(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、消化管上部、特に胃の酸性環境と食物との共存下での消化管運動による機械的ストレスによる薬物の過量放出(dose dumping)を回避し、かつ中性領域である消化管下部における薬物の溶出性を改善することにより、1日1回又は2回の経口投与で確実に主薬理効果を発揮する薬物を主薬効成分として含有する経口投与用の徐放性製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、経口投与用の徐放製剤化の検討を重ねた結果、薬理上活性な薬物、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、及び膨潤剤を含有し、酸性環境下での薬物の過量放出(dose dumping)を回避し、かつ中性における溶出性を改善した徐放性固形製剤を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(36)を提供するものである。
(1):
(A)薬理上活性な薬物;
(B)カルボキシビニルポリマー;及び
(C)ポビドン;
上記(A)〜(C)を含有することを特徴とする経口投与用の徐放性固形製剤。
(2):0.01規定塩酸(900mL)中、37±0.5℃において、パドル法毎分50回転及び毎分200回転で2時間溶出試験を行ったときの、溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の差(パドル法毎分200回転−パドル法毎分50回転)が10%以下であるか、又は、溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の比(パドル法毎分200回転/パドル法毎分50回転)が2.0以下である(1)に記載の徐放性固形製剤。
(3):溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の差(パドル法毎分200回転−パドル法毎分50回転)が、5%以下である(2)に記載の徐放性固形製剤。
(4):溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の比(パドル法毎分200回転/パドル法毎分50回転)が、1.5以下である(2)又は(3)に記載の徐放性固形製剤。
(5):さらに、水溶性賦形剤を含有する(1)〜(4)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(6):水溶性賦形剤が、糖アルコール類である(5)に記載の徐放性固形製剤。
(7):糖アルコール類が、マンニトール、キシリトール又はエリスリトールである(6)に記載の徐放性固形製剤。
(8):糖アルコール類が、キシリトールである(6)に記載の徐放性固形製剤。
(9):酸性水溶液中での固形製剤の水和率が、60%以上になることを特徴とする(5)〜(8)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(10):酸性水溶液中での固形製剤の水和率が、90%以上であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(11):さらに、膨潤剤を含有する(1)〜(10)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(12):膨潤剤が、カルメロースナトリウムである(11)に記載の徐放性固形製剤。
(13):酸性水溶液中での固形製剤の膨潤率が、150%以上である(11)又は(12)に記載の徐放性固形製剤。
(14):酸性水溶液中での固形製剤の膨潤率が、180%以上である(11)〜(13)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(15):(A)薬理上活性な薬物が、以下の溶解度を示すものである、(1)〜(14)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤:
(中性状態の溶解度)/(酸性状態の溶解度)が、0.00001〜0.6の範囲である。
(16):(A)薬理上活性な薬物が、以下の溶解度を示すものである、(1)〜(14)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤:
(中性状態の溶解度)/(酸性状態の溶解度)が、0.001〜0.5の範囲である。
(17):(A)薬理上活性な薬物が、以下の溶解度を示すものである、(1)〜(14)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤:
中性状態(7.5>pH>5の範囲)における最低溶解度が、3mg/ml以下である。
(18):(A)薬理上活性な薬物が、以下の溶解度を示すものである、(1)〜(14)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤:
中性状態(7.5>pH>5の範囲)における最低溶解度が、0.5mg/ml以下である。
(19):(A)薬理上活性な薬物が、塩基性薬物である(1)〜(18)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(20):(A)薬理上活性な薬物が、下記の
(±)−1−(カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(o−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノール;
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド;及び
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド;
からなる群より選ばれる化合物、その薬理上許容される塩、又はそれらの水和物である(1)〜(14)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(21):固形製剤中における、(A)薬理上活性な薬物の含有率が、0.1重量%以上〜60重量%以下の範囲である(1)〜(20)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(22):固形製剤が、錠剤である(1)〜(21)のいずれか1に記載の徐放性固形製剤。
(23):錠剤が、マトリックス錠剤である(22)に記載の徐放性固形製剤。
【0008】
(24):(A)薬理上活性な薬物、(B)カルボキシビニルポリマー、(C)ポビドン、及び、(D)カルメロースナトリウム、キサンタンガム又はカルボキシメチルスターチナトリウム、を含有する徐放性固形製剤。
