特許第5714221号(P5714221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714221
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波送受信方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-223188(P2009-223188)
(22)【出願日】2009年9月28日
(65)【公開番号】特開2010-99466(P2010-99466A)
(43)【公開日】2010年5月6日
【審査請求日】2012年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2008-251125(P2008-251125)
(32)【優先日】2008年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100101812
【弁理士】
【氏名又は名称】勝村 紘
(74)【代理人】
【識別番号】100070437
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 将次
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127144
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 卓三
(72)【発明者】
【氏名】中田 一人
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/057092(WO,A1)
【文献】 特開平04−254754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、少なくとも前記複数の送信ビームの形成に使用する超音波振動子に対して前記駆動信号を供給する信号発生ユニットと、
前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し前記複数の送信ビーム各々について、前記各送信ビームを中心とする同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算する計算ユニットと、
計算された前記駆動信号の遅延時間に基づいて前記信号発生ユニットを制御し、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行う制御ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、つの受信ビームからなる基本並列同時受信ビーム群を単位とし、前記複数の送信ビーム各々に対して複数の前記基本並列同時受信ビーム群を配置する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、前記複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列された二次元アレイプローブであり、
前記計算ユニットは、複数の前記受信ビームが前記同心円の円周上で等距離に配列されるように、前記超音波振動子毎の前記受信遅延時間を計算する請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記基本並列同時受信ビーム群における複数の前記受信ビームは、空間的に等間隔に配置される請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、少なくとも前記複数の送信ビームの形成に使用する超音波振動子に対して前記駆動信号を供給する信号発生ユニットと、
複数の同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、前記各同心円の中心に前記各送信ビームを配置するために、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算する計算ユニットと、
計算された前記駆動信号の遅延時間に基づいて前記信号発生ユニットを制御し、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行う制御ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項6】
それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、超音波を送受信する方法であって、
一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、
前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し、前記複数の送信ビーム各々について、前記各送信ビームを中心とする同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、
計算された前記遅延時間に基づいて前記駆動信号の発生を制御し、計算された前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行うこと
を具備する超音波送受信方法。
【請求項7】
それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、超音波を送受信する方法であって、
一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、
