【文献】
S.BASKIYAR,A Real-time Tolerant Intra-body Network,LCN 2002,米国,IEEE,2002年11月 6日,P235-240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の機器は、前記受信された信号を前記患者の外部にある二次的な受信器に再送信するようにさらに構成されており、前記二次的な受信器は、RF受信器であり、かつ、無線周波数(RF)送信器を含み、前記第2の機器は、前記受信された情報を前記二次的な受信器に再送信するように構成された経皮ワイヤを含み、前記二次的な受信器は、前記患者の内部にあり、前記第2の機器は、ペースメーカーである、請求項1に記載のシステム。
前記第1の機器は、センサを含み、前記センサは、血流センサであり、前記血流センサは、抵抗センサを含み、前記血流センサは、電磁式血流センサを含み、前記第1の機器は、エフェクタを含み、前記エフェクタは、電極を含む、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(詳細な説明)
上記で要約したように、本発明は、これまで不可能であった機器構成および用途を可能にする固有のフォーマットを使用して互いに(例えば、一方向または双方向)無線で通信する、移植可能なシステムを提供する。本発明の実施形態は、移植可能な医療機器と情報を交換するための通信装置および方法を提供する。いくつかの実施形態において、長波長/低周波電磁帯における準静電信号伝送を使用し、患者の体が導電媒体として作用して、2つの移植可能な機器が互いに通信する。一実施形態において、信号は、約100kHzの周波数、およそ300メートルの波長を有する。機器の1つは、従来のペン型スキャナ等の外部機器と通信するためのさらなるRF回路を装備していてよい。あるいは、機器の1つは、患者の皮膚を介して準静電信号を検出および/または生成することができる電極を含む外部機器であってもよい。
【0015】
I.プラットフォーム概観
図1は、本発明の一実施形態による、医療診断および/または治療プラットフォーム100のブロック図である。プラットフォーム100は、動力源102と、遠隔機器104と、データコレクタ106と、外部記録装置108とを含む。動作中、遠隔機器104は、患者の体内に設置(例えば、摂取または移植)され、患者の体の内部または外部に位置付けられてよい動力源102から動力を受信する。
【0016】
以下の第II節でさらに説明する遠隔機器104は、センサ、エフェクタおよび/または送信器ユニットの任意の組み合わせを含み得る、電子、機械、または電気機械機器である。センサユニット(第II節A)は、遠隔機器104が移植された患者の生理的状態に関連する種々のパラメータを検出および計測する。エフェクタユニット(第II節B)は、遠隔機器または外部コントローラ内にあるセンサユニットの制御下で、患者の体における何らかの性状または生理的過程に影響を及ぼす措置を実行する。送信器ユニット(第II節C)は、例えばセンサユニットからの計測データを含む信号、または、遠隔機器のエフェクタ作用もしくは存在のみを示すその他の信号を、データコレクタ106へ送信する。いくつかの実施形態において、伝送は無線で実行される。
【0017】
以下の第III節でさらに説明する動力源102は、遠隔機器104に送られ得る電力の任意のソースを含んでもよい。いくつかの実施形態において、動力源102は、遠隔機器104に組み込まれた電池または同様の内蔵型動力源であってもよい。その他の実施形態において、動力源102は、患者の体の外部にあり、動力を無線で送る(例えば、第III節A参照)。
【0018】
以下の第IV節でさらに説明するデータコレクタ106は、患者内または外部に移植され、患者の皮膚に接続されることができる。データコレクタ106は、遠隔機器104内にある送信器ユニットから信号を検出する受信器アンテナと、受信された情報を格納、処理、および/または再送信するように構成された制御論理とを含む。遠隔機器104が送信器を含まない実施形態では、データコレクタ106を省略してもよい。
【0019】
外部記録装置108は、収集されたデータおよび関連情報(例えば、データコレクタ106内における処理活動の結果)を従事者に利用しやすくする任意の機器を使用して実装され得る。いくつかの実施形態において、データコレクタ106は、患者またはヘルスケア従事者によって直接読み出される、または格納データを読み出すコンピュータと通信可能に接続されることができる外部コンポーネントを含み、当該外部コンポーネントは、外部記録装置108としての役割を果たす。その他の実施形態において、外部記録装置108は、例えば405MHz帯域におけるRF結合を使用して体内ペースメーカ缶またはその他のデータコレクタと通信する従来のペースメーカのペン型スキャナ等の機器であってもよい。データコレクタ106と外部機器との間の通信について、以下の第IV節で説明する。
【0020】
プラットフォーム100は、移植可能な医療機器としてみなされ得る任意の数の動力源102および遠隔機器104を含むことができる。いくつかの実施形態において、患者のための種々の診断および/または治療活動を実行するために、患者の体内にセンサ/エフェクタネットワーク(システム)が生成され得る。例えば、
図2は、体内の種々の位置に複数の遠隔機器204、205、206が移植された患者200を示す。遠隔機器204、205、206は、同じ機器の複数のインスタンスであってもよく、パラメータの局所的な変動を計測および/または種々のアクションを局所的に実行することを可能にする。あるいは、遠隔機器204、205、206は、センサ、エフェクタ、および送信器の任意の組み合わせを含む、異なる機器であってもよい。いくつかの実施形態において、各機器は、(i)患者の体との準静電結合を介して信号を送信すること、および(ii)患者の体との準静電結合を介して、送信された信号を受信すること、のうち少なくとも1つを行うように構成される。所与のシステム内にある遠隔機器の数は変動してよく、2以上、3以上、5以上、約10以上、約25以上、約50以上等であってもよい。データコレクタ208はアンテナ210を装備し、遠隔機器204、205、206によって送信された信号を検出する。遠隔機器は信号を無線で有利に送信するため、患者の体にワイヤを通すのが困難であることによってプラットフォームの用途が限定されるものではない。むしろ、明らかになるように、患者の体内における遠隔機器の数および設置は、望ましい位置に移植され得るスケールの機器を製造する能力によってのみ限定される。センサネットワークの特定の例について、以下の第VおよびVI節において説明する。
【0021】
以下の考察は、ある患者に関して提供されるものである。本願において使用する場合、「患者」という用語は、動物等の生物をいう。いくつかの実施形態において、動物は「哺乳類」または「哺乳動物」であり、ここでこれらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、ネズミ目(例えば、マウス(小型ネズミ)、テンジクネズミ、およびラット(大型ネズミ))、ウサギ目(例えば、ウサギ)、ならびに霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む、哺乳網の有機体を表現するために広く使用される。いくつかの実施形態において、被検体、例えば患者は、ヒトである。
【0022】
II.遠隔機器
本願で使用する場合、「遠隔機器」という用語は、例えば移植または摂取によって患者の体内に入り、体内にある間に、診断的および/または治療的重要性を持ついくつかの作用を実行することができる、任意の電子、電気機械、または機械機器を含む。いくつかの実施形態において、遠隔機器は、体の内部または外部にある他の部分に位置付けられたその他任意の機器との有線接続を必要としない。
【0023】
遠隔機器は、望ましい生理的機能を妨害することなく動作するよう、適切なサイズ、形状、および構成にされていれば、体内のどこに位置付けられていてもよい。遠隔機器を位置付けることができるエリアの例として、胃腸管の内部または外部、尿道の内部または外部、生殖器官の内部または外部、血管の内部または外部、種々の臓器(例えば、心臓、脳、胃等)の内部または外部、手術部位もしくは創傷位置またはその付近、腫瘍部位またはその付近、腹腔内、関節内またはその付近等を含むがこれらに限定されない。
【0024】
本発明の範囲内において、遠隔機器の異なる実施形態によって異なるアクションを実行することができる。本明細書の目的のために、これらのアクションは、遠隔機器内の異なる「ユニット」−生理的機能の何らかの性状を計測するセンサ、生理的機能の何らかの性状に影響を及ぼすアクションを実行するエフェクタ、および遠隔機器からデータコレクタへ情報を送信する送信器−として特徴付けられる。以下の節では、各種のユニットの例について説明する。遠隔機器の所与の実施形態は、これらのユニットのあらゆる組み合わせおよび一種類のユニットについて任意の数のインスタンスを含み得ることを理解すべきである。
【0025】
例えば、遠隔機器の第一の部類は、送信器ユニットと結合されたセンサユニットを含む。センサは何らかの生理的に適切なパラメータを計測し、送信器は計測結果をさらに使用するためにデータコレクタへ送信する。遠隔機器の第二の部類は、例えば当該機器に存在するセンサおよび/または遠隔ユニットから受信信号を受けて作動する、エフェクタユニットを含む。これら部類の機器のいくつかにおいて、当該機器は、エフェクタユニットに結合されたセンサユニットを含む。センサは何らかの生理的に適切なパラメータを計測し、エフェクタユニットはセンサの計測結果に基づいて作動する(または作動しない)。この部類におけるいくつかの実施形態では、送信器ユニットも含まれ、センサデータおよび/またはエフェクタユニットの作用を示す信号を送信することができる。遠隔機器の第三の部類は、動力源によって動力が提供されるといつでも作動するエフェクタユニットを含む(
図1参照)。この部類の実施形態において、動力源は、医師または患者の制御下にあってもよいし、患者体内の他の部分にある、異なる遠隔ユニット内のセンサから信号を受信し、受信されたセンサ信号に基づいて、エフェクタを作動させるか否かを決定する、データコレクタによって制御されてもよい。この部類のいくつかの実施形態は、例えばエフェクタの存在またはエフェクタが所与の時点で動作中であるか否かを示す信号を生成する送信器も含み得る。遠隔機器の第四の部類は、動力源によって動力が提供されるといつでも信号(例えば、識別信号)を生成する送信器のみを含む(
図1参照)。この部類の実施形態例を、以下の第V節Aに記述する。
【0026】
A.センサ
本願で使用する場合、「センサ」(または「センサユニット」)は、体の生理的機能に関連する特性を計測することができる遠隔機器の任意のコンポーネントを含む。(ここでは計測結果を「データ」と称する。)センサは、適切なデータコレクタにデータを送信してもよいし、データに基づいて、同じ遠隔機器内の関連するエフェクタユニットの動作を制御してもよいし、これらの両方を行ってもよい。センサユニットの例は、以下を含むがこれらに限定されるものではない。
【0027】
(1)流量センサ
本発明で用いられ得るセンサの一実施形態は流量センサであり、そのようなセンサは、生理液の流量のパラメータを計測する。概してセンサは、種々の異なる生理液のうちいずれかの流量のパラメータを決定するように構成されることができ、いくつかの実施形態において関心が持たれているのは、血流のパラメータを決定するように構成されたセンサである。したがって、説明を容易にするため、本発明の流量センサ実施形態を、主として血流センサの観点からさらに記述する。
【0028】
そこで、本発明の一実施形態は、流速および/またはヘマトクリット値(患者の血液の赤血球で構成される容量パーセント)を計測することができる血流センサに関するものである。これらの計測結果を使用して、種々の生理的条件を検出することができる。例えば、「一回拍出量」−すなわち、心周期あたり心臓を流出入する血液の容積−は、動脈(例えば、大動脈)または静脈(例えば、大静脈)における血流速度を計測し、血管の断面積および心周期の持続時間を使用して一回拍出量を算定することによって測定され得る。別の例として、循環障害(例えば、閉塞)も血流測定によって検出され得る。体組織がより活動的になると、より多くの酸素(したがってより多くの血流)が必要になることから、生理作用(例えば、消化、脳活動、腫瘍増殖または縮小等)における局所変化は、体の関連領域内での血流の変化によって検出され得る。これらまたはその他の使用法のいずれも、血流データから作られることができ、センサが用いられる特定の用途は、本発明とは関連がない。
【0029】
一実施形態において、血流センサは抵抗血流センサである。別の実施形態において、血流センサは電磁式血流センサである。
【0030】
(2)圧力センサ
本発明の一実施形態は、体内のある位置における圧力または圧力の変化を検出することができる圧力センサに関するものである。圧力センサは、例えば、当該技術分野では既知であるように、変形させると電荷を生成する圧電性結晶を使用して実装され得る。電荷は、収集および計測され得る。いくつかの実施形態において、圧力センサは、基板上に載置された可撓性部材(例えば、プレーナ構造)を含む。可撓性部材は2つの露出面を有し、当該露出面の1つには、ひずみ変換器(例えば、圧電変換器であってもよい)が載置されているかまたは間接的に取り付けられている。当該変換器は、圧力変化に起因する可撓性部材の変形を受けて、電気信号を生成する。これらの実施形態において、圧力センサは、長期間にわたって安定した読み出しを提供できるよう、低ドリフトで実装され得る。本発明の実施形態において使用され得る圧力センサの例は、米国特許第7,073,387号、第7,066,031号、第7,028,550号、第7,013,734号、および第7,007,551号に記載されているものを含むがこれらに限定されず、これらの開示は参照することにより本願に組み込まれる。その他の種類の圧力センサを使用してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、センサは単に圧力変化の有無を登録し、その他の実施形態において、センサは、例えば収集された電荷の量、電流の量または電位差等を決定することによって、圧力変化を定量化する。圧力センサには多数の使用法がある。例えば、心臓は一定の間隔で伸縮し、圧力センサでの変化する圧力を使用して心臓の動きを計測することができる。血圧を計測することもできる。また、適切に設置された圧力センサを使用して、胃および腸収縮、子宮収縮(例えば、妊娠中)、筋肉のけいれん等を含むがこれらに限定されないその他あらゆる筋肉の動きを検出することができる。腫瘍部位に設置された圧力センサを使用して、腫瘍の増殖または縮小を計測することもできる。腫瘍が増殖すると、周囲組織に対するその圧力は増大し、腫瘍が縮小すると、圧力は減少する。
【0032】
(3)化学的特性および組成
本発明のさらなる実施形態は、体内にある物質(例えば、血液、胃液等)の化学的特性および/または組成を検出するように設計されたセンサに関するものである。化学センサの1つのカテゴリは、pH等の一般的な化学的特性に関するものである。化学センサのその他のカテゴリは、特定の物質の有無または濃度を検出することに関するものである。例えば、酸素、二酸化炭素、グルコース、酵素、血液中の凝固因子、抗体、バクテリア、癌マーカー等はすべて、適切に構成されたセンサを使用して検出され得る。一実施形態において、抗体は、抗体用の受容体分子が取り付けられたナノチューブを持つナノスケールセンサを設計することによって検出され得る。当該センサは、抗体が受容体分子に結合した際に、電流がナノチューブ内を流れ、検出されるように配列される。そのようなセンサの例は当該技術分野において既知であり、本発明の実施形態に用いられ得る。
【0033】
化学センサは、多様な用途を有する。例えば、糖尿病患者において、センサが受容不可能なほど高いグルコースレベルを検出すると、当該センサは、インスリンを患者の体内に放出するエフェクタを作動させるか、または、データコレクタを介して、インスリンを注射するよう患者に勧告する信号を外部機器へ送信することができる。抗体および/またはバクテリアを検出するように構成されたセンサは、手術部位または腫瘍部位において、外部観察者に徴候が明らかになる前に感染を検出するために使用される場合がある。癌マーカーを検出するように構成されたセンサは、再発または初期発症の早期発見を容易にするために、元癌患者または高リスク患者に移植されてもよい。本開示を利用することにより、当業者にはその他多くの用途が明らかとなるであろう。
【0034】
(4)電気的特性
本発明の別の実施形態は、伝導率、抵抗、電位等の電気的特性に関するものである。いくつかの場合において、これらの特性は生理的パラメータの間接計測として使用され、例えば、血液の抵抗を使用して上述したように流速を決定することができる。その他の実施形態において、電気的特性は、体内における心臓またはその他の構造体の場所および/または変位を計測する「電気的断層撮影」に使用され得る。そのようなシステム1つにおいて、3つ(またはそれ以上)の電極が使用され、少なくとも1つは心臓内にあり(すなわち、心臓内に移植される)、その他(「電界電極」)は比較的静止した(すなわち、心臓とともに動かない)エリアに置かれる。電界電極間に電場が生成され、心臓内電極が電場の振幅を検知する。心臓の収縮により心臓内電極が電界電極に対して移動すると、検知電極は電場内を移動し、検知される電位が変動する。これらの変動から、収縮の大きさおよびタイミングを含む心臓機能に関する情報を導き出し、診断的および/または治療的目的のために使用することができる。電気的断層撮影システムおよび方法を含む連続場の例は、WO2006/042039として公開された係属中の出願番号PCT/US2005/036035号において記述されており、その優先権出願を含むこれらの開示は、参照することにより組み込まれる。
【0035】
その他の実施形態、例えば神経学への応用においては、電気的特性が直接的な関心の対象となり得る。例えば、種々の治療法が病気を改善させているか悪化させているかを判断するために、反復運動過多損傷(Repetitive Stress Injury;RSI)患者の神経機能を監視することができる。
【0036】
(5)熱的特性
本発明のさらに別の実施形態は、温度、熱伝導率等の熱的特性に関するものである。当該技術分野において既知の技術を使用してマイクロスケールまたはより小型の熱電素子を作り、体内の種々の部位に移植することができる。温度変化または絶対温度計測を使用して、何らかの組織、臓器、またはシステムにおける生理作用の増大を識別することができる(例えば、血流ひいては胃腸管内の温度は、概して消化中に上昇する)。創傷部位または手術部位において、局所的な温度上昇を検出し、感染可能性の徴候として認識することもできる。
【0037】
(6)放射線被曝
別の実施形態は、何らかの組織における放射線被曝を検知することに関するものである。放射線センサは、放射線治療中、腫瘍部位および/または周囲組織に移植されることができ、当該センサからの読み出し結果は、放射線が意図された標的または健康な組織のいずれに送達されているかについてのリアルタイム情報を提供することができ、送達システムの調整を可能にする。
