特許第5714254号(P5714254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714254一体的なフィルタ/排気口を有する単一ポートデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714254
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】一体的なフィルタ/排気口を有する単一ポートデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20150416BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61B1/00 300B
   A61B17/02
   A61B1/00 332D
   A61B1/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-173143(P2010-173143)
(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公開番号】特開2011-31046(P2011-31046A)
(43)【公開日】2011年2月17日
【審査請求日】2013年6月11日
(31)【優先権主張番号】61/230,200
(32)【優先日】2009年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/845,135
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジー. オコニーウスキー
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/015566(WO,A2)
【文献】 特開2002−204829(JP,A)
【文献】 特開2009−101150(JP,A)
【文献】 米国特許第05722962(US,A)
【文献】 特表2009−545417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0137943(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0251466(US,A1)
【文献】 特表2010−506659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端および近位端を有する柔軟なポート本体;
該柔軟なポート本体を横断する一体排気口であって、該一体排気口は、該柔軟なポート本体の該遠位端と該近位端との間で流体を連絡する管腔を規定し、該一体排気口は、該一体排気を通じて該遠位端から該近位端を通る直線的な流れを可能にするように構成される、一体排気口;ならびに
該管腔内に配置された濾過剤であって、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持または処理するように構成されている、濾過剤、
を備える、腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項2】
前記柔軟なポート本体の前記遠位端と前記近位端との間に延びる第二の管腔をさらに備える、請求項1に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項3】
前記管腔と作動可能に接続された弁をさらに備える、請求項1に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項4】
前記弁が動的に調節可能な開口部を内部に有する、請求項3に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項5】
前記弁が、前記管腔を通る通気ガスの流れを選択的に調節する、請求項3または4に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項6】
前記弁が手で作動される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項7】
前記弁が逆止弁である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項8】
前記弁が電気で作動される弁である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項9】
前記弁が制御ユニットに作動可能に接続されている、請求項8に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項10】
前記制御ユニットが内視鏡により送信された画像を分析するように構成されている、請求項9に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項11】
前記制御ユニットが前記通気ガスの流量を調節するように構成されている、請求項9または10に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【請求項12】
前記柔軟な本体が発泡体材料から形成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年7月31日に出願された米国仮出願番号61/230,200の利益および優先権を主張する。この米国仮出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、外科手術手順において使用するためのシールに関する。特に、本開示は、組織の切開への挿入のために適合されたシールアンカー部材に関し、そしてより特定すると、この挿入物を利用して、通気ガスからの汚染物質を除去するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
