特許第5714332号(P5714332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714332粘度を測定するためのピペットシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714332
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】粘度を測定するためのピペットシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/08 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   G01N11/08
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-547264(P2010-547264)
(86)(22)【出願日】2009年1月29日
(65)【公表番号】特表2011-512538(P2011-512538A)
(43)【公表日】2011年4月21日
(86)【国際出願番号】IB2009000154
(87)【国際公開番号】WO2009104065
(87)【国際公開日】20090827
【審査請求日】2011年1月28日
(31)【優先権主張番号】0851120
(32)【優先日】2008年2月21日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503285760
【氏名又は名称】ジルソン エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ミレ フレデリック
【審査官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−164957(JP,A)
【文献】 特開昭61−057833(JP,A)
【文献】 特開平06−074887(JP,A)
【文献】 特開2007−199031(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/077527(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/066565(WO,A1)
【文献】 特開昭51−094983(JP,A)
【文献】 特開平05−107174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00−11/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットシステムに(2)よって液体の粘度を決定するためのデバイス(1)であって、
ピペットシステムは、摺動ピストン(30)によって形成された吸い込みチャンバ(22)を含み、システムは、前記吸い込みチャンバと連通する端部品(8)を含み、且つ液体を持ち上げるための流路(36)を提供する消耗品(10)を取り外し可能な方法で搬送し、前記流路は、少なくとも一部の、流路(36,36’)が一定の区間を含み、
少なくとも、一定の区間(36,36’)の前記部分に液体を持ち上げる操作の間の2つの瞬間に使用される計測手段(38)を含み、該液体を持ち上げる操作は、ディレクター係数(−λ)の線形時間関数ΔP(t)の値を提供するために、一定の速度のピストンストロークを使用して行われ、
測定手段から送られた前記関数P(t)の少なくとも2つの値から、λの値を決定し、次いでこのλの値から液体の粘度ηの値を決定するために使用される決定手段(18)を含み、λの値は、少なくとも2つの前記関数P(t)の値に関連した傾斜であり、
液体の粘度ηは、
に基づいて決定されることを特徴とし、ここで、
であり、dは、消耗品の一定の区間の流路の一部の直径であり、qpは、単位時間当たりにピストンによってさらわれる容積であり、一定速度と直線断面の積であり、Voは、測定における時間t=0での死容積であり、ρは、液体の密度であり、gは、重力加速度である、
デバイス。
【請求項2】
液体の粘度ηは、数学的関係によって値λから決定されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
少なくとも、異なる直径の一定の区間の流路の一部を有する一組の消耗品(10)、及び/又は
所定の直径から選択された所定の直径の摺動ピストンの使用を可能にする手段、及び/又は
前記摺動ピストンの速度を制御するために使用できる手段、及び/又は
ピペットシステムの死容積を変更することができる手段が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
