(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐摩耗材は、前記弾性体の一端に設けられた第1耐摩耗材と、前記弾性体の他端に設けられるとともに前記第1耐摩耗材から間隔をおいて配された第2耐摩耗材と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載のトルク変動吸収装置。
前記クッション部材は、予め成型した前記弾性体を金型内にインサートし、その後、前記耐摩耗材を成型し一体化することにより製造されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一に記載のトルク変動吸収装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態
1に係るトルク変動吸収装置では、回転可能に配された第1回転部材(
図2の17、18)と、前記第1回転部材に対して回転可能に配された第2回転部材(
図2の25)と、弾性力によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との間の捩れを緩衝するコイルスプリング(
図2の20)と、前記コイルスプリングの内側に配されるとともに、弾性力によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との間の捩れを緩衝するクッション部材(
図1の26)と、を備え、前記クッション部材は、柱状に形成された弾性体(
図3(A)の32)と、前記弾性体の側面を部分的に覆うとともに前記弾性体よりも耐摩耗性がある耐摩耗材(
図3(A)の31、33)と、を有
し、前記弾性体及び前記耐摩耗材の一方の部材は、前記弾性体と前記耐摩耗材との接続部分にて第1凸部を有し、前記弾性体及び前記耐摩耗材の他方の部材は、前記弾性体と前記耐摩耗材との接続部分にて前記第1凸部と係合する第1凹部を有し、前記第1凸部及び前記第1凹部は、円周方向に非連続的に形成されている。
本発明の実施形態2に係るトルク変動吸収装置では、回転可能に配された第1回転部材と、前記第1回転部材に対して回転可能に配された第2回転部材と、弾性力によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との間の捩れを緩衝するコイルスプリングと、前記コイルスプリングの内側に配されるとともに、弾性力によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との間の捩れを緩衝するクッション部材と、を備え、前記クッション部材は、柱状に形成された弾性体と、前記弾性体の側面を部分的に覆うとともに前記弾性体よりも耐摩耗性がある耐摩耗材と、を有し、前記耐摩耗材は、前記弾性体の一端に設けられた第1耐摩耗材と、前記弾性体の他端に設けられるとともに前記第1耐摩耗材から間隔をおいて配された第2耐摩耗材と、を有し、前記弾性体は、端面の一部から前記第1耐摩耗材及び前記第2耐摩耗材よりも突出した第2凸部を有する。
【0025】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した平面図である。
図2は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した
図1のX−X´間の断面図である。
図3は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の各種パターン(A)〜(F)の構成を模式的に示した断面図である。
【0027】
実施例1に係るトルク変動吸収装置1は、例えば、エンジン(内燃機関)のクランクシャフト(出力軸;図示せず)と変速機の入力軸(図示せず)との間の動力伝達経路に設けられており、回転軸間(クランクシャフトと入力軸との間)の捩れによる変動トルクを吸収(抑制)する装置である。トルク変動吸収装置1は、捩れ緩衝機能を有し、バネ力によって回転軸間の変動トルクを吸収するダンパ部3と、摩擦等によるヒステリシストルクによって回転軸間の変動トルクを吸収(抑制)するヒステリシス部4と、回転軸間の捩れがダンパ部3やヒステリシス部4で吸収できなくなったときに所定のトルク以上ですべりを生ずるリミッタ部2と、を有する。ダンパ部3は、動力伝達経路上において、ヒステリシス部4と並列に配設されている。リミッタ部2は、動力伝達経路上において、ダンパ部3及びヒステリシス部4と直列に配設されている。
【0028】
トルク変動吸収装置1は、構成部材として、リベット9と、サポートプレート10と、カバープレート11と、皿ばね12と、プレッシャプレート13と、ライニングプレート14と、摩擦材15、16と、第1サイドプレート17と、第2サイドプレート18と、リベット19と、コイルスプリング20と、シート部材21と、第1スラスト部材22と、第2スラスト部材23と、皿ばね24と、ハブ部材25と、クッション部材26と、を有する。
【0029】
リベット9は、サポートプレート10とカバープレート11を一体固定するための部材である。
