(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、特定の潤滑油基油(A)に、特定のリン化合物(B)を特定量、及び有機モリブデン化合物(C)を特定量含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における潤滑油基油(A)は、芳香族分が10〜50質量%であり、
100℃における動粘度が8〜12mm2/sであり、且つNOACK蒸発量が
5質量%以下である。芳香族分が10〜50質量%の潤滑油基油は、以下に示す鉱油系基油又は合成系基油の1種又は2種以上で構成することができる。
【0025】
上記鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、或いは、ワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
【0026】
上記鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。このように鉱油系基油の硫黄分を低減することで、より酸化安定性に優れ、内燃機関用潤滑油として使用した場合には、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避可能な低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
【0027】
一方、上記合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0028】
本発明では、上記鉱油系基油又は上記合成系基油のうちの1種を単独で用いてもよく、或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、鉱油系基油又は合成系基油の2種以上を組み合わせる場合、混合基油の芳香族分が10質量%〜50質量%であればよい。
【0029】
また、芳香族分が10質量%未満の潤滑油基油に芳香族化合物を追添することにより、芳香族分が10質量%以上の潤滑油基油を得ることもできる。追添する多環芳香族化合物としては、ナフタレン、アセナフテン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン、クリセン、ピレン、ベンゾピレン、シクロペンタピレン、シクロペンタベンゾフェナントレン、ジベンゾアントラセン、フルオレン、トリフェニレン等、及びこれらのアルキル化物、或いは石油含有アルキル化多環芳香族化合物(石油留分から抽出されたアルキル多環芳香族化合物)等が好適である。
【0030】
また、本発明で用いられる潤滑油基油(A)の芳香族分は、基油全量を基準として、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。潤滑油基油(A)の芳香族分が上記上限値を超えると、高温清浄性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう「芳香族分」とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定された値を意味する。
【0031】
また、上記潤滑油基油(A)
の100℃での動粘度は、8〜12mm
2/s
であり、好ましくは11mm
2/s以下であり、より一層好ましくは10mm
2/s以下であり、また
、好ましくは9mm
2/s以上である。潤滑油基油(A)の100℃での動粘度が12mm
2/sを超える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、100℃での動粘度が8mm
2/s未満の場合は、潤滑油基油の蒸発損失が大きくなり、耐コーキング性能の悪化等により好ましくない。
【0032】
また、上記潤滑油基油(A)の粘度指数は特に制限されず、通常160以下であるが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるように、その粘度指数は、80以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましく、110以上であることが特に好ましい。潤滑油基油(A)の粘度指数が80未満である場合、酸化安定性が悪化する傾向にある。また、潤滑油基油(A)の粘度指数は160を超えると、低温時の粘度特性が悪化することが懸念される。
【0033】
また、上記潤滑油基油(A)の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で
、5質量%以下
である。潤滑油基油(A)のNOACK蒸発量が10質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、内燃機関用潤滑油として使用した場合、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、又は金属分が潤滑油基油と共に排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念される。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定されたものである。
【0034】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、硫黄を含有しない有機リン化合物、及びそれらの金属塩とそれらのアミン塩、並びに、これらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物(B)を組成物全量基準でリン量として0.01質量%〜0.1質量%含有する。
【0035】
上記リン化合物(B)としては、下記一般式(1)で表されるリン化合物、下記一般式(2)で表されるリン化合物、並びにそれらの金属塩(但し、モリブデン塩は除く)及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種のリン系添加剤(リン含有摩耗防止剤)が好ましい。
【0037】
上記一般式(1)中、R
1は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R
2及びR
3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、mは0又は1である。
【0039】
上記一般式(2)中、R
4は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R
5及びR
6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、nは0又は1である。
【0040】
上記一般式(1)及び(2)中、R
1〜R
