特許第5714352号(P5714352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5714352自己チューニングするマイクロ波熱灼プローブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714352
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】自己チューニングするマイクロ波熱灼プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   A61B17/36 340
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-29452(P2011-29452)
(22)【出願日】2011年2月15日
(65)【公開番号】特開2011-177503(P2011-177503A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2013年10月21日
(31)【優先権主張番号】12/713,429
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510171885
【氏名又は名称】ヴィヴァン メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー シー.リー
(72)【発明者】
【氏名】ケンリン エス.ボン
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−262875(JP,A)
【文献】 特開2008−272472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側導体と、
前記内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、
前記誘電体の周囲に同軸に配置され、前記誘電体および前記内側導体が外側導体から遠位に伸長する前記外側導体と、
前記誘電体の遠位の伸長部の周囲に同軸に配置され、その遠位端にて前記内側導体に連結されたらせん形アンテナ素子とを具備し、前記らせん形アンテナ素子が、前記外側導体の遠位端と前記らせん形アンテナ素子の近位端との間で第1の間隙距離が規定される第1の温度における第1形態から、前記外側導体の遠位端と前記らせん形アンテナ素子の近位端との間で第1の間隙距離とは異なる第2の間隙距離が規定される第2の温度における第2形態へと動作可能に変化することを特徴とする熱灼プローブ。
【請求項2】
前記らせん形アンテナ素子が、前記第1形態と前記第2形態との間で継続的に変化可能な寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項3】
前記継続的に変化可能な寸法が、前記らせん形アンテナ素子の径と、前記らせん形アンテナ素子の長さと、前記らせん形アンテナ素子のピッチと、前記らせん形アンテナ素子のコイル間の距離と、前記内側導体の遠位端に対する前記らせん形アンテナ素子の位置と、前記誘電体の遠位の伸長部に対する前記らせん形アンテナ素子とから成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の熱灼プローブ。
【請求項4】
前記らせん形アンテナ素子が、形状記憶合金から形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項5】
前記らせん形アンテナ素子が、前記第1形態に一致するオーステナイト状態と、前記第2形態に一致するマルテンサイト状態とを有することを特徴とする請求項4に記載の熱灼プローブ。
【請求項6】
前記らせん形アンテナ素子が、正の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項4に記載の熱灼プローブ。
【請求項7】
前記らせん形アンテナ素子が、負の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項4に記載の熱灼プローブ。
【請求項8】
前記外側導体、前記誘電体、または前記らせん形アンテナ素子の少なくとも一つを覆う滑らかなコーティングをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項9】
前記内側導体が、その中に画定された流入導管を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項10】
前記誘電体が、その中に画定された流出導管を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項11】