測定手段は、少なくとも1つの圧力センサ(38,38a,38b)を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
測定手段は、異なる感度を有する2つのセンサ(38a,38b)を含み、これら2つのセンサは、低い感度を有するもの(38b)は、高い感度のセンサ(38a)が高い感度のセンサの飽和圧力に関連して予め決定された閾値に達すると、測定を自動的に引き継ぐように互いに接続されていることを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
測定手段は、異なる直径を有する2つの空気導管(56a,56b)によって前記吸い込みチャンバに接続された圧力センサ(38)を含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ピペットシステムは、持ち上げピペット(2)である、請求項1乃至の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ピペットは、相互係合可能な下部分(6)を含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
決定手段(18)は、前記ピペット内に組み込まれ、及び/又は前記測定手段(38)は、ピペットの電源(20)によって給電され、且つピペットに組み込まれている、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、持ち上げピペット内に組み合わされた、完全に携帯可能なデバイスを構成する、請求項7乃至9の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記一定の区間(36’36)の流路の一部は、前記ピストン(32)の摺動方向とほぼ平行であり、又はほぼ直交する、請求項1乃至10の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
ピペットシステムを用いて液体の粘度を決定する方法であって、
前記方法は、請求項1乃至11の何れか1項に記載のデバイス(1)でピペット操作を行うことによって実行される、方法。
【請求項13】
方法は、前記一定の区間の流路の前記部分内の液体の流速を変えることで、異なるずり速度に関して、非ニュートン流体の粘度を決定するように実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
方法は、継続的に、前記一定の区間の流路の前記部分内に液体を保持して、液体持ち上げストローク、液体分配ストローク、次いで他の液体持ち上げストロークを行うように実行されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
方法は、ニュートン流体に関して、前記粘度に加えて、未知のN’=N−1個のパラメータの各々の値を決定するために、1よりも真に大きい、別々の試験条件の複数個Nの値λを決定するように実行されることを特徴とする、請求項12乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
未知の前記パラメータは、液体の密度、及び/又はピペットシステムの外に存在する大気圧Poであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ピペットを使用して、多量の液体がピペット内に吸引される。次いで、多量の液体は、一つ又はそれ以上の分配容積に分配される。ピストン駆動機構が、ピストンに動作を与えることによって、特定の容積で液体の吸い込みと分配を制御する。ピストンの動作は、ピストン駆動機構によって与えられた力によって制御される。ピペットを、ユーザが、速度及び液体の吸引又は分配の容積を手動で制御する手動モード、又はモーターが液体の吸引及び/又は分配を制御する自動モードで作動させることができる。入力インターフェースを使用して、速度、容積、吸引数、分配数等を含む種々のパラメータを選択することができる。多チャンネルピペットシステムは、複数のピストンを含む多チャンネルピペットを含む。ピペットを、さらに、液体の吸引及び分配の間、操作者の手で保持し、又は自動化されたシステムの一部に含むことができる。
【0002】
