特許第5714173号(P5714173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714173
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】イメージのスクラッチの検出
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20150416BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20150416BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   H04N1/00 106C
   B41J29/46 C
   G06T1/00 310A
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-502522(P2014-502522)
(86)(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公表番号】特表2014-514649(P2014-514649A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2011030339
(87)【国際公開番号】WO2012134451
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル,キシレヴ
【審査官】 佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−096206(JP,A)
【文献】 特開2003−094594(JP,A)
【文献】 特開2006−138768(JP,A)
【文献】 特開平07−249099(JP,A)
【文献】 特開2005−049212(JP,A)
【文献】 特開2007−152700(JP,A)
【文献】 特開2001−105698(JP,A)
【文献】 特開2007−033247(JP,A)
【文献】 特開2011−028588(JP,A)
【文献】 風間 泰宏、外2名,“フィルム映像における投影処理を用いたスクラッチの検出と除去”,第22回 回路とシステム軽井沢ワークショップ 論文集,日本,電子情報通信学会 システムと信号処理サブソサイエティ 非線形理論とその応用サブソサイエティ,2009年 4月20日,p.420-425
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/46
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントされたイメージ上のスクラッチを検出するための方法であって、該方法が、
該プリントされたイメージのディジタル表現及びディジタル基準イメージを取得し、
該プリントされたイメージの該ディジタル表現及び該ディジタル基準イメージを複数の対応するセグメントへと分割し、
該複数の対応するセグメントの各対の各セグメントに極値フィルタを使用することにより該複数の対応するセグメントの各対に前処理操作を適用し、
前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現のセグメント内の複数のピクセル行の複数のピクセルの値を疑わしい方向に沿って加算して該セグメントについての該プリントされたイメージの該ディジタル表現の投影信号を取得し、及び前記疑わしい方向において前記ディジタル基準イメージの対応するセグメント内の複数のピクセルの値を加算して該対応するセグメントについての該ディジタル基準イメージの投影信号を取得し、
該投影信号間の類似性測度を計算し、
該類似性測度を所定のしきい値と比較して、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメント内にスクラッチが存在するか否かを判定する、
という各ステップを含む、プリントされたイメージ上のスクラッチを検出するための方法。
【請求項2】
前記類似性測度が、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数とそれに対応する前記ディジタル基準イメージの前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数との違いである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現を取得するために該プリントされたイメージをスキャンするステップを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投影信号間の類似性測度を計算する前に該投影信号を位置合わせするよう該投影信号を登録するステップを含む、請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記極値フィルタが最大フィルタ又は最小フィルタである、請求項1ないし請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ディジタル基準イメージが1つのグレーレベル又は少数のグレーレベルを含む、請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のピクセル行が離間したピクセル行からなる、請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のピクセル行が隣接するピクセル行からなる、請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の命令が格納された持続性コンピュータ読み取り可能媒体であって、該命令が、プロセッサによるその実行時に、
