特許第5714346号(P5714346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714346
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20150416BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20150416BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150416BHJP
【FI】
   F21S8/12 130
   F21W101:10
   F21Y101:02
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-15219(P2011-15219)
(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-156051(P2012-156051A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116182
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 照雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−335311(JP,A)
【文献】 特開2009−048948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21W 101/10
F21Y 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の発光面を有する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの出射光を灯具前方へ投影する光学部材とをそれぞれ備えた集光用灯具ユニット及び拡散用灯具ユニットによって所望の配光パターンを形成する車両用前照灯であって、
前記拡散用灯具ユニットは、前記拡散用灯具ユニットの前記光学部材として投影レンズを備えた直射型のプロジェクタユニットであり、
前記集光用灯具ユニットは、前記発光面の長辺を車両前方の中央水平線に沿う光源像として投影した集光パターンを形成し、
前記拡散用灯具ユニットは、前記発光面の短辺を前記中央水平線に沿う光源像として投影した拡散パターンを形成し、
前記拡散用灯具ユニットの前記半導体発光素子は、前記発光面の下側の短辺を前記投影レンズの後方側焦点に合わせて、前記発光面が灯具光軸と直交する鉛直軸線に沿って延びる縦長に配置され、
前記投影レンズは、前記後方側焦点を含む焦点面上の像を反転像として水平方向に拡大しながら前方へ投影することを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記集光用灯具ユニット及び前記拡散光用灯具ユニットによって形成される配光パターンが、すれ違いビーム用配光パターンであることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関し、特にLED等の半導体発光素子を光源とする複数の灯具ユニットから出射する光を重ね合わせて所定の配光パターンを形成する車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源として半導体発光素子を用いた車両用前照灯が種々提案されている。一般に、この様な車両用前照灯に用いられる半導体発光素子は、LED(Light Emitting Diode)等の方形の発光面を有する発光チップである。
また、車両用前照灯においては、安全上の観点から、高い精度で配光パターンを形成することが必要な場合がある。この様な配光パターンは、例えば反射鏡(リフレクタ)や投影レンズ等の光学部材を用いた光学系により形成されている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1等には、半導体発光素子を光源とする複数の集光用灯具ユニットと拡散用灯具ユニットを組み合わせて所定の配光パターン(例えば、すれ違いビーム用配光パターン)を形成する車両用前照灯が記載されている。
そして、これら複数の灯具ユニットにより形成される集光・拡散の配光パターンは、何れも灯具前方へ投影された半導体発光素子の発光面による複数の光源像により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−141917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1等に開示された半導体発光素子を用いた車両用前照灯は、鉛直方向の幅が広い拡散パターンを形成する際に、反射鏡や投影レンズ等の光学部材により左右拡散と上下拡散を同時に制御する必要があり、配光制御が複雑化するという問題があった。