(25):製剤中における(D)成分がカルメロースナトリウムである、(24)に記載の製剤。
(26)製剤中における(A)成分の含有率が5〜35重量%である、(24)又は(25)に記載の製剤。
(27):製剤中における(B)成分の含有率が5〜30重量%である、(24)〜(26)のいずれか1に記載の製剤。
(28):製剤中における(C)成分の含有率が10〜70重量%である、(24)〜(27)のいずれか1に記載の製剤。
(29):製剤中における(D)成分の含有率が5〜15重量%である、(24)〜(28)のいずれか1に記載の製剤。
(30):さらに、糖アルコールを含有する、(24)〜(29)のいずれか1に記載の製剤。
(31):製剤中における糖アルコールの含有率が10〜40重量%である、(30)に記載の製剤。
(32):糖アルコールがマンニトール、キシリトール又はエリスリトールである、(30)又は(31)に記載の製剤。
(33):糖アルコールがキシリトールである、(30)又は(31)に記載の製剤。
(34):(A)成分が塩基性薬物である、(24)〜(33)のいずれか1に記載の製剤。
(35):(A)成分が、
(±)−1−(カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(o−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノール、
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド、及び、
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド、
からなる群より選ばれる化合物、その薬理上許容される塩、又はそれらの水和物である、(24)〜(34)のいずれか1に記載の製剤。
(36):剤型が錠剤である、(24)〜(35)のいずれか1に記載の製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬理上活性な薬物を含有する、経口投与用の徐放性医薬組成物の提供が可能になる。従って、例えば、活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害剤の化合物(1)を薬効成分として含有する持続性の経口徐放性固形製剤が提供される。本発明の徐放性医薬組成物は、酸性溶液中における良好な水和率、膨潤率を有しつつ過剰放出を防ぐ良好な錠剤強度を持ち、かつ中性溶液中で良好な溶出性を持つことから、十二指腸、小腸から下部消化管に至るまで、含有する薬理上活性な薬物の持続的な溶出を維持する効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願明細書における「酸性溶液」としては、胃などの消化管上部での溶出性を評価するために用いる酸性の溶出試験液を意味し、例えば、日本薬局方記載の溶出試験第1液、米国薬局方に記載のUSP 0.1規定塩酸、0.01規定塩酸、Simulated Gastric Fluid without Enzyme等を挙げることができるが、酸性の溶出試験液は、これらに限られるものではない。
【0013】
本願明細書における「中性溶液」としては、小腸、大腸などにおける薬物の溶出性を評価するために用いる中性の溶出試験液を意味し、例えば、日本薬局方記載の溶出試験第2液やリン酸塩緩衝液pH6.8、米国薬局方記載のUSP Phosphate Buffer(pH6.8)、Simulated Interstinal Fluid without Enzyme、欧州薬局方記載のPhosphate Buffer Solution pH6.8等を挙げることができるが、「中性溶液」はなんらpH6.8溶出試験液に限られるものではない。
【0014】
上記の溶出試験液は、各国の薬局方等に記載された方法で調製される。これらの溶出試験液のpHは、溶出試験液が緩衝液の場合、各溶出試験液に規定されたpHの±0.05以内となることが好ましい。
【0015】
本願発明の徐放性固形製剤の、消化管上部における溶出性評価のための酸性溶出液を用いたパドル法としては、例えば0.01規定塩酸(900mL)中、37±0.5℃において、パドル法毎分50回転及び200回転で2時間溶出試験を行う方法を挙げることができる。上記のように、製剤中の薬理上活性な薬物が塩基性薬物の場合には、高い水溶性を示す消化管上部の酸性環境における食物との共存、消化管運動などによる機械的ストレスにより、製剤が崩壊するために生じる薬物の過量放出(dose dumping)の問題がある。したがって、酸性溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率は、パドル法毎分200回転及び/又はパドル法毎分50回転においても、製剤強度を保ち、一定の範囲に溶出率を抑えるのが好ましい。2時間後の溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率が、パドル法で毎分200回転及び/又は毎分50回転のいずれにおいても、50%以下が好ましく;40%以下のものがより好ましく;30%以下のものがさらに好ましい。また、2時間溶出試験方法を行ったときの、溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の差(パドル法毎分200回転−パドル法毎分50回転)が、15%以下が好ましく;10%以下がより好ましく;5%以下がさらに好ましい。また、2時間後の溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率の比(パドル法毎分200回転/パドル法毎分50回転)が、2.0以下が好ましく;1.5以下がより好ましく;1.3以下が特に好ましい。
【0016】
本願発明の徐放性固形製剤の、中性領域における溶出性評価のための中性溶出液を用いたパドル法としては、例えばリン酸塩緩衝液(pH6.8;900mL)中、37±0.5℃において、パドル法毎分50回転で溶出試験を行う方法を挙げることができる。当該溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率としては、溶出試験開始後12時間でも持続的な溶出率を示しているものが好ましい。また、溶出試験開始後12時間でも持続的な溶出率を示し、かつ20%以上の平均溶出率を示すものが好ましく;30%以上の溶出率を示すものがより好ましい。
【0017】
溶出試験法としては、ヒト消化管内環境に近い条件での溶出試験法であるUSP Apparatus3(Bio−Dis法)を用いてもよい。
【0018】
溶液中の薬物濃度は、UV法などを用いて定量する事が可能であり、溶出試験液中における薬理上活性な薬物の平均溶出率、溶出時間を算出することができる。
【0019】
なお、上記「平均溶出率」とは、1種の固形製剤について、少なくとも2個、好ましくは6個、さらに好ましくは12個の溶出率を測定し、それらの平均値を求めればよい。
