(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付の図面に示された好ましい幾つかの実施形態を参照にしながら、本発明の詳しい説明を行う。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、多くの詳細が具体的に示されている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細の一部または全てがなくても実現できることは、当業者にとって明らかである。また、本発明を不必要に不明瞭化しないように、周知のプロセス工程および/または構造の説明は省略してある。
【0027】
1.概要
電気活性ポリマは、電気エネルギによって作動されると変形を生じる。一実施形態において、電気活性ポリマは、2つの電極間の絶縁誘電体として作用し且つ2つの電極間に電圧差を加えると変形するようなポリマを指す。本発明の一態様は、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を改善するようにプリストレインされたポリマに関する。このプリストレインによって、電気活性ポリマの機械応答が、プリストレインされていない電気活性ポリマのそれに比べて改善される。機械応答の改善によって、例えば変形や作動圧力などの、より大きな機械的作用を電気活性ポリマに加えることが可能になる。例えば、本発明によるプリストレインドポリマには、少なくとも約200%の線ひずみと、少なくとも約300%の面ひずみと、を加えることが可能である。このプリストレインは、ポリマの方向によって大きさが異なる。プリストレインの方向による可変性、ポリマを制約する様々な方法、電気活性ポリマのミクロおよびマクロのレベルへの拡張性、そしてポリマの様々な指向方向を組み合わせる(例えば個々のポリマ層を巻いたり積層させたりする)ことによって、電気エネルギを機械的作用に変換させる様々なアクチュエータを実現することが可能になる。このようなアクチュエータは、広い用途において使用することができる。
【0028】
理解を容易にするため、一方向のエネルギ変換に着目して本発明を説明することにする。具体的に言うと、本発明では、電気エネルギから機械エネルギへの変換に着目している。しかしながら、本発明の図面および説明において取り上げられるポリマおよびデバイスが、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を双方向にも行い得ることに、注意する必要がある。したがって、ここで説明されるあらゆるポリマ材料、ポリマ構成、トランスデューサ、デバイス、そしてアクチュエータは、機械エネルギから電気エネルギへと逆方向に変換を行うためのトランスデューサでもある。同様に、ここで取り上げられるあらゆる代表的な電極を、本発明によるジェネレータとともに使用しても良い。一般に、ジェネレータは、一部分の変形に応じて電場が変化するように構成されたポリマを含む。
【0029】
したがって、本発明によるポリマおよびトランスデューサは、電気エネルギから機械エネルギへの変換を行うアクチュエータとして、または機械エネルギから電気エネルギへの変換を行うジェネレータとして使用して良い。実質的に厚さが一定のトランスデューサに関し、その機能がアクチュエータであるか或いはジェネレータであるかを区別するメカニズムの1つとして、厚さに直交する正味面積の変化を見ることが挙げられる。これらのトランスデューサは、その正味面積が減少している場合はジェネレータとして作用する。反対に、その正味面積が増加している場合はアクチュエータとして作用する。
【0030】
本発明による電気活性ポリマは、少なくとも約200%の線ひずみで変形し得るので、ポリマに取り付けられた電極も、機械的性能または電気的性能に支障を生じることなく変形する必要がある。これに対応し、本発明の別の一態様は、電気活性ポリマの形状に適合された適合電極に関する。これらの電極は、本発明によるプリストレインドポリマのように大きく変形した場合であっても電気通信を維持することができる。例えば、本発明による電極に関しては、少なくとも約50%のひずみが一般的である。幾つかの実施形態では、電極の適合性が方向によって異なる場合もある。
【0031】
プリストレインドポリマは、様々なアクチュエータおよび多様な用途においてミクロおよびマクロの両スケールで使用するのに適しているので、本発明において使用される製造プロセスも実に多様である。本発明の別の一形態は、1つまたはそれ以上のプリストレインドポリマを含んだ電気機械デバイスを製造するための方法を提供する。ポリマは、例えば、電気活性ポリマを機械的に伸張させ、それと同時に1つまたはそれ以上の固形部材に固定するなどの、多くの技術を使用してプリストレインすることができる。
【0032】
2.デバイスの一般構造
図1Aおよび
図1Bは、トランスデューサ100を、本発明の一実施形態にしたがって示した上面図である。トランスデューサ100は、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うためのポリマ102を備える。電気活性ポリマ102の上面および下面には、トップ電極104およびボトム電極106がそれぞれ取り付けられており、ポリマ102の一部分に電圧差を提供する。ポリマ102は、トップ電極104およびボトム電極106によって提供される電場の変化によって変形する。電極104,106によって提供される電場の変化に応じたトランスデューサ100の変形は、作動と称される。ポリマ102のサイズが変化するのにともなって、この変形を使用して機械的作用を生じることができる。
【0033】
図1Bは、電場の変化に応じて変形したトランスデューサ100の上面図である。一般に、変形とは、あらゆる変位、膨張、収縮、捩れ、線もしくは面ひずみ、またはポリマ102の一部分に生じる他のあらゆる変形を指す。電極104,106によって生じた電圧差に対応する電場の変化は、プリストレインドポリマ102内に機械的圧力を生じる。この場合は、電極104,106によって生じた異なる電荷が互いに引き合うことによって、電極104,106間で圧縮力を生じ、ポリマ102上で2次元方向108,110への膨張力を生じるので、ポリマ102は、電極104,106間で圧縮され、2次元方向108,110に伸張される。
【0034】
電極104,106は、ポリマ102の全面積ではなく一部分のみを覆っている場合もある。これは、ポリマ102の周囲で電気的な破壊が生じるのを防ぐこと、またはポリマの特定部分のみを特別に変形させることを目的とする。ここで、アクティブ領域とは、ポリマ材料102のうち、変形を生じるのに十分な静電力を有した部分として定義される。以下で説明するように、本発明によるポリマは複数のアクティブ領域を有して良い。アクティブ領域の外側のポリマ材料102は、変形が生じる際に、そのアクティブ領域に対して外から働くスプリング力として作用して良い。より詳しく言うと、アクティブ領域の外側の材料は、その収縮または膨張によってアクティブ領域の変形に抵抗して良い。電圧差の排除およびそれによって誘導される電荷は、逆の効果をもたらす。
【0035】
電極104,106は適合性があり、ポリマ102とともに形状を変化させる。ポリマ102および電極104,106は、変形に対するポリマ102の応答を増大させるように構成される。より詳しく言うと、トランスデューサ100が変形すると、ポリマ102の圧縮によって電極104,106内の相対する電荷が近づけられ、ポリマ102の伸張によって各電極内の同じ電荷が引き離される。一実施形態において、電極104,106の一方は接地されている。
【0036】
一般に、トランスデューサ100は、変形を生じる静電力が機械的な力によって相殺されるまで変形を続ける。機械的な力としては、ポリマ102材料の弾性復元力や、電極104,106の適合性や、トランスデューサ100に結合されたデバイスおよび/または負荷によって提供される外部からの抵抗などが挙げられる。電圧印加の結果として生じるトランスデューサ100の変形は、また、ポリマ102の誘電率やポリマ102のサイズなどの、他の幾つかの要因にも依存し得る。
【0037】
本発明にしたがった電気活性ポリマは、あらゆる方向へ変形することが可能である。電極104,106間に電圧が印加されると、電気活性ポリマ102は、2次元方向108,110の両方向にサイズを増大させる。場合によっては、電気活性ポリマ102が非圧縮性である、例えば応力下における体積が実質的に一定であることもある。このような場合のポリマ102は、2次元方向108,110に膨張した結果として厚さを減少させる。ここで、本発明は非圧縮性のポリマに限定されないこと、そしてポリマ102の変形はこのような単純な関係にのみ適合するものではないことに、注意する必要がある。
【0038】
図1Aのトランスデューサ100の電極104,106に比較的大きな電圧差が加えられると、トランスデューサ100は、
図1Bに示されるように面積の大きい薄い状態に変化する。こうして、トランスデューサ100は、電気エネルギから機械エネルギへの変換を行う。トランスデューサ100は、また、機械エネルギから電気エネルギへの変換も行う。
【0039】
図1Aおよび
図1Bを使用して、トランスデューサ100が機械エネルギから電気エネルギへの変換を行う方法の1つを示しても良い。例えば、トランスデューサ100が外部からの力によって機械的に伸張され、
図1Bに示されるように面積の大きい薄い形状に変化した後、電極104,106間に比較的小さな電圧差が加えられると、外部からの力を取り除かれたトランスデューサ100は、電極間の領域において収縮し、
図1Aに示されるような形状へと変化する。トランスデューサの伸張とは、一般に、トランスデューサをもとの静止位置から変形させ、例えば方向108,110によって規定された電極間平面の正味面積が大きくなるような形状に変形させることを指す。静止位置とは、外部からの電気的または機械的な入力が何もない状態のトランスデューサ100の位置を指し、ポリマ内の任意のプリストレインを含んで良い。トランスデューサ100が伸張されたら、比較的小さい電圧差を加え、静電力の大きさが伸長による弾性復元力を相殺できないようにする。したがって、トランスデューサ100は収縮し、方向108,110(電極間の厚さに直交する)によって定義された2次元面積が減少する形状へと変化する。ポリマ102が厚くなると、電極104,106およびそれらに対応する異なる電荷同士が引き離されるので、電荷の電気エネルギは増大する。さらに、電極104,106が収縮して面積が減少すると、各電極において同じ電荷同士が圧縮されるので、電荷の電気エネルギはやはり増大する。したがって、電極104,106にそれぞれ異なる電荷が存在し、
図1Bに示される形状から
図1Aに示される形状に収縮されると、電荷の電気エネルギは増大する。すなわち、機械的な変形が電気エネルギに変換され、トランスデューサ100はジェネレータとして作用する。
【0040】
トランスデューサ100が、電気的に可変なコンデンサとして説明される場合もある。キャパシタンスは、
図1Bから
図1Aへの形状の変化にともなって減少する。一般に、電極104,106間の電圧差は収縮によって増大する。これは、収縮のプロセス中に、電極104,106に対して電荷の追加または除去が行われなかった場合の話しである。電気エネルギUの増加は、式:U=0.5Q
2/Cによって表される。ここで、Qは陽極上の正電荷の量であり、Cはポリマ102に固有な誘電特性とそのジオメトリ(形状寸法)とに関連する可変なキャパシタンスである。Qが固定された状態でCが減少すると、電気エネルギUは増大する。電気エネルギおよび電圧の増加は、電極104,106と電気通信を行う関係にある適切なデバイスまたは電子回路において、回復または使用され得る。また、ポリマを変形させて機械エネルギを提供する機械的な入力に、トランスデューサ100を機械的に結合しても良い。
【0041】
トランスデューサ100は、収縮時において機械エネルギから電気エネルギへの変換を行う。方向108,110によって規定された平面においてトランスデューサ100が完全に収縮された際に、あるいは収縮中に、電荷およびエネルギの一部または全てを除去することができる。収縮中に電場の圧力が増大し、弾性復元力と相殺し合うようになると、途中で収縮が停止されるので、弾性機械エネルギから電気エネルギへの変換も停止される。電荷および蓄積された電気エネルギを部分的に解放し、電場の圧力を減少させると、収縮を続けさせ、機械エネルギから電気エネルギへの変換をさらに行うことが可能になる。ジェネレータとして動作するトランスデューサ100の電気的な振る舞いは、厳密には、ポリマ102および電極104,106に固有な特性はもちろん、あらゆる電気的および機械的な負荷にも依存する。
【0042】
電気活性ポリマ102は、プリストレインされている。ポリマのプリストレインは、プリストレイン前後における1つまたはそれ以上の方向の寸法の変化として理解される。プリストレインは、ポリマ102の弾性的な変形を備えて良く、例えば、1つまたはそれ以上のエッジを固定した状態でポリマを伸張させることによって形成して良い。プリストレインは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を改善させる。一実施形態では、プリストレインによってポリマの絶縁耐力が改善される。トランスデューサ100に関しては、プリストレインによって、電気活性ポリマ102をより大きく変形させ、より大きな機械的作用を電気エネルギから機械エネルギへの変換時に提供することが可能になる。ジェネレータに関しては、プリストレインによって、より多くの電荷を電極104,106上に配置し、例えばトランスデューサ100の変形サイクルにおいて、より大きな電気エネルギを生成することが可能になる。一実施形態において、プリストレインは弾性的である。弾性的にプリストレインされたポリマは、原則的に、作動後に緩んでもとの状態に戻ることができる。プリストレインは、剛性フレームを使用してポリマの境界に対して課しても良いし、ポリマの一部分に対して局所的に課しても良い。
【0043】
一実施形態では、ポリマ102の一部分に対して均一にプリストレインを加え、等方性のプリストレインドポリマを形成する。例えば、アクリルのエラストマポリマを、両2次元方向に200〜400%伸張して良い。別の一実施形態では、ポリマ102の一部分に対して異なる複数の方向に不均一にプリストレインを加え、異方性のプリストレインドポリマを形成する。この場合のポリマ102は、作動時において、ある1方向にだけ別の1方向よりも大きく変形し得る。理論に縛られることは本望ではないが、ポリマを1方向にプリストレインすると、その方向におけるポリマの剛性が増すと考えられる。すると、ポリマは、より大きくプリストレインされた方向には剛性が強く、より小さくプリストレインされた方向には適合性が強くなるので、作動時における変形の大半は、より小さくプリストレインされた方向に生じる。一実施形態では、大きなプリストレインを垂直方向110に加えることによって、トランスデューサ100の方向108への変形を強化している。例えば、トランスデューサ100として使用されるアクリルのエラストマポリマを、方向108には100%、そして垂直な方向110には500%伸張して良い。アクチュエータに関連して以下で述べるように、トランスデューサ100の構成および幾何学的なエッジ制約も、特定方向への変形に対して影響を及ぼし得る。
