(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。
【0028】
〜構成〜
図1は第1実施形態に係わる排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【0029】
図1において、本実施の形態に係わる作業車両は例えば油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、電子ガバナ1a(電子制御式の燃料噴射制御装置)を備えたディーゼルエンジン(以下単にエンジンという)1を有している。エンジン1の目標回転数は、油圧ショベルのキャビン(運転室)107(
図4参照)内に設けられたエンジンコントロールダイヤル2により指令され、エンジン1の実回転数は回転数検出装置3により検出される。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号及び回転数検出装置3の検出信号は制御装置4に入力され、制御装置4はその指令信号(目標回転数)と検出信号(実回転数)とに基づいて電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0030】
排気ガス浄化システムは、上記のような作業車両(油圧ショベル)に搭載され、エンジン1の排気系を構成する排気管31に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ32及びフィルタ32の上流側に配置された酸化触媒33を含むDPF装置34と、排気温度検出装置35と、フィルタ32の圧力損失(フィルタ32の上流側と下流側の前後差圧)を検出する差圧検出装置36と、手動再生スイッチ37と、再生禁止スイッチ38と、排気管31のエンジン1とDPF装置34との間に設けられた再生用燃料噴射装置39とを備えている。
【0031】
再生用燃料噴射装置39は排気ガスの温度を上昇させ、フィルタ32に堆積したPMを焼却除去するフィルタ32の再生手段を構成している。手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38は、油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが操作しやすい位置に配置されている。手動再生スイッチ37は再生用燃料噴射装置39の作動開始(フィルタ32の再生制御開始)を指示する操作手段であり、手動再生スイッチ37がON位置に操作されると再生制御の開始を指示する指令信号が出力される。再生禁止スイッチ38は再生用燃料噴射装置39の作動禁止(フィルタ32の再生制御禁止)を指示する操作手段であり、再生禁止スイッチ38がON位置に操作されると再生制御の禁止を指示する指令信号が出力される。
【0032】
なお、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38は、表示装置6(後述)に表示される設定画面であってもよい。操作スイッチ6bを操作してON/OFFを設定する。
【0033】
制御装置4は、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38からの指令信号を入力し、これらの指令信号や、差圧検出装置36からの検出信号、上記エンジンコントロールダイヤル2からの指令信号及び回転数検出装置3の検出信号に基づいて再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じて電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置39を制御する。また、制御装置4は、回転数検出装置3、差圧検出装置36、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38からの各種信号が示す情報や制御装置4の再生制御の演算処理結果を表示信号として表示装置6に送り、それら情報を表示画面6aに表示させる。
【0034】
表示装置6は、油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが見やすい位置に配置され、本来、燃料残量、冷却水温等の油圧ショベルの車体基本情報を表示するものである。表示装置6は、表示画面6aと操作スイッチ6bを有し、制御装置4の表示制御装置42(後述)により制御される。操作スイッチ6bは表示画面6aの下側に配置され、操作スイッチ6bを操作することにより車体基本情報以外の車体情報も選択的に表示する。更に適宜、自動再生制御中である旨、手動再生スイッチ37の操作を促す警告等、車体情報のうち再生に係る情報も表示する。
