(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714518
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】事故情報収集方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20150416BHJP
G01R 31/08 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 301D
G01R31/08
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-18282(P2012-18282)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-158187(P2013-158187A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺田 博文
(72)【発明者】
【氏名】大西 司
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 寿之
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−369412(JP,A)
【文献】
特開2005−033851(JP,A)
【文献】
特開2011−253472(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0211511(US,A1)
【文献】
特開平03−145942(JP,A)
【文献】
特開平01−136431(JP,A)
【文献】
特開平05−292659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/08−31/11
H02J13/00
H03J9/00−9/06
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の事故に関する事故情報を収集する事故情報収集方法であって、
配電線と当該配電線に接続されている監視子局を紐付ける第1の対応表が予め記憶部に格納されており、
事故が発生した配電線を示す情報を受信するステップと、
当該事故が発生した配電線を示す情報と前記第1の対応表とに基づき、当該事故が発生した配電線に接続する通信監視子局を抽出するステップと、
前記抽出した通信監視子局に対して前記事故情報を収集するステップと、
設備情報を管理するサーバから、配電線と当該配電線に接続されている監視子局を紐付ける第2の対応表を受信するステップと、
前記第1の対応表と、前記第2の対応表とに差異があるかを判断するステップと、
前記判断の結果、差異がある場合に、前記第2の対応表にのみ記載された監視子局の情報を差分情報として抽出するステップと、
前記抽出した前記第2の対応表にのみ記載された監視子局に対して前記事故情報を収集するステップと、
を備えることを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項2】
請求項1に記載の事故情報収集方法において、
前記第2の対応表は、前記第1の対応表よりも更新タイミングが早いことを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項3】
請求項2に記載の事故情報収集方法において、
前記第1の対応表は、所定のタイミングで前記設備情報を管理するサーバから前記第2の対応表を受信することで、情報を書き換えることを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の事故情報収集方法において、
前記事故情報を収集するステップでは、前記監視子局に対して事故時以外の通常時で収集する情報よりも少ない項目の情報について収集するように指示を出すことを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の事故情報収集方法において、
前記監視子局に接続される監視対象の機器の種別に応じた優先度が前記監視子局に割り当てられており、
前記事故情報を収集するステップでは、前記優先度に応じて優先度の高い監視子局から事故情報の収集を行なうことを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の事故情報収集方法において、
前記事故情報を収集するステップでは、収集する対象の通信監視子局の数が規定値以上であった場合に、当該監視子局にブロードキャストで情報収集要求を出し、一定時間後に応答がなかった監視子局に対して、再度個別に事故情報の収集を行うことを特徴とする事故情報収集方法。
【請求項7】
監視制御サーバと監視制御親局と監視子局と設備情報管理サーバとを用いた配電線の事故に関する事故情報を収集する事故情報収集システムであって、
前記設備情報管理サーバは、
配電線と当該配電線に接続されている監視子局を紐付けた第2の対応表を備える記憶部と、当該第2の対応表を前記監視制御サーバに送信する送信部と、を備え、