プリントされたイメージのディジタル表現及びディジタル基準イメージを取得し、
該プリントされたイメージの該ディジタル表現及び該ディジタル基準イメージを複数の対応するセグメントへと分割し、
該複数の対応するセグメントの各対の各セグメントに極値フィルタを使用することにより該複数の対応するセグメントの各対に前処理操作を適用し、
前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現のセグメント内の複数のピクセル行の複数のピクセルの値を疑わしい方向に沿って加算して該セグメントについての該プリントされたイメージの該ディジタル表現の投影信号を取得し、及び前記疑わしい方向において前記ディジタル基準イメージの対応するセグメント内の複数のピクセルの値を加算して該対応するセグメントについての該ディジタル基準イメージの投影信号を取得し、
該投影信号間の類似性測度を計算し、
該類似性測度を所定のしきい値と比較して、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメント内にスクラッチが存在するか否かを判定する、
という各ステップを前記プロセッサに実行させるものである、持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項10】
前記類似性測度が、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数とそれに対応する前記ディジタル基準イメージの前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数との違いである、
いう各ステップを含む、請求項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項11】
プロセッサによる実行時に、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現を取得するために該プリントされたイメージをスキャンするステップを該プロセッサに実行させる命令が格納されている、請求項9又は請求項10に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項12】
プロセッサによる実行時に、前記投影信号間の類似性測度を計算する前に該投影信号を位置合わせするよう該投影信号を登録するステップを該プロセッサに実行させる命令が格納されている、請求項9ないし請求項11の何れか一項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項13】
前記極値フィルタが最大フィルタ又は最小フィルタである、請求項9ないし請求項12の何れか一項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項14】
前記ディジタル基準イメージが1つのグレーレベル又は少数のグレーレベルを含む、請求項9ないし請求項13の何れか一項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項15】
前記複数のピクセル行が離間したピクセル行からなる、請求項9ないし請求項14の何れか一項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項16】
前記複数のピクセル行が隣接するピクセル行からなる、請求項9ないし請求項14の何れか一項に記載の持続性コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項17】
プリントされたイメージ上のスクラッチを検出するためのシステムであって、該システムが、
プリントされたイメージのディジタル表現及びディジタル基準イメージを複数の対応するセグメントへと分割するセグメント化手段と、
該複数の対応するセグメントの各対の各セグメントに極値フィルタを使用することにより該複数の対応するセグメントの各対に前処理操作を適用する手段と、
前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現のセグメント内の複数のピクセル行の複数のピクセルの値を疑わしい方向に沿って加算して該セグメントについての該プリントされたイメージの該ディジタル表現の投影信号を取得し、及び前記疑わしい方向において前記ディジタル基準イメージの対応するセグメント内の複数のピクセルの値を加算して該対応するセグメントについての該ディジタル基準イメージの投影信号を取得する、投影手段と、
該投影信号間の類似性測度を計算する手段と、
該類似性測度を所定のしきい値と比較して、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメント内にスクラッチが存在するか否かを判定する手段と
からなる、プリントされたイメージ上のスクラッチを検出するためのシステム。
【請求項18】