【0035】
図2は制御装置4の詳細を示す図である。制御装置4は、再生制御機能41aとモード切換機能41bを含む車体制御装置41と、表示制御装置42と、エンジン制御装置43とを有し、これら制御装置41〜43は通信ライン44を介して相互に接続され、車体ネットワークを構成している。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号、差圧検出装置36の検出信号、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38からの指令信号は車体制御装置41に入力され、回転数検出装置3の検出信号はエンジン制御装置43に入力される。
【0036】
エンジン制御装置43は、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号を通信ライン44を介して受信し、この指令信号と回転数検出装置3の検出信号に基づいて上記のようにエンジン1の回転数とトルクを制御する。制御の詳細については後述する。
【0037】
車体制御装置41は、油圧ショベルの油圧システム(図示せず)全般を制御するものであり、例えば、操作レバーの操作量を検出し、その操作量に応じた流量を吐出するように油圧ポンプの傾転角(容量)を制御する。更に、車体制御装置41は再生制御機能41aを有し、再生制御機能41aは差圧検出装置36の検出信号(圧力損失)に基づいて、このフィルタ32に堆積したPM堆積量を推定し、通信ライン44を介して受信した回転数検出装置3の検出信号、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38からの指令信号に基づいて再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じた制御信号を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信し、エンジン制御装置43はその制御信号に応じて電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置39を制御する。
【0038】
本実施形態の特徴的構成であるモード切換機能41bは車体制御装置41の一機能であり、状況に応じて最適なエンジン回転数とトルクの組み合わせである動作ポイントを選択し、その結果を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信する。制御の詳細については後述する。
【0039】
表示制御装置42は、回転数検出装置3、差圧検出装置36、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38からの各種信号や強制再生制御の演算処理結果を通信ライン44を介して受信し、上記のようにこれら信号情報や演算処理結果を表示信号として表示装置6に送り、それら情報を表示画面6aに表示する。
【0040】
図3は作業車両の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1が配置され、キャビン107内の適所にエンジンコントロールダイヤル2、表示装置6、手動再生スイッチ37、再生禁止スイッチ38が設置されている。
【0041】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0042】
なお、作業車両はホイルローダでもホイール式油圧ショベルでもよい。
【0043】
〜制御〜
〈再生制御〉
図4は車体制御装置41の再生制御機能41aの演算処理の内容を示すフローチャートである。再生制御機能41aは、自動再生制御機能と手動再生制御機能とを有している。
【0044】
図4において、再生制御機能41aは、まず、再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)かどうかを判定し(ステップS100)、再生禁止スイッチ38が操作されていない(再生禁止スイッチOFF)と判定すると、差圧検出装置36の検出信号に基づいた推定堆積量が手動再生開始値である第2閾値より多いかどうかを判定し(ステップS110)、推定堆積量が第2閾値より多くないと判定すると、推定堆積量が自動再生開始値である第1閾値より多いかどうかを判定する(ステップS120)。
【0045】
ステップS120において、推定堆積量が第1閾値より多くないと判定すると、スタート直後の手順に戻り、再生禁止スイッチ38が操作されるか、推定堆積量が第1閾値または第2閾値より多くなるまで、ステップS100,S110,S120の処理を繰り返す。
【0046】