【0044】
異方性のプリストレインは、また、機械エネルギから電気エネルギへの変換を行うジェネレータモードのトランスデューサの性能をも改善させる。大きなプリストレインは、ポリマの絶縁破壊強度を増大させ、より多くの電荷をポリマ上に配置することを可能にするだけでなく、小さくプリストレインされる方向への機械−電気結合をも改善し得る。つまり、小さくプリストレインされた方向への機械的な入力を、より大きな電気的な出力に変換し、ジェネレータの効率を向上させることができる。
【0045】
あるポリマに対するプリストレインの量は、電気活性ポリマと、アクチュエータまたは用途において所望されるそのポリマの性能と、に基づく。本発明による幾つかのポリマに関して、1つまたはそれ以上の方向へのプリストレインは−100%〜600%の範囲でよい。例えば、異方性のプリストレインを有したVHBアクリルエラストマに関しては、少なくとも約100%、好ましくは約200〜400%のプリストレインを各方向に使用して良い。一実施形態において、ポリマは、もとの面積の約1.5倍〜50倍の範囲にある係数によってプリストレインされる。適合性の強い方向への作動を強化する目的でプリストレインされた異方性のアクリルに関しては、強化された方向へは約400〜500%のプリストレインを、そして適合性の方向へは約20〜200%のプリストレインを使用して良い。場合によっては、ある1方向へのプリストレインによって別の1方向へのプリストレインが負になるようにプリストレインを加えても良い。例えば、ある1方向へは600%のプリストレインを加え、直交する方向へは−100%のプリストレインを加えても良い。このような場合、プリストレインによる正味面積の変化は一般に正である。
【0046】
プリストレインは、ポリマ102の他の性質にも影響を及ぼし得る。大きくプリストレインさせると、ポリマの弾性が変化し、粘弾性のロスが小さく剛性が強い体制を得る可能性がある。また、ポリマのなかには、プリストレインによって電気破壊強度を増大させることによって、ポリマ内で使用される電場が増大し、作動圧力および変形を増大させることが可能になるものもある。
【0047】
プリストレインドポリマの変形を表すために、線ひずみや面ひずみを使用しても良い。ここで、プリストレインドポリマの線ひずみとは、非作動状態と比べた場合の1単位長さ(変形の線に沿った)あたりの変形を指す。本発明によるプリストレインドポリマに関しては、線ひずみ(引張りまたは圧縮)の最大値は少なくとも約50%であるのが一般的である。ポリマの変形は、もちろん上記の最大値より小さくても良く、そのひずみは、印加電圧を調整することによって調整して良い。プリストレインドポリマのなかには、線ひずみの最大値が一般に少なくとも約100%であるものもある。米国ミネソタ州セントポール所在の3Mコーポレーションによって製造されたVHB 4910のようなポリマに関しては、線ひずみの最大値は一般に40〜215%の範囲にある。電気活性ポリマの面ひずみとは、非動作状態から作動状態に移行する際の、単位面積あたりのポリマ平面の面積の変化を指す。この平面は、例えば、
図1Aおよび
図1Bにおいて方向108,110によって規定された平面である。本発明によるプリストレインドポリマに関しては、面ひずみの最大値として少なくとも約100%が可能である。プリストレインドポリマのなかには、面ひずみの最大値が一般に70〜330%の範囲であるものもある。
【0048】
一般に、プリストレインされたポリマは、1つまたはそれ以上の物体に固定して良い。各物体は、ポリマのプリストレインを望ましいレベルに維持できる適切な剛性を有して良い。ポリマは、化学的接着、接着層または材料、機械的な取り付け等などの、当該分野において既知の任意の方法にしたがって、1つまたはそれ以上の物体に固定して良い。
【0049】
本発明によるトランスデューサおよびプリストレインドポリマは、どんな特定のジオメトリまたは線変形にも限定されない。例えば、ポリマおよび電極を、チューブ状やロール状、複数の剛性構造間に取り付けられた伸張されたポリマ、任意のジオメトリ(カーブ状または複雑なものを含む)を有したフレームまたは1つもしくはそれ以上のジョイントを有したフレームに取り付けられた伸張されたポリマなどを含む、任意のジオメトリまたは形状に形成してよい。本発明にしたがったトランスデューサの変形は、1つまたはそれ以上の方向への線膨張および圧縮、曲げ、ポリマを巻く際の軸方向変形、基板に設けられた穴に向かった変形などを含む。トランスデューサの変形は、ポリマに取り付けられたフレームまたは剛性構造が、ポリマにどのような制約を及ぼすかによって影響される。一実施形態では、ポリマより伸び率の小さい可撓性の材料をトランスデューサの一側面に取り付けることによって、作動時にポリマを曲げる。別の一実施形態では、平面からそれて変形するトランスデューサをダイヤフラムと称する。
図1Eおよび
図1Fを参照しながら、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うためのダイヤフラムデバイスを詳細に説明する。
【0050】
本発明の一実施形態にしたがった電気活性ポリマは、テクスチャ加工された表面を有してよい。
図1Cは、波状の外形を有した電気活性ポリマ152に関し、テクスチャ加工された表面150を示した図である。テクスチャ加工された表面150は、表面の波154の曲げを使用してポリマ152を変形させることを可能にする。表面の波154の曲げによって、ポリマ152上に方向155に取り付けられた剛性の電極に対し、バルク伸張させるよりも小さい抵抗で方向155への方向的な適合性を提供することができる。テクスチャ加工された表面150は、例えば幅が約0.1マイクロメートル〜40マイクロメートルで深さが約0.1マイクロメートル〜20マイクロメートルである谷および山によって特徴付けられてよい。この場合の波の幅および深さは、ポリマの厚さよりも実質的に小さい。特定の一実施形態では、厚さ200マイクロメートルのポリマ層に対して山および谷の幅は10マイクロメートルで深さは6マイクロメートルである。
【0051】
一実施形態では、電極などの薄膜状の剛性材料156をポリマ152に取り付けることによって、波状の外形が提供される。製造の際には、作動時に伸張できるよりもさらに大きく電気活性ポリマを伸張させ、その状態のポリマ152表面に薄膜状の剛性材料156を取り付ける。続いて、ポリマ152を弛緩させ、その構造を留めることによって、テクスチャ加工された表面を得る。
【0052】
一般に、テクスチャ加工された表面は、ポリマ表面の変形によってポリマの変形を可能にする均一でないまたは平滑でない任意の表面トポグラフィを備えてよい。例えば、
図1Dは、ランダムなテクスチャを有した粗面161を含む電気活性ポリマ160を示した図である。粗面161は、方向的に適合性でない2次元的な変形を可能にする。したがって、表面トポグラフィの変形は、バルク伸張またはバルク圧縮よりも小さい抵抗で剛性の電極を変形させることを可能にする。ここで、テクスチャ加工された表面を有するプリストレインドポリマの変形が、ポリマの表面変形およびバルク伸張の組み合わせを備えてよいことに、注意する必要がある。
【0053】
また、ポリマのテクスチャ加工された表面または不均一な表面は、テクスチャ加工された表面の変形に依存する障壁層および/または電極の使用をも可能にする。電極は、ポリマ表面のジオメトリにしたがって曲がる金属を含んで良い。障壁層は、プリストレインドポリマ材料内で局所的な電気破壊が生じた際に、電荷をブロックするために使用してよい。
【0054】
本発明においてプリストレインドポリマとして使用するのに適した材料は、静電力に応じて変形するか、またはその変形によって電場が変化するような、実質的に絶縁である任意のポリマまたはゴム(またはこれらの組み合わせ)を含んで良い。このような適切な材料の1つとして、米国カリフォルニア州カーペンテリア所在のNuSilテクノロジーによるNuSil CF19−2186が挙げられる。さらに、一般的には、プリストレインドポリマとしての使用に適した代表的な材料として、シリコンエラストマ、アクリルエラストマ、ポリウレタン、熱可塑性エラストマ、PVDFを備えるコポリマ、圧感接着剤、フルオロエラストマ、シリコン成分およびアクリル成分を備えるポリマ等などが挙げられる。シリコン成分およびアクリル成分を含んだポリマとしては、例えば、シリコン成分およびアクリル成分を含んだコポリマ、シリコンエラストマおよびアクリルエラストマを含んだポリマブレンドが挙げられる。これらの材料の幾つかを組み合わせたものを、本発明によるトランスデューサ内のポリマとして使用して良いことは明らかである。
【0055】
適切なシリコンエラストマの一例として、米国ディラウェア州ウィルミントン所在のダウコーニング社によるダウコーニングHS3が挙げられる。適切なフルオロシリコンの一例として、米国ディラウェア州ウィルミントン所在のダウコーニング社によるダウコーニング730が挙げられる。適切な熱可塑性エラストマの一例として、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックコポリマが挙げられる。
【0056】
米国ミネソタ州セントポール所在の3Mコーポレーションによる4900 VHBアクリルシリーズのなかにも、本発明によるトランスデューサポリマとして使用するのに適した性質を有するものがある。このため、幾つかの実施形態では、単独重合することによってガラス転移温度が摂氏約0度以下のポリマを形成できる任意の不飽和のモノエチレン系モノマ(またはモノマの組み合わせ)をもとにして、本発明での使用に適したポリマを形成しても良い。好ましい不飽和モノエチレン系モノマとしては、イソオクチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、デシルアクリラート、ドデシルアクリラート、ヘキシルアクリラート、イソノニルアクリラート、イソオクチルメタクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラートなどが挙げられる。また、これらのモノマは、フッ素などのハロゲンを1つまたはそれ以上含んでよい。
【0057】
適切なコポリマの一例として、シリコンエラストマ成分とアクリルエラストマ成分を両方含んだものが挙げられる。本発明での使用に適した材料は、上記した材料のうち1つまたはそれ以上の材料の組み合わせを含んで良い場合もある。例えば、適切なポリマの1つは、シリコンエラストマおよびアクリルエラストマを含んだブレンドである。
【0058】
本発明にしたがって使用される材料は、市販のポリマである場合が多い。このような市販のポリマとしては、例えば、任意の市販のシリコンエラストマ、ポリウレタン、PVDFコポリマ、そして接着性のエラストマが挙げられる。市販の材料を使用することによって、本発明によるトランスデューサおよび関連のデバイスに対してコスト有効度の高い代替物を提供することができる。市販の材料の使用は、また、製造の簡略化を図ることも可能である。特定の一実施形態では、市販のポリマとして、製造時に光硬化された脂肪族アクリラートの混合物を含んだ市販のアクリルエラストマを使用してよい。アクリルエラストマの弾性は、枝分れした脂肪族を組み合わせ、アクリルポリマ鎖間を架橋することによって得られる。
【0059】
プリストレインドポリマとして使用される材料は、電気破壊強度が大きいか、(大きい変形または小さい変形に対する)弾性率が小さいか、誘電率が大きいか等などの1つまたはそれ以上の材料特性に基づいて選択して良い。一実施形態において、ポリマは、その弾性率が最大でも約100MPaであるように選択される。別の一実施形態において、ポリマは、その最大作動圧力が約0.05MPa〜約10MPaになるように、好ましくは約0.3MPa〜約3MPaになるように選択される。別の一実施形態において、ポリマは、その誘電率が約2〜約20になるように、好ましくは約2.5〜約12になるように選択される。用途によっては、温度および/または湿度の範囲が広い、繰り返しが可能である、正確である、低クリープである、信頼度や耐性の程度など、1つまたはそれ以上の要望にもとづいて電気活性ポリマが選択される場合もある。フッ化ポリマまたは塩化ポリマなどのハロゲン化ポリマは、誘電率が塩基ポリマのそれよりも大きい場合が多い。一例として、部分的にフッ素化されたウレタンモノマから高誘電率のポリウレタンを形成しても良い。
【0060】
また、本発明による電気活性ポリマは、各種特性を改善する目的で1つまたはそれ以上の添加物を含んでも良い。適切な材料の例としては、可塑剤、抗酸化剤、そして高誘電率の微粒子などが挙げられる。適切な可塑剤の例として、高分子量の炭化水素オイル、高分子量の炭化水素グリース、Pentalyne H、Piccovar(登録商標)AP炭化水素樹脂、Admex 760、Plastolein 9720、シリコンオイル、シリコングリース、Floral105、シリコンエラストマ、非イオン性表面活性剤等などが挙げられる。もちろん、これらの材料を組み合わせたものを使用しても良い。一実施形態において、抗酸化剤は、不揮発性の固体の抗酸化剤である。
【0061】
好ましい一実施形態では、添加物によって、機械エネルギと電気エネルギとの間の変換を行うポリマの能力が改善される。一般に、添加物は、機械エネルギと電気エネルギとの間の変換を行う能力に関連したあらゆるポリマ特性またはパラメータを改善しえる。機械エネルギと電気エネルギとの間の変換を行うポリマの能力に関連したポリマ材料の特性およびパラメータは、例えば、絶縁破壊強度、ひずみの最大値、誘電率、弾性率、粘弾性に関連した特性、クリープに関連した特性、応答時間、そして作動電圧などを含む。可塑剤の添加は、例えば、ポリマの弾性率を下げることによって、そして/またはポリマの絶縁破壊強度を上げることによって、本発明によるトランスデューサの機能を改善し得る。
【0062】
一実施形態では、ポリマの絶縁破壊強度を改善する目的で、ポリマに添加物を含ませる。絶縁破壊強度を改善することによって、電気的に作動されたポリマのひずみを、より活用することが可能になる。例えば、可塑剤をポリマに添加し、ポリマの絶縁破壊強度を高めても良い。あるいは、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマに合成樹脂を添加し、コポリマの絶縁破壊強度を改善しても良い。例えば、米国テキサス州ヒューストン所在のシェルケミカル社によるKraton D2104の絶縁破壊強度を改善するために、米国ディラウェア州ウィルミントン所在のハーキュール社によるペンタリンHがKraton D210に添加された。以下では、1つまたはそれ以上の添加物の添加を備えるポリマの製造に関し、さらに詳しく説明する。この場合、添加されるペンタリンHの割合は、重量にして約0〜2:1で良い。別の実施形態では、ポリマの誘電率を高める目的で添加物を含ませる。例えば、ファインセラミックス粉末などの高誘電率の粒子を添加し、市販ポリマの誘電率を高めても良い。あるいは、ポリウレタンなどのポリマを部分的にフッ素化して誘電率を高めても良い。