【0030】
サポートプレート10は、皿ばね12の外周端部をサポート(支持)する環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。サポートプレート10は、外周部分にてカバープレート11と合わさってリベット9によって一体固定されている。サポートプレート10は、カバープレート11ととともに、ボルト(図示せず)によってエンジン(図示せず)のクランクシャフト(図示せず)に連結されたフライホイール(図示せず)に取付固定されている。サポートプレート10は、カバープレート11と一体回転する。サポートプレート10は、内周部分にてカバープレート11と離間している。サポートプレート10は、皿ばね12の外周端部と圧接している。
【0031】
カバープレート11は、リミッタ部2をカバーする環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。カバープレート11は、外周部分にてサポートプレート10と合わさってリベット9によって一体固定されている。カバープレート11は、サポートプレート10とともに、ボルト(図示せず)によってエンジン(図示せず)のクランクシャフト(図示せず)に連結されたフライホイール(図示せず)に取付固定されている。カバープレート11は、内周部分にてサポートプレート10と離間している。カバープレート11は、プレッシャプレート13を回転不能かつ軸方向移動可能に支持するための穴部11aを有する。穴部11aには、プレッシャプレート13の凸部13aが回転不能かつ軸方向移動可能に挿入されている。カバープレート11は、内周部分にて摩擦材16とスライド可能に圧接している。カバープレート11は、錆の発生により摩擦材16との貼り付きを防止するため、鉄よりも錆の発生しにくい金属(ステンレスなど)からなることが好ましい。
【0032】
皿ばね12は、サポートプレート10とプレッシャプレート13との間に配された皿状のばねであり、リミッタ部2の構成部材である。皿ばね12は、外周端部にてサポートプレート10に支持されており、内周端部にてプレッシャプレート13をカバープレート11に向かって付勢する。
【0033】
プレッシャプレート13は、皿ばね12と摩擦材15との間に配された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。プレッシャプレート13は、カバープレート11に対して回転不能かつ軸方向移動可能に支持されるようにするための凸部13aを有する。凸部13aは、カバープレート11の穴部11aに回転不能かつ軸方向移動可能に挿入されている。プレッシャプレート13は、皿ばね12によって摩擦材15側に付勢されている。プレッシャプレート13は、摩擦材15とスライド可能に圧接している。プレッシャプレート13は、錆の発生により摩擦材15との貼り付きを防止するため、鉄よりも錆の発生しにくい金属(ステンレスなど)からなることが好ましい。
【0034】
ライニングプレート14は、カバープレート11とプレッシャプレート13との間における摩擦材15、16間に配された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。ライニングプレート14は、内周部分にて径方向内側に突出した複数のストッパ部14aを有する。ストッパ部14aは、ダンパ部3の捩れを所定の角度で規制する部分であり、ダンパ部3で捩れが生じてハブ部材25のストッパ部25dと当たることでダンパ部3の捩れを規制する。ストッパ部14aは、第1サイドプレート17と第2サイドプレート18との間に挟み込まれており、第1サイドプレート17及び第2サイドプレート18とともにリベット19によって一体固定されている。ライニングプレート14は、外周部分にて摩擦材15、16間に配されており、摩擦材15、16が保持(固定、接着、リベット等による保持)されている。
【0035】
摩擦材15は、リミッタ部2の構成部材であり、ライニングプレート14とプレッシャプレート13との間に配されている。摩擦材15は、環状に構成されている。摩擦材15は、ライニングプレート14に固定されている。摩擦材15は、プレッシャプレート13とスライド可能に圧接している。摩擦材15には、ゴム、樹脂、繊維(短繊維、長繊維)、摩擦係数μ調整用の粒子などを含むものを用いることができる。
【0036】
摩擦材16は、リミッタ部2の構成部材であり、ライニングプレート14とカバープレート11との間に配されている。摩擦材16は、環状に構成されている。摩擦材16は、ライニングプレート14に固定されている。摩擦材16は、カバープレート11とスライド可能に圧接している。摩擦材16には、ゴム、樹脂、繊維(短繊維、長繊維)、摩擦係数μ調整用の粒子などを含むものを用いることができる。
【0037】
第1サイドプレート17は、ハブ部材25のフランジ部25bのエンジン側(