【0038】
所望のセンサは、本発明の発明者らの少なくとも幾人かによる以下の出願:米国特許出願第10/734,490号および第11/219,305号;国際出願PCT/US2005/046815号;米国特許出願第11/324,196号;米国特許出願第10/764,429号;米国特許出願第10/764,127号;米国特許出願第10/764,125号;国際出願PCT/US2005/046815号;米国出願第11/368,259号;国際出願PCT/US2004/041430号;米国特許出願第11/249,152号;および国際出願番号PCT/USUS05/39535号に記載されているセンサをさらに含むが、これらに限定されない。これらの出願は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0039】
前述の一覧は例示的なものであり、本発明の範囲内のセンサは、光学的特性(例えば、遠隔カメラ、無線腹腔鏡等)、機械的特性(例えば、筋肉または腱への緊張)、寸法または容積特性、電気伝導率データ、電位データ、熱伝導率データ、粘度データ等を含むがこれらに限定されない、所望の任意の特性を監視するように構成され得ることが、十分に理解されるであろう。
【0040】
B.エフェクタ
本願で使用する場合「エフェクタ」(または「エフェクタユニット」)という用語は、制御信号を受けて、患者の生理的機能における何らかの性状に影響を及ぼすアクションを実行することができる遠隔機器の任意のコンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、制御信号は、同じ遠隔機器上にあるセンサユニットによって生成される。例えば、
図3は、センサ302および制御論理304を(例えば、回路/ハードウェアおよび/またはソフトウェア実装の形で)含む遠隔機器300と、この場合は、患者の組織(図示せず)に電気刺激(例えば、電流または電圧パルス)を送ることができるよう、当該組織に接触して設置された電極308を含むエフェクタ306と、を示す。エフェクタは電気刺激以外の機能(いくつかの例を以下に記述する)を実行することが可能であり、したがってすべてのエフェクタが
図3に示すような刺激電極を含むわけではないことを理解すべきである。
【0041】
動作中、遠隔機器300に動力が印加されると、センサ302は、生理的パラメータ(または、物理的パラメータに関連する抵抗等の量)の計測を実行し、その計測結果(M)を制御論理304に提供する。制御論理304は、結果Mを処理して、エフェクタ306を作動させるべきか否か判断する。作動させるべきであれば、制御論理304は活性化信号を線310上でエフェクタ306に送り、当該エフェクタが電極308を動作させて患者の組織に刺激を印加する。活性化信号は、バイナリ(オン/オフ)信号であってもよいし、複数レベル、例えば刺激の強度を有するものであってもよい。刺激の持続時間も、制御信号を受けて変動し得る。
【0042】
その他の実施形態において、エフェクタは、その他何らかの移植可能な機器または外部機器から、無線で制御信号を受信する。例えば、体内の一箇所に位置付けられたセンサは、他の部分に位置付けられたエフェクタへ無線で(例えば、以下で説明するように)信号を送信することができる。この構成は、生理的条件の発現を検出するための最適位置が、治療を適用するための最適位置と異なる状況において有用となり得る。
【0043】
さらに他の実施形態において、エフェクタは十分な動力を受けるといつでも動作し、エフェクタへの動力の印加は制御信号としての役割を果たす。例えば、
図4は、エフェクタ402に無線で(以下の第III節Aにおいて記述するように)動力を送る動力源400を示す。エフェクタ402が電極404を動作させるために十分な動力を有する場合はいつでも、当該動作を行う(ここでも、刺激電極は例示目的で使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである)。
【0044】
いくつかの実施形態において、エフェクタを、識別信号、および/または、エフェクタの動作(例えば、エフェクタが作動している場合、当該エフェクタはどのレベルで作動しているか等)についての情報を担持する信号を送信する送信器ユニットと対にしてもよい。エフェクタユニットの例は、以下を含むがこれらに限定されない。
【0045】
(1)薬物送達
エフェクタの一実施形態は、薬物(すなわち、任意の薬理的活性物質)を充填したチャンバと、制御信号を受けて、当該薬物をチャンバから患者の体内へ放出または噴出するための機構とを含む。薬物は、制御された用量サイズで放出されることができ、エフェクタは複数用量を搭載し得る。例えば、エフェクタをインスリンで充填し、血液中のグルコースレベルを計測するセンサに結合してよい。グルコースレベルがある閾値を超えて上がると、エフェクタが作動し、一回分のインスリンを送達する。その他の材料(例えば、化学的および/または神経学的溶出材料)も同様に、移植可能な遠隔エフェクタを介して送達され得る。
【0046】
(2)電気刺激
エフェクタの別の実施形態は、制御信号を受けて体内の望ましい点に電気刺激(電流および/または電圧)を送るために、制御可能に荷電され得る電極を含む。そのような電気刺激は、例えば、筋肉の収縮を開始またはそれに対抗するため、心臓細動除去の治療または診断目的で(例えば、特定のエリアまたは神経における神経損傷を防止または検出するために)神経を刺激するため等に使用され得る。
【0047】
(3)機械的刺激または操作
エフェクタの別の実施形態は、望ましいエリアに機械的刺激または圧力を印加することができる変形可能または移動可能な部品を含む。例えば、電流が印加されると変形する圧電性結晶を使用して、種々の臓器を操作する等のために血管または筋肉に圧力を印加することができる。また、マイクロスケールまたはナノスケールロボットシステムといった未来技術を、本発明の範囲内のエフェクタとして用いることができる。
【0048】
(4)温度制御
エフェクタの別の実施形態は、電流または電圧が印加されると熱を生成することができる熱源(例えば、抵抗素子)を含む。そのようなエフェクタは、例えば治癒を促進するために、損傷した筋肉に直接的に熱を印加する際等に使用することができる。
【0049】
(5)材料の捕捉
エフェクタの別の実施形態は、初めは空であるがエフェクタの作用によって材料を充填することができるチャンバを含む。例えば、エフェクタは、患者の消化管に摂取され、いくつかの適切な条件下でそのチャンバを開くように作動されてもよく、患者の胃または腸の内容物の試料を当該チャンバに充填することを可能にする。エフェクタは、その位置で内容物を分析するセンサと対にされてもよいし、エフェクタは、消化管を通過し、体を出た後で分析のために回収されるカプセル内にあってもよい。
【0050】
(6)放射線放出
エフェクタの別の実施形態は、遮蔽された放射線源と、制御信号を受けて当該遮蔽物の少なくとも一部を除去および置換するための機構とを含む。そのようなエフェクタを使用して、診断的または治療的目的のための放射線を提供することができる。
【0051】
前述の一覧は例示的なものであり、本発明の範囲内のエフェクタは、任意の診断的または治療的目的であらゆる種類の動作を実行するように構成され得ることが、十分に理解されるであろう。例えば、エフェクタは、電位を設定する、光を発する、音波または超音波エネルギーを発する、放射線を発する等のアクションを実行することもできる。
【0052】
C.送信器
本願で使用する場合、遠隔機器内の「送信器」(または送信器ユニット)は、体の導電性組織との直接的または近接場電気的結合を使用し、体内を通って無線で信号を送信するコンポーネントである。信号は、若干の情報を担持する。情報の例は、機器が動作可能であることを示すプレゼンスインジケータ(例えば、識別コード)、遠隔機器内のセンサユニットから生成される計測値、遠隔機器内のエフェクタユニットの作用の発現および/または作用のレベルを示す信号、体内の他の部分にある遠隔機器内に位置付けられたエフェクタを制御する制御信号等を含むがこれらに限定されない。遠隔機器の状態または動作に関するあらゆる情報は、信号に形成され、送信器ユニットによって送信されることができる。
【0053】
図5は、本発明の一実施形態による、遠隔機器用の送信器500のブロック図である。この実施形態において、送信器500は、遠隔機器のセンサユニット(図示せず)によって作られた計測結果を表す信号Mを受信する。送信器500は、制御論理502と、発振器504と、電極ドライバ506と、アンテナ508(この場合、電気双極子アンテナとして動作される一対の電極)とを含む。動作中、発振器504は、制御論理502からの信号を受けて発振信号(波形)を生成する。制御論理502からの信号は発振器を起動または停止することができ、いくつかの実施形態においては、振幅、周波数、および/または位相等、発振信号の1つ以上の性状を決定付けることができる。発振器504は、電極ドライバ506に波形を提供し、当該ドライバは、体組織または体液の導電媒質へ信号を送信するために、アンテナ508上で電流または電圧を駆動する。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1節に記述するように、情報を送信するために「準静電」または「近接場」結合プロトコルが使用される。第2節では、近接場結合用に設計された小型アンテナの例について記述し、第3節では、送信された信号内の情報量を符号化するために使用され得る変調技術について記述する。
【0055】
1.近接場伝送
当該技術分野で知られているように(例えば、J.D.Jackson、Classical Electrodynamics、第二版、394〜396ページ(1975年)を参照)、角周波数ωおよび対応する波数k(ここで、k=ω/cであり、cは適切な媒質中における光の速度である)を持つ振動電気双極子アンテナの放射線の電場(E)および磁場(B)が、方程式:
【0056】
【数1】
によって求められる。ここで、nは、双極子源の中心から、当該源から距離rのところにある位置xへの方向における単位ベクトルであり、pは、
【0057】
【数2】
によって求められる電荷の空間統合密度である。
【0058】
方程式(1)および(2)から分かるように、r>>λ(ここで、波長λ=2π/k)である「非近接場」領域においては、電場および磁場は、1/rのように距離に伴って減少する項によって支配される。この領域において、相互に直交する電場および磁場は、空間を通って信号を伝播するために、互いを情報源として利用する。λ〜rである場合、方程式(1)および(2)中の項1/r
2(「誘導」)が重要になり、λ>>rである場合、1/r
3のように変動するさらなる準静電項も重要になる。
【0059】
従来のRF通信は、距離r〜λからr>>λで行われる。例えば、ペースメーカ等の移植可能な医療機器は一般に、人体のスケールよりも幾分小さい、0.75メートルの波長に対応する405−MHz周波数帯域において通信する。当該技術分野において既知であるように、体内の構造体が放射線を吸収し始めて望ましくない信号損失をもたらすことから、有利にはより高い周波数は使用されず、また、エネルギーのほとんどが、従来のアンテナを使用して検知され得る非近接場コンポーネントよりも誘導および/または準静的場コンポーネントに方向を変えられることから、実質的により低い周波数(より長い波長)は概して望ましくないとみなされる。中継器およびベースユニットを持つRFID用途では、中継器からベースユニットに動力を送信するために、一般にr〜λであるような波長を使用し、概して電磁誘導に依存することにも留意すべきである。
【0060】
これらの手法とは対照的に、本発明の送信器実施形態は、患者の体内において情報を通信するために、人体よりもはるかに大きい波長(λ>>1メートル)において有利に動作する。例えば、いくつかの実施形態において、有利には、(空中で)3km前後の波長に対応する、およそ100kHzの周波数が使用される。波長λと比較すると短い距離rでは、方程式(1)および(2)中の準静電場項が支配し、そのため、伝播する信号は、電磁気というより大部分が電気的となる。そのような信号は、人体等の導電媒質内において容易に伝播する。例えば、100kHzの周波数およびおよそ1〜2メートルの距離において、方程式(2)の準静的(1/r
3)コンポーネントは、非近接場(1/r)コンポーネントよりもおよそ10
6倍強いものであると推定される。したがって、近接場結合を使用する長波長信号通信が効率的である。さらに、信号は比較的短距離(一般に2メートル以下)を移動することが必要であるため、検出可能な信号は極めて小型のアンテナを使用して送信され得る。
【0061】
信号の伝送には、広範な周波数が使用され得る。いくつかの実施形態において、AMラジオの周波数範囲(約500〜1700kHz)を下回る、RFスペクトルの「LF」帯域(30〜300kHzとして定義される低周波数)内である。LF帯域内で、160〜190kHzの範囲がFCC(Federal Communications Commission;連邦通信委員会)によって実験的な使用用に指定され、外部信号強度の上限が特定されている。以下で記述するように信号の大半が患者の体内に閉じ込められる本発明の実施形態においては、この実験帯域が使用され得る。
【0062】
しかしながら、本発明は、160〜190kHz帯域にもLF(30〜300kHz帯域)にも限定されない。より低い帯域も使用することができ、例えばVLF帯域(3〜30kHz、空中10〜100kmの波長)において、信号は10〜40メートルの距離まで水を貫通することができる。人体の電気的特性は塩水のものと同様であるため、この帯域内の信号も容易に体を通って伝播することができ、用いられ得る。したがって、人体よりも少なくとも一桁長い波長に対応するあらゆる周波数帯域−例えば、λ〜10m以上、または
30MHz以下のオーダーの周波数−が使用され得る。
【0063】
使用する信号の周波数に必ずしも下限はないが、いくつかの実用上の配慮点が周波数の選定に影響を及ぼし得る。例えば、人体は、60Hz(米国)または世界の他の地域では同様の周波数で動作する、付近の交流電源機器によって誘導された低レベル発信信号を担持していることがよく知られている。交流電源システムによって引き起こされる干渉を回避するために、約55〜約65Hz等、60Hz付近の周波数は、いくつかの実施形態においては使用されない。また、当該技術分野において既知であるように、より長い波長は、より低い情報転送速度と相関しており、長波長(例えば、3kHz〜30kHzのVLF帯域を下回る)における情報転送容量は、特定のシステム内で転送される情報の量には小さすぎる場合がある。さらに、より長い波長は、検出可能な信号を発生させるために概してより長い双極子アンテナを必要とし、ある点で、当該アンテナのサイズは周波数選択における制限要因となり得る。
【0064】
本発明のいくつかの態様によると、周波数の適切な選定をした場合、極めて小型のアンテナを使用して、生体内の受信器へ移動するのに十分な強度の信号を生成することができる。例えば、長さがわずか数ミリメートルの双極子アンテナによって生成された100kHzの信号は、1〜2メートル離れて設置された受信器アンテナまで伝播され得る。この準静電伝送は、移植可能なアンテナが、導電媒体、具体的には患者の組織と直接接触しているという事実によって補助されると考えられている。電気的特性を分析する目的で、塩水のそれと同程度の電気的特性を持つ電解質溶液を、ヒト組織に見立ててよい。したがって、電解質浴中のように、振動双極子アンテナによって作成された準静電場は、体内において振動電流を誘導する。体の固有電気抵抗(塩水と同程度のもの)の結果として、振動電流は、体内において適切な受信器を使用して検知され得る振動電位変動を作成する。(例えば、Landauら、Electrodynamics of Continuous Media、第三章(1960年)を参照。)適切な受信器の例として、約20cmの軸を持つ双極子、または、約10〜約100cmの長さを持つその他任意の移植可能なワイヤを作成する、ペースメーカのリードが挙げられる。
【0065】
これらの電流は、近接場における電流フローが非近接場における動力損失をもたらす従来のRF通信という状況では、望ましくないということに留意すべきである。事実上、多くのRF送信器は、近接場漏電電流を最小化するように設計された機器を含む。本発明の近接場送信器においては、そのような電流を最大化することが望ましい。
【0066】
さらに、準静電信号の場合、患者の皮膚は導電バリアとして有利に作用し、当該信号を患者の体内に閉じ込める。これは、信号を体内に閉じ込めるとともに、外部の迷走信号が体を貫通し、送信された信号内にノイズまたは干渉を作成することを困難にする。信号の閉じ込めは、近接場信号の1/r
3減退をある程度まで軽減し、所要電力をさらに削減することができる。そのような効果は、研究所において、水/空気界面が導電バリアとして作用する例えば塩水浴中等で観測された。ELF(3〜30Hz)およびSLF(30〜300Hz)帯域内におけるRF伝送を介した潜水艦との通信において、同様の効果が観測されている。これらの効果は、ソナー通信においても観測されており、ソナーは情報を送信するために電場または電磁場よりもむしろ音場を使用するが、水の表面が音響エネルギーの導電バリアとして作用し、距離に伴う信号強度の減退を軽減する。
【0067】
これらの現象の結果として、患者の体内で検出可能な近接場信号を作成するためには、極めて小型のアンテナおよび小型動力源を持つ送信器で十分である。例えば、アンテナは、長さ数ミリメートル以下で、数ミリメートルの間隔で隔てられ、振動電気双極子を作成するために印加される逆位相の振動電圧を持つ一対の電極によって形成され得る。そのようなアンテナは、体内のほぼどこにでも配置され得る。
【0068】
さらに、いくつかの実施形態において、周波数、送信器アンテナの長さ、および受信器アンテナの長さは、検出可能な信号を発生させるのに数ミリワットの動力しか必要としないようなものが選択され、この場合、従来のRF通信(例えば405MHz前後)は少なくとも数ミリワットを必要とするであろう。したがって、ごく少量の動力を発生させる極めてコンパクトな電源を使用することができ、その例について以下の第IV節で記述する。
【0069】
準静電送信器は、センサおよび/またはエフェクタと組み合わせて、種々の移植可能なまたは摂取可能な遠隔機器に組み込まれることができる。送信器は、センサもエフェクタも持たない遠隔機器として構成されてもよく、この場合、当該送信器は、動力が供給されるたびに、または制御信号を受信した際に送信を行う。
【0070】
送信器は、望ましいあらゆる種類の情報を送信することができる。いくつかの実施形態において、送信器は、例えば所定の識別信号を送信することによって、単にプレゼンスインジケータとして作用することができる。その他の実施形態において、送信器はセンサ機器に組み込まれ、識別信号に加えて、またはその代わりに、センサデータを送信する。
【0071】