6で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。また、上記R
1〜R
6で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜15のアルキル基である。
【0041】
上記一般式(1)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
また、上記一般式(1)又は(2)で表されるリン化合物の金属塩又はアミン塩は、一般式(1)又は(2)で表されるリン化合物に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物等を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和することにより得ることができる。
【0043】
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属(但し、モリブデンは除く)等が挙げられる。これらの中でも、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましく、亜鉛が特に好ましい。
【0044】
本発明において、上記リン系添加剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記の(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸、その金属塩、(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸モノエステル、その金属塩、並びに(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸ジエステルとしては、油溶性及び極圧性の点から、炭化水素基の合計炭素数が15〜30であることが好ましく、14〜24であることがより好ましく、16〜20であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、上記リン化合物(B)の含有量は、組成物全量を基準として、リン元素換算で、0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、また、0.1質量%以下、好ましくは0.08質量%以下である。リン化合物(B)の含有量が、リン元素換算で0.01質量%未満の場合は、摩耗防止性が不十分となり、酸化安定性が向上し難くなる傾向にある。他方、リン化合物(B)の含有量がリン元素換算で0.1質量%を超えても、含有量の増加に見合う上記の向上効果が得られない傾向にあり、また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物を内燃機関用潤滑油として使用する場合に、リンによる排ガス後処理装置への悪影響が懸念される。なお、排ガス後処理装置への影響も顕著に低減することができる観点からは、リン化合物(B)の含有量は、リン元素換算で、0.08質量%以下であることが好ましく、特に0.05質量%以下であることが好ましい。
【0047】
なお、本発明においては、上記リン系添加剤のうち硫黄を含有する化合物についても、上記リン元素量の範囲内で含有させることができるが、当該化合物の含有量は、硫黄元素換算量で、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以下である。そして、本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、リン系添加剤として硫黄を含有する化合物を含有しないこと、即ちリン系添加剤が一般式(1)又は(2)で表されるリン化合物又はその金属塩(但し、モリブデン塩を除く)又はアミン塩のみで構成されることが好ましい。
【0048】
また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、有機モリブデン化合物(C)を組成物全量基準でモリブデン量として0.005〜0.1質量%含有する。本発明の内燃機関用潤滑油組成物においては、省燃費性能と耐熱性を高めるために、有機モリブデン化合物(C)を含有する。
【0049】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に用いる有機モリブデン化合物(C)としては、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物、モリブデン化合物[例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩又はアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等]と硫黄含有有機化合物[例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等]又はその他の有機化合物との錯体等、或いは、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等を挙げることができる。上記モリブデンジチオカーバメートにおいて、アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また、アルキルフェニル基のアルキル基の結合位置は任意である。また、これらの混合物等が例示できる。なお、これらモリブデンジチオカーバメートとしては、1分子中に異なる炭素数及び/又は構造の炭化水素基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
【0050】
本発明で用いられる有機モリブデン化合物(C)としては、前述したモリブデンジチオカーバメート等の硫黄含有モリブデン化合物であってもよいが、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物が好ましい。構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩等が挙げられ、中でも、モリブデン−アミン錯体、有機酸のモリブデン塩及びアルコールのモリブデン塩が好ましい。
【0051】
上記モリブデン−アミン錯体を構成するモリブデン化合物としては、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO
3・nH
2O)、モリブデン酸(H
2MoO
4)、モリブデン酸アルカリ金属塩(M
2MoO
4;Mはアルカリ金属を示す)、モリブデン酸アンモニウム((NH
4)
2MoO
4又は(NH
4)
6[Mo
7O
24]・4H
2O)、MoCl
5、MoOCl
4、MoO
2Cl
2、MoO
2Br
2、Mo
2O
3Cl