例示の実施形態では、流体の粘度を決定するシステムが提供される。システムは、限定されないが、吸い込みチャンバ、チューブ、ピストン、アクチュエータ、センサ、及びプロセッサを含む。チューブは、一定の直径の断面を有する円筒部分を含むチャンネルを含み、吸い込みチャンバと連通する。ピストンは、吸い込みチャンバに取り付けられる。アクチュエータは、チャンネルの円筒部分内の液体を調整するための時間帯の間、吸い込みチャンバ内でピストンを一定速度で動かすように構成される。センサは、複数の圧力測定値を定めるために、時間帯の間、複数回圧力を測定するように構成される。プロセッサは、定められた複数の圧力測定値を受け取り、受け取った複数の圧力測定値に関連する傾斜を決定し、且つ決定された傾斜に基づいて流体の粘度を決定するように構成される。
【0003】
他の例示の実施形態では、流体の粘度を決定する方法が提供される。吸い込みチャンバに取り付けられたピストンを、第1の時間帯、第1の一定速度で第1の方向に移動させ、チューブのチャンネルの円筒部分に流体を吸い込む。チャンネルは、吸い込みチャンバと連通している。円筒部分は、一定の直径の断面を有する。複数の第1の圧力測定値が、第1の時間帯、圧力を第1の複数回測定される。決定された複数の第1の圧力測定値と関連する第1の傾斜が定められる。ピストンを、第1の方向とは反対の第2の方向に作動させ、吸い込まれた流体をチューブから分配する。ピストンを、第2の時間帯の間、第2の一定速度で第1の方向に作動させ、チューブのチャンネルの円筒部分に流体を吸い込む。第2の時間帯の間、第2の複数回、圧力を測定し、複数の第2の圧力測定値を定める。定められた複数の第2の圧力測定値と関連する第2の傾斜を決定する。流体の粘度を、決定された第1の傾斜と決定された第2の傾斜に基づいて決定する。
【0004】
本発明の他の主な特徴及び利点は、当業者にとって、添付図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0005】
本発明の例示の実施形態を、同様の参照番号は同様の要素を示す添付図面を参照して、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】例示の実施形態による粘度計の側面図を示す。
図2】第1の例示の実施形態による図1の粘度計のピペットの下部分の概略図を示す。
図3】本発明の例示の実施形態による、ピペット動作の間の時間の関数として、関数ΔP(t)を示すグラフである。
図4】第2の例示の実施形態による図1の粘度計のピペットの下部分の概略図である。
図5】第3の例示の実施形態による図1の粘度計のピペットの下部分の概略図である。
図6】本発明の例示の実施形態による図5の粘度計のピペットの下部分を使用したピペット動作の間の時間の関数として、関数ΔP(t)を示すグラフである。
図7】第4の例示の実施形態による図1の粘度計のピペットの下部分の部分概略図を示す。
図8】本発明の例示の実施形態による図7の粘度計のピペットの下部分を使用したピペット動作の間の時間の関数として、関数ΔP(t)を示すグラフである。
図9】第2の例示の実施形態による、図1の粘度計のチューブの概略図を示す。
図10】例示の実施形態による、ニュートン流体の粘度を決定するための図1の粘度計を使用した異なる段階に関連する一連のグラフを含む。
図11】例示の実施形態による、異なるずり速度に関して、非ニュートン流体の粘度を決定するための図1の粘度計を使用した異なる段階に関連する一連のグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照して、例示の実施形態による、粘度計1の側面図を示す。粘度計1は、液体の粘度を決定するように構成されている。粘度計1は、ピペット2と、ピペット2に取り付けられるチューブ10とを含む。ここで使用されているように、「取り付ける」の用語は、接合する、結合する、連結する、組み立てる、挿入する、吊るす、保持する、固定する、緊定する、挟む、張り合わせる、固着する、ボルト止め、ネジ止め、リベット止め、半田付けする、溶接する、押圧嵌めする、成形する、その他の同様の用語を含む。チューブ10は、例えば押圧嵌めにより、ピペット2に取り外し可能に取り付けられる。ピペット2は、モーター駆動される、単一チャンネル、又は多チャンネルのピペットで構成されるのがよい。ピペットは、手持ち可能な、電気制御のピペットであってもよい。かくして、ピペット2は、携帯可能であり、小型にされる。粘度計1を形成するために、従来のどんなピペットを修正してもよい。
【0008】
ピペット2は、上部分4と、上部分4に取り付けられる下部分6とを含む。下部分6は、例えばねじ山付きナット構成により、上部分4に、取り外し可能に取り付けられる。下部分6は、チューブ10を保持するための端部品8を含む。例えば、チューブ10は、取り外し可能な方法で、端部品8に摺動して取り付けられる。上部分4は、ユーザによって保持されるハンドルを形成する本体を含む。