今日、患者に対する外傷と回復時間との両方を減少させることを努力して、多くの外科手術手順が、従来の手順において代表的に必要とされる大きい切開部と比較して、小さい皮膚の切開部を通して実施される。一般に、このような手順は、患者の腹部に対して実施されない限り、「内視鏡的」であると称される。患者の腹部に対して実施される場合、この手順は、「腹腔鏡的」であると称される。本開示全体にわたって、用語「最小侵襲性」は、内視鏡手順と腹腔鏡手順との両方を包含すると理解されるべきである。
【0004】
代表的な最小侵襲性手順中、外科手術用物体(例えば、外科手術用アクセスデバイス(例えば、トロカールおよびカニューレアセンブリ)または内視鏡)が、組織の切開を通して患者の身体に挿入される。一般に、患者の身体への外科手術用物体の導入の前に、通気ガスが使用されて、標的外科手術部位の周囲の領域を拡大し、より大きい、よりアクセスしやすい作業領域を作成する。従って、通気ガスが逃れること、および拡大した外科手術部位が収縮するかまたはつぶれることを抑制するために、実質的に流体密なシールの維持が望まれる。
【0005】
この目的で、種々の弁およびシールが、最小侵襲性手順の過程で使用され、そして当該分野において広く公知である。しかし、組織の切開に直接挿入され得、そして種々の外科手術用物体に適応し得、同時に通気された作業空間の一体性を維持する、シールアンカー部材が、依然として必要とされている。
【0006】
さらに、通気ガスは、外科手術の過程において、手順の付随する副産物(例えば、煙または水分)によって汚染され得る。汚染された通気ガスが患者の身体から体外環境(すなわち、手術室)に放出される場合、汚染された通気ガスは、外科医の視線を妨害し得、そして手術環境を汚染し得、次に、その外科手術手順の通常の操作に有害な影響を与え得る。当該分野において公知である、この問題に対する解決策は、弁、止め栓、およびさらなる配管を使用して、汚染された通気ガスを精製または交換することを包含する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1A)
遠位端および近位端を有する柔軟なポート本体;ならびに
該柔軟なポート本体に作動可能に関連するフィルタであって、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持または処理するように構成されている、フィルタ、
を備える、腹腔鏡ポートデバイス。
(項目2A)
上記柔軟なポート本体の上記遠位端と上記近位端との間に延びる管腔をさらに備える、上記項目に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目3A)
上記フィルタが、上記柔軟なポート本体全体にわたって配置された濾過剤を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目4A)
上記フィルタが、上記管腔内に配置された濾過剤を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目5A)
上記管腔と作動可能に接続された弁をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目6A)
上記弁が動的に調節可能な開口部を内部に有する、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目7A)
上記弁が、上記管腔を通る通気ガスの流れを選択的に調節する、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目8A)
上記弁が手で作動される、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目9A)
上記弁が逆止弁である、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目10A)
上記弁が電気で作動される弁である、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目11A)
上記弁が制御ユニットに作動可能に接続されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目12A)
上記制御ユニットが内視鏡により送信された画像を分析するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目13A)
上記制御ユニットが上記通気ガスの流量を調節するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目14A)
上記柔軟な本体が発泡体材料から形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【0008】
本発明はさらに、以下を提供する:
(項目1B)
遠位端および近位端を有する柔軟なポート本体であって、該ポート本体を通って延びる管腔を有する、柔軟なポート本体;ならびに
該管腔内に配置された濾過剤であって、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持または処理するように構成されている、濾過剤、
を備える、腹腔鏡ポートデバイス。
(項目2B)
上記ポート本体を通って延びる第二の管腔をさらに備え、該第二の管腔は、外科手術用器具が該ポート本体を横断することを可能にするように構成されている、上記項目に記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目3B)
上記柔軟な本体が発泡体材料から形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目4B)