【0006】
また、鉛直方向の幅が狭い集光パターンを形成する際には、ホットゾーンを作るためにカットオフライン近傍に光源像を集めると、ホットゾーンの下方も同時に明るくなってしまったり、強い光ムラを生じたりすることがあった。
【0007】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、配光制御が容易で光ムラも生じ難い良好な車両用前照灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、略長方形の発光面を有する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの出射光を灯具前方へ投影する光学部材とをそれぞれ備えた集光用灯具ユニット及び拡散用灯具ユニットによって所望の配光パターンを形成する車両用前照灯であって、
前記集光用灯具ユニットによる集光パターンは、灯具前方へ投影された前記発光面の長辺が車両前方の中央水平線に沿う光源像を少なくとも含む複数の光源像により形成され、
前記拡散用灯具ユニットによる拡散パターンは、灯具前方へ投影された前記発光面の短辺が前記中央水平線に沿う光源像を少なくとも含む複数の光源像により形成されることを特徴とする車両用前照灯により達成される。
【0009】
上記構成の車両用前照灯によれば、集光用灯具ユニットは、発光面の長辺が車両前方の中央水平線に沿う光源像を少なくとも含む複数の横長の光源像によって、鉛直方向の幅が狭い集光パターンを形成することができる。
そこで、ホットゾーンを作るためにカットオフライン近傍に光源像を集めた際にも、車両幅方向の光ムラが生じ難く、ホットゾーンの下方が同時に明るくなってしまう事も防止できる。
【0010】
また、拡散用灯具ユニットは、発光面の短辺が中央水平線に沿う光源像を少なくとも含む複数の縦長の光源像によって、鉛直方向の幅が広い拡散パターンを形成することができる。
そこで、リフレクタや投影レンズ等の光学部材により左右拡散と上下拡散を同時に制御する必要がなく、左右方向(車両幅方向)の制御のみで拡散パターンを制御することができる。また、発光面の短辺を中央水平線に対して傾斜させることで、光学部材を設計変更せずに拡散パターンの鉛直方向の幅を容易に狭めることができる。
【0011】
尚、上記構成の車両用前照灯において、前記集光用灯具ユニット及び前記拡散用灯具ユニットにおける少なくとも一方の前記光学部材が、灯具光軸上に配置された前記半導体発光素子の前方に配置された投影レンズであることが望ましい。
【0012】
この様な構成の車両用前照灯によれば、光学部材として投影レンズを用いた直射型のプロジェクタユニットを構成することにより、灯具前方へ投影する複数の光源像によって形成される配光パターンの制御が容易になる。また、光学部材として投影レンズ及びリフレクタを用いた反射型のプロジェクタユニットに比べて、灯具前後方向の寸法をコンパクトにできる。
【0013】
また、上記構成の車両用前照灯において、前記集光用灯具ユニット及び前記拡散光用灯具ユニットによって形成される配光パターンが、すれ違いビーム用配光パターンであることが望ましい。
【0014】
この様な構成の車両用前照灯によれば、拡散光用灯具ユニットによる拡散パターンは、投影された縦長の光源像が回転しても、光源像上端の短辺が水平カットラインより上方にはみ出る部分が少ない。
そこで、すれ違いビームにおける拡散パターンの水平カットライン近傍を明るくすると共に当該水平カットラインのカット性を容易に確保できる。従って、車両用前照灯は、最適なすれ違いビーム用配光パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明した本発明の車両用前照灯によれば、集光用灯具ユニットは、複数の横長の光源像によって、鉛直方向の幅が狭い集光パターンを形成することができる。そこで、ホットゾーンを作るためにカットオフライン近傍に光源像を集めた際にも、車両幅方向の光ムラが生じ難く、ホットゾーンの下方が同時に明るくなってしまう事も防止できる。
【0016】
また、拡散用灯具ユニットは、複数の縦長の光源像によって、鉛直方向の幅が広い拡散パターンを形成することができる。そこで、リフレクタや投影レンズ等の光学部材により左右拡散と上下拡散を同時に制御する必要がなく、左右方向(車両幅方向)の制御のみで拡散パターンを制御することができる。