【0009】
上部分4は、ディスプレイ12と、入力デバイス14と、プロセッサ16と、コンピュータによって読み取り可能な媒体18と、アクチュエータ19と、電源20とを含む。ディスプレイ12は、ピペット2のユーザに情報を提示する。入力デバイス14は、ピペット2に情報を入力するための機構を提供する。入力デバイス14は、ユーザが情報をピペット2に入力するのを可能にするために、又はディスプレイ12に提示されたアイテムを選択するために、限定されないが、例えばキーボード、ペン及びタッチスクリーン、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、キーパッド、サムホイール、ボタン等を含む種々の入力技術を採用した、一つ又はそれ以上の入力機構を含む。
【0010】
コンピュータによって読み取り可能な媒体18は、情報がプロセッサ16によってアクセスできるように、電子保持位置、又はストレージである。ピペット2は、同じ、又は異なるメモリ技術を用いる、コンピュータによって読み取り可能な一つ又はそれ以上のメディアを有する。メモリ技術は、限定されないが、どんな種類のランダムアクセスメモリ(RAM)、どんな種類のリードオンリーメモリ、どんな種類のフラッシュメモリ等を含む。ピペット2は、コンパクトディスク又はデジタルビデオディスクのような、コンピュータによって読み取り可能な媒体の書き込みを助ける一つ又はそれ以上のドライブを有する。ピペット2は、一つ又はそれ以上の、コンピュータによって読み取り可能な媒体を含む外部装置との通信を可能にする、一つ又はそれ以上の通信インターフェースを有する。
【0011】
プロセッサ16は、当業者によく知られているように、指令を実行する。指令は、特別な用途のコンピュータ、理論回路、又はハードウェア回路によって遂行されるのがよい。かくして、プロセッサ16は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの方法のどんな組み合わせとして実装されるのが良い。「実行」の用語は、アプリケーションを作動させるプロセス、又は指令によって命じられた演算を遂行するプロセスである。指令は、一つ又はそれ以上のプログラム言語、スクリプト言語、アセンブリ言語で書かれるのがよい。プロセッサ16は、指令を実行する、即ち、プロセッサは、その指令によって求められた演算を実行する。プロセッサ16は、情報を受信し、送信し、且つ処理するために、ディスプレイ12、入力デバイス14、コンピュータによって読み取り可能な媒体18、及びどんな通信インターフェースと作動的に接続される。プロセッサ16は、粘度計アプリケーションのような一組の情報を恒久的なメモリデバイスから検索し、一般的にある種のRAMである一時的なメモリに、消去可能な形式でコピーする。ピペット2は、同じ、又は異なる処理技術を用いた複数のプロセッサを含んでもよい。
【0012】
粘度計アプリケーションは、液体の粘度を決定するのに関連した演算を行うのがよい。続いて説明する或る演算、又は全ての演算及びインターフェースは、粘度計アプリケーションで実施されるのがよい。演算は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの方法のどんな組み合わせを用いて実行されるのがよい。粘度計アプリケーションは、一つ又はそれ以上のプログラム言語、アセンブリ言語、スクリプト言語等を用いて書かれるのがよい。
【0013】
アクチュエータ19は、プロセッサ16及び粘度計アプリケーションのもとで、制御されたロッドの動作を制御するように構成されたモーターであるのがよい。例示の実施形態では、アクチュエータ19は、当業者に知られた種々の電気機械装置を使用して提供される。電源20は、ピペット2の種々の構成部品に電力を供給するための電池を含む。
【0014】
下部分6は、端部品8のボア24と連通する吸い込みチャンバ22を含む。ボア24は、ピペット2の長手方向軸線26とほぼ平行に、又は一致して延びる。ボア24は、吸い込みチャンバ22に通じる第1端と、外部環境に、又は端部品8に取り付けられるならばチューブに通じる第2端とを有する。ピストン30が、吸い込みチャンバ22内で、長手方向軸線26と平行な摺動方向32に摺動するように取り付けられている。公知の方法では、摺動方向32でのピストン30の移動は、液体を分配し、且つ吸引するために、例えばアクチュエータ19を用いて制御されている。
【0015】
