特許第5714454号(P5714454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許5714454-圧縮装置 図000002
  • 特許5714454-圧縮装置 図000003
  • 特許5714454-圧縮装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714454
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20150416BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20150416BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F04C18/16 B
   F04C18/16 H
   F04C23/00 F
   F04C29/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-187493(P2011-187493)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50052(P2013-50052A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2013年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 省二
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−024393(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0123407(US,A1)
【文献】 米国特許第06478560(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 23/00
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ロータの回転数が等しくなるように駆動され、吐出流路が互いに接続された、雄ロータの歯数が等しい複数のスクリュ圧縮機を有し、
前記スクリュ圧縮機の台数をn、前記雄ロータの歯数をmとすると、
前記複数のスクリュ圧縮機は、360/(m・n)度ずつ前記雄ロータの位相がずらされており、且つ、吸込圧力が互いに等しくなるように吸込流路がそれぞれ同じ吸気チャンバに接続されていることを特徴とする圧縮装置。
【請求項2】
前記複数のスクリュ圧縮機は、互いに歯車を介して接続されており、1台のモータによって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュ圧縮機では、スクリュロータの位相に応じて吸込圧力および吐出圧力が脈動する。この吸込圧力および吐出圧力の脈動は、振動を引き起こし、騒音としても認識され得る。
【0003】
特許文献1には、スクリュ圧縮機の吐出流路の断面積をスクリュロータに同期して変化させることで、脈動を低減する発明が記載されている。しかしながら、スクリュ圧縮機の吐出圧がピークとなる位相は、回転数や吐出圧力によって変化する。このため、特許文献1に記載の発明は、回転数および圧力条件が一定である場合にしか適用できない。
【0004】
特許文献2には、液冷式スクリュ圧縮機の吸込流路を通じて外部に漏れ出る騒音を低減するために、吸込流路にスクリュ圧縮機の回転数に応じた量の冷却液を供給することにより、冷却液の消音作用を調整する発明が記載されているが、吐出側の脈動を抑制することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−332267号公報
【特許文献2】特開2010−164059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点に鑑みて、本発明は、回転数や圧力条件によらず、騒音を低減できる圧縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による圧縮装置は、雄ロータの回転数が等しくなるように駆動され、吐出流路が互いに接続された、雄ロータの歯数が等しい複数のスクリュ圧縮機を有し、前記スクリュ圧縮機の台数をn、前記雄ロータの歯数をmとすると、前記複数のスクリュ圧縮機は、360/(m・n)度ずつ前記雄ロータの位相がずらされており、且つ、吸込圧力が互いに等しくなるように吸込流路がそれぞれ同じ吸気チャンバに接続されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、各スクリュ圧縮機が吐出圧力の脈動を互いに相殺し合うので、吐出圧力の脈動が小さく、低騒音である。
また、吸込圧力が互いに等しくなるように接続されているので、吸込側の条件を揃えることで、吐出側の条件も等しくなり、吐出側の脈動を効果的に相殺できる。
【0009】
また、本発明の圧縮装置において、前記複数のスクリュ圧縮機は、互いに歯車を介して接続されており、1台のモータによって駆動されてもよい。
【0010】
この構成によれば、各スクリュ圧縮機の雄ロータの位相差が機械的に決定されるので、確実に脈動を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明による圧縮装置は、吐出流路が互いに接続された、雄ロータの歯数が等しい複数のスクリュ圧縮機を有し、前記スクリュ圧縮機の台数をn、雄ロータの歯数をmとすると、前記複数のスクリュ圧縮機は、360/(m・n)度ずつ前記雄ロータの位相がずらされている。したがって、本発明によって、吐出圧力の脈動が小さく、低騒音な圧縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の圧縮装置の概略断面図である。
