(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建築材料として、壁、天井、床等に用いられる金属製の長尺材(ランナー材、野縁、野縁受け、根太等)は、通常、現場では規格の長さの長尺材、或いは必要な長さにプレカットしたものを用いる。また、現場において長尺材同士を接続して用いる場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1には
図10に示すように、下端が床側のランナーに嵌合されるスタッド90、このスタッド90内に嵌合摺動可能なジョイント部材92、及び継ぎスタッド94を有するスタッドの取付構造が記載されている。この取付構造では、上記ジョイント部材92を継ぎスタッド94の下端に嵌合させるとともに、このジョイント部材92の下端を上記スタッド90の上端に嵌入し、ジョイント部材92をスタッド90内で摺動可能に配置する。
【0004】
そして、上記継ぎスタッド94の上端を天井側のランナー96に押し当て、ネジ98を使用してジョイント部材92をスタッド90に固定することで、スタッド94を天井側及び床側のランナー間の寸法に応じて、伸縮自在に壁面の高さに対応させることができるというものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の仮設軽量間仕切は、可変長テンションスタッドに関し、第1スタッド素子と、この第1スタッド素子の内部に摺動自在に嵌挿される第2スタッド素子と、これらを弾性的に結合するためのばね装置とを含有し、全長を収縮して弾性歪エネルギーに起因する弾性反発力を上側及び下側のランナーなどに加え、強固に押圧固定するというものである。
【0006】
特許文献3に記載の溝形材の接合構造は、一方の溝形材の端部へ両側に立上り部を形成した連結板の一部を挿入し、次いで連結板の他の一部に他方の溝形材の端部を外挿させた構造により、溝形材相互が横振れせず真直な状態に接合することができるというものである。
特許文献4には仕切柱に関し、この仕切柱を伸縮柱と差込部から構成し、伸縮柱にやや小さい他の伸縮柱を差し込んでその長さを調節する機能を有する記載がある。
【0007】
また、特許文献5には、ランナーを長手方向に一般部用と端部用の2つのランナー構成材に分割し、これらランナー構成材を直列にスライド嵌合することで長さ寸法の調整ができるランナー構造の記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、上記特許文献1に記載のスタッドの取付構造は、スタッド、継ぎスタッド及びジョイント部材を有する構造であり、また特許文献2の可変長テンションスタッドは第1スタッド素子、第2スタッド素子及びばね装置を有する構造であり、何れのスタッドについても複数種類の材料を用いて長さ調整を行う必要がある。また、特許文献3〜5に記載の接合構造についても、何れも複数種類の材料を用いて長さ調整を行うものである。
【0010】
このように、スタッド等を構成する部品が複数になると、部品の製造コストがかかり生産性に欠け、また倉庫での部品の管理も複雑となり、輸送にも手間取るという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、生産性に優れ、管理及び輸送も容易で施工性にも優れた溝形材の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る溝形材の接合構造は、
図1等に示すように、基板部4、この基板部の左右の側からそれぞれ同一方向にかつ直角に形成される第一の側板部6、及び第二の側板部7を有する断面コの字状の溝形材2を用い、上記第一の側板部6の端部に内側に曲げた係合片部8を形成する一方、上記第二の側板部7に上記係合片部8が係合可能な凹状の係合溝部10を形成し、上記溝形材2の端部から、これと同一形状の他の上記溝形材2の端部を差し込み、上記係合片部8を上記係合溝部10に係合させて長手以外の方向には外れないように接合するとともに、上記他の溝形材2を長手方向に摺動させて両溝形材2同士が接合した断面矩形状の接合部24を形成し、この接合部24の長さ調整により伸縮自在な長尺材を形成した構成である。