図1の左側)に配設された環状の部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。第1サイドプレート17は、外周端部近傍の部分にて、リベット19によってライニングプレート14及び第2サイドプレート18と一体固定されている。第1サイドプレート17は、中間部分のダンパ部3にて、コイルスプリング20及びシート部材21を収容するための窓部17aを有し、当該窓部17aの周方向にある端面がシート部材21と接離可能に接している。第1サイドプレート17は、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4にて、第1スラスト部材22に対して回転不能かつ軸方向移動可能に係合している。第1サイドプレート17は、内周端部にて、第1スラスト部材22を介してハブ部材25(ハブ部25a)に回転可能に支持されている。
【0038】
第2サイドプレート18は、ハブ部材25のフランジ部25bの変速機側(
図1の右側)に配設された環状の部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。第2サイドプレート18は、外周端部近傍の部分にて、リベット19によってライニングプレート14及び第1サイドプレート17と一体固定されている。第2サイドプレート18は、中間部分のダンパ部3にて、コイルスプリング20及びシート部材21を収容するための窓部18aを有し、当該窓部18aの周方向にある端面がシート部材21と接離可能に接している。第2サイドプレート18は、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4にて、第2スラスト部材23に対して回転不能かつ軸方向移動可能に係合しており、皿ばね24を支持する。第2サイドプレート18は、内周端部にて、第2スラスト部材23を介してハブ部材25(ハブ部25a)に対して回転可能に支持されている。
【0039】
リベット19は、ライニングプレート14、第1サイドプレート17、及び第2サイドプレート18を一体固定するための部材である。
【0040】
コイルスプリング20は、ダンパ部3の構成部品であり、サイドプレート17、18及びハブ部材25(フランジ部25b)に形成された窓部17a、18a、25cに収容され、両端に配設されたシート部材21と接している。コイルスプリング20は、サイドプレート17、18とハブ部材25とが相対回転したときに収縮し、サイドプレート17、18とハブ部材25との回転差によるショックを吸収する。コイルスプリング20には、ストレート形状、又はストレート形状のスプリングを曲げて組み付けしたものを用いることができるが、広い捩りを実現するために、周方向に沿って曲ったアークスプリングを用いることができる。
【0041】
シート部材21は、ダンパ部3の構成部品であり、サイドプレート17、18及びハブ部材25(フランジ部25b)に形成された窓部17a、18a、25cに収容され、当該窓部17a、18a、25cの周方向にある端面とコイルスプリング20の端部との間に配されている。シート部材21には、コイルスプリング20の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。
【0042】
第1スラスト部材22は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第1サイドプレート17とハブ部材25との間に配された環状の部材である。第1スラスト部材22は、軸方向において、第1サイドプレート17とフランジ部25bとの間に配されている。第1スラスト部材22は、第1サイドプレート17に対して回転不能かつ軸方向移動可能に係合しており、フランジ部25bとスライド可能に圧接している。第1スラスト部材22は、径方向において、第1サイドプレート17とハブ部25aとの間にも介在しており、第1サイドプレート17をハブ部25aに回転可能に支持するための滑り軸受(ブッシュ)となる。
【0043】
第2スラスト部材23は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第2サイドプレート18とハブ部材25との間に配された環状の部材である。第2スラスト部材23は、軸方向において、皿ばね24とフランジ部25bとの間に配されている。第2スラスト部材23は、第2サイドプレート18に対して回転不能かつ軸方向移動可能に係合しており、皿ばね24によってフランジ部25b側に付勢されており、フランジ部25bとスライド可能に圧接している。第2スラスト部材23は、径方向において、第2サイドプレート18とハブ部25aとの間にも介在しており、第2サイドプレート18をハブ部25aに回転可能に支持するための滑り軸受(ブッシュ)となる。
【0044】
皿ばね24は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第2スラスト部材23と第2サイドプレート18との間に配され、第2スラスト部材23をフランジ部25b側に付勢する皿状のばねである。
【0045】