【0020】
また、本願発明の徐放性固形製剤における、上記薬理上活性な薬物の溶出性は、in vivo動物試験を用いで確認することができる。in vivo動物試験としては、例えばイヌを用いたin vivo吸収性評価を挙げることができる。一般的に、経口投与された製剤は、胃及び小腸を通過後、大腸に長時間滞留するとされている。そのため、溶出時間の長い徐放性製剤にとって、長時間滞留する大腸において薬物放出が持続することは、非常に重要である。薬理上活性な薬物を含有する製剤の大腸内の吸収性を確認する方法として、イヌ大腸内に製剤を直接投与するイヌ大腸吸収性評価を挙げることができる。すなわち、投与後の血中濃度測定から、イヌ大腸内での吸収性を確認し、薬理上活性な薬物の水溶液経口投与時に対する比として、各錠剤の相対バイオアベイラビリティ(BA)等で、評価することができる。
【0021】
本願明細書における「薬理上活性な薬物」としては、製剤の処方中で主薬理効果を発揮する薬物であって、比較的水溶性の低い薬物が好ましい。薬理上活性な薬物の、中性化合物としては、分子中に酸性状態又は塩基性の状態においてもイオン化して解離する基を持たない化合物を意味し、また、酸性化合物としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、リン酸基、スルホン酸、テトラゾリル基などに代表される酸性基を有する薬物を意味する。さらに、塩基性薬物としては、分子内にアミノ基、ピペリジニル基、ピペラジニル基などに代表される塩基性窒素原子を有する薬物を意味する。本発明においては、特に塩基性薬物が好適である。塩基性薬物は、小腸、大腸での中性状態(7.5>pH>5)での溶解度が、胃などの酸性状態(pH≦2)での溶解度と比較して低下する物理化学的性質を有する。
【0022】
上記のように、本願明細書における「塩基性薬物」とは、上記の酸性状態における溶解度に比べて中性状態における溶解度が低下する薬物を指し、中性状態における溶解度の低下の割合としては、下記の範囲を挙げることができる。
(中性状態の溶解度)/(酸性状態の溶解度)が、0.00001〜0.6の範囲のものが好ましく;
(中性状態の溶解度)/(酸性状態の溶解度)が、0.001〜0.5の範囲のものがより好ましく;
(中性状態の溶解度)/(酸性状態の溶解度)が、0.01〜0.1の範囲のものがさらに好ましいが、これら範囲になんら限定されるものではない。
【0023】
本願明細書における「塩基性薬物」の酸性領域(日本薬局方溶出試験第1液:pH=1.2,20±5℃)での溶解度としては、1〜500mg/mlの範囲であり;かつ中性領域(日本薬局方溶出試験第2液:pH=6.8,20±5℃)での溶解度が、0.01〜3000μg/mlの範囲が好ましく;
【0024】
酸性領域(日本薬局方溶出試験第1液:pH=1.2,20±5℃)での溶解度が、1〜500mg/mlの範囲であり;かつ中性領域(日本薬局方溶出試験第2液:pH=6.8,20±5℃)での溶解度が、10〜500μg/mlの範囲であるものがより好ましい。また、溶解度の絶対値としては、中性状態(7.5>pH>5の範囲)における最低溶解度が3mg/ml以下に低下する薬物が好ましく;1mg/ml以下に低下する薬物がより好ましく;0.5mg/ml以下に低下する薬物がさらに好ましい。
【0025】
「薬理上活性な薬物」の具体的な例としては、抗凝固剤を挙げることができる。
【0026】
抗凝固剤としては、塩基性若しくは弱塩基性置換基を有する活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害剤が好ましく、FXa阻害剤の具体例としては、下記の(a)〜(l)を挙げることができる。
(a)Darexaban Maleate(tanexaban),(N−[2−ヒドロキシ−6−メトキシベンズアミド]フェニル]−4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンズアミド)[薬食審査発1111第1号(平成22年11月11日);Pre−publication copy,Proposed INN: List 101;Research and development pipeline.Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd.Company World Wide Web site,11 Feb 2004,参照];
(b)rivaroxaban,(5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド)[WFO Drug Information,Vol.18,No.3,2004,page 260;Susanne R,et al,J.Med.Chem.,2005,48,5900−5908;D.Kubitza et al,Multiple dose escalation study investigating the pharmacodynamics,safety,and pharmacokinetic of Bay59−7939,an oral,direct Factor Xa inhibitor,in healthy male subjects.Blood,2003,102;Abstract 3004.参照];
(c)apixaban,(1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−6−[4−(2−オキソピペリジン−1−イル)フェニル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド)[WFO Drug Information,Vol.20, No.1,2006,page 38;Pinto DJP, Orwat MJ, Lam PYS,et al,Discovery of 1−(4−Methoxyphenyl)−7−oxo−6−(4−(2−oxopiperidin−1−yl)phenyl)−4,5,6,7−tetrahydro−1H−pyrazolo[3,4−c]pyridine−3−carboxamide (Apixaban, BMS−562247),a highly potent, selective, efficacious,and orally bioavailable inhibitor of blood coagulation factor Xa,J.Med.Chem.,50(22),5339−56,2007,参照];