6等の硫黄を含まないモリブデン化合物が挙げられる。これらのモリブデン化合物の中でも、モリブデン−アミン錯体の収率の点から、6価のモリブデン化合物が好ましい。更に、入手性の点から、6価のモリブデン化合物の中でも、三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、及びモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
【0052】
また、上記モリブデン−アミン錯体を構成するアミン化合物としては、特に制限されないが、窒素化合物としては、具体的には、モノアミン、ジアミン、ポリアミン及びアルカノールアミンが挙げられる。より具体的には、炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン及び炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン、炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン、炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン、またジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン、上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やイミダゾリン等の複素環化合物、また、これらの化合物のアルキレンオキシド付加物、及びこれらの混合物等が例示できる。これらのアミン化合物の中でも、第1級アミン、第2級アミン及びアルカノールアミンが好ましい。
【0053】
上記モリブデン−アミン錯体を構成するアミン化合物が有する炭化水素基の炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4〜30であり、特に好ましくは8〜18である。アミン化合物の炭化水素基の炭素数が4未満であると、溶解性が悪化する傾向にある。また、アミン化合物の炭素数を30以下とすることにより、モリブデン−アミン錯体におけるモリブデン含量を相対的に高めることができ、少量の配合で本発明の効果をより高めることができる。
【0054】
また、上記モリブデン−コハク酸イミド錯体としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたような硫黄を含まないモリブデン化合物と、炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミドとの錯体が挙げられる。コハク酸イミドとしては、無灰分散剤の項で述べる炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドあるいはその誘導体や、炭素数4〜39、好ましくは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド等が挙げられる。コハク酸イミドにおけるアルキル基又はアルケニル基の炭素数が4未満であると溶解性が悪化する傾向にある。また、炭素数30を超え400以下のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミドを使用することもできるが、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数を30以下とすることにより、モリブデン−コハク酸イミド錯体におけるモリブデン含有量を相対的に高めることができ、少量の配合で本発明の効果をより高めることができる。
【0055】
また、上記有機酸のモリブデン塩としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたモリブデン酸化物或いはモリブデン水酸化物、モリブデン炭酸塩又はモリブデン塩化物等のモリブデン塩基と、有機酸との塩が挙げられる。有機酸としては、上記一般式(1)又は(2)で表されるリン化合物及びカルボン酸が好ましい。
【0056】
また、カルボン酸のモリブデン塩を構成するカルボン酸としては、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよい。
【0057】
上記一塩基酸としては、炭素数が通常2〜30、好ましくは4〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また、飽和のものでも不飽和のものでもよく、飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0058】
また、上記一塩基酸としては、上記脂肪酸の他に、単環又は多環カルボン酸(水酸基を有していてもよい)を用いてもよく、その炭素数は、好ましくは4〜30、より好ましくは7〜30である。単環又は多環カルボン酸としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を0〜3個、好ましくは1〜2個有する芳香族カルボン酸又はシクロアルキルカルボン酸等が挙げられる。
【0059】
また、上記多塩基酸としては、二塩基酸、三塩基酸、四塩基酸等が挙げられる。多塩基酸は鎖状多塩基酸、環状多塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状多塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。鎖状多塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましく挙げられる。
【0060】
また、上記アルコールのモリブデン塩としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたような硫黄を含まないモリブデン化合物と、アルコールとの塩が挙げられ、アルコールは1価アルコール、多価アルコール、多価アルコールの部分エステル若しくは部分エーテル化合物、水酸基を有する窒素化合物(アルカノールアミン等)等のいずれであってもよい。なお、モリブデン酸は強酸であり、アルコールとの反応によりエステルを形成するが、当該モリブデン酸とアルコールとのエステルも本発明でいうアルコールのモリブデン塩に包含される。
【0061】
また、上記水酸基を有する窒素化合物としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたアルカノールアミン、並びに当該アルカノールのアミノ基がアミド化されたアルカノールアミド(ジエタノールアミド等)等が挙げられ、中でもステアリルジエタノールアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ヒドロキシエチルラウリルアミン、オレイン酸ジエタノールアミド等が好ましい。