ステップS120において、推定堆積量が第1閾値より多いと判定すると、自動再生制御を開始する(ステップS130)。自動再生制御中に、再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)かどうかを判定し(ステップS140)、再生禁止スイッチ38が操作されていない(再生禁止スイッチOFF)と判定すると、推定堆積量が再生終了値である第4閾値より少なくなったかどうかを判定し(ステップS150)、推定堆積量が第4閾値より少なくなったと判定すると、自動再生制御を停止し(ステップS160)、演算処理を終了する(ステップS170)。ステップS150において、推定堆積量が第4閾値より少なくないと判定すると、再生禁止スイッチ38が操作されるか、推定堆積量が第4閾値より少なくなるまで、ステップS140,S150の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS110において、推定堆積量が第2閾値より多いと判定すると、オペレータに手動再生スイッチ37の操作を促す警告信号を出力する(ステップS210)。なお、表示制御装置42は、通信ライン44を介して警告信号を入力し、手動再生を促す旨の警告を表示画面6aに表示する。
【0048】
手動再生スイッチ37が操作された(再生開始スイッチON)かどうかを判定し(ステップS220)、手動再生スイッチ37が操作されていない(再生開始スイッチOFF)と判定すると、スタート直後の手順に戻り、手動再生スイッチ37が操作されるまで、ステップS100,S110,S210,S220の処理を繰り返す。すなわち、手動再生スイッチ37が操作されるまで、警告を表示する。
【0049】
ステップS220において、手動再生スイッチ37が操作された(再生開始スイッチON)と判定すると、手動再生制御を開始する(ステップS230)。手動再生制御中に、再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)かどうかを判定し(ステップS240)、再生禁止スイッチ38が操作されていない(再生禁止スイッチOFF)と判定すると、推定堆積量が再生終了値である第4閾値より少なくなったかどうかを判定し(ステップS250)、推定堆積量が第4閾値より少なくなったと判定すると、手動再生制御を停止し(ステップS260)、演算処理を終了する(ステップS170)。ステップS250において、推定堆積量が第4閾値より少なくないと判定すると、再生禁止スイッチ38が操作されるか、推定堆積量が第4閾値より少なくなるまで、ステップS240,S250の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS100において、再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)と判定すると、演算処理を終了する(ステップS170)。ステップ140において、自動再生制御中に再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)と判定すると、自動再生制御を停止し(ステップS160)、演算処理を終了する(ステップS170)。ステップ240において、手動再生制御中に再生禁止スイッチ38が操作された(再生禁止スイッチON)と判定すると、手動再生制御を停止し(ステップS260)、演算処理を終了する(ステップS170)。
【0051】
なお、再生制御機能41aは、ステップS150およびステップS250では、差圧検出装置36の検出信号に基づいた推定堆積量が第4閾値より少なくなったかどうか判定して再生制御を終了しているが、再生制御時間が所定時間を経過したかどうかを判定して再生制御を終了してもよい。
【0052】
ステップS130における自動再生制御およびステップS230における手動再生制御は、例えば次のように行う。まず、エンジン1の回転数を強制再生制御に適した所定の回転数Naに制御する。強制再生制御に適した所定の回転数Naとは、そのときの排気ガスの温度を酸化触媒33の活性温度よりも高い温度まで上昇させることができる中速回転数である。この制御では、車体制御装置41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)から所定の回転数Naに切り換え、その所定の回転数Na(目標回転数)を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信する。エンジン制御装置43は、その目標回転数(所定の回転数Na)と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がその所定の回転数Naとなるよう制御する。