(d)Betrixaban,(N−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−[4−(N,N−ジメチルカルバムイミドイル)ベンズアミド]−5−メトキシベンズアミド)[WFO Drug Information,Vol.22,No.3,2008,page 226−227;Zhang P, Huang W,Zhu BY,et al.,Discovery of betrixaban (PRT054021),N−(5−chloropyridin−2−yl)−2−(4−(N,N−dimethylcarbamimidoyl)benzamido)−5−methoxybenzamide,a highly potent,selective, and orally efficacious factor Xa inhibitor,Bioorg Med.Chem.Lett.19(8),2179−85,2009,参照];
(e)AX−1826[S.Takehana et al.Japanese Journal of Pharmacology 2000,82(Suppl.1),213P;T.Kayahara
et al.Japanese Journal of Pharmacology 2000,82(Suppl.1),213P];
(f)HMR−2906[XVIIth Congress of the International Society for Thrombosis
and Haemostasis,Washington D.C.,USA,14−21 Aug 1999;Generating greater value from our products and pipeline.Aventis SA Company Presentation,05 Feb 2004];
(g)Otamixaban((2R,3R)−2−(3−カルバムイミドイルベンジル)−3−[[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミモ]ブタン酸メチル)[WFO Drug Information,Vol.16,No.3,2002,page 257,参照];
(h)BIBT−986(プロドラッグ:BIBT−1011)[American Chemical Society−226th National Meeting,New York City,NY,USA,2003];
(i)DPC−602[J.R.Pruitt et al.J.Med.Chem.2003,46,5298−5313];
(j)LY517717(N−[(1R)−2−[4−(1−メチル−4−ピペリジニル)−1−ピペラジニル]−2−オキソ−1−フェニルエチル]−1H−インドール−6−カルボキサミド)[S.Young,Medicinal Chemistry−12th RSC−SCI Symposium,7−10 September 2003,Cambridge,UK;M.Wiley et al.228th ACS National Meeting,Philadelphia,August 22−26,2004,MEDI−252&254,参照];
(k)N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド、その薬理上許容される塩、又はそれらの水和物[国際公開2004/058715号パンフレット,参照];及び
(l)N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド、その薬理上許容される塩、又はそれらの水和物[国際公開03/000657号パンフレット;国際公開03/000680号パンフレット;国際公開03/016302号パンフレット,参照]。
【0027】
上記の活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害剤としては、下記の式(1)
【0029】
(式中、R
1は、N,N−ジメチルカルバモイル基又は[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル基を示す。)
で表される化合物[以下、化合物(1)と略する場合がある]が、より好ましい。化合物(1)はフリー体(遊離塩基)、又はその薬理学上許容される塩、それらの水和物であってもよい。
【0030】
式(1)で表される化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。
【0031】
式(1)で表される化合物の塩としては、マレイン酸、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩が好ましく、マレイン酸及びp−トルエンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0032】
式(1)で表される化合物として好ましいものとして、以下の
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド モノマレイン酸塩;
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド;
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド 塩酸塩;
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド モノp−トルエンスルホン酸塩;及び
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド モノp−トルエンスルホン酸塩・1水和物;
を挙げることができる。
【0033】
上記の好ましい化合物の中で、下記の式(1a)[以下、化合物(1a)と略する場合がある]及び式(1b)[以下、化合物(1b)と略する場合がある]
【0035】
で表される、N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド モノマレイン酸塩(1a);及び
N
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド モノp−トルエンスルホン酸塩・1水和物(1b)が特に好ましい。
【0036】
化合物(1)の遊離塩基(フリー体)とは、化合物(1)と、たとえば上記の塩(酸付加塩)、及び/又は水和物を形成している酸付加塩の「酸」及び水和物の「水」を除いた化合物を意味し、例えば化合物(1a)及び化合物(1b)の遊離塩基(フリー体)とは、下記の式(1a−1)及び式(1b−1)
【0038】
で表されるN
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−[(1S,2R,4S)−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−4−([1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)シクロヘキシル]エタンジアミド(1a−1)及びN
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−N
