特許第5714522号(P5714522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714522
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】フィルム状電気装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20150416BHJP
   B60J 7/043 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B60J7/00 P
   B60J7/043
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-42783(P2012-42783)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-177088(P2013-177088A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 達明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 成仁
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 潤也
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 努
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−078523(JP,A)
【文献】 実開昭60−006092(JP,U)
【文献】 特開平11−157342(JP,A)
【文献】 特開2000−318457(JP,A)
【文献】 特開昭62−199525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00
B60J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に沿って延在する枠状のガラスホルダにより支持され、自動車の屋根に対して相対移動するサンルーフガラスにフィルム状電気装置を取付けるためのフィルム状電気装置の取付構造であって、
前記フィルム状電気装置の前記サンルーフガラスと相反する側ののみに接合され、互いに略平行な第1縁部および第2縁部を有するパネル状電気装置を前記フィルム状電気装置と協働して構成する樹脂パネルと、
前記サンルーフガラスの前記パネル状電気装置側の面に前記パネル状電気装置の前記第1および第2縁部に対応して互いに略平行に取付けられ、前記パネル状電気装置の設置位置側に向けて開口する溝をそれぞれ形成する第1保持部材および第2保持部材とを有し、
前記パネル状電気装置は、前記第1および第2縁部が前記溝に挿入されることで前記第1および第2保持部材により保持され、
前記フィルム状電気装置と前記樹脂パネルとの熱膨張率差が、前記フィルム状電気装置と前記サンルーフガラスとの熱膨張率差よりも小さく、
前記第1および第2保持部材が、前記樹脂パネルに対して前記サンルーフガラスに近い熱膨張率を有する素材からなり、前記パネル状電気装置を保持した状態で少なくとも一方の前記溝の底面と前記パネル状電気装置の対応する縁部との間に空間が形成されるように配置され、
前記ガラスホルダの内側部分が前記第1および第2保持部材を覆うように収容する収容部を形成し、
前記第1および第2保持部材が前記ガラスホルダの内縁よりも外側に位置する状態で前記収容部に配置されていることを特徴とするフィルム状電気装置の取付構造。
【請求項2】
前記ガラスホルダは、前記パネル状電気装置と接触しないように前記第1および第2保持部材を覆っていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム状電気装置の取付構造。
【請求項3】
前記ガラスホルダの内縁に、前記パネル状電気装置との隙間を埋めるように弾性部材が取付けられていることを特徴とする、請求項2に記載のフィルム状電気装置の取付構造。
【請求項4】
前記パネル状電気装置は、前記第1および第2縁部に略直行する第3縁部を有しており、
前記サンルーフガラスの前記パネル状電気装置側の面に前記パネル状電気装置の前記第3縁部に対応して前記第1および第2保持部材に略直交するように取付けられ、前記パネル状電気装置の設置位置側に向けて開口する溝を形成する第3保持部材を更に有し、
