特許第5714516号(P5714516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714516
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   H01R13/11 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-10858(P2012-10858)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-149555(P2013-149555A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】水田 正輝
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−199223(JP,A)
【文献】 特表昭63−500971(JP,A)
【文献】 特開平09−219234(JP,A)
【文献】 特開平10−261446(JP,A)
【文献】 実開昭53−143083(JP,U)
【文献】 実開昭57−030977(JP,U)
【文献】 特開昭61−104569(JP,A)
【文献】 実開平02−056354(JP,U)
【文献】 特表2011−511417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料で形成されたスリーブと、前記スリーブの内周面の少なくとも一部を覆い、前記スリーブの内周に挿入されたプラグの外周面と接触する通電部材とを備え、
前記通電部材が金属線からなり、前記金属線を前記スリーブに対して軸方向に沿って捲回し、
前記スリーブの弾性力により、前記通電部材を前記プラグの外周面に押し付ける電気コネクタ。
【請求項2】
前記スリーブの内周に前記プラグを挿入していない状態で、前記スリーブの内径が前記プラグの外径よりも小さい請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記スリーブがエラストマーで形成された請求項1又は2記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周にプラグが挿入され、このプラグと通電可能に接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタとして、内周に挿入したプラグの外周面に通電部材を弾性的に押し付けることによりプラグと通電可能に接続する、ラジアルコンタクト型の電気コネクタが知られている。例えば、特許文献1に示されている電気コネクタは、導電性材料で形成されたグリッド(28)を備える。このグリッド(28)に、複数のスリットで区画された複数のコンタクトストリップ(34)を設けると共に、グリッド(28)の両端をオフセットさせることにより、各コンタクトストリップ(34)を双曲線形状とし、グリッド(28)の軸方向中央部を縮径させた鼓形状としている。このグリッド(28)の内周にプラグを圧入すると、グリッド(28)の弾性力により、グリッド(28)の軸方向中央部がプラグの外周面に弾性的に押し付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−506662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電気コネクタは、グリッド(28)に弾性力を付与するために、グリッド(28)自体を弾性材料で形成している。この場合、例えばグリッド(28)を銅で形成すれば高い導電性が得られるが、銅は軟らかい材料であるため、グリッド(28)の弾性力が不足し、グリッド(28)とプラグとの接触が不十分となる恐れがある。これに対し、銅にベリリウムを混入したベリリウム銅合金は、銅よりも硬い材料であるため、グリッド(28)に十分な弾性力を付与することができるが、ベリリウムを配合することにより通電抵抗が上昇するためグリッド(28)の導電性が低下する。このように、グリッド(28)の材質を選択するにあたり、導電性及び弾性力の双方を高めることは難しい。
【0005】
本発明が解決すべき課題は、優れた導電性及び弾性力を有する電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためになされた本発明は、弾性材料で形成されたスリーブと、スリーブの内周面の少なくとも一部を覆い、スリーブの内周に挿入されたプラグの外周面と接触する通電部材とを備えた電気コネクタであって、スリーブの内周にプラグを挿入していない状態で、スリーブの内径がプラグの外径よりも小さいものである。
【0007】
このように、本発明に係る電気コネクタでは、スリーブを弾性材料で形成し、スリーブの弾性力により通電部材をプラグの外周面に押し付けるようにした。すなわち、スリーブの内周にプラグを押し込むことにより、スリーブを弾性的に拡径させながらプラグをスリーブの内周に圧入し、これによりスリーブの内周面に設けられた通電部材をプラグの外周面に押し付ける。このように、スリーブの弾性力により通電部材をプラグに押し付けることにより、通電部材に弾性力は不要となるため、通電部材の材料の選択の自由度が高まる。従って、導電性の高い材料(例えば銅、銀、アルミニウム等)で通電部材を形成することが可能となり、電気コネクタの導電性を高めることができる。また、スリーブに導電性は不要であるため、十分な弾性力を有する材料(例えばエラストマー等)で形成することができる。
【0008】
例えば、スリーブの内径をプラグの外径よりも小さくすれば、スリーブの弾性力により通電部材をプラグの外周面に押し付けることができる。
【0009】
ところで、上記特許文献1の電気コネクタは、グリッド(28)を半径方向で弾性変形可能とするために、グリッド(28)に複数のスリットを形成している。このようにスリットを形成することで、グリッド(28)とプラグとの接点密度(単位面積当たりの接点の数)が低くなり、導電量が不足する恐れがある。
【0010】