また、いくつかの実施形態において、送信器は、例えば、当該送信器がその一部を成す遠隔機器内のエフェクタユニットまたはセンサユニットを活性化または非活性化させるための命令を受信するために、受信器として動作されてもよい。そのような命令は、上述したように、準静電近接場結合を使用して送信され得る。
【0072】
2.アンテナ
いくつかの実施形態において、信号を送信するために、電気双極子または電気単極子アンテナを使用する。
図5(上述)は、双極子アンテナを図示している。発振器504は、電極ドライバ506に駆動信号(φおよび本願において/φとして表示される反転信号)を提供する。
図6は、従来のCMOSドライバ回路を使用して実装される双極子電極ドライバ600の詳細を示す回路図である。電極602は、駆動信号φを受けてトランジスタ604、606によって電位E
0まで駆動され、一方、電極608は、反転駆動信号/φを受けて、トランジスタ610、612によって電位E
1まで駆動される。駆動信号φおよび/φは逆位相で振動するため、電位E
0およびE
1も逆位相で振動する。ドライバ600および本願に記載されているその他すべての電子回路は、当該技術分野において既知であるサブミクロンCMOS処理技術を使用して実装され得るため、回路のサイズは遠隔機器のサイズの制限要因ではないことが十分理解されるであろう。
【0073】
いくつかの実施形態において、
図5の双極子アンテナを単極子アンテナで代用することができる。
図7は、従来のCMOS集積回路において実装され得る単極子アンテナ用のドライバ回路を図示している。このアンテナドライバは、概して、
図6のドライバ回路の片方と同様であり、ドライバトランジスタ702、704は、駆動信号φを受けて単一の電極706を電位E
mまで駆動する。
【0074】
双極子または単極子の場合、ドライバ回路は、端子V+とV−との間の電位差(ΔV)によって動力供給される。この電位差は、必要に応じて、一定であっても可変であってもよく、以下の第III節において記述するように、動力源によって有利に提供される。
【0075】
3.変調技術
図5を再度参照すると、いくつかの実施形態において、発振器504は一定の周波数で動作する。一定周波数信号の受信自体が、例えば遠隔機器が存在し、動作可能であるといった有用な情報を提供し得る。いくつかの実施形態において、発振器504は、追加情報を符号化するようにその信号を変調する。
【0076】
一般に、周波数、振幅、位相、またはそれらの任意の組み合わせ等、送信された信号の何らかの特性を変調する(変動させる)ことによって、種々の手法で情報を符号化することができる。当該技術分野において既知である変調技術を用いてよい。
【0077】
一般に、アナログまたはデジタル技術を使用して情報を送信することができる。「アナログ技術」は、概して、調整された特性が異なる程度変動し、当該変動度は、送信される情報を表す値と相関されているインスタンスをいう。例えば、送信器500が、遠隔機器内の関連付けられたセンサによって計測された量Mを送信していると思われる。発振器504は、ある範囲の周波数で動作するように設計されることができ、最小周波数は量Mの最小値に対応し、最大周波数は量Mの最大値に対応し、最大値と最小値との間の周波数は、(例えば、線形補間、指数関数補間等を使用して)Mの中間値に位置する。
【0078】
「デジタル技術」は、概して、送信される情報が一連の二進数(ビット)として表され、信号はビットストリームに基づいて調整される、インスタンスをいう。例えば、ここでも、送信器500は、遠隔機器内の関連付けられたセンサによって計測された量Mを、しかしデジタル技術を使用して、送信していると思われる。発振器504は、少なくとも2つの異なる周波数で動作するように設計されてよく、ここで一方の周波数はビット値0に対応し、もう一方の周波数はビット値1に対応する。
【0079】
本発明の実施形態において、情報を送信するために、アナログ技術、デジタル技術、またはそれらの組み合わせを使用してよい。また、種々の種類の変調が実装され得る。
【0080】
例えば、一実施形態において、周波数変調が使用される。発振器504は、電圧制御発振器(Voltage−Controlled Oscillator;VCO)であってよく、既知の発振回路は、印加された電圧によって発振周波数が決まる。制御論理502は、(例えば、計測データの値Mを反映して)適切な電圧を供給し、信号の周波数はデータの値を示す。
【0081】
別の実施形態において、振幅変調が使用され、例えば、振幅を制御するために、駆動信号φおよび/φの振幅が変動してもよいし、駆動回路の正および負のレール(例えば、
図6および7のV+およびV−)が変動してもよい。
【0082】
別の実施形態において、位相変調が使用される。例えば、デジタル信号伝送において、一方の位相はビット値0に対応し、逆の位相はビット値1に対応し、位相偏移は遷移を表す。発振器504は、駆動信号φおよび/φを、
図6に示すようなドライバ回路の入力に直接的に接続する、または交差接続する、スイッチ回路を含み得る。制御論理502は、ビットストリームに対応する接続を確立し切り換えるように、スイッチ回路を制御する。
【0083】
必要に応じて、周波数振幅、振幅変調、および/または位相変調の組み合わせを使用してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、送信器は、遠隔機器を表す一意識別子を含み、遠隔機器からの情報(例えば、計測された、または動作パラメータM)も提供する「パケット」を送信することができる。一意識別子を送信することは、送信器を持つ複数の遠隔機器が同じ患者内に存在する場合において特に有用となり得る。異なる周波数帯域で異なる送信器を動作すること、その周波数によって各送信器が識別されるようにすること、および/または、異なる送信器が異なる(かつ既知の)時刻に送信するように構成し、送信する際に送信器が識別されるようにすることを含む、異なる送信器を区別するためのその他の技術を使用してもよい。
【0085】
D.遠隔機器のさらなる態様
より一般的には、いかなる数の遠隔機器を設けてもよく、各遠隔機器は、1つ以上のユニットを(センサおよび/またはエフェクタおよび/または送信器を任意の組み合わせで)含んでもよい。送信器は、中央データコレクタおよび/または1つ以上のその他の遠隔機器に信号を送信することができ、いくつかの実施形態においては、そこから信号を受信することもできる。いくつかの場合において、遠隔機器上の異なるユニットは、中央コレクタによって何らかの手法で識別可能となるであろう。例えば、単一の遠隔機器の異なるセンサまたはエフェクタユニットは、アドレス指定可能なものであってよく、異なる周波数を使用して異なる時刻に信号を送信する等ができ、異なる送信器からの伝送は、当該伝送が関係するセンサ、エフェクタ、または送信器を識別する識別コードを含み得る。外部のデジタルまたはその他のコントローラまたは回路が、ユニットの動作を選択的に動力供給、作動、または開始することを可能にするために、デジタルまたはその他のスイッチング回路がユニットに設けられたいくつかの例においては、少なくともアドレス指定可能なユニット、特にアドレス指定可能なエフェクタが好ましい。
【0086】
遠隔機器は、半導体基板等の担体上に作製されることができ、種々のユニット(センサおよび/または送信器および/またはエフェクタ)が、必要に応じて、当該担体の表面に載置され得る、および/または、本体内に配置され得る。適切なサイズおよび形状の遠隔機器は、1つ以上の心室内、動脈または静脈血管系内、脳組織内または上、尿道内、胃腸管または生殖器官、腹腔内、関節腔内等を含む、体内の事実上どこにでも設置され得る。当該機器は、多様な病状を診断、監視、および/または治療するために動作され得る。
【0087】
III.動力源
第II節において説明したような種類の遠隔機器は、いくつかの実施形態において、その中に含まれ得る任意のセンサユニット、エフェクタユニット、または送信器ユニットを動作させるために動力を必要とする。本発明は特定の動力源を使用することに限定されるものではなく、特定の用途に適したあらゆる動力源が用いられ得る。
【0088】
A.近接場ブロードキャスト動力
一実施形態において、準静電結合を使用して無線で動力が送られる。当該動作は、第II節Cの1に記載された信号伝送と略同様である。この事例における受信器は、受信された電流によって動力供給される回路を含む。いくつかの実施形態において、受信器は、受信された電流によって充電され、後に有用な作業(例えば、検知、実効化、および/または送信)を抽出するために放電されるストレージデバイス(例えば、コンデンサ、化学電池等)も含む。
【0089】
体を通して無線で動力をブロードキャストすることの可能性は、
図8に示す実験装置において実証されている。約20cmの間隔を空けられた大型の銅電極802が生理食塩水浴804中に浸され、従来の波生成器806に接続されている。約5mm幅の「T」字に分かれ、各端部の絶縁材を約1mm剥離した細いツイストペア線で小型双極子アンテナ808を構成し、電極802から離れた位置で生理食塩水浴804に浸した。アンテナ808を、ショットキダイオードで構築されたフルブリッジ整流器810(それぞれが約0.5Vの閾値電圧を有するため、当該整流器は、アンテナ808全体の電位差が約1Vを超える場合に動作可能である)全体に接続した。ブリッジのその他のアーム全体に、2−MΩ可変抵抗器812を含む変動荷重を電流計814と直列に接続した。あらゆる電位差を計測するため、差動増幅器816を当該荷重全体に接続した。
【0090】
この配置は、
図9に図示する臨床使用実施形態と同様である。患者900は、自身の体内のどこかに移植された遠隔機器902を有する。患者900の外部にある波生成器904は、都合のよい地点で患者の皮膚に付着する電極906を有する。遠隔機器902は、
図8のアンテナ808と同程度の寸法のものであってもよいアンテナコンポーネント910と、動力を消費する検知、実効化、および/または送信回路から成る荷重とを含む。遠隔機器902が送信器ユニットを含む場合、アンテナコンポーネント910は、必要に応じて、送信器アンテナとして使用される場合もあるし、使用されない場合もある。別の実施形態において、波生成器904は患者の体内に移植され、例えば、ペースメーカ缶のリードは電極として使用されることができ、当該缶はリード全体にわたって適切な周波数の波形を生成するように構成され得る。
【0091】
図8を再度参照すると、実験装置の動作中、100kHzの周波数で5Vまたは10V(ピークツーピーク)の正弦波電圧が電極802に印加され、電流計814および増幅器816を動作させてそれぞれ電流および電圧を検出し、そこから動力を決定することができた。10Vの入力振動では、増幅器816全体にわたり約1Vの電位において4μWのピーク電力が検出された。高閾値整流器810を、低電力用に最適化されたより精巧な設計のものに置換することによって、より高い電力出力が実現され得ると考えられる。また、アンテナ808の電流取り扱い能力は、極細のワイヤを、集積回路チップの金属化表面等、より大きい表面積を有する電極に置換することによって増大され得るとも考えられる。
【0092】
いずれの場合も、生成される動力は比較的小さいままであると思われるが、多くの用途に十分であろう。例えば、上述したように、数ミリワットの信号強度を有する送信器は、体内における準静電通信に十分である。また、いくつかの用途について、遠隔ユニットに対し間欠的に動力供給することが望ましい場合がある。遠隔ユニットは、ある期間にわたって充電した後、放電して、その検知、実効化、および/または送信動作を実行するために動力を引き出すように、電荷ストレージデバイス(例えば、コンデンサ、化学電池等)を装備することができる。機器の負荷サイクルが小さいと思われる場合には、当該ストレージデバイスからより速く放電することによって、利用できるピーク電力をさらに増大することができる。
【0093】
B.逆電気分解
別の部類の動力源は、胃液、血液、またはその他の体液および何らかの組織等のイオン溶液中における逆電気分解を活用するものである。当該技術分野においては、異なる金属から作られ、いくらか距離を離して設置された、イオン溶液中の2つの電極は、当該溶液中のイオン性材料が再結合する際に電位差を生じることがよく知られている(これは、例えば水素燃料電池の背後にある動作原理である)。
【0094】
図10は、逆電気分解によって動力供給される遠隔機器1000を図示する。
遠隔機器1000は、2つの異なる金属からできていて互いに電気的に絶縁された、金属電極1002および1004と電気的に接続されている。当該技術分野において既知であるように、金属電極1002および1004がイオン溶液1006中に浸されると、それらの間に電位差が生じる。例えば、電極1000は高電位V+に上昇し、一方、電極1004は低電位V−に下降する。この電位差は、遠隔機器1000内の回路に動力供給するために使用され得る。
【0095】
電極1002および1004は、種々の手法で実装され得る。例えば、集積回路チップの向かい合う面上のエリアを異なる2つの金属で被覆し、チップ全体をイオン溶液中に入れてもよい。あるいは、電極1002および1004は、図示するように、遠隔機器1000から離れて延在してもよい。その他の配置を使用してもよい。
【0096】
電極1002および1004は、遠隔機器1000が動作する環境に適切な2つの任意の異なる金属でできていてもよい。例えば、イオン溶液1006が胃酸を含むいくつかの実施形態において、電極1002および1004は、腐食が遅いような貴金属(例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム等)でできていてもよい。あるいは電極は、アルミニウム、または、適応するイオン溶液中での生存可能時間が、遠隔機器1000にその意図された機能を実行させるのに十分長い、その他の伝導性材料で作製されてもよい。
【0097】
上述したもののように関心が持たれているさらなる種類の動力源は、その開示およびその優先権出願が参照することにより本願に組み込まれる、係属中のPCT出願番号PCT/US2006/016370号に記載されているものを含むがこれらに限定されない。
【0098】
C.その他のソース
上述したものに加えて、またはその代わりに、遠隔機器内外にあるその他のソースを用いてもよい。例えば、適切なフォームファクタを持つ化学電池または同位体電池を、いくつかの遠隔機器に動力供給するために使用することができる。血液をエネルギー源として使用する、最近開発された燃料電池は、小型化され、低電力マイクロチップに電気エネルギーを提供するために使用され得る。機械エネルギー(例えば、圧縮)を電気エネルギーに変換する圧電性結晶は、心臓、胃、関節、または、体のその他の可動部分の中またはその周囲等、適切な機械力が発揮され得る場所に配置された遠隔機器に用いられ得る。例えば、参照することによりその開示が本願に組み込まれる、係属中の米国特許出願第11/385,986号を参照されたい。また、事実上、血液が遠隔機器に「栄養を与える」ように、血液中のATPから動力が抽出される、細胞エネルギー工場をモデルにした動力源が用いられ得る。その他の実施形態において、音響エネルギー(例えば、超音波)は、圧電または同様のコンバータを介して、遠隔装置に結合され得る。
【0099】
IV.データコレクタ
図1を再度参照すると、プラットフォーム100はデータコレクタ106も提供する。本願で使用する場合、「データコレクタ」は、上述したような送信器によって体内に作成された電位差を検出するための受信アンテナを装備し、それによって送信された情報を受信する、任意の機器である。データコレクタは、受信されたデータを種々の手法で取り扱うことができる。いくつかの実施形態において、コレクタは、単にデータを外部機器に(例えば、従来のRF通信を使用して)再送信する。その他の実施形態において、データコレクタは、その制御下にあるエフェクタを動作させる、可視または可聴警報を活性化する、体内のどこかに位置付けられたエフェクタに制御信号を送信する等、何らかのアクションを取るか否かを判断するために、受信されたデータを処理する。また他の実施形態において、データコレクタは、後に外部機器に再送信するため、または、順次データの処理(例えば、あるパラメータの変化を経時的に検出する)において使用するために、受信されたデータを格納する。さらに他の実施形態において、データコレクタは、データを別の内部機器へ送信することができ、次いで当該内部機器が必要に応じてその情報をさらに別の機器へリレーし、例えばここでは複数のそのような機器が患者の体全体に分布しており、複数のそのような機器が、1つの位置から別の位置へ情報をリレーする役割を果たす。データコレクタは受信されたデータを使用して、これらのおよび/またはその他の動作のいかなる組み合わせも実行することができることを理解されたい。
【0100】
受信アンテナは患者の体内にあるか患者の皮膚に接触しているのが有利であるが、データコレクタ106は、完全に患者の体内にある必要はない。例えば、外部に身に着けられ、適切な受信電極を装備した時計またはベルトを、本発明の一実施形態によるデータコレクタとして使用してもよい。
【0101】
データコレクタは、さらなる通信経路を提供することができ、患者またはヘルスケア従事者は、当該経路を介して、収集されたデータを抽出することができる。例えば、移植可能なコレクタは、当該技術分野において知られているようなペン型スキャナを使用して従事者が通信を行える、従来のRF回路(例えば、405MHzの医療機器用帯域で動作するもの)を含んでもよい。データコレクタが外部コンポーネントを含む場合、当該コンポーネントは、例えば聴覚および/または視覚フィードバックを提供するための出力機器を有してもよく、例として、可聴警報、LED、表示画面等が挙げられる。外部コンポーネントは、中に格納されているデータを読み出すためのコンピュータにそれを介して当該コンポーネントを接続できる、インタフェースポートを含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、データコレクタは移植されている。例えば、上述したように、ペースメーカリードは適切なサイズの受信アンテナを設けている。一般的なペースメーカは、種々のデータ収集および処理動作を実行するように構成された論理回路を組み込んだ、制御ユニット(「缶」と称される)を含む。缶は、ペースメーカと、ヘルスケア従事者によって動作される外部ペン型スキャナとの間の通信を可能にするRF送信器/受信器回路にも接続される。したがって、患者がペースメーカを有する場合、既存のユニットを
図1のプラットフォーム100用のデータコレクタとして活用することは、効率的選定となり得る。
【0103】
その他の機器が移植されてもよく、プラットフォーム100の意義の範囲内で、遠隔ユニット(例えば、エフェクタ)と、受信された信号を使用してエフェクタを動作するか否か、およびどのように動作するかを判断するデータコレクタとの両方として同じ機器が動作し得る。
【0104】
V.システム例
前節では、例えば、互いに通信することができる1つ以上の移植可能な機器を使用する、患者の医療診断および/または治療用の汎用プラットフォームについて説明した。そのようなプラットフォームについて、種々のコンポーネントおよび使用法の多数の例を既に説明しており、当業者は、本教示を利用して、コンポーネントおよび使用法のその他の例を容易に開発するであろうことが考慮される。