複数の同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、前記各同心円の中心に前記各送信ビームを配置するために、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し、
計算された前記遅延時間に基づいて前記駆動信号の発生を制御し、計算された前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行うこと
を具備する超音波送受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質を維持しつつ画像収集レートを向上させることができる超音波診断装置及び超音波診断装置に用いられる超音波送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は,超音波プローブに内蔵された振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し,生体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる超音波反射波を前記振動素子により受信して,超音波画像を生成し表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被爆が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。係る特性から、超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、脳血管などの診断に利用されている。
【0003】
この様な超音波診断装置では、近年、電子式や機械式による三次元領域の超音波走査(三次元ボリュームスキャン)により、リアルタイムで三次元超音波画像(RT3D画像)を表示する技術が使われている。また、三次元超音波画像のボリュームレートを向上させる方法として複数のビームを同時に受信(並列同時受信)する技術、複数の方向の送信ビームを合成して送信する技術等が使われている。
【0004】
ところで、超音波診断の分野においては、従来から、二次元の平面スキャン、三次元ボリュームスキャンに関わらず、エコー信号の収集レート(データ収集レート)を向上させたいという要請がある。例えば、三次元超音波画像のボリュームレートを向上させるためには、並列同時受信ビーム本数は少なくとも4ビーム以上、できれば8ビームから32ビームが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−155843号公報
【特許文献2】特開平5−344975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、次の様な問題がある。
【0007】
例えば、従来の三次元ボリュームスキャンの典型例として、図10に示すような4×2=8ビームによる並列同時受信、又は図11に示すような4×4=16ビームによる並列同時受信により、図12に示すような三次元ボリュームスキャンが実行される。この様な構成では、各受信ビームRの送信ビーム中心軸Tからの距離が等距離でなく、並列同時受信ビーム間の感度が不均一になるという問題がある。また、この受信ビーム間の感度不均一性を信号処理によって事後的に補正しようとすれば、後段の画像処理などに複雑な回路(フィルタ)も必要となる上に、ビーム間不均一を完全に解消するのは難しい。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、画質を維持しつつ、信号収集レートを向上させる超音波送信を実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置に用いられる超音波送受信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、少なくとも前記複数の送信ビームの形成に使用する超音波振動子に対して前記駆動信号を供給する信号発生ユニットと、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し、前記複数の送信ビーム各々について、前記各送信ビームを中心とする同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算する計算ユニットと、計算された前記駆動信号の遅延時間に基づいて前記信号発生ユニットを制御し、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行う制御ユニットと、を具備する超音波診断装置である。
請求項に記載の発明は、それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、少なくとも前記複数の送信ビームの形成に使用する超音波振動子に対して前記駆動信号を供給する信号発生ユニットと、複数の同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、前記各同心円の中心に前記各送信ビームを配置するために、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算する計算ユニットと、計算された前記駆動信号の遅延時間に基づいて前記信号発生ユニットを制御し、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行う制御ユニットと、を具備する超音波診断装置である。