前記監視子局は、前記監視制御親局からの指示を受信し当該指示に応じて事故情報を送信する送受信部と、当該指示に含まれる事故情報として送信すべき情報を抽出する制御部と、を備え、
前記監視制御サーバは、前記設備情報管理サーバから第2の対応表を受信し当該受信した第2の対応表及び事故が発生した配電線と特定する情報、を前記監視制御親局へ送信する送受信部と、を備え、
前記監視制御親局は、配電線と当該配電線に接続されている監視子局を紐付けた第1の対応表を備える記憶部と、前記監視制御サーバ及び前記監視子局との通信を行なう送受信部と、事故情報の収集を制御する事故情報収集制御部と、を備え、
前記事故情報収集制御部は、
前記受信した事故が発生した配電線と特定する情報と、前記記憶部に格納された前記第1の対応表と、に基き当該事故が発生した配電線に接続する通信監視子局を抽出し、当該抽出した通信監視子局に対して前記事故情報を収集するよう前記監視制御親局の送受信部に指示し、前記監視制御サーバより受信した第2の対応表と前記第1の対応表との差分を確認し、前記第2の対応表にのみ記載された監視子局の情報を差分情報として抽出し、前記第2の対応表にのみ記載された監視子局に対して前記事故情報を収集するよう前記監視制御親局の送受信部に指示を出す
ことを特徴とする事故情報収集システム。
【請求項8】
請求項7に記載の事故情報収集システムにおいて、
前記第2の対応表は、前記第1の対応表よりも更新タイミングが早いことを特徴とする事故情報収集システム。
【請求項9】
請求項8に記載の事故情報収集システムにおいて、
前記第1の対応表は、所定のタイミングで前記設備情報管理サーバから前記監視制御サーバを介して前記第2の対応表を受信することで、情報を書き換えることを特徴とする事故情報収集システム。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の事故情報収集システムにおいて、
前記監視制御親局の送受信部は、前記監視子局に対して事故時以外の通常時で収集する情報よりも少ない項目の情報について収集するように指示を出すことを特徴とする事故情報収集システム。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の事故情報収集システムにおいて、
前記監視子局に接続される監視対象の機器の種別に応じた優先度が前記監視子局に割り当てられており、
前記監視制御親局の送受信部は、前記優先度に応じて優先度の高い監視子局から事故情報の収集を行なうことを特徴とする事故情報収集システム。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載の事故情報収集システムにおいて、
前記監視制御親局の送受信部は、収集する対象の通信監視子局の数が規定値以上であった場合に、当該監視子局にブロードキャストで情報収集要求を出し、一定時間後に応答がなかった監視子局に対して、再度個別に事故情報の収集を行うことを特徴とする事故情報収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故情報収集方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
変電所から遮断機を介して接続された配電線は、区間開閉器により複数区間に区分されている。この配電線に事故が発生すると、変電所の保護リレーにより変電所遮断機が開放し、区間開閉器も開放する。次に、一定時間経過後に変電所遮断機を再投入し、一定時間経過後に電源側から順次区間開閉器を投入し、再送電が行われる。このとき事故区間に送電されると事故が再現されるため、変電所遮断機が再び開放する。こうして事故区間の判定を行っている。
【0003】
配電線遠隔監視制御システムでは、定期的に配電線上の複数地点(監視端末)の監視情報収集を行っており、1個ずつ順番に収集を行っている。事故停電のときにも監視端末のバッテリなどに蓄えられた電源が残っている間はその挙動は変わらず収集を続ける。しかし電源がなくなれば収集もできなくなるため、遠隔で事故発生時の情報を収集するためには、停電時開始から必要な監視情報を収集し終わるまでの間、電源を供給できる大容量のバッテリを監視端末に導入することが考えられている。しかし、大容量のバッテリの導入は保守等の作業が多く発生し、維持管理コストが増大する。なお、遠隔から監視情報の収集を行なう要請から、事故発生時の情報を含む監視情報を監視端末内に保持する仕組みは採用されていない。
【0004】
このような大容量のバッテリを導入せずに、事故時の情報を遠隔から収集する仕組みとして特許文献1(特開2002−365327号公報)がある。この公報には、配電系統の電柱上に事故検出器とPHS等の通信装置を配置し、事故発生時に電子メールをメールサーバに一斉送信することが開示されている。ここで、事故発生と同時にこの通信装置も停電となるが、メール発信は短時間に完了するため、コンデンサ式のバックアップ電源でよいことが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−365327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法を適用してシステムを構築する場合は、遠隔地に事故発生時の情報を収集することはできるが、PHS等の通信端末を新たに設置するコストや契約料・通信料等のランニングコストがかかる。