上記ポート本体を通って延びる複数のさらなる管腔をさらに備え、該さらなる管腔は、複数の外科手術用器具が該ポート本体を同時に横断することを可能にするように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目5B)
柔軟なポート本体;および
該ポート本体と一体的に形成された濾過剤であって、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持または処理するように構成されている、濾過剤、
を備える、腹腔鏡ポートデバイス。
(項目6B)
上記ポート本体を通って延びる管腔をさらに備え、該管腔は、外科手術用器具が該ポート本体を横断することを可能にするように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目7B)
上記柔軟な本体が発泡体材料から形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目8B)
上記ポート本体を通って延びる複数のさらなる管腔をさらに備え、該さらなる管腔は、複数の外科手術用器具が該ポート本体を同時に横断することを可能にするように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目9B)
上記濾過剤により占められた管腔と作動可能に接続された弁をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目10B)
上記弁が動的に調節可能な開口部を内部に有する、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目11B)
上記弁が、上記管腔を通る通気ガスの流れを選択的に調節する、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目12B)
上記弁が手で作動される、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目13B)
上記弁が逆止弁である、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目14B)
上記弁が電気で作動される弁である、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目15B)
上記弁が制御ユニットに作動可能に接続されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目16B)
上記制御ユニットが内視鏡により送信された画像を分析するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目17B)
上記制御ユニットが上記通気ガスの出力流量を調節するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
(項目18B)
上記管腔が小さい直径寸法を有するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の腹腔鏡ポートデバイス。
【0009】
(摘要)
腹腔鏡ポートデバイスは、遠位端および近位端を有する柔軟なポート本体を備え、この柔軟なポート本体は、この柔軟なポート本体を通って延びる管腔を有する。この管腔は、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持または処理するように構成された、濾過剤を有する。この腹腔鏡ポートデバイスは、この管腔と作動可能に接続された弁をさらに備えて、この管腔を通る通気ガスの流れを選択的に調節する。
【0010】
(要旨)
外科手術用装置が本明細書中に開示され、この外科手術用装置は、身体の膜を横断し、そして通気ガスの濾過を可能にする。腹腔鏡ポートデバイスは、遠位端および近位端を有するポート本体を備え、このポート本体は、このポート本体を通って延びる管腔を有する。少なくとも1つの管腔は、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持するように構成された濾過剤によって実質的に占められ得、そして必要に応じて、このポート本体を通って延びる第二の管腔は、外科手術用器具がこのポート本体を横断することを可能にするように構成される。
【0011】
1つの実施形態において、この外科手術用装置は、濾過剤により占められた少なくとも1つの管腔に流体的に結合された弁をさらに備える。この弁は、内部に動的に調節可能な開口部を規定して、この少なくとも1つの管腔を通る流体または気体の流量を調節する。この弁は、このポート本体と一体的な構成要素であっても、このポート本体から独立した構成要素であってもよい。この弁は、このポート本体内に配置されても、このポート本体の外側に配置されてもよい。
【0012】
特定の実施形態において、この弁は、手で操作される。別の実施形態において、この弁は、電気で作動され、制御信号を介して制御ユニットにより駆動される。この制御ユニットは、この弁に、その開口部を動的に調節して、濾過剤で占められた管腔を通る流量を調節することを指示する。
【0013】
さらなる実施形態において、この外科手術用装置は、ワークステーションを備え、このワークステーションは、上で議論された制御ユニット、および表示ユニットを備える。この外科手術用装置は、腹腔鏡ポートデバイスを通して挿入された通気器具および内視鏡、ならびに上で議論された弁をさらに備える。このワークステーションは、この通気器具に、通気供給源の入力流量を調節することを指示するように構成される。このワークステーションはまた、この弁に、この弁を通る流体または気体の流量を調節することを指示するように構成される。このワークステーションはさらに、内視鏡により伝達される画像を受信し、表示し、そして分析するように構成され、これによって、この分析に基づいて、それに従って通気デバイスおよび弁に指示を送信する。
【0014】
