(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載された義足用カバーでは、2分割した膝上外装と膝下外装との境界部分の膝蓋骨側に、上下方向に伸縮する弾性帯を取り付けることにより、膝の動きが重たく、遊脚期の膝継手の屈曲角が十分に得られない。
【0006】
また、特許文献2に記載された義足用カバーでは、各モジュールの構造が複雑であり組立て取外しも簡単ではなく、アライメントの調整に時間を要する。更に、特許文献1及び特許文献2に、義足の回旋機能を付与するターンテーブルを採用することは難しい。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、義足の膝継手の屈曲がスムーズに行える義足用カバー及び義足用カバーの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る義足用カバーは、上端から下端に向けて内径が順次小とされると共に、中心軸方向に沿って同上端から同下端まで延びる第1の切り目が形成された第1の筒体を有する大腿ソケット用カバー部と、上端側が前記第1の筒体の下端側内に遊挿状に嵌め入れ可能とされ、かつ同上端から略中央に向けて内径が順次小から大とされ、同略中央から下端に向けて内径が順次大から小とされると共に、中心軸方向に沿って同上端から同下端まで延びる第2の切り目が形成された第2の筒体を有する膝関節及び下腿パイプ用カバー部とを備える。
【0009】
ここで、大腿ソケット用カバー部の第1の筒体が、上端から下端に向けて内径が順次小とされたことによって、上端から下端に向けて外径が順次小とされた大腿ソケットの外周面に、密接状に装着することができる。
【0010】
また、大腿ソケット用カバー部の第1の筒体に、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる第1の切り目が形成されたことによって、大腿ソケットへの着脱を容易に行うことが可能となる。
【0011】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の第2の筒体が、上端側が第1の筒体の下端側内に遊挿状に嵌め入れ可能とされたことによって、義足の膝継手が第1の筒体の下端側と第2の筒体の上端側で分割状となることで膝継手の屈曲時に抵抗なくスムーズに屈曲を行うことが可能となる。
【0012】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の第2の筒体が、上端から略中央に向けて内径が順次小から大とされ、略中央から下端に向けて内径が順次大から小とされたことによって、義足の膝継手及び下腿パイプの形状に合わせて取り付けることが可能となる。
【0013】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の第2の筒体に、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる第2の切り目が形成されたことによって、膝継手及び下腿パイプへの着脱を容易に行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、第1の筒体及び第2の筒体が、熱可塑性素材で形成された場合には、大腿ソケット、膝継手及び下腿パイプの形状に合わせて容易に加工することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、熱可塑性素材が、ポリエチレン材である場合には、保型性、剛性及び弾力性に優れると共に、着色も自由に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、大腿ソケット用カバー部が、第1の切り目を形成する第1の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とする第1の接続手段を有する場合には、大腿ソケットの外径に応じて第1の筒体の内径を調整することが可能となる。更に、第1の接続手段を、例えば、領域が接する面に互いに圧着可能な面状テープで構成することで重なる領域の着脱が容易に行えると共に、大腿ソケットの外周面に密接状に保持することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、膝関節及び下腿パイプ用カバー部が、第2の切り目を形成する第2の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とする第2の接続手段を有する場合には、膝継手の外径に応じて第2の筒体の内径を調整することが可能となる。