また、社会インフラシステムであり、広範囲のエリアにわたるシステムであるため、公共の通信インフラを活用する場合には通信サービスの提供エリアでない場合には他の通信インフラに変更しなければならないリスクがある。特に、配電線遠隔監視制御システムのような社会インフラシステムは長期間運用されるが通信サービスなどの商用サービスはその提供する期間が短い。そのため、これらのサービスの提供が終了した場合にも他の通信インフラに変更しなければならないリスクがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明では、監視情報を収集する子局の対象を工夫することで、PHS等の通信インフラを利用することなく、従来の小型バッテリの容量にて動作可能な時間内で事故時の監視子局の監視情報を収集することを以下の具体策により実現する。
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を説明する。
【0009】
配電線事故発生時に配電線遠隔監視制御サーバから該当配電線上の監視子局の情報収集を依頼された該当監視制御親局が、該当配電線上の監視子局から情報収集を行う。次に、配電線遠隔監視制御サーバが設備管理サーバから該当する配電線・監視子局対応管理テーブルを入手し、入手した該当テーブルに基づき、直近の配電網の切り替えにより生じた通信線と監視子局の対応に関する差分情報を該当監視制御親局に通知する。差分情報を通知された監視制御親局はこの差分情報に基づき差分の監視子局から情報収集を行い収集した情報を配電線遠隔監視制御サーバに送信する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によればPHS等の通信インフラの影響を受けずに、遠隔で事故発生時の情報を遠隔地に収集できる。
【0011】
更に、全ての監視子局の情報を収集するのではなく、該当する配電線上の監視子局の情報のみを収集するため、短時間で必要最低限の情報収集が行え、コンデンサ式のバックアップ電源のような安価な装置で実現が可能となる。そのため、導入コストや維持管理コストが低減される。
【0012】
更に、区間開閉器間より狭い範囲で事故発生地点を特定することも可能になるため、現場の保守員に事故地点の情報を絞って伝えることや、予め事故地点の情報を得ることで復旧作業に必要な機器や工具も事前に準備することができ、復旧作業時間が短縮され、停電時間も短縮されるという副次的な効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】配電線遠隔監視制御システムのシステム構成図の例である。
【
図2】監視制御親局のハードウエア構成図の例である。
【
図3】配電線・監視子局対応管理テーブルの例である。
【
図4】実施例1における収集管理テーブルの例である。
【
図5】事故情報収集処理を説明するフローチャートの例である。
【
図6】ステップ500を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図7】サーバ向け送受信部のステップ501を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図8】実施例1における通信線向け送受信部のステップ501を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図9】ステップ502、503を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図10】実施例2における機器種別管理テーブルの例である。
【
図11】実施例2における通信線向け送受信部が作成する収集管理テーブルの例である。
【
図12】実施例2における通信線向け送受信部のステップ501を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図13】実施例3における収集管理テーブルの例である。
【
図14】実施例3における通信線向け送受信部のステップ501を詳細に説明するフローチャートの例である。
【
図15】監視子局のハードウエア構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例では、配電線事故時に該当する配電線の事故情報を高速に収集する方法及びシステムの例を説明する。
【0016】