【0062】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、上記有機モリブデン化合物(C)の含有量は、組成物全量を基準として、モリブデン量で0.005質量%以上、0.1質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下である。当該有機モリブデン化合物の含有量が、モリブデン元素換算で0.005質量%未満の場合は、当該モリブデン化合物と上記潤滑油基油との併用による酸化安定性、塩基価維持性、高温清浄性及びNOxに対する耐性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、0.1質量%を超えても含有量の増加に見合う上記の向上効果が得られない。
【0063】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、上記の潤滑油基油(A)、リン化合物(B)及び有機モリブデン化合物(C)のみからなるものであってもよいが、必要に応じて、以下に示す各種添加剤を更に含有してもよい。
【0064】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、その性能を更に向上させるために、更に、粘度指数向上剤(D)、金属サリシレート系清浄剤(E)、及び無灰分散剤(G)から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
【0065】
上記粘度指数向上剤(D)としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0066】
上記粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが好ましい。具体的には、粘度指数向上剤の平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常重量平均分子量として5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、またエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常数平均分子量として800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0067】
なお、ここでいう数平均分子量および重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0068】
また、上記粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類又は2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20質量%である。
【0069】
上記金属サリシレート系清浄剤(E)としては、具体的には、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
【0070】
上記一般式(3)において、R
7は炭素数10〜30、好ましくは炭素数14〜30、より好ましくは炭素数が20以上であり、また、炭素数が26以下の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましい。また、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、kは1〜4、好ましくは1〜2を示す。
【0071】
上記金属サリシレート系清浄剤(E)は、公知の方法等で製造することができ、特に制限はないが、例えば、フェノールと、エチレン、プロピレン、ブテン等の重合体又は共重合体等の炭素数10〜30のオレフィン、好ましくはエチレン重合体等の直鎖α−オレフィンを用いてアルキレーションし、炭酸ガス等でカルボキシレーションする方法、或いはサリチル酸に当該オレフィン、好ましくは当該直鎖α−オレフィンを用いてアルキレーションする方法等により得たモノアルキルサリチル酸を主成分とするアルキルサリチル酸に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又はナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としたり、更にアルカリ金属塩をアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる。
【0072】
上記金属サリシレート系清浄剤(E)は、上記のようにして得られたアルカリ金属又はアルカリ土類金サリシレート(中性塩)に、更に過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で上記中性塩をアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩であることが好ましい。
【0073】
上記金属サリシレート系清浄剤(E)を本発明の内燃機関用潤滑油組成物に添加する場合、中和能力の観点から、金属としてはアルカリ土類金属が好ましく、中でもマグネシウム及びカルシウムが好ましく、フィルターへの詰りが発生しない点でカルシウムが最も好ましい。
【0074】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、上記金属サリシレート系清浄剤(E)の塩基価は、50〜350mgKOH/gであるのが好ましい。また、該金属サリシレート系清浄剤(E)は、好ましくは50mgKOH/g以上150mgKOH/g未満のサリシレートと150mgKOH/g以上350mgKOH/g以下のサリシレートから各々一種以上を組み合わせて使用することが好ましい。また、150mgKOH/g以上350mgKOH/g以下のサリシレートについては、好ましくは150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以上200mgKOH/g以下のものから選ばれることが好ましい。塩基価が50mgKOH/g未満では十分な中和力がないが、50mgKOH/g以上150mgKOH/g未満のサリシレートは酸化安定性の保持には有効であり、また、350mgKOH/gを超えると潤滑油組成物としての安定性が悪くなるが、150mgKOH/g以上350mgKOH/g以下のサリシレートは中和力が高い。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0075】