これに対し、本発明に係る電気コネクタは、上記のように通電部材に弾性力を付与する必要がないため、通電部材の形状を自由に設計することができる。従って、通電部材を、プラグとの接点密度が高くなるような形状とすることにより、電気コネクタの導電量を高めることができる。例えば、通電部材を金属線で構成し、この金属線をスリーブに対して軸方向に沿って捲回すれば、金属線を密に配することができるため、金属線とプラグとの接点密度を高めることができる。このとき、金属線がベリリウム銅などの比較的硬い材質であると、スリーブへの捲回作業が非常に困難となるが、上記のように金属線(通電部材)の材質は弾性が要求されないため、比較的軟らかい材質(例えば銅)を使用することができ、スリーブに対して容易に捲回することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、優れた導電性及び弾性力を有する電気コネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電気コネクタの断面図である。
図2】(a)は上記電気コネクタ及びプラグの断面図であり、(b)は上記電気コネクタにプラグを挿入した様子を示す断面図である。
図3】他の実施形態に係る電気コネクタの軸方向断面図である。
図4図3の電気コネクタの軸直交方向断面図である。
図5】他の実施形態に係る通電部材の平面図である。
図6】他の実施形態に係る通電部材の平面図である。
図7】他の実施形態に係る通電部材の平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る電気コネクタ1は、図1に示すように、スリーブ2と、スリーブ2に取り付けられた通電部材3とを有する。スリーブ2及び通電部材3は、図示しないハウジングの内周面に拡径縮径可能な状態で取り付けられる。本実施形態の電気コネクタ1は、大電流を通電可能な大電流コネクタであり、具体的には、充電用コネクタ、バッテリー端子、あるいはバスバー端子等として用いられるものである。
【0015】
スリーブ2は、弾性材料で円筒状に形成される。スリーブ2に要求される特性としては、反発弾性、機械的強度、耐候性、耐熱性、耐寒性、難燃性等が挙げられる。スリーブ2の材料としては、例えば樹脂、特にエラストマー、具体的にはゴムで形成される。具体例として、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンラバー(SBR)、あるいは天然ゴムなどが挙げられる。尚、スリーブ2は円筒形に限らず、角筒形や、円周方向一部を切り欠いたC形であってもよい。スリーブ2をC形とした場合は、これを金属で形成しても、スリーブ2の内径を弾性的に拡径縮径させることができる。
【0016】
通電部材3は、スリーブ2の内周面の少なくとも一部を覆う。本実施形態では、通電部材3が金属線4で構成され、この金属線4をスリーブ2に対して軸方向に沿って捲回しながら、円周方向に巻き進めている。金属線4はスリーブ2の内周面2aに隙間なく配され、スリーブ2の内周面2aの全面が金属線4で覆われている。通電部材3の内周面3aは、スリーブ2の内周面2aに倣った略円筒面状をなしている。尚、通電部材3は、1本の金属線4で構成しても、複数の金属線4で構成してもよい。
【0017】
金属線4には弾性力は要求されないため、導電性に優れた材料、具体的には銅、銀、あるいはアルミニウム等で形成することができる。これらの材料は比較的軟らかい材料であるため、金属線4をスリーブ2に容易に捲回することができる。
【0018】
電気コネクタ1の内周にプラグ5が挿入されていない状態では、図2(a)に示すように、通電部材3の内径D3がプラグ5の外径よりも小さく(D3<D5)、図示例では、さらにスリーブ2の内径D2がプラグ5の外径D5よりも小さくなっている(D2<D5)。この電気コネクタ1の内周にプラグ5を挿入すると、図2(b)に示すように、スリーブ2を弾性的に拡径させながらプラグ5が通電部材3の内周に圧入される(D2<D2’、D3<D3’=D5)。このとき、スリーブ2の弾性力により、通電部材3(金属線4)がプラグ5の外周面5aに押し付けられる。このスリーブ2による押し付け力により、通電部材3の内周面3a(すなわちスリーブ2の内周面2aに隙間なく配された金属線4)とプラグ5の外周面5aとが接触すると共に、プラグ5の電気コネクタ1からの抜け止めが行われる。
【0019】
以上のように、スリーブ2の弾性力で通電部材3をプラグ5の外周面5aに押し付けることにより、通電部材3に弾性力が不要となるため、通電部材3の材料の選択の幅が広がる。これにより、通電部材3を導電性の高い材料で形成することができ、導電性が高められる。また、通電部材3に弾性力が不要となることで、通電部材3の形状の制約が少なくなる。これにより、例えば上記のように、通電部材3を構成する金属線4をスリーブ2に対して軸方向に沿って捲回することで、金属線4を密に配することができ、通電部材3とプラグ5との接点密度を高めることができる。また、通電部材3の内周面3aが、プラグ5の外周面5aと並行な略円筒面状であることで、通電部材3とプラグ5との接触領域を大きくすることができる。以上により、通電部材3とプラグ5との間の導電量を高めることができる。
【0020】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0021】
上記の実施形態では、通電部材3を金属線4で構成した場合を示したが、これに限らず、例えば図3に示すように、通電部材3を金属板6で構成してもよい。この場合、例えば図4に示すように、円筒状に丸めた金属板6の一端6aをスリーブ2の内周面2aに固定すると共に、金属板の他端6bを自由端とすることで、スリーブ2の拡径縮径と共に金属板6を拡径縮径させることができる。金属板6は平板であってもよいが、図5に示すようにスリット6cを設ければ、スリット6c間の領域6dをプラグ5と接触させることができるため、金属板6とプラグ5との接点密度を高めることができる。また、図6に示すように、金属板6に格子状の穴6eを形成したり、図7に示すように複数の凸部6fを形成したりすれば、金属板6とプラグ5との接点密度をさらに高めることができる。
【0022】
また、上記の実施形態では、スリーブ2と通電部材3とを別体に形成する場合を示したが、これに限らず、例えば、通電部材3をインサート部品としてスリーブ2の成形金型内に供給し、この状態でスリーブ2を樹脂で射出成形することにより、通電部材3とスリーブ2とを一体に成形してもよい(図示省略)。
【符号の説明】
【0023】
1 電気コネクタ
2 スリーブ
3 通電部材
4 金属線
5 プラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7