請求項に記載の発明は、それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、超音波を送受信する方法であって、一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し、前記複数の送信ビーム各々について、前記各送信ビームを中心とする同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、計算された前記遅延時間に基づいて前記駆動信号の発生を制御し、計算された前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行うこと、を具備する超音波送受信方法である。
請求項に記載の発明は、それぞれに供給される駆動信号に基づいて超音波を被検体に向けて送信し且つ前記被検体から超音波の反射波を受信しエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、超音波を送受信する方法であって、一回の超音波送信において複数の送信ビームを形成するための駆動信号を発生し、複数の同心円周状であって且つアジマス方向に隣り合う前記同心円の一部が重なるように複数の受信ビームを配置するために、前記超音波振動子毎の受信遅延時間を計算し、前記各同心円の中心に前記各送信ビームを配置するために、前記駆動信号の遅延時間を前記超音波振動子毎に計算し、計算された前記遅延時間に基づいて前記駆動信号の発生を制御し、計算された前記超音波振動子毎の受信遅延時間を用いて受信遅延に関する制御を行うこと、を具備する超音波送受信方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、画質を維持しつつ、信号収集レートを向上させる超音波送信を実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置に用いられる超音波送受信方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示したブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る超音波送信部21の構成を説明するためのブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る4×2ビーム並列同時受信の場合における,受信感度均一送信機能の概念を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る4×4ビーム並列同時受信の場合における,受信感度均一送信機能の概念を説明するための図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る2次元アレイプローブを用いた3次元(超音波)走査を説明するための図である。
図6図6は、従来の実施形態に係る1次元アレイプローブを用いた1×8ビーム並列同時受信の場合における,受信感度が不均一となる概念を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る1次元アレイプローブを用いた1×8ビーム並列同時受信の場合における,受信感度均一送信機能の概念を説明するための図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る受信感度均一送信機能の処理の流れを示したフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に係る並列同時受信ビームを同心円状に配置した場合の受信感度均一送信機能の概念を説明するための図である。
図10図10は、従来の実施形態に係る4×2ビーム並列同時受信の場合における,受信感度が不均一となる送信機能の概念を説明するための図である。
図11図11は、従来の実施形態に係る4×4ビーム並列同時受信の場合における,受信感度が不均一となる送信機能の概念を説明するための図である。
図12図12は、従来の実施形態に係る2次元アレイプローブを用いた3次元(超音波)走査を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0017】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成図を示している。
【0018】
同図に示すように、本超音波診断装置10は、装置本体11、超音波プローブ12、装置本体11に接続されオペレータからの各種指示・命令・情報を装置本体11に取り込むための外部入力装置13、モニター14とから構成される。入力装置13には、送信条件の入力、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチ・ボタン、マウス、キーボードが設けられる。また、装置本体11には、超音波送信部21、超音波受信部22、Bモード処理部23、ドプラ処理部24、画像生成部25、表示制御部27、制御プロセッサ(CPU)28、インタフェース部29、記憶部32が設けられる。
【0019】
超音波プローブ12は、圧電セラミック等の音響/電気可逆的変換素子としての複数の超音波振動子を有する。複数の超音波振動子は並列され、プローブ12の先端に装備される。各超音波振動子は、供給される駆動信号(電圧パルス)に従ってそれぞれ所定のタイミングで超音波を発生する。各超音波振動子からの超音波はビームを形成し、被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射される。各超音波振動子は、この反射波を受信しエコー信号を発生し、チャンネル毎に超音波受信部22に取り込まれる。
【0020】
なお、超音波プローブ12は、複数の超音波振動子が一方向に沿って配列された一次元アレイプローブ、複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列された二次元アレイプローブのいずれであってもよい。