例示の実施形態では、チューブ10は、ガラス又はプラスチックで作られ、使用の度に捨てられる。チューブ10は、液体を吸引し、且つ分配するチャンネル36を含む。例示の実施形態では、チャンネル36は、少なくとも、ピペット2に取り付けたときに長手方向軸線26と垂直である、例えば円筒部分のように一定の断面を有する部分を含む。図1に示す例では、チャンネル36は、全長に渡って円筒形であり、かくして、必須ではないが、一定の断面の単一の部分を形成する。例えば、チャンネル36は、円錐形で、円筒部分と連通した下端を有するのがよい。他の例として、チャンネル36は、異なる直径を有し、徐々に異なる直径に移行し、又は急に異なる直径に変化する円錐部分と連結される、複数の円筒部分を含む。
【0016】
粘度計1は、さらに計測手段を含む。図1を参照して、例えば、粘度計1は、吸い込みチャンバ22内、従って、ピペット2の死容積内に取り付けられた相対圧力センサ38を含む。相対圧力センサ38は、ピペット2の外側にある大気圧Poに対する、吸い込みチャンバ22内の圧力Pの値のデータを提供するように構成されている。かくして、相対圧力センサ38は、ΔP(t)=Po−P(t)のように、時間の関数として圧力をモニタするように構成されている。粘度計1は、さらに、大気圧Poを測定するための、例えば端部品8の外側に取り付けられた絶対圧力センサ40を含む。変形の実施形態では、粘度計1は、ΔP(t)を複数の圧力測定値の関数として算出するためにP(t)を測定し且つ使用するように、相対圧力センサ38を含まなくてもよい。絶対圧力センサ40は、吸い込みチャンバ22が外気と連通しているときに、大気圧Poを測定する。使用されたならば、相対圧力センサ38を、ピペット2上の、又はピペット2に隣接した他の位置に取り付けてもよい。
【0017】
相対圧力センサ38及び絶対圧力センサ40は、ピペット2の電源20によって給電される。相対圧力センサ38及び絶対圧力センサ40は、さらに、ピペット2のプロセッサ16によるアクセスのために、測定データを送るためにコンピュータによって読み取り可能な媒体18に接続される。他の実施形態では、測定手段は、ピペット2外部のコンピュータ及び/又は電源に接続されていてもよい。その上、相対圧力センサ38及び絶対圧力センサ40は、上部分4に組み込まれ、適当な導管を用いて下部分6に接続される。
【0018】
粘度計1は、ニュートン流体又は非ニュートン流体の粘度を決定するために使用される。図2を参照して、ピペット2は、チューブ10のチャンネル36の下端37が、容器41に収容された液体39の表面よりも数ミリ下に位置するように位置決めされる。ピペットを用いた操作は、ピペット2を使用して開始され、矢印42によって示すりょうに、吸い込みチャンバ22内でのピストン30の上昇により液体の吸引をもたらす。この操作の間、ピストン30は、液体39がチューブ10のチャンネル36の円筒部分に一定の速度で入るように、一定の速度に制御される。
【0019】
同時に、相対圧力センサ38は、関数ΔP(t)=Po−P(t)の値を測定し、ピペット2のプロセッサ16がアクセスするために、測定値を、コンピュータによって読み取り可能な媒体18に送る。例えば、相対圧力センサ38は、チューブ10のチャンネル36の円筒部分内での液体の吸引の間での複数の瞬間に、関数ΔP(t)の相対圧力値を測定する。粘度の正確性を向上させるために、ピストン30の上向きのストロークの間、非常に多くの回数、実施される。
【0020】
チューブ10のチャンネル36の円筒部分の円筒性質、及びピストン30の一定速度の結果、関数ΔP(t)は、関数ΔP(t)の微分係数、かくしてΔP(t)の傾斜に対応する、ディレクター係数λ(director coefficient)の線形時間関数である。例えば、図3を参照して示すように、λは、
【数1】
・・・(1)
によって計算することができる。時間の異なる瞬間で相対圧力センサ38から受け取った複数の相対圧力値を使用すると、プロセッサ16は、当業者に公知のどんな方法で、ディレクター係数λの値を決定するように構成されている。例えば、プロセッサ16は、ディレクター係数λ又はディレクター係数−λの算出に関連する演算を実施するように構成された粘度計アプリケーションを実行する。
【0021】
ディレクター係数λの決定された値は、高い精度で液体39の粘度ηを決定するために数式(1)で使用される。
【数2】
【0022】
ここで、
【数3】
であり、qpは、ピストン30によってさらわれた体積でありピストン30の速度とピストン30の長手方向に関する断面積の積に等しく、dは、チューブ10のチャンネル36の円筒部分の直径であり、pは、液体の密度であり、gは、重力加速度であり、Voは、計測時刻t=0でのピペット2の死容積であり、Poは、大気圧である。
【0023】