【0063】
あるいは、ポリマの弾性率を下げる目的で、ポリマに添加物を含ませても良い。弾性率を下げると、ポリマを大きくひずませることが可能になる。特定の一実施形態では、Kraton Dの弾性率を下げるために、その溶液にミネラルオイルを添加した。この場合、添加されるミネラルオイルの割合は、重量にして約0〜2:1で良い。本発明によるアクリルポリマの弾性率を下げる目的で含められる材料としては、任意のアクリル酸、アクリル接着剤、イソオクチル基や2−エチルヘキシル基などの可撓性の側基を含んだアクリル酸、そしてアクリル酸とイソオクチルアクリラートとの任意のコポリマなどが挙げられる。
【0064】
1つまたはそれ以上の材料特性を改善する目的で、複数の添加物をポリマに含ませても良い。一実施形態では、Kraton D2104の絶縁破壊強度を高めて且つ弾性率を下げるために、その溶液にミネラルオイルおよびペンタリンHの両方を添加した。あるいは、誘電率を高めるために使用された炭素粉末によって剛性を増した市販のシリコンゴムに対しては、炭素または銀で満たされたシリコングリースを添加することによって、その剛性を下げても良い。
【0065】
トランスデューサに新しい特性を付与する目的で、ポリマに添加物を含ませても良い。新しい特性は、機械エネルギと電気エネルギとの間の変換を行うポリマの機能に必ずしも関連付けられている必要はない。例えば、Kraton D2104にペンタリンHを添加し、Kraton D2104に接着性を付与しても良い。この添加物は、機械エネルギと電気エネルギとの間の変換にも役立つ。特定の一実施形態では、Kraton D2104、ペンタリンH、ミネラルオイルを備え且つ酢酸ブチルを使用して製造されたポリマに、接着性ポリマを提供し、約70〜200%の最大線ひずみを加えた。
【0066】
本発明によるプリストレインドポリマに適した作動電圧は、ポリマの寸法(例えば電極間の厚さ)はもちろん、その電気活性ポリマの材料および特性(例えば誘電率)にも依存して変化し得る。例えば、
図1Aのポリマ102の作動電場の大きさは、約0V/m〜約440MV/mの範囲で変化し得る。作動電圧がこの範囲にあると、約0Pa〜約10MPaの圧力が生じ得る。より大きな力を発揮できるトランスデューサを実現するためには、ポリマの厚さを増加させれば良い。あるいは、複数のポリマ層を使用しても良い。特定のポリマの作動電圧を下げるためには、例えば、誘電率を高めたり、ポリマの厚さを薄くしたり、弾性率を下げたりすれば良い。
【0067】
本発明によるプリストレインドポリマの厚さは、広い範囲に渡ることが可能である。一実施形態において、ポリマの厚さは約1マイクロメートル〜2ミリメートルの範囲で良い。プリストレインする前の代表的な厚さは、HS3の場合は50〜225マイクロメートル、NuSil CF 19−2196の場合は25〜75マイクロメートル、SBSの場合は50〜1000マイクロメートル、3M VHB 4900シリーズの任意のアクリルポリマである場合は100〜1000ミクロンである。ポリマの厚さは、片方または両方の2次元方向に膜を伸張させることによって薄くすることが可能である。本発明によるプリストレインドポリマは、薄膜として製造および実現して良い場合が多い。このような薄膜の厚さとしては、50マイクロメートル未満が適切である。
【0068】
機械エネルギと電気エネルギとの間の変換を行うための本発明によるトランスデューサは、また、多層ラミネートをも含む。一実施形態において、多層ラミネートとは、1つの電気活性ポリマおよびそれに対応する電極に加えて1つまたはそれ以上の層をも含んだ構造を指す。一実施形態において、多層ラミネートとは、電気活性ポリマと、それに対応する電極と、を含んだトランスデューサを有し、トランスデューサの一部分に機械的に結合された1つの層が、電極およびポリマの少なくとも一方に積層されているような構造を指す。多層ラミネートは、外側または内側のいずれかで称される。外側の多層ラミネートである場合は、1つまたはそれ以上の層が存在するのは電極間ではない。内側の多層ラミネートである場合は、1つまたはそれ以上の層が存在するのは電極間である。外側であっても内側であっても、層は、例えば接着層やのり層を使用して接着して良い。
【0069】
内側の多層ラミネートは、多様な目的に使用することが可能である。また、1つの層を内側の多層ラミネートに含ませることによって、例えば剛性、電気抵抗、引裂き抵抗等などの、トランスデューサの任意の機械的または電気的特性を改善しても良い。内側の多層ラミネートは、絶縁破壊強度が大きい層を1つ含んで良い。内側の多層ラミネートは、ラミネートトランスデューサの破壊強度を高める目的で、適合性の材料からなり且つ導体層または半導体層(例えば金属層またはポリマ層)によって分離された複数の層を含んでも良い。適合性の材料とは、全く若しくは実質的に同じ材料からなる材料か、または全く若しくは実質的に同じ特性(例えば機械的および/または電気的に)を有した材料からなる材料を指す。適合性材料からなり且つポリマに対して設けられた内側のラミネートは、ポリマ内で製造欠陥を生じにくくし且つトランスデューサの均一性を高める目的で使用して良い。例えば、厚さが100マイクロメートルで1枚の層からなるポリマでは、100マイクロメートルの厚さ全体に影響を及ぼすような欠陥が生じ得る。この場合は、それぞれの厚さが10マイクロメートルであるような10枚の層からなるラミネートを使用し、あらゆる製造欠陥を10マイクロメートルのポリマ内に局在させて良い。こうして、100マイクロメートルに匹敵する厚さを有し、且つ1枚の層からなるポリマと比べて均一性および故障の許容性に優れたラミネート構造を得ることができる。適合性の材料からなり且つポリマに対して設けられた内側のラミネートは、また、暴走によるあらゆる引込み現象を阻止するために使用しても良い。暴走による引込み現象とは、電極が近づくにつれて、電極間の静電力がポリマの弾性抵抗力よりも速く増大する現象を指す。このような場合、トランスデューサは電気機械的に不安定になるので、局所的に急速に薄くなって電気破壊を生じる恐れがある。また、複合体内の別の層から保護する(電気的または機械的に)目的で、内側に1枚の層を使用しても良い。一実施形態では、電極とポリマとの間に電気的な障壁層を結合することによって、ポリマ内で生じるあらゆる局所的な破壊の影響を最小限に抑えている。破壊は、ポリマが印加電圧に耐えられなくなった場所として定義して良い。障壁層は、一般にポリマより薄くて且つポリマより高誘電率であるので、電圧降下は、主にポリマ内において生じる。多くの場合において、障壁層の絶縁破壊強度は大きいことが好ましい。
【0070】
外側の多層ラミネートは、多様な目的に使用することが可能である。一実施形態において、外側の多層複合体は、剛性やクリープを制御するため、変形時において負荷をより均一に分散させるため、引裂き抵抗を高めるため、または暴走による引込み現象を阻止するための層を1枚含む。電極を含み適合性のポリマからなる外側のラミネートは、各ポリマ層に負荷を分散させる目的で、または変形時におけるポリマの均一性を高める目的で使用して良い。また、ポリマよりも剛性が大きい外側のラミネートに、例えば、ポリマよりも剛性が大きい材料、または適合性の材料に対するプリストレインの値がポリマとは異なる材料などを含ませることによって、ダイヤフラム、ポンプ、または曲がり梁をバイアスしても良い。ジェネレータモードにある伸張されたトランスデューサは、電場の応力が弾性復元力より小さい限り、収縮して電気エネルギを生成することが可能である。この場合は、補強用の層を追加することによって、より大きい場の応力に対してもトランスデューサが収縮できるようにして、1ストロークごとのエネルギ出力を高めても良い。また、複合体内の別の層から保護する(電気的または機械的に)目的で、外側の層を1枚使用しても良い。別の特定の一実施形態において、外側の複合体は、小型のポンプまたはダイヤフラムをバイアスする目的で1枚のフォーム層を含む。フォーム層は、フォームへの流体の出入りを可能にする通気孔フォームを備えて良い。また、余分な機械エネルギ損失を生じることなく静電遮蔽するために、剛性が小さい外側の層を1枚使用しても良い。
【0071】
一実施形態では、ポリマを巻いてまたは折って複合体を形成することによって、高密度にパッケージングされたトランスデューサを作成する。折られた層を含んだラミネートにおいて、折り畳みのひだの附近に有害な電場が生じるのを回避するためには、ポリマ上に、相対する電極が折り畳みのひだ附近で重なることのないように電極を配置して良い。また、外側に露出された1つまたはそれ以上の電極が同じ極性を有するように、ポリマおよび電極を巻いたり折ったりしても良い。製造は、反対の極性を有した電極がポリマによって分離されるように実施して良い。例えば、ポリマからなる2枚の層を電極とともに巻くことによってロール状のアクチュエータを作成しても良いし、あるいは1枚の層を先ず折って次いで巻いても良い。また、トランスデューサの安全性を高める目的で、外側に露出された電極を接地しても良い。また、安全性をさらに高める目的で、外側のラミネートに外皮層を追加しても良い。
【0072】
3.アクチュエータデバイスおよびジェネレータデバイス
プリストレインドポリマの変形を様々な形で使用することによって、機械エネルギを生成または受けることができる。一般に、本発明による電気活性ポリマは、プリストレインドポリマによって改良された従来のアクチュエータおよびジェネレータや、1つまたはそれ以上のプリストレインドポリマのために特別に設計されたカスタムアクチュエータおよびカスタムジェネレータを含む、様々な形のアクチュエータおよびジェネレータにおいて使用して良い。従来のアクチュエータおよびジェネレータは、エクステンダ、曲がり梁、スタック、ダイヤフラム等などを含む。以下では、本発明にしたがった、幾つかの代表的なカスタムアクチュエータおよびジェネレータに関して説明する。
【0073】
図1Eは、プリストレインドポリマ131を含んだダイヤフラムデバイス130の、電気的に作動される前における状態を、本発明の一実施形態にしたがって示した横断面図である。プリストレインドポリマ131は、フレーム132に取り付けられている。フレーム132は、非円形のアパチャ133を含み、これによって、この非円形のアパチャ133の領域に垂直な方向にポリマ131を変形させることが可能になる。この非円形のアパチャ133は、長方形のスロットや、カスタムな幾何学形状を有したアパチャなどでも良い。ダイヤフラムデバイスの場合は、円形の穴よりも、細長い非円形のスロットを使用する方が好都合なことがある。例えば、細長いスロットを使用する方が、穴を使用する場合と比べて厚さひずみが均一になる。ポリマの電気的破壊は、最も薄い地点によって決定されるので、ひずみが均一でないと、全体の性能に限界を生じる。ダイヤフラムデバイス130は、ポリマ131の両側に電極134,136を含むことによって、ポリマ131の一部分に電圧差を提供する。
【0074】
電圧が印加されていない
図1Eの状態では、プリストレインを行うために、ポリマ131を伸張させてフレーム132に固定している。適切な電圧が電極134,136に印加されると、ポリマの膜131は、
図1Fに示すように、フレーム132の平面を離れて膨張する。電極134,136は適合性があるので、プリストレインドポリマ131の変形にともなって形状を変化させる。
【0075】
ダイヤフラムデバイス130は、平面を挟んで上下両方の方向に膨張することができる。一実施形態では、ポリマ131の下面側141に、ポリマ膜131の膨張に作用するバイアス圧力を含ませることによって、ポリマ膜131を、矢印143(
図1F)の方向に向かって上向きに作動させる。別の一実施形態では、少量のシリコンオイルなどの膨張剤を下面側141に加えることによって、ポリマ131を矢印143の方向に向かって膨張させる。例えば、製造時に膨張剤を加えるにあたって、わずかな圧力を下面側141に加えると、ポリマを、1方向に向かって永久的にわずかに変形させることができる。膨張剤によって、ダイヤフラムを、バイアス圧力を使用することなく望ましい方向に作動させ続けることが可能になる。
【0076】
ダイヤフラムデバイス130が膨張する量は、ポリマ131の材料、印加される電圧の大きさ、プリストレインの大きさ、バイアス圧力の大きさ、電極134,136の適合性等などを含む多くの要因に基づいて変化し得る。一実施形態において、ポリマ131は、穴の直径139の約50%以上に相当する高さ137まで変形して、大きく変形した半球状の形を形成することができる。この場合、ポリマ131とフレーム132との間に形成される角度147は90度未満である。
【0077】
また、ダイヤフラムデバイス130をジェネレータとして使用しても良い。この場合は、流体圧力などの圧力が、ダイヤフラムの下面141への機械的入力として作用し、
図1Fに示すように、アパチャ133附近のトランスデューサ(ポリマ134および電極134,136)を伸張させる。トランスデューサの伸張時に電極134,136に電圧差を加え、次いで圧力を解放することによって、ダイヤフラムを収縮させ、トランスデューサに蓄積された電気エネルギを増大させることができる。
【0078】
電気活性ポリマを1方向に膨張させると、ポアソン効果などによって、第2の方向への収縮応力が生じる。すると、第2の方向の機械的出力を提供するトランスデューサへの機械的出力が減少する。したがって、本発明によるアクチュエータを、ポリマが非出力方向に制約されるように設計して良い。また、アクチュエータを、非出力方向への変形によって機械的出力が改善されるように設計して良い場合もある。
【0079】
ある2次元方向への変形を使用してもう一方の2次元方向へのエネルギ変換を改善させるデバイスの1つとして、バウデバイスが挙げられる。
図2Aおよび
図2Bは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うためのバウデバイス200の、電気的に作動される前および後における状態を、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した図である。バウデバイス200は、可撓性のフレーム202を備えた2次元機構であり、フレーム202は、このフレーム202に取り付けられたポリマ206を機械的に補助することによって、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を改善させるものである。フレーム202は、ジョイント205において接続された6つの剛性部材204を含む。部材204およびジョイント205は、ある2次元方向208へのポリマの変形を、その方向に垂直な2次元方向210への機械的出力に結合させることによって、機械的な補助を提供する。さらに詳しく言うと、フレーム202は、方向208へのポリマ206の少量の変形が、方向208に垂直な2次元方向210への変位を改善させるように構成される。ポリマ206の相対する面(上面および下面)には、ポリマ206の一部分に電圧差を提供するための電極207(ポリマ206の下面に取り付けられたボトム電極は未図示)が取り付けられている。