【0021】
超音波送信部21は、超音波プローブ12に超音波送信のための駆動信号(送信電圧パルス)を供給する装置であり、複数の(チャンネル毎に)送信ユニット210を有している。
【0022】
図2は、超音波送信部21の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、超音波送信部21は、超音波振動子毎に設けられた複数の送信ユニット210を有している。各送信ユニット210は、複数のタイミング調整回路211、送信回路212が設けられている。
【0023】
各送信ユニット210における複数のタイミング調整回路211は、少なくとも並列送信する複数のビーム数に対応して設けられている。各タイミング調整回路211は、制御プロセッサ28にからの制御に従って、対応する超音波振動子に供給する電圧パルスに与えるべき遅延時間を有する制御信号S(図2参照)を発生する。ここで、超音波振動子に供給する電圧パルスに与えるべき遅延時間とは、後述する受信感度均一送信を実現するために(すなわち、送信超音波をビーム状に集束させ且つ基本送信ビームの位置が、基本並列同時受信ビーム群の各受信ビームから等距離に配列される送信指向性を持つように)、超音波振動子毎に計算されるものである。
【0024】
送信回路212は,制御プロセッサ28からの制御に従って発生されたレートパルス(超音波送受信基準レート信号)を基準として超音波振動子毎の送信ユニット210内のタイミング調整回路211により送信ビーム毎に遅延時間処理された制御信号S(送信電圧パルス制御信号)を加算/合成する。
【0025】
超音波受信部22は、超音波プローブ12から受け取ったエコー信号をチャンネル毎に増幅し、受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えた後、加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、超音波受信ビーム(受信指向性)が形成(観念)される。特に、本超音波受信部22は、送信ビームに対して複数方向に対応する並列同時受信ビームを取得するために、得られるエコー信号に対して複数ビーム数分の異なる受信遅延を与えて並列的に複数受信ビーム数分の複数回の遅延加算を実行する。なお、この受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される(この指向性は、一般に「走査線」と呼ばれる)。加算後のエコー信号は、Bモード処理部23と、ドプラ処理部24に送られる。
【0026】
Bモード処理部23は、図示しないが、対数変換器、包絡線検波回路から構成される。対数変換器は、エコー信号を対数変換する。包絡線検波回路は対数変換器からの出力信号の包絡線(envelope)を検波(detect)する。この検波信号は検波データとして画像生成部25へ出力される。
【0027】
ドプラ処理部24は、周波数解析によりその解析結果や、フィルタを用いて血流成分を抽出し平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点(複数サンプル点)について求める。
【0028】
画像生成部25は、Bモード処理部23から入力した走査線信号列で構成される検波データを用いてフレーム相関処理等を実行した後、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換することでBモード画像を生成する。また、画像生成部25は、ドプラ処理部24から入力した血流情報を用いて、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像を作成する。
【0029】
表示制御部27は、画像生成部25から受け取った超音波画像と所定の情報(例えば文字情報、指定されたROI等)とを合成し、モニター14に送り出す。
【0030】
制御プロセッサ28は、ユーザの入力装置13やネットワークを経由して入力されたモード選択、ROI設定、送信開始・終了等の各種指示に基づき、記憶部32に記憶された送受信条件、装置制御プログラム等を読み出し、これらに従って、当該超音波診断装置を静的又は動的に制御する。また、制御プロセッサ28は、記憶部32に記憶された専用プログラムを読み出し、これに従って、後述する受信感度均一送信機能を実現するように、超音波送信部21等を制御する。さらに、制御プロセッサ28は、受信感度均一送信機能に従う処理(受信感度均一送信処理)において、基本送信ビーム数nと基本送信ビーム数毎の受信ビーム数mとを含む送信条件に基づいて、振動子毎の遅延時間を計算する。この振動子毎の遅延時間の計算は、例えば記憶部32に格納される計算式に基づいて実行さされる。
【0031】
記憶部32は、制御プロセッサ28の制御のもと、Bモード処理部23やドプラ処理部24から受け取った信号データ(生データ)、画像生成部25から受け取った画像データ(静止画像、動画像)を記録する。また、記憶部32は、当該装置の制御プログラム、診断プロトコルや送受信条件等の各種データ群、受信感度均一送信機能を実現するための専用プログラムを記憶する。さらに、記憶部32は、基本送信ビーム数n及び基本送信ビーム数毎の受信ビーム数mの組み合わせと各超音波振動子の遅延時間とを対応付けたテーブル、基本送信ビーム数n及び基本送信ビーム数毎の受信ビーム数mとに基づいて各超音波振動子の遅延時間を計算するための所定の計算式に関する情報を記憶する。
【0032】
モニター14は、表示制御部27からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を静止画像又は動画像として表示する。
【0033】
(受信感度均一送信機能)