本発明において、上記金属サリシレート系清浄剤(E)としては、アルキル基鎖長が炭素数で14〜18のものと20〜30のものを組み合わせて使用することが好ましい。これらを組み合わせる場合、炭素数で14〜18のものと20〜30のものを組成物全量基準の金属量で200質量ppm以上含有することが好ましく、より好ましくは300質量ppm以上であり、また、好ましくは1000質量ppm以下であり、更に好ましくは700質量ppm以下である。含有量が200質量ppm未満では、酸化安定性への寄与が十分でなく、1000質量ppmを超えると、それ以上添加する効果が現れないため、無意味である。
【0076】
本発明において、上記金属サリシレート系清浄剤(E)の含有量は、組成物全量基準で、金属元素換算量として、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下であり、最も好ましくは0.15質量%以下である。金属サリシレート系清浄剤(E)の金属元素換算での含有量が0.05質量%未満の場合、本発明のような優れた塩基価維持性及び高温清浄性を発揮できず、一方、金属サリシレート系清浄剤(E)の金属元素換算での含有量が0.5質量%を超える場合、組成物中の硫酸灰分量が多くなり、内燃機関用潤滑油組成物としては好ましくない。
【0077】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物においては、金属サリシレート系清浄剤(E)の他、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネートから選ばれる1種を単独で又は2種以上併用して使用することが好ましい。なお、本発明においては、併用する金属系清浄剤として、低灰化による摩擦低減効果及び/又は摩耗防止効果が大きい点、酸化安定性により優れる点で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート系清浄剤(F)を使用することが特に好ましい。
【0078】
上記金属スルホネート系清浄剤(F)としては、分子量が300〜1500、好ましくは400〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩が挙げられる。ここで、該アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的には、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0079】
上記石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また、上記合成スルホン酸としては、例えば、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、炭素数2〜15のオレフィン(エチレン、プロピレン等)のオリゴマーをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、或いはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常発煙硫酸や無水硫酸が用いられる。
【0080】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に用いる金属スルホネート系清浄剤(F)の塩基価は、5〜150mgKOH/g以上であることが好ましい。また、該金属スルホネート系清浄剤(F)の塩基価は、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、特に好ましくは15mgKOH/g以上、最も好ましくは20mgKOH/g以上である。また、該金属スルホネート系清浄剤(F)の塩基価は、更に好ましくは130mgKOH/g以下であり、より一層好ましくは100mgKOH/g以下、特に好ましくは50mgKOH/g以下であり、最も好ましくは30mgKOH/g以下である。塩基価が150mgKOH/gを超える塩基性スルホネートは、過塩基性と呼ばれる炭酸塩で過塩基化したものであり、これらは本願発明には高温でデポジットが増加するため不適である。一方、塩基価が5mgKOH/gのものは中性塩でない可能性があり、スルホン酸残基が悪影響を及ぼす可能性がある。また、塩基価が150mgKOH/gを超える過塩基性スルホネートは、十分な耐熱性を示さない。
【0081】
本発明において、上記金属スルホネート系清浄剤(F)の含有量は、組成物全量基準で、金属元素換算量として、好ましくは0.002質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.008質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下であり、最も好ましくは0.02質量%以下である。金属スルホネート系清浄剤(F)の金属元素換算での含有量が0.002質量%未満の場合、本発明のような優れた塩基価維持性及び高温清浄性を発揮できない恐れがあり、一方、金属スルホネート系清浄剤(F)の金属元素換算での含有量が0.2質量%を超える場合、むしろ耐熱性が低下する恐れがある。
【0082】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、金属サリシレート系清浄剤(E)と金属スルホネート系清浄剤(F)の比率(E/F)は、金属元素比で200/1以下が好ましく、より好ましくは100/1以下であり、また、好ましくは2/1以上であり、より好ましくは10/1以上である。金属サリシレート系清浄剤(E)の比率が200を超えると、金属スルホネート系清浄剤(F)の効果が失われ、一方、2未満になると、金属スルホネート系清浄剤(F)の耐熱性に対する悪影響が懸念される。
【0083】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における金属系清浄剤の含有量の上限値は、組成物全量を基準として、組成物の硫酸灰分が1質量%以下となるようにその他の添加剤とあわせて調整することが好ましい。そのような観点から、金属系清浄剤の含有量は、組成物全量を基準として、金属元素換算量で、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、最も好ましくは0.15質量%以下である。金属系清浄剤の含有量が0.01質量%未満の場合、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性等の酸化安定性能が得られ難くなるため好ましくない。また、前述したように硫酸灰分が1質量%を超えると、ピストンへの堆積物が増加するため好ましくない。
【0084】
また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、無灰分散剤(G)を更に含有することが好ましい。該無灰分散剤(G)としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、或いはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0085】