【0080】
ポリマ206は、互いに垂直な2方向へのプリストレインの程度が異なるように構成される。より詳しく言うと、電気活性ポリマ206は、2次元方向208へのひずみが大きく、方向208に垂直な2次元方向210へのひずみが小さいまたは全く無いように構成される。このような異方性のプリストレインは、フレーム202のジオメトリに相対するように施されている。より詳しく言うと、電極207によって作動されたポリマは、プリストレインが大きい方向208に収縮する。フレーム202と、部材204によって提供されるレバーアームとによって、ポリマ206の動きに制約が加えられるので、この収縮は、ポリマを垂直な2次元方向210へと変形させるように作用する。したがって、たとえプリストレインの大きい方向208へのポリマ206の変形がわずかであっても、フレーム202を方向210に向かって外側に曲げることができる。このようにして、プリストレインの大きい方向210へのわずかな収縮が、プリストレインの小さい方向208ヘの大きい膨張につながる。
【0081】
バウデバイス200は、異方性のプリストレインおよびフレーム202による制約を使用して、1方向への収縮を可能にすることによって、機械的な変形を強化し、もう1方向への電気−機械変換を促進させることができる。つまり、バウデバイス200に取り付けられた負荷211(
図2B)は、2方向すなわち方向208,210ヘのポリマ206の変形に結合される。このように、ポリマ206に加えるプリストレインを異方性にし、フレーム202に対して上記ジオメトリを採用することによって、バウデバイス200は、電気活性ポリマを単独で使用する場合と比べて、同じ電気的入力に対し、より大きい機械的変位を生じさせ、より大きい機械的エネルギを出力することができる。
【0082】
バウデバイス200は、ポリマ206に基づいて構成して良い。例えば、フレーム202のジオメトリおよびポリマ206の寸法を、ポリマ206の材料に基づいて適合させて良い。ポリマ206としてHS3シリコンを使用した特定の一実施形態において、ポリマ206は、方向208および方向210にそれぞれ約270%および約−25%だけプリストレインされ、方向208および方向210に関して9:2の長さの比を有することが好ましい。このような構成では、少なくとも約100%の線ひずみを方向210に加えることが可能である。
【0083】
ポリマ206のプリストレインと、フレーム202によって提供される制約とによって、バウデバイス200は、プリストレインドポリマ206を、より小さい作動電圧で所定の大きさだけ変形させることができる。バウデバイス200は、プリストレインが小さい方向210へは小さい有効弾性率を有することから、フレーム202によって提供される機械的な制約によって、バウデバイス200を、より小さい電圧でより大きく方向210に変形するように作動させることができる。また、方向208に大きくプリストレインさせることによって、ポリマ206の破壊強度が増すことから、バウデバイス200に対し、大きい電圧および大きい変形を加えることが可能になる。
【0084】
図1Aに関して上述したように、静電力の結果として膨張をはじめたポリマは、膨張を促進する静電圧力が機械的な力によって相殺されるまで膨張を続ける。負荷211をバウデバイス200に取り付けた場合は、負荷211によって提供される機械的な効果が、ポリマ206の力の均衡および変形に影響を及ぼす。例えば、負荷211がバウデバイス200の膨張に抵抗する場合は、負荷がない場合よりもポリマ206の膨張が少なくなる。
【0085】
一実施形態において、バウデバイス200は、機械的補助を提供して機械的出力を高める目的で追加のコンポーネントを含んで良い。例えば、
図2Cに示されるようなバネ220をバウデバイス200に取り付けて、方向210への変形を促進して良い。これらのバネは、バウデバイス200に対して負荷を与えることによって、バネによるバネ力が外側の負荷による抵抗に抗するようにする。バネ220によって、バウデバイス200の変形がいっそう促進される場合もある。一実施形態では、外側にバネ220を設ける代わりにジョイント205内にバネ要素を組み込むことによって、バウデバイス200の変形を促進しても良い。また、変形を促進するためにプリストレインを増大させても良い。また、負荷を、フレーム202の側面をなす剛性部材に結合する(
図2Bに示される)のではなく、フレーム202の上部および下部をなす剛性部材204に結合しても良い。
図2Bに示すように圧力が印加されると、上部および下部の剛性部材204が互いに近づく方向に収縮されるので、電圧の印加時において、バウアクチュエータ200は、膨張するのではなく典型的な2次元収縮を呈する。
【0086】
ジェネレータとして使用される場合、バウデバイス200は、機械エネルギから電気エネルギへの変換を改善させる。ここで、本発明によるジェネレータ(
図1Aおよび
図1Bに示される)が、収縮時には機械エネルギから電気エネルギへの変換を行うことを思い出して欲しい。また、収縮中に電場の圧力が増大し、弾性復元力と相殺し合う大きさに到達すると、収縮が停止して、効率が下げる恐れがあることも思い出して欲しい。ポリマの単位体積あたりの弾性エネルギは、一般に、例えば境界に加えられる応力などの、弾性復元応力または圧力に比例する。所定の復元応力または圧力に対して弾性エネルギを最大化する方法の1つは、低弾性率のポリマを使用することである。しかしながら、低弾性率のポリマを使用すると、一般に、破壊強度が低下して低弾性率のポリマを使用する利点が打ち消されてしまう。バウデバイス200は、低弾性率の材料を使用せずに所定の正味復元応力または圧力に対して弾性エネルギを最大化する方法の1つである。これは、方向208,210への異方性のプリストレインとともにフレーム202を使用し、所定のひずみに対する正味の復元圧力または応力を、ポリマ206上に何の境界条件もない場合よりも小さくすることによって達成される。方向208に加えられた大きいプリストレインは、フレーム202を通して弾性エネルギを供給し、方向210への膨張を補助する。ポリマは、方向210への膨張に関して低弾性率であるかのようにふるまうので、境界に加えられる所定の力または応力の入力に対して大量の弾性エネルギを蓄積することができる。方向208への収縮は小さく、このような小さい収縮による面積の変化もまた小さいので、方向208での変化によって生じる電気的な作用は、方向210での大きなひずみの変化によって生じる電気的作用(例えばキャパシタンスの変化など)よりも、小さく抑えられる。したがって、ポリマ206は、あたかも実質的に1方向にのみ伸張される非常に低弾性率の材料であるかのようにふるまうので、バウデバイス200は、同じポリマ206を使用する他のデバイスよりも多くのエネルギを、ストロークごとに高い効率で単位体積のポリマあたりで変換することが可能になる。
【0087】
ポリマの形状および制約は、変形に影響を及ぼし得る。電気活性ポリマのアスペクト比は、その長さと幅との比として定義される。アスペクト比が大きく(例えばアスペクト比が約4:1以上である)、ポリマがその長さに沿って剛性部材による制約を受ける場合、変形は、幅の方向のみの実質的に1次元となる。
【0088】
図2Dおよび
図2Eは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための直線運動デバイスの作動前および作動後における状態を、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した図である。直線運動デバイス230は、1方向への機械的変換を有した2次元機構である。直線運動デバイス230は、幅234よりも実質的に大きい長さ233を有した(例えば、アスペクト比が約4:1以上)ポリマ231を備える。ポリマ231は、その長さ233に沿って、フレームの剛性部材232の相対する2面に取り付けられている。剛性部材232の剛性は、ポリマ231の剛性より大きい。剛性部材232によって提供される幾何学的なエッジ制約が、長さ233に沿った方向236へのポリマの変位を実質的に阻止するので、変形は、ほとんど方向235にのみ促進される。直線運動デバイス230が、異方性のプリストレインを有したポリマ231によって実現される場合、例えば、方向236へのプリストレインの方が方向235へのプリストレインよりも大きい場合などは、ポリマ231の方向236への剛性は方向235へのそれよりも大きく、結果として方向235への変形の方が大きくなる。例えば、このような構成は、異方性のプリストレインを有したアクリルに対して少なくとも約200%の線ひずみを生じ得る。
【0089】
電気活性ポリマまたはアクチュエータの集合体を機械的に結合することによって、例えば力および/または変位などに関して共通の出力を有した、より大きいアクチュエータを形成しても良い。1集合体内の基本単位として小さな電気活性ポリマを使用することによって、電気エネルギから機械エネルギへの変換を用途に応じて大小させて良い。例えば、複数の直線運動デバイス230を方向235に直列に組み合わせ、一列にならんだ全直線運動デバイスの累積変形を有したアクチュエータを形成しても良い。電気エネルギを機械エネルギに変換する場合は、1集合体内において個々にまたは機械的に繋がれた電気活性ポリマを「人工筋肉」と称しても良い。ここでは、人工筋肉は、力の出力および/または変位を1つ有した1つまたはそれ以上のトランスデューサおよび/またはアクチュエータとして定義される。人工筋肉は、ミクロまたはマクロなレベルで実現して良く、ここで説明された任意の1つまたはそれ以上のアクチュエータを備えて良い。
【0090】
図2Fは、人工筋肉の一例としての、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための多層デバイス240を、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した横断面図である。多層デバイス240は、並列に配置された4つのプリストレインドポリマ241を含み、これらのプリストレインドポリマ241は、同じ変形を有するようにそれぞれ剛性フレーム242に取り付けられている。電極243,244は、各ポリマ241の相対する2面に設けられ、4つのプリストレインドポリマを同時に静電作動させる。多層デバイス240は、個々のポリマ層241の力を累積させたものを出力として提供する。
【0091】
ジェネレータモードで動作するトランスデューサの場合は、個々のポリマ層を並列および直列のいずれの形で組み合わせても同様な効果が得られる。一般に、層を並列に繋げると、デバイスの最大ストロークを変化させなくても層の剛性およびデバイスの最大入力が増大し、層を直列に繋げると、最大入力を増大させなくても最大ストロークが増大する。このため、層を直列および並列に組み合わせることによって、ジェネレータを、入力される特定の機械的負荷に適合するように設計することができる。
【0092】
別の一実施形態では、1つのポリマの代わりに複数の電気活性ポリマ層を使用して、アクチュエータから出力される力または圧力を増大させて良い。例えば、10個の電気活性ポリマを積層させることによって、
図1Eのダイヤフラムデバイスの圧力の出力を増大させても良い。
図2Gは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための、このような積層された多層ダイヤフラムデバイス245を、人工筋肉の別の一例として、本発明の一実施形態にしたがって示した図である。積層された多層デバイス245は、互いに積層された3枚のポリマ層246を含み、これらのポリマ層は、接着層247によって取り付けられて良い。接着層247の中には、ポリマ層246を作動させる電極248,249が設けられている。最も外側のポリマ層には剛性の強いプレート250が取り付けられており、このプレートは、積層された多層ダイヤフラムデバイス245が変形するのを可能にする複数の穴251を含むようにパターン形成されている。積層された多層デバイス245は、ポリマ層246を組み合わせることによって、個々のポリマ層246の力を累積させた出力を提供することができる。
【0093】
本発明による電気活性ポリマは、
図2Dおよび
図2Eの直線運動デバイス230だけでなく、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行う様々なデバイスに含ませることが可能である。
図2Hは、電気活性ポリマのダイヤフラム256を備え、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための線形アクチュエータ255を、本発明の別の一実施形態にしたがって示した図である。この場合は、フレーム261に設けられた非円形のアパチャ258内で変形するダイヤフラム256の中央部分に、出力シャフト257が取り付けられている。静電エネルギの作動時および除去時において、出力シャフト257は、矢印259で示されるように変位する。線形アクチュエータ255は、また、出力シャフト257の位置付けを容易にする適合性のバネ要素260を含んでも良い。
【0094】
一実施形態において、非円形のアパチャ258は細長いスロットである。前述したように、細長いスロットは、一般に円形の穴よりも均一なひずみを有する。また、ポリマダイヤフラム256のプリストレインは、長軸に沿った方向へのプリストレインの方が、その方向に垂直な2次元方向へのプリストレインよりも大きい。スロットの長軸方向へは大きいプリストレインを、そして長軸に垂直な2次元方向へは小さいプリストレインを使用することによって、出力シャフト257の変位を、均一なプリストレインを有した構成と比べて増大させることができる。
【0095】
別の一実施形態では、本発明によるプリストレインドポリマを巻くまたは折ることによって、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換の際に軸方向に変形するような線形のトランスデューサおよびアクチュエータを形成して良い。電気活性ポリマの製造は、層の枚数を少なくするほど簡単になる場合が多いので、アクチュエータを巻くことによって、大きなポリマ層をコンパクトな形状に効果的に圧縮することができる。巻かれたまたは折られたトランスデューサおよびアクチュエータは、一般に、2枚またはそれ以上のポリマ層を含む。巻かれたまたは折られたアクチュエータは、ロボットの足や指、高応力のグリッパ、汎用の線形アクチュエータなど、線形アクチュエータが使用されるあらゆる用途に対して適用可能である。
【0096】