ハブ部材25は、ダンパ部3及びヒステリシス部4からの回転動力を変速機に向けて出力する部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。ハブ部材25は、ハブ部25aの外周の所定の部位から延在したフランジ部25bを有する。ハブ部25aは、内周面にて変速機の入力軸(図示せず)とスプライン係合する。ハブ部25aは、外周にて、第1スラスト部材22を介して第1サイドプレート17を回転可能に支持しており、第2スラスト部材23を介して第2サイドプレート18を回転可能に支持している。フランジ部25bは、ダンパ部3にて、コイルスプリング20、及びシート部材21を収容するための窓部25cを有し、当該窓部25cの周方向端面がシート部材21と接離可能に接している。フランジ部25bは、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4の軸方向の面にて、スラスト部材22、23によってスライド可能に挟持されている。フランジ部25bは、外周端部にて径方向外側に突出した複数のストッパ部25dを有する。ストッパ部25dは、ダンパ部3の捩れを所定の角度で規制する部分であり、ダンパ部3で捩れが生じてライニングプレート14のストッパ部14aと当たることでダンパ部3の捩れを規制する。
【0046】
クッション部材26は、ダンパ部3に捩れが生じたときにハブ部材25のストッパ部25dとライニングプレート14のストッパ部14aとが当たるときのショックを吸収する部材である。クッション部材26は、コイルスプリング20の内側に配されている。クッション部材26は、円柱状に形成されている。クッション部材26は、ダンパ部3に捩れが生じたときに、一対のシート部材21間に挟み込まれるまでは自由状態にあり、ハブ部材25のストッパ部25dとライニングプレート14のストッパ部14aとが当たる前に一対のシート部材21間に挟み込まれる。
【0047】
クッション部材26は、一対の耐摩耗材31、33と、弾性体32とから構成される(
図3(A)参照)。クッション部材26は、円柱状の弾性体32における一端に耐摩耗材31が設けられ、他端に耐摩耗材33が設けられている。耐摩耗材31と耐摩耗材33とは、間隔をおいて配される。耐摩耗材31、33は、弾性体32の側面を部分的に覆うとともに、弾性体32の端面を覆っている。これにより、耐摩耗材31、33の内周側にある弾性体32の部分も撓むことができ、伸縮のストロークをアップできる。また、耐摩耗材31、33の内周側にも弾性体32を設けることで弾性体32と耐摩耗材31、33との接着が不要になる。耐摩耗材31、33は、弾性体32の端面を覆う部分にて、対向するシート部材(
図1の21)と接離可能である。また、耐摩耗材31、33は、弾性体32をコイルスプリング(
図2の20)と接触しないようにする役割がある。弾性体32には、弾性変形可能な材料が用いられ、例えば、ゴム、エラストマ樹脂を用いることができる。耐摩耗材31、33には、弾性体32の材料よりも耐摩耗性のある材料が用いられ、例えば、樹脂を用いることができる。
【0048】
なお、クッション部材26は、
図3(A)のような構成以外にも、
図3(B)のように弾性体32における耐摩耗材31、33で覆われていない中間部分で全周に渡って連続的に外側に突出した凸部32aを有する構成としてもよい。また、
図3(C)のように耐摩耗材31、33における弾性体32の端部を覆う部分の一部に穴部31a、33aを形成してもよい。また、
図3(D)のように、
図3(B)と同様な凸部32a、及び、
図3(C)と同様な穴部31a、33aを形成したものでもよい。また、
図3(E)のように弾性体37の両端を耐摩耗材36、38で覆わない構成としてもよい。また、
図3(F)のように弾性体37の両端を耐摩耗材36、38で覆わないで、弾性体37における耐摩耗材36、38で覆われていない中間部分で全周に渡って連続的に外側に突出した凸部37aを有する構成としてもよい。
【0049】
次に、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部の捩り特性について図面を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部の捩り特性を模式的に示した従来例と比較した図である。なお、
図4ではヒステリシス部4のヒステリシストルクを無視している。
【0050】
ダンパ部3は、捩り角0〜Aでは、コイルスプリング20のみが収縮し、コイルスプリング20の弾性力のみでトルク変動を吸収する。捩り角Aになるとクッション部材26の両端がシート部材21に当接し、捩り角Aを超えた捩り角ではコイルスプリング20及びクッション部材26が圧縮し、コイルスプリング20の弾性力、及びクッション部材26(弾性体32)の弾性力のみでトルク変動を吸収する。ここで、従来例(
図17参照)のクッション部材126では、耐摩耗材131、133の内側に弾性体132がないので、撓むことができるストロークは小さく、捩り角の変化に対してトルク変動が急激になる。一方、実施例1(
図3(A)参照)のクッション部材26では、耐摩耗材31、33の内側に弾性体32があるので、撓むことができるストロークは従来例よりも大きく、捩り角の変化に対するトルク変動が緩やかになる。