【0105】
本願に記載のプラットフォームをさらに説明するために、このプラットフォーム上に構築された診断および/または治療システムの特定の例について説明する。これらの例は例示的なものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0106】
A.スマートピル(ファーマインフォマティクスシステム)
一実施形態において、
図1の遠隔機器104は、送信器ユニットを含有する摂取可能な丸薬を備える。丸薬が消化されると、送信器が活性化されて信号を送信し、データ収集ユニット102によって丸薬の摂取を検出および報告させる。そのような丸薬の例は、係属中のPCT出願番号PCT/US2006/016370号に記載されており、その開示およびその優先権出願は、参照することにより本願に組み込まれる。いくつかの実施形態において、丸薬は、プラットフォーム100の一実施形態を表す送信器を実装する集積回路チップを含む。当該チップは、有利には、患者が飲み込むことができる丸薬の内側に完全に適合するほど十分コンパクトである。
【0107】
図11は、丸薬1102内に配置された遠隔機器1100を図示している。機器1100は、集積回路である。回路1100の裏面(底部)は、第一の金属1103で少なくとも部分的に被覆されており、回路1100の前(上端部)の一部は、異なる金属1104で被覆されているため、回路1100は、上記第III節Bで説明したように、逆電気分解によって動力供給されることが可能である。上面には、2つの送信器電極1106、1108もある。
【0108】
丸薬1102が作製されると、集積回路1100は、薬理学的に活性および/または不活性な材料を任意の組み合わせで含み得る少なくとも1つの外層によって囲まれる。外層は、胃の機械的作用と、胃液中の種々の化学成分(例えば、塩酸)の作用の組み合わせによって、胃の中で溶解する。
【0109】
丸薬1102が溶解されると、集積回路1100のエリアが胃内容物に曝露され、当該内容物は、本目的のために電解質溶液であると見なされ得る。丸薬の溶解により金属層1103および1104が露出されると、回路1100に動力が供給され、当該回路は動作を開始し、金属層1103および1104または回路自体が消化プロセスおよび酸によって十分に溶解し、機能しなくなるまで動作し続ける。最終的には、チップの残りが体から排泄される。
【0110】
代替的な実施形態において、集積回路1100は、丸薬1102内にカプセル化されるのではなく、当該丸薬に取り付けられる。例えば、回路1100は、丸薬が調製されているときの当該丸薬の一端、丸薬の表面上の可溶性被膜中等に設置される場合がある。回路1100が全体的にまたは部分的に露出している実施形態において、集積回路1100は、丸薬が溶解した後ではなく、丸薬が胃に入った直後に動作し始める。
【0111】
一実施形態において、回路1100は、丸薬1102を識別する信号を送信する。識別子は、丸薬1102の種類(活性原料、銘柄等)および/または用量を示すことができ、ロット番号、シリアル番号、または、特定の丸薬をトレースすることを可能にし得る同様の識別情報を提供することもできる。
【0112】
図12は、電子回路1100の一実施形態のブロック図である。この実施形態において、回路1100は、第一の発振周波数がビット値0に対応し第二の発振周波数がビット値1に対応する周波数偏移キーイングを使用して、所定のアドレス(識別子)ビットのシリーズを連続的に送信する、送信器ユニットである。
【0113】
上述したように、金属層1103および1104は回路1100に動力を供給する。動力(
図12では明確に示されていない)は、発振器1202、カウンタ1204、読み出し回路1206、および、信号を送信するために送信器電極1106、1108を駆動する電極ドライバ1208に供給される。
【0114】
発振器1202は、概して従来の設計のもの(例えば、リング発振器)であってもよく、上述したように準静電周波数領域で動作するよう、有利に構成される。発振器1202は、高電圧レベルと低電圧レベルの間で振動する駆動信号φ、および、駆動信号φと位相が逆である反転駆動信号/φを生成する。一実施形態において、発振器1202は、信号経路1210に提供された制御電圧によって決まる発振周波数を持つ電圧制御発振器(VCO)である。
【0115】
カウンタ1204は、駆動信号φおよび/φの振動をカウントし、読み出し回路1206に現在のカウントを提供する。一実施形態において、カウンタ1204は、概して従来の設計の8ビットカウンタであり、その他の種類のカウンタ(異なる幅を持つカウンタを含む)を使用してもよい。読み出し回路1206は、例えば回路1100が作製された際に有利に固定される、アドレス(識別子)ビット1212のセットで構成され、上述したように、ビットは、丸薬1212の特定のインスタンスに固有のものであってもよいし、同じ条件下で作製された多くの丸薬に共通していてもよいし、特定の薬理作用のある物質を含有するすべての丸薬に共通していてもよい。アドレスビット1212は、概して従来の設計の不揮発性ストレージ回路に格納されてよく、任意の数(例えば、8、16、32、48...)のアドレスビットが提供され得る。
【0116】
読み出し回路1206は、VCO1202の周波数を制御する発振器制御信号(例えば、電圧)を線1210上に生成する。一実施形態において、読み出し回路1206は、例えば、カウンタ1204によって提供された現在のカウントに基づいて現在のアドレスビットを選択し、当該ビットの値に対応する周波数を選択する制御信号を信号線1210上に生成するように構成される。(カウンタ1204によって決定されたような)数回のサイクル後、読み出し回路1206は、次のアドレスビットを選択し、対応する制御電圧を信号線1210上に生成する。
【0117】
アドレスビット値「1」および「0」を表すために、種々の周波数を使用することができる。一実施形態において、100kHzおよび200kHzの周波数を使用して、それぞれ値「0」および「1」を表すことができる。その他の値(例えば、1MHzと2MHzまたは1kHzと5kHz)を使用してもよい。選定された周波数は、有利なことに、一般に400MHz超であるヒト組織の吸収モードをはるかに下回る。いくつかの実施形態において、VCO1202は、約1MHz以下等、約10MHz以下の周波数で動作するように構成される。いくつかの実施形態において、発振器は、約300Hz〜約1MHzの周波数で動作するように構成される。
【0118】
上述したように、VCO1202は、信号線1210上の制御信号によって決定された周波数で振動する相補信号φ、/φを生成する。信号φ、/φは、例えば
図6に示すように実装され得る電極ドライバ1208を制御するために使用される。
【0119】
電極1106および1108は、回路1100が動作しているときに胃液と接触しているため、近接場コンポーネントは患者の体の導電媒体に直接的に結合され、上述のように適切に構成されたデータコレクタによって検出され得ることに留意すべきである。一実施形態において、当該コレクタは、受信されたアドレス(識別子)および受信時刻をログするように構成される。データコレクタは、リアルタイムで、または患者が医療施設にいる間に、この情報を外部機器へ再送信するように構成されてもよい。
【0120】
本願に記載した送信器は例示的なものであり、変形形態および修正形態が可能であることが十分に理解されるであろう。例えば、データを送信するためにその他の符号化スキームを使用してもよく、そのような一実施形態においては、周波数キーイングではなく位相偏移キーイングが使用される。いくつかの実施形態において、当該技術分野において既知である種々のキーイングスキームを使用して、複数のアドレスビットを、送信される単一の符号に符号化することができる。
【0121】
丸薬内にカプセル化された、または丸薬に取り付けられたそのような送信器は、多数の使用法を有する。例えば、収集され外部から報告されたデータを参照して、患者が規定の投薬計画に従っているか否かを判断することができる。また、丸薬摂取のタイミングを、その他の生理的パラメータにおける変化(例えば、上述したような患者の体内に移植された遠隔機器によって、その一部またはすべてを監視することができる)と相関させることができ、当該相関関係を使用して、特定の薬物または用量の有効性を評定することができる。さらに、丸薬が溶解する際のみ送信器がアクティブになる場合(例えば、送信器が初めは完全に丸薬内にカプセル化されている場合)、送信された信号は丸薬の溶解を示すことができる。別の例として、データコレクタが患者に身に着けられたコンポーネントを含む場合、適切な時刻に丸薬の存在が検出されなければ、医薬品を服用するよう患者に思い出させる警報が活性化され得る。そのような送信器の使用法のさらなる例は、係属中のPCT出願番号PCT/US2006/016370号に記載されており、その開示およびその優先権出願は参照することにより本願に組み込まれる。
【0122】
B.流量センサ
本発明の実施形態は、多様な条件下において種々の生理的パラメータの計測に使用され得る流量センサ、例えば血流センサを提供する。以下の説明においては血流の評定が強調されているが、その他多くの生理液の流れは、本願において教示する体内電磁式流量センサによって測定され得ることを理解すべきである。例えば、数ある中でも、脳脊髄液、リンパ液、胸腔内の流体、涙腺流、緑内障の場合の眼液、腎臓からの尿の流れを評定することができる。
【0123】
本発明は、この広範な適用性を可能にする流体の性質と完全に無関係なデータを提供する。いくつかの実施形態において、血流センサは、血管内に移植されて無期限に適所に残されることができ、患者が日常活動に従事している際、目立たないようにデータを計測および記録することになる。当該データは後に、適切なインタフェースを使用して臨床医によって読み出され得る。その他の実施形態において、データは、患者の体内に移植された、または患者の体に取り付けられたデータ収集機器内において収集および分析され、当該収集機器は、継続的に、または、医学的介入を必要とする病気が検出された際に警告を発行する形で、患者に報告することができる。血流計測結果を使用して、多数の病気を検出、評定、および治療することができ、その例を以下に記載する。
【0124】
一実施形態において、
図1の遠隔機器104は、流速および/またはヘマトクリット値(患者の血液の赤血球で構成される容量パーセント)を計測することができる血流センサを含む。これらの計測結果を使用して、種々の生理的条件を検出することができる。例えば、「一回拍出量」−すなわち、心周期あたり心臓を流出入する血液の容積−は、動脈(例えば、大動脈)または静脈(例えば、大静脈)における血流速度を計測し、血管の断面積および心周期の持続時間を使用して一回拍出量を算定することによって測定され得る。別の例として、循環障害(例えば、閉塞)も血流測定によって検出され得る。体組織がより活動的になると、より多くの酸素(したがってより多くの血流)が必要になることから、生理作用(例えば、消化、脳活動、腫瘍増殖または縮小等)における局所変化は、体の関連領域内での血流の変化によって検出され得る。これらまたはその他の使用法のいずれも、血流データから作られることができ、センサが用いられる特定の用途は、本発明とは関連がない。
【0125】
いくつかの実施形態において、血流センサを含む遠隔機器は、血管内に移植され、標的流体流動位置における血流および/またはヘマトクリット値を計測する。遠隔機器は、上述したような準静電信号通信技術を使用して、計測されたデータをデータコレクタへ定期的にまたは連続的に送信する送信器も含む。
【0126】
本発明による流量センサは、種々の異なる構成を有し得る。いくつかの実施形態において、当該センサは、移植可能であり、それぞれ上述したような準静電プロトコル等の無線通信プロトコルを使用して通信している遠隔スタンドアロン機器上に存在する。そのような遠隔スタンドアロン機器は移植可能であり、いくつかの実施形態においては小型で、例えば、約1cmを超えない、約10mmを超えない、約1mmを超えない等の、約5cmを超えない最長寸法を有し、いくつかの実施形態において、当該移植可能なスタンドアロン機器の最長寸法は1mmよりもはるかに短い場合がある。これらの実施形態は、リード等、別の移植可能な機器には存在しない機器としてみなされ得る。
【0127】
さらに他の実施形態において、センサは、その他の移植可能な機器、例えば缶に接続された、リード等の移植可能な機器の一部であってもよい。これらの実施形態において関心が持たれているのは、各センサがリード上のアドレス指定可能なサテライトの一部である多重リード構成等、多重リード構成の使用である。そのような多重リードは、第20040193021号として公開された米国出願番号第10/734,490号;第20040220637号として公開された第10/764,429号;第20040254483号として公開された第10/764,127号;および、第20040215049号として公開された第10/764,125号(これらの出願の開示は、参照することにより本願に組み込まれる);ならびに、WO/2006/029090号として公開されたPCT出願番号PCT/US2005/031559号、WO/2006/069322号として公開されたPCT/US2005/046811号、および、WO/2006/069323号として公開されたPCT/US2005/046815号に記載されているものを含み、当該出願の開示およびその優先権出願は、参照することにより本願に組み込まれる。センサの性質およびその動作に応じて、いくつかの実施形態における多重リードはこれらの係属中の出願に記載されているものであり、その場合、当該リードは流量データを取得するように構成される。
【0128】
最も広い意味では、流量センサはいかなる都合のよいセンサであってもよい。いくつかの実施形態において、血流センサは流量抵抗センサである。いくつかの実施形態において、血流センサは流量電磁式センサである。ここで、流量センサの例示的な実施形態のうち、それぞれの実施形態について詳細に説明する。
【0129】
1.抵抗流量センサ
いくつかの実施形態において、センサは、血液の抵抗が流速とともに直接的に、且つ、ヘマトクリット値、すなわち、血液全体のうち赤血球で構成される容量パーセントとは逆に変動するという、既知の特性を活用する(例えば、Hoetnikら、IEEE Trans.Biomed.Engr.51:.7、1251(2004年);Sigmanら、Amer.J.Physiol.、118、708(1937年)を参照)。
【0130】
一実施形態において、血流センサは、血流に接触する2つの端子の間に電流を印加するように構成されたセンサモジュールを含む。血液の抵抗によって作成された電位差を検出するために、検知電極および差動増幅器が端子の付近に配置される。この電位差は、抵抗に関連するものであり、これは同様に、血流速度と相関する。
【0131】
別の実施形態において、血流センサは、計測された電位差を、患者の体内に移植されても患者の体に取り付けられてもよいデータ収集機器に通信するように構成された、無線送信器を含む。無線送信器は、有利には、データ収集機器へデータを送るために準静電近接場結合を使用する。データ収集機器において、データは後の臨床医への報告のために記録され、さらなる生理的パラメータを算定するために使用され、および/または、患者に警告する、一回分の医薬品を投薬する、心筋を刺激する等、何らかの自動アクションを取るか否かを判断するために使用されることができる。
【0132】
図13は、本発明の一実施形態による、血流センサ1300のブロック図である。センサ1300は、端子1306と1308との間に接続された電流源1304、検知電極1310および1312、差動増幅器1314、送信器セクション1316、ならびに電源1318を含む。センサ1300は、従来の作製技術を使用して、例えば半導体基板上の集積回路として実装され得る。電源1318は、その他のコンポーネント(接続は示されていないが、当業者にはよく理解されるであろう)のすべてに動力を提供し、上記第III節に記載した技術のいずれかを含む種々の手法で実装され得る。例えば、いくつかの実施形態において、電源1318は、従来の電池を含む。その他の実施形態において、電源1318は、血流に曝露された2つの異なる金属の電極を含み、逆電気分解によって動力が生成される。また他の実施形態において、電源1318は、例えば近接場準静電結合(例えば、上述したようなもの)を介して、遠隔源からエネルギーを収集する。遠隔動力源を持つ実施形態において、血流センサ1300は、遠隔動力源から動力を送信することによって、希望時刻に活性化され得る。特定の動力源または電源の構成は、本発明に絶対不可欠なものではなく、詳細な説明は省略されていることが十分に理解されるであろう。
【0133】
動作中、センサ1300は、血管の内側、好ましくは固定位置に設置され、端子1306、1308および検知電極1310、1312は、
図13において赤血球1322で表される血流に曝露される。電流源1304は、電源1318によって動力供給されると、端子1306と1308との間に定電流lを印加する。当該電流は、一部は流速に、一部はヘマトクリット値によって決まる、抵抗pを有する血液を通過する。流れている電流は、電流l、血液の抵抗p、および、検知電極1310と1312との間の距離Sによって決まる、検知電極1310、1312全体の電位差(ΔV)を作成する。一実施形態において、BarberおよびBrown、J.Phys.E.Sci.Instrum.、17、723(1984年)に記載されているように、ΔV=pl/2πSである。
【0134】
電位差ΔVは、差動増幅器1314によって検出および増幅される。送信器セクション1316に接続する信号線1324上に、ΔVに比例する計測結果Mが生成される。
【0135】
検知電極1310と1312との間の距離Sは、必要に応じて変動され得ることに留意すべきである。Sが赤血球のサイズ(例えば、6〜8ミクロン)と同程度である場合、流れ過ぎる個々の赤血球をカウントすることが可能になる。「細胞サイズ」の構成においては、赤血球が機器の近くを通るとΔV中に離散的なパルスが発生し、その他の状況では電子回路中の散弾雑音に類似している。いくつかの実施形態において、距離Sは、約8ミクロン以下を含む約10ミクロン以下等、約20ミクロン以下である。増幅器1314は、パルスをカウントするカウンタに接続されることができ、それによって赤血球をカウントしてヘマトクリット値の計測結果を提供する。いくつかの実施形態において、流速とヘマトクリット値は別々に計測され得る。
【0136】
計測値Mは、患者の体内に位置付けられた別の機器へ報告され得る。いくつかの実施形態において、
図13に示すように、センサ1300は、例えば上記で説明したような準静電伝送技術を使用して値Mを無線で送信する、送信器セクション1316を含む。
【0137】
送信器セクション1316は、計測データ(例えば、線1324上の信号M)を受信し、上述したような近接場結合を使用して当該データを送信する。一実施形態において、送信器セクション1316は、Mによって決定された周波数で送信を行う。この実施形態において、送信器セクション1316は、電圧制御発振器(VCO)1326および電極ドライバ1328を含み、これらは上述した発振器および電極ドライバと略同様であってもよい。VCO1326は、計測信号Mによって決定された周波数で振動し、信号φおよび/φを生成する。これらの信号は、電極ドライバ1328が送信器電極1330、1332を、対応する周波数で駆動するように誘導する。