図2Iは、シャクトリムシ型アクチュエータ262を、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した図である。シャクトリムシ型アクチュエータ262は、円筒状の軸に沿って軸方向に変形する、電極263をともなった2枚またはそれ以上のロール状のプリストレインドポリマ層を含む。シャクトリムシ型アクチュエータ262は、また、金属面268への取り付けおよび取り外しを行うための静電クランプ264,265を含む。静電クランプ264,265は、シャクトリムシ型アクチュエータ262の総合的なストロークを、クランプなしのアクチュエータと比べて増大させることを可能にする。静電クランプ264,265の単位重量あたりのクランプカは大きいので、シャクトリムシ型アクチュエータ262を使用すると、本発明によるプリストレインドポリマの単位重量あたりの力を保存できるという利点がある。静電クランプ264,265は、接続領域267においてシャクトリムシ型アクチュエータに取り付けられる。シャクトリムシ型アクチュエータのボディ266は、接続領域267を含んでおり、ロール状のポリマ263は、その軸方向に沿って、ある程度の遊びを接続領域267間に有している。一実施形態において、静電クランプ264,265は、静電クランプ264,265から金属面268への電気的短絡を阻止するための絶縁接着剤269を含む。
【0097】
シャクトリムシ型アクチュエータ262は、6つのステップを経て上方に移動する。ステップ1において、静電クランプ264,265が作動されてポリマ263が弛緩されると、シャクトリムシ型アクチュエータ262は、両端で固定されて移動不能になる。静電クランプは、クランプと金属面268との間に電圧差を加えることによって作動される。ステップ2において、クランプ265が解放される。クランプ264,265の一方を解放すると、シャクトリムシ型アクチュエータ262の両端のうち、解放されたクランプに対応する一端が自由に移動できるようになる。ステップ3において、静電ポリマ263が作動され、シャクトリムシ型アクチュエータ262は上方に伸張される。ステップ4において、クランプ265が作動され、シャクトリムシ型アクチュエータ262は移動不能になる。ステップ5において、クランプ264が解放される。ステップ6において、ポリマ263が弛緩され、シャクトリムシ型アクチュエータ262は収縮する。シャクトリムシ型アクチュエータ262は、ステップ1からステップ6までを周期的に繰り返すことによって上方に移動する。上述したプロセスにおいて、クランプ264,265を逆にすると、シャクトリムシ型アクチュエータ262は逆方向に移動する。
【0098】
以上では、1つの電気活性ポリマと2つのクランプを使用した場合を例にとってシャクトリムシ型アクチュエータ262を説明したが、複数の電気活性ポリマを使用して、複数セグメントのシャクトリムシ型アクチュエータを実現しても良い。複数セグメントのシャクトリムシ型アクチュエータは、厚さを増すことなくシャクトリムシ型アクチュエータの長さを長くすることを可能にする。2セグメントのシャクトリムシ型アクチュエータは、ロール状のポリマを1つでなく2つ使用し、クランプを2つではなく3つ使用する。一般に、nセグメントのシャクトリムシ型アクチュエータは、n+1個のクランプ間にn個のアクチュエータを備える。
【0099】
図2Jは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための伸張膜デバイス270を、本発明の別の一実施形態にしたがって示した図である。伸張膜デバイス270は、1つの穴272を有した剛性フレーム271を含む。プリストレインドポリマ273は、引っ張られた状態でフレーム271に取り付けられて穴272を塞ぐ。剛性バー274は、ポリマ273の中央に取り付けられており、ポリマ273の変形に対応した変位を外に対して提供する。ポリマ273の上面および下面の両方には、適合性の電極対275,276が設けられており、これらの電極対は、剛性バー274の左側および右側にそれぞれ配置される。電極対275が作動されると、電極対275のトップ電極とボトム電極との間およびそれらの附近において、ポリマ273の一部分が膨張され、ポリマ273の他の部分における既存の張力によって、剛性バー274が右側に引っ張られて移動される。反対に、電極対276が作動された場合は、ポリマ273のうち電極対276による影響をうける第2の部分が、ポリマ273の残りの部分と比べて膨張し、剛性バー274を左側に移動させる。電極対275,276を交互に作動させることによって、剛性バー274の総合的なストローク279を効果的に増大させることができる。このアクチュエータのヴァリエーションの1つとして、異方性のプリストレインをポリマに加え、ポリマが剛性バーの変位に垂直な方向に大きなプリストレイン(および剛性)を有するようにすることが挙げられる。別のヴァリエーションは、一方の電極対を排除することである。このヴァリエーションでは、伸張膜デバイス270のストローク279を減少させることによって設計の簡略化を図っている。この場合、除去された電極によって使用されていた部分のポリマは、復元バネのように受身的に応じるようになる。
【0100】
図2Kは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための曲がり梁デバイス280を、本発明の別の一実施形態にしたがって示した図である。曲がり梁デバイス280は、剛性サポート282によって一端に固定されたポリマ281を含み、このポリマ281は、例えば接着層を使用して、ポリイミドまたはマイラーなどの可撓性の薄膜材料283に取り付けられている。可撓性薄膜材料283の弾性率は、ポリマ281の弾性率よりも大きい。作動時には、曲がり梁デバイス280の上面286および下面287め弾性率の差によって、曲がり梁デバイス280が曲げられる。電極284,285は、ポリマ281の相対する2面に取り付けられ、電気エネルギを提供する。曲がり梁デバイス280は、自由度が1の自由端288を含む。自由端288の変形は、自由端288と、剛性サポート282によって固定された端との間に形成される角度の変化によって測定される。
図2Lは、90度の曲げ角度を有した状態の曲がり梁デバイス280を示した図である。
【0101】
曲がり梁デバイス280の最大曲げ角度は、ポリマの材料、アクチュエータの長さ、電極284,285および可撓性薄膜材料283の曲げ剛性などの多くの要因に応じて変化する。ダウコーニングHS3シリコンと、金の電極と、長さが3.5mmのアクティブ領域とを備えた曲がり梁デバイス280の場合は、225度を超える曲げ角度を達成することができる。アクティブ領域の長さが増大すると、曲がり梁デバイス280において達成可能な曲げ角度も増大する。したがって、上記した曲がり梁デバイスのアクティブ領域の長さを5mmまで伸ばすと、360度の曲げ角度を達成することが可能になる。
【0102】
一実施形態において、電極の1つは可撓性の薄膜材料283として作用する。可撓性薄膜材料283として作用する電極としては、金などの、曲げ剛性が小さく且つ引張り剛性が大きい任意の薄い金属が適している。別の一実施形態では、ポリマが局所的に破壊されるのを最小限に抑えるために、電極284,285の一方とポリマ281との間に障壁層を設けている。
【0103】
図2Mは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うための曲がり梁デバイス290を、本発明の別の一実施形態にしたがって示した図である。曲がり梁デバイス290は、剛性サポート296によって一端に固定された上部および下部のプリストレインドポリマ291,292を含む。各ポリマ291,292は、独立して個々に作動して良い。独立した作動は、上部および下部のポリマ291,292にそれぞれ取り付けられたトップ電極293およびボトム電極294を、別々に電気制御することによって行われる。上部および下部の電気活性ポリマ291,292の間には、両方のポリマに接した共通の電極295が設けられている。共通の電極295は、ポリマ層291,292のプリストレインを維持するとともに伸張および曲げを可能にできる十分な剛性を有する。
【0104】
上側の電極対293,295を使用して上部の電気活性ポリマ291を作動させると、曲がり梁デバイス290は下向きに曲げられる。下側の電極対294,295を使用して下部の電気活性ポリマ292を作動させると、曲がり梁デバイス290は上向きに曲げられる。したがって、上部および下部の電気活性ポリマ291,292を独立して使用することによって、曲がり梁デバイス290を半径方向297に沿って制御することが可能になる。実質的に同じサイズおよび材料を有した上部および下部のポリマ291,292が同時に作動されると、曲がり梁デバイス290は直線方向298に沿って伸張される。半径方向297および直線方向298への動きを制御する能力を組み合わせると、曲がり梁デバイス290は、自由度が2のアクチュエータになる。したがって、上部および下部のポリマ291,292を、別々に作動および制御することによって、曲がり梁デバイス290の自由端299を、円形または楕円形などの複雑な経路で動かすことが可能になる。
【0105】
図2Nおよび
図2Oは、電気エネルギと機械エネルギとの間の変換を行うためのデバイス300を、本発明の別の一実施形態にしたがって示した図である。デバイス300は、電場の変化に応じて一部分が変形するように構成された且つ/または変形に応じて電場が変化するように構成されたポリマ302を備える。電極304は、ポリマ302の相対する2面に設けられ(図中は手前の電極のみが示される)、ポリマ302のかなりの部分を覆っている。2つの剛性部材308,310は、ポリマ302の相対する2エッジ312,314に沿って設けられる。湾曲部分316,318は、ポリマ302の残りの2エッジに沿って設けられる。湾曲部分316,318によって、デバイス300における電気エネルギと機械エネルギとの間の変換が改善される。
【0106】
湾曲部分316,318は、1方向へのポリマ302の変形を別の1方向への変形へと結合させる。一実施形態において、各湾曲部分316,318は、ポリマ302の平面内において約45度の角度で湾曲している。ポリマ302を作動させるにあたって、ポリマ302が方向320に膨張すると、剛性部材308,310は、
図2Oに示すように互いから離れる方向に移動する。また、ポリマ302の方向322への膨張によって、湾曲部分316,318が真直ぐに伸ばされるので、剛性部材308,310は、さらに離れる方向へと移動する。このように、デバイス300は、2次元方向320,322へのポリマ302の膨張を、方向320への機械的な出力へと結合させる。
【0107】
一実施形態において、ポリマ302は、互いに直交する方向320,322へのプリストレインの程度が異なるように構成される。より詳しく言うと、ポリマ302は、方向320へのひずみが大きく、方向320に垂直な2次元方向322へのひずみが小さいまたは全く無いように構成される。このような異方性のプリストレインは、湾曲部分316,318のジオメトリに相対するように構成される。
【0108】
デバイス300の利点の1つは、全体が2次元構造であることである。デバイス300の2次元構造は、製造を簡略化するだけでなく、機械的な結合を容易にして多層設計を行うことを可能にする。例えば、剛性部材308,310を、第2のデバイス300の対応部分に機械的に結合する(例えば糊付けするまたは同様に固定する)ことによって、2つのデバイス300を並列に繋ぎ、1つのデバイス300のみを使用する場合と比べて力の出力を増大させても良い。同様に、1つのデバイスの剛性部材308を第2のデバイスの剛性部材310に取り付けることによって、複数のデバイスを直列に繋ぎ、1つのデバイス300のみを使用する場合と比べて変形の出力を増大させても良い。
【0109】
デバイス300は、電気エネルギを機械エネルギに変換させるアクチュエータとしての性能が優れているだけでなく、ジェネレータとしても良く適している。例えば、ポリマ302の伸張と同時にその上に電荷が置かれると、デバイス300の収縮によって機械エネルギが電気エネルギに変換される。次いで、電極304との間で電気通信を行う回路によって、電気エネルギが回収される。
【0110】
4.性能
本発明にしたがったトランスデューサは、電気エネルギと機械エネルギとの間でエネルギの変換を行う。トランスデューサの性能は、トランスデューサ自体の観点から見て特徴付けられる。すなわち、アクチュエータにおけるトランスデューサの性能か、または特定の1用途におけるトランスデューサの性能(例えば、1モータ内に実装されたトランスデューサの数)によって特徴付けられて良い。プリストレインされた本発明にしたがった電気活性ポリマによって、トランスデューサの性能は大きく向上される。
【0111】
トランスデューサ自体によるトランスデューサ性能の特徴付けは、一般に、ポリマおよび電極の材料特性に関する。電気活性ポリマの性能は、ひずみ、エネルギ密度、作動圧力、作動圧力の密度および効率などのパラメータによって、ポリマのサイズとは別個に記述して良い。ただし、ここでは、以下で説明するようなプリストレインドポリマおよび関連のトランスデューサ性能の特徴付けが、電気活性ポリマおよび電極の種類によって変化し得ることに注意が必要である。
【0112】
本発明によるプリストレインドポリマは、約0.1〜約100MPaの有効弾性率を有して良い。作動圧力は、作動状態と非作動状態との間における、単位断面積あたりのプリストレインドポリマにかかる力の変化として定義される。本発明によるプリストレインドポリマは、約0〜約100MPaの作動圧力、好ましくは約0.1〜10MPaの作動圧力を有して良い場合がある。また、作動状態から非作動状態への移行時における、単位重量あたりの材料の変形のエネルギとして定義される特定の弾性エネルギ密度を使用して、重量が重要な要素を占める電気活性ポリマを記述しても良い。本発明によるプリストレインドポリマは、3J/gを超える特定の弾性エネルギ密度を有して良い。
【0113】
また、プリストレインドポリマの性能を、ポリマのサイズとは別個に効率によって記述しても良い。電気機械効率は、動作がアクチュエータモードにある場合は、電気エネルギの入力に対する機械エネルギの出力の割合として定義され、動作がジェネレータモードにある場合は、機械エネルギの入力に対する電気エネルギの出力の割合として定義される。本発明によるプリストレインドポリマを使用すれば、80%を超える電気機械効率を達成することが可能である。プリストレインドポリマがその最大(または最小)作動圧力まで増圧される(または減圧される)までの時間は、応答時間と称される。本発明にしたがったプリストレインドポリマは、広い範囲の応答時間に適応し得る。応答時間は、ポリマのサイズおよび構成に依存して、例えば約0.01ミリ秒〜1秒の範囲で変化し得る。また、高い率で誘起されたプリストレインドポリマを、動作周波数によって特徴付けても良い。一実施形態において、本発明での使用に適した最大動作周波数は約100Hz〜100kHzで良い。動作周波数がこの範囲にあると、本発明によるプリストレインドポリマを、音響関係の様々な用途(例えばスピーカ)で使用することが可能になる。いくつかの実施形態では、本発明によるプリストレインドポリマを共振周波数で動作させることによって、機械的出力の改善を図って良い場合もある。