【0051】
以上のようなクッション部材26を有するダンパ部は、クラッチなどの捩り弾性構造を持つものにも適用することができる。
【0052】
実施例1によれば、クッション部材26において耐摩耗材31、33の内周側にも弾性体32を設けることで、耐摩耗材31、33の内周側にある弾性体32の部分も撓むことができるので、弾性体32の圧縮のストロークをアップでき、ダンパ部3における衝撃吸収力(エネルギー吸収力)が増加し、クッション部材26の低剛性化により捩り振動抑制効果を大きくすることができる。また、耐摩耗材31、33の内周側にも弾性体32を設けることで、弾性体32と耐摩耗材31、33との接着が不要になり、製造コストを低減させることができ、かつ、接続強度を向上させることができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の各種パターン(A)〜(D)の構成を模式的に示した断面図である。
図6は、本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の各種パターン(E)〜(H)の構成を模式的に示した断面図である。
【0054】
実施例2は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、弾性体32から耐摩耗材31、33が抜けるのを防止するため、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部を設けている。例えば、
図5(A)では、弾性体32の外周面の両端部分に全周に渡って連続的に外側に突出した凸部32b、32cを設け、耐摩耗材31、33において凸部32b、32cと係合する凹部31b、33bを設けている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0055】
クッション部材26は、例えば、予め成型した弾性体32を金型内にインサートし、その後、耐摩耗材31、33を成型し一体化することにより製造することができる。こうすることで、弾性材32は、金型にフィットしやすく、バリができにくいため、後工程のバリ取りが不要となる。また、耐摩耗材31、33の内側に抜け防止を設定することは通常の成型では困難であるが、弾性体32に予め抜け防止の凹凸を設定しておけば、通常の成型で容易に対応できる。
【0056】
なお、クッション部材26は、
図5(A)のような構成以外にも、
図5(B)のように弾性体32における両端面に凸部32d、32eを設け、耐摩耗材31、33において凸部32d、32eと係合する凹部31c、33cを設けてもよい。また、
図5(C)のように
図5(A)と同様な凸部32b、32c、凹部31b、33b及び、
図5(B)と同様な凸部32d、32e、凹部31c、33cを設けたものでもよい。また、
図5(D)のように耐摩耗材31、33間の弾性体32の中間部分の外周面の一部を覆う耐摩耗材34を設け、弾性体32と耐摩耗材34との接続部分において弾性体32の外周面の一部に全周に渡って連続的に外側に突出した凸部32fを設け、耐摩耗材34において凸部32fと係合する凹部34aを設けたものでもよい。また、
図6(E)のように弾性体32の凸部32b、32c、及び、耐摩耗材31、33の凸部32b、32cを、弾性体32の端部から中央寄りの位置に設けてもよい。また、
図6(F)のように耐摩耗材31、33の内周面の一部に全周に渡って連続的に内側に突出した凸部31d、33dを設け、弾性体32において凸部31d、33dと係合する凹部32g、32hを設けた構成としてもよい。また、
図6(G)のように弾性体37の両端を耐摩耗材36、38で覆わないで、弾性体37に凸部37b、37cを設け、耐摩耗材36、38において凸部37b、37cと係合する凹部36a、38aを設けてもよい。また、
図6(H)のように弾性体37の両端を耐摩耗材36、38で覆わないで、耐摩耗材36、38に凸部36b、38bを設け、弾性体37において凸部36b、38bと係合する凹部37d、37eを設けてもよい。
【0057】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、クッション部材26において弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部を設けることで、弾性体32から耐摩耗材31、33が抜けるのを防止することができ、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続強度を向上させることができる。
【実施例3】
【0058】
本発明の実施例3に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図7は、本発明の実施例3に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した(A)伸縮方向の断面図、(B)X−X´間の断面図である。
【0059】