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は、化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。該アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0086】
上記無灰分散剤(G)の具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(I)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、或いはその誘導体。
(II)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、或いはその誘導体。
(III)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、或いはその誘導体。
【0087】
上記(I)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記一般式(4)又は(5)で示される化合物等が例示できる。
【0089】
上記一般式(4)中、R
8は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、iは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0091】
上記一般式(5)中、R
9及びR
10は、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはポリブテニル基を示し、jは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
【0092】
なお、上記コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(4)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(5)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含されるが、本発明の内燃機関用潤滑油組成物においては、それらの一方のみを含んでもよく、或いはこれらの混合物が含まれていてもよい。
【0093】
上記コハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ここで、ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0094】
上記(II)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記一般式(6)で表される化合物等が例示できる。
【化6】
【0095】
上記一般式(6)中、R
11は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、pは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0096】
上記ベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0097】
上記(III)ポリアミンとしては、より具体的には、下記一般式(7)で表される化合物等が例示できる。
R
12−NH−(CH
2CH
2NH)
q−H ・・・(7)
【0098】
上記一般式(7)中、R
12は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、qは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0099】
上記ポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0100】
また、上記無灰分散剤(G)の一例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、いわゆるホウ素変性化合物、或いは前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物等が挙げられる。本発明においては、前述した誘導体の中でもホウ素変性化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の内燃機関用潤滑油組成物においても、塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるために特に有効である。
【0101】
上記ホウ素変性化合物の製造は、一般に、前述の無灰分散剤にホウ素化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。例えば、ホウ酸変性コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42-8013号公報、特公昭42-8014号公報、特開昭51-52381号公報、及び特開昭51-130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。具体的には、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等にポリアミンとポリアルケニルコハク酸(無水物)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。なお、この様にして得られるホウ酸性コハク酸イミドのホウ酸含有量は通常0.1〜45質量%とすることができる。
【0102】
また、上記ホウ素含有コハク酸イミド等のホウ素含有無灰分散剤を用いる場合、そのホウ素含有量については特に制限はなく、通常0.1〜3質量%であり、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より一層好ましくは0.8質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。ホウ素含有無灰分散剤としてホウ素含有量がこの範囲内のホウ素含有コハク酸イミドを使用することが好ましく、特にホウ素含有ビスコハク酸イミドを使用することが望ましい。なお、ホウ素含有量が3質量%を超える場合、安定性に懸念があるだけでなく、組成物中のホウ素量が多くなりすぎ、硫酸灰分の増加と共に、排ガス後処理装置への影響が懸念されるため、好ましくない。また、ホウ素含有量が0.1質量%未満の場合、省燃費性能向上効果が小さく、別のホウ素化合物を併用することが望ましい。
【0103】