更に、第2の接続手段を、例えば、領域が接する面に互いに圧着可能な面状テープで構成することで重なる領域の着脱が容易に行えると共に、膝継手の外周面に密接状に保持することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、第1の筒体の内側面に、大腿ソケット用カバー部が装着される大腿ソケットに係着可能とされた係着手段を有する場合には、歩行の際に第1の筒体を大腿ソケットの外周面から摺れることなく保持することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、第1の筒体の下端に延設されると共に、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の上端側の一部と重なる重ね片部を有する場合には、膝継手が第1の筒体の重ね片部と第2の筒体の上端側で分割状となることで膝継手が防護されると共に、膝継手の屈曲時に抵抗なくスムーズに屈曲を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、第1の筒体の所定箇所に開口された穴部を有する場合には、例えば大腿ソケットに設けられたターンテーブルのロック機構、あるいはインナーソケットのロック機構の操作を第1の筒体部を取り外すことなく行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る義足用カバーにおいて、大腿ソケット用カバー部の下端と、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の上端を連結する着脱自在の連結帯部を備える場合には、歩行の際に第1の筒体と第2の筒体との間隔を一定に保持することが可能となる。
【0022】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る義足用カバーは、大腿ソケットと係合可能とされ、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒体を有する大腿ソケット用カバー部と、膝関節及び下腿パイプと係合可能とされ、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒体を有する膝関節及び下腿パイプ用カバー部とを備える。
【0023】
ここで、大腿ソケット用カバー部の筒体が、大腿ソケットと係合可能とされ、かつ、大腿ソケット用カバー部の筒体に、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成されたことによって、義足の大腿ソケットの外周面に着脱自在に取り付けることが可能となる。
【0024】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の筒体が、膝関節及び下腿パイプと係合可能とされ、かつ、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の筒体に、中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成されたことによって、義足の膝継手及び下腿パイプに着脱自在に取り付けることができると共に、大腿ソケット用カバー部と膝関節及び下腿パイプ用カバー部が分割状とされたことで膝継手の屈曲時に抵抗なくスムーズに屈曲を行うことが可能となる。
【0025】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る義足用カバーの製造方法は、骨格構造の義足の大腿ソケットの外周を基準にして作成された大腿モデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の大腿ソケット用カバー部を成形する工程と、骨格構造の義足の膝関節及び下腿パイプの形状を基準にして作成された膝関節及び下腿パイプモデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の膝関節及び下腿パイプ用カバー部を成形する工程とを備える。
【0026】
ここで、骨格構造の義足の大腿ソケットの外周を基準にして作成された大腿モデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の大腿ソケット用カバー部を成形することによって、大腿モデルから大腿ソケット用カバー部を容易に取り外すことができるので製作時間の短縮が可能となる。
【0027】
また、骨格構造の義足の膝関節及び下腿パイプの形状を基準にして作成された膝関節及び下腿パイプモデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の膝関節及び下腿パイプ用カバー部を成形することによって、膝関節及び下腿パイプモデルから膝関節及び下腿パイプ用カバー部を容易に取り外すことができるので製作時間の短縮が可能となる。
【0028】
更に、大腿ソケット用カバー部及び膝関節及び下腿パイプ用カバー部が分割状に製作されることで義足に装着した場合には、膝継手の屈曲時に抵抗なくスムーズに屈曲を行うことが可能となる。
