特許第5714568号(P5714568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5714568-ハニカムフィルタ 図000004
  • 特許5714568-ハニカムフィルタ 図000005
  • 特許5714568-ハニカムフィルタ 図000006
  • 特許5714568-ハニカムフィルタ 図000007
  • 特許5714568-ハニカムフィルタ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714568
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20150416BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150416BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20150416BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150416BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150416BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20150416BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20150416BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150416BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20150416BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   C04B38/00 303Z
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301J
   B01D53/36 104B
   B01J23/656 A
   B01J35/04 301B
   F01N3/02 301C
   F01N3/02 321A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-509534(P2012-509534)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2011058082
(87)【国際公開番号】WO2011125772
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-81898(P2010-81898)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進士 真理子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴志
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254034(JP,A)
【文献】 特開2005−002972(JP,A)
【文献】 特開2004−169586(JP,A)
【文献】 特開2006−110413(JP,A)
【文献】 特開2003−275521(JP,A)
【文献】 特開2002−301325(JP,A)
【文献】 特開2003−010616(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/049338(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/143028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20、46/00、53/94
B01J 23/656、35/04
C04B 38/00
F01N 3/022−28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、該隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントの間に介在し、該2以上のハニカムセグメントの外周面同士を接合する接合層と、を備え、
前記流路に直交する直交面に含まれるハニカムセグメントの最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さが、内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さの59%以下であるハニカムセグメントを少なくとも1以上含み、
前記ハニカムセグメントは、前記隔壁部の厚さが200μm〜400μm、断面が35mm×35mm、長さが152.4mm、セルピッチが1.47mm〜2.01mm、前記隔壁部の気孔率が35体積%〜65体積%であり、
前記内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さが30μm〜70μmであり、
前記接合層は、気孔率が30体積%〜70体積%である、
ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さが10μm以上80μm以下である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口するセルとが交互に配設されるよう形成された多孔質の隔壁部と、この隔壁部上に形成された排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集・除去する層が形成されているものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。このハニカムフィルタでは、捕集層によりPMを捕集することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−216226号公報
【特許文献2】特開平6−33734号公報
【特許文献3】特開平1−304022号公報
【発明の開示】
【0004】
ところで、このようなハニカムフィルタでは、捕集したPMを燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる「再生処理」を行うことがある。特許文献1〜3では、隔壁部上に捕集層を設けることにより圧力損失を低減させることができるが、再生処理時に、ハニカムフィルタを構成する複数のハニカムセグメントと各ハニカムセグメントを接合する接合材との間に熱膨張差が生じることがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、再生処理時におけるハニカムセグメントと接合材との間の熱膨張差をより軽減することができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、該隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層と、を有する2以上のハニカムセグメントと、
前記2以上のハニカムセグメントの間に介在し、該2以上のハニカムセグメントの外周面同士を接合する接合層と、を備え、