【0138】
送信器セクション1316は、データを符号化および送信するためのその他の技術を実装することもできる。例えば、計測データMに基づく振幅変調は周波数変調で代用される場合がある。別の実施形態において、送信器セクション1316は、計測された信号Mを対応するデジタル値に変換するAD(アナログ/デジタル)コンバータを含む場合がある。このデジタル値は、
図12を参照して上述したアドレスビットと同様に、振幅変調、周波数変調、位相変調、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、符号化され、送られることができる。また、いくつかの実施形態において、センサの識別子を符号化し、計測値とともに送信してよい。識別子を送信することにより、患者の体内の異なる位置に設置された複数のセンサに計測結果を報告させることが可能になり、報告された各計測結果はそのソースと関連付けられている。
【0139】
センサ1300からの信号は、データコレクタ106(
図1参照)によって検出され、その中の情報は適切に取り扱われる。例えば、データコレクタは、患者のヘルスケア従事者へ後に報告するために情報を格納することもできるし、当該情報を使用して、ペースメーカを制御すること、抗凝固剤を血液中へ放出すること、閉塞の発現をリアルタイムで検出すること、および適切な警報を生成すること等もできる。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の血流センサは、例えば
図23に示すようにシリコンチップ等の固体支持体の表面上に位置付けられた複数の電極を含む。
【0141】
図23は、本発明の血流センサの一実施形態を示し、当該センサは、その表面上に14個の電極2303〜2316が位置付けられたシリコンチップ2301から成る。各電極2303〜2316は、均一な距離dだけ隔てられている。最外部の電極2303および2316は、流体を通る電流を駆動するための電流源として構成される。その他の電極2304〜2315は、電圧検知電極として構成される。隣接するすべての電極における電圧信号に差動増幅器2319〜2329を通過させて、2つの電極間の電圧差を取得する。各増幅器2319〜2329の出力における電圧を処理回路に渡し、分析する。赤血球2331が各電極対を通過すると、電極対間の抵抗は増大する。これにより、電極間で計測された電圧差にスパイクが作成される。
【0142】
図24Aは、電極2304と2305との間の電圧差を出力する増幅器2319の出力における、
図23に示す機器によって計測された電圧信号を表す理論的データを示す。この波形2401は、赤血球の群が電極2304と2305との間の空間を通過する際に予測され得るものである。各ピーク2405〜2409は、電極2304および2305を通過する1つの赤血球によって引き起こされる。制御回路は、ピークをカウントし、体内で継続的にヘマトクリット値の推定を求める。
【0143】
図24Bは、電極2305と2306との間の電圧差を出力する増幅器2320の出力における、
図23に示す機器によって計測された電圧信号を表す理論的データを示す。この波形2411は、
図24Aの波形2401を作成したものと同じ細胞の群が電極2305と2306との間の空間を通過する際に予測され得るものである。波形2411は、時間t
1だけ遅延していることを除き、
図24Aの波形2401とまさに同様である。処理回路は波形2401および2411を受信し、当該技術分野において既知の技術を使用してそれらを相関させて類似の波形を認識し、時間差t
1を求める。次に、以下の公式を使用して、電極2304と2305との間のエリアおよび電極2305と2306との間のエリアからの、血液の速度vを計算することができる。
【0144】
v=d/t
1 (3.1)
図24Cは、電極2306と2307との間の電圧差を出力する増幅器2321の出力における、
図23に示す機器によって計測された電圧信号を表す理論的データを示す。この波形2413は、
図24Aの波形2401を作成したものと同じ細胞の群が電極2306と2307との間の空間を通過する際に予測され得るものである。当該波形は、時間t
2だけ遅延していることを除き、波形2401とまさに同様である。波形2413を、
図24Aの波形2401、
図24Bの波形2411のいずれかと、または両方と比較するために、相関技術が使用される。これは、t
2を計算するために使用されることになる。以下の公式を使用して、電極2305と2306との間のエリアおよび電極2306と2307との間のエリアからの、血液の大まかな瞬間速度vを計算することができる。
【0145】
v=d/(t
2−t
1) (3.2)
あるいは、以下の公式を使用して、
図23に示す機器から電極2304と2305との間の空間、および、電極2306と2307との間の空間からの距離2dにわたる、血液の平均速度vを計算することができる。
【0146】
v=2d/t
2 (3.3)
本発明のこの技術は、センサの長さに沿ったすべての電極対における、およびその間の、ヘマトクリット値および血流速度を計算するために使用され得る。異なる電極対を使用して、2つのデータポイント間の間隔を、望ましい情報に応じて変動させることができる。各連続する隣接対を使用して、センサの長さ全体にわたる血流の変化を追跡することができる。あるいは、センサの長さ全体にわたる平均血流の計測のために、さらに間隔を空けた2つの電極対を使用してもよい。
【0147】
本発明のセンサを使用して、細胞のその他の特徴を決定することもできる。例えば、スパイクの形状を使用して、細胞のサイズを決定することができる。大きい細胞ほど広いスパイクを発生させ、一方、小さい細胞ほど鋭いスパイクを発生させるであろう。多数の細胞にわたってスパイク幅の分布を見ることにより、細胞の長軸に対する細胞の短軸の相対的サイズ等の統計が生成され得る。この情報を使用して、細胞の健康を評価することができる。血流センサおよび血流計測の医学的応用の実施形態に関するさらなる説明は、先述の仮出願第60/824,308号において見られ、その開示は参照することにより本願に組み込まれる。
【0148】
血流センサおよび血流計測の医学的応用の実施形態に関するさらなる説明は、先述の仮出願第60/713,881号にも見られ、その開示は参照することにより本願に組み込まれる。
【0149】
2.電磁式
上述したように、本発明の実施形態によって提供される別の種類の流量センサは、体内電磁式流量センサである。本発明の体内電磁式血流センサは、内液流、例えば血流の正確な測定を初めて電磁的に可能にするものである。この革新により、心臓の一回拍出量等、臨床的に有用な生理的パラメータの計算が可能になる。
【0150】
本発明の実施形態の体内電磁式流量センサは、先行技術の方法に優る独自の利点を有する。当該センサは一般に非侵襲性または低侵襲性であり、血液温度を変化させたり血液に物理的影響を与えたりする必要がない。この態様は、患者が日課に取り掛かっているときであっても血流を恒常的に監視することを初めて可能にするものである。この態様は、心臓病の評定に極めて重要な特徴である。
【0151】
本発明の体内電磁式流量センサの根本的な手法は、ホール効果を利用することであると考えられる。多くの文献で、誤ってホール効果をファラデーの電磁誘導の法則に属するものと見なしている。しかしながら、本発明の文脈において、体内電磁式流量センサの基礎となる根本的な物理学は、ファラデーの法則とは異なる。体内電磁式血流センサの主な利点は、その信号が、十分な伝導率のものである限り、評定されている流体の性質とは完全に無関係であるということである。流れの計測は、ヘマトクリット値および血液構成等の要因とは無関係である。したがって、これらの実施形態のセンサは、流体組成に依存しない流量センサとしてみなされ得る。
【0152】
図15A〜15Eは、本発明において使用される場合のホール効果を示す。ホール効果は、文献中において、固体導体を通って電流が流れるという状況で提供される。そのような論文は、広範なホール効果原理を実証するものである。例として、Electricity and Magnetism、Edward M Purcell、Berkeley Physics Course、Vol.2、第二版、McGraw Hill、Boston 1985年、The Magnetic Field、243ページ、
図6.28を参照されたい。Purcell参考文献のこの章は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。しかしながら、本発明においては、静脈および動脈を通って物理的に流れる血液等、固体と液体が混合した体液という非常に異なる状況でホール効果を検討する。
図15Aにおいて、血液のイオン中の電子は白丸として示されており、当該電子は伝導性の血液を通って流れる。
図15Bにおいて、静脈または動脈に対して横方向に磁場が印加されると、イオン中の負に帯電した電子およびイオン自体は、下方へ偏向する。正に帯電したイオンは、上方へ偏向する。血液イオン中のこれらの電子は、血管の内部表面に衝突するため、あまり下方まで移動することはできない。結果として、血管の底部内面および血管の上部内面の両方に、電荷の層が発生する。これら2つの電荷層は、図中のz方向に横方向の電磁場を生成する。本発明によって検出されるのは、この電場である。ホール原理の伝導性の固体への適用は既に為されていたが、本発明者らは、当該原理を伝導性の動流体にも適用し得ることを見出した。これら2つの例の間には、明確な区別がある。例として、伝導性の液体においては、固体におけるホール原理の場合のように電子のみが移動する代わりに、電子および正電荷担体の両方が移動する。したがって、
図15A〜15Cにおいて、黒色点として図式的に示される血液イオンは上方へ移行し、これは、固体構造で移行する電子には当てはまらない。白色点として図式的に示される粒子は、下方へ偏向する。最終的に、固体導体と流れている伝導性の液体とにおけるホール効果の間の最終荷電効果は、若干類似したものとなる。すなわち、上側には正電荷が生成され、下側には負電荷が生成される。電荷を検出するために、同様の方法が使用される。
図15Dおよび15Eは、大きな血液封入体内の分子が、体内電磁式血流センサの場内にある際にどのようにしてそれらの分子を整列させるかを示す線図を提供する。血液イオンが流体内を移行する場合とは対照的に、分子は、固体血液封入体内の定場所に整列する。
図15Dおよび15Eにおいて、例示として赤血球が提供されている。しかしながら、血小板およびその他の血液粒子も同様に影響を受けるであろう。体内電磁式血流センサの場に曝された場合のイオンと固体封入体との位置決めの差異にもかかわらず、流れの測定を行うことに対する正味の影響は、液体内容物によって変動しない。Bevierは、これらの荷電現象を十分に理解するための特定の関連理論を提示した(Bevier、The Theory of Induced Voltage Electromagnetic Flow meter、Vol.43、1970年、577〜590ページ、参照することによりその全体が本願に組み込まれる)。仮想電流についてのBevierの理論は、本発明者らが、本発明の機器がどのように機能するかを実用的に理解し、その最適化を提供する上で、有用であった。
【0153】
本発明の実施形態における電磁式流量センサの動作は、導電体が磁場を通って磁力の線に対して直角に移動する際に、当該力の磁力線の方向と導体の運動の方向との両方に対して直角にある導体内において電位差が発生するという事実に依存している。したがって、外部回路を介して導体の端部を接続すると、電流が流れる、すなわち、起電力が誘導されることになる。
【0154】
誘導される起電力の大きさは、磁場の強度、電位勾配の方向における導体の広がり、および、磁力の線に対して直角な方向における導体の運動の速度に依存する。重要なことには、誘導された起電力の強度は、導体を構成する材料の性質とは無関係である。
【0155】
誘導された起電力の強度を、数学的に表現することができる。
【0156】
E=HLv10
−8 (4)
ここで、
Eは、求められる起電力(単位:ボルト)であり、
Hは、磁場強度(単位:エルステッド)であり、
Lは、運動の方向および力の磁力線の方向に対して直角な導体の長さ(単位:センチメートル)であり、
vは、磁力の線に対して直角な方向における導体の運動の速度(単位:cm/秒)である。
電極が流動液体に浸されている場合、物理長Lは有効長になるように修正され、電極間隔と必ずしも等しくはない。
【0157】
導体が磁場を出ると直ちに、起電力は消失する。しかしながら、導体が磁極間の一定直径のチューブ内を流れている電解質である場合、電位勾配は、それが流れている限り、電解質内に維持されることになる。この場合、上記の方程式(4)も当てはまる。しかしながら、磁場の強度、および、記録電極が取り付けられている地点における流量流れの直径がいずれも一定に維持されている場合、結果として生じる起電力は、速度のみとともに、線形方式で変動することになる。この場合、誘導される起電力を以下の公式で説明することができる。
【0158】
【数3-1】
したがって、この方法によって血管内の血流の正確な速度曲線を記録するために、血管は、当該血管の軸が磁力の線に対して直角となる、一定且つ均一な磁場内に設置され得る。これらの実施形態において、血管の断面積は、電極の面内において一定に保持され得る。
【0159】
続いて、電極は適切な記録システムに接続され、生じる(および、例えば記録される)電位における結果としての変動は、血管内における血流の速度変動の遅滞がない、実態を提供する。適切な増幅器を使用することにより、適切な、小型で弱い磁石を必要に応じて用いることが可能になる。
【0160】
電磁式センサの実施形態は、磁気ベクトル、流量ベクトル、および電極ベクトルが三次元空間にスパンし、その結果これら3つのベクトルがすべて同一平面状にないという条件下で動作するセンサとして特徴付けられ得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、移植可能な電磁式流量センサは、一対の検知電極と検出回路とを含み、当該検出回路は、(i)検知電極間の電位差であって、所望の標的部位において流動流体に印加された磁場に起因する電位差を検出し、(ii)出力信号であって、検出された電位差と相関する出力信号を出力ノードにおいて発生させるように構成される。いくつかの実施形態において、印加された磁場は、交流周波数を有する交流磁場であり、検出回路は、交流周波数における電位差、すなわち、印加される交流磁場と同じ周波数を検出するように構成される。
【0162】
以下で概説するように、動作中に印加される磁場は、体の内部または外部にあるソースから印加され得る。そこで、一実施形態においては、センサ自体が、磁場発生素子、例えば1つ以上のコイルを含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、センサは、機器の種々の要素が固体支持体の表面上に存在するという点で特徴付けられる場合がある。固体支持体は、平面、例えばチップ状、曲線、例えば円筒型(例えば、心臓血管リード)、およびチューブ状(例えば、ステント)等の種々の異なる構成を有することができ、種々の要素が存在する表面は、特定の実施形態に応じて、内部表面であってもよいし、外部表面であってもよい。
【0164】
図16Aおよび16Bは、本発明による、体内電磁式血流センサの平面実装の、2つの異なる実施形態を示す。これらの図の実施形態は、図示するようなマイクロチップ構成を有し、センサを実装するための回路(例えば、コイルまたは電極の形のもの)が、平面基板1601の同じ平面上に存在する。これらの図中に示す機器は、磁場を印加するためのコイル1602を含む。電流源1603は、当該コイルの周囲に電流を駆動する。当該コイルの周囲には一連の電極が据え付けられ、X+およびX−ならびにY+およびY−電極として示されている。
図16Aは、電極が円形コイル1602の外部にある構成を示す。
図16Bは、方形コイル1602が4つの電極の周囲に据え付けられた構成を示す。
【0165】
体内電磁式血流センサの使用中、磁場は血液流体中において電磁ポテンシャルを誘導する。誘導された当該ポテンシャルは、電極において検出される。二対の検知電極があるため、電極の面において流体が流れている方向を、必要に応じて決定することもできる。以下の公式を使用して、これらの場の強度をSI単位系で説明することができる。
【0166】
【数3-2】
これは完全にスケールに依存しない。
v=1m/s、N=10
3、I=10
−3Aの場合、
【0167】
【数4】
の感度が達成される。
【0168】
この分析は、体内電磁式血流センサが完全にスケールに依存しないものであることを実証している。例として、大型または小型の体内電磁式血流センサは、同じ大きさの信号を提供するであろう。信号の大きさは、コイル内での回転数および当該コイルを通って押圧される電流の量によってのみ決定される。したがって、機器が初めは大スケールで設計された場合でも、回転数およびコイルを通る電流の量が維持されるという条件で、同じ信号を提供しながらこの設計を適宜小型化することができる。
【0169】
100回転のコイルおよび当該コイルを通る10μアンペアの電流ならびに信号を使用して計算すると、極めて小さく、10
−11ボルトとなる。マイクロボルトの感度は、1000回転のコイルおよび1ミリアンペアの電流によって可能である。これは、毎秒1メートルあたり1マイクロボルトの流量感度を提供し、臨床的に極めて有用である。基準点として、大動脈血流速度は一般に毎秒数メートルである。
【0170】
体内電磁式血流センサのそのような実施形態は、大動脈血流速度のような生理的パラメータを容易に検出する。上記の分析のとおり、機器は適宜小さく小型化して構成されることができ、機器は直径1センチメートルのチップとして構成されてもよい。そのようなチップは、大動脈壁に押し付けられて、継続的な血流速度読み出しを提供することができる。カテーテルベースの展開機構によって、所望のエリアに付着した埃の粒のサイズまで機器を縮小することもできる。
【0171】
図17は、外部コイルを使用して磁場が印加される、体内電磁式血流センサの一実施形態の図である。これらの大型コイルは、検知電極と同じチップに統合されたコイルによって発生され得るものよりも大きな磁場を生成する。この実施形態は、上述したものと同じ一般的原理の下で稼働するが、用途は若干異なる。一般に、10分の1のテスラコイルが用いられる。