従って、配光制御が容易で光ムラも生じ難い良好な車両用前照灯を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の第1の例に係る車両用前照灯を示す概略正面図である。
図2図1に示した車両用前照灯におけるII−II断面矢視図である。
図3図1に示した車両用前照灯におけるIII−III断面矢視図である。
図4図1に示した車両用前照灯から前方へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であり、集光配光パターンと拡散配光パターンを組み合わせたすれ違いビーム用配光パターンを示す。
図5本発明の実施形態の第2の例に係る車両用前照灯を示す概略水平断面図であり、(a)は集光用灯具ユニットを示し、(b)は拡散用灯具ユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る車両用前照灯を詳細に説明する。
図1乃至図3に示すように、本発明の実施形態の第1の例に係る車両用前照灯1は、例えば車両の前端部分に取り付けられ、すれ違いビームを点消灯可能な灯具である。
【0019】
車両用前照灯1は、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室16内に、出射する光を重ね合わせてすれ違いビーム用配光パターンを形成する集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30が収容された構成となっている。
【0020】
そして、集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30は、支持部材15上に固定配置されている。また、集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30と透光カバー14との間には、灯具前方から見たときの隙間を覆うようにエクステンション18が配置されている。
【0021】
本例の支持部材15は、透光カバー14の外形形状に略沿って形成された板状部材であって、エイミング機構5及びレベリング機構8を介してランプボディ12に上下方向及び左右方向に傾動可能に支持されている。
【0022】
エイミング機構5は、エイミングナット6による締め付けを調整することで集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30の取付位置及び取付角度を微調整するための機構であり、エイミング調整した段階では、各灯具光軸Ax1,Ax2は、車両前後方向に対して略水平の方向に延びるようになっている。レベリング機構8は、乗車人数又は車載される貨物等の重量の変化に応じてレベリングモータ10を駆動することで、集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30の照射方向を自動調整するための機構である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本例の集光用灯具ユニット20は、直射型のプロジェクタユニットであり、灯具光軸Ax1上に配置された半導体発光素子22と、半導体発光素子22の前方に配置されて該半導体発光素子22からの出射光を灯具前方へ投影する光学部材としての投影レンズ21と、半導体発光素子22の前方に配置されて半導体発光素子22からの出射光の一部を遮蔽するシェード25と、を備えている。
【0024】
投影レンズ21は、前方側表面が球状凸面で後方側表面が平面の平凸レンズからなり、その後方側焦点Faを含む焦点面上の像を反転像として前方へ投影するようになっている。投影レンズ21は支持部材15の前面に設けられたレンズホルダー24の先端部に支持固定されており、該レンズホルダー24の基端部上方にはシェード25が固定されている。
また、支持部材15の後面には放熱フィン26が突設されており、その後方に配置された放熱ファン27によって半導体発光素子22に生じる熱を放熱している。
【0025】
半導体発光素子22は、1mm四方程度の大きさの発光チップを基板23上に4つ並べた長方形の発光面22aを有する白色発光ダイオードである。
半導体発光素子22の基板23は、灯具光軸Ax1上における投影レンズ21の後方側焦点Faの後方近傍における支持部材15の前面に、発光面22aの照射軸が灯具光軸Ax1と平行となるように配置されている。
【0026】
更に、半導体発光素子22は、発光面22aの下側の長辺を投影レンズ21の後方側焦点Faに合わせ、発光面22aが灯具光軸Ax1と直交する水平軸線Hxに沿って延びる横長(水平軸線Hxに対する発光面の長辺の傾斜角度が45度未満)に配置されている。尚、半導体発光素子22は、図示しない点灯制御装置により点灯制御される。