基部内に画定された冷却用チャンバを有する、概ね円錐形の先端部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の熱灼プローブ。
【請求項12】
熱灼エネルギー源と、
熱灼エネルギー源に動作可能に連結された電磁プローブとを具備し、ここで前記電磁プローブが、
内側導体と、
前記内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、
前記誘電体の周囲に同軸に配置され、前記誘電体および前記内側導体が外側導体から遠位に伸長する前記外側導体と、
前記誘電体の遠位の伸長部の周囲に同軸に配置され、その遠位端にて前記内側導体に連結され、かつ、らせん形アンテナ素子の径と、前記らせん形アンテナ素子の長さと、前記らせん形アンテナ素子のピッチと、前記らせん形アンテナ素子のコイル間の距離と、前記内側導体の遠位端に対する前記らせん形アンテナ素子の位置と、前記誘電体の遠位の伸長部に対する前記らせん形アンテナ素子の位置とから成る群から選択される少なくとも1つの変化可能な寸法を有するように構成された前記らせん形アンテナ素子と、を具備することを特徴とし、
前記らせん形アンテナ素子が、前記外側導体の遠位端と前記らせん形アンテナ素子の近位端との間で第1の間隙距離が規定される第1の温度における第1形態から、前記外側導体の遠位端と前記らせん形アンテナ素子の近位端との間で第1の間隙距離とは異なる第2の間隙距離が規定される第2の温度における第2形態へと動作可能に変化することを特徴とする、熱灼システム。
【請求項13】
前記らせん形アンテナ素子が、形状記憶合金から形成されることを特徴とする請求項12に記載の熱灼システム。
【請求項14】
前記らせん形アンテナ素子が、第1チューニングと一致するオーステナイト状態、および第2チューニングと一致するマルテンサイト状態を有することを特徴とする請求項12に記載の熱灼システム。
【請求項15】
前記らせん形アンテナ素子が、正の熱膨張係数または負の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項12に記載の熱灼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体組織にエネルギーを提供するシステムおよび方法に関し、より詳細には、自己チューニングまたは調節可能ならせん形コイルを有する、マイクロ波により熱灼する外科手術用アンテナ、並びにその使用方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用において、例えば、モノポール、ダイポール、およびらせん形の数種類のマイクロ波プローブが存在し、組織焼灼への適用に使用され得る。モノポールおよびダイポールのアンテナ・アセンブリでは、マイクロ波エネルギーは、通常、導体の軸から垂直に放射する。モノポールアンテナ・アセンブリは、一般的に単一の細長い導体を備える。一般的なダイポールアンテナ・アセンブリは、2本の細長い導体を備え、間に置かれた電気絶縁体で端部同士が互いに直線的に配列され、位置付けられる。らせん形アンテナ・アセンブリは、接地版に接続されたらせん形状の導体を備える。らせん形アンテナ・アセンブリは、いくつかのモードで操作することができ、らせんから放射される磁場がらせん軸の垂直平面において最大である通常モード(横型)と、最大放射がらせん軸に沿う軸モード(縦型)を含む。らせん形アンテナ・アセンブリのチューニングは、少なくとも一部分において、らせん形アンテナ素子、例えば、らせんの径、らせんの長さ、らせんのコイル間のピッチまたは距離、およびらせんアセンブリが搭載されるプローブ・アセンブリに対するらせんの位置という物理的特性によって決まる。
【0003】
一般的なマイクロ波アンテナは、外側導体もプローブの軸に沿って伸長できるように、プローブの縦軸に沿って伸長し、誘電材料により包囲され、さらに誘電材料の周囲の外側導体により包囲される長くて薄い内側導体を備える。プローブの別の変形では、プローブにより、エネルギーまたは熱の効果的な外側方向の放射が提供され、外側導体の一部または複数部分が選択的に取り除かれ得る。この種類の構造は、一般的に「漏洩導波管」または「漏洩同軸」アンテナと呼ばれる。マイクロ波プローブに関して別の変形としては、効果的に放射するために必要な構成を提供するため、らせんのような均一の渦巻きパターンに形成された先端を有することを伴う。この変化は、特定の方向、例えば軸に対して垂直方向か、前方方向(すなわちアンテナの遠位端に向かう方向)か、またはそれらを組み合わせた方向にエネルギーを向けるために使用することができる。
【0004】