【0013】
ここで、上記「内側に曲げた係合片部8」としては、係合片部8を第一の側板部6に対して内側に鉤状に曲げ、係合片部8の先端部がこの係合片部8の屈曲頂点(基板部4から最も遠い位置)よりも基板部4側に位置するような形状、係合片部8を第一の側板部6に対して鋭角に屈曲した形状、或いは、係合片部8を内側に曲げ、さらにその先端部に至る途中を曲げた形状等がある。
また、上記係合溝部10は、上記係合片部8の形状に沿った形状に溝部を形成することで、上記係合片部8を上記係合溝部10に係合させて溝形材2同士を接合した場合、溝形材2同士の接合部24は長手方向以外の向きには外れることがない。
【0014】
本発明に係る溝形材の接合構造は、上記係合片部8をU字状に屈曲形成する一方、上記係合溝部10をこの係合片部8が密着して係合する形状に形成した構成である。
【0015】
本発明に係る溝形材の接合構造は、
図7に示すように、基板部64、この基板部の左右の側からそれぞれ同一方向にかつ直角に形成される第一の側板部66、及び第二の側板部67を有する断面コの字状の溝形材62を用い、上記第一の側板部66の端部に内側に曲げた係合片部68を形成する一方、上記第二の側板部67と上記基板部64とが交差する部位に上記係合片部68が係合可能な凸状の係合突部70を形成し、上記溝形材62の端部から、これと同一形状の他の上記溝形材62の端部を差し込み、上記係合片部68の溝状部73を上記係合突部70に係合させて長手以外の方向には外れないように接合するとともに、上記他の溝形材62を長手方向に摺動させて両溝形材62同士が接合した断面矩形状の接合部24を形成し、この接合部24の長さ調整により伸縮自在な長尺材を形成した構成である。
【0016】
ここで、上記「内側に曲げた係合片部68」としては、係合片部68を第一の側板部66に対して鋭角に屈曲した形状、係合片部68を内側に鉤状(上記係合片部8と同様)に曲げた形状等がある。
また、上記係合突部70は、上記係合片部68の形状に沿った形状(折曲げ角度をもたせる等)に形成することで、上記係合片部68の溝状部73を上記係合突部70に係合させて溝形材62同士を接合した場合、溝形材62同士は長手方向以外の向きには外れることがない。
【0017】
本発明に係る溝形材の接合構造は、上記接合部24において、重合する上記第一の側板部6,66と上記第二の側板部7,67とをビス26で固定した構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る溝形材の接合構造によれば、断面コの字状の溝形材を用い、第一の側板部の端部に係合片部を形成する一方、第二の側板部に係合溝部を形成し、溝形材の端部から他の溝形材の端部を差し込み、長手方向に摺動させて両溝形材同士の接合部を形成し、この接合部の長さ調整により伸縮自在な長尺材を形成した構成としたから、溝形材の長さが調整可能なため、現場ごとに異なる長さの溝形材を取り揃える必要はなく、自由自在に長さを変更することができ、また工場の製造過程においても長さの統一が可能となるため製造コストが低減し、また倉庫での保管時には長さを短くして収納することができるため場所をとらず、かつ輸送コストも低減されるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る溝形材の接合構造によれば、係合片部をU字状に屈曲形成する一方、係合溝部をこの係合片部が密着して係合する形状に形成した構成としたから、係合片部と係合溝部とが強固に組み合って係合し、接合部における接合が強力に行えるという効果がある。
【0020】
本発明に係る溝形材の接合構造によれば、断面コの字状の溝形材を用い、第一の側板部の端部に係合片部を形成する一方、第二の側板部に係合突部を形成し、溝形材の端部から他の溝形材の端部を差し込み、長手方向に摺動させて両溝形材同士の接合部を形成し、この接合部の長さ調整により伸縮自在な長尺材を形成した構成としたから、溝形材の長さが調整可能なため、現場ごとに異なる長さの溝形材を取り揃える必要はなく、自由自在に長さを変更することができ、また工場の製造過程においても長さの統一が可能となるため製造コストが低減し、また倉庫での保管時には長さを短くして収納することができるため場所をとらず、かつ輸送コストも低減されるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る溝形材の接合構造によれば、接合部において、重合する第一の側板部と第二の側板部とをビスで固定した構成としたから、簡単に接合部の固定及び補強が行えるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係る溝形材2の接合構造を示したものである。