前記パネル状電気装置は、前記第3縁部が前記溝に挿入されることで前記第3保持部材により保持されることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のフィルム状電気装置の取付構造。
【請求項5】
前記フィルム状電気装置が、光透過性および光散乱性の少なくとも一方が電圧の印加によって変化する調光フィルムであることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のフィルム状電気装置の取付構造。
【請求項6】
前記フィルム状電気装置が、入射光を利用して電気を発生するソーラーフィルムであることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のフィルム状電気装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力駆動によって入射光の特性を変化させるフィルム状の電気駆動装置や、太陽光発電装置といった入射光を利用して電気を発生するフィルム状の発電装置(以下、電気駆動装置と発電装置とを総称して電気装置と称する。)などのフィルム状電気装置をガラスに取付けるためのフィルム状電気装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有するガラスは、視界の確保や採光などを目的として建物や乗り物など様々な用途に利用されている。ガラスは主面を鉛直にして用いられることが多いが、天窓や自動車のリヤガラス、サンルーフガラスなどでは傾斜状態や水平配置状態で用いられることもある。
【0003】
自動車のルーフにサンルーフガラスを設けると、車室内が明るくなって開放感が得られる一方、車室内が明るくなり過ぎたり、暑くなり過ぎたりすることがあるため、遮光性のサンシェードパネルをサンルーフガラスよりも車室側に設け、サンシェードパネルを開閉することで入射光を遮る構成が多く採られている。
【0004】
サンシェードパネルによらずに入射光を遮るために、サンルーフガラスの車室側に透明ケースを固定するとともに、非透明な偏光線を設けた2枚のフィルム状調光部材をこの透明ケース内に収容させ、両フィルム状調光部材を相対変位させることで偏光線の占める面積を変化させて遮光率を無段階に調節できるようにしたサンルーフ装置なども提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
近年では、透明導電層をコーティングした2枚の樹脂フィルムの間に液晶または懸濁粒子のような配向粒子を配置し、一対の導電膜間に電圧を印加することによって配向粒子を配向させて光透過性または光散乱性を変化させる調光フィルムが種々開発されている(例えば、特許文献2参照)。また、このような調光フィルムをサンルーフガラスに組み込んで、印加電圧を調整することで光透過性または光散乱性を無段階に調節できるようにした電圧調整式の調光サンルーフガラスも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−249027号公報
【特許文献2】特表2009−534557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような調光フィルムを組み込んだサンルーフガラスは、2枚のガラスの間に調光フィルムの他、IR(赤外線)またはUV(紫外線)カットフィルムや複数の中間膜を設ける必要があり、複雑な構造がコストアップの要因になっている。一方、単体の調光フィルムは近年比較的安価で入手できるようになってきている。そこで、従来のガラスに調光フィルムを貼付して調光ガラスとして使用することが考えられる。しかし、太陽光が直接照射されるガラスに調光フィルムを貼付すると、ガラスおよび調光フィルムの温度変化が大きく、調光フィルムとガラスとの熱膨張率が異なることから、熱膨張の繰り返しによって調光フィルムが剥離する虞や、高温時に調光フィルムが破損したり皺を生じたりする虞がある。
【0008】
このような問題は、調光フィルムに限らず、フィルム状の電気装置をガラスに取付ける際に全般に発生する。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、熱膨張による悪影響を抑制してガラスに取付けることのできるフィルム状電気装置の取付構造を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、フィルム状電気装置(13)をガラス(2)に取付けるためのフィルム状電気装置の取付構造であって、前記フィルム状電気装置の少なくとも一方の面に接合され、互いに略平行な第1縁部(3R)および第2縁部(3L)を有するパネル状電気装置(3)を前記フィルム状電気装置と協働して構成する樹脂パネル(11)と、前記ガラスの一方の面に前記パネル状電気装置の前記第1および第2縁部に対応して互いに略平行に取付けられ、前記パネル状電気装置の設置位置側に向けて開口する溝(4a)をそれぞれ形成する第1保持部材(4R)および第2保持部材(4L)とを有し、前記パネル状電気装置(3)は、前記第1および第2縁部が前記溝に挿入されることで前記第1および第2保持部材(4R・4L)により保持される構成とする。