侵襲的な処置および装置が開発されており、マイクロ波アンテナ・プローブは、通常の身体開口部を介して治療ポイントに直接挿入され得るか、または経皮的に挿入され得る。そのような侵襲的な処置および装置は、可能性として、治療される組織の温度を良好に制御する。悪性細胞を変性させるのに必要な温度と健常細胞を損傷させる温度との差は小さいため、治療されるべき組織に加熱が限定されるように加熱パターンを知っておくこと、温度を予測可能に制御することが重要である。例えば、閾値温度が約41.5℃の温熱療法では、ほとんどの悪性腫瘍の細胞に効果が無い。しかし、およそ43℃〜45℃の範囲を超えるわずかに上昇した温度では、ほとんどの種類の正常細胞に熱損傷を与えることが決まって観測されている。従って、健常組織にはこの温度を超えないように細心の注意を払わなければならない。
【0005】
組織を熱灼する場合、特定の大きさおよび形状を有し得る熱灼体積を作り出すため、約300MHz〜約10GHzの範囲の高周波電流が標的組織に印加される。熱灼体積は、アンテナ設計、アンテナのチューニング、アンテナのインピーダンス、および組織インピーダンスに相関する。組織インピーダンスは、熱灼処置の間に、いくつかの要素、例えば組織がマイクロ波エネルギーを吸収することにより生じる組織の変性または乾燥に起因して変化し得る。組織インピーダンスの変化が原因で、プローブと組織との間にインピーダンスの不整合が生じるかもしれず、これが標的組織にマイクロ波エネルギーを送達することに悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、自己チューニングするか、または調節可能ならせん形アンテナ素子を有するマイクロ波熱灼プローブを目的とする。らせん形アンテナ素子は、使用の間、動力学的かつ自動的にチューニングされ得るか、および/または手動によりチューニングされ得る。
【0007】
一実施形態では、らせん形アンテナ素子は、形状記憶合金(SMA)から形成される。SMAは合金に属し、記憶および訓練できるという擬人化性質を有する。最も一般的なSMAの1つはニチノールであり、当該ニチノールは2つの異なる物理構造を保持することができ、温度に応じて形状を変えることができる。最近では、他のSMAが、銅、亜鉛、およびアルミニウムを基に開発されており、同様に形状記憶を保持する特性を有する。
【0008】
SMAは、充てられる温度変化および/または応力変化に応じて結晶相の転移を経験する。SMAの特に役立つ属性は、温度/応力により変形した後、元の温度に戻ると元の形状に完全に回復することができることである。この変態は、熱弾性マルテンサイト変態と呼ばれる。
【0009】
通常の条件下では、熱弾性マルテンサイト変態は、合金それ自体の成分によって異なる温度範囲、また合金が製造された熱機械的処理の種類によって異なる温度範囲を超えると生じる。換言すれば、SMAにより形状が「記憶」される温度は、マルテンサイトおよびオーステナイト結晶がその特定の合金へと形を成す温度に依存する。例えば、ニチノールとして一般的に知られるニッケル・チタン合金(NiTi)は、形状記憶効果が、例えば摂氏−2700℃〜摂氏+1000℃の広範囲の温度を超えると生じるように加工することができる。
【0010】
らせん形コイル、例えばコイルの範囲(例えば回転するらせん間の距離)の寸法、および/またはらせん形アンテナ素子の径は、外科手術部位における温度変化に応えて、SMA材料がオーステナイト状態からマルテンサイト状態へと変態することにより変化するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、らせん形コイルの寸法は、限定しないが、ピストンの作動、作動部材(例えば内側導体)、および/または調節リングのような機械的な作動に応えて変化するように構成されてもよい。従って、高温に伴うアンテナのチューニングの変化は、高温により引き起こされたらせん形アンテナ素子と一致する寸法を変化させるによって補正される。らせん形コイルアンテナは、継続的に、および/または無限に調節可能であり得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示に係る熱灼プローブは、内側導体と、内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、誘電体の周囲に同軸に配置された外側導体とを備える。誘電体および内側導体は、外側導体から遠位に伸長する。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、誘電体の遠位の伸長部の周りに同軸に配置され、その遠位端にて内側導体に動作可能に接合される。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、第1チューニングに一致する第1の寸法と、第2チューニングに一致する第2の寸法とを有する。