粘度計1を、液体39の性質に適合させることができる。例えば、チューブ10は、異なる直径を有する複数のチューブから選択されたものであり、及び/又はピストン30は、異なる直径を有する複数のピストンから選択されたものであり、及び/又はアクチュエータ19は、ピストン30の速度を制御して、異なる段階の間一定である異なる速度で作動し、及び/又はピペット2の死容積を調整することができる。チャンネル36の直径を増やすことにより、粘度が高い液体を検査することができ、チャンネル36の直径を減らすことにより、粘度が低い液体を検査することができる。異なるピストン径を選択するために、交換可能な複数の、ピペット2の下部分を使用してもよい。ピストン30の直径が増すと、ピストン30によってさらわれる容積が増し、液体39のずり速度の増加につながり、かくして、低い粘度の測定へのアクセスを提供する。その上、大きい直径のピストンは、一般的には、大きい通路直径を有するチューブと、チューブが確実に充たされる粘性液体のより効果的な放出を行う。変形として、ピストン径の選択は、多段階ピストンを使用することで提供される。ピストンの速度を増すことによって、液体39のずり速度、従って、粘性力の大きさが増し、そのため、低い粘度を有する液体を測定することができる。チューブ10内の液体39の流れが層流のままであり、測定が、乱流から生じる液圧の低下が含まないように低いピストン速度が好ましい。
【0024】
この適応性を支持するために、下部分6は、異なるチューブの大きさ、及び/又は形状、及び/又は異なる直径のピストンを支持するために、取り外し可能であり且つ交換可能である。変形として、図4の例示の実施形態を参照して、ピストン30は、本願の出願人に譲渡された米国特許出願番号11/619,882で説明されたような多段ピストンで構成されており、全体としてここに援用される。図4の例示の実施形態では、ピストン30は、異なる直径のいくつかのセクションを含み、各々が、吸い込みチャンバと対をなし、一つ又はそれ以上の電気弁46で互いに連結される。最も低い吸い込みチャンバ22は、端部品8と連通する。ユーザは、電気弁46を制御して所望のピストン径を選択することができる。
【0025】
λの精密な値を得て、従って精密な流体粘度を得るために、小さい死容積を有することが望ましく、死容積は、チューブ10のチャンネル36の容積、相対圧力センサ38と吸い込みチャンバ22の容積、ボア24と端部品8の容積、及びピストン30を囲むシールリング35まで延びる吸い込みチャンバ22の和で定められる。例示の実施形態では、死容積が小さいほど、吸い込みチャンバ22内の真空度が大きくなり、従って、関数ΔP(t)の傾きが急になり、より容易に決定できるので、粘度の決定の正確性を向上させるために、小さい死容積が使用される。上述の、ユーザによって修正することができるパラメータのうち、ピストン30の直径及びチューブ10のチャンネル36の直径は、死容積に直接影響する。
【0026】
それにも関わらず、高圧の吸い込みチャンバ22内で、相対圧力センサ38にとって許容できない小さい死容積が生じる。この問題を解決するために、図5に示す、第1の変形実施形態を使用できる。図5の例示の実施形態を参照して、相対圧力センサ38は、第1センサ38a及び第2センサ38bによって置き換えられる。第1センサ38a及び第2センサ38bは、各々が異なる圧力範囲に亘ってΔP(t)の値を決定できるように、異なる感度範囲を有する。異なる圧力範囲は重複していてもよい。第1センサ38a及び第2センサ38bは、互いに接続され、そのため、最も低い感度範囲を有する第2センサ38bは、より高い感度範囲を有する第1センサ38aによって測定された圧力が予め決定され、第1センサ38aの飽和圧力に近い閾値に達したときに、自動的に圧力測定を実施する。例えば、まず、導管52を通じて吸い込みチャンバ22と連通し、次に第1センサ38a及び第2センサ38bの各々と交互に連通する電気弁50を使用することができる。かくして、圧力が上述の閾値を越えない限り、第2センサ38bよりも高い感度範囲を有する第1センサ38aが作動したままになり、ピペット2のプロセッサ16によってアクセスするために、値ΔP(t)の測定値を、コンピュータによって読み取り可能な媒体18に送る。圧力が予め決定された閾値に到達する、測定のどんな瞬間t’で、電気弁50は、自動的に切り替わり、第1センサ38aよりも低い感度範囲を有する第2センサ38bを作動させる。
【0027】
図6を参照して示すように、ΔP(t)の値のグラフは、測定の間の切り替えの間でも、傾斜λの直線の形態を維持する。かくして、傾斜λを決定するための値を、切り替えt’を行う瞬間の前及び/又は後に行うことができる。
【0028】