【0029】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る義足用カバーの製造方法は、骨格構造の義足の大腿ソケットの外周を基準にして大腿モデルを作成する工程と、前記骨格構造の義足の膝関節及び下腿パイプの形状を基準にして膝関節及び下腿パイプモデルを作成する工程と、前記大腿モデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の大腿ソケット用カバー部を成形する工程と、前記膝関節及び下腿パイプモデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の膝関節及び下腿パイプ用カバー部を成形する工程とを備える。
【0030】
ここで、骨格構造の義足の大腿ソケットの外周を基準にして大腿モデルを作成することによって、大腿ソケットの形状に合わせた筒状の大腿ソケット用カバー部に成形することが可能となる。
【0031】
また、骨格構造の義足の膝関節及び下腿パイプの形状を基準にして膝関節及び下腿パイプモデルを作成することによって、膝継手及び下腿パイプの形状に合わせた筒状の膝関節及び下腿パイプ用カバー部に成形することが可能となる。
【0032】
また、大腿モデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の大腿ソケット用カバー部を成形することによって、大腿モデルから大腿ソケット用カバー部を容易に取り外すことができるので製作時間の短縮が可能となる。
【0033】
また、膝関節及び下腿パイプモデルの外周に沿って、加熱した熱可塑性樹脂板を押し当てて中心軸方向に沿って上端から下端まで延びる切り目が形成された筒状の膝関節及び下腿パイプ用カバー部を成形することによって、膝関節及び下腿パイプモデルから膝関節及び下腿パイプ用カバー部を容易に取り外すことができるので製作時間の短縮が可能となる。
【0034】
更に、大腿ソケット用カバー部及び膝関節及び下腿パイプ用カバー部が分割状に製作されることで義足に装着した場合には、膝継手の屈曲時に抵抗なくスムーズに屈曲を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の義足用カバーによれば、義足の膝継手の屈曲がスムーズに行うことが可能となる。
また、義足用カバーの製造方法によれば、義足の膝継手の屈曲をスムーズに行うことができる義足用カバーを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら詳述する。
【0038】
<第1の実施の形態>
図1は本発明を適用した義足用カバーの一例を説明するための模式図である。
【0039】
ここで示す義足用カバー1は、骨格構造の義足における大腿ソケット(図示せず。)に取り付けられる大腿ソケット用カバー部2と、膝関節及び下腿パイプ(図示せず。)に取り付けられる膝関節及び下腿パイプ用カバー部20とから構成されている。
【0040】
次に、
図2(A)は本発明を適用した義足用カバーにおける大腿ソケット用カバー部の一例を説明するための側面模式図、
図2(B)は本発明を適用した義足用カバーにおける大腿ソケット用カバー部の一例を説明するための背面模式図、
図2(C)は本発明を適用した義足用カバーにおける大腿ソケット用カバー部の一例を説明するための端面模式図である。
【0041】
ここで、大腿ソケット用カバー部2は、ポリエチレン材の熱可塑性素材で形成された第1の筒体3から構成されている。
【0042】
この第1の筒体3は、上端4から下端5に向けて内径が順次小とされると共に、中心軸方向に沿って上端4から下端5まで延びる第1の切り目6が形成されている。
【0043】
また、第1の切り目6を形成する第1の筒体3の対向する縁部付近の領域(7、7A)が、第1の筒体3の半径方向に順次配置されている。更に、領域(7、7A)を重ねた状態で接続可能とされる第1の接続手段として領域(7、7A)が接する面に互いに圧着可能な面状テープ(8、8A)が取り付けられている。
【0044】
また、大腿ソケット用カバー部2の領域(7、7A)が重なる下部の外周面には、前記
図1に示すように、連結帯部11の一端側に取り付けられた面状テープ28と互いに圧着可能な面状テープ9が取り付けられている。
【0045】
また、第1の筒体3の上端4側の内周面に沿って大腿ソケット(図示せず。)に係着可能とされる係着手段として面状テープ10が取り付けられている。
【0046】
また、第1の筒体3の下端5の正面側に、半円形状に下方に延設された重ね片部12が形成されている。
【0047】
また、第1の筒体3の下側外周面には、ターンテーブルのロック機構(図示せず。)と同位置となる箇所に穴部13が開口されている。更に、第1の筒体3の上側外周面には、インナーソケットのロック機構(図示せず。)と同位置となる箇所に穴部13Aが開口されている。