【0012】
他の実施形態では、本開示に係る熱灼プローブは、概ね管状の内側導体と、内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、誘電体の周囲に同軸に配置された外側導体とを備える。誘電体および内側導体は、外側導体から遠位に伸長する。らせんスロットは、誘電体または内側導体の少なくとも1つに画定される。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、誘電体の遠位の伸長部の周りに同軸に配置され、その遠位端にて内側導体に接合される。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、第1チューニングに一致する第1の寸法と、第2チューニングに一致する少なくとも1つの第2の寸法とを有する。ピストンは、内側導体内に摺動可能に配置され、らせん形アンテナ素子の近位端が、らせんスロットを介してピストンの遠位端に動作可能に連結される。
【0013】
さらに他の実施形態では、本開示に係る熱灼プローブは、誘電体と、誘電体内に同軸に配置され、誘電体に対して縦方向に移動可能な内側導体とを備える。内側導体は、誘電体から遠位に伸長する。外側導体は誘電体の周囲に同軸に配置され、誘電体は外側導体から遠位に伸長する。開示するプローブは、内側導体の遠位端に固定された先端部と、先端部を遠位に付勢させるように構成されたバイアス部材と、誘電体の遠位の伸長部の周りに同軸に配置され、その遠位端にて内側導体に動作可能に連結されたチューニング可能ならせん形アンテナ素子とを備える。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、第1チューニングに一致する第1の寸法と、第2チューニングに一致する少なくとも1つの第2の寸法とを有する。
【0014】
さらに他の実施形態では、本開示に係る熱灼プローブは、内側導体と、内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、誘電体の周囲に同軸に配置された外側導体とを備える。誘電体および内側導体は外側導体から遠位に伸長する。バレルは、外側導体の周りに同軸に配置され、その縦軸に沿って移動可能である。バレルは、外側にねじ山のついた部分と、その縦軸の周りで回転可能な調節カラーとを備え、調節カラーは当該バレルの外側にねじ山のついた部分と協同して係合するように適合された内側にねじ山のついた部分を有する。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、誘電体の遠位の伸長部の周りに同軸に配置され、その近位端にてバレルに動作可能に接合される。チューニング可能ならせん形アンテナ素子は、第1チューニングに一致する第1の寸法と、第2チューニングに一致する少なくとも1つの第2の寸法とを有する。
【0015】
また、電磁外科手術用の熱灼プローブをチューニングする方法も開示し、当該方法は、電磁外科手術用の熱灼プローブを提供するステップと、提供されたらせん形アンテナ素子の少なくとも1つの寸法を変えるステップとを含む。提供された電磁外科手術用の熱灼プローブは、内側導体と、内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、誘電体の周囲に同軸に配置された外側導体とを備え、誘電体および内側導体が外側導体から遠位に伸長し、らせん形アンテナ素子が誘電体の遠位の伸長部の周りに同軸に配置され、その遠位端にて内側導体に動作可能に接合される。
【0016】
さらに、電磁外科手術用の熱灼システムも開示し、当該システムは、熱灼エネルギー源と、熱灼エネルギー源に動作可能に連結されたチューニング可能な電磁外科手術用の熱灼プローブとを備える。チューニング可能な電磁外科手術用の熱灼プローブは、内側導体と、内側導体の周囲に同軸に配置された誘電体と、誘電体の周囲に同軸に配置された外側導体とを備える。誘電体および内側導体は、外側導体から遠位に伸長する。プローブは、その遠位端にて内側導体に動作可能に接合された誘電体の遠位の伸長部の周囲に同軸に配置された、らせん形アンテナ素子をさらに備える。らせん形アンテナ素子は、その変化可能な寸法を変えることによりチューニング可能であり、当該変化可能な寸法は、限定しないが間隙距離、回転、長さ、および径における距離を含む。
【0017】
本開示の上述のこと、他の態様、特徴、および有益性は、添付の図面と併せて読んだとき、以下の発明を実施する形態を鑑みて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施形態に係る、外科手術用熱灼プローブを有するマイクロ波熱灼システムの略図である。