次に、本超音波診断装置1が有する、受信感度均一送信機能について説明する。この機能は、超音波受信において並列同時受信される複数の受信ビームを、例えばその複数の受信ビーム群の中心軸(or送受信ビーム中心軸)を基準として三次元的に等間隔又は等角度に配列した場合において、超音波送信音場を形成する基本送信ビームが、2×2を単位とした基本並列同時受信ビーム群の中心に配置されるように送信制御するものである。ここで、基本並列同時受信ビーム群とは、一つの送信ビームの中心軸位置に対する複数の受信ビームを意味する。また、基本並列同時受信ビーム群の中心とは、例えば当該基本並列同時受信ビーム群を構成する各受信ビームの中心軸を用いて定義される中心位置を意味する。
【0034】
図3は、本受信感度均一送信機能の概念を説明するための図である。基本送信ビームは、基本送信ビームT1、T2の2つである。また、基本送信ビームT1に対する基本並列同時受信ビーム群は、当該送信ビームT1に含まれる2×2=4つの受信ビームRであり、基本送信ビームT2に対する基本並列同時受信ビーム群は、当該送信ビームT2に含まれる2×2=4つの受信ビームRである。この様に4×2=8ビームによる並列同時受信を行う場合であれば、各基本送信ビームT1、T2の各中心軸が対応する基本並列同時受信ビーム群の中心に配置されるように、各超音波振動子に供給する(送信)駆動信号の遅延時間を制御する。
【0035】
図4は、本受信感度均一送信の他の形態を示した図である。基本送信ビームは、基本送信ビームT1、T2、T3、T4の4つである。この様に、4×4=16ビームによる並列同時受信を行う場合であれば、各基本送信ビームT1、T2、T3、T4の各中心軸が対応する基本並列同時受信ビーム群の中心に配置されるように、各超音波振動子に供給する(送信)駆動信号の遅延時間を制御する。
【0036】
なお、この様な複数の基本送信ビームから構成される送信ビームは、次の様にして生成することができる。例えば図3に示した基本送信ビームT1、基本送信ビームT2から構成される送信ビームであれば、各タイミング調整回路211により、基本送信ビームT1の波形を実現するために遅延時間処理された制御信号S1と基本送信ビームT2の波形を実現するために遅延時間処理された制御信号S2を送信回路212にて振動子毎に加算し、加算された制御信号に従って各振動子に送信電圧パルスを供給することで、基本送信ビームT1、基本送信ビームT2を同時に送信するためのビームを生成することができる。従って、三次元ボリュームスキャンを行う場合には、図5に示すように、三次元領域が基本送信ビームT1及び基本送信ビームT2によって走査されることになる。しかしながら、これに拘泥されず、例えば(基本送信ビーム毎にチャンネルを分離して)基本送信ビームT1、基本送信ビームT2を個別に送信するようにしてもよい。
【0037】
また、図3図4等では、説明を具体的にするため、基本送信ビームから等距離にある並列同時受信されるビームは2×2=4つである場合を例示した。しかしながら、これに拘泥されず、一つの基本送信ビームに対応する並列同時受信される複数の受信ビーム数mは、送信ビームの中心位置から等距離に配置されるようなものであれば、いくつであってもよい。従って、例えば、基本送信ビーム毎の並列同時受信される複数の受信ビームmを6とする場合であれば、送信ビームの中心位置から同心円周上に等角度間隔(例えば60度間隔)で配列されている基本送信ビームを用いることになる。係る場合であっても、並列同時受信において、受信感度を均一にする超音波送信を実現することができる。
【0038】
また、基本送信ビーム数nは、並列同時受信するビームに数に応じて適宜制御される。従って、本実施形態に係る装置において、例えば4×8=32ビームによる並列同時受信を行う場合には、基本送信ビーム数n=8と設定されることになる。
【0039】
さらに、本受信感度均一送信機能は、二次元アレイプローブによる三次元ボリュームスキャンに拘泥されず、1次元アレイプローブにも適用することができる。例えば、1次元アレイプローブによって1×8=8ビームによる並列同時受信を行う場合、一般的には図6に示すように等間隔に配列された受信ビームR1〜R8の中間をその中心軸とする送信ビームTaが用いられる。係る場合、本受信感度均一送信機能に従えば、図7に示すように並列同時受信される1×2=2ビームのそれぞれがその中心から等距離に配置される基本送信ビームTb、基本送信ビームTc、基本送信ビームTd、基本送信ビームTeを用いて、並列同時受信のための送信ビームを構成することができる。
【0040】
(動作)
次に、本超音波診断装置1の受信感度均一送信処理における動作について説明する。
【0041】
図8は、受信感度均一送信処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、入力装置13からの入力、或いは予め登録されている情報からの選択に基づいて、基本送信ビーム数n、基本送信ビーム毎の基本並列同時受信ビーム数mを含む送信条件が設定される(ステップS1)。なお、例えば基本送信ビーム数n、基本送信ビーム毎の基本並列同時受信ビーム数mについては、入力装置13からの入力又は選択に拘泥されず、特に変更のための入力がなければプリセットされた値が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0042】
次に、制御プロセッサ28は、決定された送信条件に従って、各超音波振動子の基本送信ビーム毎の遅延時間を決定する(ステップS2)。この各超音波振動子の基本送信ビーム毎の遅延時間の決定は、所定の計算式を用いることで実行される。制御プロセッサ28は、決定した各超音波振動子の基本送信ビーム毎の遅延時間に関する情報を、対応する各タイミング調整回路211に供給する(ステップS3)。