変形として、吸い込みチャンバ22内で過大な圧力が生じた場合でも、良い測定精度を得るため、及び測定の間、測定精度を向上させる能力を維持するために、小さい死容積を提供することも可能である。この目的を達成するために、図7に示す第2の変形の実施形態が、相対圧力センサ38が、異なる直径を有する第1導管56a及び第2導管56bによって吸い込みチャンバ22に連結されているのを示す。例えば、図7の例示の実施形態に示すように、第1導管56aは、第2導管56bよりも小さい直径を有する。電気弁58が、相対圧力センサ38に、変形として吸い込みチャンバ22と連通する第1導管56a及び第2導管56bに連結されている。相対圧力センサ38と吸い込みチャンバ22との間の連通は、初期設定で、小さい直径の導管を有する第1導管56aを使用することで有効になり、小さい死容積をもたらし、高い測定精度を提供する。吸い込みチャンバ22内で過大な圧力が生じた場合、電気弁58は自動的に切り替わり、相対圧力センサ38と吸い込みチャンバ22の間の連通を変更し、より大きい直径を有する第2導管56bを使用する。この瞬間t’では、吸い込みチャンバ22内での圧力が低下し、従って、図8のグラフに示すように異なる傾斜λが生じる。瞬間t’の後に得られた傾斜λは、値λを決定するために、ピペット2のプロセッサ16によって選ばれる。ここで再び、連通は、測定された圧力と、相対圧力センサ38の飽和圧力との比較によって行われる。
【0029】
測定の間、死容積を修正するために、図4等に示すような多段ピストンを使用したピストンの変更のような他の方法を使用することができる。
【0030】
式(1)に示すように、粘度の値は、最初からコンピュータによって読み取り可能な媒体18に格納され、及び/又はユーザによって入力された液体39の密度ρに依存する。図9を参照して、ρが未知であるならば、チューブ10のチャンネル36は、円筒部分及び水平部分36’を含むように構成されるのがよい。水平部分36’は、ピストン30の摺動方向32とほぼ直交する。この構成を使用することで、液体39が一定部分36’の水平部分に移行するとき、圧力ΔP(t)は、流体粘度から生じるに過ぎず、例えば、チューブ10の垂直な下部分での液体の上昇の間のように、液体の密度に依存する液圧に反応しない。かくして、信号ΔP(t)は、粘度構成物を考慮するに過ぎない。その結果、式(1)を用いて液体粘度を決定するために、ρの値はゼロにセットされる。
【0031】
他の例として、液体39の密度ρを、チャンネル36が高さhの液体カラムを収容するとき、ピストン30が静止しているとき、かつ圧力ΔPの変化が安定したときに、ピペット操作の最後で吸い込みチャンバ22の液圧を測定し、下記の等式(2)を使用して決定してもよい。
【0032】
ニュートン流体では、他の選択肢は、別々の試験環境で2つの試験を実行する能力に依存し、2つの試験の各々についてのλの値を導き出し、且つ決定すべき2つの未知のパラメータがη及びρである等式(1)から得られた2つの解の系を解くことである。この解は、もし、液体39のニュートン特性が、粘度が試験条件に関わらず同じであることを意味するのであれば、2つの等式を等しくすることで得られる。この点において、チャンネル36の円筒部分の直径を変更することによって、及び/又はピストン30の速度、及び/又はピストン30の直径、及び/又は死容積の他の変更によって、2つのテストの間で試験条件を修正することができる。
【0033】
図10を参照して、λの値を導くため、及び2つの未知のパラメータ、ηとρのために等式(1)から導き出された2つの等式の系を解くため、別々の試験を実施するための例示の実施形態を示す。液体39をチャンネル36内に保つ2つの連続する吸い込みストロークの各々の間のΔP(t)の値の測定は、すべて液体39をチャンネル36内に維持するが、例えば第2の上向きのストローク中にピストン30の速度を減らすことによって、第1の上向きのストローク、下向きのストローク、及び第2の上向きのストロークを使用して行われる。図10の例示の実施形態では、第1の時間帯に亘って第1段階60が、等式(1)によって粘度ηにリンクされた値λ1をもたらす、上昇直線Δ1P(t)を生じさせる所定のピストン速度V1で行われるピストン30の第1の上向きストロークと関連する。第2の時間帯に亘る第2段階62では、ピストン30の下向きのストロークの結果、チャンネル36内に配置された液体39を分配させる。例示の実施形態では、第2段階62では測定を行わない。第3の時間帯に亘る第3段階64では、液体39がチャンネル36内に少量残るが、ピストン30の第2の上向きのストロークが、例えば速度V1に関して半分に減らされた速度V2で実施され、これにより、等式(1)によって粘度ηにリンクされたλ2をもたらす直線Δ2P(t)が生じる。2つの等式を等しくすることが、粘度η及び密度ρの決定をもたらす。
