特許第5714339号(P5714339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714339
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150416BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20150416BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   H01L21/302 104H
   H01L21/302 105A
   H01L21/88 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-7493(P2011-7493)
(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2012-151199(P2012-151199A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307023373
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126583
【弁理士】
【氏名又は名称】宮島 明
(72)【発明者】
【氏名】和田 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 年洋
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−160129(JP,A)
【文献】 特開2008−218867(JP,A)
【文献】 特開平11−145123(JP,A)
【文献】 特開平09−298188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/3213
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にアルミニウム材料を形成する金属膜形成工程と、
前記アルミニウム材料の所定の部分に、耐エッチングマスクとしてホトレジストを形成するホトレジスト形成工程と、
反応ガスとして、塩素ガス又は塩素を含むガスを用い、前記アルミニウム材料をエッチング加工し、金属配線を形成する金属配線形成工程と、
前記金属配線形成工程の後に、前記ホトレジストを剥離するホトレジスト剥離工程と、
を有する半導体装置の製造方法において、
前記ホトレジスト剥離工程は、
反応ガスとして、酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用い、前記ホトレジストと前記金属配線の側壁に形成された側壁保護膜とを全て除去する金属配線露出工程と、
前記金属配線露出工程に続いて、前記半導体基板を純水により洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程に続いて、反応ガスとして酸素を用いるプラズマでアッシングし、前記金属配線露出工程で形成された反応性生成物を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属配線露出工程は、常温で処理することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板上に設けるアルミニウム材料からなる金属配線の製造方法に関し、特に、エッチング後の金属配線形成後のレジスト剥離の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の金属配線材料としては、安価で加工が容易である理由からアルミニウム材料が広く用いられている。
【0003】
従来から、半導体基板上に設ける金属配線の形成工程としては、次のような形成技術が使用されている。
はじめに、半導体基板上にアルミニウム材料を形成する(金属膜形成工程)。次に、このアルミニウム材料の所定領域の表面にホトレジストのパターンを形成する(ホトレジスト形成工程)。次いで、ホトレジストを耐エッチングマスクとし、エッチングガスを用いてアルミニウム材料をエッチングし、金属配線を形成する(金属配線形成工程)。そして、耐エッチングマスクとして使用したホトレジストを剥離する(ホトレジスト剥離工程)。
【0004】
金属配線形成工程は、エッチングガスを励起させてプラズマを発生させ、イオンやラジカルを生成し、これらと被エッチング物と反応させるドライエッチング技術を用いることが主流である。その理由は、発生したイオンやラジカルが衝突することにより生成した反応性生成物がエッチング縦端面に付着して側壁保護膜を形成しつつエッチングを行なうことができるため、異方性エッチングが可能であり、微細加工に適しているためである。
【0005】
なお、目的の金属を溶解する液体に半導体基板を浸漬させ、化学反応により目的の金属をエッチングする技術であるウェットエッチング技術も知られている。耐エッチングマスクに対して横方向にもエッチングが進むため、等方性エッチングとなることから、微細加工には不向きである。
【0006】
