(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714510
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】極低温タンク、およびこのようなタンクを備えた打ち上げロケット
(51)【国際特許分類】
B64G 1/40 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
B64G1/40 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-548747(P2011-548747)
(86)(22)【出願日】2010年1月28日
(65)【公表番号】特表2012-516808(P2012-516808A)
(43)【公表日】2012年7月26日
(86)【国際出願番号】FR2010050130
(87)【国際公開番号】WO2010089493
(87)【国際公開日】20100812
【審査請求日】2012年12月19日
(31)【優先権主張番号】0950697
(32)【優先日】2009年2月5日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】バターワース、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ラカペール、ジェローム
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−047096(JP,A)
【文献】
特開昭58−089500(JP,A)
【文献】
米国特許第04715399(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温液体のための貯蔵空間の範囲を定めるジャケット(1)と、上記貯蔵空間内に配置された少なくとも1つの区画壁(2)と、を有する、推進剤を収容するように仕向けられた打ち上げロケットのための極低温タンクであって、
上記区画壁(2)が、上記タンク内における流体のための上部空間(VS)および下部空間(VI)の範囲を定め、上記上部空間(VS)および下部空間(VI)が、上記区画壁(2)に形成された少なくとも1つの中央の開口部(3)を介して連絡し、上記区画壁(2)が、一方で、少なくとも1つの中央の開口部(3)を介して上記上部空間(VS)から上記下部空間(VI)へ重力によって液体が流れることを許容し、他方で、加速力の作用の下で少なくとも1つの中央の開口部(3)を介して上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ流体が上昇することを防止或いは制限するように、上記タンクの底(I)に向かって上記中央の少なくとも1つの開口部(3)へ向かう傾斜を伴って上記タンクの壁(1)から上記貯蔵空間の中心へ延び、上記タンクが、上記中央の少なくとも1つの開口部(3)から分離して少なくとも1つの通路(4、14)を上記区画壁(2)に形成し、上記上部空間(VS)と上記下部空間(VI)との間に流体連絡を与える少なくとも1つのベント(5)を有し、上記ベント(5)が、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ上昇する方向に液体のための障害物を形成する少なくとも1つの壁(15)を有し、
上記少なくとも1つの開口部は制約を受けず、上記ベント(5)の上記通路(4、14)が、一方で、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)への蒸気の移動を助力し、他方で、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)への液体の上昇を防止或いは制限するように形成されていることを特徴とするタンク。
【請求項2】
上記ベント(5)は、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ液体が上昇する方向における液体のための保持バリア(15)すなわち機械的に隣接するものを上記通路(4、14)上に規定することを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
上記少なくとも1つのベント(5)は、上記タンクの上記ジャケット(1)と上記中央の少なくとも1つの開口部(3)との間で上記区画壁(2)上に配置されていることを特徴とする請求項1或いは2に記載のタンク。
【請求項4】
上記少なくとも1つのベント(5)は、上記タンクの上記ジャケット(1)に近接するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタンク。
【請求項5】