【0034】
図10に説明した処理は、どんな回数行われてもよい。かくして、例えば絶対圧力センサ40を使用しておらず、大気圧Poが決定されていないとき、第1と第2の上向きのストロークの条件とは異なる条件のピストン30の第3の上向きのストロークを、決定すべき三つの未知のパラメータがη、ρ及びPoである等式(1)から導出された三つの等式の系を解くために、使用することができる。
【0035】
より一般的に、ニュートン流体において、1よりも真に大きい多数のNの別個の試験条件についてλの値を使用して、粘度に加えて、既知である多数N’=N−1のパラメータの各々の値を決定してもよい。かくして、例えば、粘度及びN−1を決定すると、他の未知のパラメータは、Nの解及びNの未知数の系の解によって行われ、各々が、適用された特定の試験条件に関するデータによって完成する等式(1)を使用して定まる。
【0036】
連続する上向きのストローク段階の間、測定を行う能力の結果、非ニュートン流体の流動曲線、即ちずり速度を決定することができる。図11を参照すると、対応するピストン速度を適用することによって、ピストン30の各々の新しい上向きのストロークでずり速度を変更する例示の方法を示す。第1の段階70は、関連ずり速度に関して、等式(1)によって粘度ηにリンクするλ1まで延びる上昇する直線Δ1P(t)を生じさせる、所定のピストン速度V1で実施される、ピストン30の第1の上向きのストロークと関連付ける。第2の段階72では、ピストン30の第1の下向きのストロークがチャンネル36内の液体を分配する。例示の実施形態では、第2の段階72の間、測定を行わない。第3の段階74では、少量の液体39がチャンネル36内に残っているが、新しい関連ずり速度に関して、等式(1)によって粘度ηにリンクされた、値λ2をもたらす直線Δ2P(t)を生じさせるピストン30の第2の上向きのストロークが、例えば速度V1に関して2倍の速度V2で行われる。第4の段階76では、ピストン30の第1の下向きのストロークがチャンネル36内の液体を分配する。例示の実施形態では、第4の段階76の間、測定を行わない。第3の段階78では、少量の液体39がチャンネル36内に残っているが、新しい関連ずり速度のために、等式(1)によって粘度ηにリンクされた、値λ3をもたらす直線Δ3P(t)を生じさせるピストン30の第3の上向きのストロークが、例えば速度V2に関して2倍の速度V3で行われる。チューブ10のチャンネル36内に液体39を保持することによって、この方法で、方法を必要な回数だけ続けることができる。
【0037】
他の変形の実施形態によれば、ピストン30の所定の吸い込みストロークの間、液体39の流速を修正し、この間に、異なるずり速度の粘度を決定するために、関数ΔP(t)の傾斜又は関数P(t)のいくつかの測定を得る。液体39の速度、従って、液体39のずり速度は、流体39が、チューブ10内に配置された、異なる直径のチャンネル36の円筒段階部分を介して連続的に移行する構成により自動的に変更することができる。この方法を使用して非ニュートン流体とニュートン流体の両方の粘度を決定することができる。
【0038】
非ニュートン流体の粘度は、チャンネル36の円筒部分で液体39の流れ速度を変更することによって、異なるずり速度について計算することができる。各々の段階は、チューブ10を満たし、ついで完全に空にすることによって次々に実行され、液体に、所定のずり速度に対応する所定の流速を適用する。液体の速度を変更するパラメータは、ピストン30の速度、及び/又はチューブ10の直径、及び/又はピストン30の直径を含む。
【0039】
ここで使用した「例示的」の用語は、例、実例、又は例示として役立つことを意味する。ここで「例示的」として説明された側面又は設計は、必ずしも、他の側面又は設計に対して、好ましい又は有利であると解釈するべきではない。
【0040】
本発明の例示の実施形態の上述の説明は、例示及び説明の目的で提供された。網羅的又は発明を開示の正確な形態に限定することを意図しておらず、上記の教示又は発明の実施から習得できる範囲内で修正及び変更が可能である。実施形態は、発明の原理を説明するため、及び発明の実用的な用途として選択され、当業者が種々の実施形態及び意図される具体的な使用に適した種々の修正で発明を実施するのを可能にするために説明されたものである。本発明の範囲は、ここに添付した特許請求の範囲の発明及びそれらの均等物によって定められるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11