ホトレジスト剥離工程は、反応性ガスを用いてホトレジストを分解、除去するアッシング技術を用いることが主流である。
アッシングは、大別すると光励起アッシングとプラズマアッシングとがある。前者は、紫外線等を用いて反応性ガスとホトレジストとの化学反応を促進させる技術である。後者は、マイクロ波等を用いて反応性ガスをプラズマ化してホトレジストを分解、除去する技術である。例えば、反応性ガスに酸素を用いると、プラズマ中の酸素ラジカルとホトレジストとが反応して二酸化炭素及び水になり剥離(蒸発)する。半導体装置の製造にあっては、後者がもっぱら用いられている。以後の説明においては、プラズマアッシングを単にアッシングと記載する。
【0007】
金属配線形成工程は、反応ガスとして塩素ガス又は塩素を含むガスを用いることが一般的である。その理由は、塩素はアルミニウムと反応しやすいからである。そして、アルミニウムと塩素との反応性生成物であるAlClは、容易に真空排気できるという利点もある。
【0008】
しかし、塩素を用いたドライエッチングでは、エッチング後、プラズマに晒されたホトレジスト及び金属配線の表面には残留塩素が付着してしまう。
このような状態で、次の製造工程に移行するためなどで半導体基板を大気中に暴露すると、大気中の水分と金属配線に付着した残留塩素とが反応し、塩酸(HCl)が生成され
てしまう。
そしてこの塩酸により、アルミニウム材料である金属配線が腐食されてしまう。金属配線が塩酸により腐食されると、最悪の場合断線に至り、半導体装置が正常な動作をすることが困難となる。
【0009】
このような金属配線の腐食を防食するため、金属配線形成工程後のホトレジストを除去するホトレジスト剥離工程は、ドライエッチング後、半導体基板を大気と接触させることなく実施する必要がある。
【0010】
しかし、それだけでは残留塩素による腐食は防ぎきれない。そこで、残留塩素そのものを取り除く必要がある。例えば、ホトレジスト剥離工程終了後に半導体基板を大気中に暴露することなく、アッシングにより残留塩素を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
特許文献1に示した従来技術は、アルミニウム材料をドライエッチングするプラズマエッチング装置にインラインでホトレジストを剥離するプラズマアッシング装置を接続した装置を使用し、アッシングは、反応ガスとして酸素と水又はアルコールとを用いたプラズマで処理する。
【0012】
水又はアルコールは、分子を構成する元素として水素を含有するから、含有水素が残留塩素と反応し、塩酸を形成する。塩酸は蒸気圧が高いため、形成された塩酸はガス状態で容易に装置外に排出できるから、金属配線の腐食を防止することができる。
【0013】
特許文献1に示した従来技術は、アルミニウム材料を塩素ガス又は塩素を含むガスによりエッチングした半導体基板上のホトレジストをアッシングする際に、反応ガスとして酸素に加えてCHOH、COH、n−COH及びi−COHのうちから選択した少なくとも1種類のアルコールガスを使用する。アルコールガスと酸素との流量比率が1:1から1:5の範囲にあり、プラズマアッシング装置内の圧力が200Pa(1.5Torr)以上で、温度が200°C から270°C の範囲にある条件でアッシングを施し、ホトレジストと残留塩素とを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−306668号公報(第3頁−6頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に示した従来技術は、ホトレジストの表面に付着した残留塩素を、酸素に加えて水素を含有する水又はアルコールを用いてアッシングすることにより除去しているが、水やアルコールを真空中でガス化した状態で維持するためには、例えば200°C以上の高温環境でアッシング処理を行なう必要がある。
【0016】
しかしながら、高温環境でのアッシングでは、アッシング中に生じたホトレジストの反応性生成物(例えば、炭素系ポリマ)が金属配線表面に固着してしまうということがわかった。
【0017】
その様子を模式的に示したものが図8である。図8は、アルミニウム材料である金属配線を形成する製造方法を示す断面図であり、図8(a)は、ドライエッチング処理後の金属配線の状態を、図8(b)は、アッシング処理後の金属配線の状態を、それぞれ示している。
【0018】
図8において、1は半導体基板、2は絶縁膜、3は金属配線、4はホトレジスト、5は残留塩素である。そして8は金属配線3に固着したホトレジストの反応性生成物である。
半導体基板1は、例えばシリコンであり、絶縁膜2はシリコン酸化膜である。金属配線3はアルミニウム材料よりなる。残留塩素5はドライエッチングで使用した反応ガスの塩素が残留したものである。
【0019】
金属配線3の加工は、半導体基板1上に設ける絶縁膜2上に形成した図示しないアルミニウム材料を、ホトレジスト4をマスクとしてドライエッチングする。
このとき、反応ガスとして塩素又は塩素を含むガスを用いるが、図8(a)に示したように、ドライエッチング後には、ホトレジスト4及び金属配線3の表面に残留塩素5が付着している。