実施例3は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、弾性体32から耐摩耗材31、33が抜けるのを防止するため、弾性体32の外周面の円周方向に非連続的に(全周に渡らないように、部分的に)外側に突出した凸部32i、32jを設け、耐摩耗材31、33において凸部32i、32jと係合する凹部31e、33eを設けている。その他の構成は、実施例1と同様である。なお、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部の関係を逆(弾性体32に凹部、耐摩耗材31、33に凸部)にしてもよい。
【0060】
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、クッション部材26において弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に円周方向に部分的な凹凸部を設けることで、弾性体32から耐摩耗材31、33が抜けるのを防止して接続強度を向上させることができることに加え、回転方向の相対ずれを防止することができ、クッション部材26の耐久性をアップさせることができる。
【実施例4】
【0061】
本発明の実施例4に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図8は、本発明の実施例4に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した断面図である。
【0062】
実施例4は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、弾性体32における耐摩耗材31、33で覆われていない中間部分で全周に渡って連続的に内側に凹んだ凹部32kを設け、凹部32kにおける耐摩耗材31、33の近傍にある側壁面の角部に丸みを持たせたR部32lを形成している。また、実施例4では、実施例2の
図6(F)と同様に、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部(凸部31d、33d、凹部32g、32h、実施例2のその他の形態、実施例3の形態でも可)を設けている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0063】
実施例4によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、弾性体32の中間部分に凹部32kを設けることで、弾性体32と耐摩耗材31、33との接触部分での摩耗を抑えることができ、また、弾性体31が圧縮したときの耐摩耗材31、33への負荷を低減できるので、耐摩耗材31、33の薄肉化ができる。さらに、凹部32kにおける耐摩耗材31、33の近傍にある側壁面の角部に丸みを持たせたR部32lを形成することで、弾性体32の耐久性を向上させることができる。
【実施例5】
【0064】
本発明の実施例5に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図9は、本発明の実施例5に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した断面図である。
【0065】
実施例5は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、弾性体32の両端面に有底(貫通可)の穴部32m、32nを形成したものである。また、実施例5では、実施例1の
図3(C)と同様に、耐摩耗材31、33における弾性体32の端部を覆う部分の一部に穴部31a、33aを形成している。また、実施例2の
図5(A)と同様に、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部(凸部32b、32c、凹部31b、33b、実施例2のその他の形態、実施例3の形態でも可)を設けている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0066】
実施例5によれば、実施例1、2と同様な効果を奏するとともに、弾性体32の両端面に穴部32m、32nを設けることで、圧縮時のふくらみを抑制でき、その外周にある耐摩耗材31、33との緩衝を回避できる。また、弾性体32が内側及び外側の両方に撓むことができ、応力が下げられ、耐久性が向上する。また、耐摩耗材31、33の負荷を低減でき、強度アップが可能である。
【実施例6】
【0067】
本発明の実施例6に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図10は、本発明の実施例6に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のシート部材の各種パターン(A)〜(B)の構成を模式的に示した断面図である。
【0068】
実施例6は、実施例1の変形例であり、実施例1のクッション部材(
図3(A)参照)とシート部材(