【0048】
更に、
図3(A)は本発明を適用した義足用カバーにおける膝関節及び下腿パイプ用カバー部の一例を説明するための側面模式図、
図3(B)は本発明を適用した義足用カバーにおける膝関節及び下腿パイプ用カバー部の一例を説明するための背面模式図、
図3(C)は本発明を適用した義足用カバーにおける膝関節及び下腿パイプ用カバー部の一例を説明するための端面模式図である。
【0049】
ここで示す膝関節及び下腿パイプ用カバー部20は、ポリエチレン材の熱可塑性素材で形成された第2の筒体21から構成されている。
【0050】
この第2の筒体21は、上端22側が第1の筒体3の下端側に形成される重ね片部12の裏面内に遊挿状に嵌め入れ可能な外径とされている。
【0051】
ここで、第2の筒体21の上端22から略中央に向けて内径が順次小から大とされ、同略中央から下端23に向けて内径が順次大から小とされると共に、上端22から下端23まで延びる第2の切り目25が形成されている。
【0052】
この第2の切り目25を形成する第2の筒体21の対向する縁部付近の領域(26、26A)が、第2の筒体21の半径方向に順次配置されている。更に、領域(26、26A)を重ねた状態で接続可能とされる第2の接続手段として領域(26、26A)が接する面に互いに圧着可能な面状テープ(27、27A)が取り付けられている。
【0053】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の領域(26、26A)が重なる上部の外周面には、前記
図1に示すように、連結帯部11の他端側に取り付けられた面状テープ28Aと互いに圧着可能な面状テープ9Aが取り付けられている。
【0054】
以下、本発明を適用した義足用カバーの取り付け状態を示す。
【0055】
図4は本発明を適用した義足用カバーを取り付ける骨格構造の義足の一例を説明するための模式図、
図5は本発明を適用した義足用カバーの取り付け状態の一例を説明するための模式図である。
【0056】
ここで示す義足30は、大腿形状に形成された大腿ソケット31の下端に、ターンテーブル32を介して膝関節33の一端が取り付けられている。この大腿ソケット31の所定の箇所には、前記
図2で示すように、大腿ソケット用カバー部2の第1の筒体3の上端4側の内周面に沿って取り付けられた面状テープ10と係着可能な面状テープ10Aが周設されている。
【0057】
また、膝関節33の他端には下腿パイプ34の上端が連結され、この下腿パイプ34の下端には足部35が取り付けられた構成とされている。
【0058】
ここで、ターンテーブル32によって膝関節33を周方向に90度回転させて膝関節33から下腿パイプ34を水平状に回転させることで胡坐を組むような形態とすることが可能となる。このような変換操作は、ターンテーブル32に設けられるロック機構(図示せず。)のON、OFFで行われる。
【0059】
このような構造の義足30の大腿ソケット31に対して大腿ソケット用カバー部2を取り付ける場合に、第1の筒体3の第1の切り目6を拡げて大腿ソケット31の外周面に嵌め合せる。
【0060】
ここで、第1の切り目6が大腿ソケット31の背面側中心となるようにして大腿ソケット31の外周面に取り付けられた面状テープ10Aに、第1の筒体3の上端4側の内周面に沿って取り付けられた面状テープ10を重ねて係着させる。
【0061】
更に、第1の切り目6の対向する領域(7、7A)を重ねた状態で面状テープ(8、8A)同士を係着させる。
【0062】
次に、義足30の膝関節33から下腿パイプ34に対して膝関節及び下腿パイプ用カバー部20を取り付ける場合には、第2の筒体21の第2の切り目25を拡げて膝関節33から下腿パイプ34を嵌め入れる。
【0063】
ここで、膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の下端23は、義足30の足部35の甲の面に当接して足首を形成するような形態となる。
【0064】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の上端22は、義足30の膝関節33の外周面に嵌め合わせられるようにして取り付けられると共に、大腿ソケット用カバー部2の下方の重ね片部12の裏面側となるように重ねられた形態となる。
【0065】
更に、大腿ソケット用カバー部2の面状テープ9と膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の面状テープ9Aを、連結帯部11の両側端に設けられた面状テープ28及び面状テープ28Aで係着する。
これにより、大腿ソケット用カバー部2と膝関節及び下腿パイプ用カバー部20が連結帯部11によって連結される。
【0066】