【0027】
シェード25の上端縁25aは、灯具正面視において、発光面22aの右下隅角部分を台形状に覆うことによって、すれ違いビーム用配光パターンの斜めカット部及び水平カット部を生成する為の配光生成部を形成する形状とされている。
即ち、集光用灯具ユニット20において、シェード25により一部を遮蔽されて投影レンズ21に入射された半導体発光素子22からの出射光は、投影レンズ21により灯具前方へ投影された発光面22aによる光源像PHとなって、上端縁に水平カット部CL1及び斜めカット部CL2を有するホットゾーン形成用パターン(集光パターン)PHを形成する(図4参照)。
尚、シェード25に代えて、発光面22aの一部に遮光膜を直接形成することによって、ホットゾーン形成用パターンPHの斜めカット部及び水平カット部を構成しても良い。
【0028】
図1及び図3に示すように、本例の拡散用灯具ユニット30は、直射型のプロジェクタユニットであり、灯具光軸Ax2上に配置された半導体発光素子32と、半導体発光素子32の前方に配置されて該半導体発光素子32からの出射光を灯具前方へ投影する光学部材としての投影レンズ31と、を備えている。
【0029】
投影レンズ31は、前方側表面が楕円状凸面で後方側表面が平面の平凸レンズからなり、その後方側焦点Fbを含む焦点面上の像を反転像として水平方向へ拡大しながら前方へ投影するようになっている。投影レンズ31は支持部材15の前面に設けられたレンズホルダー34の先端部に支持固定されている。
また、支持部材15の後面には放熱フィン36が突設されており、その後方に配置された放熱ファン37によって半導体発光素子32に生じる熱を放熱している。
【0030】
半導体発光素子32は、上述した集光用灯具ユニット20の半導体発光素子22と同様に、1mm四方程度の大きさの発光チップを基板33上に4つ並べた長方形の発光面32aを有する白色発光ダイオードである。
【0031】
半導体発光素子32の基板33は、灯具光軸Ax2上における投影レンズ31の後方側焦点Fbの後方近傍における支持部材15の前面に、発光面32aの照射軸が灯具光軸Ax2と平行となるように配置されている。更に、半導体発光素子32は、発光面32aの下側の短辺を投影レンズ31の後方側焦点Fbに合わせ、発光面32aが灯具光軸Ax2と直交する鉛直軸線Vxに沿って延びる縦長(水平軸線Hxに対する発光面の長辺の傾斜角度が45度以上)に配置されている。尚、半導体発光素子32は、図示しない点灯制御装置により点灯制御される。
【0032】
即ち、拡散用灯具ユニット30において、投影レンズ31に入射された半導体発光素子32からの出射光は、投影レンズ31により灯具前方へ投影された発光面32aの像PWとしてH−H線より下方に拡がるように拡散した拡散領域形成用パターン(拡散パターン)を形成する(図4参照)。
【0033】
図4は、本例の車両用前照灯1から前方へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であり、ホットゾーン形成用パターンPHと拡散領域形成用パターンPWを重ね合わせて合成配光パターンとして形成されたすれ違いビーム用配光パターンPAを示す図である。
【0034】
ホットゾーン形成用パターンPHは、図4に示すように、灯具前方へ投影された集光用灯具ユニット20における発光面22aの長辺が車両前方の中央水平線(灯具正面方向の消点であるH−V近傍の水平線)に沿う光源像PHによって、鉛直方向の幅が狭い集光パターンとして形成されている。
そこで、ホットゾーンを作るためにカットオフライン近傍に光源像を集めたホットゾーン形成用パターンPHは、車両幅方向の光ムラが生じ難く、ホットゾーンの下方が同時に明るくなってしまう事も防止できる。
【0035】
拡散領域形成用パターンPWは、図4に示すように、灯具前方へ投影された拡散用灯具ユニット30における発光面32aの短辺が車両前方の中央水平線に沿う光源像PWによって、鉛直方向の幅が広い拡散パターンとして形成されている。
そこで、投影レンズ31により左右拡散と上下拡散を同時に制御する必要がなく、左右方向(車両幅方向)の制御のみで拡散パターンを制御することができる。
【0043】
は本発明の実施形態の第2の例に係る車両用前照灯1の集光用灯具ユニット50及び拡散用灯具ユニット60を示す概略水平断面図である。
(a)に示すように、本例の集光用灯具ユニット50は、反射型のプロジェクタユニットであり、車両前後方向に延びる灯具光軸Ax3上に配置された投影レンズ51と、投影レンズ51の後方側に配置された半導体発光素子52と、該半導体発光素子52からの出射光を灯具前方に向けて灯具光軸Ax3寄りに反射するリフレクタ54と、投影レンズ51と半導体発光素子52との間に配置されて所定のすれ違い配光パターンのカットオフラインを形成するシェード55と、を備えている。