【0053】
次いで、排気温度検出装置35により検出した排気ガス温度が所定の温度(酸化触媒33の活性温度よりも高い温度)まで上昇したことが確認されると、再生用燃料噴射装置39を制御して排気管31内への燃料噴射を行う。排気管31内に燃料噴射を行うことで未燃燃料が酸化触媒33に供給され、その未燃燃料を酸化触媒33によって酸化させ、そのときに得られる反応熱により排気ガス温度が更に上昇し、フィルタ32に堆積したPMが焼却除去される。
【0054】
ステップS160およびステップS260において強制再生制御を停止させるときは、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻し、再生用燃料噴射装置39の制御を停止させる。目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻す代わりに、エンジン1を停止させてもよい。
【0055】
図5は、フィルタ32の圧力損失ΔP(前後差圧)とPMの堆積量Wの関係を示す図である。圧力損失ΔPとPMの堆積量Wとの関係は実験データに基づいて事前に決めておく。なお、
図5では便宜上、圧力損失ΔPとPMの堆積量Wとの関係を直線比例で示したが、実際の圧力損失ΔPとPMの堆積量Wとの関係は直線比例ではない。フィルタ32に堆積したPM堆積量は差圧検出装置36による圧力損失に基づいて推定される。フィルタ32にPMが堆積していないときは、PM堆積の影響による圧力損失はなく、圧力損失ΔPはΔP0であり、フィルタ32にPMが堆積しその堆積量Wが増加するにしたがって差圧ΔPは上昇する。
【0056】
第1閾値は、自動再生制御を開始すべき堆積量に相当する値である。第2閾値は、オペレータに手動再生制御を促すべき堆積量に相当する値である。第3閾値は、再生可能な上限値(限界値)である。つまり、PMが第3閾値より多く堆積した状態でPMの燃焼をするとフィルタの内部温度の異常上昇やそれに由来するフィルタの溶損といった問題を引起す可能性があるため、自動再生制御、手動再生制御とも停止される。第4閾値は、自動再生制御、手動再生制御とも終了したとみなせる堆積量に相当する値である。
【0057】
再生制御と閾値の関係について説明する。第2閾値は、第1閾値より大きく設定されており、自動再生制御が手動再生制御に優先して行われる。しかし、諸因より自動再生制御によっても良好にPMを燃焼除去できずPMが更に堆積する場合もある。堆積量が第2閾値より多くなると、手動再生制御が行われる。ただし、堆積量が第3閾値より多くなると、自動再生制御も手動再生制御も行われない。良好にPMを燃焼除去でき堆積量が第4閾値より少なくなると、自動再生制御も手動再生制御も終了する。
【0058】
〈モード切換制御〉
図6は車体制御装置41のモード切換機能41bの演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0059】
モード切換機能41bは、通常時には通常モードを設定する(ステップS310)。
【0060】
通常モードについて説明する。エンジン1の目標回転数はエンジンコントロールダイヤル2により指令され、この回転数において操作性や燃費の観点から最適なトルクが演算される。エンジンアイドル時にはエンジン1の回転数は低速アイドル回転数に、再生制御時には中速回転数Naに切り換えられ、この回転数において操作性や燃費の観点から最適なトルクが演算される。その演算結果に応じた制御信号を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信し、エンジン制御装置43はその制御信号に応じて電子ガバナ1aを制御する。
【0061】
ステップS310の通常モードにおいて、再生禁止スイッチ38がON位置にあるかどうかを判定し(ステップS320)、再生禁止スイッチ38がON位置にあると判定すると、PM排出量低減モードを設定する(ステップS330)。再生禁止スイッチ38がON位置にないと判定する場合、通常モードを維持する。
【0062】
PM排出量低減モードについて説明する。
【0063】
図7は、モード切換機能41bが有するPM排出マップの一例である。PM排出マップは、全負荷線の範囲内において、エンジン回転数とトルクとの組み合わせである動作ポイントごとに、実験結果に基づいてPM排出量指標値をプロットしたコンター図である。PM排出量指標値は、排気ガスのスモーク透過率に基づいて定められ、指標値が大きくなればPM排出量増を意味し、指標値が小さくなればPM排出量減を意味する。L1は最も小さい指標値であり、L4は最も大きい指標値である。点線にて等量線を示し、L1〜L4にレベル分けする。
【0064】