上記溝形材2は
図2に示すように、基板部4、この基板部4の左右の側からそれぞれ同一方向に向けて直角に立上る第一の側板部6、及び第二の側板部7を有する断面コの字状の形状である。
【0024】
この溝形材2は、プレス加工により軽量鋼板(ここでは板厚0.5mm)を屈曲成形したものであるが、他に、アルミニウムなどの軽量金属の押し出し成形、或いは合成樹脂の成形により形成することができる。
【0025】
上記溝形材2の第一の側板部6の端部には、断面が内側にかつU字状に屈曲した係合片部8が形成され、第二の側板部7には基板部4の近傍に、断面が凹状の係合溝部10が形成されている。また、第二の側板部7の先端部にはL形に内側に折り曲げられた屈曲部11が形成され、第二の側板部7を補強している。
【0026】
上記係合片部8は、U字状に屈曲した係合片12を有し、この係合片12と第一の側板部6とによってU字状の溝状部13が形成されている。この溝状部13の幅(S1)は1mmである。
上記係合溝部10は、上記基板部4と第二の側板部7との境界近傍の第二の側板部7の部位を内側凹状に屈曲して形成したものである。
【0027】
この係合溝部10はより詳しくは、
図2に示すように、基板部4の端部を内側に折り返して第一の折返部14を形成し、さらに第二の側板部7と平行な方向に屈曲して第一の溝板部16を形成する。そして、この第一の溝板部16をU字状に屈曲し、後に第二の側板部7に接する第二の溝板部17を形成し、上記第一の溝板部16と第二の溝板部17との間に屈曲溝部18を形成する。この屈曲溝部18の幅(S2)は0.5mmである。
【0028】
さらに、この第二の溝板部17を、上記第一の折返部14に当たる少し(略0.5mm)手前で外側に折り返し(これにより溝開口部20が形成される)、上記第二の溝板部17に接する形態の上記第二の側板部7を形成し、上記第二の溝板部17と第二の側板部7により断面U字状の凸状部22が形成される。ここで、上記第一の折返部14の端部に対して、第二の側板部7は少し内側に形成され、その間隔(S3)は、板厚と同じ0.5mmである。この間隔(S3)により、後述する溝形材2同士の接合部24は、角部が正確に形成される。
【0029】
上記溝形材2は、係合溝部10を形成する屈曲溝部18及び溝開口部20に、他の溝形材2の係合片部8の係合片12が嵌合可能な形状であり、また係合溝部10を形成する凸状部22に、他の溝形材2の係合片部8の溝状部13が嵌合可能な形状となっている。
このように、溝形材2の係合片部8(係合溝部10)は、他の溝形材2の係合溝部10(係合片部8)と係合(嵌合)が可能である。なお、係合片部8と係合溝部10との間に遊びはほとんど無いが、両者が係合(嵌合)する際は、上記屈曲溝部18及び溝状部13の溝幅は鋼板のバネ作用により拡大可能であり、またこのバネ作用により両者は密着する。
【0030】
さて、上記溝形材2は、同一形状(断面)の2本の溝形材2同士を接合して1本の長さ調整可能な長尺材として用いる。
この場合、先ず各溝形材2の側板部6,7同士が係合するように向い合せに、かつ一方の溝形材2の端部と、他方の溝形材2の端部同士の突合が可能となるように、長手方向に分けて配置する。
【0031】
そして
図3に示すように、一方の溝形材2の第一の側板部6に形成された係合片部8を、他方の溝形材2の第二の側板部7に形成された係合溝部10に嵌め入れ、これと同時に、一方の溝形材2の第二の側板部7に形成された係合溝部10を、他方の溝形材2の第一の側板部6に形成された係合片部8に嵌め入れる。
【0032】
さらに、上記一方の溝形材2の端部から、他方の溝形材2の端部を差し込み摺動させて両溝形材2同士が重なった断面矩形状の接合部24を形成する。この接合部24では、第一の側板部6(第二の側板部7)と第二の側板部7(第一の側板部6)とが密着して重なる。