【0044】
半導体発光素子52は、上述した集光用灯具ユニット20の半導体発光素子22と同様に、1mm四方程度の大きさの発光チップを基板53上に4つ並べた長方形の発光面52aを有する白色発光ダイオードである。
【0045】
半導体発光素子52の基板53は、投影レンズ51の後方側焦点Fa1よりも後方に配置され、発光面52aの照射軸が鉛直方向上方へ向くように配置されている。更に、半導体発光素子52は、発光面52aの前側の長辺を後述するリフレクタ54の第1焦点Fa2に合わせ、発光面52aが灯具光軸Ax3と直交する水平軸に沿って延びる横長に配置されている。尚、半導体発光素子52は、図示しない点灯制御装置により点灯制御される。
【0046】
リフレクタ54は、半導体発光素子52の上方側に設けられた略ドーム状の部材であって、該半導体発光素子52からの光を前方へ向けて灯具光軸Ax3寄りに集光反射させる反射面54aを有している。
この反射面54aは、灯具光軸Ax3を中心軸とする略楕円球面状に形成されている。具体的には、この反射面54aは、灯具光軸Ax3を含む断面形状が略楕円形状に設定されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。
【0047】
そして、半導体発光素子52は、この反射面54aの鉛直断面を形成する楕円の第1焦点Fa2に配置されている。これにより、反射面54aは、半導体発光素子52からの出射光を前方へ向けて灯具光軸Ax3寄りに集光反射させ、灯具光軸Ax3を含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点(投影レンズ51の後方側焦点Fa1)に略収束させるようになっている。
【0048】
投影レンズ51は、前方側表面が球状凸面で後方側表面が平面の平凸レンズからなり、その後方側焦点Fa1がリフレクタ54の反射面54aの第2焦点に位置するようにして灯具光軸Ax3上に配置されており、これにより後方側焦点Fa1を含む焦点面上の像を反転像として前方へ投影するようになっている。
【0049】
本例のシェード55は、投影レンズ51や半導体発光素子52のホルダを兼ねるブロック(塊)状であり、リフレクタ54が載置される。また、シェード55の後面には、図示しない放熱フィンが突設されており、半導体発光素子52に生じる熱を放熱している。
更に、シェード55は、遮光端縁55cから灯具光軸Ax3方向後方へ向けて延びる上表面55aがリフレクタ54からの反射光の一部を上方へ反射させる。上表面55aには、反面処理が施された付加反射面が形成されている。
【0050】
即ち、このシェード55は、遮光端縁(即ち上表面55aとシェード55の前端面55bとの間の稜線)55cが、投影レンズ51の後方側焦点Fa1を通るように形成されている。
そして、上表面55aに形成された付加反射面においてリフレクタ54からの反射光の一部を上向きに反射させることにより、シェード55によって遮蔽されるべき光を照射光として有効に活用し、これにより半導体発光素子52からの出射光の光束利用率を高めるようになっている。
【0051】
なお、シェード55の遮光端縁55cは、投影レンズ51の像面湾曲に対応すべく、平面視において左右両側が前方へ突出する湾曲状に形成されている。この湾曲した遮光端縁55cは、投影レンズ51の焦点群と一致する。即ち、シェード55は、遮光端縁55cが投影レンズ51の焦点群に沿って形成され、その遮光端縁55c形状がそのままカットオフライン形状となっている。
【0052】
即ち、集光用灯具ユニット50において、シェード55により一部を遮蔽されて投影レンズ51に入射されたリフレクタ54からの反射光は、投影レンズ51により灯具前方へ投影された発光面52aによる光像となって、図4に示したホットゾーン形成用パターンPHと同様に、上端縁に水平カット部CL1及び斜めカット部CL2を有するホットゾーン形成用パターンを形成する。
【0053】
このホットゾーン形成用パターンは、灯具前方へ投影された集光用灯具ユニット50における発光面52aの光像によって、鉛直方向の幅が狭い集光パターンとして形成されるので、車両幅方向の光ムラが生じ難く、ホットゾーンの下方が同時に明るくなってしまう事も防止できる。
【0054】