【0020】
次に、反応ガスとして酸素に加えてアルコールガスを用いて高温環境にてアッシングすることにより金属配線3上のホトレジスト4を剥離できるが、図8(b)に示したように、金属配線3の上部にホトレジストの反応性生成物8が固着してしまう。
このホトレジストの反応性生成物8は、いわば焼き付けられ焦げ付いたような状態となっているから、強く固着している。
【0021】
金属配線表面にホトレジストの反応性生成物が存在すると、後の製造工程による加熱で炭素が絶縁膜に侵入し、その絶縁膜の絶縁性や機械強度を低下させてしまうという問題を生じる。
【0022】
例えば、金属配線形成後に行なう焼成工程(シンタリング)では、印加する熱(例えば、400°C)で炭素が飛散して焼成工程に用いる装置内に飛散して炭素汚染を発生させてしまうと共に、図8に示した例で言えば、絶縁膜2に炭素が侵入してしまい、絶縁性が低下してしまうのである。
【0023】
また、パシベーション膜(最終保護膜)の形成では、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法で形成したときに印加する熱(数百℃)で炭素がCVD装置内に飛散して炭素汚染を発生させてしまうと共に、形成中のパシベーション膜に炭素が混入し、炭素混入状態のパシベーション膜が形成されてしまうのである。このような膜では、絶縁性も機械的強度も低くなり、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0024】
すなわち、半導体装置の製造工程には、上述のように加熱工程が避けられないから、ホトレジストの反応性生成物は、除去しなければならない。
【0025】
しかしながら、ホトレジストの反応性生成物は、いわば焦げ付いた状態になるから、金属配線からは容易に剥離することができない。したがって、専用の剥離液による除去工程が必要になってしまう。
【0026】
半導体装置の製造過程に、専用の剥離液を用いる除去工程を追加することは、いくつかの問題を生じる。
すなわち、この専用の剥離液は、フッ化水素(HF)系溶液であり、取り扱いが危険であるため、作業環境の整備が必要となる問題である。もちろん、専用剥離設備の導入及びその維持管理費用、専用剥離液の購入及び回収費用と、製造コストが割高になってしまうことは言うまでもない。
【0027】
また、フッ化水素系溶液である専用の剥離液は、炭素系ポリマであるホトレジストの反
応性生成物を溶解させることはできない。金属配線はアルミニウム材料であるから、この金属配線を溶かして反応性生成物を剥がしているのである。したがって、金属配線は専用の剥離液によるダメージを負ってしまい、表面が荒れたり形状が細くなったりと、金属配線の品質を低下させる要因を生じるという問題もある。
【0028】
本発明は、専用の剥離液を用いることなく、アルミニウム材料である金属配線の防食処理を行えると共に、金属配線の表面に形成されたホトレジストの反応性生成物を容易に除去できる。すなわち、本発明の目的とするところは、信頼性の高い半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法は、以下の製造方法を採用する。
【0030】
半導体基板上にアルミニウム材料を形成する金属膜形成工程と、アルミニウム材料の所定の部分に、耐エッチングマスクとしてホトレジストを形成するホトレジスト形成工程と、反応ガスとして、塩素ガス又は塩素を含むガスを用い、アルミニウム材料をエッチング加工し、金属配線を形成する金属配線形成工程と、金属配線形成工程の後に、ホトレジストを剥離するホトレジスト剥離工程と、を有する半導体装置の製造方法において、
ホトレジスト剥離工程は、反応ガスとして、酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用い、ホトレジストと金属配線の側壁に形成された側壁保護膜とを全て除去する金属配線露出工程と、この金属配線露出工程に続いて、半導体基板を純水により洗浄する洗浄工程と、この洗浄工程に続いて、反応ガスとして酸素を用いるプラズマでアッシングし、金属配線露出工程で形成された反応性生成物を除去する除去工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
このような構成とすることによって、酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用いてホトレジストを全て除去するから、ホトレジストの反応性生成物が生成されても金属配線の表面に固着することがなく、純水による洗浄で膨潤させ、酸素プラズマアッシングで容易に剥離可能である。
【0032】
さらに本発明の製造方法では、金属配線露出工程を、常温で処理してもよい。
【0033】
酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用いる金属配線露出工程は、高温環境で実施する必要がなく、常温でかまわない。このような構成とすることによって、ホトレジスト剥離工程で形成されたホトレジストの反応性生成物がアルミニウム材料からなる金属配線表面に固着することを防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ホトレジスト剥離工程にて、ホトレジストと金属配線の表面とに付着した残留塩素とを容易に除去することができ、金属配線の腐食を防止することができる。これにより、専用の剥離液を用いることなく、ホトレジストの反応性生成物を除去できる。