【0011】
上記構成によれば、ガラスに比べて熱膨張率の差が小さい樹脂パネルにフィルム状電気装置を接合することにより、フィルム状電気装置の接合に関して熱膨張に起因する問題を抑制することができる。また、フィルム状電気装置単体を保持部材に保持させた場合には、フィルム状電気装置が毀損されやすく、フィルム状電気装置にたるみが生じやすいが、フィルム状電気装置を樹脂パネルに接合したことにより、フィルム状電気装置を毀損されにくく且つたるみが抑制された状態でガラスに取付けることができる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記第1および第2保持部材(4R・4L)が、前記パネル状電気装置(3)を保持した状態で少なくとも一方の溝(4a)の底面と前記パネル状電気装置の対応する縁部(3Rまたは3L)との間に空間(S)が形成されるように配置される構成とすることができる。
【0013】
パネル状電気装置とガラスとでは熱膨張率に差があるため、高温時にパネル状電気装置がガラスよりも膨張するが、このような構成とすることにより、パネル状電気装置が縁部を拘束されることなく膨張可能である。そのため、高温時に膨張したパネル状電気装置が変形することを抑制できる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、前記パネル状電気装置(3)は、前記第1および第2縁部(3R・3L)に略直行する第3縁部(3F)を有しており、前記ガラス(2)の前記一方の面に前記パネル状電気装置の前記第3縁部に対応して前記第1および第2保持部材に略直交するように取付けられ、前記パネル状電気装置の設置位置側に向けて開口する溝(4a)を形成する第3保持部材(4F)を更に有し、前記パネル状電気装置(3)は、前記第3縁部が前記溝に挿入されることで前記第3保持部材(4F)により保持される構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、第3縁部に直交する方向についてもパネル状電気装置の移動を規制することができる。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、前記ガラスは、その周縁に沿って延在する枠状のガラスホルダ(32)により支持され、自動車の屋根に対して相対移動するサンルーフガラス(2)であり、前記第1および第2保持部材(4R・4L)の少なくとも一部が前記ガラスホルダの内縁(32i)よりも外側に位置する構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、第1および第2保持部材が車室側から見えにくくなるため、見栄えをよくすることができる。
【0018】
また、本発明の一側面によれば、前記ガラスは、自動車のルーフに設置され、車室を画成するインナパネル(6)に形成された開口(6a)よりも大きく形成されたサンルーフガラス(2)であり、前記第1および第2保持部材(4R・4L)の少なくとも一部が前記インナパネルの開口の外側に位置する構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、第1および第2保持部材あるいはガラスホルダが車室側から見えにくくなるため、見栄えをよくすることができる。
【0020】
また、本発明の一側面によれば、前記フィルム状電気装置が、光透過性および光散乱性の少なくとも一方が電圧の印加によって変化する調光フィルム(13)である構成や、前記フィルム状電気装置が、入射光を利用して電気を発生するソーラーフィルムである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、熱膨張による悪影響を抑制してガラスに取付けることのできるフィルム状電気装置の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る調光サンルーフガラスの分解斜視図
図2図1に示す調光パネルの分解斜視図
図3図2に示す調光フィルムの断面を示す模式図
図4図1に示す調光サンルーフガラスの下面図
図5図4中のV−V断面図
図6図1に示す調光サンルーフガラスを用いた移動パネルの要部断面図