(b)に示すように、本例の拡散用灯具ユニット60は、反射型のプロジェクタユニットであり、車両前後方向に延びる灯具光軸Ax4上に配置された投影レンズ61と、投影レンズ61の後方側に配置された半導体発光素子62と、該半導体発光素子62からの出射光を灯具前方に向けて灯具光軸Ax4寄りに反射するリフレクタ64と、投影レンズ61と半導体発光素子62との間に配置されて所定のすれ違い配光パターンのカットオフラインを形成するシェード65と、を備えている。
【0055】
半導体発光素子62は、上述した集光用灯具ユニット20の半導体発光素子22と同様に、1mm四方程度の大きさの発光チップを基板63上に4つ並べた長方形の発光面62aを有する白色発光ダイオードである。
【0056】
半導体発光素子62の基板63は、投影レンズ61の後方側焦点Fb1よりも後方に配置され、発光面62aの照射軸が鉛直方向上方へ向くように配置されている。更に、半導体発光素子62は、発光面62aの前側の短辺を後述するリフレクタ64の第1焦点Fb2に合わせ、発光面62aが灯具光軸Ax4に沿って延びる縦長に配置されている。尚、半導体発光素子62は、図示しない点灯制御装置により点灯制御される。
【0057】
リフレクタ64は、半導体発光素子62の上方側に設けられた略ドーム状の部材であって、該半導体発光素子62からの光を前方へ向けて灯具光軸Ax3寄りに集光反射させる反射面64aを有している。
この反射面64aは、灯具光軸Ax4を中心軸とする略楕円球面状に形成されている。具体的には、この反射面64aは、灯具光軸Ax4を含む断面形状が略楕円形状に設定されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。
【0058】
そして、半導体発光素子62は、この反射面64aの鉛直断面を形成する楕円の第1焦点Fb2に配置されている。これにより、反射面64aは、半導体発光素子62からの出射光を前方へ向けて灯具光軸Ax4寄りに集光反射させ、灯具光軸Ax4を含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点(投影レンズ61の後方側焦点Fb1)に略収束させるようになっている。
【0059】
投影レンズ61は、前方側表面が楕円状凸面で後方側表面が平面の平凸レンズからなり、その後方側焦点Fb1がリフレクタ64の反射面64aの第2焦点に位置するようにして灯具光軸Ax4上に配置されており、これにより後方側焦点Fb1を含む焦点面上の像を反転像として水平方向へ拡大しながら前方へ投影するようになっている。
【0060】
本例のシェード65は、投影レンズ61や半導体発光素子62のホルダを兼ねるブロック状であり、リフレクタ64が載置される。また、シェード65の後面には、図示しない放熱フィンが突設されており、半導体発光素子62に生じる熱を放熱している。
更に、シェード65は、遮光端縁65cから灯具光軸Ax4方向後方へ向けて延びる上表面65aがリフレクタ64からの反射光の一部を上方へ反射させる。上表面65aには、反面処理が施された付加反射面が形成されている。
【0061】
即ち、このシェード65は、遮光端縁(即ち上表面65aとシェード65の前端面65bとの間の稜線)65cが、投影レンズ61の後方側焦点Fb1を通るように形成されている。
そして、上表面65aに形成された付加反射面においてリフレクタ64からの反射光の一部を上向きに反射させることにより、シェード65によって遮蔽されるべき光を照射光として有効に活用し、これにより半導体発光素子62からの出射光の光束利用率を高めるようになっている。
【0062】
なお、シェード65の遮光端縁65cは、投影レンズ61の像面湾曲に対応すべく、平面視において左右両側が前方へ突出する湾曲状に形成されている。この湾曲した遮光端縁65cは、投影レンズ61の焦点群と一致する。即ち、シェード65は、遮光端縁65cが投影レンズ61の焦点群に沿って形成され、その遮光端縁65c形状がそのままカットオフライン形状となっている。
【0063】
即ち、拡散用灯具ユニット60において、シェード65により一部を遮蔽されて投影レンズ61に入射されたリフレクタ64からの反射光は、投影レンズ61により灯具前方へ投影された発光面62aによる光像となって、上端縁に水平カット部を有して、H−H線より下方に拡がるように拡散した拡散領域形成用パターンを形成する。
【0064】
この拡散用灯具ユニット60による拡散領域形成用パターンは、灯具前方へ投影された拡散用灯具ユニット60における発光面62aの光源像によって、鉛直方向の幅が広い拡散パターンとして形成されるので、投影レンズ61及びリフレクタ64により左右拡散と上下拡散を同時に制御する必要がなく、左右方向の制御のみで拡散パターンを制御することができる。
【0065】