2−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(1b−1)を意味する。
【0039】
これらの化合物(1)は、上記文献(WO2003−000657号パンフレット;WO2003−000680号パンフレット;WO2003−016302号パンフレット;WO2004−058715号パンフレット)に記載の方法又はそれに準じる方法によって製造することができる。
【0040】
また、本発明の(A)薬理上活性な薬物の好ましい例として、下記の式(2)[以下、化合物(2)と略する場合がある]
【0042】
で表される(±)−1−(カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(o−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノール(2)(CAS Number:72956−09−3)、その薬理上許容される塩、又はそれらの水和物を挙げることができる。
【0043】
本願明細書における「(A)薬理上活性な薬物」の「固形製剤」中の含有率としては、「(A)薬理上活性な薬物」重量%として、0.1〜60重量%が好ましく;1〜50重量%がより好ましく;5〜35重量%がさらに好ましいが、なんらこの範囲に限定されるものではない。
ここで、本願明細書における成分の含有量を示す「A〜B重量%」とは、特別に記載されていない限り、「A重量%以上〜B重量%以下の範囲」を意味するものである。
【0044】
本願明細書における「(B)カルボキシビニルポリマー」としては、市販のカーボポール(Noveon/CBC)等を使用すればよく、粘度の異なる種々のグレードのものが入手可能である。好ましいカルボキシビニルポリマーとしては、カーボポール974PNFを挙げることができる。
【0045】
本願明細書におけるカルボキシビニルポリマーの「固形製剤」中の含有率としては、1〜50重量%が好ましく;5〜30重量%がより好ましく;10〜30重量%がさらに好ましい。
【0046】
本願明細書における「(C)ポビドン(ポリビニルピロリドン)」は非イオン性の水溶性ポリマーであり、1−ビニル−2−ピロリドンの直鎖重合物を意味するものであり、1−ビニル−2−ピロリドンの架橋重合物であるクロスポビドンを含むものではない。ポビドンは、BASFジャパン等から種々のK値(分子量と相関する粘性特性値)のグレードのものを入手することができ、好ましいものとしては、市販のKollidon30(BASFジャパン)を挙げることができる。
【0047】
本発明におけるポビドンの「固形製剤」中の含有率としては、1〜70重量%が好ましく;6〜70重量%がより好ましく;10〜70重量%がさらに好ましい。
【0048】
また、本願明細書の「固形製剤」における「(B)カルボキシビニルポリマー」及び「(C)ポビドン」の含有率としては下記の(1)及び(2)が好ましい、
(1)カルボキシビニルポリマーの含有率が15〜25重量%の場合におけるポビドンの含有率は10〜70重量%;及び
(2)カルボキシビニルポリマーの含有率が10〜15重量%未満の場合におけるポビドンの含有率は、20〜70重量%。
【0049】
本願明細書における「水溶性賦形剤」としては、果糖、精製白糖、白糖、精製白糖球状顆粒、乳糖、無水乳糖、白糖・デンプン球状顆粒、半消化体デンプン、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、粉糖、プルラン、β−シクロデキストリン、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖類を好ましいものとして挙げることができる。
【0050】
糖類としては、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールがより好ましく;キシリトールが特に好ましい。
【0051】
本願明細書における水溶性賦形剤の「固形製剤」中の含有率としては、0〜80重量%が好ましく;0〜60重量%がより好ましい。
【0052】
本願明細書における膨潤剤としては、キサンタンガム、カルボキシメチルスターチナトリウム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キトサン、寒天、澱粉、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン、カルメロースナトリウム等が考えられ;カルメロースナトリウム、キサンタンガム、及びカルボキシメチルスターチナトリウムが好ましく;カルメロースナトリウムが得に好ましい。カルメロースナトリウムは、例えばサンローズ(商品名:日本製紙ケミカル)等の市販のものが使用でき、各種の粘度、エーテル化度のものを入手することができる。
【0053】
本願明細書における膨潤剤の「固形製剤」中の含有率としては、1〜40重量%が好ましく;5〜15重量%がより好ましく;7〜15重量%がさらに好ましい。
【0054】
本願発明においては、上記の(A)薬理上活性な薬物、(B)カルボキシビニルポリマー、及び(C)ポビドン、及び上記の、水溶性賦形剤、膨潤剤に加え、本発明の効果に影響を与えない範囲内で、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、光沢化剤等を配合してもよい。
【0055】
崩壊剤としては、アジピン酸、アルギン酸、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、含水二酸化ケイ素、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、コムギデンプン、コメデンプン、ステアリン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、フマル酸一ナトリウム、無水クエン酸、リン酸二水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム等が挙げられる。
【0056】
結合剤としては、アメ粉、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、加水分解ゼラチン末、加水分解デンプン加軽質無水ケイ酸、果糖、カルボキシメチルエチルセルロース、含水二酸化ケイ素、カンテン末、軽質無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、コポリドン、小麦粉、コムギデンプン、米粉、コメデンプン、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酒石酸ナトリウムカリウム、常水、ショ糖脂肪酸エステル、精製ゼラチン、精製白糖、ゼラチン、D−ソルビトール、デキストリン、デンプン、トウモロコシデンプン、トラガント、トラガント末、乳糖、濃グリセリン、白糖、バレイショデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合物、ピペロニルブトキシド、ブドウ糖、部分アルファー化デンプン、フマル酸、フマル酸ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910混合物、プルラン、ポリビニルアルコール(完全ケン化物)、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)、ポリリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、D−マンニトール、メチルセルロース等が挙げられる。