前記類似性測度が、前記プリントされたイメージの前記ディジタル表現の前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数とそれに対応する前記ディジタル基準イメージの前記セグメントの前記投影信号内のスパイクの個数との違いである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記投影信号を位置合わせするよう該投影信号を登録する手段を更に含む、請求項17又は請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記極値フィルタが最大フィルタ又は最小フィルタである、請求項17ないし請求項19の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プリントされたイメージは、様々なプリント上の欠陥を含むことがある。プリント上の欠陥は、例えば、プリント機器の動作不良(例えば、デスクトップ用インクプリンタのノズルの飛び跳ねに起因するインクスポット、大型インクプリンタ内の望ましくない電磁場に起因する染み)、汚物(例えば、プリンタドラム上に堆積する用紙片その他の汚物)、又は機械的又は物理的な障害(例えば、プリンタの正しい機能を阻害するプリンタ内の破片、又はプリンタを不正に動作させるプリンタの部品の変位)といった様々な理由の結果として生じるものである。結果的に生じるプリント上の欠陥は、プリントされた全ページにわたって全体的に発生し、又は1つ又は2つ以上の領域に局所的に発生する場合があり、また、小領域、しぶき、又はスクラッチ(scratch:擦り傷)といった、様々な形状を有し得るものである。
【0002】
汎用的なプリント欠陥検出方法は、様々な種類、形状、及び大きさの欠陥を対象とするものである。かかる方法は、通常は、欠陥固有の特徴を考慮することなく設計され、その検出能力は、欠陥と該欠陥に隣接する領域とのコントラストのみに依存するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる検出方法は、スクラッチの検出に失敗し得るものである。スクラッチは、その背景(肌理を有し又はノイズの多いものとなり得るもの)に対するコントラストが極めて低いため、その幅が小さいため、及び線等のイメージの特徴と類似する特徴を有するものとなり得るが故に線と混同し易いものであるため、その検出が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本発明の一実施形態によるプリントされたイメージ上のスクラッチを検出するための方法を示している。
図2】本発明の一実施形態によるプリントされたイメージ上のスクラッチを検出するためのプロセスを示している。
図3】本発明の別の実施形態によるプリントされたイメージ上のスクラッチを検出するためのプロセスを示している。
図4】プリンタに組み込まれた本発明の一実施形態によるプリントされたイメージ上のスクラッチを検出するためのシステムを示している。
図5A】プリントされたイメージの1セグメントを示している。
図5B】本発明の一実施形態による図5Aに示すプリントされたイメージの1つのセグメントの投影信号と基準イメージの対応するセグメントの投影信号とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の主題については、本明細書の最後で特に指摘し及び明確に請求する。しかし、本発明は、その構成及び動作方法の両者、並びにその目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と共に参照することにより最も良く理解することが可能である。該図面は、例示としてのみ提供するものであり、本発明の範囲を限定するものでは決してない、ということが理解されるべきである。同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0006】
スクラッチは、一般に、細長くて非常に幅の狭い構成のものとして特徴付けることができる。多くの場合、スクラッチは、コントラストの低さが故にその周囲の背景と区別するのが困難である。周囲の背景自体が肌理を有しノイズの多いものである場合もある。換言すれば、スクラッチは、検出をより一層困難にする極めて低い信号対ノイズ比(SNR)を有し得るものである。更に、スクラッチは、有効なイメージ特徴(線・縁など)と非常に似て見える場合があり、及びプリントされた1ページ全体にわたって又は該ページの1つ又は2つ以上のセグメントにわたって現れる場合がある。
【0007】
スクラッチに固有の特徴は、その検出の容易化に役立ち得るものである。詳細には、本発明の実施形態によれば、方向の一貫性(directional coherence)を有するものとしてスクラッチを特徴付けることができるという事実を利用することが提案される。
【0008】
本発明との関連では、「イメージ」とは、例えば、グラフィカルイメージ(例えば写真)、ベクタグラフィクスイメージ(例えばグラフィクス)、テキストグラフィクスといった、あらゆるイメージ表現を含むようその最も広い範囲で理解されるものである。
【0009】
「イメージのプリント」又は「プリントされたイメージ」は、本発明との関連では、プリンタにより生成されたものであろうとその他の再生成、再構成、若しくはコピー装置又は方法(以下「プリンタ装置」及び「プリント方法」と称す)により生成されたものであろうと、イメージのあらゆる再生成、再構成、又はコピーを称するものとして理解されるものである。
【0010】
添付図面を参照する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態によるプリントされたイメージ上のスクラッチを検出するための方法を示している。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、プリントされたイメージ上のスクラッチを検出するための方法100は、プリントされたイメージ及びディジタル基準イメージのディジタル表現を取得するステップ102を含むことが可能である。該方法はまた、該イメージのディジタル表現の少なくとも1つのセグメント内およびディジタル基準イメージの対応する1つのセグメント内の疑わしい方向に沿ってピクセルの値を加算して投影信号を取得する(ピクセル値の二次元マトリクスが、疑わしい方向でピクセルを加算することにより、一次元の投影信号へと投影される)ステップ104を含むことが可能である。該方法は更に、該投影信号を比較してスクラッチに起因する該疑わしい方向における方向の一貫性を示す非類似性(dissimilarity)を検出するステップ106を含むことが可能である。