図7図1に示す調光サンルーフガラスをルーフに取付けた状態の下面図
図8】第1変形実施形態に係る調光サンルーフガラスの図5に対応する断面図
図9】第2変形実施形態に係る調光サンルーフガラスの図5に対応する断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、調光フィルムを適用した本発明に係るフィルム状電気装置の取付構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、調光サンルーフパネル1は、車両のルーフに設置されるサンルーフガラス2と、サンルーフガラス2の下面側に取付けられる調光パネル3と、調光パネル3を保持するためにサンルーフガラス2の下面に取付けられる前側、右側および後側の3本の保持部材4(4F・4R・4L)とから構成される。
【0025】
図2に示すように、調光パネル3は、最下部に配置される樹脂パネル11と、樹脂パネル11の上面に両面接着フィルム12によって接合した2層の調光フィルム13(13L・13U)と、上層の調光フィルム13Uの上面に接合したUV・IRカットフィルム14とから構成される。なお、図2中では、樹脂パネル11と下層の調光フィルム13Lとの間に配置される両面接着フィルム12のみを示している。
【0026】
樹脂パネル11は、耐衝撃性、耐熱性、耐燃性および透明性の高いポリカーボネート製とするとよく、さらに、下面または両面にハードコート処理を施したものを用いるとよい。メラミン系ハードコートを施したポリカーボネート製の樹脂パネルとして、帝人化成株式会社製のパンライト(登録商標)PC−8199が挙げられる。なお、樹脂パネル11は、最も車室側に配置されて調光フィルム13を保護する機能を果たすため、厚さを0.8mm以上とするとよい。
【0027】
両面接着フィルム12は、基材レスで透明性の高いものを用いるとよい。このような両面接着フィルムとしては、DIC株式会社製のZ87012W(厚さt=50μm)が挙げられる。
【0028】
調光フィルム13は、図3にも示すように、一対の透明な樹脂フィルム21・22の内面にコーティングされた一対の透明導電膜23・24と、一対の透明導電膜23・24の間に配置された配向粒子25とから構成される。各透明導電膜23・24の左辺には、それぞれバスバー26が接続されており、図示しないインバータを介して一対のバスバー26に接続される電源27から透明導電膜23・24間に印加される交流電圧により、配向粒子25が調光フィルム13の光透過性および光散乱性の少なくとも一方を変化させる。なお、配向粒子25としては、液晶や懸濁粒子を用いることができる。ここでは、一対の樹脂フィルム21・22間に配置された液滴28に配向粒子25が分散されている。このような調光フィルム13として、日本板硝子株式会社製のウムフィルム(登録商標)が挙げられる。
【0029】
調光フィルム13は、電圧が印加されないときには図3(A)に示すように、配向粒子25が無秩序な状態に存在し、入射光が配向粒子25に吸収されあるいは乱反射されるために透過せず、不透明になる。一方、交流電圧が印加されると、図3(B)に示すように、配向粒子25が電場と平行に配向することによって入射光が直進して透過するようになり、調光フィルム13は電圧に応じて次第に透明になる。
【0030】
図4に示すように、サンルーフガラス2は略矩形を呈しており、前側の左右の角部が後側の左右の角部よりも大きな曲率半径をもって円弧状とされている。一方、調光パネル3はサンルーフガラス2よりも若干小さな略矩形を呈しており、前側の左右の角部はサンルーフガラス2の円弧状に対応して面取りされている。
【0031】
3本の保持部材4は、調光パネル3がサンルーフガラス2の周縁部の除く略全域を覆うように調光パネル3をサンルーフガラス2の中央に配置すべく、サンルーフガラス2の前縁2F、右側縁2Rおよび左側縁2Lに沿ってコ字状に配置される。つまり、右側保持部材4Rおよび左側保持部材4Lは互いに平行に配置され、前側保持部材4Fは、右側保持部材4Rおよび左側保持部材4Lに直交するように配置される。各保持部材4は、サンルーフガラス2の下面に両面接着テープ5(図5参照)によって接着される。
【0032】
図5にも示すように、各保持部材4は、調光パネル3の設置位置側すなわちサンルーフガラス2の中央側に向けて開口する溝4aを有するコ字状断面の長尺部材であり、長手方向について同一断面形状を呈している。前側保持部材4F、右側保持部材4Rおよび左側保持部材4Lの各溝4aに調光パネル3の前縁部3F、右縁部3Rおよび左縁部3Lが挿入されることで、対応する保持部材4F・4R・4Lによって各縁部3F・3R・3Lが挟持される。これにより、調光パネル3が3本の保持部材4によってサンルーフガラス2の下方に保持される。なお、左側保持部材4Lにおける2対のバスバー26に対応する位置には、溝4aの底面からサンルーフガラス2の外方側の端面に至る貫通孔4b(図1参照)が形成されている。