上記ベント(5)は、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ向かう垂直方向に液体のための隣接するものを形成する少なくとも1つの壁(15)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のタンク。
【請求項6】
上記ベント(5)の上記通路(4、14)は、上記タンクの垂直方向と直交する方向に上記上部空間(VS)に開口することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のタンク。
【請求項7】
上記ベント(5)は、ハウジングを有し、その内部空間が、一方で、上記区画壁に形成された少なくとも1つの第1のオリフィス(4)を介して上記下部空間(VI)に流体的に連絡し、他方で、該ハウジングに形成された少なくとも1つの第2のオリフィス(14)を介して上記上部空間(VS)に流体的に連絡することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のタンク。
【請求項8】
上記ハウジングは、上記上部空間(VS)内へ突出していることを特徴とする請求項7に記載のタンク。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの極低温タンクを有することを特徴とする打ち上げロケット。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
この発明は、打ち上げロケットのための極低温タンク、およびこのようなタンクを備えた打ち上げロケットに関する。
【0002】
弾道の状態において、或いは移動衛星基地の捕捉状態の間、推進剤がタンクの全ての壁を濡らす。このことは、タンク内における極低温液体のきわめて重大な蒸発を引き起こし、且つタンクの液体部分の上にあるガス状ドームの強い冷却を引き起こす。この問題に対する解決策は、非極低温推進剤(貯蔵できる推進剤と呼ばれる)として知られている。これらの解決策は、毛管力に基づく。これらの推進剤は、毛管作用によってタンクの底部(液体出口に近い)に保持される。熱的な毛管作用の不安定性、および毛管システムの乾燥に起因するシステムに近い蒸発の可能性、さらにこのための効率の損失のため、極低温流体にこれらの解決策を適用するのは難しい。
【0003】
好ましくは、この発明によれば、この問題を解決するため、貯蔵空間内に中間区画壁が設けられる。一方で、この中間区画壁に形成された複数の中央開口の1つを介して、タンクの上部空間から下部空間へ、重力によって、液体の流れを許容し、他方で、加速力の作用の下で、少なくとも1つの中央開口を介して、上記下部空間から上部空間へ液体が上昇することを妨げる。
【0004】
このタイプの解決策は、全体的に満足なものである。しかしながら、タンクを満たす場合、すなわち正常なフライト状況において、極低温液体の蒸発(貯蔵空間の内面に対して著しい)は、上述した区画壁の下に捕らえられて保持された蒸気を生出する。この区画壁の下に捕らえられた蒸気は、フライト状態において、タンクの機能特性に不利な作用をする。
【0005】
この問題を解決するため、区画壁へのオリフィスの追加が、蒸気の泡の排出を可能にする。しかし、この解決策は、回転状態において、タンクの上部空間に向かう液体の漏れを結果として引き起こす。このような液体の漏れは、タンクの壁の濡れを制限し且つ多くの蒸発を制限することで、避けられなければならない。
【0006】
本願発明の1つの目的は、上述した従来の欠点の全て或いはいくつかを減ずることにある。
【0007】
このために、上述した前文によって与えられた一般的な定義と同じになる、本発明によるところのタンクは、主として、極低温液体のための貯蔵空間の範囲を定めるジャケットと、上記貯蔵空間内に配置された少なくとも1つの区画壁と、を有し、上記区画壁が、上記タンク内における流体のための上部空間および下部空間の範囲を定め、上記上部空間および下部空間が、上記区画壁に形成された少なくとも1つの制約をうけない中央の開口部を介して連絡し、上記区画壁が、一方で、少なくとも1つの中央の開口部を介して上記上部空間から上記下部空間へ重力によって液体が流れることを許容し、他方で、加速力の作用の下で少なくとも1つの中央の開口部を介して上記下部空間から上記上部空間へ流体が上昇することを防止或いは制限するように、上記タンクの底に向かって上記中央の少なくとも1つの開口部へ向かう傾斜を伴って上記タンクの壁から上記貯蔵空間の中心へ延び、上記タンクが、上記中央の少なくとも1つの開口部から分離して少なくとも1つの通路を上記区画壁に形成し、上記上部空間と上記下部空間との間に流体連絡を与える少なくとも1つのベントを有し、このベントの上記通路が、一方で、上記下部空間から上記上部空間への蒸気の移動を助力し、他方で、上記下部空間から上記上部空間への液体の上昇を防止或いは制限するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