そして、上記接合部24の長さを調整することにより、溝形材2同士の接合構造によって一体形成された伸縮自在な長尺材を得る。
【0033】
上記溝形材2同士の接合構造による長尺材の長さが決まれば、その接合部24をビス26などの止着具を用いて固定する。このビス26としては、例えばセルフドリル可能なビスを用いる。
上記ビス26は、上記接合部24の第一の側板部6からねじ込みこれを第二の側板部7に固定する。ビス26は接合部24の左右の側に用いてもよく、また接合部24の一方の側に複数用いてもよい。このビス止めによる接合部24の固定によって、長尺材の長さが固定され、併せて接合部24の強度が補強される。なお、他に接着剤を用いて接合部24を固定することもできる。
【0034】
上記係合片部8は、ここでは断面U字状としているが、これは他の形状を採用することができる。
例えば、
図4に示すように、係合片12を第一の側板部6に対して鋭角に屈曲した形状(
図4(a))、係合片12を内側に鉤状に曲げ係合片12の先端部が、この係合片12の屈曲頂点(基板部4から最も遠い位置)よりも基板部4側に位置する形状(
図4(b)(c))、或いは、係合片12を内側に曲げ、さらにその先端部に至る途中を曲げた形状等(
図4(d)(e))としてもよい。
要は、係合片12を鋭角に屈曲し、或いは係合片12自体を曲げた形状に形成する。
この場合、係合溝部10の屈曲溝部18については、係合片12の形状に沿った形状に形成し、係合片12が屈曲溝部18に密着するように形成する。
このように、係合片部8(係合溝部10)を形成することで、溝形材2同士を上記のよう接合した場合、溝形材2同士は長手方向以外の向きには外れることがない。
【0035】
また、上記溝形材の接合構造は、2本の溝形材2を接合して構成するものであるが、他に、3本以上の溝形材2を接合して使用してもよい。
また、上記溝形材2は、工場で予め所定(規格)の長さに調整して出荷される。通常は、現場で必要な長さ寸法の半分より少し長め(接合部のため)の長さに溝形材を調整する。
上記溝形材の接合構造は、建物における間仕切り材、壁下地材としてのスタッド(間柱)、天井下地材としての野縁材、野縁受け材、或いは床下地材としての根太材、大引材等に利用可能である。
【0036】
図5は、上記溝形材の接合構造による伸縮自在な長尺材を、間仕切り材(或いは壁下地材)用のスタッド材30(間柱)に利用した形態を示したものである。
ここでは、部屋の天井側に天井側ランナー材32を配置し、床面側に床側ランナー材34を配置する。これら各ランナー材は、断面がコの字状の溝部を有しており、上下のランナー材間に上記伸縮自在な長尺材を配置する。
【0037】
この場合、2本の溝形材2を接合してスタッド材30を形成し、必要な長さに調整し、ビス26を接合部24に止着して長さを固定する。
そして、このスタッド材30の各端部を上下のランナー材の各溝部に嵌入し、スタッド材30の端部と各ランナー材とをビス26で固定する。また、必要によりスタッド材30間に振止め材36を架設する。さらに、各スタッドに壁材38を張り付けて仕上げる。
【0038】
間仕切り材用のスタッド材は、通常、全長のサイズにプレカットしたスタッド材を用意することになるが、上記溝形材の接合構造による伸縮自在な長尺材を用いた場合、全長の半分より少し長めの一種類の溝形材(略規格のサイズのもので足りる)を用意すればよい。
【0039】
また、現場ごとに天井高さが異なる場合などでは、各現場に応じた長さのスタッド材を用意する必要があるが、上記伸縮自在な長尺材を用いた場合、一種類の長さの溝形材を用意するのみで、現場では伸縮調整により対処可能である。これから、工場における生産管理、在庫管理及び輸送などが容易となる。
【0040】
また、例えば、床基礎面の不陸などで上下のランナー材間の長さに多少のズレが生じているような場合には、各スタッド材を配置する個所に応じてその箇所に合った長さのスタッド材を作成すればよく、上記伸縮自在な長尺材によれば、簡単に長さの調整が行えかつビスを用いて必要な長さに固定できる。
【0041】