【0057】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、タルク、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0058】
滑沢剤としては、カカオ脂、カルナウバロウ、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、サラシミツロウ、酸化マグネシウム、酒石酸ナトリウムカリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40、セタノール、ダイズ硬化油、ゼラチン、タルク、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ミツロウ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ラウリル酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0059】
着色剤としては、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、β−カロチン、黒酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号等を挙げることができる。
【0060】
光沢化剤としては、カルナウバロウ、硬化油、酢酸ビニル樹脂、サラシミツロウ、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸マグネシウム、精製セラック、精製パラフィン・カルナウバロウ混合ワックス、セタノール、タルク、中金箔、白色セラック、パラフィン、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ミツロウ、モノステアリン酸グリセリン、ロジン等が挙げられる。
【0061】
本願発明の徐放性固形製剤は、経口投与可能な固形製剤であればその剤形は特に制限されないが、顆粒剤、錠剤が好ましい。錠剤としてはマトリックス錠剤が好ましい。
【0062】
また、本願発明の徐放性固形製剤の製造方法は、固形製剤の周知の製造方法を採用することができる。例えば、本願発明の徐放性固形製剤は、(A)薬理上活性な薬物、(B)カルボキシビニルポリマー、及び(C)ポビドン、及び上記の、水溶性賦形剤、膨潤剤に加え、さらに必要に応じて崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤及び光沢化剤等を配合し、例えば、日本薬局方の製剤総則に記載されている固形製剤の製造法により製造することができる。
【0063】
本発明の徐放性固形製剤の剤形が顆粒剤の場合、(A)〜(C)、及び上記の、水溶性賦形剤、膨潤剤に加え、さらに必要に応じて添加剤を流動層造粒機等の造粒装置で混合後、湿式造粒等の造粒を行って造粒顆粒を得ることができる。造粒顆粒は、滑沢剤等の添加剤を加えて混合後、打錠用顆粒とし、これを打錠して錠剤とすることもでき、得られた錠剤は、必要に応じてコーティング剤を用いてフィルムコーティング錠剤とすることも可能である。
【0064】
また、本発明の徐放性固形製剤の剤形が錠剤の場合、(A)薬理上活性な薬物、(B)カルボキシビニルポリマー、及び(C)ポビドン、さらに水溶性賦形剤、膨潤剤との組合せに加え、医薬品添加物の混合末、好ましくは(A)薬理上活性な薬物;(B)カルボキシビニルポリマー;(C)ポビドン、水溶性賦形剤;及び膨潤剤との組合せ、並びに医薬品添加物の混合末をそのまま圧縮成型することにより製造してもよい。また、錠剤の形状は、特に制限はないが、レンズ型、円盤型、円形、楕円形及び三角形やひし形等の多角形のものが好ましい。さらに、パンコーティング機にて、得られた錠剤にコーティング剤の懸濁液/溶解液を噴霧してコーティングすることも可能である。
【0065】
(A)薬理上活性な薬物の本発明医薬組成物中の含有比は、薬理上活性な薬物のフリー体換算で、0.1重量%以上〜60重量%以下の範囲が好ましく;1〜50重量%がより好ましく;5〜35重量%がさらに好ましい。特に、本発明医薬組成物の剤形が錠剤の場合、1錠あたりに含有される薬理上活性な薬物の含有量は、薬理上活性な薬物のフリー体換算で、0.5〜500mgの範囲であり;1〜100mgが好ましく;5〜75mgがより好ましく;15〜60mgがさらに好ましい。
【0066】
また、本願発明の徐放性固形製剤の水和率の評価方法としては、各錠剤を、0.01規定塩酸中、37±0.5℃において、2時間静置後の水和していない部分の体積を求め、下記の式1
【0068】
で表される式で水和率を算出した。水和率としては、60%以上のものが好ましく;90%以上のものがより好ましい。
【0069】
本発明の医薬組成物の膨潤率の評価方法としては、下記の式2
【0071】
で表される式により算出することができる。
【0072】
膨潤率としては、150%以上が好ましく;180%以上がより好ましく;200%以上が特に好ましい。
【0073】
本願発明の別の態様について以下に説明する。
【0074】
本願発明の徐放性固形製剤は、(A)薬理上活性な薬物、(B)カルボキシビニルポリマー、(C)ポビドン、及び、(D)カルメロースナトリウム、キサンタンガム又はカルボキシメチルスターチナトリウム、を含有する。
【0075】
本願発明の製剤に使用される(A)成分である「薬理上活性な薬物」は特に限定されるものではなく、また薬物は体内で薬理上活性な薬物に変換されるプロドラッグであってもよい。本願発明の(A)成分の例示としては上述のものを好ましいものとして挙げることができるが、なんらこれらに限定されるものではない。本願発明の製剤における(A)成分の含有率としては、0.1〜60重量%が好ましく、1〜50重量%がより好ましく、5〜35重量%がさらに好ましいが、なんらこの範囲に限定されるものではない。
【0076】