図2A】本開示に係る、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブを横から見た断面図である。
図2B図2Aの外科手術用熱灼プローブの斜視図である。
図3A】らせん形アンテナが第1状態にある、図2Aの外科手術用熱灼プローブの側面図である。
図3B】らせん形アンテナが第2状態にある、図2Aの外科手術用熱灼プローブの側面図である。
図4A】本開示に係る、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブの別の実施形態を横から見た断面図である。
図4B図4Aの外科手術用熱灼プローブの斜視図である。
図4C図4Aの外科手術用熱灼プローブの断面図である。
図5A】本開示に係る、らせん形アンテナが第1状態にある、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブの別の実施形態を横から見た断面図である。
図5B】本開示に係る、らせん形アンテナが第2状態にある、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブの別の実施形態を横から見た断面図である。
図5C図5Aの外科手術用熱灼プローブの斜視図である。
図6A】本開示に係る、らせん形アンテナが第1状態にある、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブのさらに別の実施形態を横から見た断面図である。
図6B】らせん形アンテナが第2状態にある図6Aの外科手術用熱灼プローブを横から見た断面図である。
図6C図6Aの外科手術用熱灼プローブの斜視図である。
図7A】本開示に係る、らせん形アンテナが第1状態にある、らせん形アンテナ・アセンブリを有する外科手術用熱灼プローブのさらに別の実施形態を横から見た断面図である。
図7B】らせん形アンテナが第2状態にある図6Aの外科手術用熱灼プローブを横から見た断面図である。
図7C図7Aの外科手術用熱灼プローブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の具体的な実施形態を添付の図面を参照して以下に説明するが、開示する実施形態は単に開示の例示に過ぎず、当該開示は種々の形態で具体化されてよい。周知のまたは反復する機能や構造は、不必要または冗長な詳細において本開示が曖昧になることを避けるため、詳細には説明しない。それ故、本明細書で開示する特定の構造および機能は限定されるものとして解釈されるべきではなく、単に請求の範囲の基盤として、そして実際に任意の適した詳細構造にて本開示を多様に用いるように当業者に教示するための典型的な基盤として解釈されるべきである。
【0020】
図面および以下の説明において、「近位」という用語は、従来のように使用者に近い器具の端部を指し、「遠位」という用語は、使用者から離れた端部を指す。
【0021】
図1は、本開示に係るマイクロ波熱灼システム10の実施形態を示す。マイクロ波熱灼システム10は、ケーブル15によりコネクタ16に接続された電磁外科手術用の熱灼プローブ5を備え、当該コネクタ16は、アンテナ・プローブ10を発生器アセンブリ20へとさらに動作可能に接続させ得る。プローブ5は、らせん形アンテナ素子12を有する遠位の放射部分11を備える。発生器アセンブリ20は、任意の適した熱灼エネルギー源、例えば約500MHz〜約10GHzの範囲のマイクロ波またはRFエネルギー源であり得る。いくつかの実施形態では、発生器アセンブリ20は、約915MHz〜約2.45GHzの範囲の熱灼エネルギーを提供し得る。ケーブル15は、付加的または代替的に、冷却源18および/または圧力源14からの冷却液を電磁外科手術用の熱灼プローブ10に提供するように構成された導管(明確には図示せず)を提供してよい。圧力源14は、空気圧(例えば圧縮空気または他のガス)を提供するように構成され得るが、圧力源14により任意の適した加圧媒体が提供されてよいことが想定される。
【0022】