このように、上記伸縮自在な長尺材を間仕切材等に使用した場合、天井および床の不陸に対し、都度調整をする必要がなく施工面での簡略化が図れる。また、階層別に天井高さが数mm異なるような現場であっても、別寸法のスタッドを用意する必要もなく部品管理の煩わしさも解消される。
【0042】
図6は、上記溝形材の接合構造による伸縮自在な長尺材を、天井下地材として野縁材40に利用した形態を示したものである。
ここでは、壁面42(及び向かい側の壁面)の上部に横向きにランナー材44を配置し、両ランナー間に野縁材40を取り付ける。ここで、2本(或いは3本以上)の溝形材2を接合して野縁材40を形成し、必要な長さに調整し、ビス26を接合部24に止着して長さを固定する。そして、この野縁材40を上記ランナー材44間に架設する。また、各野縁材40に天井板を張り付けて仕上げる。
【0043】
この場合においても、通常、全長のサイズにプレカットした野縁材を用意し、或いは接続金具を用いて野縁材同士を接合することになるが、上記伸縮自在な長尺材を用いた場合、全長の半分より少し長めの一種類の溝形材を用意すればよい。
【0044】
一般に野縁は、壁の内法寸法で野縁寸法が決定され、例えば壁内に石膏ボードが張られるか否かで、野縁寸法が数mm違ってしまう。この場合、上記伸縮自在な長尺材を用いることで、上記数mmの差に関して野縁を切り分ける必要がなく、生産、在庫、納入形態、施工面で簡略化が図れる。
【0045】
また、現場ごとに壁面間(ランナー材間)の距離が異なる場合などでは、各現場に応じた長さの野縁材を用意する必要があるが、上記伸縮自在な溝形材の場合、一種類の長さの溝形材を用意するのみで、後は伸縮調整によりどの現場にも対処可能とすることができる。
【0046】
図7は、上記溝形材の接合構造による伸縮自在な長尺材を、天井下地材として野縁受け材50に利用した形態を示したものである。
ここでは、天井の梁などから所定の間隔をおいてハンガー52を吊り下げ、これに野縁受け材50を取り付ける。ここで、2本(或いは3本以上)の溝形材2を接合して野縁受け材50を形成し、必要な長さに調整し、ビス26を接合部24に止着して長さを固定する。
【0047】
そして、上記野縁受け材50を上記ハンガー52の受部に架設する。野縁受け材50の下部にこれと直交する方向に野縁材54を配置し、クリップ56を用いて野縁材54を野縁受け材50に取り付ける。また、各野縁材54に天井板58を張り付けて仕上げる。
この場合であっても、上記伸縮自在な長尺材を用いることで、上記野縁材40の場合と同様な作用効果が得られる。
【0048】
従って、上記実施の形態によれば、溝形材の長さが調整可能なため、現場ごとに異なる長さの溝形材を取り揃える必要はなく、また現場での設計変更等があった場合にも、自由自在に長さを変更可能であり利便性に優れる。また、工場での製造においても、異なる長さの溝形材を製造する必要がなく長さの統一が可能となるため製造コストが低減し、また倉庫での保管時には長さを短くして収納することができるため場所をとらず、かつ輸送コストも低減されるという効果がある。
【0049】
図8は、他の実施の形態に係る溝形材62の接合構造を示したものである。
上記溝形材62は
図9に示すように、基板部64、この基板部64の左右の側からそれぞれ同一方向に向けて直角に立上る第一の側板部66、及び第二の側板部67を有する断面コの字状の形状である。
【0050】
この溝形材62は、プレス加工により軽量鋼板(ここでは板厚0.5mm)を屈曲成形したものであるが、他に、アルミニウムなどの軽量金属の押し出し成形、或いは合成樹脂の成形により形成することができる。
【0051】
上記溝形材62の第一の側板部66の端部には、断面が内側にかつU字状に屈曲した係合片部68が形成され、また第二の側板部67と基板部64とが交差する部位には、断面が凸状の係合突部70が形成されている。また、第二の側板部67の先端部にはL形に内側に折り曲げられた屈曲部71が形成され、第二の側板部67を補強している。
【0052】
上記係合片部68は、U字状に屈曲した係合片72を有し、この係合片72と第一の側板部66とによってU字状の溝状部73が形成されている。この溝状部73の幅は1mmである。