図1の21)とを一体化(クッション部材の片側の耐摩耗材をシート部材と一体化)したクッション付きのシート部材40としたものである。弾性体42における一端に耐摩耗材43が設けられ、他端にコイルスプリング20の一端を受けるシート部41が設けられている。また、耐摩耗材43及びシート部42は、弾性体42の外周面を非連続的に(部分的に)覆うとともに、弾性体41の端面を覆っている。クッション付きのシート部材40は、
図10(A)のようにクッションが付いていないシート部材21との組合せで用いるだけでなく、
図10(B)のように2つのクッション付きのシート部材40の組合せで用いることもできる。なお、弾性体42と耐摩耗材43との接続部分や弾性体42とシート部41との接続部分には、実施例2や実施例3のような凹凸部を設けてもよい。また、弾性体42において、実施例4(
図8参照)のような弾性体の中間部の凹部及びR部を適用してもよく、実施例5(
図9参照)のような弾性体の両端面の凹部(貫通しても可)を適用してもよい。
【0069】
実施例6によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、クッション付きのシート部材40とすることで、部品点数が減少しコストを低減することができる。また、2つのクッション付きのシート部材40を組み合わせて用いる場合、コイルスプリング20の内側への収納が可能であり、また、単独でコイルスプリング20の代替として設定することが可能である。また、クッション付きのシート部材40は、
図10(A)のようにクッションが付いていないシート部材21との組合せで用いる場合、コイルスプリング20のガイドとすることができる。
【実施例7】
【0070】
本発明の実施例7に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図11は、本発明の実施例7に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の各種パターン(A)〜(B)の構成を模式的に示した断面図である。
【0071】
実施例7は、実施例1の変形例であり、クッション部材26において、弾性体37の両端に耐摩耗材を設けるのをやめ、弾性体37の外周面の中間部分を覆う耐摩耗材39を設けたものである。弾性体37の両端は、対向するシート部材(
図1の21)と接離可能である。また、弾性体37から耐摩耗材39が抜けるのを防止するため、弾性体37と耐摩耗材39との接続部分に凹凸部を設けている。例えば、
図11(A)では、弾性体37の外周面の中間部分に全周に渡って連続的に外側に突出した凸部37fを設け、耐摩耗材39において凸部37fと係合する凹部39aを設けている。また、
図11(B)のように耐摩耗材39に凸部39bを設け、弾性体37において凸部39bと係合する凹部37gを設けてもよい。なお、弾性体37と耐摩耗材39との接続部分の凹凸部は、実施例2や実施例3のような形態でもよい。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0072】
実施例7によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、弾性体37の中間部分の外周に耐摩耗材37を設けることで、耐摩耗材39はクッション部材26において1部品であり、成型コストが安くすむ。また、耐摩耗材39の長さが長く設定できるため、コイルスプリング(
図1の20)のコイル線間への嵌まり込みを防止することができる。
【実施例8】
【0073】
本発明の実施例8に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図12は、本発明の実施例8に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した断面図である。
【0074】
実施例8は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、耐摩耗材31、33における弾性体32の端面を覆う部分の一部に貫通した穴部31f、33fを設け、弾性体32において端面から穴部31f、33fを通じて耐摩耗材31、33よりも突出した凸部32o、32pを設けたものである。凸部32o、32pは、対向するシート部材(
図1の21)と接離することになる。また、実施例8では、実施例2の
図5(A)と同様に、弾性体32と耐摩耗材31、33との接続部分に凹凸部(凸部32b、32c、凹部31b、33b、実施例2のその他の形態、実施例3の形態でも可)を設けている。その他の構成は、実施例1と同様である。また、弾性体42において、実施例4(
図8参照)のような弾性体の中間部の凹部及びR部を適用してもよい。
【0075】
実施例8によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、弾性体32の両端面に耐摩耗材31、33よりも突出した凸部32o、32pを設けることで、弾性体32の全長を長く設定できるため、弾性体32の圧縮時のストローク量を大きくすることができ、より大きな衝撃トルクでも低減が可能である。また、弾性体32を圧縮するときに凸部32o、32pが先に圧縮し、その後、弾性体32の本体が圧縮するので、トルクを段階的に低減できる。