【0043】
次に、各タイミング調整回路211は、供給された遅延時間に関する情報に基づいて、各遅延時間処理された制御信号S(送信電圧パルス制御信号)を発生し、送信回路212に送り出す。送信回路212は、各タイミング調整回路211により送信ビーム毎に遅延処理された制御信号Sを加算/合成し,それに基づいて駆動信号(電圧パルス)を対応する各振動子に供給する(ステップS4)。
【0044】
超音波プローブ12の各振動子は、与えられた駆動信号(電圧パルス)に従って被検体に対し超音波ビームを送信する。送信された各ビームは、被検体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、超音波プローブ12の各超音波振動子によりエコー信号として取得される(ステップS5)。
【0045】
取得されたエコー信号は、超音波受信部22、Bモード処理部23において所定の処理を受け、画像生成部25に供給される。画像生成部25は、供給されたエコー信号に基づいて、超音波画像を生成する。モニター14は、生成された超音波画像を所定の形態で表示する(ステップS6)。
【0046】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0047】
本超音波診断装置によれば、超音波受信において並列同時受信される複数の受信ビームを、例えばその(送信)ビーム中心軸を基準として三次元的に等間隔又は等角度に配列した場合において、超音波送信を形成する基本送信ビームが、2×2を単位とした基本並列同時受信ビーム群の中心に配置されるように送信制御する。従って、並列同時受信ビーム本数を例えば8ビームから32ビーム程度に設定した場合であっても、並列同時受信される複数の受信ビームの感度を均一にすることができる。その結果、画質を維持しつつ、信号収集レートを向上させることができる。
【0048】
また、本超音波診断装置では、基本送信ビーム数n、基本送信ビーム毎の基本並列同時受信ビーム数mは、入力装置13からの所定の操作等により任意に制御することができる。従って、所望の信号収集レートに好適な基本送信ビーム数n、基本送信ビーム毎の基本並列同時受信ビーム数mを選択することで、画質の高い超音波画像を常に提供することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0050】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0051】
(2)上記実施形態においては、並列同時受信される複数のビームが、基本送信ビームの中心軸から等距離且つ等間隔で配置されている例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、複数の並列同時受信ビームを基本送信ビームの中心軸から等距離に配列する構成であればよい。従って、例えば、複数の並列同時受信ビームが基本送信ビームの中心軸に対して等角度に配列されていない場合であっても、本実施形態に係る超音波診断装置と同様に感度均一性という効果を実現することができる。
【0052】
また、当然ではあるが、基本並列同時受信ビーム群は、2×2を単位とする例に限定されず、どのような構成単位であってもよい。例えば、図9に示すように、同心円状に配列された8個の受信ビームを基本並列同時受信ビーム群とし、その中心に基本送信ビームの中心軸が配置されるようにしてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態において、例えば並列同時受信される複数のビームと基本送信ビームの中心軸との距離r、或いは並列同時受信される複数のビームの基本送信ビームの中心軸に対する角度θを積極的に制御可能とする構成にしてもよい。係る場合には、制御プロセッサ28は、例えば入力装置13から入力される距離r、角度θと所定の計算式とにより、超音波振動子毎の遅延時間を計算する。
【0054】
(4)上記実施形態により基本並列同時受信ビーム群の中心に配置される送信ビームを並列同時送信する場合、その送信順序に限定はない。例えば、図7の例では、送信ビームTbと送信ビームTcとを並列同時送信し、次に送信ビームTdと送信ビームTeとを並列同時送信すると言った具合に、隣り合う(空間的連続する)複数の送信方向についての送信ビームを同時に送信する組み合わせでもよい。また、例えば送信ビームTbと送信ビームTdとを並列同時送信し、次に送信ビームTcと送信ビームTeとを並列同時送信する、或いは、例えば送信ビームTbと送信ビームTeとを並列同時送信し、次に送信ビームTcと送信ビームTfとを並列同時送信すると言った具合に、空間的に連続していない複数の送信方向についての送信ビームを同時に送信する組み合わせでもよい。
【0055】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上本発明によれば、画質を維持しつつ、信号収集レートを向上させる超音波送信を実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置に用いられる超音波送受信方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信部、22…超音波受信部、23…Bモード処理部、24…ドプラ処理部、25…画像生成部、27…表示制御部、28…制御プロセッサ(CPU)、29…インターフェース部、30…MI値情報生成部、32…記憶部、210…送信装置、211…タイミング調整回路、212…送信回路
図1
図2
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