図1は、本実施例の配電線遠隔監視制御システム構成図の例である。配電用変電所100から配電線101を介して電力が送電される。配電用変電所100からは複数の配電線101が出ている。配電線101は複数の区間開閉器102で区分されており、配電線事故時には区間開閉器102間の範囲に事故が発生していることがわかるようになっている。この区間開閉器102間の距離は数km以上にも渡る。配電用変電所100には、変電所クライアント103、監視制御親局104が設置されている。変電所クライアント103は、配電用変電所100内の監視制御を行っており、配電線事故が発生したときには変電所クライアント103が検知できるようになっている。監視制御親局104からは通信線105が複数伸びており、配電線101上の複数の地点にある監視子局106と接続されている。配電線101の配置と通信線105の配置は1対1に対応しておらず、複数の配電線101にまたがって通信線105が敷設されている。なお、通信線105は光ファイバ、メタル線、同軸ケーブル、無線等である。監視子局106は、区間開閉器102やその他配電線101上に接続された各種機器や地点に設置されており、機器制御情報や電圧計測値、事故方向検知情報等の情報について監視制御親局104との間で送受信している。営業所107には、配電線遠隔監視制御サーバ108、設備情報管理サーバ109が設置されている。配電線遠隔監視制御サーバ108は、広域ネットワーク110を介して複数の配電変電所100の監視制御親局104と接続されており、配電線101上の各種機器の機器制御、監視、情報収集を行っている。広域ネットワーク110は、光ファイバ、メタル線、同軸ケーブル、無線等である。設備情報管理サーバ109は、各種設備機器の情報を管理している。変電所遠隔監視制御サーバ111は、広域ネットワーク112を介して複数の配電変電所100の変電所クライアント103、複数の営業所107の配電線遠隔監視制御サーバ108と接続されており、配電変電所100内の各種機器の機器制御、監視、情報収集を行っており、各種情報を配電線遠隔監視制御システムサーバ108に送信している。広域ネットワーク112は、光ファイバ、メタル線、同軸ケーブル、無線等である。事故情報配信サーバ113は、広域ネットワーク114を介して各営業所107の配電線遠隔監視制御システムサーバ108と接続されており、停電等の事故情報を受信すると、広域ネットワーク114を介して保守員や巡視員の持つ車載端末115や作業者端末116に情報を送信する。広域ネットワーク114は、光ファイバ、メタル線、同軸ケーブル、無線等である。広域ネットワーク110、112、114は物理的もしくは論理的に同一ネットワークでも良い。
【0017】
図2は、監視制御親局104の構成図の例である。監視制御親局104は、サーバ向け送受信部200、各通信線向け送受信部201、制御部203、記憶部204、205を備える。これらは内部バス202等で接続される。サーバ向け送受信部200は、
図1における広域ネットワーク110を介して営業所107の配電線遠隔監視制御システムサーバ108と情報の送受信を行ったり、各通信線向け送受信部201と情報の送受信を行ったりする。各通信線向け送受信部201は、
図1における通信線105を介して監視子局106と情報の送受信を行ったり、サーバ向け送受信部200と情報の送受信を行ったりする。
【0018】
図15は、監視子局106のハードウエア構成図の例である。監視子局106は他の監視子局または監視制御親局との通信を行ない、高速情報収集命令を受信し、その収集命令に対してこの子局が有する情報を送信する通信部106aと、監視子局の種々の動作を制御する制御部106bと、区間開閉器などの情報を取得する監視情報取得部106cと、取得した種々の情報を記憶する記憶部106dとを備える。
【0019】
図3は、
図1における営業所107の設備情報管理サーバ109および、配電線遠隔監視制御システムサーバ108で管理される配電線・監視子局対応管理テーブル300の例である。配電線・監視子局対応管理テーブル300の登録項目は、配電変電所ID301、配電線ID302、監視制御親局ID303、通信線ID304、監視子局IDリスト305、最終更新時刻306である。配電変電所ID301は、配電変電所100の識別子に相当するものである。配電線ID302は、配電線101の識別子に相当するものである。監視制御親局ID303は、監視制御親局104の識別子に相当するものである。通信線ID304は、通信線105の識別子に相当するものである。監視子局IDリスト305は、監視子局106の識別子のリストに相当するものである。最終更新時刻306は配電線・監視子局対応管理テーブル300の各行の情報の最終更新時刻である。配電線・監視子局対応管理テーブル300の各行を参照することにより、各配電線101に設置された監視子局106の一覧やそれら監視子局が接続される通信線105の情報を取得することが出来る。配電線・監視子局対応管理テーブル300は設備情報管理サーバ109および、配電線遠隔監視制御サーバ108で個別に管理されており、定期的に(例えば1日に1回)自動もしくは手動で最終更新時刻306を比較することで最新の状態に一致化されるものとする。ここで一致化とは、設備情報管理サーバ109の最新情報にて配電線遠隔監視制御サーバ108の配電線・監視子局対応管理テーブル300を上書きすることを意味する。この通信線と監視子局の対応関係は、開閉器の入り切りにより変更されるものであるため、どの時点での対応関係を示したテーブルであるかを示すため、最終更新時刻が必要となる。ここで、配電線遠隔監視制御サーバ108に格納された配電線・監視子局対応管理テーブルを第1の対応表とし、設備情報管理サーバ109に格納された配電線・監視子局対応管理テーブルを第2の対応表とする。
【0020】