従って、上記ベントは、回転状態の間、或いは所謂乱す状態(高い或いは低い重力)の間、区画壁の下に液体を収容することができる一方で、上記タンクの上部空間(区画壁の上方)に向けて蒸気の泡を排出する構造に形成されている。
【0009】
さらに、この発明の実施例は、以下の特徴の1つ或いはそれ以上を含む:
上記ベントは、上記下部空間から上記上部空間へ液体が上昇する方向における液体のための保持バリアすなわち機械的に隣接するものを上記通路上に規定し、
上記少なくとも1つのベントは、上記タンクの上記ジャケットと上記中央の少なくとも1つの開口部との間で上記区画壁上に配置され、
上記少なくとも1つのベントは、上記タンクの上記ジャケットに近接するように配置され、
上記ベントは、上記下部空間から上記上部空間へ上昇する方向に液体のための障害物を形成する少なくとも1つの壁を有し、
上記ベントは、上記下部空間から上記上部空間へ向かう垂直方向に液体のための隣接するものを形成する少なくとも1つの壁を有し、
上記ベントの上記通路は、上記タンクの垂直方向と直交する方向に上記上部空間に開口し、
上記ベントは、ハウジングを有し、その内部空間が、一方で、上記区画壁に形成された少なくとも1つの第1のオリフィスを介して上記下部空間に流体的に連絡し、他方で、該ハウジングに形成された少なくとも1つの第2のオリフィスを介して上記上部空間に流体的に連絡し、
上記ハウジングは、上記上部空間内へ突出し、
上記ハウジングの上記内部空間は、上記区画壁に形成されて上記ジャケットから異なる距離で配置された少なくとも2つのオリフィスを介して、上記下部空間に流体的に連絡し、
上記区画壁は、上記タンクの上端および底端を通るタンクの垂直軸Aと実質的に直交する方向に上記タンクの内側部分の殆どを超えて延び、一方で、該区画壁の少なくとも1つの上記開口部の表面領域と、他方で、上記開口部の面を通るタンクの上記垂直軸と実質的に直交する面内における上記タンクの内側部分と、の間の割合は、0.0025と0.8の間、好ましくは、0.0025と0.5の間、より好ましくは、0.01と0.1の間にあり、
上記区画壁の少なくとも一部は、上記タンクの底端に向けて僅かに傾斜されており、
上記区画壁は、上記タンクの底端に向けて指向され且つ開口部を規定する管状部分を有し、
上記区画壁はフレキシブルであり、
上記少なくとも1つの開口部は、上記タンクの中央部分に配置され、
上記複数の開口部は、上記上部空間および下部空間内を同じ圧力にする。
【0010】
この発明は、上述した或いは以下に示す特徴のいずれか1つと同じ極低温タンクを有する打ち上げロケットに関する。
【0011】
また、この発明は、上述した或いは以下に説明する特徴のあらゆる組み合せを有するいかなる代替の装置或いは方法に関する。
【0012】
他の特別な特徴および効果は、以下の図面を参照して、以下の説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、部分的に充填した状態における、この発明によるところのタンクの実施例の部分断面概略図を示す。
【
図3】
図3は、
図1および2のタンクの半分の垂直断面の部分透視開略図を示す。
【
図4】
図4は、この発明によるところのタンクの孔の詳細の部分断面概略図を示す。
【
図5】
図5は、この発明によるところのタンクの他の実施例の断面外略図を示す。
【0014】
この発明は、“凹状の底”と呼ばれるタンク(タンク1の内側に凸面がある)への適用として、
図1から
図4を参照して説明される。言うまでもなく、この発明は、他のいかなるタンク形状にも適用可能であり、特に、凸状の底(
図5)を備えたタンクにも適用できる。
【0015】
図1から
図4に示されたタンクは、極低温流体のための貯蔵空間の範囲を定める外側の壁、すなわちジャケット1(例えば、実質的に円筒形の中央部分および2つのドーム形にされた端部)を有する。
【0016】
簡単のため、タンクの底部Iに配置された流体のための出口オリフィスは図示されていない。通常、このようなタンクは、多孔性の発泡パネルを伴う絶縁されたアルミニウム合金構造からなる。この発明の特別な特徴によると、貯蔵空間内に配置されて、重大な横方向および/或いは軸方向の加速の間、液体を保持するために配置された区画壁2を収容している。この区画壁2は、例えば、ジャケット1の内面に固定される。
【0017】
この区画壁2は、区画壁2に形成された複数の開口部3を介して連通する液体のための上部空間VSおよび下部空間VIをタンク内で範囲を定める。
【0018】
図1から