図2Aおよび図2Bを参照すると、マイクロ波熱灼プローブ110は、内側導体103と、内側導体103の周りに同軸に配置された誘電体104と、誘電体104の周りに同軸に配置された外側導体105とを有するシャフト・アセンブリ101を備える。内側導体103および外側導体105は、限定しないがステンレス鋼を含む任意の適した耐熱性の導電性材料から形成されてよい。内側導体103および外側導体105は、内側導体103および外側導体105の電導率を向上させ得る生体適合性の導電性材料でめっきまたは被覆されてよい。いくつかの実施形態では、内側導体103および外側導体105は、銀でめっきまたは被覆され得る。誘電体104は、電気絶縁特性、例えばセラミック、磁器、または高分子の材料を有する任意の適した耐熱材料から形成されてよい。内側導体103および誘電体104は、外側導体105の遠位端108を越えて遠位に伸長する。内側導体103の遠位端121は、誘電体104の遠位端109にて露出される。らせん形アンテナ素子120は、誘電体104の遠位領域の周囲で同軸に配置される。アンテナ素子120の遠位端は、その露出された遠位端121にて、限定しないがレーザー溶接、ろう付け、ねじ山のついた連結器、および/または圧接を含む、任意の適した接合方法により内側導体103へと電気機械的に接合される。らせん形アンテナ素子120の近位端は、以下で詳細に論じるように、らせん形アンテナ素子120が膨張および/または収縮できるように、取り外され得る(例えば浮遊し得る)。
【0023】
らせん形アンテナ素子120は、限定しないがニチノールとして一般的に知られるニッケル−チタニウム(NiTi)のようなSMA合金を含む、温度変化に応じて膨張および/または収縮する材料から形成され得る。製造において、らせん形アンテナ素子120は、例えば、概ね円筒形状を有する形態の周囲にニチノールワイヤ資源を巻きつけることと、オーステナイトの形状およびその大きさを画定するようにらせん形アンテナ素子120を焼き鈍すことと、マルテンサイトの大きさおよび形状のらせん形アンテナ素子120を画定するようにらせん形アンテナ素子120を変形させること(例えば膨張または収縮させること)とによりニチノールワイヤから形成され得る。この方法により、らせん形アンテナ素子120の所望の高温時の形状(オーステナイト)および低温時の形状(マルテンサイト)がニチノールワイヤの結晶構造に刻み込まれ得る。
【0024】
使用において、組織が乾燥および/または変性する結果、反射が増加することにより、プローブの温度が上昇してしまうことが考えられる。次に、これによりらせん形アンテナ素子120が加熱され、大きさおよび/または形状を変化されると、それによりらせん形アンテナ素子120のチューニングが調節および/または補正される。特に、チューニングは、外側導体の遠位端とらせん形アンテナ素子120の近位端との間の間隙距離「G」、らせん形アンテナ素子120の回転間における距離「S」、らせん形アンテナ素子120の長さ「L」、および/またはらせん形アンテナ素子120の径「D」により作用を受け得る。プローブ110、シャフト101、および/または遠位端109は、限定しないが、ポリテトラフルオロエチレン(米国、デラウェア州、ウィルミントンのE.I. du Pont de Nemours and Co.により製造されるPTFEまたはTeflon(登録商標)としても知られる)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのような滑らかな材料を用いてコーティングされてもよい。
【0025】
図3Aおよび図3Bは、それぞれがオーステナイト状態およびマルテンサイト状態になった、らせん形アンテナ素子120を描写している。使用において、マイクロ波により熱灼する外科処置の間に発生した熱が、プローブ110のらせん形コイルおよび/または関連する構成材の温度を上昇させ、次に図3Aに最もよく示されるマルテンサイトの形状およびその大きさと、図3Bに最もよく示されるオーステナイトの大きさおよびその形状との間にらせん形アンテナ素子120を転移させる。示されるように、らせん形アンテナ素子120は、温度が上昇することによりニチノール相が変態してコイルの長さLが短くなるように構成される。また、らせん形アンテナ素子120は、温度が上昇することによりコイルの径Dが小さくなるように構成されることも想定される。さらに、らせん形アンテナ素子120は、温度の上昇により長さLおよび/または径Dが大きくなるように構成されてよいことも想定される。一実施形態では、これは、例えば、所望の(より大きな)オーステナイト占有率を刻み込むように、製造中にらせん形アンテナ素子120を焼き鈍すことにより実現され得る。多様な相形状の金属合金、例えば3以上の初期状態を有するSMAが、らせん形アンテナ素子120を構築するために使用されてよいこともさらに想定される。
【0026】