上述の通り、通常モードにおいて動作ポイントは操作性や燃費の観点から選択されており、PM排出量の多寡の観点は考慮されていない。通常モードで選択された第1動作ポイントにおけるPM排出量が他の動作ポイントにおけるPM排出量に比べて多い可能性もある。その場合、PM排出量低減モードにおいて、PM排出マップに基づき、第1動作ポイントよりもPM排出量の少ない動作ポイントを第2動作ポイントとして選択する。
【0065】
図8はモード切換機能41bの通常モードからPM排出量低減モードへの切換制御の一例を説明する図であり、
図7に示すPM排出マップの一部である。PM排出マップの拡大図に、破線で示す等馬力線HP01〜04を追加し、簡略化のためプロットを省略している。この例では、通常モードにおいて、操作性や燃費の観点から、エンジン回転数N1,トルクT1となる第1動作ポイントを選択している。第1動作ポイントにおけるPM排出量の指標値はL3である。PM排出量低減モードに切り換わると、第1動作ポイントと同じ等馬力線HP03上にあり、PM排出量の指標値はL2である第2動作ポイント(エンジン回転数N2(<N1),トルクT2(>T1))を選択する。
【0066】
モード切換機能41bは、第2動作ポイントに係る制御信号を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信し、エンジン制御装置43はその制御信号に応じて電子ガバナ1aを制御する。
【0067】
ステップS330のPM排出量低減モードにおいて、再生禁止スイッチ38がOFF位置にあるかどうかを判定し(ステップS340)、再生禁止スイッチ38がOFF位置にあると判定すると、通常モードに戻る(ステップS310)。再生禁止スイッチ38がOFF位置にないと判定する場合、PM排出量低減モードを維持する。
【0068】
〜動作〜
第1実施形態の排気ガス浄化システムの動作を説明する。例えば、トンネル現場での作業を想定する。
【0069】
トンネル現場での作業では粉塵等が発生しやすく、PMがフィルタに堆積する。再生禁止スイッチ38がOFF位置にあり、PM堆積量が第1閾値より多ければ、自動再生が開始する(S100→S110→S120→S130)。
【0070】
しかし、周囲に可燃物が有り引火のおそれがあるとオペレータが判断し、再生禁止スイッチ38をON位置に操作すると、自動再生が停止する(S140→S160)。
【0071】
このとき、モード切換機能41bは通常モードからPM排出量低減モードに切換える(S310→S320→S330)。再生がおこなわれないためPM堆積は継続するが、PM排出量は低減する。これにより、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長できる。
【0072】
オペレータは最小限の作業を完了させるか、直ちに作業を終了して、トンネル外の再生可能場所まで油圧ショベルを移動させる。そして、周囲の安全を確認し、再生禁止スイッチ38をOFF位置に操作すると、モード切換機能41bはPM排出量低減モードから通常モードに戻す(S330→S340→S310)。
【0073】
このとき、PM堆積量が第1閾値より多い可能性が高く、自動再生が再開する(S100→S110→S120→S130)。良好な再生がおこなわれてPM堆積量が第4閾値より少なくなると、自動再生は終了する(S140→S150→S160)。
【0074】
再生終了後、オペレータはトンネル現場での作業を再開する。
【0075】
〜効果〜
第1実施形態の排気ガス浄化システムの効果を説明する。
図9は第1実施形態の排気ガス浄化システムの効果を説明する為に示すPM堆積量の時間経過を示す図である。
【0076】
上述したように、再生禁止スイッチ38をON位置に操作すると、再生がおこなわれないためPM堆積は継続する。ここで、モード切換機能41bは通常モードを維持したと仮想する。通常モードにおいて第1動作ポイントは操作性や燃費の観点から選択されており、PM排出量の多寡の観点は考慮されていない。
図8の例では第1動作ポイントにおけるPM排出量の指標値はL3である。PM堆積が継続すると、やがてPM堆積量が限界値(第3閾値)に達する。このときの仮想履歴を破線で示す。仮想到達時刻が早いと、油圧ショベルの移動中に仮想到達時刻になり、油圧ショベルを再生可能場所まで移動させることができない。
【0077】
本実施形態では、再生禁止スイッチ38をON位置に操作すると、通常モードからPM排出量低減モードに切換える。PM排出量低減モードにおいて第2動作ポイントが選択され、
図8の例ではPM排出量の指標値はL2である。説明の便宜の為、指標値がPM排出量に比例すると仮定すると、PM排出量はおおよそ3割低減(L3→L2)し、PM堆積量が限界値(第3閾値)に達するまでの時間を延長できる。このときの履歴を実線で示す。