この外科手術用装置は、ポート本体を備える内視鏡ポートデバイスであり得ることがさらに想定され、このポート本体は、通気ガス中に存在する粒子状汚染物質を保持するように構成された濾過剤、および必要に応じて、外科手術用器具がこのポート本体を横断することを可能にするように構成された、このポート本体を通って延びる管腔から実質的に構成される。
【0015】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中で以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一体的なフィルタ/排気口を有する単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図2図2は、実質的に多孔性の構成を有する単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図3図3は、手で制御される外部弁に関連する、図1の単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図4図4は、逆止弁に関連する、図1の単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図5図5は、電気で作動する外部弁に関連する、図1の単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図6図6は、ワークステーションに関連する、図5の単一ポートデバイスの斜視図を示す。
図7図7は、電気で作動する内部弁に関連し、そしてワークステーションにさらに関連する、図1の単一ポートデバイスの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態の詳細な説明)
本開示の実施形態は、種々の改変および代替の構成が可能であるが、これらの実施形態の特定の示される実施形態が図面に示されており、そして以下に詳細に記載される。しかし、本開示の実施形態を開示される特定の形態に限定する意図はなく、逆に、これらの実施形態は、特許請求の範囲に規定されるような本開示の趣旨および範囲内に入る全ての改変、代替の構成、および均等物を網羅することが意図されることが理解されるべきである。
【0018】
図面および以下の説明において、同じ参照番号は、類似の要素または同一の要素を識別し、当該分野において慣習的かつ公知であるように、用語「近位」とは、装置の、使用中に医師に最も近い端部をいい、一方で、用語「遠位」とは、医師から最も遠い端部をいう。
【0019】
本明細書中に記載される最小侵襲性外科手術の1つの型は、単一の外科手術用ポートを通る、複数の器具のアクセスである。この技術は、最小侵襲性外科手術手順であり、この手順は、外科医が、1つの入口点(代表的に、患者の臍)を通して手術することを可能にする。本開示の手順は、体腔を通気することを包含し、そして患者の皮膚の開口部内に配置されたハウジング部材を用いる。内視鏡およびさらなる器具(例えば、把持具、ステープラー、鉗子など)を備える器具がこのポート内に導入されて、外科手術手順を実施し得る。本開示のアクセスポートは、外科的に作製された切開、自然に存在する開口部(例えば、肛門もしくは膣)、または非腹腔鏡手順において、使用され得る。
【0020】
図1は、皮膚の切開に対する本開示のアクセスポートの1つの実施形態を示す。シールアンカー部材100は、本体1を備え、この本体は、患者の皮膚105の切開107を通してこの皮膚を横断するように構成された、一時的な経皮移植物である。図1の実施形態は、経皮移植物を示すが、本体1は、任意の生物学的障壁を横断して、この障壁の反対側の空間の間に選択的な連絡を提供し得ることが想定される。これらのものとしては、器官間の障壁、器官内の障壁、および身体内の全身性の障壁が挙げられる。
【0021】
アクセスポートの本体1は、ほぼ円筒形の形状を有し、第一の直径9Dを有する近位表面9、および第二の直径10Dを有する遠位表面10を有し、直径11Dを有する中間面11が、近位表面9と遠位表面10との間に配置され、その結果、11Dが10Dおよび9Dより小さく、この中間面の近くで狭まり、そして近位表面9および遠位表面10において広がって、ほぼ砂時計の形状を規定するプロフィールを規定する。
【0022】
図1は、近位表面9および遠位表面10を平坦であるように示すが、いずれかの表面のプロフィールが弓形であり、その結果、その表面が凹状であって外科手術用器具の配置を容易にし得るか、または凸状であってこの表面からの流体の除去を容易にし得ることが想定される。
【0023】
本体1は、複数の管腔20、21および22を備え、これらの管腔は、本体1を通しての外科手術用器具の挿入および操作を可能にするように構成される。これらの複数の管腔のうちの1つ(例えば、図1に図示されるような管腔22)は、通気流体送達チャネルとして働く。管腔22は、通気器具110と接続する。通気器具110は、腹腔または他の皮下空間に、流体を運ぶか、または通気流体(例えば、CO)を導入するために適合された、任意の適切な器具であり得る。通気器具110は、ハウジング113、およびハウジング113から延びる細長部材112を備える。ハウジング113は、止め栓弁114を組み込んで、流体の選択的な通過および中断を可能にする。ハウジング113は、止め栓弁114に隣接するルアーコネクタ115をさらに備える。ルアーコネクタ115は、腹腔を通気するために利用される通気供給源116(例えば、CO)への接続のために適合される。細長部材112は、止め栓弁114と連絡する流体導管を規定して、矢印117および118により示される方向への、腹腔内への流体の通過を送達する。
【0024】
本体1は、実質的に柔軟な材料または圧縮性の材料から構成され、その結果、本体1が切開に挿入される場合に、この切開の面に沿って位置する組織が本体1を圧縮し、本体1と組織との間に復元力を生じさせて、これらの間にシール圧力を規定することがさらに想定される。このシール圧力は、本体1が横断する空間(例えば、通気された腔と体外環境との間)を分離する、その周囲の組織との実質的に流体密なシールを形成する。