図4Aおよび図4Bを見ると、本開示の実施形態に係るマイクロ波の熱灼プローブ210は、管状または他の適した形状を有し得る中空の内側導体203を備えるシャフト201を伴って示される。内側導体203の中空になった内部は、流体を概ねシャフトに、より具体的には先端230、流出導管202に送達するように適合された流入導管207を画定する。限定しないが、水、脱イオン水、生理食塩水、および/または生体適合性のオイルまたはガスを含む、低い誘電率を有する任意の適した流体が利用されてよい。シャフト201はまた、冷却用流出導管202の周りに同軸に配置された外側誘電体204と、内側導体203の周りに軸方向に配置された内側誘電体206と、外側誘電体204の周りに同軸に配置された外側導体205も備える。流出導管202は、外側誘電体204と内側誘電体206との間の領域により画定される。先端230は、外側誘電体204の遠位端に固定され、その中に画定された流体用チャンバ231を備えてもよい。
【0027】
使用において、一実施形態によれば、冷却液は冷却源18から流入導管207を通って流体用チャンバ231内へと遠位に流れ、流出導管202を通って近位に流れる。付加的または代替的に、冷却液は逆向き、例えば流出導管202を通って遠位に流れ、流入導管207を通って近位に流れてもよい。プローブ210はセンサ(明確には図示せず)を備えてもよく、当該センサは発生器20または冷却源18の少なくとも1つに動作可能に連結され、限定しないがプローブの温度および/または組織インピーダンスのような外科パラメータを探知するように適合される。発生器20および/または冷却源18は、探知された外科パラメータを受け取り、熱灼エネルギーおよび/または当該エネルギーに応じた冷却液の流れを制御するように構成され得る。これにより、らせん形アンテナ素子220の温度が制御され得、次にらせん形アンテナ素子220の大きさおよび/または形状が変化され得、それにより、らせん形アンテナ素子22のチューニングが調節および/または補正され得る。
【0028】
図5A図5B、および図5Cを参照すると、本開示のさらに別の実施形態に係るマイクロ波熱灼プローブ310が示される。プローブ310は、スリーブ307内にて縦方向に摺動可能に配置されたピストン312を有するシャフト301を備える。シャフト301は、管状の内側導体303の周囲に同軸に配置された管状の外側導体305を備え、内側導体303と外側導体305との間に配置された管状の誘電体304を有する。いくつかの実施形態では、スリーブ307の径は、内側導体303の径とほぼ同じ径であり得る。誘電体304および内側導体303は、外側導体305の遠位端を越えて遠位に伸長する。組織内にプローブを挿入する簡易性を向上させるために実質的に円錐形状であり得る先端330は、誘電体304の遠位端308で固定される。ピストン312は、ピストン312とスリーブ307との間に実質的に気密性の密封または液密性の密封を維持しつつ、スリーブ307内で自由に滑動および/または回転するように寸法化されている。ピストン312は、ピストン312の遠位端から遠位に伸長する支持部313を備え、誘電体304および内側導体303に画定されたらせんスロット316を介してらせん形アンテナ素子の近位端と動作可能に係合する連結ピン315を備える。らせん形アンテナ320の遠位端は、内側導体303の遠位端321に連結される。ピストン312は、媒体、例えば気体および/または液体により作動され得、すなわちプレナム302に導入および/または当該プレナム302から引き出される。任意の適した媒体が利用されてよく、限定しないが、例えば水、生理食塩水、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、および/または生体適合性のオイルが利用されてよい。
【0029】
使用において、媒体は、ピストン312を遠位に駆動させると、プレナム302に導入され、および/または当該プレナム302から引き出される。ピストン312が遠位に横断するにつれ、連結ピン315はらせんスロット316内を回り、らせん形アンテナ素子320を圧縮させて当該素子のチューニングを調節する。限定しないが、プレナム圧、プローブ温度、および/または組織インピーダンスを含め、プローブ310に関する物理または外科パラメータを探知するために、プローブ310内にはセンサ(明確には図示せず)が備えられてもよい。発生器20および/または圧力源14は、探知された外科パラメータを受け取り、熱灼エネルギーおよび/または当該エネルギーに応じたプレナム圧を制御するように構成され得る。これにより、らせん形アンテナ素子320のチューニングが制御され得、次にらせん形アンテナ素子320の大きさおよび/または形状が変化され得、それにより、らせん形アンテナ素子320のチューニングが調節および/または補正され得る。
【0030】