さらにまた、金属配線は専用の剥離液によるダメージがないから、品質の高い金属配線を形成でき、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態における半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、半導体装置の製造方法を工程順に示すものである。
図2】本発明の実施形態における金属膜形成工程を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態におけるホトレジスト形成工程を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態における金属配線形成工程を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態におけるホトレジスト剥離工程を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態における洗浄工程を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態における金属配線露出工程を示す断面図である。
図8】特許文献1に示した従来技術による半導体装置の製造方法により生じる反応性生成物を説明するために模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の半導体装置の製造方法は、金属配線形成工程後のホトレジストを剥離するホトレジスト剥離工程に特徴がある。このホトレジスト剥離工程は、3つの工程から成り立っている。
【0037】
ホトレジスト剥離工程における第1の工程は、フルアッシングして金属配線を露出させる工程である(後述する図1に示す金属配線露出工程S41で詳述する。)。
反応ガスとして酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用い、ホトレジストを全て除去する。ホトレジストを全て除去せずに少し残すという、いわゆるハーフアッシングという技術が知られているが、それとは異なり、全て除去するフルアッシングである。
金属配線形成工程後に金属配線及びホトレジストの表面に付着した残留塩素は、フッ化炭素ガスに含まれる水素と容易に反応し、蒸気圧の高い塩酸を生成する。この塩酸は、ガス化した状態で容易に装置外に排気されることから、金属配線及びホトレジストの表面には塩酸はなく、金属配線露出工程後、大気暴露しても金属配線が腐食することはない。
【0038】
また、この工程で用いる酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスは常温で液化しない。従来技術として知られている、水又はアルコールを用いた混合ガスのように、ガス化した状態を維持するために高温環境でアッシング処理を行なう必要がない。常温で処理が可能であることから、アッシング処理により生成したホトレジストの反応性生成物は、金属配線の表面に固着することがない。
【0039】
ホトレジスト剥離工程における第2の工程は、純水により洗浄を行ない、ホトレジストの反応性生成物を膨潤させる工程である(後述する図1に示す洗浄工程S42で詳述する。)。
金属配線の表面に存在するホトレジストの反応性生成物は固着していないから、この洗浄工程は、特別な溶液などを用いる必要はなく純水による洗浄でよい。ホトレジストの反応性生成物中に純水が浸透することにより、この反応性生成物は膨潤する。この洗浄工程では、反応性生成物を膨潤させるためにあり、その目的とするところは、次の工程である除去工程により簡単にホトレジストの反応性生成物を剥離させるためにある。
【0040】
ホトレジスト剥離工程における第3の工程は、ホトレジストの反応性生成物をアッシングして除去する工程である(後述する図1に示す除去工程S43で詳述する。)。
洗浄工程により純水が浸透して膨潤したホトレジストの反応性生成物は、反応ガスとして酸素を用いるプラズマを用いるアッシング処理を行なうことで容易に剥離することができる。レジストの反応性生成物は簡単に剥離できるから、金属配線にダメージが生じることもない。
【0041】
このように、本発明の半導体装置の製造方法は、ホトレジスト剥離工程が3つの工程により成り立っていることに特徴がある。酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスによる、レジストの反応性生成物が固着しないフルアッシングと、純水によるレジストの反応性生成物の膨潤と、そして酸素プラズマによる、この膨潤した反応性生成物のアッシングと、の3つの工程により、専用の剥離液を用いた処理工程を必要とせずホトレジストを剥離できる。これにより、製造手番の短縮や製造コストの低減、信頼性の向上を実現できるの