【0078】
なお、PM排出量低減モードでは操作性や燃費の観点では好ましくない可能性もあるが、トンネル等の作業現場から再生可能場所へ移動する間のみであり、影響は限定的である。
【0079】
また、第1動作ポイントと第2動作ポイントとは同じ等馬力線HP03上にあるため、操作性や燃費に対する影響は、等馬力線上にない場合に比べて少ない。
【0080】
〜変形例〜
本実施形態の動作において、第1動作ポイントと第2動作ポイントとは同じ等馬力線上にあることが好ましいが、等馬力線上にない場合でも、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長できる。
【0081】
<参考例1>
〜制御〜
第1実施形態において、モード切換機能41bは、再生禁止スイッチ38がON位置に操作されると、半手動(半自動)的に、通常モードからPM排出量低減モードに切換えるが、PM堆積量が第2閾値より多くなると、自動的に、通常モードからPM排出量低減モードに切換えてもよい。
【0082】
図10はモード切換機能41bの演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0083】
モード切換機能41bは、通常時には通常モードを設定し(ステップS310)、通常モードにおいて、PM堆積量が第2閾値より多いかどうかを判定し(ステップS320A)、PM堆積量が第2閾値より多いと判定すると、PM排出量低減モードを設定する(ステップS330)。PM堆積量が第2閾値より多くないと判定する場合、通常モードを維持する。
【0084】
PM排出量低減モードにおいて、手動再生スイッチ37がON位置にあるかどうかを判定し(ステップS340)、手動再生スイッチ37がON位置にあると判定すると、通常モードに戻る(ステップS310)。手動再生スイッチ37がONにないと判定する場合、PM排出量低減モードを維持する。
【0085】
〜動作〜
参考例1の排気ガス浄化システムの動作を説明する。
【0086】
トンネル現場での作業では粉塵等が発生しやすく、PMがフィルタに堆積する。自動再生が禁止されたり、良好な自動再生が行われなかったり等の理由で、PM堆積量が第2閾値より多くなると、手動再生を促す警告がされる。(S100→S110→S210)。
【0087】
しかし、周囲に可燃物が有り引火のおそれがあるとオペレータが判断し、手動再生スイッチ37をON位置に操作しなければ、手動再生は開始しない。
【0088】
このとき、モード切換機能41bは通常モードからPM排出量低減モードに切換える(S310→S320A→S330)。再生がおこなわれないためPM堆積は継続するが、PM排出量は低減する。これにより、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長できる。
【0089】
オペレータは最小限の作業を完了させるか、直ちに作業を終了して、トンネル外の再生可能場所まで油圧ショベルを移動させる。そして、周囲の安全を確認し、手動再生スイッチ37をON位置に操作すると、モード切換機能41bはPM排出量低減モードから通常モードに戻す(S330→S340→S310)。
【0090】
同時に、手動再生が開始する(S220→S230)。良好な再生がおこなわれてPM堆積量が第4閾値より少なくなると、手動再生は終了する(S240→S250→S260)。
【0091】
再生終了後、オペレータはトンネル現場での作業を再開する。
【0092】
〜効果〜
参考例1の排気ガス浄化システムの効果を説明する。
【0093】
上述したように、PM堆積量が第2閾値より多くなり、手動再生を促す警告がされても、手動再生スイッチ37をON位置に操作しなければ、再生がおこなわれないためPM堆積は継続する。ここで、モード切換機能41bは通常モードを維持したと仮想する。やがてPM堆積量が限界値(第3閾値)に達するが、PM排出量の指標値の大きい第1動作ポイントが選択され、仮想到達時刻が早いと、油圧ショベルを再生可能場所まで移動させることができない。
【0094】
本
参考例では、PM堆積量が第2閾値より多くなると、通常モードからPM排出量低減モードに切換える。PM排出量低減モードにおいてPM排出量の指標値の小さい第2動作ポイントが選択され、PM排出量は低減し、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長できる。
【0095】
〜変形例〜
本