【実施例9】
【0076】
本発明の実施例9に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例9に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の各種パターン(A)〜(C)の構成を模式的に示した断面図である。
【0077】
実施例9は、実施例1の変形例であり、クッション部材26の構成は基本的には実施例1と同様であるが、弾性体37及び耐摩耗材36、38を予め嵌め込み可能な形状に成型しておき、弾性体37の両端に耐摩耗材36、38を嵌め込んで一体化したものである。例えば、弾性体37において、外周面における両端部分に円錐面部37h、37iを設け、外周面における円錐面部37h、37iに隣接した中央側にて全周にわたって凹んだ凹部37d、37eを設け、円筒状の耐摩耗材36、38の内周面に凹部37d、37eに対応する凸部36b、38bを設けた構成とすることができる。なお、弾性体37の両端は、
図13(A)のように耐摩耗材36、38よりも突出していてもよく、
図13(B)のように凹んでいてもよい。また、
図13(C)のように凹部37d、37eを凸部36b、38bに対して圧縮方向にクリアランスを持った構成としてもよい。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0078】
実施例9によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、弾性体37及び耐摩耗材36、38を嵌め込み構造とすることにより、コストがかかる接着を廃止でき、製造が容易にできる。
【実施例10】
【0079】
本発明の実施例10に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図14は、本発明の実施例10に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した(A)伸縮方向の断面図、(B)矢視Yからの平面図である。
【0080】
実施例10は、実施例1の変形例であり、耐摩耗材(
図3(A)の31、33)を複数(
図14では各々2つ)に分割した耐摩耗材46、47、48、49を用いたものである。その他の構成は、実施例1と同様である。実施例10によれば、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例11】
【0081】
本発明の実施例11に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図15は、本発明の実施例11に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した断面図である。
【0082】
実施例11は、実施例6の変形例であり、耐摩耗材(
図10(B)(
図10(A)でも可)の43)を設けるのをやめたものである。見方を変えると、実施例11は、実施例1のクッション部材(
図3(A)参照)における耐摩耗材(
図3(A)の31、33)とシート部材(
図1の21)とを一体化(クッション部材の両側の耐摩耗材をシート部材と一体化)し、かつ、弾性体(
図3(A)の32)を2つに分割した弾性体42を用いたクッション付きのシート部材40としたものである。その他の構成は、実施例6と同様である。実施例11によれば、実施例6と同様な効果を奏する。
【実施例12】
【0083】
本発明の実施例12に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図16は、本発明の実施例12に係るトルク変動吸収装置におけるダンパ部のクッション部材の構成を模式的に示した断面図である。
【0084】
実施例12は、実施例11の変形例であり、シート部材40の構成は基本的には実施例11と同様であるが、シート部41から弾性体42が抜けるのを防止するため、シート部41と弾性体42との接続部分に凹凸部を設けている。例えば、
図16では、弾性体42の外周面に全周に渡って連続的(部分的でも可)に内側に凹んだ凹部42aを設け、シート部41において凹部42aと係合する凸部41aを設けている。また、弾性体42は、シート部41との取り付け面から離間する方向に向かうにつれて径方向の寸法が小さくなっている。その他の構成は、実施例11と同様である。
【0085】
実施例12によれば、実施例11と同様な効果を奏するとともに、シート部41から弾性体42が抜けるのを防止することができる。また、シート部41との取り付け面付近で径方向の寸法を大きくすることで、弾性体42の変形を抑え、シート部41との取り付け面から離間したところでは変形量を大きくすることができる。
【0086】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。