図17は、二対の電極を示す。一対の電極は、上大静脈内に設けられている。第二の電極対は、下大静脈内に設けられている。これらの二対の電極により、心臓への総静脈血流量が計測される。計算はそのようにして提供されるため、行うのが困難ではない小さな補正である心臓内の循環からの寄与は無視することになる。上述したような機器を使用して、心臓への総流量が提供される。心周期全体にわたって統合することにより、このデータから一回拍出量が計算される。これには、患者に移植される必要があるハードウェアが極小であるという利点がある。二対の電極といくつかの増幅器があれば十分である。作業のほとんどは、診療所に容易に設けられ得る外部コイルによって為される。そのような機器を設計し、手術台に内蔵することができる。そのような機器は、外科的処置中における血流の監視を可能にする。レイアウトは、空港の金属探知機と同様に、極めて単純なものであってもよい。患者は単にそのような機器を通って歩き、すると当該機器が血流を計測することができる。急性の実装においては、望ましいデータを提供するために、当該機器には外部コイルが必要である。
【0172】
図18は、センサのリード実施形態の例を示しており、ここでは、
図17に示すものと類似した電極対を提供するために、上述したもののような多重リード上の複数の電極が使用されている。この実施形態は、曲線状の固体支持体(例えば、リード)の表面上にコンポーネントが存在するセンサの1つの例示であり、ここでは、固体支持体の外曲面上にコンポーネントが存在する。血管の縁部上に遠く離して電極を据え付けることが有利である。この構成は、血管を通って流れる電流の大部分を提供し、より高い感度を提供している。四分円電極を持つ多重リードが用いられる場合、検出可能な信号を与えるために、サテライト電極の反対側の四分円が用いられる。いくつかの実施形態においては、電極から電流が発生し、次いで一巡して元の負極に戻るため、若干の信号が失われ得る。しかしながら、依然として重要な信号が生成される。単に外部磁場および差動増幅器を追加することにより、多重電極リードの四分円電極は血流センサとして機能する。四分円電極が体内のどこに展開されても、極小の予備ハードウェアによって、該電極は本発明による血流センサとして構成され得る。
【0173】
図19は、本発明のステント型血流センサ1900実施形態を提供する。この実施形態は、曲線状の固体支持体の別の実施形態を表すものであり、ここでは支持体の内曲面内にコンポーネントが存在する。このチューブ状構造体は、血管に挿入される。挿入後、センサは壁に押し付けられる。ステント基板1901の2つの向かい合う側面上には、磁場を生成するコイル1902および1903が設けられる。基板1901の他2つの向かい合う側面上では、電極1904および1905が、誘導された電圧を検知する。標準的金属ステントの使用では効果が不充分である場合、ステント1900を非導電材料で被覆してもよい。本発明のステント型血流センサ実施形態は、多くの利点を与える特殊な特徴を有する。ステントの機械的安定性は、適所にジオメトリを保持し、センサを長期にわたって非常に安定したものにする。検知電極間の距離におけるあらゆる変化が信号における変化をもたらし、当該変化はドリフトとして現れるであろう。本発明のステント実装は、運動がほとんどないように機械的に固定され得る。本発明のステント型血流センサ実施形態におけるコイル1902および1903は、ジオメトリ的な利点を提供することができる。当該コイルは、多重回転コイルとして提供されてよい。このジオメトリは、コイルを通してかなりの電流を加え、大信号を生成する機会を可能にする。そのようなステント型センサは、大動脈内に設置され得る。そのような機器を有利に使用するのは、動脈瘤修復手術の一環としてであろう。この場合、当該機器は、動脈瘤を塞ぐために使用されるステントに内蔵されるであろう。あるいは、体内電磁式血流センサのステント実施形態は、頸動脈または大静脈内に入れられる。ステント機器の一部としてステントが留置される事実上すべての該当する心臓の場所において設置が容易であることにより、血流計測の付加機能性を提供する。
【0174】
体内電磁式血流センサの、ステントが置かれた実施形態においては、監視機器が設けられ得る。このシステムにおいては、多数の伝送機構が有用である。最も単純なものは、ペーシング缶等、ワイヤが中央コントローラへ戻る有線機構である。例えば、上述したような、体を介して無線で情報を送信するための方法等、本発明者らが種々の特許出願書類において以前に開示した伝送技術を用いてもよい。
【0175】
図20は、上大静脈を下り、前庭を通って心臓へ続く、リード2003の固定機構2002に内蔵された体内電磁式血流センサ2001の例を提供する。固定機構は、このリードを適所に保持するために任意で設けられてもよく、当該機構の多くは当業者によく知られている。本説明図では、傘開口部型機器が示されている。突起が出て、それを適所に保持するために静脈壁に押圧している、その他の機構が提供される。いずれの固定機構が選出された場合でも、機器の端部には、磁場からの血流を検出するための検知電極が設けられる。
図20の実装の変形形態が
図21および22に示されており、これも有利である。
図22に示す実装では、右心房から右心室へ通過する際に血流が検知される。心臓再同期処置においては、リードが上大静脈を下り、前庭を通って右心房へ続き、その後冠状静脈洞へ下るようにすることが一般的である。心臓の三次元モデルを概説すると、冠状静脈洞2006を表す開口部は、右心房を右心室に接続する弁に極めて近い。すべての体循環がこの弁を通過することから、そのような場所は血流を計測するのに自然な箇所である。この有利な位置決めの恩恵を享受するために、検知電極2004および2005は、三尖弁のいずれかの側面において、このリード2003に重着される。続いて、外部磁場を使用して流れが検出される。すなわち、右心房から右心室へ通過する血流が使用される。これは、心周期全体にわたって統合すること等により、体循環由来の一回拍出量の計測を提供する。体内電磁式血流センサのこの実施形態は、上述したもののような多電極リードによって、単に適切な箇所に2つのさらなる電極を設置することにより、遂行され得る。医師は、これらの電極を最も有利な場所に留置するであろう。次いで電極は、処置の過程中だけでなく計測が行われる時間全体にわたってそれらの動きを防止するために、固定されるであろう。そうでなければ、偏移が何らかのドリフトとして現れるリスクがある。これらの電極の設置を理解するための機構は、仮想電流形式を使用して、仮想電流がどのように流れるかを見ることである。次いで、電流フローが長期にわたって安定しており、電極の小さな変位に対する感度が低い構成が導き出される。
【0176】
図21は、センサに有利な場所を提供する固定の方法を提供する。リードの先端は冠状静脈洞内にとどまり、心房を通る血流を検知するために、検知電極2004および2005を吊設する。
図22は、さらなる有利な設置手法を示す。この場合、電極2004および2005は弁のいずれかの側面に取り付けられ、さらなる安定性のためにリードの端部は冠状静脈洞内に入れられる。ここで、検知は高い臨床妥当性を有し、弁を直接的に通る血流は正確に評定される。
【0177】
体内電磁式血流センサにおける磁場の応用は、任意の好都合の手法を使用して遂行され得る。
図17において、磁場の応用は単に2つのヘルムホルツコイルとして示されているが、その他多くの構成が体内電磁式血流センサにおいて実装され得る。印加される磁場は、AC(交流)磁場であってもよいし、DC(直流)磁場であってもよい。いくつかの実施形態において、磁場は、流れ方向および検知電極軸の両方に対して垂直に(または少なくとも実質的に直角に)整列される。一般に、2つのコイルは、すべての場所でこの目的を遂行することはできない。そのような場合、患者は、信号を最適化するために場所を変更するよう指導され得る。しかしながら、患者による再位置決めの必要性を制限または除外する、その他の実装がある。三対のヘルムホルツコイル、X対、Y対、およびZ対を形成し、これらの平衡を適切に保つことにより、磁場ベクトルの方向は、場の一定の強度および大きさを維持しながら、事実上、変更され得る。このようにして、電極全体にわたる最大信号強度に対応する磁場の方向が測定され得る。最大信号強度のこの条件が確立されると、流れ方向および電極軸によって画定される面に対して磁場が垂直となることを確実にすることができる。そのため、いくつかの実施形態は、センサの電極を位置決めすること、磁場を印加すること、および、当該場に対するセンサ電極の場所を決定することを含む。この手法は、磁場を印加するために最適な方向を達成するための設定および較正機構を遂行するであろう。
【0178】
3.さらなる流量センサの考察
本願に記載するセンサ実施形態は例示的なものであり、変形形態および修正形態が可能であることを理解されたい。さらに、種々の異なる位置における局所的な血流パラメータを、例えば連続的にまたは同時に計測するために、患者の循環系内の異なる位置に複数のセンサを移植することができる。すべてのセンサは、当該センサが用いられるシステムの構成に応じ、上述したような無線信号通信を使用して、または、多重リード内の導電部材によって、中央データ収集機器(例えば、ペースメーカ制御缶)にデータを直接送信することができる。中央収集ポイントから、データは、処理される、および/または、処理のための外部機器へ転送されることができる。データ収集機器は、必要に応じて、内部にあっても外部にあってもよく、例えば収集機器は、患者が当該機器を身に着けている間、患者の皮膚に接触する電極を持つ時計またはベルトとして実装され得る。外部機器は、警報、計測データ等を含む可聴および/または可視情報を、患者または臨床医に提供することができる。そのような機器は、当該機器によって回収されたデータの転送先となり得るコンピュータに当該機器がそれを介して接続され得る、通信ポートを含んでもよい。
【0179】
本願に記載するセンサ実施形態は、患者が通常の活動を行っている間を含み、無期限に移植され動作され得ることに留意すべきである。センサに対してどのように動力が供給されるかに応じて、センサは、連続的に、または臨床医によって選択された何らかの負荷サイクルで動作され得る。センサによって報告されたデータは、患者が臨床医を訪ねるまで収集機器内に格納され、臨床医は患者の来訪時にデータを読み出し、患者の状態を評価することができる。いくつかの実施形態において、収集機器は、異常な状態を示すデータが受信された場合、患者に対する可聴警報または可視警報を生成することもでき、当該警報は医学的な注意を求めるように患者に促す。
【0180】
いくつかの実施形態において、2つの異なる周波数で計測結果が得られ、センサは2つの異なる周波数において計測結果を得るよう適切に構成される。そのような実施形態において、第一の周波数は第二の周波数よりも高くてもよい。例えば、より高い第一の周波数は、約100kHzから約1MHzの範囲であってもよく、第二の周波数は約30kHzから約50kHzの範囲であってもよい。各周波数において検出された信号に基づいて、標的流体部位内に存在する細胞の存在を、例えば定性的にまたは定量的に検出することができる。例えば、細胞が存在しない場合、異なる周波数において検出された信号には実質的に差異がない。しかしながら、細胞が存在する場合、各周波数において検出される信号は異なるであろう。このように、分析下での標的流体流動部位における細胞の存在は、定量的にまたは定性的に測定され得る。
【0181】
4.血流計測の応用
上記の血流センサ機器により、本願に記載した種類のセンサによって報告された計測結果(例えば、血液抵抗率、誘導EMF)から多数の生理的パラメータを導き出すことができる。これらのパラメータを使用して、患者の病気を診断し、治療計画を決定し、応答に基づいて、センサの連続使用から判断されたように当該治療計画を修正することができる。
【0182】
例えば、「一回拍出量」は、心周期あたり心臓を流出入する血液の量をいう。一実施形態において、心臓付近に位置付けられた血管を通る血液の流速を検出するために、センサが置かれる。精度の観点から、センサを移植するためには大動脈が望ましい位置であるが、医学的考察により、大動脈への移植は非実用的であるとされる場合がある。大静脈は、カテーテル処置中に概してアクセス可能であり、移植に適したもう1つの部位である。例えば、直接的に(移植のため血管にアクセスしている間に)、統計的推定によって(例えば、適切な患者集団全体の平均に基づいて)、電気的断層撮影によって、または、その他任意の適切な技術によって、移植部位における選択された血管の直径または断面積が計測される。流速に断面積を乗じると、血管を通過する血液の総容積を決定するために心周期の持続時間全体にわたって統合され得る、フラックス測定が提供される。一回拍出量は、心臓の健康に関する1つの指標を提供するものである。
【0183】
別の例として、閉塞の発現(または部分閉塞の悪化)が予期される任意の位置に流量センサを移植することにより、血管閉塞を検出することができる。血管の閉鎖は、当該血管の血流速度プロファイルに影響を及ぼすことになり、当該影響は、閉鎖の程度が増大するに伴って強くなる。したがって、本願に記載したような流量センサを使用して、急性または慢性の血管の閉塞を監視することができる。例えば、急性血栓症はこのようにして検出されることができ、検出により、患者への警告および/または抗凝血剤の自動放出をトリガする。流速が経時的に変化する際の抵抗の変化を検出することにより、血管内におけるプラーク沈着の慢性的な成長を計測することもできる。
【0184】
心臓の健康のさらなるメトリクスを定義してもよい。例えば、上述したように、血液抵抗率は、流速に伴って直接的に、およびヘマトクリット値とは逆に変動する。結果として、抵抗計測において流速とヘマトクリット値の影響を分離することが困難となり得る。短期間では、ヘマトクリット値は事実上一定であり、これは問題にならないが、長期的な監視の場合、ヘマトクリット値の考えられる変動およびその抵抗率への影響を考慮すべきである。ヘマトクリット値依存性が(例えば、比率の消去によって)除去されるメトリクスを有利に使用して、心臓の健康における変化の長期的な監視を容易にすることができる。例えば、v
maxが心周期中の最大流速であり、v
minが最小流速である場合、流量比ηは、
【0185】
【数5】
として定義され得る。
【0186】
ηは、健康な心臓であれば大きく、弱い、または罹患した心臓であれば小さいと予測されるであろう。そのようなメトリクスの利点は、抵抗率ベースの血流センサ(例えば、上述したようなもの)において、流速およびヘマトクリット値の影響から解放することが困難となり得ることであり、方程式(6)においては、あらゆるヘマトクリット値依存性が相殺されるであろう。その他同様のメトリクスを構成し、臨床的観察を通して検証することもできる。
【0187】
その他の実施形態において、ヘマトクリット値と流れは別々に計測される。一実施形態において、ヘマトクリット値は、流速が既知である(且つ、好ましくは固定である)領域における抵抗を計測することによって測定される。別の実施形態においては、小型流量センサが、個々の赤血球の通過を検出する。例えば、上記で
図13に示したセンサ実施形態は、6〜8ミクロン範囲の距離Sで、半導体基板上に作製され得る。
【0188】
半無限媒質の場合、この種類の機器によって計測される電圧Vは、
【0189】
【数6】
によって求められ、ここでpは媒質の抵抗率であり、lは印加される電流である(BarberおよびBrown、J.Phys.E:Sci.Instrum.、17、723(1984年)を参照)。生理学的状況において、半無限媒質の近似は疑わしい場合があるが、方程式(7)は、機器サイズSがその他の寸法(例えば、血管の直径)に対して小さくなる際には、信頼できるものとなる。この文脈において、方程式(7)からの逸脱は、1のオーダーの形状因子によって特徴付けられる傾向があり、近似を信頼性のあるものにするであろう。
【0190】
寸法Sが赤血球(Red Blood Cell;RBC)のサイズと同程度になる場合、新たな影響が検出可能となる。個々のRBCがセンサの近くを通過する際、電子回路内の散弾雑音に類似した離散的な崩壊をポテンシャル場に作成する。この効果を使用して、個々のRBCをカウントし、ヘマトクリット値の絶対指標を求めることができる。RBCの異なる配向から生じる抵抗率の変動により、抵抗率に対するヘマトクリット値および流速の影響を分離した、流れの計測結果が求められる。例えば、
図23および24A〜24Cを参照されたい。これら2つのパラメータは、その後、患者の健康の明確な指標として使用され得る。
【0191】
その他の実施形態において、負傷(例えば、出血)の検出および創傷管理に血流センサが使用される。内出血または外出血をもたらすあらゆる負傷は、負傷部位を囲む血管におけるフロープロファイルも変化させることになる。したがって、出血が停止したか否かを検出するために、負傷部位もしくは手術部位に、またはその付近に、流量センサを移植してよい。手術部位の場合、兆候が明らかになる前であってもアクションを取ることができるよう、手術後の内出血を検出するためにそのようなセンサを移植することが有用となり得る。
【0192】
さらに他の実施形態では、血液の供給先である体組織または臓器における生理作用のインジケータとして、血流を使用する。体内のシステム、臓器、または組織がより活動的になったとき、それらの位置への血流は、増大した代謝要求を満たすために増加することが一般に知られている。例えば、脳の種々のエリアへの血流は、それらのエリアが活動的である場合(例えば、種々の種類の精神活動中)に増加する。脳内またはその周囲の血流センサを使用して、そのような活動を検出し、種々の精神活動を脳の関連領域と関連付けることができる。血流の増加が予測される状況でそれがないことは、異常を示す場合もある。
【0193】
関連の実施形態において、本願に記載するようなセンサは、「嘘発見機」を構成するために用いられる。虚偽の挙動および虚偽でない行動に従事している被検体を研究することにより、血流パターンにおける特徴的差異(例えば、脳のいくつかのエリアがより活動的になる場合がある)が識別され、その後、これらの差異は、その他の被検体における虚偽の行動を検出するために使用される。同様に、胃および腸は、消化中に増加した血流を受け取るため、胃腸の血管内に設置されたセンサを使用して、消化プロセスを検出および監視することができる。
【0194】
腫瘍への血流は、当該腫瘍へのサイズおよびそれが増殖しているか縮小しているかによって決まるため、悪性腫瘍等の異常組織を監視することもできる。腫瘍に送り込む血管における血流の変化は、治療の所与の過程がどのように有効に稼働しているかについての目安を提供し得る。この情報は、臨床医が治療を継続するか変更するかを判断するのに使用され得る。
【0195】
本願に記載した使用法は例示的なものであり、本発明は血流計測用の特定の使用法に限定されるものではないことが、十分に理解されるであろう。
【0196】
C.移植可能薬物送達
いくつかの実施形態において、システムは、例えば、当該システムの機器の1つ以上が薬物送達機器として作用する、薬物送達機能を含む。例えば、当該機器の1つは、「Personal Implantable Paramedic」と題され、2006年8月31日に出願された、米国仮特許出願第60/824,119号に記載されているような移植可能薬物送達機器であってよく、その開示は参照することにより本願に組み込まれる。したがって、システムの機器の1つ以上が移植可能医療機器を含んでよく、そのうちの1つ以上が患者の体内に移植され、体内への生理活性物質の制御放出を可能にすることができる。機器は、薬物を充填した1つ以上の容器と、投与機構と、電池および/またはエネルギー捕捉回路と、マイクロチップとを備えてよい。さらに、機器は、体内の状態を計測し、診断を実行する制御ユニットに情報を送信する、センサを備えてよい。薬物を投与すべきであると制御ユニットが判断した場合には、当該センサは特定の薬物を放出するために、1つ以上の薬物容器に対して信号を送信することができる。機器は、除細動パルス等のソースから周囲電気エネルギーを採取することにより、容器および/またはセンサにエネルギーを与えることができる。その他の実施形態において、容器および/またはセンサは、電池または放射性同位体等の内在動力源によって動力供給されることができる。