図4は、事故発生時に配電線遠隔監視制御サーバ108によって、配電線・監視子局対応管理テーブル300に基き作成される収集管理テーブル400の例である。このテーブルは、配電線遠隔監視制御サーバ108から監視制御親局104に送信される。収集管理テーブル400の登録項目は、通信線ID304、監視子局IDリスト305である。
【0021】
図5のフローチャートを用いて、事故情報収集処理方式を説明する。配電線事故が発生したことを配電変電所100の変電所クライアント103が検知し、変電所遠隔監視制御サーバ111経由で営業所107の配電線遠隔監視制御システムサーバ108に通知されることにより
図5に示すフローチャートの処理を開始する。まず、配電線遠隔監視制御サーバ108が、変電所遠隔監視制御サーバ111からの通知に含まれる情報に基づき、配電線事故が発生した該当監視制御親局104に該当配電線101上の監視子局106の情報を高速収集する依頼を行う(ステップ500)。監視制御親局が高速収集する監視子局106の特定は配電線遠隔監視制御サーバ108から受信した収集管理テーブル400を用いて行なう。ステップ500における配電線遠隔監視制御サーバ108の処理の詳細については、
図6にて説明する。次に、該当監視制御親局104が、該当配電線101上の監視子局106に対して高速情報収集を行う(ステップ501)。ステップ501におけるサーバ向け送受信部200の処理の詳細については
図7、通信線向け送受信部201の処理の詳細については
図8にて説明する。次に、配電線遠隔監視制御サーバ108が、設備情報管理サーバ109から該当する配電線・監視子局対応管理テーブル300を入手する(ステップ502)。次に、配電線遠隔監視制御サーバ108が、該当テーブルを確認し、予め保持している配電線・監視子局対応管理テーブル300との差分を確認する(ステップ503)。差分がある場合は、差分情報を抽出し、その差分情報を該当監視制御親局104に送信する(ステップ504)。ここで差分情報とは、設備情報管理サーバ109から該当する配電線・監視子局対応管理テーブル300にのみ記載された通信子局についての情報を指す。ステップ502、503、504における配電線遠隔監視制御サーバ108の処理の詳細については、
図9にて説明する。次に、該当監視制御親局104が、差分である監視子局106から追加の情報収集を行う(ステップ505)。ステップ505における情報収集の処理詳細はステップ501と同様である。次に、該当監視制御親局104が、収集した監視子局106の情報を配電線遠隔監視制御システムサーバ108に送信し(ステップ506)、処理を終了する。ここで、ステップ503にて差分が無い場合は、その確認後、ステップ506に移行する。
【0022】
このように差分情報を確認することで、予め配電線遠隔監視制御サーバが把握していた配電網の状態から、開閉器の開閉により配電状態が変更された場合であっても、事故を起こしている配電線に現在接続されている監視子局から適切に事故情報を取得することができる。
【0023】
図6のフローチャートに基き、ステップ500における配電線遠隔監視制御サーバ108の処理の詳細を説明する。まず配電線遠隔監視制御サーバ108は変電所遠隔監視制御サーバ111から配電変電所xの配電線yの事故発生を受信する(ステップ600)。次に、配電線遠隔監視制御サーバ108が保持する配電線・監視子局対応管理テーブル300から配電変電所ID301がx、配電線ID302がyに該当する行を抽出する(ステップ601)。次に、抽出した行から監視制御親局ID303ごとに通信線ID304、監視子局リスト305を抽出し、収集管理テーブル400を作成する(ステップ602)。次に、抽出した監視制御親局ID303に該当する監視制御親局104にステップ602で作成した収集管理テーブル400を送信する(ステップ603)。次に、該当する全ての監視制御親局104に収集管理テーブル400を送信済みか確認し(ステップ604)、送信済みでなければステップ603を実行する。送信済みであれば処理を終了する。
【0024】
図7のフローチャートに従って、ステップ501におけるサーバ向け送受信部200の処理の詳細を説明する。まず、監視制御親局104のサーバ向け送受信部200は配電線遠隔監視制御サーバ108から収集管理テーブル400を受信する(ステップ700)。次に、受信した収集管理テーブル400の各行の通信線ID304に該当する通信線向け送受信部201に対して通常収集処理を止める指令を出す(ステップ701)。ここで、サーバ向け送受信部200は、収集管理テーブル400をそのまま通信線向け送受信部201に送信してもよいし、その通信線向け送受信部201に関係する通信線IDの行のみを抽出して、その抽出した情報(収集管理テーブル400を加工した情報)を該当する通信線向け送受信部201に送信してもよい。
【0025】
通信線向け送受信部201は、通常時は通信線105上の各監視子局106と順番に情報の送受信を行い、制御や監視を行っている。送受信する情報は、各種機器の状態情報、事故検出状態情報、センサによる計測値情報等が含まれる。次に、受信した収集管理テーブル400に含まれる全ての該当する通信線ID304に対して処理を止めたかどうか確認し(ステップ702)、処理を終了していなければステップ701を実行する。終了していれば次に、受信した収集管理テーブル400から1行取り出し、該当通信線ID304の通信線向け送受信部201に高速情報収集命令を出す(ステップ703)。高速情報収集命令は、通常の収集命令とは異なり、配電線事故に関する最低限必要な情報のみ送受信するものである。具体的には、収集が必要な項目を指定することにより最低限必要な情報を特定する。このような収集命令を受けた監視子局は、この命令に含まれる、指定された収集が必要な項目を確認して、それに関する情報を監視制御親局に送信する。
