【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1
(1)顔料分散体の調製工程
下記の成分を下記の配合量で混合し、ビーズミルで分散して、顔料分散体を得た。なお、ウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製)の分子量は10000であった。カーボンブラック(MA11(商品名)三菱化学製)の平均粒径は、動的光散乱法による測定(堀場製作所製 粒度分布測定装置LB−500)で126.8nmであった。
【0041】
カーボンブラック(MA11(商品名)三菱化学製) 7g
顔料分散剤(ソルスパース32000(商品名)ルーブリゾール社製) 2g
顔料分散剤(ソルスパース5000(商品名)ルーブリゾール社製) 0.5g
メチルメタクリレート(和光純薬製) 9g
ウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製) 4g
酢酸エチル 25g
合計 45.5g
【0042】
(2)O/W型エマルションの調製工程
下記の成分を下記の配合量で混合し、水相を得た。
【0043】
純水 60g
反応性乳化剤(アクアロンKH-10(商品名)第一工業製薬製) 1g
合計 61g
【0044】
上記(1)で得られた顔料分散体に、開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.3gを加えた後、上記水相中に加え、超音波分散機にて乳化して、O/W型エマルションを得た。
【0045】
(3)O/W型エマルションの重合工程
上記(2)で作製したO/W型エマルションを窒素雰囲気下70℃に加熱し攪拌を4時間行い、カプセル化顔料の微粒子の水分散体を作製した。
【0046】
(4)溶媒の除去工程
上記(3)で作製したカプセル化顔料の微粒子の水分散体をエバボレーターで減圧加熱して酢酸エチルを除去した。
【0047】
(5)インクの製造工程
上記(4)で得たカプセル化顔料の微粒子の水分散体を10000Gで1分間遠心分離し、凝集物・粗粒を除去した後、内径φ25mm平均孔径3μmのフィルターを通した。この水分散体のフィルター通過性は良好であった。
得られたカプセル化顔料の平均粒径は動的光散乱法による測定(堀場製作所製 粒度分布測定装置LB−500)で138.5nmであり、重合時及び遠心で沈降した凝集物の重量は2.9gであった。
【0048】
下記の成分を下記の配合量で混合し、インクを作成した。
【0049】
上記で得られたカプセル化顔料の微粒子の水分散体 3部
ジエチレングリコール 1部
グリセリン 1部
合計 5部
【0050】
得られたインキをPETシートに塗布し、加熱乾燥後、塗膜をティッシュで強く擦ったところ、擦れ落ちることはなかった。
また、得られたインキは、市販のプリンター(エプソン社製)にて良好に吐出することが出来た。
【0051】
実施例2
実施例1のウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製)をポリエステルアクリレートオリゴマー(アロニックスM6100(商品名)東亞合成製)に代えた以外、実施例1と同様の方法で実験を行った。
カーボンブラックの平均分散粒径は121.2nmであり、得られたカプセル化顔料の平均粒径は129.3nmであった。また、沈降凝集物は3.6gであった。得られた水分散体のフィルター通過性も良かった。インキの性能も実施例1と同様であった。
【0052】
実施例3
実施例1のウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製)をエポキシアクリレートオリゴマー(バンビーム22C(商品名)ハリマ化成製)に代えた以外、実施例1と同様の方法で実験を行った。
カーボンブラックの平均分散粒径は122.7nmであり、得られたカプセル化顔料の平均粒径は131.8nmであった。また、沈降凝集物は4.3gであった。得られた水分散体のフィルター通過性も良かった。インキの性能も実施例1と同様であった。
【0053】
比較例1
実施例1のウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製)をヘキサデカンに代えた以外、実施例1と同様の方法で実験を行った。
カーボンブラックの平均分散粒径は142.7nmであり、得られたカプセル化顔料の平均粒径は146.2nmであった。また、沈降凝集物は3.1gであった。得られた水分散体のフィルター通過性は非常に悪かった。
得られたインキをPETシートに塗布し、加熱乾燥後、塗膜をティッシュで強く擦ったところ、僅かに擦れ落ちが見られた。
【0054】
比較例2
実施例1のウレタンアクリレートオリゴマー(UV3200B(商品名)日本合成化学製)を塩ビ・酢ビ共重合樹脂(ソルバインC5R(商品名) 日信化学工業製)代えた以外、実施例1と同様の方法で実験を行った。
カーボンブラックの平均分散粒径は123.2nmであり、得られたカプセル化顔料の平均粒径は147.1nmであった。また、沈降凝集物は7.8gと多かった。得られた水分散体のフィルター通過性は良かった。インキの性能も実施例1と同様であった。但し、濃度は非常に薄かった。
【0055】
実施例1〜3及び比較例1〜2の結果を表1にまとめた。
【0056】
【表1】
【0057】
注:表1中、略号及び符号は下記を意味する。
MMA:メチルメタクリレート。
平均粒径:0.2μm以上は×、0.2μm未満は○。
重合時凝集物:固形分量の20%以上が凝集した場合×、20%未満が凝集した場合○。
フィルター通過性: 10000G 1分間遠心分離の後、内径φ25mm平均孔径3μmのフィルター通過量が5cc以下の場合×、5ccより多い場合○。