【0025】
図1をさらに参照すると、一体排気口12は、本体1を横断して管腔13を規定し、この管腔は、本体1の遠位端と近位端における、その他の箇所では分離された空間の間での、制限された気体または流体の連絡を可能にするように構成される。例えば、気体または流体は、腹腔と体外環境との間での平衡圧力を達成する目的で、より高圧である腹腔から、一体排気口12を通って、低圧である体外環境へと、方向矢印119により示される方向に出ることができる。濾過剤(例えば、粒子フィルタ、活性炭、または連続気泡発泡体)が、一体排気口12の管腔13内に配置される。この濾化剤は、管腔13を通過する気体中に存在する、かなりの量の汚染物質を捕捉し得る。
【0026】
この濾化剤は、少量の化合物(例えば、触媒または活性炭)を含み、これによって、この化合物が、汚染された通気ガスまたは流体を処理または反応することが、さらに想定される。
【0027】
代表的な最小侵襲性手順の過程中のシールアンカー部材100の使用および機能が、議論される。最初に、シールアンカー部材100は、公知の外科手術技術を使用して、組織路107に挿入される。次に、通気ガスを腹腔に導入するために、通気器具110がシールアンカー部材100に結合される。この通気ガスの腹腔内への入力流量は、最初、一体排気口12の管腔13を通る気体または流体の出力流量より大きく、その結果、腹腔が通気される。一旦、腹腔がその所望の通気体積および/またはその所望の通気圧力に達したら、通気供給源の入力流量が低下させられて、管腔13を通る気体または流体の出力流量と実質的に同じになり、平衡状態を生じる。この平衡状態において、同じ所望の通気体積および/または同じ所望の通気圧力が、腹腔内で定常的に維持され、最小侵襲性手順を実施するために適切な作業環境を提供する。最小侵襲性手順の過程において、腔内の通気ガスの一部が、煙または他の類似の副産物により汚染される場合、ガスの出力流量が選択的に増加させられて、腔からフィルタを通しての汚染物質の除去を容易にし得る。必要に応じて、通気器具からの通気ガスの入力流量もまた、選択的に増加させられて、より多くの通気ガスを導入して、汚染された気体の脱出を補償し得る。
【0028】
図2を参照すると、シールアンカー部材200が示されており、ここで本体1は、多孔性濾過剤(例えば、粒子フィルタ、活性炭、連続気泡発泡体、または有利な濾過特性を有することが既知である他の材料)から実質的に構成される。このような構成において、本体1は、本体1の遠位端および近位端における、他の箇所では分離された空間の間での、制限された気体または流体の連絡を可能にする。例えば、気体または流体は、高圧である腹腔から、本体1の材料を通って、低圧である体外環境へと、方向矢印119により示される方向に出て、平衡を達成し得る。シールアンカー部材200の作動は、上記シールアンカー部材100の作動と類似である。具体的には、通気供給源の入力流量は、体腔が所望の通気体積および所望の通気圧力に達するまで、最初は本体1を通る気体または流体の出力流量を超えるように調節され得る。次いで、所望の通気体積および所望の通気圧力を維持する目的で、通気供給源の入力流量は低下させられて、本体1を通る出力流量と同じにされる。
【0029】
さらに、図1に図示されるシールアンカー部材100と同様に、シールアンカー部材200は、複数の管腔20、21および22を備え、これらの管腔のうちの1つは、体腔に通気ガスを導入するための通気器具110と接続される。
【0030】
図3を参照すると、シールアンカー部材100は、一体排気口12の管腔13と作動可能に接続された弁120をさらに備え得る。弁120は、管腔13の開閉を選択的に制御するように構成され、これによって、この管腔を通る通気ガスの流れを選択的に調節する。弁120は、その内部に開口部を規定し、この開口部は、この弁を通る流体または気体の連絡を可能にする。弁120内の開口部は、動的に調節可能であり、そしてそのサイズは、この弁を通る通気ガスの流量を調節するようにされ得る。弁120は、玉形弁であり得る。弁120内の小さい開口部は、低い流量を生じ、一方で、弁120内の大きい開口部は、高い流量を生じる。弁120内の開口部は、完全に開いてこの弁を通る最大の流量を達成し得るか、または完全に閉じて0の流量を生じ得る。1つの例において、弁120が完全に開いている場合、弁120は、管腔13と体外環境との間で、最大の出力流量での流体または気体の連絡を可能にし、その結果、通気ガスは、通気された腔から体外環境へと、管腔13内に存在する濾過剤を通って迅速に出ることができる。弁120が完全に閉じている場合、弁120は、管腔13と体外環境との間の通路を完全に閉塞し、これによって、通気ガスが通気された腔から出ることを防止する。さらに、弁120内の開口部のサイズは、完全に開いた状態と完全に閉じた状態との間の任意の状態で動的に選択され、これに従って流量を調節し得る。図3に図示されるように、弁120は、外科医が腹腔から出る通気ガスの適切な出力流量を決定する場合に、外科医により手で作動される。
【0031】
特定の実施形態において、この弁は、自己制御弁であり、使用者の介入なしで、弁内の開口部のサイズを自動的に制御する。例えば、この弁は、図4に図示されるような逆止弁135、またはばね逆止弁であり得る。逆止弁135は、この弁にわたる所定の圧力差(すなわち、体腔と、手術室内の周囲圧力との間の所定の圧力差)に対応するクラッキング圧力に関連する。逆止弁135は、この弁にわたる検出された圧力差が所定のクラッキング圧力に達するかまたは超えると、開く。逆に、逆止弁135は、その圧力差が所定のクラッキング圧力より低い場合に閉じる。例えば、弁135は、患者の体腔が充分に通気されてその内部で所望の通気圧力(この通気圧力は周囲圧力より高く、クラッキング圧力以上の圧力差を生じる)を達成している場合に、開く。弁135は、特定量の通気ガスが体腔から体外環境へと放出された後に通気圧力が有意に低下し、クラッキング圧力より低い圧力差を生じる場合に、閉じる。