次に図6A図6B、および図6Cを参照すると、本開示のさらに別の実施形態に係るマイクロ波熱灼プローブが示され、プローブ410は、ばね仕掛けの先端430を備える。プローブ410は、内側導体403の周囲に同軸に配置された管状の外側導体405を備え、内側導体403と外側導体405との間に配置された誘電体404を有する。内側導体403は、誘電体404内に摺動可能に配置され、その近位端にてアクチュエータ(明確には図示せず)に動作可能に連結され得、当該アクチュエータにより内側導体403が縦方向に動く。限定しないが、例えばアクチュエータは、レバー、ハンドル、ねじ山の付いた調節装置(例えば蝶ねじ)、またはソレノイド、サーボ、および/またはステッピング・モータのような電気機械的アクチュエータを備えてもよい。内側導体403は、誘電体404の遠位端419を越えて遠位に伸長し、限定しないが溶接、ろう付け、圧接、締め付け、接着剤、およびネジ山の付いた装着具を含む任意の適した取り付け方法により、その遠位端418にて先端430に連結される。バイアス部材416は、先端430と、誘電体404の遠位端419との間に配置され、誘電体404の遠位端419から離れて、例えばそこから遠位に先端430にバイアスをかけるように構成される。
【0031】
プローブ410は、その遠位端にて内側導体403の遠位端418に動作可能に連結されたらせん形アンテナ素子420を備える。付加的または代替的に、らせん形アンテナ素子420は、先端430の表面まで伸長するリードワイヤ415を介して内側導体403に連結され得、ここでリードワイヤ415は接合点421にてらせん形アンテナ素子420に接合され得る。らせん形アンテナ素子420の近位端は、任意の適した取り付け方法により、その外面にて誘電体404に固定されてよい。プローブ410は、バネ416が完全に伸長して誘電体404から先端430、ばね416、および/または内側導体403がバラバラにならにように、誘電体404に先端430、バイアス部材416、および/または内側導体403の組み合わせを保持するように構成された有益な止め部(明確には図示せず)を備えてよい。一実施形態では、アクチュエータ(明確には図示せず)は、誘電体404から先端430、バイアス部材416、および/または内側導体403が分離しないように内側導体403の遠位への移動を限定し得る。使用の間、らせん形アンテナ素子430は、所望のチューニングが実現されるまで、前述のアクチュエータを使用して、内側導体403を近位および/または遠位に動かせるなど、内側導体403を縦方向に動かせることによりチューニングされ得る。
【0032】
図7A図7B、および図7Cを参照して、遠位端にて配置された、手動により調節可能ならせん形アンテナ素子520を有するマイクロ波熱灼用プローブ510を開示する。プローブ510は、内側導体503の周囲に同軸に配置された外側導体505を有するシャフト501を備え、内側導体503と外側導体505との間に配置された誘電体504を有する。誘電体504および内側導体503は、外側導体505の遠位端を越えて遠位に伸長する。プローブ510は、少なくとも外側導体505の周囲に同軸に配置された外側バレル512を備え、かつ外側バレル512の近位端にて外側にネジ山の付いた部分513を備える。外側にネジ山の付いた部分513は、内側にネジ山の付いた部分517を有する調節カラー516と動作可能に係合するように構成される。調節カラー516は、動作を容易にする1つ以上の人間工学的および/または摩擦強化要素518、例えばスカラップ、隆起、ローレット、エラストマー材などを備えてよい。
【0033】
らせん形アンテナ素子520の遠位端は、内側導体503の遠位端521に動作可能に連結される。らせん形アンテナ素子520の近位端は、外側バレル512の遠位端519に固定される。使用の間、使用者(例えば外科医)は、所望のチューニングを実現するために、調節カラー516を回転させることにより、外側バレル512を遠位および/または近位に移動させることで、らせん形アンテナ素子520のチューニングを調節し得る。1つ以上の留め部材(明確には図示せず)は、外側バレル512および/または調節カラー516を協同する方向に維持するように、例えば、調節カラー516の回転の動きが、外側バレル512の所望する直線的な縦方向の動きへと確実に移るように備えられてもよい。
【0034】
説明した本開示の実施形態は、限定的なものではなく例示的であることを目的とし、本開示のあらゆる実施形態を提示することを意図するわけではない。先に開示した実施形態、並びに他の特徴および機能のさらなる変形、またはそれらの代わりとなる手段が、以下の特許請求の範囲において、文言通りおよび法で認められる均等物として説明されるように、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、多くの異なる他のシステムまたは適用物へと作製されるか、または所望に組み合わされてよい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C