図2図1の圧縮装置のスクリュロータとモータとの接続を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態の圧縮装置のスクリュロータとモータとの接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態である空気圧縮装置1の概略構成を示す。空気圧縮装置1は、2台(台数n=2)のスクリュ圧縮機2a,2bと、スクリュ圧縮機2a,2bを駆動する1台のモータ3と、スクリュ圧縮機2a,2bとモータ3とを接続するギアボックス4と、フィルタ5aを備える吸気チャンバ5と、吸気チャンバ5とスクリュ圧縮機2a,2bの吸込部をそれぞれ接続する吸込流路6a,6bと、スクリュ圧縮機2a,2b吐出部にそれぞれ接続された吐出流路7a,7bと、吐出流路7a,7bを接続した集合流路8とを有する。
【0016】
スクリュ圧縮機2a,2bは、それぞれ、ハウジング9の内部に、図2に示すように互いに咬合し合う雄ロータ10および雌ロータ11を収容してなる。雄ロータ10のロータ軸10aは、ギアボックス4内に延伸し、ギアボックス4内において、モータ3の出力軸3aに取り付けられた駆動歯車12に咬合して駆動される従動歯車13a,13bが取り付けられている。
【0017】
スクリュ圧縮機2a,2bは、雄ロータ10および雌ロータ11の形状が互いに等しい。本実施形態において、雄ロータ10は4条(歯数m=4)のスクリュロータであり、雌ロータ11は6条のスクリュロータである。従動歯車13a,13bの歯数も、互いに等しいが、スクリュ圧縮機2aとスクリュ圧縮機2bの間で雄ロータ10の位相が45度、雌ロータ11の位相が30度互いに異なるように、従動歯車13a,13bと駆動歯車12とが咬合している。
【0018】
空気圧縮装置1において、スクリュ圧縮機2a,2bがそれぞれ吐出する圧縮空気の圧力は、歯溝毎に同じように変化する。したがって、スクリュ圧縮機2a,2bから吐出される圧縮空気の圧力は、それぞれ、雄ロータ10の位相で90度毎にピークになる。そして、スクリュ圧縮機2a,2bは、雄ロータ10の位相が45度互いにずらされているので、スクリュ圧縮機2a,2bから吐出される圧縮空気のピークの圧力が生じるタイミングは、互いに雄ロータ10の位相で45度ずれたタイミングとなる。
【0019】
このため、スクリュ圧縮機2aの吐出流路7aでの吐出圧力の脈動と、スクリュ圧縮機2bの吐出流路7bでの吐出圧力の脈動とがずらされ、互いのピークを相殺し合うため、集合流路8における圧縮空気の圧力の脈動が小さくなる。
【0020】
本実施形態の圧縮装置1において、スクリュ圧縮機2a,2bの雄ロータ10の位相を変えて組み立てて、騒音値を測定した結果、雄ロータ10の位相を45度ずらした場合の騒音値は、雄ロータ10の位相を同位相とした場合の約半分の値であった。
【0021】
また、本実施形態において、吸込流路6a,6bは、同じ吸気チャンバ5内の空気を吸い込むように配設されている。このため、スクリュ圧縮機2aの吸込圧力とスクリュ圧縮機2bの吸込圧力とが等しくなる。したがって、雄ロータ10および雌ロータ11の形状が互いに等しいスクリュ圧縮機2a,2bが吐出する圧縮空気の圧力変化は、位相が異なるだけで、互いに等しい波形となる。これにより、スクリュ圧縮機2a,2bの吐出圧力の脈動が相互に同程度相殺される。
【0022】
続いて、図3に、本発明の第2実施形態の圧縮装置1に係る雄ロータ10および雌ロータ11の駆動に係るギアの構成を示す。本実施形態の圧縮装置1は、3台(n=3)のスクリュ圧縮機2a,2b,2cを有し、各スクリュ圧縮機2a,2b,2cの雄ロータ10の従動歯車13a,13b,13cが、中間歯車14を介して互いに接続されている。そして、スクリュ圧縮機2bの従動歯車13bのみが、1台のモータ(不図示)によって駆動される駆動歯車12に咬合して駆動されるようになっている。
【0023】
本実施形態において、スクリュ圧縮機2a,2b,2cは、それぞれの雄ロータ10の位相が、30度ずつ、雌ロータ11の位相が20度ずつ、順番にずらされている。これによって、各スクリュ圧縮機2a,2b,2cの吐出圧力は、雄ロータ10の位相にして30度毎に1台ずつピークを示し、これらの圧力変動が互いに相殺し合う。
【0024】
本発明は、さらに多数のスクリュ圧縮機を有する圧縮装置に適用できる。圧縮装置において、吐出流路が接続されたスクリュ圧縮機の台数をn、スクリュ圧縮機の雄ロータの歯数をmとすると、360/(n・m)度ずつ各圧縮機の雄ロータの位相をずらせば、各スクリュ圧縮機の吐出圧力の脈動を互いに相殺させて、騒音を低減できる。
【0025】
当然ながら、雄ロータの位相をずらすと、歯数m’の雌ロータについても、その位相を360/(n・m’)度ずつずらしたものとなる。また、雄ロータの位相を一定に保つためには、雄ロータの回転数が等しくなるように駆動されなければならない。尚、雄ロータの位相を一定に保つことができるのであれば、各スクリュ圧縮機を個別のモータによって駆動してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…圧縮装置
2a,2b,2c…スクリュ圧縮機
3…モータ
4…ギアボックス
6a,6b…吸込流路
7a,7b…吐出流路
8…集合流路
10…雄ロータ
11…雌ロータ
12…駆動歯車
13a,13b,13c…従動歯車
14…中間歯車
図1
図2
図3