このようにして義足30に対して大腿ソケット用カバー部2及び膝関節及び下腿パイプ用カバー部20を装着することで、大腿ソケット31、ターンテーブル32、膝関節33及び下腿パイプ34をポリエチレン材の熱可塑性素材でカバーすることが可能となる。
【0067】
ここで、大腿ソケット用カバー部2の下端5側と膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の上端22が分割されるために、歩行時の義足30の動きに支障がないように自由に屈曲することが可能となる。
【0068】
また、
図6に示すように、ターンテーブル(図示せず。)によって膝関節33及び下腿パイプ34を回旋させた場合でも、大腿ソケット用カバー部2の下端側と膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の上端が分割されるために支障なく回旋させことが可能となる。
【0069】
なお、本実施の形態では、第1の筒体及び第2の筒体は、熱可塑性素材で形成されるものであるが、可撓性を有し、かつ剛性及び保型性を有するものであれば、必ずしも熱可塑性素材で形成する必要性はない。
【0070】
また、本実施の形態では、熱可塑性素材は、ポリエチレン材で形成されるものであるが、熱可塑性を有するものであれば、必ずしもポリエチレン材で形成する必要性はない。
【0071】
また、本実施の形態では、大腿ソケット用カバー部は、第1の切り目を形成する第1の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とされた第1の接続手段を有するものであるが、必ずしも第1の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とする必要性はない。
【0072】
しかし、第1の切り目を形成する第1の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねることで大腿ソケットの外径に応じて第1の筒体の内径の調整が行えるという点において第1の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とすることが望ましい。
【0073】
また、本実施の形態では、膝関節及び下腿パイプ用カバー部は、第2の切り目を形成する第2の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とされた第2の接続手段を有するものであるが、必ずしも第2の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とする必要性はない。
【0074】
しかし、第2の切り目を形成する第2の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねることで膝関節及び下腿パイプの外径に応じて第2の筒体の内径の調整が行えるという点において第2の筒体の対向する縁部付近の領域を重ねた状態で接続可能とすることが望ましい。
【0075】
また、本実施の形態では、大腿ソケット用カバー部は、第1の筒体の内側面に、大腿ソケット用カバー部が装着される大腿ソケットに係着可能とされる係着手段を有するものであるが、第1の筒体が大腿ソケットに係着できる手段を有するものであれば、必ずしも第1の筒体の内側面に係着手段を設ける必要性はない。
【0076】
また、本実施の形態では、大腿ソケット用カバー部は、第1の筒体の下端に延設される膝関節及び下腿パイプ用カバー部の上端側の一部と重なる重ね片部を有するものであるが、第2の筒体の上端側が第1の筒体の下端側内に遊挿状に嵌め入れ可能とされるものであれば、必ずしも重ね片部を形成する必要性はない。
【0077】
また、本実施の形態では、大腿ソケット用カバー部は、第1の筒体の所定箇所に開口された穴部を有するものであるが、ターンテーブルのロック機構、あるいはインナーソケットのロック機構の調整が大腿ソケット用カバー部を外すことなく行うことができるものであれば、必ずしも穴部を設ける必要性はない。
【0078】
また、本実施の形態では、大腿ソケット用カバー部の下端と、膝関節及び下腿パイプ用カバー部の上端に連結された着脱自在の連結帯部を備えるものであるが、第1の筒体の下端の重ね片部と膝関節及び下腿パイプ用カバー部の上端側とが重ねられるのを維持できるものであれば、必ずしも連結帯部を備える必要性はない。
【0079】
以上の構成よりなる義足用カバーでは、第1の筒体及び第2の筒体がポリエチレン材等の熱可塑性樹脂で形成されることで、使用による劣化を最小限に抑えることができる。
【0080】
また、可撓性を有することで義足への着脱が容易となり、アライメント調整なども効率的に行うことが可能となる。
【0081】
また、第1の筒体及び第2の筒体に分割されることで、必要に応じて膝曲げを可能とするターンテーブルの組込みができ、かつ外見的にもスマートで着色も自由にでき歩行時に違和感の無い義足用カバーを実現することができる。
【0082】