【0026】
送受信する情報を少なくすることで、高速に情報収集を行うことが出来る。送受信する情報は事故検出状態情報等が含まれる。次に、受信した収集管理テーブル400から他の行を順次取り出し高速収集命令を出す。そして、受信した収集管理テーブル400に含まれる全ての該当する通信線ID304に対して高速情報収集命令を出したかどうか確認し(ステップ704)、処理を終了していなければステップ703を実行する。終了していれば処理を終了する。
【0027】
図8のフローチャートに従って、ステップ501における通信線向け送受信部201の処理の詳細を説明する。まず、監視制御親局104のサーバ向け送受信部200から通常収集処理を止める指令を受信し、通常収集処理を止める(ステップ800)。次にサーバ向け送受信部200から収集管理テーブル400を受信する(ステップ801)。次に、受信した収集管理テーブル400から監視子局IDリスト305を取り出し、該当する監視子局106に高速情報収集要求を送信する(ステップ802)。次に、高速情報収集要求に対する応答を監視子局106から受信したかどうかを確認し(ステップ803)、受信していればサーバ向け送受信部200に受信データを送信する(ステップ804)。受信していなければタイムアウトかどうかを判定し(ステップ805)、タイムアウトでなければステップ803を実行し、タイムアウトであればステップ806を実行する。次に、全ての該当する監視子局IDに対して高速情報収集要求を送信したかどうかを確認し(ステップ806)、送信済みでなければステップ802を実行し、送信済みであれば処理を終了する。
【0028】
図9のフローチャートに従って、ステップ502、503、504における配電線遠隔監視制御サーバ108の処理の詳細を説明する。まず、配電線遠隔監視制御サーバ108は、設備情報管理サーバ109の保持する配電線・監視子局対応管理テーブル300から停電検知した配電変電所x配電線yの行を抽出する(ステップ900)。次に、抽出した行の最終更新時刻306の方が、配電線遠隔監視制御システムサーバ108の保持する配電線・監視子局対応管理テーブル300の該当する行の最終更新時刻306より新しいかどうかを確認し(ステップ901)、新しくなければ処理を終了する。新しければ、配電変電所x配電線yのデータの差分を抽出する(ステップ902)。次に、追加収集する監視子局IDリスト305を抽出し、監視制御親局ID303ごとに新たな収集管理テーブル400を作成する(ステップ903)。次に、該当する監視制御親局ID303に対して新たな収集管理テーブル400を送信する(ステップ904)。次に、該当する全ての監視制御親局104に作成した新たな収集管理テーブル400を送信済みかどうか確認し(ステップ905)、送信済みでなければステップ904を実行する。送信済みであれば処理を終了する。
【0029】
このように、まず配電線遠隔監視制御サーバ108が有する配電線・監視子局対応管理テーブル300に基いて高速情報収集する対象を決めて収集し、その後に、最新の配電線・監視子局対応管理テーブル300に基いて収集漏れが無いかを確認することで、全体として処理を早め、かつ高精度で情報収集することが可能になる。
【実施例2】
【0030】
実施例2は、
図5におけるステップ501、ステップ504における複数の該当監視子局106から高速情報収集する順番が監視子局106に接続された機器の種別により優先度を分けて優先度の高いものから順番に収集するという点で実施例1と異なる。該当配電線101に対応する該当監視子局106の個数が多い場合、停電が発生してから監視子局106のコンデンサ式バックアップ電源がなくなるまでの間に全ての該当する監視子局106から情報収集することが出来なかった場合にも事故発生箇所や事故原因を特定するのに必要な情報を優先的に収集することが可能となる。例えばSVR(電圧調整器:Step Voltage Regulator)に接続された監視子局106や区間開閉器102に接続された監視子局106よりも、事故方向表示機能つき開閉器に接続された監視子局106の優先度を高くする等である。なお、コンデンサ式バックアップ電源の持続時間は15秒程度である。
【0031】
図10は、実施例2における監視制御親局104の通信線向け送受信部201が保持する機器種別管理テーブル1000の例である。機器種別管理テーブル1000の登録項目は、監視子局ID1001、機器種別ID1002、収集優先度1003である。監視子局IDは監視子局の識別子であり、機器種別ID1002は、機器の種別を表す識別子である。収集優先度1003は高速収集時の収集の順番を決めるために利用する。
【0032】