本願発明の製剤に使用される(B)成分である「カルボキシビニルポリマー」としては、上述のものを使用でき、市販のカーボポール974PNFが好ましい。本願発明の製剤における(B)成分の含有率としては、1〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜30重量%がさらに好ましい。
【0077】
本願発明の製剤に使用される(C)成分である「ポビドン」としては、上述のものを意味し、市販のKollidon30(BASFジャパン)が好ましい。本願発明の製剤における(C)成分の含有率としては、10〜70重量%が好ましい。
【0078】
また、本願発明の製剤における(B)成分及び(C)成分の含有率としては、下記の(1)及び(2)が好ましい。
(1)(B)成分の含有率が15〜30重量%の場合における(C)成分の含有率は10〜70重量%;及び
(2)(B)成分の含有率が10〜15重量%未満の場合における(C)成分の含有率は、20〜70重量%。
【0079】
本願発明の製剤に使用される(D)成分は、カルメロースナトリウム、キサンタンガムまたはカルボキシメチルスターチナトリウムであり、好ましくはカルメロースナトリウムである。本願発明の製剤における(D)成分の含有率としては、5〜15重量%が好ましく;7〜15重量%がより好ましい。
【0080】
本願発明の製剤は、(A)〜(D)に加えて糖アルコールを含有することが好ましい。糖アルコールとしては上述のものが挙げられるが、マンニトール、キシリトールまたはエリスリトールが好ましく;キシリトールがより好ましい。本願発明の製剤における糖アルコールの含有率としては、10〜40重量%が好ましい。
【0081】
本願発明の製剤には、本発明の効果に影響を与えない範囲内で、上述の、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、光沢化剤等の添加剤を配合してもよい。
【0082】
本願発明の製剤は、経口投与可能な製剤であればその剤型は特に制限されないが、錠剤が好ましい。錠剤としてはマトリックス錠剤が好ましい。
【0083】
本願発明の製剤は、(A)〜(D)を混合した後に打錠するか、または、(A)〜(D)を混合して造粒した後に打錠して得られる。混合、造粒および打錠は、当該分野で周知の方法を用いて行えばよい。
【0084】
本願発明の製剤が糖アルコールを含有する場合は、(A)〜(D)および糖アルコールを混合した後に打錠するか、または、(A)〜(D)および糖アルコールを混合して造粒した後に打錠して得られる。
【0085】
錠剤の形状としては特に制限はないが、レンズ型、円盤型、円形、楕円形、及び、三角形、ひし形等の多角形のものが好ましい。本願発明の製剤には、必要に応じて、コーティング剤を用いてフィルムコーティングを施してもよい。混合、造粒、打錠およびコーティングは、当該分野で周知の方法を用いて行えばよい。
【0086】
本願発明の製剤にその他の添加剤を配合する場合、混合工程、造粒工程、打錠工程またはコーティング工程のいずれの工程で配合しても良い。
【0087】
かくして得られた本願発明の製剤は、上述の発明の効果に記載したように、酸性溶液中における良好な水和率、膨潤率を有しつつ過剰放出を防ぐ良好な錠剤強度を持ち、かつ中性溶液中で良好な溶出性を持つことから、十二指腸、小腸から下部消化管に至るまで、含有する薬理上活性な薬物の持続的な溶出を維持する効果が得られる。
【0088】
また、本願発明の製剤の水和率及び膨潤率の評価方法としては上記の式1、及び式2で算出することができ、水和率としては、90%以上のものがより好ましく、膨潤率としては、150%以上が好ましく;180%以上がより好ましく;200%以上が特に好ましい。
【実施例】
【0089】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
酸性溶液または中性溶液中での溶出性試験は次のように行った。
(酸性溶液中での溶出試験)
0.01規定塩酸(900mL)中、37±0.5℃において、パドル法毎分50回転及び200回転で溶出試験を行い、経時的に溶出液中の薬物平均溶出率を算出した。各回転数での平均溶出率、2時間溶出試験を行い、薬物平均溶出率の差(パドル法毎分200回転−パドル法毎分50回転:D
2h,200rpm−D
2h,50rpm)、平均溶出率の比(パドル法毎分200回転/パドル法毎分50回転:D
2h,200rpm/D
2h,50rpm)を算出した。
【0091】
(中性溶液中での溶出試験)
pH6.8のリン酸緩衝液(900mL)中、37±0.5℃において、パドル法毎分50回転で溶出試験を行い経時的に溶出液中の薬物平均溶出率を算出した。
【0092】
錠剤の水和率及び膨潤率の測定は次のように行った。
(錠剤の水和率の評価)
水和率の評価方法としては、各錠剤を、0.01規定塩酸中、37±0.5℃において、2時間静置後、上記の式1を用いて算出した。
【0093】
(膨潤率の評価)
錠剤を0.01規定塩酸(1000mL)中で2時間静置後、錠剤を取り出し、静置後の体積から上記の式2により膨潤率を算出した。
【0094】
(実施例1)
(錠剤の製造)
メノウ乳鉢を用いて表1に記載の各成分を混合し、この混合末200mgを単発打錠機(N−30E、岡田精工)により打錠[錠径:8.0mm・(平錠)]して試料とした。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
<評価結果>
表2に示したように、いずれの処方においても錠剤の水和率は90%以上であり、錠剤内部のほとんどが水和していることが確認された。
【0098】
(表1の処方の酸性溶液中における溶出性評価)
表1に示した各処方について酸性溶液中における溶出性試験を行った。その結果を、表3、
図1〜
図4に示した。
【0099】
【表3】
【0100】
<評価結果>
処方1の錠剤は、比較例1〜3の処方の錠剤と比較して、薬物放出を抑制し、パドル回転数の影響を受け難いことを確認したことから、カルボキシビニルポリマー及びポビドンの同時添加が、酸性溶液中における錠剤強度の維持に有効であることがわかった。
【0101】
処方1の錠剤について中性溶液中における溶出性試験を行った。その結果を
図5に示した。
【0102】
<評価結果>
図5に示すように処方1の錠剤は、中性溶液中で持続的な溶出性を示した。
【0103】
(実施例2)
表4に示した各処方について、各成分を、メノウ乳鉢を用いて混合し、この混合末200mgを、単発打錠機(N−30E、岡田精工)を用いて打錠して試料とした[錠径:8.0mmφ(6.5R)]。
【0104】
得られた試料について、酸性溶液中における溶出試験を行い、その結果を
図6、
図7及び表5に示した。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
<試験結果>
図6、
図7及び表5に示したように、酸性溶液での溶出に対するパドル回転数の影響について、処方2bでは小さかったが、処方2aでは比較的大きかった。この結果から、ポビドンを10重量%以上添加することにより、良好な錠剤強度が得られることがわかった。