更に、この拡散用灯具ユニット60による拡散領域形成用パターンの上端縁は、シェード65によりカットオフラインを形成されるので、上記第1の例の車両用前照灯1が備える拡散用灯具ユニット30による拡散領域形成用パターンPWに比べて良好な水平カット部を有する。
従って、上述した集光用灯具ユニット50及び拡散用灯具ユニット60を備える上記第2の例の車両用前照灯1は、上記第1の例の車両用前照灯1と同様に、配光制御が容易で光ムラも生じ難い。
【0066】
また、上述した反射型のプロジェクタユニットからなる集光用灯具ユニット50及び拡散用灯具ユニット60を備えた本第2実施形態に係る車両用前照灯は、直射型のプロジェクタユニットからなる集光用灯具ユニット20及び拡散用灯具ユニット30を備えた上記第1実施形態の車両用前照灯1に比べて灯具前後方向の寸法が拡大するが、光学部材である投影レンズ51,61及びリフレクタ54,64によって灯具前方へ投影する光源像を適宜制御することができ、所定の配光パターンの制御が更に容易になる。
【0067】
尚、本実施形態に係る車両用前照灯1における投影レンズ、半導体発光素子、光学部材、集光用灯具ユニット及び拡散用灯具ユニットなどの具体的な構成は、上記の例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づいて種々の変更が可能であることは云うまでも無い。
例えば、本実施形態に係る車両用前照灯1では、半導体発光素子として白色発光ダイオードを用いた例を説明したが、レーザダイオード等の他の面発光素子を用いることもできる。また、本実施形態の上記各例における投影レンズ31,61としては、前方側表面が楕円状凸面で後方側表面が平面の平凸レンズを用いたが、出射光が左右方向に拡散可能であれば、入射面および出射面がそれぞれ自由曲面で構成された非球面レンズやシリンドリカルレンズ等の種々の形状の投影レンズを用いることができることは云うまでもない。また、上記のように入射面および出射面がそれぞれ自由曲面で構成された非球面レンズを投影レンズとして用いる場合は、当該入射面および出射面は、光源からの光を上下方向においては平行よりもやや下向きに照射し、左右方向においては上下方向よりも光源からの光をより広角に拡散させるような自由曲面で構成されていることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態では、光源である半導体発光素子22の前方にシェード25を設けることにより、すれ違いビーム用配光パターンの斜めカット部及び水平カット部を生成しているが、これら斜めカット部及び水平カット部を生成する構成はこれに限られない。例えば、光源の前方にシェードを設けることなく投影レンズのレンズ面の形状により光源光を偏向制御することにより上記斜めカット部及び水平カット部を含むすれ違いビーム用配光パターンを形成してもよい。
【0069】
また、本実施形態の上記各例において、半導体発光素子からの出射光を灯具前方へ投影する光学部材としては、放物面反射面や双曲反射面、又は組合わせ反射面等の種々の反射面を備えたリフレクタを用いることもできる。
【0070】
また、本実施形態の上記各例では、すれ違いビーム用配光パターンを形成する車両用前照灯を例に説明したが、本発明の車両用前照灯はこれに限定されるものではなく、例えば集光用灯具ユニットと拡散用灯具ユニットを組み合わせて所定の走行用ビーム用配光パターンを形成する車両用前照灯などにも適用可能である。
【0071】
また、本実施形態の上記各例では、集光用灯具ユニットがホットゾーン形成用パターン(集光パターン)PHの形成を担い、拡散用灯具ユニットが拡散領域形成用パターン(拡散パターン)PWの形成を担う構成であり、集光用灯具ユニットおよび拡散用灯具ユニットはいずれもプロジェクタータイプの灯具ユニットであったが、ホットゾーン形成用パターン(集光パターン)PHの形成のみをプロジェクタータイプの灯具ユニットで担い、拡散領域形成用パターン(拡散パターン)PWの形成は直射タイプの灯具ユニットが担う構成としてもよい。また、これに代えて、ホットゾーン形成用パターン(集光パターン)PHの形成を直射タイプの灯具ユニットが担い、拡散領域形成用パターン(拡散パターン)PWの形成をプロジェクタータイプの灯具ユニットが担う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用前照灯
12 ランプボディ
14 透光カバー
16 灯室
20 集光用灯具ユニット
21 投影レンズ(光学部材)
22,32 半導体発光素子
22a,32a 発光面
23,33 基板
25 シェード
30 拡散用灯具ユニット
31 投影レンズ(光学部材)
Ax1,Ax2 灯具光軸
Vx 鉛直軸線
Hx 水平軸線
図1
図2
図3
図4
図5