【0033】
保持部材4は、アルミニウムなどの金属や合金など、熱膨張率が樹脂パネル11(ポリカーボネート)に比べて小さい、すなわちサンルーフガラス2の熱膨張率に近い素材から構成される。これにより、調光サンルーフパネル1が直射日光などによって高温になって膨張しても、あるいは熱膨張を繰り返しても、保持部材4がサンルーフガラス2から剥離することが防止される。
【0034】
図5に示すように、右側保持部材4Rおよび左側保持部材4Lは、調光パネル3を保持した状態で少なくとも一方の溝4aの底面と調光パネル3の対応する縁部(右縁部3Rまたは左縁部3L)との間に空間Sが形成される間隔をもって配置される。ここでは、調光パネル3が、右側保持部材4Rおよび左側保持部材4Lの両方において溝4aの底面との間に空間Sを形成するように保持されている。
【0035】
サンルーフガラス2は、左右方向において中央部が上側に突出するように湾曲している。また、調光パネル3もサンルーフガラス2の湾曲に合わせて上側に凸となるように湾曲している。このような調光パネル3の湾曲は、樹脂パネル11を射出成形または押出成形する際に付与することができ、あるいは平板状に成形した後に付与することもできる。
【0036】
このような調光フィルム13の取付構造によれば、調光フィルム13は、サンルーフガラス2に比べて熱膨張率の差が小さい樹脂パネル11に接合されるため、熱膨張に起因する剥離が抑制される。また、調光フィルム13単体を保持部材4に保持させた場合には、調光フィルム13が毀損されやすく、調光フィルム13にたるみが生じやすくなるが、調光フィルム13が樹脂パネル11に接合されて調光パネル3として構成されることにより、調光フィルム13が毀損されにくく、且つたるみを抑制された状態でサンルーフガラス2に取付けられる。
【0037】
樹脂パネル11が基材となる調光パネル3とサンルーフガラス2とでは熱膨張率に差があり、高温時には調光パネル3がサンルーフガラス2よりも膨張するが、本実施形態では、右側および左側保持部材4R・4Lが、調光パネル3を摺動可能に挟持した状態で調光パネル3の左右の縁部3R・3Lと溝4aの底面との間に空間Sを形成しているため、調光パネル3が左右の縁部3R・3Lを拘束されることなく膨張可能である。そのため、高温時に膨張しても調光パネル3が変形することが抑制される。
【0038】
本実施形態では、右側および左側保持部材4R・4Lに加え、これらに直交する前側保持部材4Fがサンルーフガラス2の下面に接着され、調光パネル3が前側保持部材4Fによっても保持されるため、調光パネル3が前後方向にずれることも防止される。なお、調光パネル3は、前縁部3Fが前側保持部材4Fの溝4aの底面との間に空間を形成するように保持されてもよく、空間を形成しないように保持されてもよい。いずれの場合においても、調光パネル3は、左右の保持部材4R・4Lに沿って前後方向に摺動でき、熱膨張時に前後両縁が拘束されることはない。
【0039】
調光サンルーフパネル1をスライディングルーフなどの移動パネル30として用いる場合には、図6に示すように、その周縁にウェザーストリップ31が取付けられたガラスホルダ32にサンルーフガラス2を接着し、ガラスホルダ32により支持されるようにする。ガラスホルダ32は、サンルーフガラス2周縁に沿って延在する枠状とされており、この場合には、ガラスホルダ32の内側部分に保持部材4を覆う収容部33を形成し、保持部材4を収容部33に配置する、言い換えれば、ガラスホルダ32の内縁32iよりも外側に配置する。このようにすることにより見栄えを向上できる。また、ガラスホルダの内縁32iに弾性部材からなる装飾モール部材34を取付け、調光パネル3との隙間を埋めるようにするとよい。
【0040】
図7に示すように、車両のルーフの下方には、車室を画成するとともに開口6aが形成されたインナパネル6が設けられる。サンルーフガラス2および調光パネル3を、この開口6aよりも大きく形成し、3本の保持部材4を、それぞれその全体を開口6aの外側に位置させるようにサンルーフガラス2に取付けるとよい。このようにすることにより、調光サンルーフパネル1を移動パネル30として用いる場合にガラスホルダ32を見えにくくできるだけでなく、調光サンルーフパネル1を固定ルーフとして用いらる場合に、各保持部材4R・4L・4Fを車室側から見えにくくして見栄えを向上できる。