【0013】
投影信号の利用は計算負荷を大幅に削減することが可能なものであり、これにより一層高速の性能と効率的な資源の利用とが可能となる。
【0014】
簡潔さのため、以下では、スキャンされたイメージのディジタル表現を「プリントイメージ」と称し、該イメージのディジタル基準を「基準イメージ」と称することとする。
【0015】
特定の方向(疑わしい方向)でのピクセルの加算は、該疑わしい方向でピクセルのマトリクスを投影することにより方向の一貫性を有する欠陥の周囲の背景に対する該欠陥の「コントラスト」を増大させることにより該欠陥の検出可能性を増大させることを目的としたものである。
【0016】
本発明の実施形態によっては、該加算は、前記疑わしい方向における前記少なくとも1つのセグメント内のピクセルの全て(すなわち全ての隣接するピクセル)の値を加算することを含む。本発明の別の実施形態では、該方法は、前記疑わしい方向における前記少なくとも1つのセグメント内の幾つかのピクセル行のみのピクセル値を加算する(例えば、1ピクセルおきのピクセル行又はn番目毎のピクセル(nは整数)を選択する)ことを含むことが可能である。本発明との関連では、「行を加算する」とは、前記セグメント内で前記疑わしい方向にある一行に沿って発見された全てのピクセルを加算することを意味する。本発明の実施形態によっては、複数のピクセル行の加算は、複数の隣接する行内のピクセルを加算することとすることが可能であり、本発明の別の実施形態では、複数の離間したピクセル行を加算することとすることが可能である。
【0017】
本発明の実施形態によっては、マルチスケール法を用いることが可能であり、この場合には、様々な幅のスクラッチを検出するために、プロセスが複数回繰り返され、その各回毎に異なる分布のピクセル行が加算される(例えば、様々なn(例えばnは整数)についてn番目毎のピクセル行が加算される)。これにより、太いスクラッチを強度投影信号上の幅広の階段部分ではなくピークとして出現させることが可能となり、このため、強度投影信号を検査する際に階段部分を探す必要がなくなり、これはまた、スキャンされたイメージ中の有効な特徴に関係し得るものとなる。
【0018】
疑わしい方向は、多くの場合、イメージのX若しくはY軸又はそれらの軸に関連する方向となる。スクラッチがプリンタの機械的故障によって生じる場合、該スクラッチの方向は、移動するプリントヘッドの方向(インクプリンタでは、多くのプリンタモデルの場合、プリントされるページの幅を横切る方向又はX軸方向)に相関し又はプリントされるページの進行方向に相関する可能性が極めて高い。
【0019】
別の例として、スクラッチが汚物又は外部的な障害物に起因するものである場合には、該スクラッチの方向は、プリントされるページに対して斜め(例えば様々な角度)になり得る。
【0020】
単純な場合、プリントイメージは、単一のグレーレベル又は少数の異なるグレーレベルを有する(本発明との関連では、「少数」とは、限定数の異なるグレーレベル、例えば、2-10以下の異なるグレーレベルを意味する)。
【0021】
プリントイメージが、単一のグレーレベルの1ブロックのみ又は複数の異なるグレーレベルの複数のブロックよりも多数の細部を含む場合に、ディジタル基準を使用することが可能である。
【0022】
プリントされるイメージが欠陥を全く含まない場合であっても、該プリントイメージは、スキャンプロセスのアーチファクトに起因して、基準イメージと異なる(場合によっては大幅に異なる)可能性がある、ということに留意されたい。詳細には、スキャンされたプリントイメージは、基準イメージに対して、拡大され、変位され、回転され、又はそれらの組み合わせが施される可能性がある。更に、プリントされたハーフトーンイメージのスキャンされたイメージは、オリジナルのイメージには存在しない典型的な肌理を呈するものとなり得る。それ故、欠陥の検出は、プリント時の欠陥に関係のない非類似性を無視することを目的とする。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態によるプリントイメージ上のスクラッチを検出するためのプロセス200を示している。
【0024】
プリントされたイメージをスキャンして該プリントされたイメージのディジタル表現を取得する(202)。該イメージのディジタル基準もまた取得する(204)。
【0025】
該ディジタル基準は、例えば、検査対象となるプリント上にプリントするために送信されたディジタルイメージとすることが可能である。プリントイメージが単一のグレーレベル又は少数のグレーレベル(例えば、プリンタのプリント性能をテストするために使用されるプリント診断ツールによりプリントされるような診断用のテストプリント)を含むものである場合には、基準イメージは、単純に、単一のグレーレベルのイメージ又は少数のグレーレベルを有するイメージとなる。
【0026】