上記係合突部70は、上記基板部64と第二の側板部67とが交差する境界において、第二の側板部67の端部を、この第二の側板部67に沿って外側へ凸状に突出形成したものである。
【0053】
この係合突部70はより詳しくは、第二の側板部67の端部(基板部64とが交差する部位)をそのまま直線状に延長し、その先を内側(基板部64側)に折り返して折返部74を形成し、さらに直角に屈曲して基板部64へと続く形状である。この折返部74は、隙間のないかしめた形状に折り返しており、このため係合突部70の厚さは1mmである。
【0054】
上記溝形材62は、係合突部70に、他の溝形材62の係合片部68の溝状部73が嵌合可能な形状となっている。
このように、溝形材62の係合片部68(係合突部70)は、他の溝形材62の係合突部70(係合片部68)と係合(嵌合)が可能である。なお、係合片部68と係合突部70との間に遊びはほとんど無いが、両者が係合(嵌合)する際は、上記溝状部73の溝幅は鋼板のバネ作用により拡大可能であり、またこのバネ作用により両者は密着する。
【0055】
さて、上記溝形材62は、同一形状(断面)の2本の溝形材62同士を接合して1本の長さ調整可能な長尺材として用いる。
この場合、先ず各溝形材62の側板部66,67同士が係合するように向い合せに、かつ一方の溝形材62の端部と、他方の溝形材62の端部同士の突合が可能となるように、長手方向に分けて配置する。
【0056】
そして
図8に示すように、一方の溝形材62の第一の側板部66に形成された係合片部68の溝状部73を、他方の溝形材62の第二の側板部67に形成された係合突部70に嵌め入れ、これと同時に、一方の溝形材62の第二の側板部67に形成された係合突部70を、他方の溝形材62の第一の側板部66に形成された係合片部68の溝状部73に嵌め入れる。
【0057】
さらに、上記一方の溝形材62の端部から、他方の溝形材62の端部を差し込み摺動させて両溝形材62同士が重なった断面矩形状の接合部24を形成する。この接合部24では、第一の側板部66(第二の側板部67)と第二の側板部67(第一の側板部66)とが密着して重なる。
そして、上記接合部24の長さを調整することにより、溝形材62同士の接合構造によって一体形成された伸縮自在な長尺材を得る。
【0058】
上記溝形材2同士の接合構造による長尺材の長さが決まれば、その接合部24を上記実施の形態と同様にビス26などの止着具を用いて固定する。このビス26としては、例えばセルフドリル可能なビスを用いる。
【0059】
上記係合片部68は、ここでは断面U字状としているが、これは他に係合片72を第一の側板部66に対して鋭角に屈曲した形状、又は係合片72を内側に鉤状(上記係合片部8と同様)に曲げた形状等としてもよい。
この場合、係合突部70については、係合片72の溝状部73の形状に沿った形状(折曲げ角度をもたせる等)に形成し、係合片72の溝状部73が係合突部70に密着するように形成する。
このように、係合片部68(係合突部70)を形成することで、溝形材2同士を上記のように接合した場合、溝形材62同士は長手方向以外の向きには外れることがない。
【0060】
また、上記溝形材の接合構造は、2本の溝形材62を接合して構成するものであるが、他に、3本以上の溝形材62を接合して使用してもよい。
また、上記溝形材62は、工場で予め所定(規格)の長さに調整して出荷される。通常は、現場で必要な長さ寸法の半分より少し長め(接合部のため)の長さに溝形材を調整する。
【0061】
上記溝形材の接合構造は、建物における間仕切り材、壁下地材としてのスタッド(間柱)、天井下地材としての野縁材、野縁受け材、或いは床下地材としての根太材、大引材等に利用可能である。
具体的な利用形態は、上記実施の形態で図示説明(スタッド材、野縁材、野縁受け材)したものと同様である。
また、この実施の形態の効果についても上記実施の形態と同様、現場ごとに異なる長さの溝形材を取り揃える必要はなく、また現場での設計変更等があった場合にも、自由自在に長さを変更可能であり利便性に優れ、また、異なる長さの溝形材を製造する必要がなく長さの統一が可能となるため製造コストが低減し、また倉庫での保管時には長さを短くして収納することができるため場所をとらず、かつ輸送コストも低減されるという効果がある。