【0041】
<第1変形実施形態>
次に、図8を参照して、本発明に係る第1変形実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同一または同様の部材や部位については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2変形実施形態においても同様とする。
【0042】
本変形実施形態では、保持部材4の断面形状が上記実施形態と相違する。すなわち、各保持部材4は、調光パネル3の設置位置側すなわちサンルーフガラス2の中央側に向けて開口する溝4aを有するユ字状断面を呈している。保持部材4は上記実施形態と同様にその上面の全体に両面接着テープ5が接着されてサンルーフガラス2に接着される。このような構成とすることにより、接着面積を増大して保持部材4のサンルーフガラス2に対する接着強度を高めることができる。
【0043】
<第2変形実施形態>
さらに、図9を参照して、本発明に係る第2変形実施形態について説明する。本変形実施形態では、各保持部材4は、これ自体では溝4aを有しておらず、その上面が段違いに形成され、高い側の上面に両面接着テープ5が接着されてサンルーフガラス2に接着されることにより、サンルーフガラス2と協働して調光パネル3の設置位置側に向けて開口する溝4aを形成する。保持部材44をこのように構成しても、各溝4aに調光パネル3の前縁部3F、右縁部3Rおよび左縁部3Lが挿入されることで、対応する保持部材4R・4Lとサンルーフガラス2とによって各縁部3R・3Lが挟持され、調光パネル3がサンルーフガラス2の下面に接した状態で保持部材4により保持される。また、サンルーフガラス2との接触により、調光パネル3の接触面積が増えるため、調光パネル3の剛性が向上する。なお、第1および第2変形実施形態においても、図7に示すようなガラスホルダ32を用いて、調光サンルーフパネル1を移動パネル30に用いてもよい。
【0044】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、右側および左側保持部材4R・4Lの溝4aの底面と調光パネル3との間に空間Sが形成されるように構成しているが、一方のみに空間Sが形成される形態や、どちらにも空間Sが形成されない形態としてもよい。また、上記実施形態では、前側保持部材4Fがサンルーフガラス2に取付けられているが、前側保持部材4Fを取付けずに、右側および左側保持部材4R・4Lのみによって調光パネル3を保持する形態としてもよい。また、上記実施形態では、右側および左側保持部材4R・4Lを互いに平行に配置しているが、ハ字状に配置することも可能である。また、上記実施形態では、調光フィルム13を2層用いて調光パネル3を構成しているが、1層のみで調光パネル3を構成してもよい。また、上記実施形態では、調光フィルム13の下面側のみに樹脂パネル11を接合して調光パネル3を構成しているが、上面側にも樹脂パネル11を接合する形態としてもよい。また、サンルーフガラス2は、車両のルーフに固定される形態、およびルーフにスライド可能あるいはチルトアップ可能に設けられる形態のいずれであってもよい。さらに、上記実施形態ではフィルム状電気装置として調光フィルム13を用いているが、電力駆動によって入射光の特性を変化させるフィルム状の電気駆動装置や、太陽光発電装置といった入射光を利用して電気を発生するフィルム状の発電装置を用いてもよい。また、上記実施形態では、本発明を、調光フィルム13をサンルーフガラス2に取付ける構造に適用しているが、フィルム状の電気装置を自動車のリヤガラスや他の乗り物の窓ガラス、あるいは建物の窓ガラスなどに取付ける構造に適用してもよい。一方、上記実施形態に示した本発明に係る調光サンルーフパネル1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、適宜取捨選択可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 調光サンルーフパネル
2 サンルーフガラス
3 調光パネル(パネル状電気装置)
3R 右縁部(第1縁部)
3L 左縁部(第2縁部)
3F 前縁部(第3縁部)
4 保持部材
4R 右側保持部材(第1保持部材)
4L 左側保持部材(第2保持部材)
4F 前側保持部材(第3保持部材)
4a 溝
6 インナパネル
6a 開口
11 樹脂パネル
13 調光フィルム
13L 上側の調光フィルム(フィルム状電気装置)
13U 下側の調光フィルム(フィルム状電気装置)
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9