【0108】
(実施例3)
表6に示す処方についてメノウ乳鉢を用いて各成分を混合し、この混合末200mgを単発打錠機(N−30E、岡田精工)により打錠して試料とした[錠径:8.0mmφ(6.5R)]。
【0109】
カルボキシビニルポリマーの処方比率が25%の処方1、15%の処方3について、酸性溶液中における溶出試験結果を
図4、
図8及び表7に示した。
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
<評価結果>
図4、
図8及び表7の溶出挙動に示すように、カルボキシビニルポリマーを25%添加した処方1、及び15%添加する処方3ともに酸性溶液中でのパドル回転数の影響は小さかった。
【0113】
(実施例4)
表8に示した処方について、メノウ乳鉢を用いて各成分を混合し、単発打錠機(N−30E)で打錠して錠剤(錠径:10.0mmφ(8R))を製造した。
【0114】
酸性溶液及び中性溶液中における溶出性の試験結果、各処方の水和率及び膨潤率の測定結果を表9、及び
図9〜12に示した。
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
<試験結果>
図9〜12に示すように、いずれの処方も中性で持続的な溶出挙動を示した。また、表9に示すように、処方4の場合、速やかに水和したものの錠剤はほとんど膨潤せず、2時間後の膨潤率は109%であった。一方、膨潤剤として、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、又はカルボキシメチルスターチナトリウムを添加した処方5及〜処方7の場合、錠剤は速やかに水和し、さらにイニシャルと比較して2時間で約1.6倍〜約2.5倍に膨潤することが確認された。処方5及〜処方7は、酸性溶液中における良好な水和率、膨潤率を有するとともに、酸性溶液中におけるパドル回転数の影響が小さかった、特にカルメロースナトリウムを添加した処方5は、酸性溶液中における水和率、膨潤率、及び錠剤強度の面で優れていた。
【0118】
(実施例5)
表8に示す処方4及び処方5について、絶食下イヌにおける大腸吸収性を評価した。なお、ここでは、表8に示す処方をおよそ2/3にし、化合物(1a−1)含量として20mg、総量240mgの製剤(処方4’及び処方5’)を用いて評価した。
【0119】
大腸内への製剤投与は、0.01規定塩酸中に2時間浸した錠剤1錠を動物用内視鏡(オリンパス)にセットし、内視鏡でイヌ大腸内を観察しながら肛門から約30cmの部位に投与した。なお、投与前に錠剤から0.01規定塩酸中に薬物の一部が溶出する量を測定し、血漿中薬物濃度は、投与量が化合物(1a−1)として20mg/headとなるように換算した。この時の血漿中薬物濃度推移を
図13に示した。
【0120】
<評価結果>
図13に示すように、膨潤剤としてカルメロースナトリウムを含む処方5’の薬物大腸吸収性は、カルメロースナトリウムを含まない処方4’よりも大きく、水膨潤効果が吸収性向上に寄与することが確認できた。この結果から、消化管下部における持続的な吸収性の向上のために膨潤剤の存在が重要であることがわかった。
【0121】
(実施例6)
化合物(1b)、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、ポビドン、ポリエチレングリコール6000、キシリトール、フマル酸ステアリルナトリウムについて、表10示す重量比率になるように乳鉢にとり、3分間混合し混合末を得た。本混合末について表10に示す1錠の所定量を量り、単発打錠機(NE−30、岡田精工)を用いて打錠した(杵形状:10mmφ、平型)。
【0122】
処方8、比較例4及び比較例5について、酸性水溶液における溶出性の試験結果を表11に示した。
【0123】
処方8、9及び10について、水和率及び膨潤率を測定し、その結果を表12に示した。
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
【表12】
【0127】
<評価結果>
比較例4及び比較例5ではでは、比(パドル回転数毎分50回転での溶出率/パドル回転数毎分200回転での溶出率)は、それぞれ1.9及び3.5であったのに対し、処方8では1.2であり、回転数の影響が小さかった。また、処方9及び処方10では、膨潤率はそれぞれ116%及び163%、水和率はそれぞれ94.5%及び75.9%であったのに対し、処方8では、膨潤率は196%、水和率は100%であり、膨潤剤であるカルメロースナトリウム添加の効果が確認できた。また、水溶性賦形剤としてキシリトールを含有していない処方10の水和率は、キシリトールを含有する処方8、9に比較して低かった。
【0128】
(実施例7)
上記の処方5が、酸性溶液中においてパドル回転数の影響を受け難く、かつ中性溶液中における持続的な溶出性を示し、かつ良好な膨潤率及び水和率を示したことから、表13に示す処方製剤を製造した。すなわち、表13示す比率で薬物(1a)、カルボキシビニルポリマー、キシリトール、ポビドン(一部)、カルメロースナトリウム、その他の添加剤を流動層造粒機に投入して混合後、ポビドン溶液(一部を除いた残り)を結合液として噴霧して湿式造粒を行った。得られた造粒物を乾燥して造粒顆粒を得た後、これにフマル酸ステアリルナトリウムを加え、V型混合機を用いて混合し打錠用顆粒とした。これをロータリー打錠機にて打錠し(杵型:10mmφ)、素錠を得た。素錠に、ヒプロメロース2910、タルク、酸化チタン及びポリエチレングリコールからなるコーティング基剤の水分散液を、パンコーティング機にて噴霧することにより、フィルムコーティング錠を得た。
【0129】
得られた製剤につき、酸性溶液中における溶出性試験、水和率、膨潤率の測定を行い、結果を表14及び15に示した。
【0130】
【表13】
【0131】
【表14】
【0132】
【表15】
【0133】
<試験結果>
処方11a〜11cは、造粒及びフィルムコーティングを行った製剤であるが、酸性溶液中における平均溶出率の評価結果は錠剤とほぼ同等の効果であることを確認できた。また、処方11a〜11cの製剤は実施例4,5の錠剤と同様に、ヒト投与試験において同一薬物量の水溶液投与と比較しCmax低減及び24時間後の血中濃度の増大を示し、徐放製剤として良好なプロファイルを示すことが確認された。
【0134】
(製剤例1)
薬物として化合物(2)を用いた表16に示す処方製剤を製造した。
【0135】
【表16】
【0136】
<試験結果>
処方12の製剤のイヌにおけるバイオアベイラビリティー(BA)は、化合物(2)の既存徐放製剤(Coreg CR)と比較して1.54倍の高いパフォーマンスを示し、かつ最高血中濃度到達時間(Tmax)が既存徐放製剤と比較して2倍以上延長したことから、徐放性製剤として好ましいプロファイルを持つことがわかった。