【0114】
アクチュエータの性能は、そのアクチュエータに特有な性能パラメータによって記述し得る。例えば、特定のサイズおよび重量を有したアクチュエータの性能は、ストロークや変位、力、アクチュエータの応答時間などのパラメータによって定量して良い。ある用途におけるトランスデューサの性能の特徴付けは、そのトランスデューサが、特定の用途(例えばロボットなど)にどの程度適切に組み込まれているかに関する。ある用途におけるトランスデューサの性能は、その用途に特有な性能パラメータ(例えばロボットの用途における単位重量あたりの力)によって記述して良い。用途に特有なパラメータには、ストロークまたは変位、力、アクチュエータの応答時間、周波数応答、効率等などが含まれる。これらのパラメータは、トランスデューサのサイズ、重量、および/またはデザイン、ならびに用途の種類に依存して良い。
【0115】
ここで、ある電気活性ポリマに対する所望の材料特性は、アクチュエータまたは用途に応じて変化し得ることに注意が必要である。ある用途において、大きい作動圧力および大きいひずみを生成するためには、高絶縁強さ、高誘電率、低弾性率のうちいずれか1つの特性を備えたプリストレインドポリマを使用して良い。また、ある用途のエネルギ効率を最大化するためには、高体積抵抗率および低機械減衰のいずれか1つの特性を備えたポリマを使用して良い。
【0116】
動作がジェネレータモードにあるトランスデューサの性能パラメータは、一般に、動作がアクチュエータモードにある場合のそれらに類似している。ジェネレータとしてのトランスデューサの特定のエネルギ密度は、ストロークごとにトランスデューサ(ポリマ)の単位重量あたりで生成される電気エネルギとして定義される。本発明の実施形態における特定のエネルギ密度は、ポリマに対して一般に最低で約0.15ジュール/gであり、ポリマによっては0.35ジュール/gを超える場合もある。
【0117】
5.電極
上述のように、本発明のトランスデューサは、電気活性ポリマを作動させるための1つ以上の電極を備えることが好ましい。概して、本発明での使用に適した電極は、時間的に一定もしくは変化する適切な電圧を電気活性ポリマに供給し、電気活性ポリマから受け取ることができれば、どのような形態および材料であっても良い。一実施形態では、電極は、ポリマの表面に接着されている。ポリマに接着する電極は、適合性で、ポリマの形状変化に適合することが好ましい。電極は、電気活性ポリマの一部分にのみ適用可能であり、電極の形状にしたがってアクティブ領域を規定する。
【0118】
適合性電極は、1以上の方向に変形することが可能である。これらの方向の一方への適合性電極の変形を表すために、線ひずみを使用しても良い。ここで、適合性電極の線ひずみとは、変形の線に沿った1単位長さあたりの変形を指す。本発明による適合性電極に関しては、少なくとも約50%の最大線ひずみ(引張りまたは圧縮)が可能である。線ひずみの最大値が、一般に少なくとも約100%であるような適合性電極も存在する。もちろん、電極は、最大値以下のひずみで変形することが可能である。一実施形態では、適合性電極は、1以上の高導電領域と1以上の低導電領域を備える「構造化電極」である。
【0119】
図3は、適合性が1方向性である構造化電極501を、本発明の一実施形態にしたがって示した上面図である。構造化電極501は、電荷分布層503にわたって平行な線上にパターニングされた金属トレース502を含む。金属トレース502と電荷分布層503は両方とも、ポリマのアクティブ領域(図示せず)にわたっている。金属トレース502と電荷分布層503は、ポリマの相対する2面に用いられる。それゆえ、相対する2面に構造化電極501を含むトランスデューサの断面は、上部から下部に向かって、トップ金属トレース、トップ電荷分布層、ポリマ、ボトム電荷分布層、ボトム金属トレースとなっている。ポリマの両表面上の金属トレース502は、それらの間の電気活性ポリマ金属のための電極として働く。別の実施形態では、ボトム電極は、適合性の均一の電極で良い。電荷分布層503は、金属トレース502の間の電荷の分布を促進する。それと共に、高導電性の金属トレース502は、アクティブ領域をわたって低導電性の電荷分布層503へ電荷を迅速に導電する。それにより、トレース502の間のポリマの表面にわたって均一に電荷が分布する。電荷分布層503は、適合性がある。結果として、構造化電極501は、平行な金属トレース502に垂直である適合的な方向506への偏向を許容する。
【0120】
ポリマ全体の作動は、ポリマの長さ方向に沿った平行の金属トレース502の長さを伸張することと、ポリマの幅に沿って適切な数のトレース502を実装することによって実現されても良い。一実施形態では、金属トレース502は、400マイクロメートルの間隔で離間され、約20〜100ナノメートルの厚さを持っている。トレースの幅は通例、その間隔よりも広い。構造化電極501に対する反応速度全体を高めるためには、金属トレース502の間の距離を小さくすれば良い。金属トレース502は、金、銀、アルミニウム、その他多くの金属、比較的剛性の導電材料を含んで良い。一実施形態では、電気活性ポリマの相対する2面上の金属トレースは、ポリマ層の電荷分布を改善し、直接的な金属間電気破壊を防ぐために、他の金属トレースからずらされている。
【0121】
金属トレース材料の弾性許容よりも、軸沿いの平行金属トレース502の変形の方が、金属トレース502の損傷につながる可能性が高い。このような損傷を防ぐために、ポリマは、ポリマと金属トレース502の軸沿いの変形を防ぐ剛性構造によって制約されても良い。
図2Dおよび2Eの直線運動デバイスの剛性部材232は、この点で適切である。別の実施形態において、金属トレース502は、ポリマ500の表面上で少し起伏していても良い。これらの起伏は、軸方向についてトレース502に適合性を付加し、その方向への変形を許す。
【0122】
一般に、電荷分布層503は、電気活性ポリマよりも導電度が大きいが、金属トレースよりは小さい。電荷分布層503は導電条件が厳しくないため、幅広い種類の材料を用いることができる。例えば、電荷分布層は、カーボンブラック、コロイド銀を含むフルオロエラストマ、少ない割合のヨウ化ナトリウムが濃度負荷された水性ラテックスラバー乳濁液、テトラチアフルバレン/テトラシアノキノジメタン(TTF/TCNQ)電荷移動錯体を含むポリウレタンを含んでよい。これらの材料は、平坦な被覆と共に薄い均一な層を形成することができ、周囲への実質的な電荷漏出の前に金属トレース502の間に電荷を導電するのに十分な表面導電性を持っている。一実施形態では、電荷分布層503の材料は、ポリマのRC時間定数に基づいて選択される。例えば、本発明に適した電荷分布層503の表面抵抗は、約10
6〜10
11オームでよい。いくつかの実施形態では、電荷分布層が用いられず、金属トレース502が直接ポリマにパターニングされることにも注意すべきである。この場合、ポリマ表面上の空気もしくは別の化学種は、トレース間の電荷を運ぶのに十分だろう。プラズマエッチングやイオンインプランテーションなどの表面処理によって表面の導電性を高めることにより、効果を高めても良い。
図4は、指向的な適合性のない構造化電極の下にあるプリストレインドポリマ510を、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した図である。構造化電極は、「ジグザグ」パターンを形成する一定間隔の平行線で電気活性ポリマ510の一表面上に直接パターニングされた金属トレース512を備える。ポリマの相対する2面上の2つの金属トレース512は、それらの間の電気活性ポリマ510材料のための電極として働く。金属トレース512の「ジグザグ」パターンにより、複数の方向514および516へのポリマおよび構造化電極の膨張と収縮が許される。
【0123】
図3および4に関して記されたような金属トレースの配列を用いることにより、導電度の低い電荷分布層を用いることが可能となる。より詳しく言うと、金属トレース間の間隔が小さくなると、トレース間の材料に必要な導電度が減少する。このように、電荷分布層の使用に適する導電性があるとみなされない材料を用いることができる。例えば、10
10オームの表面抵抗を持つポリマが、このように電荷分布層として用いられても良い。特定の一実施形態では、25マイクロメートルの厚さを持ち、約500マイクロメートルの平行金属トレースの間を仕切るポリマ層の構造化電極の一部である電荷分布層として、ラバーが用いられた。電荷分布層に必要な導電度を低減することに加えて、金属トレースの間隔を小さくすることにより、間隔の小さいトレース間の短い距離間で、電荷が電荷分布層を通過すればよくなるため、作動速度が大きくなる。
【0124】
本発明の構造化電極は、2つの具体的な金属トレースの構成に即して説明されたが、本発明にしたがった構造化電極は、任意の適切な方法でパターニングしても良い。当業者の理解するように、均一に分布された様々な金属トレースのパターンにより、ポリマの表面上に電荷が提供されると共に、1以上の方向の適合性が提供される。いくつかの場合では、構造化電極は、非均一の方法でポリマ表面に取り付けられても良い。ポリマの作動は、適切に近接した1対のパターニングされた金属トレース内のアクティブ領域に限定されていて良いため、電気活性ポリマに特化したアクティブおよび非アクティブ領域は、特注の金属トレースパターニングによって規定されても良い。これらのアクティブおよび非アクティブ領域は、従来の金属トレース蒸着技術にしたがって特注の構造と高分解能に形成されても良い。電気活性ポリマの全表面にわたってこの動作を施すことにより、数多くの特注構造のアクティブ領域を含む構造化電極の特注パターンの結果、構造化電極のパターンにしたがった電気活性ポリマの作動は、特化した不均一のものとなる。
【0125】
本発明は、主に平坦な電極に即して説明されたが、適合性電極を提供するために、様々な平面でない特徴を持つ「テクスチャ加工された電極」が用いられても良い。
図5は、代表的なテクスチャ加工された電極520および521を、本発明の一実施形態にしたがって示した図である。テクスチャ加工された電極520および521は、ポリマ522の変形の結果、テクスチャ加工された電極520および521が2次元および非2次元的に変形するように、電気活性ポリマの相対する2面に取り付けられる。電極520および521の2次元および非2次元的な適合性は、起伏パターンによって提供され、ポリマ522の平面および/または厚さ方向の変形に関して、方向526への適合性が提供される。テクスチャ加工された電極520および521に対して実質的に均一な適合性を提供するために、方向526に関して電気活性ポリマの表面全体にわたって、起伏パターンが実装される。一実施形態では、テクスチャ加工された電極520および521は、適合性を提供するために金属にひびが入ることなしに曲がるような厚さを持つ金属からなる。通例、テクスチャ加工された電極520は、実質的に一定の電場をポリマ522に提供するために、電極520および521の非2次元的な変形がポリマ522の厚さよりも十分に小さくなるように構成される。テクスチャ加工された電極は、1以上の方向に適合性を提供しても良い。特定の一実施形態では、きめの粗いテクスチャ加工された電極が、直交する2次元方向に適合性を提供している。きめの粗いテクスチャ加工された電極は、
図1Dのきめの粗い表面と同一の構造を持っても良い。
【0126】
一実施形態では、本発明の適合性電極は、カーボングリースもしくは銀グリースのような導電性のグリースを含む。導電性グリースは、複数の方向に適合性を提供する。ポリマの導電性を高めるために、粒子を付加しても良い。例えば、炭素粒子をシリコンのようなポリマ結合剤と組み合わせ、弾性が低く導電性が高いカーボングリースを生成しても良い。1以上の材料特性を変えるために、導電性グリースに他の材料を混合しても良い。本発明にしたがった導電性グリースは、少なくとも約100パーセントひずみの変形に適している。
【0127】
本発明の適合性電極は、さらに、コロイド懸濁液を含んでもよい。コロイド懸濁液は、液媒の中に、グラファイト、銀、金のようなサブマイクロメートルサイズの粒子を含む。一般に、十分に導電性粒子を負荷した任意のコロイド懸濁液が、本発明にしたがった電極として用いられてよい。特定の一実施形態では、コロイドサイズの導電粒子を含む導電性グリースは、硬化して導電性の半固体を形成するコロイド懸濁液を生成するために、シリコン結合剤の中にコロイドサイズの導電性粒子を含む導電性シリコンと混合される。コロイド懸濁液の利点は、液体を薄く均一にコーティングすることのできる噴霧、浸漬コーティング、およびその他の技術によってポリマ表面にパターニングできることである。ポリマと電極の間の接着を容易にするために、結合剤が、電極に加えられてもよい。例えば、水性のラテックスラバーもしくはシリコンが、グラファイトを含むコロイド懸濁液に結合剤として加えられてもよい。
【0128】
別の実施形態では、適合性電極は、カーボンフィブリルやカーボンナノチューブのようなアスペクト比の大きい導電性材料を用いて実現される。これらのアスペクト比の大きいカーボン材料は、薄い層の中で高い表面導電性を形成することができる。アスペクト比の大きいカーボン材料は、その相互接続性の高さから、比較的低い電極厚さでポリマ表面に高導電性を分け与えてもよい。例えば、アスペクト比の大きくない一般の形状のカーボンからなる電極の厚さは、5〜50マイクロメートルの範囲であり、カーボンフィブリルもしくはカーボンナノチューブ電極からなる電極の厚さは、2〜4マイクロメートル未満である。アクリルおよびその他のポリマ上のカーボンフィブリルおよびカーボンナノチューブ電極については、100%をはるかに上回る複数方向への領域拡張が適している。アスペクト比の大きいカーボン材料は、電気活性ポリマ層との接着力を増すためにポリマ結合剤を使用してもよい。ポリマ結合剤を用いることにより、或る特定の電気活性ポリマ層との接着と、ポリマの弾性的および機械的特性に基づいて、或る特定の結合剤を選択できるという利点がある。
【0129】
一実施形態では、アスペクト比の大きいカーボン電極は、電極の不透明度がポリマの変形にしたがって変更可能なように十分に薄く製造されて良い。例えば、電極は、電極が膨張の際に不透明から半透明に変化するように十分に薄く造られても良い。このように電極の不透明度を操作することにより、以下に説明するように、本発明のトランスデューサが多くの様々な光学的用途に用いられてもよい。
【0130】
別の実施形態では、イオンによる導電性材料の混合物が、適合性電極に用いられても良い。これは、例えば、ゼラチン内のグリセロールもしくは塩、ヨウ素添加天然ゴム、ヨウ化カリウムのような有機塩を加えた水性乳濁液のような水性ポリマ材料を含んでもよい。水性電極に十分に接着できない疎水性の電気活性ポリマについては、接着性を高めるために、ポリマ表面が、プラズマエッチング、もしくはグラファイトやカーボンブラックのような微粉によって前処理されても良い。
【0131】