以下の操作は、スキャンされたイメージのディジタル表現と該イメージのディジタル基準との両方について実行される。プリントイメージ及び基準イメージは両方とも、対応する複数のセグメントへと分割する(206)ことが可能である。該セグメントのサイズは、固定とすること又は適応的に(自動的に又はユーザによる決定により)選択することが可能である。セグメントについての処理は、全体的な投影信号に対するイメージ全体の(比較的)小さな寄与に起因して該イメージ全体の考察時に短いスクラッチの検出に失敗するリスクを低減させるものでなければならない。本発明の実施形態によっては、それらイメージの一対の対応する複数部分のみをセグメント化する(又は単一のセグメントとして扱う)ことが可能であり、また別の実施形態では、それらイメージの領域の大部分又はその全てをセグメント化することが可能である。
【0027】
各セグメント毎に疑わしい方向に沿って複数のピクセル行を加算して投影信号を取得する(208)。プリント上のイメージ及び該イメージのディジタル基準の投影信号を該投影信号を位置合わせするよう登録する(210)。
【0028】
該投影信号間の類似性測度を計算する(212)ことにより(プリントイメージ及び基準イメージの)各対をなす対応するセグメントの登録された信号を比較する。次いで、該類似性測度が所定のしきい値未満である(非類似性を示す)か否かを判定し(214)、該類似性測度が該所定のしきい値未満である場合に、プリントイメージ中のスクラッチの存在を宣言する(216)。
【0029】
図3は、本発明の別の実施形態による、プリントイメージ上のスクラッチを検出するためのプロセス300を示している。
【0030】
プロセス300において、プリントされたイメージがスキャンされて(302)該イメージのディジタル表現が取得される。該イメージのディジタル基準もまた取得される(304)。
【0031】
該プリントイメージ及び該基準イメージが次いで複数の対応するセグメントへと分割される(306)。この場合も、該セグメントのサイズは、固定とすること又は適応的に決定することが可能である。本発明の実施形態によっては、イメージの対応する複数部分のみをセグメント化する(又は単一のセグメントとして扱う)ことが可能であり、また別の実施形態では、それらイメージの領域の大部分又はその全てをセグメント化することが可能である。
【0032】
スクラッチが、欠陥のコントラストに対して相対的な不変性を達成する(プリントイメージの)検査対象セグメント内に存在する場合には、各対をなす対応するセグメント(プリントイメージのセグメントとそれに対応する基準イメージのセグメント)に、スクラッチの検出可能性を増大させるよう設計された前処理操作を適用する(307)ことが可能であり、これにより低コントラストの欠陥を検出することが可能となる。
【0033】
例えば、前処理操作は、以下の複数の前処理操作から選択することが可能である:ノイズを低減させる、コントラストを増大させる、対をなす対応するセグメントを異なる領域に変換する(例えば、対応するセグメントにフーリエ変換を適用する)。前処理操作の更なる例として、対応するセグメントの各対の各セグメントに使用することができる極値(extremum)フィルタが挙げられ、該極値フィルタは、該セグメントの各ピクセルに、該ピクセルの近隣のピクセルのうち最も高い値を有する値を割り当てる(該フィルタが最大フィルタである場合。該フィルタが最小フィルタである場合には、最も小さい値を割り当てる)。「近隣」とは、例えば、すぐ隣接する周囲のピクセル(例えば、3×3ピクセルのブロック、この場合、中心のピクセルが該フィルタによって処理される)を意味する。別の例では、n×nの隣接するピクセル(nは3より大きい)のブロックが考えられる。
【0034】
本発明の別の実施形態では、極値フィルタの変形例を使用して、近隣のブロック中の最も大きな値(最大フィルタの場合。最小フィルタの場合には最も小さな値)のピクセルに値1を割り当て、該ブロックの他のピクセルに値0を割り当てることが可能である。
【0035】
次いで、検出されたセグメント及びそれに対応するディジタル基準中のセグメントの各々毎に、疑わしい方向に沿ってピクセル行のピクセル値を加算して(308)投影信号を取得する。次いで、該プリントイメージ及び該基準イメージの投影信号を位置合わせするように該投影信号を登録する(310)ことが可能である。次いで、該投影信号間の類似性測度を計算して(312)所定のしきい値と比較し(314)、該類似性測度が該しきい値未満であることが見いだされた場合に、スクラッチの存在が宣言される(316)。
【0036】
例えば、類似性測度(例えば尖度)は、散在の概念(notion of sparsity)に基づくものとすることが可能である。投影信号の各々におけるスパイクの個数をカウントし及び比較して、プリントイメージのセグメントの投影信号内のスパイクの個数とそれに対応するディジタル基準のセグメントの投影信号内のスパイクの個数との違いによりスクラッチの存在を示すことが可能である。
【0037】
前記しきい値は、基準イメージ中の対応するセグメント内の活動状態と比例するように設定することが可能である。該しきい値はまた、ノイズ推定法を用いて求めることが可能である。正しいしきい値を選択することにより、線分及び様々な縁部といった固有のイメージ特徴の誤検出の数を効果的に削減することが可能となる。
【0038】
図4は、プリンタに組み込まれた、本発明の一実施形態による、プリントイメージ上のスクラッチを検出するためのシステムを示している。
【0039】
該システム400は、プリンタ401に接続されたサーバ又はユーザ(例えばパーソナルコンピュータ(PC)408)を含むことが可能である。例えば、プリンタ401は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、プロッタ、ドットマトリクスプリンタ、若しくはサーマルプリンタ、又は印刷用プレス機とすることが可能である。プリンタ401は、移動時のプリント用の小型ポータブルプリンタ、個人的なプリント作業用の家庭用デスクトッププリンタ、プリント業務用のオフィスプリンタ、又は大規模プリント業務(例えば、スクリーン印刷、ディジタル印刷、ラベル印刷、オフセット印刷、凸版印刷、及びフレキソ印刷)用の工業用プリンタとすることが可能である。
