状部
21b…凹部
22…第4のローラ
22a…曲線状部
22b…凹部
23…第2の間隙
24…回転軸
30…第1のカッター
31…第1の突出量調整装置
40…第2のカッター
41…第2の突出量調整装置
50…ハンドル
【要約】
多芯ケーブルの外皮の引き切りによる剥離を確実かつ迅速に行うことができるようにしたケーブル送り込み装置及び剥線装置を提供する。
【課題】多芯ケーブル100を上ロール10と下ロール20との間に挟持して送り込むとともに、上ロール10及び下ロール20のそれぞれの軸方向の間隙に配置されたカッターで多芯ケーブル100の外皮を引き切りする剥線装置であって、上ロール10は、その周面の間隙13側に形成に形成され、多芯ケーブル100を挟持するための曲線状突起部11a、12aとその外側に形成されたガイド用11b、12bとをそれぞれ有する第1のロール11及び第2のロール12からなり、下ロール20は、曲線状突起部11a、12aに対向して形成された曲線状部21a、22aとガイド用凸部11b、12bに対向して形成された凹部21b、22bとをそれぞれ有する第3のロール21及び第4のロール22からなる。
【選択図】図1
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