本発明の電極に用いられる材料は、大幅に変わっても良い。電極に用いられる適切な材料は、グラファイト、カーボンブラック、コロイド懸濁液、銀および金を含む薄い金属、銀およびカーボンで満たされたゲルおよびポリマ、イオンもしくは電子工学的に導電性を持つポリマを含む。特定の一実施形態では、本発明での使用に適切な電極は、ペンシルベニア州フィラデルフィアのストックウェルラバー社によって生産されるストックウェルRTV60‐CONのように、シリコンラバー結合剤の中に80%のカーボングリースと20%のカーボンブラックを含むものである。カーボングリースは、ジョージア州ケニソーのケムトロニクス社によって生産されるサーキットワークス7200のような種類のものである。導電性グリースは、さらに、ゲル状の導電性グリースを提供するために、ニューヨークのジェネラル・エレクトリック・オブ・ウォーターフォード社によって生産されるシリコンエラストマRTV118のようなエラストマと混合されても良い。
【0132】
或る電極材料が、特定のポリマとは上手く機能し、他のポリマとは上手く機能しない場合があることが理解される。例えば、カーボンフィブリルは、アクリルエラストマポリマとは上手く機能するが、シリコンポリマでは上手く機能しない。ほとんどのトランスデューサについて、適合性電極に関する所望の特性は、低弾性率、低機械的減衰、低表面抵抗、均一な抵抗、化学的および環境的安定性、電気活性ポリマとの化学的互換性、電気活性ポリマへの良好な接着性、滑らかな表面を形成する能力のいずれか一つを含むだろう。いくつかの場合では、電極材料が、製造中の正確なパターニングに適していることが望ましいだろう。例えば、適合性電極は、ポリマ上に噴霧コーティングされて良い。この場合、噴霧コーティングに利点となる材料特性が望ましい。いくつかの場合、本発明のトランスデューサは、2つの異なる種類の電極を実装しても良い。例えば、本発明のダイヤフラムデバイスは、上面に取り付けられた構造化電極と、下面側に蒸着されたアスペクト比の大きいカーボン材料とを備えても良い。
【0133】
電子ドライバは、電極に接続される。電気活性ポリマに供給される電圧は、用途の詳細によって異なるだろう。一実施形態では、本発明のトランスデューサは、DCバイアス電圧付近に印加電圧を調節することによって電気的に駆動される。バイアス電圧付近に調節することにより、印加電圧に対するトランスデューサの感度と線形性が改善される。例えば、オーディオに用いられるトランスデューサは、約750〜2000ボルトDC範囲のバイアス電圧の頂点に関するピークツーピーク電圧200〜1000ボルトまでの信号によって駆動されて良い。
【0134】
6.用途
本発明は、ミクロおよびマクロスケール両方で、非常に様々なアクチュエータ設計に実装可能なトランスデューサを含むため、本発明は、電気的エネルギと機械的エネルギの変換を必要とする幅広い用途に用いることが可能である。以下は、上述のアクチュエータの一部に関するいくつかの代表的な用途である。一般に、本発明のトランスデューサとアクチュエータは、電気的エネルギと機械的エネルギの変換を必要とする任意の用途に用いることができる。これらの用途は、ロボット工学、センサ、モータ、玩具、マイクロアクチュエータ、ポンプ、ジェネレータなどである。
【0135】
上述のように、独立したもしくは機械的に集合体に組み込まれた電気活性ポリマは、人工筋肉と呼ぶことができる。人工筋肉という用語自体は、これらのアクチュエータが、生物的に刺激を与えられるロボットもしくは生物医学的な用途のように(哺乳類その他の)筋肉の複製を用いることが望ましい用途での利用に適していることを示唆する。例えば、義肢、外骨格、人工心臓のような用途に、本発明のプリストレインドポリマが役立つかもしれない。電気活性ポリマのサイズ拡張性と、集合体内で任意の数のトランスデューサもしくはポリマアクチュエータを用いる能力により、本発明にしたがった人工筋肉は、生物的な同等物よりも広い範囲で用いることができる。本発明のトランスデューサおよびアクチュエータは、生物的な同等物よりもはるかに広い動作範囲を持つため、本発明は、実際の筋肉に相当する動作を持つ人工筋肉に限定されず、実際の筋肉にはない動作を必要とする用途を含んでも良い。
【0136】
人工筋肉の一例では、直線運動デバイスの集合体は、互いに折り重なり、各ポリマの向かい合った端にある2つの剛性プレートに取り付けられた2つ以上のプリストレインドポリマの層を含む。電極は、各ポリマ層の間の中央に封入されている。集合体の中の直線運動デバイスはすべて、剛性プレートによって提供される幾何学的な制約と、異方性のプリストレインを利用して、作動方向のポリマの変形を制限できる。層構造の利点は、必要な数の電気活性ポリマを平行に積み上げれば、所望の力を生み出すことができる点である。さらに、この直線運動デバイスの構成のストロークは、同様の直線運動デバイスを直列に加えることによって増大されても良い。
【0137】
ミクロの分野では、プリストレインポリマは、数マイクロメートル〜数ミリメートルの範囲で良く、数マイクロメートル〜数百マイクロメートルが好ましい。マイクロプリストレインドポリマは、インクジェット、作動バルブ、マイクロポンプ、シャクトリムシ型アクチュエータ、ポインティングミラー、サウンドジェネレータ、マイクロクランプ、マイクロロボットなどの用途に非常に適している。マイクロロボットでの用途は、マイクロロボットの脚、握るための手段、CCDカメラ用のポインタアクチュエータ、マイクロ溶接および修理用のワイヤ供給装置、固定した位置を保持するためのクランピングアクチュエータ、正確な距離にわたってデータを伝送するための超音波アクチュエータを含む。他の用途では、ダイヤフラムデバイスが、単一の表面上で2次元的に構成された同様の電気活性ポリマダイヤフラムの配列内に実装されても良い。例えば、配列は、各々が2次元構成に構成された150マイクロメートル直系のダイヤフラム62個を含んでも良い。一実施形態では、ダイヤフラムデバイスの配列は、シリコンウエハ上に形成されても良い。このように生成されたダイヤフラムデバイスの配列は、例えば、各々がおよそ60〜150マイクロメートルの直径を持つ5〜10,000もしくはそれ以上のダイヤフラムを含んでも良い。その配列は、各ダイヤフラムに対して適切に離間した穴を持つグリッド板に配置されても良い。
【0138】
マクロの分野では、上述のアクチュエータ各々が、それ自身の用途に非常に適している。例えば、
図2Iのシャクトリムシ型アクチュエータは、直径2cm以下のパイプ内を進むことのできる小型ロボットでの利用に適している。他のアク.チュエータは、例えば、ロボット工学、ソレノイド、サウンドジェネレータ、線形アクチュエータ、航空宇宙用アクチュエータ、一般的な自動化などの用途に適している。
【0139】
別の実施形態では、本発明のトランスデューサは、光学的調節デバイスや光学スイッチとして用いられる。そのトランスデューサは、変形に応じて不透明度が変化する電極を備えている。透明もしくは実質的に半透明なプリストレインドポリマが、不透明度の変化する電極に取り付けられており、デバイスの不透明度を調節するために、ポリマの変形が用いられる。光学スイッチの場合、不透明度の変化するトランスデューサが、光センサと通信する光源を遮る。それゆえ、透明のポリマが変形することにより、不透明度の変化する電極が変形、光センサに影響を与える。特定の一実施形態では、不透明度の変化する電極は、電極領域が増大しフィブリル密度が減少するにつれて不透明度が下がるカーボンフィブリルもしくはカーボンナノチューブを含む。別の特定の実施形態では、電気活性ポリマと不透明度の変化する電極からなる光学的調節デバイスは、そのデバイスを通って伝送された光の量を正確に調節するよう設計されても良い。
【0140】
ダイヤフラムデバイスは、ポンプ、バルブなどとして用いられても良い。一実施形態では、プリストレインドポリマを備えたダイヤフラムデバイスは、ポンプとしての利用に適している。ポンプの動作は、ポリマの作動を繰り返すことにより生み出される。本発明にしたがった電気活性ポリマポンプは、ミクロおよびマクロスケール両方に実装可能である。例えば、ダイヤフラムは、約150マイクロメートル〜約2センチメートルの範囲の直径を持つポンプとして使用可能である。これらのポンプは、100%を超えて歪んだポリマを含んでも良く、20kPa以上の圧力を生み出すことが可能である。
【0141】
図6は、ダイヤフラムポンプ540および542を含んだ2段式のカスケード式ポンピングシステムを、本発明の特定の一実施形態にしたがって示した図である。ダイヤフラムポンプ540および542は、フレーム545および547に取り付けられたプリストレインドポリマ544および546を含む。ポリマ544および546はそれぞれ、フレーム545および547の穴548および550内で、穴548および550の面に垂直の方向へ変形する。ポリマ544および546に沿ったフレーム545および547は、空洞551および552を決定する。ポンプ540は、空洞551方向へのバイアスをダイヤフラム544に提供するための曲げバネ560を備えるプランジャ553を含む。
【0142】
1方向バルブ555は、空洞551への液体もしくは気体の流入を許可する。1方向バルブ556は、空洞551から空洞552への液体もしくは気体の流出を許可する。さらに、1方向バルブ558は、空洞552からの液体もしくは気体の流出を許可する。ポリマ544および546の作動にあたって、ポリマが順に変形、空洞551および552内の圧力がそれぞれ変化する。それにより、1方向バルブ555から空洞551へ、バルブ556から空洞552へ、バルブ558の外へと液体もしくは気体が移動する。
【0143】
図6の2段式のカスケード式ポンピングシステムでは、ダイヤフラムポンプ542は、ダイヤフラムポンプ540からの圧力の掛かった出力がポンプ542にバイアスをかけるため、バイアスを含まない。一実施形態では、ダイヤフラムポンプのカスケード配列における第1のポンプのみが、バイアス圧力、もしくは自吸のための他の機構を用いる。いくつかの実施形態では、或る配列で設けられたダイヤフラムポンプは、ポンプ効率を高めるために、電子計時によって提供された電圧を用いても良い。
図6に示された実施形態では、ポリマ544および546は、最良の動作をするために同時に作動される。カスケード内にさらに多くのダイヤフラムポンプを備える別の実施形態では、異なるアクチュエータ用の電子計時は、1つのポンプが空洞の容積を縮小すると共に配列内の(1方向バルブによって連結する)次のポンプが拡張するように理想的に設定される。特定の一実施形態では、ダイヤフラムポンプ540は、40ml/分の速度と約1kPaの圧力で気体を供給し、ダイヤフラムポンプ542は、実質的に同じ流速で気体を供給するが、圧力は2.5kPaに増大する。
【0144】
図2K〜2Mに関して説明されたような曲がり梁デバイスは、ファン、電気スイッチおよびリレー、光スキャナなどの様々な工業用および航空宇宙用のデバイスおよび用途にミクロおよびマクロレベル両方で用いることができる光スキャナとして用いられる曲がり梁アクチュエータについては、アルミ処理したマイラのような反射面は、曲がり梁アクチュエータの自由端に接着可能である。より詳細には、曲がり梁が作動されている際には光が反射され、曲がり梁が停止している際には光が通過する。次に、反射体は、アクチュエータの変形にしたがってアークもしくはラインを形成するために、入射光を反射し、スキャンされたビームを形成するために用いられても良い。曲がり梁アクチュエータの配列は、さらに、表面上の熱伝達および/または光の吸収を制御するための「スマートなファー」として、低プロフィルのスピーカと振動サプレッサに対して表面の空気の流れを制御するために、フラットパネルディスプレイに用いられても良いし、物を動かすために調和して動く繊毛として機能しても良い。
【0145】
管状もしくは多層のシリンダに巻かれたポリマおよびポリマ膜は、作動の際に軸方向に伸張するピストンとして実装されても良い。そのようなアクチュエータは、油圧もしくは空気圧ピストンと類似しており、これらの伝統的な形の線変形を用いるデバイスもしくは用途すべてに実装可能である。
【0146】
電気活性ポリマアクチュエータは、さらに、サウンドジェネレータ、音響スピーカ、インクジェットプリンタ、高速MEMSスイッチなどを含む様々な用途に対して高速で動作しても良い。特定の一実施形態では、電気活性ポリマダイヤフラムは、光スキャナとして用いられる。より詳細には、鏡付き湾曲部分を提供するために、5mm直径の電気活性ポリマダイヤフラムを押し下げる湾曲部分に鏡を設置しても良い。約190〜300ボルトの範囲の電圧と約30〜300Hzの範囲の周波数により、約10〜30度のスキャン角度で画像の良好なスキャニングが実現可能である。また、さらに大きいスキャン角度(例えば、90度)は、400〜500Vの範囲の電圧を用いることにより適応される。さらに、より高い周波数が、より堅い鏡付き湾曲部分と共に用いられても良い。
【0147】
本発明のトランスデューサは、さらに、機械的エネルギを電気的エネルギに変換するためのジェネレータとして幅広い利用が可能である。特に、本発明のジェネレータは、踵接地ジェネレータとしての使用に非常に適している。より詳細には、歩くことによる機械的エネルギを電気的エネルギとして利用するために、本発明のトランスデューサ1つ以上を靴に使用しても良い。通例、ジェネレータは、ポリマの一部分の変形に応じて電場と蓄えられた電気的エネルギが変化するように構成されたポリマを含む。かかとの蹴りなどの機械的な入力は、電極の表面に平行な一方もしくは両方の2次元方向に向かってトランスデューサに広がる。それにより、トランスデューサに蓄えられた弾性的機械エネルギが増大する。次いで、伸張した状態で電荷が電極に置かれ(もしくは、伸張した状態でさらに電荷が追加され)、トランスデューサが収縮を許されると、トランスデューサは、その弾性的機械エネルギの一部もしくはすべてを、より大きな量の蓄積電気エネルギに変換する。蓄えられた電気的エネルギが増大すると、電極と電気的に接続した回路によって回収すなわち利用される。利用されるエネルギの一部は、次のサイクルの伸張・収縮の際に初期入力の電荷として供給するためにリサイクルすることができる。ジェネレータは、さらに、従来の燃焼エンジンに接続されたトランスデューサを備え、燃料駆動の電気ジェネレータ、手動のクランクジェネレータ、波力ジェネレータ、風力ジェネレータ、機械的入力がトランスデューサ伸張のために利用可能な他の種類のジェネレータを形成する。
【0148】
本発明のトランスデューサは、1つ以上の機能を持つよう実装可能であることに注意されたい。換言すれば、トランスデューサは、同じ設計内で、アクチュエータ、ジェネレータ、センサとして機能することが可能である。
【0149】
7.製造
プリストレインドポリマは、幅広い材料の様々なアクチュエータの設計において、そして多様な用途において、ミクロおよびマクロのスケールの両方で実装可能なため、本発明において使用される製造プロセスも、実に多様である。本発明の一形態は、1つまたはそれ以上のプリストレインポリマを有した電気機械デバイスを製造する方法を提供する。
【0150】