図4に例示したタンクにおいて、底部の中央部分は、区画壁2の部分の上に配置される。言い換えると、この区画壁2は、タンクのへこんだ底部を囲む。この形状において、下部空間VIは、一般に円環形を有する。区画壁2は、貯蔵空間の中央部分の方向に底部に向けてカーブされている。少なくとも1つの開口部3は、区画壁2のいちばん深いところのポイントに近く、貯蔵空間内へ突出するへこんだ底の周りに配置されている。
【0019】
区画壁2のこの構造は、低い推力および低い回転の場合に、底部内に全ての或いは一部の液体を保持することを可能にするが、液体が開口部3を介して上部空間VSから下部空間VIへ流れることを許容する。
【0020】
従って、液体レベルLが区画壁2より下(
図1)である場合、区画壁2は、上部空間VSへの液体の上昇を避けることができる。また、区画壁2は、回転を伴う状態の結果として与えられる加速のときの逆の加速の場合、液体を貯蔵することをも可能にする。
【0021】
従って、区画壁2のおかげで、これらストレス状態の間、液体は、きちんと範囲を定められた壁の表面を濡らし、比較的熱い上部のガス状ドームに接触することがない。従って、液体の蒸発は制限される。タンク内におけるガス状ドームの冷却も制限される。
【0022】
複数の開口部3は制約を受けない。換言すれば、格子、フィルター、或いは同等物を備えていない。つまり、上部空間VSおよび下部空間VIは、1つ、および同一の圧力を有する同じ貯蔵空間を形成する(表面張力を有するタンクではなく)。この発明によるところのタンクと異なり、表面張力を有するタンクが濾過器を使用する。言うまでも無く、複数の開口部は、図面に示された形に限らない形を有する。
【0023】
区画壁2は、特に、タンクが液体水素(比較的軽い)を貯蔵する場合、非常に軽い材料(グラスファイバー、或いは他の適した材料、例えばポリアラミド、ポリエステル、ポリイミドなど)で形成される。
【0024】
効果的な特別な特徴によると、タンクは、少なくとも1つのベント5、例えば4つのベントも有する。各ベント5は、少なくとも1つの通路4、14を中央の少なくとも1つの開口部3から離れて区画壁2に形成し、タンクの上部空間VSと下部空間VIとの間に流体連絡を提供する。ベント5の通路4、14は、一方で、下部空間VIから上部空間VSへの蒸気の移動を許容し、他方で、加速状態における下部空間VIから上部空間VSへの液体の上昇を防止或いは制限するように形成されている。
【0025】
例えば、各ベント5は、下部空間VIから上部空間VSへ液体が上昇する方向における液体のための保持バリア或いは機械的に隣接するものを通路4、14上に規定する。他方で、このバリア15すなわち機械的に隣接するものは、上部空間VS内へ開口するオリフィス14に向けて蒸気をガイドする。好ましくは、これら複数のベント5は、タンクのジャケット1と中央の少なくとも1つの開口部3との間で区画壁2上に配置されている。図面に見ることができるように、これら複数のベント5は、より好ましくは、タンクの周辺ジャケット1に近接するように配置される。
【0026】
例示的に、しかし開示された実施例を制限する手段によらず、各ベント5は、下部空間VIから上部空間VSに上昇する方向に液体のための障害物の範囲を定める少なくとも1つの壁15を有する。このベント5は、特に、下部空間VIから上部空間VSへ向かう垂直方向に、液体のための隣接するものを形成する少なくとも1つの壁15を有する。このベント5は、例えば、区画壁2に付加されたハウジングを有し、その内部空間は、一方で、下部空間VIに流体的に連通し、他方で、上部空間VSに流体的に連通する。
【0027】
例えば、ハウジングの内部空間は、区画壁2に形成された少なくとも2つのオリフィス4を介して、下部空間VIに流体的に連絡している。好ましくは、ハウジング5と下部空間VIとの間の連絡を提供する2つのオリフィス4は、ジャケット1から異なる距離で配置され、それゆえに、傾斜した区画壁2において異なる高さに配置される。
【0028】
このハウジング5は、例えば、タンクの垂直方向と実質的に直交する方向に開口するオリフィス14を介して、上部空間VSに連絡する。
【0029】
この流路において、充填の間、蒸発された液体の泡が、オリフィス4、14を通って、タンクの上部空間VSに到達する(
図1参照、液体レベルが陰影線によって示される)。この泡は、複数の開口部3をも通る。
【0030】
充填の終りで(
図2)、このベント5は、液体中に水没し、しかしながら、泡の上端に向かう移動を許容し続ける。
【0031】
航行状態において、下部空間VI内にほんの少しの液体が残っていると、ベント5は、液体の上部空間VS内への上昇を防止する液体のための保持器を形成する。
図4は、低い加速に関連した強い回転の間、液体の可能な形状を概略的に図示する。この液体は、周辺ジャケット1に近接したオリフィス4を介してベント5のハウジング内へ著しく流入し、周辺ジャケット1からさらに離れたオリフィス4を介して下部空間VI内へ少し流出する。蒸気は、この上部空間VI内へ開口したオリフィス14を介して、上部空間VSに向けてより簡単に逃げる。