また、上記ホウ素含有コハク酸イミド等のホウ素含有無灰分散剤のホウ素/窒素質量比(B/N比)は特に制限はなく、通常0.05〜5であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.7以上であり、また、好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下、より一層好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。ホウ素含有無灰分散剤としてB/N比がこの範囲内のホウ素含有コハク酸イミドを使用することが好ましく、特にホウ素含有ビスコハク酸イミドを使用することが望ましい。なお、B/N比が5を超える場合、安定性に懸念があるだけでなく、組成物中のホウ素量が多くなりすぎ、硫酸灰分の増加と共に、排ガス後処理装置への影響が懸念されるため、好ましくない。また、B/N比が0.05未満の場合、省燃費性能向上効果が小さく、別のホウ素化合物を併用することが望ましい。
【0104】
また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、ホウ素含有無灰分散剤起因のホウ素含有量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、より一層好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.04質量%以上であり、また、好ましくは0.15質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より一層好ましくは0.07質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。
【0105】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に無灰分散剤(G)を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温下における塩基価維持性に対する効果が少なく、一方、20質量%を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0106】
また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、連鎖停止型酸化防止剤を更に含有することが好ましい。これにより、潤滑油組成物の酸化安定性がより高められるため、本発明における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めることができる。上記連鎖停止型酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
【0107】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、或いは2種以上を混合して用いてもよい。
【0108】
上記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0109】
更に、上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は組み合せて使用してもよい。
【0110】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において連鎖停止型酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5.0質量%を超える場合は、含有量に見合った十分な酸化防止性が得られないため好ましくない。一方、連鎖停止型酸化防止剤の含有量は、潤滑油劣化過程における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるためには、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上である。
【0111】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0112】
上記摩耗防止剤としては、例えば、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、ジチオリン酸金属塩(亜鉛塩、モリブデン塩等)、ジチオカルバミン酸金属塩(亜鉛塩、モリブデン塩等)、ジチオリン酸エステル及びその誘導体(オレフィンシクロペンタジエン、(メチル)メタクリル酸、プロピオン酸等との反応物;プロピオン酸の場合はβ位に付加したものが好ましい)、トリチオリン酸エステル、ジチオカルバミン酸エステル等の硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは通常、0.005〜5質量%の範囲において、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の性能を大幅に損なわない限り含有させることが可能であるが、低硫黄化及び酸化安定性の観点から、その含有量は、硫黄換算値で、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。
【0113】
上記摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、アルケニルコハク酸イミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。これら摩擦調整剤の含有量は、通常0.1〜5質量%である。
【0114】
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0115】
上記防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0116】
上記抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0117】
上記金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0118】
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0119】
これらの添加剤を本発明の内燃機関用潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0120】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、潤滑油基油(A)、リン化合物(B)及び有機モリブデン化合物(C)、並びに必要に応じて用いられる各種添加剤の選択によって、組成物中の硫黄含有量が好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以下の酸化安定性に優れた低硫黄潤滑油組成物とすることも可能である。