図7Aは、少なくとも1つの電気活性ポリマ層を有した電気機械デバイスを製造するためのプロセスの流れ600を、本発明の一実施形態にしたがって示したフローチャートである。本発明にしたがったプロセスは、いくつかの追加のステップを含んでも良いが、本発明を不明瞭にすることを避けるため、説明も図示もしていない。本発明の製造プロセスは、マイクロ電子機器や電子技術の製造において用いられている市販のポリマおよび技術のような従来の材料および技術を含む場合もある。例えば、マイクロダイヤフラムデバイスは、穴を形成してポリマおよび電極を取り付ける従来の技術を用いてシリコン上に形成されても良い。
【0151】
プロセスの流れ600は、ポリマを受け取るもしくは製造することにより始まる(602)。ポリマは、いくつかの方法にしたがって受け取られても良いし製造されても良い。一実施形態では、ポリマは、市販のアクリルエラストマ膜のような市販の製品である。別の実施形態では、ポリマは、鋳造、浸漬、回転塗布、吹き付けの1つによって生産された膜である。一実施形態では、ポリマ全体に最大の電場が印加されることを危うくすることにより性能を下げる厚さのばらつきと他の欠陥すべてを最小限にするように、ポリマが生産される。
【0152】
回転塗布は通例、剛性基板にポリマ混合物を塗布する工程と、回転させて所望の厚さにする工程とを含む。ポリマ混合物は、ポリマ、硬化剤、揮発性の分散剤もしくは溶媒を含んで良い。分散剤の量、分散剤の揮発性、回転速度は、所望のポリマを生産するために変更可能である。例えば、ポリウレタン膜は、ポリウレタンおよびテトラヒドロフラン(THF)もしくはシクロヘキサノンの溶液内で回転塗布されて良い。シリコン基板の場合、ポリマは、アルミ処理したプラスチックもしくは炭化ケイ素上に回転塗布されて良い。アルミニウムと炭化ケイ素は、適切なエッチング液によって実質的に除去される犠牲層を形成する。1マイクロメートル厚の範囲の膜は、このように回転塗布によって生産されても良い。シリコンなどのポリマ膜の回転塗布は、ポリメタクリル酸メチルもしくはテフロン(登録商標)のような滑らかな非固着性のプラスチック基板上に施されても良い。次いで、ポリマ膜は、機械的なはく離工程によって、もしくはアルコールやその他の適切なはく離剤を用いて、はく離されて良い。回転塗布は、さらに、10〜750マイクロメートルの範囲の厚いポリマの生産にも適している。いくつかの場合では、ポリマ混合物は、工業用ポリマに用いられている充填物、微粒子、色素などの異物を取り除くために、回転塗布前に遠心分離されてもよい。遠心分離の効果を増大し、厚さの一貫性を改善するために、ポリマは、粘性を下げるよう溶媒で希釈されても良い。例えば、シリコンは、ナフサ内に分散されても良い。
【0153】
次いで、ポリマは、1以上の方向にプリストレインされる(604)。一実施形態では、ポリマを1以上の方向へ伸張し、歪んだ状態でそれを1以上の固形部材(例えば、剛性プレート)に固定することにより、プリストレインが実現される。プリストレインを維持するための別の技術では、1つ以上の補強材を用いる。補強材は、プリストレインされた状態、例えば、伸張された状態のポリマ上に配置された長い剛性の構造である。補強材は、それらの軸方向のプリストレインを維持する。補強材は、トランスデューサの指向的な適合性を実現するために平行もしくはその他の構成で配置されて良い。補強材の軸方向の剛性が増すと、プリストレイン方向へのポリマの剛性が増すだけでなく、補強材によって提供される剛性も増すことに注意されたい。
【0154】
プリストレインドポリマの表面は、テクスチャ加工されても良い。一実施形態では、作動時に伸張できるよりもさらに大きくポリマを伸張させ、その状態のポリマ表面に薄膜状の硬い材料を蒸着する。例えば、硬い材料は、電気活性ポリマが伸張されている間に硬化されたポリマでも良い。硬化の後、電気活性ポリマは緩められ、構造が曲がって、テクスチャ加工された表面を提供する。硬い材料の厚さは、サブマイクロメートルのレベルを含む任意のスケールのテクスチャを提供するために変更されても良い。別の実施形態では、テクスチャ加工された表面は反応性イオンエッチング(RIE)によって生成されても良い。例えば、RIEは、90%の四フッ化炭素と10%の酸素を含むRIEガスを用いてシリコンを含むプリストレインドポリマに対して施され、深さ4〜5マイクロメートルの山と谷を持つ表面を形成する。
【0155】
次いで、1つ以上の電極がポリマ上に形成される(606)。上述のRIEによって修正されたシリコンポリマについては、テクスチャ加工された電極を提供するために、RIEテクスチャ加工表面に金の薄層がスパッタ蒸着されても良い。別の実施形態では、1つ以上のグラファイト電極が、ステンシルを用いてパターニングされ蒸着されても良い。導電性シリコンと混合された導電性グリースを含む電極は、導電性グリースと硬化していない導電性シリコンを溶媒に溶かすことによって製造されても良い。次いで、溶液は、電気活性ポリマ材料の上に噴霧されて良く、或る特定のパターンを実現するためにマスクもしくはステンシルを含んでも良い。
【0156】
図3および4の構造化電極の金属トレースは、ポリマもしくは電荷分布層の上部にフォトリソグラフィによってパターニングされて良い。例えば、金の層は、金にフォトレジストを蒸着する前にスパッタ蒸着される。フォトレジストと金は、従来のフォトリソグラフィ技術、例えば、マスクを用いた後にフォトレジストを除去するために1以上の洗浄を行う工程によってパターニングされても良い。ポリマと金属トレースの間に付加された電荷分布層は、例えば、回転塗布によって蒸着されても良い。
【0157】
特定の一実施形態では、構造化電極は、毎分約150オングストロームで(所望の厚さに応じて)約2〜3分間、金をスパッタ蒸着することにより、ポリマ上に形成される。次いで、コネチカット州ノーウォークのアーチケミカルズ社によって提供されているようなHPR506フォトレジストが、約500〜1500rpmで約20〜30秒、金の上に回転塗布された後に、摂氏約90度で焼かれる。次いで、フォトレジストの紫外線への曝露と現像の前に、マスクが塗布され、フォトレジストのマスクされていない部分が除去される。次いで、金がエッチングされ、膜は洗浄される。残りのフォトレジストは、紫外線への曝露、現像、洗浄によって除去される。次いで、金トレースは、ひずみ耐性を高めるために伸張されて良い。
【0158】
本発明のテクスチャ加工された電極もまた、フォトリソグラフィによってパターニングされて良い。この場合、フォトレジストは、プリストレインドポリマ上に蒸着され、マスクを用いてパターニングされる。プラズマエッチングは、所望のパターンでマスクによって保護されていない電気活性ポリマの一部を除去することができる。続いて、マスクは、適切なウェットエッチングによって除去できる。次いで、ポリマの活性表面は、例えば、スパッタリングによって蒸着された金の薄層で被覆されても良い。
【0159】
トランスデューサは、1つ以上のポリマ層と電極を含んでおり、用途に応じてパッケージングされる(608)。また、パッケージングは、機械的につながった、もしくは複数の層として重ねられた複数のトランスデューサのアセンブリを含んでも良い。さらに、トランスデューサへの機械的および電気的接続が、用途に応じて形成されて良い。
【0160】
また、ポリマの製造は、1以上の添加物の追加を含んでも良い。上述の添加物の例では、絶縁破壊強度を増すために、酢酸ブチルのような溶媒中のテキサス州ヒューストン所在のシェルケミカル社によるKraton D2104に、ミネラルオイルが添加された。具体的な例では、溶液は、14.3%の重量のミネラルオイルと32.1%の重量のKraton D2104を含む。その溶液は、残りの溶媒すべてを除去し電気活性ポリマを生産するために、ガラス上に投じられ、オーブンにおいて摂氏95度で熱せられた。次いで、ポリマは、縦横150%の割合で、フレーム上で伸張された。次いで、カーボングリース電極が、ポリマの相対する2面に塗布される。このプロセスは、約70〜100%の範囲で最大の線ひずみを持つトランスデューサを生産した。
【0161】
本発明は、さらに、複数のプリストレインポリマ層を有した電気機械デバイスを製造する代替方法を提供する。一実施形態では、電気機械デバイスを製造するプロセスが、ポリマ層を取得もしくは製造することによって始まる。次いで、ポリマは、所望のプリストレインに伸張され、第1の剛性フレームに取り付けられる。アクティブ領域を規定し、電気的接続を確立するために、ポリマの両側に次の電極が蒸着される。電極は、マスクを通しての噴霧コーティングのような様々な従来の技術によってパターニングされて良い。必要ならば、次いで、第2のポリマ層が第2のフレーム上に伸張される。次いで、この第2のポリマ層の上に電極がパターニングされる。次いで、第2のポリマ層は、それぞれのフレームを積み重ねることにより第1の層に接続される。必要ならば、2つの層および電極を接着するために、適切な適合性接着剤の層が用いられても良い。フレームのサイズは、ポリマ層が密接に接触することを妨げないように選択される。妨害が生じる場合には、例えば、第1のフレームの周囲のポリマ層を切除することにより、第2のフレームを除去することが望ましい。必要ならば、電極を備える第3のポリマ層が、第1の層に第2の層が付加された方法と同様にして追加されても良い。この手順は、所望の数の層に達するまで継続して良い。
【0162】
次いで、剛性フレーム、剛性部材、もしくはその他の電気的および機械的なコネクタが、例えば、接着によってポリマ層に取り付けられる。必要ならば、次いで、第1のフレームからポリマが除去されても良い。いくつかの場合では、第1のフレームが、最後のアクチュエータの構造部として働いても良い。例えば、第1のフレームは、ダイヤフラムデバイスの配列を形成するために穴の配列であっても良い。
【0163】
図7B〜
図7Fは、複数の電気活性ポリマ層を有した電気機械デバイス640を製造するための第2のプロセスを、本発明の別の実施形態にしたがって示した図である。本発明にしたがったプロセスは、いくつかの追加のステップを含んでも良いが、本発明を不明瞭にすることを避けるため、説明も図示もしていない。そのプロセスは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ディスク上にポリマを回転塗布する工程と、ポリマを伸張する(
図7B)工程と、剛性基板624に取り付ける工程によって、適切な剛性基板624上にプリストレインドポリマ622を形成することにより始まる。ポリマ622が硬化された後、ポリマ622の露出面626上に、電極625がパターニングされる。次いで、ポリイミド、マイラ、アセテートの内の1つを含む可撓性の膜のような固形部材627が、適切な接着剤628で電気活性ポリマ622上に蒸着される(
図7C)。
【0164】
次いで、剛性基板624は、電気活性ポリマ622からはく離される(
図7D)。はく離を促進するために、イソプロピルアルコールのようなはく離剤が用いられても良い。次いで、ポリマ622のあらかじめ露出されていない面に、電極629がパターニングされる。次いで、剛性基板631に取り付けられた別の電気活性ポリマ層630に、アセンブリが接着される。ポリマ層622および630は、例えば、GE RTV118シリコンを含む接着層632によって接着されても良い。次いで、剛性基板631がポリマ630からはく離され、ポリマ630の利用可能な面634に電極633がパターニングされる。追加のポリマ層が必要であれば、ポリマ層を追加し、剛性基板を除去し、電極を追加するステップを、所望の数のポリマ層を形成するまで繰り返せば良い。ポリマ層635は、このように追加されたものである。デバイス640の内部の層にある電極への電気の伝達を促進するために、金属ピンを構造内に貫通させて、各層の電極と接触させても良い。
【0165】
次いで、特定のアクチュエータによって必要とされるフレームもしくは機械的接続を提供するための必要に応じて、固形部材627がパターニングもしくは除去されても良い。一実施形態では、ダイヤフラムデバイスは、適切なマスクもしくはエッチング技術を用いて、電気機械デバイス640にアクティブ領域を提供する穴636を形成するために固形部材627をパターニングすることにより形成されても良い。別の実施形態では、アクティブ領域が広くなく、損傷なしにポリマのアクティブ領域に電極を追加できる場合には、固形部材627は、ポリマ622への取り付け前に穴636によってパターニングされても良い。
【0166】
図7B〜Fのプロセスについては、剛性基板624は通例、可撓性の電気活性ポリマをはく離することにより電気活性ポリマ622からはく離される。はく離は、実質的に平面のプロフィルを持つ電気活性ポリマを含むデバイスを製造するのに適している。別の実施形態では、はく離を容易にするために、ポリマもしくは電極と剛性基板との間に、犠牲層が用いられても良い。犠牲層を用いると、犠牲層をエッチング除去することにより、ポリマ、電極、取り付けアセンブリを剛性基板からはく離することができる。例えば、アルミニウムと銀を含む金属は、犠牲層としての使用に適している。金属を用いると、ポリマ層に影響を与えない液体によって、犠牲層をエッチング除去することができる。金属の犠牲層は、さらに、電気機械デバイス640の他の構造要素のためのフレームやコネクタを提供するために、様々なマスキング技術によって容易にパターニングされることが可能である。犠牲層は、さらに、例えば、管状の剛性基板を用いるような、平面でないプロフィルを持つトランスデューサを備えるデバイスの製造に用いられても良い。幾何学的に複雑なトランスデューサについては、複雑な形状を形成するために、浸漬コーティングと組み合わせて犠牲層が用いられても良い。
【0167】
いくつかの特定の例にしたがってプリストレインドポリマの製造に関して簡単に説明したが、本発明の製造プロセスおよび技術は、上述の任意のアクチュエータもしくは用途に応じて変化しても良い。例えば、特定の一実施形態にしたがってダイヤフラムデバイスを製造するプロセスは、構造化電極がポリマ上に製造される前に基板上にポリマを回転塗布する工程を含んでも良い。次いで、ポリマが伸張され、各ダイヤフラムデバイスのアクティブ領域サイズの1つ以上の穴を含む剛性フレームが、構造化電極の重複部分すべてを含むプリストレインドポリマに接着される。別の実施形態では、例えば、基板がシリコンである場合に、別々の剛性フレームを用いる代わりに、基板内に穴がエッチングされる。次いで、基板がポリマからはく離され、ポリマの下面側に電極が取り付けられる。
【0168】
8.結論
本発明は、いくつかの好ましい実施形態に即して説明され、簡単のために省略したが、本発明の範囲内の変更、置換、等価物が存在する。例えば、本発明は、様々な多数の応用材料の電極に即して説明されたが、本発明は、これらの材料に限定されず、空気を電極として備える場合もある。さらに、本発明は、特定の性能範囲を持ついくつかの好ましいポリマの材料および形状寸法に即して説明されたが、本発明は、これらの材料および形状寸法に限定されず、挙げられた範囲外の性能を持つ場合もある。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項を参照して決定されるべきである。