【0197】
本発明の身体移植可能な医療器具の一実施形態において、当該身体移植可能な医療器具は、手術中に体内に設置されるステントに内蔵され得る。例えば、ステントは、心臓発作のリスクがある心臓病患者の左冠状動脈内に設置されることが多い。動脈に挿入されるステントに身体移植可能な医療器具を組み込むことは、いずれにせよ、体に加わる応力は最小にしつつ、非常に望ましいエリア内への身体移植可能な医療器具の設置を可能にする。左冠状動脈への設置により、体の外部から送達される場合よりも少ない薬物容量の送達も可能になる。左冠状動脈内に送達されると、薬物はほぼすぐに心臓に引き込まれる。
【0198】
本発明の別の実施形態において、身体移植可能な医療器具は、体内のどこかの組織に縫い付けることが可能なループまたはその他のアタッチメントを含む。これにより、心臓発作の場合の薬物を送達するために心臓組織等の特定の所望エリア、または、抗癌剤を送達するために腫瘍があると考えられるエリアに、当該器具を設置することが可能になる。
【0199】
本発明の一実施形態は、浸透圧ポンプ、モーターポンプ、ワックスカプセル化医薬的因子の電気放出、およびワックス表面の皮膚用パッチ剤の電気放出だけでなく、当該技術分野において既知の移植可能な医療機器による薬物の投与のあらゆる方法を含み得る。さらに、投与の方法は、薬物を放出するためにエネルギーを採取し開封する、圧電性結晶を含み得る。本発明の別の実施形態において、Santiniら、2005年2月1日に出願された米国特許第6,849,463号および2003年4月22日に出願された第6,551,838号によって教示されるような、1つ以上の個々にカプセル化された容器のシステムも使用され得る。また、投与の方法は、薬物を注射する磁針を含み得る。
【0200】
使用される材料および投与の方法は、身体移植可能な医療器具が少なくとも10年の体内における耐用期間を有し、必要に応じて、1秒以内に薬物を投与できるように設計されるべきである。これらの数は単なる指針であり、限定を意味するものではない。
【0201】
身体移植可能な医療器具の一実施形態において、薬物を内部に保つために、容器の上端部に金属層またはポリマー層を設置してもよい。薬物を放出することが望ましい場合には、身体移植可能な医療器具は当該容器を活性化させることができる。電流は、金属全体に送られて、それを溶解させることができる。ポリマーの場合には、電流がそれを薬物に対して透過性にすることができる。移植に適した任意の金属またはポリマーが使用され得る。使用される材料の重要な特徴は、最適な条件が整えば、瞬時に溶解しながら、薬物の望ましくない分散を回避するために人体の内部において長く存続し得る点である。材料の特性および層の厚さが、これらの特徴を決定することになる。使用が考えられる材料は、チタンおよびプラチナならびにそれらの合金等、人体内で使用するのに適したあらゆる金属を含む。厚さは、体内において依然として長く、すなわち、少なくとも10年存続可能でありながら、できる限り小さいものであるべきである。薄層は、当該層が瞬時に溶解されるようにし、体内に放出される金属またはポリマーの量も制限して、毒性に関するあらゆる問題を制限することが可能である。
【0202】
身体移植可能な医療器具の別の実施形態では、異なるpHの局所領域を作成することにより、薬物を放出することが望ましい場合に溶解され得る、容器を覆って設置された金属またはポリマー等のフィルムを使用する。例えば、電位は、微細加工電極全体にかかり、H+イオンを放出し、それによりpHを低下させることができる。これは、極めて局所的な領域において為され、除去される層を直ちに囲むことができる。血液のpHは約7.4であり、電極に局所的な領域におけるpHは、約2以下まで下がり得る。pHに対して極めて感度の高い、安定性または溶解性を有する金属またはポリマーを使用することができる。極めて低いpHに曝露されると、当該材料は溶解するであろう。あるいは、薬物を放出させるのに十分なほど材料の透過性を増大させるpHの変化の結果として膨張する材料が使用され得る。pH変化は小スケールで行われることができ、血液が流れているエリアにおいて発生し得るため、その他の容器の付近および周辺エリア内のpHは影響を受けないであろう。薬物が放出されると、pHは非常に瞬時に正常に戻るであろう。
【0203】
身体移植可能な医療器具の別の実施形態において、カプセル化層を溶解するために、局所的発熱が使用され得る。例えば、間に細いワイヤがある2本の電極を使用することができる。電極間に十分高い電流が印加されると、ワイヤの周辺に局所的な高温が生成され得る。この熱は、ポリマーを溶解させるか透過性にして、薬物を放出することができる。温度上昇の結果としていくつかのポリマーが膨張し、それによってカプセル化層の透過性を増大して、薬物を通過させることができるであろう。
【0204】
身体移植可能な医療器具の別の実施形態では、カプセル化層の残りの部分とは異なる、金属またはポリマーの1つ以上の窓を利用する。窓は、機器全体でなく当該窓に局所的に放射刺激を印加できるように設計され得る。窓は、材料の薄い領域であってもよい。あるいは窓は、電流、pH、または温度等の刺激を受けて迅速に薬物を放出するよう特別に設計された、異なる金属またはポリマー組成物で構成されてもよい。これは、体の他の部分にはより安定した材料を使用しながら、溶解してなくなることができる材料の小型窓を可能にする。窓は、開いた際に薬物を瞬時に窓から出すことが依然として可能でありながら、できる限り小さいものであるべきである。窓を小さくすることにより、当該窓を開けるために使用される同じ刺激強度で、より大きい窓の厚さを使用することができる。窓の面積は、約0.001mm
2から約10mm
2、より具体的には約0.01mm
2から約5mm
2、最も具体的には約1mm
2であってもよい。窓面積mm
2に対し、窓の厚さは、約0.02μmから約200μm、より具体的には約0.05μmから約20μm、最も具体的には約0.2μmであってもよい。使用される厚さは、窓面積が小さくなれば大きく、窓面積が大きくなれば小さくなってもよい。
【0205】
身体移植可能な医療器具の別の実施形態では、当該技術分野において既知である技術を使用して、薬物の分子を表面に共有結合させることができる。薬物を放出することが望ましい場合、共有結合は、酸化または還元によって切断され得る。使用が考えられる1つの結合は炭素−ケイ素結合であり、この結合は、当該技術分野において既知の技術を使用して切断され得る。身体移植可能な医療器具の別の実施形態では、カプセル化層用に膜を利用し、薬物を放出することが望ましい場合は、膜を通して薬物を駆動するために、当該膜全体に電流を印加することができる。例えば、薬物が正に帯電し、膜の内部から外部へ高く十分な正の電流が印加されると、薬物が押し出され得る。局所的なpHまたは温度を変化させることにより、薬物放出時に膜透過性を増大させることができる。
【0206】
カプセル化層に使用するための考えられるポリマーは、pHの変化を受けて溶解または膨張するpH感受性ポリマーと、温度変化を受けて溶解または膨張する温度感受性ポリマーと、膜電位が印加された場合のみ薬物を通過させることが可能なイオン交換膜とを含む。
【0207】
身体移植可能な医療器具のその他の実施形態では、薬物を放出するために、上述した機構のうち1つを超えるものを組み合わせて利用する。多くの薬物およびカプセル化材料にとって、機構1つでは薬物を放出するのに十分ではあり得ない。しかしながら、機構を2つ組み合わせて適用すると、薬物が放出され得る。例えば、チタンは、その上端部に極めて安定な酸化物層を有するため、極めて良好なインプラント材料である。しかしながら、電流を印加するだけでその酸化物層を溶解させることは非常に困難である。溶液pHから約1または2等の低pHへの変化と結合させると、チタン表面の周辺において、酸化物層およびチタンはより容易に溶解され得る。その他の金属も同様の挙動を示す。これは、薬物を放出するのに組み合わせて適用される1つを超える機構を要するため、薬物の放出のための安全機構を提供するという付加的利益を有する。これは、薬物の望ましくない放出を防止するであろう。隣接する容器から等、pHを局所的に変化させた場合であっても、薬物を放出するために、依然としてカプセル化フィルム全体に電流を印加する必要があるであろう。
【0208】
その他の実施形態において、任意の数の上述した機構の任意の組み合わせを、薬物の放出を活性化させるために、組み合わせて使用してもよい。
【0209】
本発明の一実施形態は、除細動パルス等のソースから発せられる周囲電気エネルギーを分路する電気回路を備える。本発明の別の実施形態は、除細動パルス等のソースから周囲エネルギーを引き込むアンテナを収容する。さらに、本発明の留置中、医師は、除細動コイル等のエネルギー源によって弱い電流を送りながらこれらの容器を配向し、除細動パルスからエネルギーを採取するために最適なアライメントで容器を設置することができる。身体移植可能な医療器具の一実施形態において、エネルギー採取回路はブリッジ整流器を含み得る。別の実施形態においては、アクティブ整流器が使用され得る。
【0210】
上述したもの等、その他の動力源にも関心が持たれている。
【0211】
本発明の別の実施形態は、除細動パルスによってエネルギーを与えられるセンサであって、当該センサから収集されたデータに基づいて、特定の用量およびタイミングで薬物を放出するために、データを分析して信号を容器へ送るペースメーカへデータをブロードキャストする、センサを備える。
【0212】
本発明の一実施形態において、患者は、動脈を通る血流を計測するセンサを心臓内に有するであろう。除細動パルス中、センサはエネルギーを与えられ、当該センサが置かれている動脈を通る血流を計測する。センサは血流データをペースメーカコンピュータへブロードキャストし、当該ペースメーカコンピュータは最適な治療法を決定するために診断を行う。次いで、コンピュータは治療法を送達するよう容器へ信号を送る。例えば、コンピュータ診断により動脈が詰まっていると判断された場合、コンピュータは、詰まった動脈内の容器に、凝血塊を溶解させるために若干のヘパリンを放出するよう信号で伝えることができる。
【0213】
本発明の実施形態は、「Pressure Sensors Having Stable Gauge Transducers」2006年3月21に出願された米国特許第7,013,734号、「Pressure Sensors Having Transducers Positioned To Provide For Low Drift」2006年3月7日に出願された米国特許第7,007,551号、「Implantable Pressure Sensors」2006年4月18日に出願された米国特許第7,028,550号、「Pressure Sensors Having Spacer Mounted Transducers」2004年12月28日に出願された米国特許出願第11/025793号、「Internal Electromagnetic Blood Flow Sensor」2005年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/739174号、「Measurement of Physiological Parameters Using Dependence of Blood Resistivity on Flow」2005年9月1日に出願された米国仮特許出願第60/713881号、および、「Continuous Field Tomography」2005年10月6日に出願されたPCT出願PCT/US2005/036035号に記載されているような、しかしこれらに限定されない、血流、圧力、および温度用のセンサを含むがこれらに限定されないセンサを備え、これらの出願はすべて参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0214】
本発明の一実施形態は、体の種々の箇所に置かれたセンサも備える。さらに、本発明の一実施形態は、除細動パルス等の外部イベントからエネルギーを採取することによってエネルギーを与えられるセンサを備える。
【0215】
本発明の一実施形態において、ペースメーカ等の制御ユニットと、容器およびセンサとの間の信号送受信は、2006年4月28日に出願された係属中のPCT出願PCT/US2006/016370号「Pharma−lnformatics System」に記載されている方法によって、上述したようにして生じる。
【0216】
身体移植可能な医療器具の一実施形態において、通信システムを使用して、特定の薬物を送達するために制御ユニットから身体移植可能な医療器具へ符号信号を送ることができる。通信システムを使用して、体全体の異なる位置に位置付けられた複数の身体移植可能な医療器具を同時に管理することができる。
【0217】
本発明の一実施形態は、緊急事態において除細動パルスと併せて薬物療法で投与されることが多い剤を備える。そのような薬物療法は一般に、1mgのエピネフリン、1mgのアトロピン、40mgのバソプレシン、150mgのアミオダロン、70〜100mgのリドカイン、および6〜12mgのアデノシンを含むがこれらに限定されない。身体移植可能な医療器具によって投与されるこれらの薬物の量は、身体移植可能な医療器具の位置の心臓に対する接近等の要因により、緊急事態において一般に投与される量とは異なる場合がある。
【0218】
標的臓器が心臓である本発明の一実施形態において、送達用の例示的な薬物は、増殖因子、血管形成剤、カルシウムチャネル遮断薬、血圧降下薬、強心薬、抗アテローム硬化作用薬、抗凝血剤、β遮断薬、抗不整脈剤、強心配糖体、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、原虫感染症を阻害する剤、および抗癌薬を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0219】
本発明の一実施形態は、抗凝血因子を含む。
【0220】
抗凝血剤は、ヘパリン、ワルファリン、ヒルジン、マダニ抗凝血性ペプチド、エノキサパリン、ダルテパリン、およびアルデパリン等の低分子量ヘパリン、チクロピジン、ダナパロイド、アルガトロバン、アブシキシマブ、ならびにチロフィバンを含むがこれらに限定されない。
【0221】
本発明の一実施形態は、うっ血性心不全を治療するための剤を含む。うっ血性心不全を治療するための剤は、強心配糖体、強心薬、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、カリウムイオン保持性利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ニトロ系血管拡張薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、直接血管拡張薬、アルファサブ1アドレナリン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、および交感神経様作用薬を含むがこれらに限定されない。
【0222】
本発明の一実施形態は、心筋症を治療するのに適した剤を含む。心筋症を治療するのに適した剤は、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、およびフェニレフリンを含むがこれらに限定されない。
【0223】
本発明の一実施形態は、再狭窄の発症を防止または削減する剤を含む。再狭窄の発症を防止または削減する剤は、タキソール(パクリタキセル)および関連化合物、ならびに抗分裂剤を含むがこれらに限定されない。
【0224】
本発明の一実施形態は、抗炎症薬を含む。抗炎症薬は、任意の既知の非ステロイド系抗炎症薬、および任意の既知のステロイド系抗炎症薬を含むがこれらに限定されない。抗炎症薬は、サリチル酸誘導体(アスピリン)、パラアミノフェノール誘導体(アセトアミノフェン)、インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン)、ヘテロアリール酢酸(ケトロラック)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン)、アントラニル酸(メフェナム酸)、エノール酸(オキシカム)、およびアルカノン(ナブメトン)等、任意の既知の非ステロイド系抗炎症薬、ならびに、コルチコステロイド、および、それらの関連する糖質コルチコイド(代謝)および鉱質コルチコイド(電解調整)作用に対する生理活性のある合成類似体を含む任意の既知のステロイド系抗炎症薬を含むがこれらに限定されない。また、炎症の治療に使用されるその他の薬物または抗炎症薬は、すべてのヒスタミンおよびブラジキニン受容体拮抗薬、ロイコトリエンおよびプロスタグランジン受容体拮抗薬、ならびに血小板活性化因子受容体拮抗薬等のオータコイド拮抗薬を含むがこれらに限定されない。
【0225】
本発明の一実施形態は、抗菌剤を含む。抗菌剤は、抗生物質(例えば、抗菌性のもの)、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗原虫剤を含む。抗菌剤の限定的でない例は、スルホンアミド、トリメトプリム−スルファメトキサゾール配合剤、キノロン、ペニシリン、およびセファロスポリンである。
【0226】
本発明の一実施形態は、抗炎症薬を含む。
【0227】
抗癌薬は、癌化学療法剤を含む、臓器上または臓器内に存在し得る腫瘍(例えば、粘液腫、脂肪腫、乳頭状弾性線維腫、横紋筋腫、線維腫、血管腫、奇形腫、房室結節の中皮腫、肉腫、リンパ腫、および標的臓器に転移する腫瘍)を治療するのに適したものを含み、その多くは当該技術分野において既知であるが、これらに限定されない。
【0228】
本発明の一実施形態は、血管新生因子(例えば、臓器修復を推進するため、または、血栓症を回避する生体バイパスの開発のため)を含む。血管新生因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、アンギオジェニン、形質転換増殖因子αおよびβ、腫瘍壊死因子、アンジオポイエチン、血小板由来増殖因子、胎盤増殖因子、肝細胞増殖因子、ならびにプロリフェリンを含むがこれらに限定されない。
【0229】
本発明の一実施形態は、血栓溶解剤を含む。
血栓溶解剤は、ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、α2−プラスミン阻害剤の阻害剤およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1の阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme;ACE)阻害剤、スピロノラクトン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue Plasminogen Activator;tPA)、インターロイキン1β変換酵素の阻害剤、ならびにアンチトロンビンIIIを含むがこれらに限定されない。