【0040】
プリンタ401は、プリンタにより生成されたプリント406をスキャンするためのスキャナ404を含むことが可能である。本発明の他の実施形態では、プリンタ401内に組み込まれていない別個のスキャナを使用することが可能である。スキャナは、例えば、インラインスキャナ、フラットベッドスキャナ、フォトスキャナ、シートフィードスキャナ、ハンドヘルドスキャナ、及びポータブルスキャナを含む一群のスキャナから選択することが可能である。
【0041】
スキャナ404はスクラッチ検出器409に接続され、該スクラッチ検出器409はセグメント化手段410を含み、該セグメント化手段410は、スキャナから受信したスキャンされたプリントイメージ並びにPC408から受信した基準イメージ(例えば、プリンタ401でプリントするために送信されたイメージと同じイメージ)を対応する複数のセグメントへと分割するよう構成されたものである。スクラッチ検出器409はまた、(前記プリントイメージ及び前記基準イメージの両方について)各セグメント毎に疑わしい方向におけるピクセル行を投影して対応する複数のセグメントについての投影信号を取得するための投影手段412を含むことが可能である。前記プリントイメージ及び前記基準イメージの対応するセグメントからなる複数のセグメント対の投影信号間の比較を行うための比較手段414を含むことが可能である。スクラッチ検出器409はまた、例えば、プリンタ401に包含させることが可能な表示装置402上又はその他の表示装置上に表示させることが可能な視覚的なスクラッチ検出警告を発行するための、入出力(I/O)インタフェイス416を含むことが可能である。該検出警告は、例えば、音声警告、映像警告、又はそれらの組み合わせという形で提供することが可能である。
【0042】
本発明の実施形態によるスクラッチ検出器は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実現させることが可能である。該スクラッチ検出器は、プリンタに組み込むことが可能であり、該プリンタは、家庭プリント用途ではデスクトッププリンタ、業務用途では一層大きなプリンタ、又は大規模な工業用プリンタとすることが可能である。代替的に、スクラッチ検出器は、本発明の実施形態によっては、別個の装置として実現することが可能であり、又はプリンタに接続されたコンピューティング装置(例えば、PC、サーバ等)に組み込むことが可能である。
【0043】
本発明の幾つかの特徴を理解すべく、図5A及び図5Bを参照する。
【0044】
図5Aは、若者の顔のプリントイメージ(写真)の1セグメントである。その垂直スケール及び水平スケールは、より大きなプリントイメージ("Reg"は「登録された」(registered)、すなわち、プリントイメージのディジタル表現を意味する)のセグメント7 4(X方向のセグメント番号7及びY方向のセグメント番号4)における垂直方向(Y軸)及び水平方向(X軸)のピクセル位置を意味している。垂直方向スクラッチ(欠陥)508が、ピクセル列12に示されている。
【0045】
図5Bは、本発明の実施形態による、図5Aに示すセグメントにおけるプリントイメージの投影信号504及びそれに対応する基準イメージのセグメントの投影信号502をそれらが登録される前(すなわちそれら信号が位置合わせされていない)の状態で示すグラフである。該グラフのX軸は、図5Aに示すセグメントのX軸に沿ったピクセル位置を示し、該グラフのY軸は、該グラフの信号(基準投影信号及び登録投影信号)のグレーレベルを示している。
【0046】
ピーク506という形の誤った相関関係がはっきりと認められ、これは、ピクセル列12(X軸上の位置12)におけるスクラッチ508(図5A)の存在を示している。
【0047】
本発明の一実施形態は、1つ又は2つ以上の持続性コンピュータ読み取り可能媒体上にコンピュータ読み取り可能プログラムコードという形で保存されたコンピュータプログラム製品として実施することが可能である。例えば、該コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体とすることが可能である。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、例えば、電子的、光学的、磁気的、電磁気的、赤外線式、若しくは半導体式のシステム、機器、若しくは装置、又はそれらの組み合わせとすることが可能である。
【0048】
上述の本発明の実施形態のコンピュータプログラムコードは、任意の適当なプログラミング言語で記述することが可能である。該プログラムコードは、単一のコンピュータ又は複数のコンピュータ上で実行することが可能である。
【0049】
本発明の実施形態についての上記説明は、例示及び説明を目的として提示したものである。かかる説明は、本発明を網羅すること又は本発明を本開示の厳密な形態に制限することを意図したものではない。上記教示に鑑み、数多くの修正例、変形例、置換例、変更例、及び等価物を実施することが可能であることが当業者には理解されよう。よって、特許請求の範囲はかかる変形例及び変更例の全てを本発明の真の思想の範囲内に含めることを意図したものであることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5B
図5A