参考例では、一例として、PM堆積量が第2閾値より多くなると切換制御がおこなわれるとしたが、閾値は第3閾値以下であれば、任意に設定可能である。たとえば、PM堆積量が第1閾値より多くなると切換制御がおこなわれるようにすれば、更にPM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長できる。
【0096】
<参考例2>
〜構成と制御〜
モード切換機能41bは、第1実施形態において半手動(半自動)的な切換制御をおこない、
参考例1において自動的な切換制御をおこなうが、オペレータの判断に基づく手動的な切換制御をおこなってもよい。
【0097】
モード切換操作手段として、手動再生スイッチ37や再生禁止スイッチ38と同様なモード切換スイッチを油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが操作しやすい位置に設けてもよいが、本
参考例では、
図11に示す表示装置6に表示されるPM排出モード設定画面6cにおいて、PM排出モードを設定する。PM排出モード設定画面6cは、「通常モード」項目と「PM排出量低減モード」項目とから構成され、各項目は操作スイッチ6bの上下ボタンの操作により選択可能である。
【0098】
図12はモード切換機能41bの演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0099】
モード切換機能41bは、通常時には通常モードを設定し(ステップS310)、通常モードにおいて、「PM排出量低減モード」項目が選択されたかどうかを判定し(ステップS320B)、「PM排出量低減モード」項目が選択されたと判定すると、PM排出量低減モードを設定する(ステップS330)。「PM排出量低減モード」項目が選択されていないと判定する場合、通常モードを維持する。
【0100】
PM排出量低減モードにおいて、「通常モード」項目が選択されたかどうかを判定し(ステップS340B)、「通常モード」項目が選択されたと判定すると、通常モードに戻る(ステップS310)。「通常モード」項目が選択されていないと判定する場合、PM排出量低減モードを維持する。
【0101】
〜動作〜
参考例2の排気ガス浄化システムの動作を説明する。
【0102】
屋内での木材チップの運搬作業では粉塵等が発生しやすく、PMがフィルタに堆積しやすい。一方、作業エリアが著しく狭く周囲に可燃物が有り引火のおそれがあり、再生をおこなうこと自体が好ましくない場合もありうる。再生禁止スイッチ38により再生を禁止することも有効な手段であるが、再生を禁止するとすぐにPM堆積量が限界値に達する。
【0103】
このような作業環境においては、屋内での作業を開始する前に、オペレータはPM排出モード設定画面6cを介してPM排出量低減モードに設定する。モード切換機能41bは通常モードからPM排出量低減モードに切換える(S310→S320B→S330)。
【0104】
PM排出量低減モードにおいては、通常モードに比べPM排出量が低減するため、PM堆積量も低減する。そして、PM堆積量が第1閾値に達しなければ自動再生は開始しない(S100→S110→S120→S100)。
【0105】
オペレータは自動再生が開始する前に所定の作業を完了させ、屋外の再生可能場所まで油圧ショベルを移動させる。そして、PM排出モード設定画面6cを介して通常モードに設定すると、モード切換機能41bはPM排出量低減モードから通常モードに戻す(S330→S340B→S310)。
【0106】
その後、通常モードにおいて、屋外の作業を行い、PM堆積量が第1閾値より多くなれば、自動再生が開始し(S100→S110→S120→S130)、良好な再生がおこなわれてPM堆積量が第4閾値より少なくなると、自動再生は終了する(S140→S150→S160)。
【0107】
〜効果〜
参考例2の排気ガス浄化システムの効果を説明する。
図13は
参考例2の排気ガス浄化システムの効果を説明する為に示すPM堆積量の時間経過を示す図である。
【0108】
モード切換機能41bは通常モードを維持したと仮想する。通常モードにおいてPM排出量の指標値の大きい第1動作ポイントが選択される。PMが堆積し第1閾値より多くなれば自動再生が開始する。このときの仮想履歴を破線で示す。仮想自動再生開始時刻が早いと、油圧ショベルが屋内作業中に仮想自動再生開始時刻になり、充分な屋内での作業時間を確保できない。
【0109】
本
参考例では、屋内作業前にPM排出モード設定画面6cを介してPM排出量低減モードに設定する。PM排出量低減モードにおいてPM排出量の指標値の小さい第2動作ポイントが選択され、PM排出量は低減し、PM堆積量が第1閾値に達するまでの時間を延長できる。このときの履歴を実線で示す。
【0110】
これにより、充分な屋内での作業時間を確保でき、自動再生が開始する前に作業を完了することができる。