【0032】
言うまでも無く、この発明は、上述した実施例に限定されることはない。特に、ベントの構造や数は、適用に応じて変更可能である。
【0033】
同様に、凸状の底を有するタンクが、1つ或いはそれ以上のベント5を備えても良い。
図5は、区画壁2が底部に向けて中央開口3へ傾斜した(随意にファンネル形にされた)タンクを図示している。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
極低温液体のための貯蔵空間の範囲を定めるジャケット(1)と、上記貯蔵空間内に配置された少なくとも1つの区画壁(2)と、を有する、推進剤を収容するように仕向けられた打ち上げロケットのための極低温タンクであって、
上記区画壁(2)が、上記タンク内における流体のための上部空間(VS)および下部空間(VI)の範囲を定め、上記上部空間(VS)および下部空間(VI)が、上記区画壁(2)に形成された少なくとも1つの制約を受けない中央の開口部(3)を介して連絡し、上記区画壁(2)が、一方で、少なくとも1つの中央の開口部(3)を介して上記上部空間(VS)から上記下部空間(VI)へ重力によって液体が流れることを許容し、他方で、加速力の作用の下で少なくとも1つの中央の開口部(3)を介して上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ流体が上昇することを防止或いは制限するように、上記タンクの底(I)に向かって上記中央の少なくとも1つの開口部(3)へ向かう傾斜を伴って上記タンクの壁(1)から上記貯蔵空間の中心へ延び、上記タンクが、上記中央の少なくとも1つの開口部(3)から分離して少なくとも1つの通路(4、14)を上記区画壁(2)に形成し、上記上部空間(VS)と上記下部空間(VI)との間に流体連絡を与える少なくとも1つのベント(5)を有し、このベント(5)の上記通路(4、14)が、一方で、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)への蒸気の移動を助力し、他方で、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)への液体の上昇を防止或いは制限するように形成されているタンク。
[2]
上記ベント(5)は、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ液体が上昇する方向における液体のための保持バリア(15)すなわち機械的に隣接するものを上記通路(4、14)上に規定することを特徴とする[1]に記載のタンク。
[3]
上記少なくとも1つのベント(5)は、上記タンクの上記ジャケット(1)と上記中央の少なくとも1つの開口部(3)との間で上記区画壁(2)上に配置されていることを特徴とする[1]或いは[2]に記載のタンク。
[4]
上記少なくとも1つのベント(5)は、上記タンクの上記ジャケット(1)に近接するように配置されていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のタンク。
[5]
上記ベント(5)は、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ上昇する方向に液体のための障害物を形成する少なくとも1つの壁(15)を有することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のタンク。
[6]
上記ベント(5)は、上記下部空間(VI)から上記上部空間(VS)へ向かう垂直方向に液体のための隣接するものを形成する少なくとも1つの壁(15)を有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のタンク。
[7]
上記ベント(5)の上記通路(4、14)は、上記タンクの垂直方向と直交する方向に上記上部空間(VS)に開口することを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のタンク。
[8]
上記ベント(5)は、ハウジングを有し、その内部空間が、一方で、上記区画壁に形成された少なくとも1つの第1のオリフィス(4)を介して上記下部空間(VI)に流体的に連絡し、他方で、該ハウジングに形成された少なくとも1つの第2のオリフィス(14)を介して上記上部空間(VS)に流体的に連絡することを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のタンク。
[9]
上記ハウジングは、上記上部空間(VS)内へ突出していることを特徴とする[8]に記載のタンク。
[10]
[1]乃至[9]のいずれかの極低温タンクを有することを特徴とする打ち上げロケット。