図11は、実施例2における監視制御親局104の通信線向け送受信部201が作成する収集管理テーブル1100の例である。収集管理テーブル1100の登録項目は、収集優先度1002、監視子局IDリスト305である。ここで、当収集管理テーブル1100は通信線ID毎に作られた例を示している。複数の通信線の情報を合わせて一つの収集管理テーブルを作成する場合は、実施例1の
図4のように、通信線IDの欄を設ければ良い。
【0033】
事故情報収集処理方式は
図5のフローチャートと同様である。
【0034】
図12のフローチャートに従って、ステップ501における通信線向け送受信部201の処理の詳細を説明する。ステップ801までの処理は
図8と同様である。ステップ801の次に、受信した収集管理テーブルに含まれている監視子局IDリスト305の各監視子局IDに対し、通信線向け送受信部201が保持する機器種別管理テーブル1000から該当監視子局ID1001の収集優先度1003を抽出し、優先度ごとに並べ替えて収集管理テーブル1100を作成する(ステップ1200)。次にステップ802を実行する。ステップ802からステップ806までの処理は
図8と同様である。ステップ806の次に、収集管理テーブル1100に登録されている全ての収集優先度1002で高速情報収集要求を送信済みであるかどうか確認し(ステップ1201)、送信済みでなければタイムアウトかどうかを判定し(ステップ1202)、タイムアウトでなければステップ802を実行し、タイムアウトであれば処理を終了する。ステップ1201において送信済みであれば処理を終了する。
【0035】
ステップ504における情報収集の処理詳細はステップ
図12と同様である。
【実施例3】
【0036】
実施例3は、
図5におけるステップ501、ステップ504における通信線ごとの収集対象の該当監視子局106数が規定値以上であった場合に、一斉情報収集要求を出し、一定時間後に応答がなかった監視子局のみ、個別に収集を行うという点で実施例1、2と異なる。該当配電線101に対応する該当監視子局106の個数が多い場合、監視子局106を1台ずつ個別に情報収集する場合、通信回数が多くなるため、ブロードキャストで一斉情報収集要求を出すことで、通信回数を減らすことが出来、短時間で多くの監視子局106の情報収集を行うことが出来る。この場合、複数の監視子局が同時に応答情報を送信し、通信路105上でデータ衝突が起こり、応答情報を受信できない可能性があるため、一定時間後に応答がなかった監視子局のみ、個別に収集を行うことでより多くの監視子局106の情報収集を行うことが出来る。なお、このような監視子局の数に応じてブロードキャストする情報収集は、最初の情報収集(S501)のみならず、差分情報に基づいた情報収集(S505)においても、監視子局が多い場合は、このようなブロードキャストを実施してもよい。
【0037】
図13は、実施例3における配電線遠隔監視制御システムサーバ108から監視制御親局104に送信される収集管理テーブル400の例である。収集管理テーブル400の登録項目は、通信線ID304、監視子局IDリスト305、収集個数1300である。収集個数1300は、各行における監視子局IDリスト305に登録されている監視子局数である。
【0038】
事故情報収集処理方式は
図5のフローチャートと同様である。ステップ501における通信線向け送受信部201の処理の詳細を、
図14のフローチャートに従って説明する。ステップ801までの処理は
図8と同様である。ステップ801の次に、受信した収集管理テーブルに含まれている収集個数が規定値以上かどうかを確認し(ステップ1400)、規定値より小さければステップ802を実行する。規定値は例えば20等である。規定値以上であれば、次に、一斉情報収集要求を送信する(ステップ1401)。一斉情報収集要求は例えばブロードキャスト等である。一斉情報収集要求には応答が必要な監視子局IDリスト305が含まれており、一斉情報収集要求を受信した監視子局106は、該当する監視子局IDであれば応答を送信する。次に、応答を監視子局106から受信したかどうかを確認し(ステップ1402)、受信していればステップ804を実行する。受信していなければタイムアウトかどうかを判定し(ステップ1403)、タイムアウトでなければステップ1402を実行し、タイムアウトであればステップ802を実行する。応答を受信してステップ804を実行した後、応答を受信した監視子局106の監視子局IDを収集管理テーブル400の監視子局IDリスト305から削除する(ステップ1404)。次に収集管理テーブル400の監視子局IDリスト305が空かどうかを確認し(ステップ1405)、空であれば処理を終了する。リストが残っていれば、ステップ1 402を実行する。ステップ802からステップ806までの処理は
図8と同様である。
【0039】
ステップ504における情報収集の処理詳細はステップ
図14と同様である。
【0040】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部の構成について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
108 配電線遠隔監視制御システムサーバ
109 設備情報管理サーバ
110 広域ネットワーク
104 監視制御親局
105 通信線
106 監視子局
100 配電変電所
101 配電線