【0230】
本発明の一実施形態は、カルシウムチャネル遮断薬を含む。
【0231】
カルシウムチャネル遮断薬は、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピン等のジヒドロピリジン系、ジルチアゼム等のベンゾジアゼピン系、ベラパミル等のフェニルアルキルアミン系、ベプリジル等のジアリールアミノプロピルアミンエーテル系、およびミベフラジル等のベンズイミドール置換テトラリン系を含むがこれらに限定されない。
【0232】
本発明の一実施形態は、降圧因子を含む。
【0233】
降圧剤は、ヒドロクロロサイアザイド、フロセミド、スピロノラクトン、トリアムテレン、およびアミロリド等のサイアザイド系を含む利尿薬;クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドパ、トリメタファン、レセルピン、グアネチジン、グアナドレル、フェントラミン、フェノキシベンザミン、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン、プロパノロール、メトプロロール、ナドロール、アテノロール、チモロール、ベタキソロール、カルテオロール、ピンドロール、アセブトロール、ラベタロールを含む抗アドレナリン作動薬;ヒドララジン、ミノキシジル、ジアゾキシド、ニトロプルシドを含む血管拡張薬;および、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリルを含むアンジオテンシン変換酵素阻害剤;ロサルタン等のアンジオテンシン受容体拮抗薬;ならびに、ニフェジピン、アムロジピン、フェロジピンXL、イスラジピン、ニカルジピン、ベンゾジアゼピン系(例えば、ジルチアゼム)、およびフェニルアルキルアミン系(例えば、ベラパミル)を含むカルシウムチャネル拮抗薬を含むがこれらに限定されない。
【0234】
本発明の一実施形態は、抗不整脈薬を含む。
【0235】
抗不整脈薬は、ナトリウムチャネル阻害薬(例えば、リドカイン、プロカインアミド、エンカイニド、フレカイニド等)、ベータアドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロール)、活動電位持続の延長薬(例えば、アミオダロン)、およびカルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル、ジルチアゼム、塩化ニッケル等)を含むがこれらに限定されない。心抑制薬(例えば、リドカイン)、心臓刺激剤(例えば、イソプロテレノール、ドーパミン、ノルエピネフリン等)および複数の心臓剤の組み合わせ(例えば、心房細動を治療するためのジゴキシン/キニジン)の送達。
【0236】
D.スマート非経口送達システム
いくつかの実施形態において、本発明の通信システムは、例えば、2006年7月7日に出願され、「Smart Parenteral Delivery System」と題された、係属中の米国仮出願番号第60/819,750号に記載されているようなスマート非経口送達システムにおいて用いられ、その開示は参照することにより本願に組み込まれる。これらの実施形態における本発明のスマート非経口送達システムは、非経口の有益な剤、またはその他の方法によって、例えば注射器、吸入器、もしくは医薬を投与するその他の機器の使用によって体内に服用される有益な剤の、特異的な識別および検出を提供する。スマート非経口送達システムは、チップを有する有益な剤を含み得る。チップは、患者に投与される有益な剤の種類に関する情報を含有することができる。保持容器、例えばバイアルから有益な剤を抽出すると、当該バイアルから注射器内のチップへ信号が送られ得る。ブロードキャスト信号は、バイアルから抽出された有益な剤の種類を示すことができる。患者への注射時、情報は注射器から、患者の体内、体表面上、またはその付近に位置付けられた情報管理データベースへ送られることができる。
【0237】
VI.さらなるシステム考察
特定の実施形態に関して本発明を説明したが、当業者であれば、多数の修正形態およびその他の実施形態が可能であることを認識するであろう。ほぼすべての病状を検出または治療するために、準静電領域において無線で通信している、センサ、データコレクタ、およびエフェクタを任意の組み合わせで含む、数限りないネットワークが作成および調整され得る。例は上述のとおりである。より一般的には、動力源(または動力受信器)、センサ、エフェクタ、および/または送信器を含む小型自律チップを体内の事実上どこにでも設置できることが十分に理解されるであろう。チップはデータ収集または制御システムにワイヤで接続される必要がないため、全く新しい診断および治療モデルを開発することができる。種々のパラメータを計測するために、体全体にセンサを配置することができ、データは体を通って無線で中央コレクタへ送信される。収集されたデータを使用して、治療活動(例えば、薬物の放出、電気的または機械的刺激等)を自動的に開始または一時停止することができ、また当該データを、後で臨床医に報告するために格納してもよいし、患者が兆候を経験する前であっても、病気が発現しつつある患者に勧告するリアルタイムの警報を生成するために使用してもよい。
【0238】
以下は、本発明の実施形態によって実装可能な診断および治療技術の範囲のさらなる例示として提供するものである。
【0239】
いくつかの実施形態において、1つ以上の遠隔機器を患者の心臓および/もしくは隣接する血管の中ならびに/またはその周囲に移植し、一回拍出量(心周期あたり血管を通って移動する血液の量)、血流速度、ヘマトクリット値、大動脈内の血液の酸素含有量等を含むがこれらに限定されない心臓機能に関連する種々のパラメータを、継続的に監視するために使用することができる。これらのパラメータのいずれかにおける変化は、介入を正当化する、悪化しつつある心臓の状態を信号で伝えることができる。
【0240】
しかしながら、従来これらのパラメータは、心臓内科医が連続的に利用可能なものではなく、一般に研究所内において実行される必要がある侵襲処置中にのみ計測され得るものである。ここでプラットフォームおいて実装された心臓監視システムは、心臓内科医が患者の状態を継続的に監視することを可能にする。さらに、データは患者が通常の日常活動に取り掛かっている間に収集され得るため、心臓内科医は、患者の心臓が実際はどのように動作しているかに関するより正確な情報を毎日取得することができる。
【0241】
さらに、警報を生成することができるデータコレクタがシステム内に含まれる実施形態において、患者は応急手当を必要とするイベント(例えば、虚血)が生じると直ちに警告され得る。また他の実施形態において、そのようなイベントが生じた際、患者に警告することに加えて、またはその代わりに、エフェクタを自動的に動作させることができる。
【0242】
関心が持たれている1つの心臓パラメータは、種々の手法で計測され得る一回拍出量である。例えば、上述したような血流センサは、既知の断面の領域にある大動脈または大静脈に移植されてよく、流速を心周期全体にわたって統合し、次いで断面積を乗じると、通過する血液の容積を決定することができる。圧力センサ、電気的断層撮影、またはひずみゲージを用いることもできる。
【0243】
心周期全体にわたる流量変動は、上述した血流センサを使用して有効に計測され得る、心臓の健康のもう1つのインジケータである。例えば、v
maxが心周期中の最大流速であり、v
minが最小流速である場合、流量比ηは、
【0244】
【数7】
として定義され得る。
【0245】
ηは、健康な心臓であれば大きく、弱い、または罹患した心臓であれば小さいと予測されるであろう。そのようなメトリクスの利点は、抵抗率ベースの血流センサ(例えば、上述したようなもの)において、流速およびヘマトクリット値の影響から解放することが困難となり得ることであり、方程式(6)においては、あらゆるヘマトクリット値依存性が相殺されるであろう。その他同様のメトリクスを構成し、臨床的観察を通して検証することもできる。
【0246】
血管閉塞は、流速、血液粘度、血圧温度、酸素含有量、および、種々の細胞廃棄物、凝固因子等の有無等、種々のパラメータにおける変化を使用して検出されることができ、それらのいずれかまたはすべては、閉塞の可能性が懸念される血管内またはその周囲に移植された遠隔機器を使用して検出されることができる。いくつかの実施形態において、急性閉塞の検出を使用して、抗凝血剤を放出するエフェクタを作動させることもできるし、当該検出によって、患者に医学的な注意を求めるように警告することもできる。介入が正当化されるか否か、またはどの種類の介入が正当化されるかを判断するために、慢性閉塞を経時的に監視することができる。
【0247】
別の応用エリアは、創傷管理および負傷検出におけるものである。例えば、本発明によるセンサは、創傷における感染および/または治癒についての初期徴候を提供し得る計測データを提供することができる。例えば、凝固剤、抗体等を検出するために、創傷部位に化学センサが移植される場合があり、変動は感染またはその他の問題を示す場合がある。創傷部位に温度センサを移植してもよく、感染の初期徴候を提供している部位において温度は上昇する。さらに、血流センサは、内出血の潜在的リスクがある部位に設置され、エリア内の出血がいつ停止したかを検出するために使用され得る。また、負傷または感染の徴候を検出するために装備されたセンサは、神経の障害を持つ患者に移植されてよく、データ収集機器は、負傷または感染といったイベント時に患者に警告し、感染に気付かないことによる手指、足指、または手足の喪失を潜在的に回避するであろう。
【0248】
同様に、癌マーカーを検出するように構成されたセンサが、癌の発現または再発のリスクがある患者の血流中または他の部分に移植される場合がある。癌マーカーの存在またはレベルは臨床医によって経時的に研究されることができ、マーカーのレベルが上がることは、患者に医学的な注意を求めるように信号で伝えるために使用される場合がある。腫瘍が存在する場合、当該腫瘍の増殖または縮小を監視するために、例えば、血流、腫瘍によって周囲組織にかけられる圧力等の変化に基づいて、センサを移植することができる。
【0249】
本発明の実施形態を使用して、放射線治療等の癌治療を管理することもできる。例えば、放射線センサは腫瘍内または周囲の健康な組織内に設置されることができ、異なるセンサによって検出された放射線のレベルを使用して、放射線ビームの目的または焦点を、より選択的に腫瘍細胞を標的とするように調節し、健康な組織を保護することができる。
【0250】
また他の実施形態において、システム、臓器、および組織の生理作用レベルは、適切に構成および設置された、送信器機能を持つセンサを使用して、継続的に監視され得る。例えば、温度上昇は一般に臓器における作用の増大に伴って起こり、代替として、またはそれに加えて、組織がより活動的になった際に増大した血流を登録するために血流センサを使用してもよく、そのようなセンサは、例えば脳活動を監視するために使用され得る。胃および/または腸収縮、子宮収縮、筋肉のけいれん(例えば、背中におけるもの)等を含む、望ましいまたは望ましくない筋収縮を検出するために、圧力センサ、ひずみセンサ等を用いてもよい。下痢または背痛等、病気の後遺症が患者によって確認されるよりもかなり以前に、いくつかの状態、例えば過敏性腸症候群、筋肉のけいれん等を検出することも可能である。いくつかの場合において、望ましくない作用の増大の検出により、患者が兆候を自覚する前であっても、中和剤(例えば、筋肉弛緩剤)の自動放出をトリガし得る。
【0251】
本願に記載したプラットフォームは、医学研究に対する適用性も有する。例えば、上述した丸薬摂取システムからのデータを、その他のセンサからのデータと相関させ、新しい医薬的因子またはその他の治療法の有効性を評価するために使用することができる。また、健康な患者からのデータを回収し、罹患した患者からのデータと比較して、どのパラメータが最も信頼できる疾病のインジケータであるかについてより良い理解を提供することも可能である。
【0252】
本発明の実施形態は、システムの異種コンポーネントが、互いにおよび/または中央機器と無線で通信している移植可能な診断および/または治療プラットフォームをさらに含み、当該中央機器(ハブ)は、1つ以上の移植可能な遠隔機器から提供された情報に基づいてアクションを引き起こすプロセッサを含む。例えば、複数の異種遠隔センサ機器を患者の体全体に移植し、生理的データを、例えば「缶」またはその他何らかの内部処理機器内に存在する中央演算処理装置に通信することができる。次いでプロセッサは、通信された情報に基づいて、例えば、多量の薬物を投与する、電気刺激を印加する等、何らかの治療行為を実行するよう、1つ以上のエフェクタ遠隔機器に活性化信号を送出することができる。このようにして、患者の個々の生理的パラメータに一意的に基づき治療が最も必要であるときにリアルタイムで治療上の処置を患者に提供する、高度に制御された診断および/または治療システムを患者に提供することができる。また、検出されたパラメータに基づいて治療を調節または滴定することができ、例えば、検出された生理的パラメータに基づいて、より多い、または少ない剤を投与することができる。例えば、心臓システムは、例えば上述したように心臓の周囲に置かれた、センサおよびエフェクタ機器の両方を含む複数の遠隔機器とともに展開され得る。センサ機器は、例えば流量データ、圧力データ等の生理的データを、缶内に存在する中央プロセッサに無線でリレーすることができる。受信されたデータに基づいて、缶は、例えば、心臓病の薬をどの程度の量エフェクタから投与するか、どの種類の電気刺激をどこに与えるか、といった治療的処置の決定を行い、続いて、望ましい治療上の処置を達成するために、適切なエフェクタへ信号を通信することができる。
【0253】
VII.システム
本発明の態様は、例えば、それぞれ準静電プロトコルを(上述のように)使用して無線で通信する遠隔機器(流量センサ、例えば抵抗流量センサ、電磁式流量センサ)等、本発明の機器を含む移植可能な医療機器およびシステムを含む、システムを含む。当該システムは、診断的応用、治療的応用等を含むがこれらに限定されない、多数の異なる機能を実行することができる。
【0254】
システムは、多数の異なるコンポーネントまたは要素を有することができ、そのような要素は、センサ、エフェクタ、処理要素、例えば1つ以上のセンサからの信号を受けて、例えば心刺激のタイミングを制御するためのもの、遠隔計測用送信器、例えば、移植可能な医療機器と体外の位置との間で情報を遠隔で交換するためのもの、薬物送達要素等を含み得るがこれらに限定されない。
【0255】
いくつかの実施形態において、移植可能な医療システムは、例えば、ペーシング応用、心臓再同期療法応用等、心臓血管への応用のために用いられる。
【0256】
当該システムの使用法は、機器によって取得されたデータの視覚化を含み得る。本発明者らの幾人かは、本発明のシステムを使用することによって集められるであろうセンサ情報の複数のソースを協調させるために、種々のディスプレイおよびソフトウェアツールを開発した。これらの例は、国際PCT出願番号PCT/US2006/012246号において見られ、当該出願の開示は、その優先権出願とともに、参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【0257】
本発明による移植可能な実施形態を使用して取得されたデータを、必要に応じ、移植可能なコンピュータによって報告することができる。そのようなデータは、自動または手動分析のために、コンピュータシステムおよびインターネットを含むコンピュータネットワークへ定期的にアップロードされ得る。
【0258】
所与の移植可能なシステムにおいて、遠隔に位置付けられた外部医療機器、または患者の対表面にあるより基部に近い医療機器、または患者の体内にある別のマルチチャンバ監視/治療送達システムとの通信を可能にするために、アップリンクおよびダウンリンクの遠隔計測機能が提供され得る。上述した種類の格納された生理的データは、ダウンリンク遠隔計測で送信された問い合わせ命令を受けて、アップリンクRF遠隔計測により、リアルタイムに生成された生理的データおよび非生理的データとともにシステムから外部プログラマまたはその他の遠隔医療機器へ送信され得る。リアルタイム生理的データは一般に、リアルタイムサンプリングされた信号レベル、例えば心臓内の心電図振幅値、および、本発明により開発された寸法信号を含むセンサ出力信号を含む。非生理的な患者データは、現在プログラムされている機器動作モードおよびパラメータ値、電池状態、機器ID、患者ID、移植日、機器プログラミング履歴、リアルタイムイベントマーカー等を含む。移植可能なペースメーカおよびICDという状況で、そのような患者データは、プログラムされた検知増幅器感度、ペーシングまたは電気的除細動パルス振幅、エネルギー、およびパルス幅、ペーシングまたは電気的除細動リードインピーダンス、ならびに、機器性能に関連する蓄積された統計、例えば、検出された不整脈症状の発現および適用された治療法に関するデータを含む。マルチチャンバ監視/治療送達システムは、そのようにして、種々のリアルタイムのまたは格納された、そのような生理的または非生理的データを開発し、そのような開発されたデータを、本願では集合的に「患者データ」と称する。
【0259】
VIII.キット
例えば上述したようなシステムの1つ以上のコンポーネントを含むキットも提供される。例えば、キットは、(i)患者の体との準静電結合を介して信号を送信すること、および(ii)患者の体との準静電結合を介して、送信された信号を受信すること、のうち少なくとも1つを行うように構成される、例えば移植可能なまたは摂取可能な機器を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、そのような機器を2つ以上含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、例えばリード上にまたは遠隔移植可能な機器として存在する、上述したような流量センサを含み得る。
【0260】
いくつかの実施形態において、キットは、例えばICDまたはペースメーカ缶の形で、少なくとも制御ユニットをさらに含み得る。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、構造体および制御ユニットは、細長い導電部材によって電気的に結合され得る。対象キットのいくつかの実施形態において、当該キットは、対象機器を使用するための説明またはそれを取得するための要素(例えば、説明を提供するウェブページへユーザを案内するウェブサイトURL)をさらに含むこととなり、これらの説明は一般に基板に印刷され、当該基板は、添付文書、包装、試薬容器等のうち1つ以上であってもよい。対象キットにおいて、便利または望ましいように、同じまたは異なる容器内に1つ以上のコンポーネントが存在する。
【0261】
以下の実施例は、限定としてではなく例示として提示するものである。