塗膜性能:塗膜をティッシュで強く擦って塗膜が落ちる物×、落ちない物○。
【0058】
表1の結果から、実施例1〜3では、O/W型エマルションの油相を構成するモノマーとしてメチルメタクリレートを使用し、オリゴマーとして1分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有するラジカル重合性オリゴマーを使用したので、各種性能に優れていた。これに対し、比較例1では、ラジカル重合性オリゴマーの代わりに非ラジカル反応性のヘキサデカンを使用したので、フィルター通過性と塗膜性能が劣っていた。比較例2では、ラジカル重合性オリゴマーの代わりに非ラジカル反応性の塩ビ・酢ビ共重合樹脂を使用したので、重合時の凝集物が多量に発生し、高濃度の顔料分散体が得られなかった。
【0059】
実施例4〜14
(1)顔料分散体の調製工程
表2に示す成分を同表に示す配合量で混合し、実施例1と同様にして、顔料分散体を得た。
【0060】
(2)O/W型エマルションの調製工程
表3に示す顔料分散体に,ラジカル重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.1gを加えた後、表3に示す乳化剤及び水(蒸留水)を表3に示す配合量で加え、超音波分散機にて乳化して、O/W型エマルションを得た。
【0061】
(3)O/W型エマルションの重合工程
上記(2)で作製したO/W型エマルションを窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に加熱し4時間反応させて、カプセル化顔料の微粒子の水分散体を作製した。
【0062】
(4)溶媒の除去工程
上記(3)で作製したカプセル化顔料の微粒子の水分散体をエバボレーターで減圧加熱して酢酸エチルを除去した。
【0063】
(5)保存安定性評価
上記(4)で得たカプセル化顔料の微粒子の水分散体を20000Gで6分間遠心分離し、凝集物・粗粒を除去した。得られた水分散体8gに対して、ジエチレングリコール(DEG)2g、テトラエチエングリコールモノブチルエーテル(TEGBE)2g、又は、DEG1g及びTEGBE1gの両者を添加し、70℃で1ヶ月放置し、粘度変化を測定した。初期粘度に比較して変化率が±5%以内のものは○、±5%より大きく20%以下のものは△、20%より大きいものは×として評価した。結果を表3に示す。
【0064】
(6)インクの製造工程
上記(4)で得たカプセル化顔料の微粒子の水分散体を10000Gで5分間遠心分離し、凝集物・粗粒を除去した後、3μmのフィルターを通した後、下記の成分を下記の割合で混合し、インクジェットインクとした。
上記で得られたカプセル化顔料の微粒子の水分散体 80部
ジエチレングリコール 10部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 9部
サーフィノール465(商品名;エアープロダクツジャパン製)1部
合計 100部
得られたインクを、市販のプリンタ(エプソン社製)にて吐出し、吐出可能な場合を○、吐出不能の場合を×として評価した。結果を表3に示す。
【0065】
(7)その他の物性
顔料粒径、エマルション粒径及びカプセル顔料粒径を下記の方法で測定し、その結果も表3に示した。
・顔料粒径
上記(1)で作製した顔料分散体を、堀場製作所製 粒度分布測定装置LB−500で測定して得た平均粒径である。
・エマルション粒径
上記(2)で作製したO/W型エマルションを、堀場製作所製 粒度分布測定装置LB−500で測定して得た平均粒径である。
・カプセル顔料粒径
上記(4)で作製した水分散体を10000Gで5分間遠心分離し、凝集物・粗粒を除去した後、3μmのフィルターを通した後、堀場製作所製 粒度分布測定装置LB−500で測定して得た平均粒径である。
【0066】
【表2】
【0067】
表2中の略号は下記を示す。
MA11:三菱化学製カーボンブラック「MA11(商品名)」
UV3200:日本合成化学製ウレタンアクリレートオリゴマー「UV3200(商品名)」
UV7510:日本合成化学製ウレタンアクリレートオリゴマー「UV7510(商品名)」分子量3500
UV7550:日本合成化学製ウレタンアクリレートオリゴマー「UV7550(商品名)」分子量2400
UV7600:日本合成化学製ウレタンアクリレートオリゴマー「UV7600(商品名)」分子量1400
MMA:和光純薬工業製メチルメタクリレート
1,9NAD:共栄社化学製1,9ノナンジアクリレート
M405:東亞合成株式会社製ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート
ソルスパース32000:ルーブリゾール社製顔料分散剤「ソルスパース32000(商品名)」
ソルスバース5000:ルーブリゾール社製顔料分散剤「ソルスパース5000(商品名)」
【0068】
【表3】
【0069】
表3中の略号は下記を示す。
(A):第一工業製薬製アニオン系反応性乳化剤「アクアロンKH−10(商品名)」
(B):第一工業製薬製アニオン系反応性乳化剤「アクアロンBC2020(商品名)」
(C):日本油脂製ノニオン系乳化剤「PE200(商品名)」反応性乳化剤
(D):日本油脂製ノニオン系乳化剤「AE400(商品名)」反応性乳化剤
(E):日本油脂製ノニオン系乳化剤「PME1000(商品名)」反応性乳化剤
【0070】
表3から、本発明によれば、保存安定性に優れ、水性インク用の顔料として好適なカプセル化顔料が得られることがわかる。また、実施例4〜11と実施例12〜14との対比から、多官能性ラジカル重合性モノマーと多官能性ラジカル重合性オリゴマーを併用することにより、グリコールエーテル系溶剤などの水溶性有機溶剤に対する耐性の高いカプセル化顔料が得られることがわかる。