である。
【0042】
以上説明した本発明の半導体装置の製造方法を、図1から図7を用いて詳述する。
なお、この製造方法で用いる製造装置については、金属配線の材料となるアルミニウム材料をドライエッチングするプラズマエッチング装置にインラインでホトレジストを剥離するプラズマアッシング装置を接続した装置を使用するものとして説明する。
【実施例】
【0043】
図1は、本発明の最適な実施形態の概要を構成する工程順に示す製造方法のフローチャートである。図2から図7は、図1に示すフローチャートを構成する工程を説明するために模式的に示す断面図である。
【0044】
[製造工程の流れの説明:図1
図1において、S1は金属膜形成工程、S2はホトレジスト形成工程、S3は金属配線形成工程、S4はホトレジスト剥離工程、S5は洗浄工程、S6は金属配線露出工程をそれぞれ示す。ホトレジスト剥離工程S4は、3つの工程に分かれており、S41は金属配線露出工程、S42は洗浄工程、S43は除去工程となっている。
図2から図7において、1は半導体基板、2は絶縁膜、3は金属配線、4aは塗布後のホトレジスト膜、4bは所定の形状を有するホトレジスト、5は残留塩素、6は金属膜を示す。7a及び7bとはホトレジストの反応性生成物を示し、7aは膨潤前、7bは膨潤後の状態をそれぞれ示す。
【0045】
[金属膜形成工程(S1):図2
図2に示す断面図は、金属膜形成工程S1を説明する図である。
例えば、シリコンよりなる半導体基板1の表面に、絶縁膜2を形成する。この絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜であり、半導体基板1を酸化処理して形成するか、CVD法により形成する。特に限定しないが、その膜厚は、例えば、10000Åである。
【0046】
次に、絶縁膜2上にアルミニウム材料からなる金属膜6を形成する。金属膜6であるアルミニウム材料は、例えばスパッタリング法により形成したアルミニウムに1%のシリコン(Si)と0.5%の銅(Cu)とを含む合金膜である。特に限定しないが、その膜厚は、例えば、10000Åである。
【0047】
[ホトレジスト形成工程(S2):図2図3
ホトレジスト形成工程S2を引き続き図2と新たに図3とを用いて説明する。
まず、金属膜6の上部全面にホトレジスト膜4aを形成する。ホトレジスト膜4aは、既知の回転塗布法により金属膜6の上面にコーティングするように形成されている。ホトレジスト膜4aの材質は、炭素を含有する感光性樹脂である。そして、特に限定しないが、その膜厚は、例えば、17000Åである。
【0048】
次に、作成したい金属配線の形状に相当する図示しない所定のホトマスクを用いて、露光及び現像するホトリソ作業により、ホトレジスト膜4aを加工して金属膜6の所定の部分にホトレジスト4bを形成する。このホトレジスト4bは、後述するドライエッチングの耐エッチングマスクとして機能する。
【0049】
[金属配線形成工程(S3):図4
金属配線形成工程を図4を用いて説明する。
ホトレジスト4bを耐エッチングマスクとし、塩素ガス又は塩素を含むガスを用いるドライエッチングを行い、金属膜6をエッチング加工し金属配線3を形成する。
【0050】
反応ガスとして、塩素ガス又は塩素を含むガスを用いるため、ドライエッチング終了後、金属配線3とホトレジス4bとの表面に残留塩素5が付着する。
残留塩素5は大気と接触すると、大気中の水分と反応し塩酸を生成し、アルミニウム材料からなる金属配線3を腐食してしまうため、この工程である金属配線形成工程S3と次工程であるホトレジスト剥離工程S4とは、半導体基板1を大気暴露することなく、真空中にて一貫処理する。
【0051】
[ホトレジスト剥離工程(S4):図5図7
次に本発明の特徴的な製造工程であるホトレジスト剥離工程を図5図7を用いて説明する。このホトレジスト剥離工程S4は、S41からS43の3つの工程から成り立っている。
【0052】
[金属配線露出工程S41]
ホトレジスト剥離工程における第1の工程である金属配線露出工程S41を説明する。
反応ガスとして、酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用いてアッシング処理し、金属配線3上のホトレジスト4を全て除去する。つまりフルアッシングするのであって、ホトレジスト4bを少量残すようなハーフアッシングとは異なるものである。
【0053】
すでに知られている技術としてホトレジストをハーフアッシングして次工程以降で防食洗浄工程を実施する方法がある。しかし、これではホトレジストに付着した残留塩素が完全には除去しきれず、防食洗浄工程に移行した瞬間、大気に暴露されるので、金属配線3が腐食してしまうことがあり危険である。
また、ハーフアッシングしホトレジストを少量残す場合は、金属配線3の側壁に、ドライエッチング時に形成される側壁保護膜(サイドフィルム)も残留している。この側壁保護膜にも残留塩素が存在するから、やはり側壁保護膜除去の工程を実施する際に大気に暴露されると、金属配線3が腐食してしまう危険性がある。
【0054】