【0032】
別の実施形態において、この弁は、図5に図示されるように、電気で作動する弁130であり、制御ユニット140によって制御信号142を介して駆動される。制御信号142は、弁130に、その開口部のサイズを調節することを指示し、これは次に、管腔13を通る流量を調節する。1つの例において、制御ユニット140は、所定の時間間隔で信号142を送信して、管腔13を周期的に開閉し得る。別の例において、制御ユニット140は、通気圧力または通気温度の変化を検出し得、次いで、信号142を弁130に送信して、その内部の開口部のサイズを調節させ、これによって、流量をそれに従って調節し得る。
【0033】
図6を参照すると、制御ユニット140は、ワークステーション170の一部であり得、このワークステーションは、制御ユニット140および表示ユニット141を備える。制御ユニット140は、弁130、通気器具110、およびシールアンカー部材内に配置された内視鏡151と作動可能に接続される。制御ユニット140は、上で議論されたように、信号142を介して弁130を調節する。制御ユニット140はまた、信号143を通気器具110に伝達して、止め栓114を特別に制御させるように構成され、これは次に、この止め栓を通る通気ガスの流れを調節する。内視鏡151は、シールアンカー部材に設置されたカニューレ150内に配置される。内視鏡151は、その遠位端に位置するカメラ152によって捕捉された腹腔の画像を、通信信号141を介して制御ユニット140へと伝達するように構成される。次いで、制御ユニット140は、伝達された画像を、使用者が見るために、表示ユニット141(例えば、LCDモニタ)に表示し得る。制御ユニット140はまた、伝達された画像を分析して、通気ガスの入力流量および出力流量を調節する必要があるか否かを決定するように構成される。この分析に基づいて、制御ユニット140は、弁130および通気器具110に、その分析に従って指示する。1つの例において、制御ユニット140は、伝達された画像を、最初に、デジタルデータ値をこの画像の各画素に、その色に基づいて割り当てることにより分析し、次いで、これらのデータ値を、煙または粒子により汚染された腹腔環境の不明瞭な視野に対応する所定のデータ範囲と比較する。他方で、割り当てられたデータ値が所定の範囲に入る場合には、制御ユニット140は、汚染物質を腹腔から除去する必要があると結論付ける。従って、制御ユニット140は、弁130に、その最大に開いた位置に適合し、これによって、最大出力流量で汚染物質を濾別することを指示する。さらに、制御ユニット140は、より多くの通気ガスを通気器具110から腹腔へと導入して、汚染された通気ガスの脱出を補償する必要があると結論付け得る。この結論に基づいて、制御ユニット140は、止め栓114が閉じている場合には開き、通気ガスがこの止め栓を通過することを可能にするか、または止め栓114がすでに開いていた場合にはより広い程度まで開き、通気ガスの入力流量を増加させる。他方で、割り当てられたデータ値が所定の範囲の外側である場合、制御ユニット140は、腹腔がきれいであり、従って、通気ガスを腹腔から濾過により除去する必要がないことを結論付ける。従って、制御ユニット140は、弁130をその閉位置に設定し、腹腔からの通気ガスの放出を妨げる。制御ユニット140はまた、腹腔内の所望の通気圧力が達成される場合には、止め栓114を遮断し得る。
【0034】
別の実施形態において、この弁は、図7に図示されるように、通気口12内に位置する一体弁160であり得る。図6に図示される外部弁130と同様に、図7の一体弁160は、内視鏡151により捕捉された画像の分析に基づいて通気器具110および弁160を制御するワークステーション170と作動可能に接続される。
【0035】
特定の実施形態において、一体弁12の管腔13は、比較的小さい直径の寸法を有する。小さい直径の寸法の管腔13は、制御された最低速度での通気ガスの連続的な放出を可能にする。通気ガスは、体腔内に連続的に導入され得る。通気ガスは、最初に、他の代表的な最小侵襲性手順において使用される通常の入力流量より比較的高い入力流量で導入される。その結果として、管腔13の小さい寸法および通常より高い入力流量に起因して、通気ガスは、その入力流量よりかなり低い出力流量で放出される。この構成に基づいて、入力流量が出力流量より大きいので、患者の腔内の圧力は、次第に増加して、所望の通気体積および所望の通気圧力に達する。一旦、所望の通気体積および所望の通気圧力に達すると、所望の通気圧力を維持する目的で、通気ガスの入力流量は低下させられて、出力流量と同じにされる。きれいな通気ガスの連続的な流入および汚染された通気ガスの連続的な流出に起因して、不純物(例えば、手術に起因する煙または他の付随する副産物)が、患者の腔から自動的に連続的に除去され、患者の腔内にきれいな内部環境が常に生じる。
【0036】
本明細書中および上に記載されたような本発明の教示の利益を有する当業者は、本発明に対して改変を行い得る。このような改変は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内であると解釈されるべきである。
【0037】
単一ポートデバイスの特定の特徴が、いくつかの図面には示されており、他の図面には示されていないが、このことは、簡便にする目的である。なぜなら、各特徴は、本開示の局面に従う他の特徴のうちのいずれかまたは全てと組み合わせられ得るからである。他の実施形態が当業者に想到し、添付の特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
9 近位表面
10 遠位表面
11 中間面
12 一体排気口
13 管腔
20、21、22 管腔
100 シールアンカー部材
110 通気器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7