【0121】
また、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の酸化安定性を高め、排ガス後処理装置への悪影響を極力軽減するためには、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物及びその他金属を含有する添加剤やその含有量の最適化によって、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下とすることが好ましく、0.8質量%以下とすることがより好ましく、0.6質量%以下とすることが特に好ましい。ここで、硫酸灰分とは、JIS K 2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因するものである。
【実施例】
【0122】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0123】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
実施例1〜3及び比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて表1に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。なお、表1中、基油の量は、基油中の含有割合であり、一方、添加剤の量は、組成物全量基準での含有量である。また、表1に、各実施例又は比較例で得られた潤滑油組成物の性状、及び、含有元素量(いずれも元素換算値)を併せて示す。
【0124】
次に、実施例1〜3及び比較例1〜4の各潤滑油組成物を用いて以下の試験を行った。
【0125】
[NOx吸収試験]
日本トライボロジー会議予稿集1992、10、465に準拠した方法にて試験油にNOx含有ガスを吹き込み、強制劣化させたときの塩基価(塩酸法)及び酸価の経時変化を測定した。本試験における試験温度は140℃、NOx含有ガス中のNOx濃度は1185ppmとした。NOxガスの吹き込み開始から24時間ごとの塩基価残存率を表1に示す。塩基価残存率の減少が小さいものほど、内燃機関で使用されるようなNOx存在下においても塩基価維持性能が高く、より長時間使用できる酸化安定性油であることを示している。
【0126】
[パネルコーキング試験]
パネルコーキング試験は、Federal Test Method 791B-3462に準拠し、パネル温度320℃、油温100℃、テスト時間3時間として、アルミニウムパネルに付着するカーボン量(mg)を評価することにより清浄性を評価した。試験条件を以下に示す。
・スプラッシュ回転数:1000rpm
・スプラッシュOn/Off=15s/45s
【0127】
なお、本発明でいう「硫黄分」とは、JIS K 2541−4「放射線式励起法」(通常、0.01〜5質量%の範囲)又はJIS K 2541−5「ボンベ式質量法、附属書(規定)、誘導結合プラズマ発光法」(通常、0.05質量%以上)に準拠して測定された値を意味し、構成元素として硫黄を含有する添加剤の硫黄元素換算での含有量は、[潤滑油組成物全体の硫黄分]及び[潤滑油基油及び希釈剤に由来する硫黄分]をそれぞれ測定し、前者の測定値から後者の測定値を減じることにより求められる。また、構成元素として硫黄を含有する添加剤の硫黄含有量を直接求める方法としては、添加剤の有効成分と潤滑油及び希釈油とを分離し、有効成分について、上記の方法に準拠して硫黄分を測定する方法がある。潤滑油組成物又は添加剤中の有効成分と潤滑油基油及び希釈油との分離は、ゴム膜透析やクロマトグラフィー等の常法により行うことができる(例えば、八木下ら、日石三菱レビュー、第41巻、第4号、第25〜34頁(1999年10月発行)を参照)。また、硫黄分が上記方法の通常の測定限界以下である場合は、標準物質の濃度を適宜変更した測定により得られる検量線から容易に求めることができる。
【0128】
【表1】
【0129】
基油1:40℃での動粘度=262.1mm
2/s、100℃での動粘度=21.62mm
2/s、粘度指数=99、硫黄分=0.58質量%、芳香族分=42.1質量%、%C
A=5.9
基油2:40℃での動粘度=84.43mm
2/s、100℃での動粘度=10.25mm
2/s、粘度指数=102、硫黄分=0.10質量%、芳香族分=27.2質量%、%C
A=4.1
基油3:40℃での動粘度=18.3mm
2/s、100℃での動粘度=4.063mm
2/s、粘度指数=123、硫黄分=9質量ppm、芳香族分=3.8質量%、%C
A=0
基油4:40℃での動粘度=35.76mm
2/s、100℃での動粘度=6.358mm
2/s、粘度指数=130、硫黄分=6質量ppm、芳香族分=4.8質量%、%C
A=0
基油5:40℃での動粘度=46.71mm
2/s、100℃での動粘度=7.595mm
2/s、粘度指数=129、硫黄分<1質量ppm、芳香族分=0.3質量%、%C
A=0
【0130】
ZP:硫黄を含有しない有機リン化合物の亜鉛塩、アルキルリン酸塩、R=ブチル、P含有量=6.9質量%
ZDTP:硫黄を含有する有機リン化合物の亜鉛塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、R=nC8、P含有量=9.0質量%
【0131】
Moアミン:炭素数13のアルキル基のモリブデンアミン、Mo含有量=10質量%,N含有量=1.2質量%
MoDTC:炭素数8と13のアルキル基のモリブデンジチオカーバメート、Mo含有量=10質量%,S含有量=11質量%
【0132】
清浄剤1(サリシ1):炭素数14〜18のアルキル基を持つカルシウムサリシレート、Ca含有量=6.3質量%、塩基価=177mgKOH/g
清浄剤2(サリシ2):炭素数20〜30のアルキル基を持つカルシウムサリシレート、Ca含有量=2.1質量%、塩基価=60mgKOH/g
清浄剤3(スルホ):炭素数16〜26のアルキル基を持つカルシウムスルホネート、Ca含有量=12.0質量%、塩基価=300mgKOH/g
無灰分散剤:ポリアルケニルコハク酸イミド(PTEPA)、Mw=4000〜6000、N含有量=1.5質量%、B含有量=0.5質量%
VM:ポリメタクリレートとオレフィンコポリマーのミックスポリマー
PPD:ポリメタクリレート(メタクリレートのアルキル基:nC12〜nC18)
金属不活性化剤:トリアゾール誘導体
アミン系酸化防止剤:モノブチルフェニルモノオクチルフェニルアミン、N含有量=4.5質量%
フェノール系酸化防止剤:ヒンダードフェノール
消泡剤:シリコーンオイル(ジメチルシリコン)
【0133】
表1から、本発明に従う実施例の潤滑油組成物は、NOx耐性、塩基価維持性、耐コーキング性、高温清浄性に優れることが分かる。