したがって、この金属配線露出工程S41で行なう、酸素と水素を含むフッ化炭素との混合ガスを用いて、金属配線3上のホトレジスト4を全て除去するフルアッシングには、ドライエッチング時に形成される側壁保護膜も残さず除去するという意味も含んでいる。
【0055】
水素を含むフッ化炭素は、例えば、三フッ化メタン(CHF3)であり、常温でもガス状態を維持できることからアッシング処理時に特に加熱を必要としない。そして、特に限定しないが、その温度は、例えば、25℃である。三フッ化メタンは酸素に対し10%程度の含有率で混合する。アッシング処理終了後は、半導体基板1を大気中に暴露しても何ら問題ない。
【0056】
金属配線露出工程S41終了後には、図5に示すように、金属配線3の表面にホトレジスト4bの反応性生成物7aが形成される。
しかしながら、アッシング処理は常温でなされることから、この反応性生成物7aは、従来技術のように金属配線3に固着することはない。
【0057】
なお、図5は、ホトレジスト4bの反応性生成物7aが固着していない様子を模式的に表現するため、反応性生成物7aの断面を楕円で表示した。もちろん、実際の処理では図5のような綺麗な楕円形となるものではない。
【0058】
[洗浄工程S42]
ホトレジスト剥離工程における第2の工程である洗浄工程S42を説明する。
半導体基板1を、純水を用いて洗浄する。すると、前工程の金属配線露出工程S41で生成されたホトレジスト4bの反応性生成物7aは、金属配線3に固着していないことか
ら、図6に示すように、容易に純水が浸透する。そして、膨潤した状態の反応生成物7bとなる。
【0059】
この洗浄工程S42は、あくまでも反応性生成物7aを膨潤させる目的で実施する工程である点が重要である。半導体基板1をクリーンに洗浄するための工程ではないことに注意されたい。
【0060】
なお、図6は、ホトレジスト4bの反応性生成物7aが膨潤した状態の反応性生成物7bとなった様子を模式的に表現するため、反応性生成物7aに対して形が崩れたように表示した。
【0061】
[除去工程S43]
ホトレジスト剥離工程における第3の工程である除去工程S43を説明する。
半導体基板1を反応ガスとして、酸素を用いるプラズマでアッシング処理する。すると、前工程の洗浄工程S42で純水の浸透により膨潤したホトレジスト4bの反応性生成物7bは、図7に示すように除去される。なお、アッシング時の温度は常温(例えば、25℃)である。
膨潤したホトレジスト4bの反応性生成物7bは、金属配線3と強固に密着していないことから、酸素を用いるアッシング処理にて、容易に剥離することができる。
【0062】
すでに説明した従来技術では、アルミニウム材料が腐食するのを防止するため、レジスト剥離工程であるアッシング処理を、反応ガスに水素を含有する水やアルコールを用い、200℃を越える高温環境で実施していたことから、ホトレジスト剥離工程で生じたホトレジストの反応生成物が金属配線の表面に固着されてしまい、専用の剥離液を用いて除去をしなければならなかった。
【0063】
これに対し、本発明の半導体装置の製造方法では、金属配線露出工程にてフルアッシングする処理を常温(例えば、25℃)で実施することが可能であることからホトレジストの反応性生成物が金属配線に固着することがない。反応性生成物の剥離に高額な専用剥離液を用いる必要がなく、洗浄工程で純水を用いて膨潤させたあと、除去工程にて酸素を用いるプラズマでアッシングすることで容易に除去することができるのである。
したがって、製造手番を短縮することができる。また、専用の剥離液に関わる設備や管理も不要となるから、製造コストの増加を防ぐことができる。さらにまた、金属配線は専用の剥離液によるダメージがないから、品質の高い金属配線を形成でき、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0064】
なお、以上説明した実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば任意に変更することができる。
例えば、金属配線露出工程S41でのフルアッシングの温度は常温(例えば、25℃)の場合を例にして説明したが、必ずしも常温である必要はない。発明者らが検討したところによると、ホトレジストの焼きつきは、150℃を超えると発生することがわかった。したがって、金属配線露出工程S41では、150℃を超えなければ、製造装置や加工の都合で常温を超えた温度となってもよいのである。つまり、装置内の処理室などが多少高温になっていても、常温まで冷却するまで待つ必要がなく、150℃を超えなければそのまま処理を行なえる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、アルミニウム材料を金属配線に用いた半導体装置に適用できる。特に高い信頼性を有する安価な半導体装置の製造に好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 半導体基板
2 絶縁膜
3 金属配線
4a ホトレジスト膜
4b ホトレジスト
5 残留塩素
6 金属膜
7a、7b 反応性生成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8