<第2の実施の形態>
図7(A)は、本発明を適用した義足用カバーの製造方法に使用する大腿モデルの成形方法の一例を説明するための模式図、
図7(B)は、本発明を適用した義足用カバーの製造方法に使用する大腿モデルによる大腿ソケット用カバー部の製作工程を説明するための模式図である。
【0083】
本発明を適用した大腿ソケット用カバー部の製造方法の一例(第2の実施の形態)では、先ず、例えば石膏を用いて前記
図4に示すような、大腿ソケット31、ターンテーブル32及び膝関節33の形状と寸法を計測する。このデータに基づいて、上端から下端に向けて外径が順次小とされる大腿モデル40を作成する(
図7(A)参照)。
【0084】
続いて、このようにして作成された大腿モデル40の外周面に、加熱軟化したポリエチレン材の熱可塑性樹脂板41を押し当て、熱可塑性樹脂板41の両側端(42、42A)の領域が重なるようにして巻回する(
図7(B)参照)。
【0085】
これにより、前記
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示すように、上端4から下端5に向けて内径が順次小とされると共に、下端5の正面側が半円形状に下方に延設された重ね片部12が形成され、かつ中心軸方向に沿って上端4から同下端5まで延びる第1の切り目6が形成された第1の筒体2を作成することができる。
【0086】
更に、第1の切り目6の対向する領域(7、7A)が接する面に、互いに圧着可能な面状テープ(8、8A)を取り付ける。
【0087】
また、大腿ソケット用カバー部2の領域(7、7A)が重なる下部の外周面には、前記
図1に示すように、連結帯部11の一端側に取り付けられる面状テープ28と互いに圧着可能な面状テープ9を取り付ける。
【0088】
また、第1の筒体3の上端4側の内周面に沿って大腿ソケット(図示せず。)に係着可能な面状テープ10を取り付ける。
【0089】
また、第1の筒体3の下側外周面には、ターンテーブルのロック機構(図示せず。)と同位置となる箇所に穴部13及び、第1の筒体3の上側外周面には、インナーソケットのロック機構(図示せず。)と同位置となる箇所に穴部13Aを開口する。
【0090】
次に、
図8(A)は、本発明を適用した義足用カバーの製造方法に使用する膝関節及び下腿パイプモデルの成形方法の一例を説明するための模式図、
図8(B)は、本発明を適用した義足用カバーの製造方法に使用する膝関節及び下腿パイプモデルによる膝関節及び下腿パイプ用カバー部の製作工程を説明するための模式図である。
【0091】
本発明を適用した膝関節及び下腿パイプ用カバー部の製造方法の一例(第2の実施の形態)では、先ず、例えば石膏を用いて前記
図4に示すように、膝関節33及び下腿パイプ34の形状と寸法を計測する。このデータに基づいて、上端から略中央に向けて外径が順次小から大とされ、同略中央から下端に向けて外径が順次大から小とされる膝関節及び下腿パイプモデル43を作成する(
図8(A)参照)。
【0092】
続いて、このようにして作成された膝関節及び下腿パイプモデル43の外周面に、加熱軟化したポリエチレン材の熱可塑性樹脂板41Aを押し当て、熱可塑性樹脂板41Aの両側端(42、42A)の領域が重なるようにして巻回する(
図8(B)参照)。
【0093】
これにより、前記
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)に示すように、上端22から略中央に向けて内径が順次小から大とされ、同略中央から下端23に向けて内径が順次大から小とされると共に、上端22から下端23まで延びる第2の切り目25が形成された第2の筒体21を形成することができる。
【0094】
更に、第2の切り目25の対向する領域(26、26A)が接する面に、互いに圧着可能な面状テープ(27、27A)を取り付ける。
【0095】
また、膝関節及び下腿パイプ用カバー部20の領域(26、26A)が重なる上部の外周面には、前記
図1に示すように、連結帯部11の一端側に取り付けられる面状テープ28Aと互いに圧着可能な面状テープ9Aを取り付ける。
【0096】
なお、熱可塑性樹脂を加熱整形する方法としては、本実施の形態で詳述した以外に、オーブンなどを使って熱可塑性樹脂板を加熱軟化させて手で大腿モデルや膝関節及び下腿パイプモデルに沿わせて成形することもできる。また、バキュームを使った吸引成形法によることも可能である。
【0097】
以上の構成よりなる義足用カバーの製造方法では、義足カバーにおける第1の筒体及び第2の筒体を熱可塑性材料で製作することにより、大腿モデルや膝関節又は下腿パイプモデルから大腿ソケット用カバー部又は膝関節及び下腿パイプ用カバー部を取り外す作業が容易となる。
【0098】
これにより、製作時間短縮が可能となり、作業効率が向上すると共に、部品が簡単で故障も少なく、着色が自由に行え、製品寿命の長い義足用カバーを安価に製造することができる。