前記流路に直交する直交面に含まれるハニカムセグメントの最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さが、内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さの60%以下であるハニカムセグメントを少なくとも1以上含むものである。
【0008】
このハニカムフィルタでは、2以上のハニカムセグメントが、接合層を介して接合されており、各ハニカムセグメントでは、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する多孔質の隔壁部の上に流体に含まれる固体成分を捕集・除去する層である捕集層が形成されている。そして、この捕集層は、流路に直交する直交面に含まれるハニカムセグメントの最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さが、内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さの60%以下となるように形成されている。一般に、捕集した固体成分を燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる処理(以下、再生処理とも称する)において、隔壁の温度は、捕集した固体成分の量に応じて高くなる傾向にある。ここで、最外周の隔壁に形成される捕集層の厚さを、内周領域の隔壁に形成される捕集層の厚さの60%以下としたものでは、均一に捕集層が形成されているものに比して、最外周の隔壁における流路抵抗が低下し、固体成分の堆積量が増加する。このため、再生処理の際に、堆積した固体成分が燃焼して最外周の隔壁の温度が高くなる。一般に、再生処理においては、ハニカムセグメントの中央に近づくほど高温になる傾向にあるため、ハニカムセグメントとハニカムセグメントの外周に形成された接合層との間には、その温度差による熱膨張差が生じやすい。これに対して、本発明のハニカムフィルタでは、最外周の隔壁の温度が高いため、熱伝導によって接合層の温度を高めることが可能であり、ハニカムセグメントと接合層との温度差を低減し、熱膨張差をより軽減することができる。
【0009】
ここで、「最外周の隔壁」とは、ハニカムセグメントの最外周のセルにおける外周面の隔壁をいい、「内周領域の隔壁」とは、ハニカムセグメントの中央部であってその外周の幅がハニカムセグメントの外周の幅の1/2となるような領域にある隔壁をいうものとする。また、「最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さ」とは、ハニカムセグメントの最外周の隔壁の内周面(接合層が形成されていない側の面)に形成されている捕集層の厚さの平均値をいい、「内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さ」とは、内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さの平均値をいうものとする。なお、ハニカムセグメントの最外周の隔壁や内周領域の隔壁には、それぞれ、捕集層が均一に形成されていてもよいし、流路方向に傾斜やばらつきを持って形成されていてもよいし、流路に直交する方向にばらつきを持って形成されていてもよいし、一部捕集層が形成されていない部分があってもよい。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さが10μm以上80μm以下であるものとしてもよい。捕集層の厚さが10μm以上ではPMを捕集しやすく、80μm以下では流体が隔壁を通過する抵抗をより低減可能であり、圧力損失をより低減することができる。この内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さは、20μm以上60μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、気体による搬送を利用して、捕集層の厚さなど、捕集層の形成状態を比較的容易に制御することができる。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと、他方の端部が開口され且つ一方の端部が目封止されたセルと、が交互に配置されるよう形成されており、前記捕集層は、前記流体が流入するセル側の前記隔壁部上に形成されている。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれている固体成分をより効率よく除去することができる。なお、この場合、上述した「最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さ」および「内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さ」は、流体が流入するセル側の隔壁部上に形成されている捕集層の厚さをいうものとする。
【0013】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されていてもよい。この触媒は、捕集されたPMを燃焼する触媒及び排ガスに含まれるHC,CO,NOXなどを分解する触媒のうち少なくとも一方としてもよい。こうすれば、PMを効率よく燃焼することや、HC,CO,NOXを効率よく分解することができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、前記捕集層は、前記隔壁部と同種の材料により形成されていうものとすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。
図2】ハニカムセグメント21の断面の概略の一例を示す説明図である。
図3】ハニカムフィルタ20の再生処理時の熱膨張の様子を示す説明図である。
図4】SEM観察による捕集層厚さの算出方法の説明図である。
図5】捕集層の形成厚の測定位置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。本発明のハニカムフィルタは、例えば、自動車のエンジンの排気浄化用にエンジンの排気管に配設されるものであり、排気中に含まれる固体成分(粒子状物質、以下PMとも称する)を捕集・除去するものである。このハニカムフィルタでは、PMの捕集量が所定値に達すると、燃料濃度を高めて捕集したPMを燃焼する処理(再生処理)を実行する。本発明のハニカムフィルタは、出力変動し排気に含まれるPMの量に変動があるような用途や、再生処理が比較的不定期に、また再生処理中でのエンジン停止も前提となるような用途に用いることが好ましい。
【0017】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。図2は、ハニカムセグメント21の構成の概略の一例を示す説明図である。図3は、最外周隔壁部22aに捕集層が形成されていないハニカムフィルタ(図3(a))および、最外周隔壁部122aに捕集層が形成されたハニカムフィルタ(図3(b))の再生処理時の熱膨張の様子を示す説明図である。図4は、SEM観察による捕集層厚さの算出方法の説明図であり、図5は、捕集層24の形成厚の測定位置の説明図である。
【0018】
本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21の外周面同士が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体(排ガス)に含まれる固体成分(PM)を捕集・除去する層である捕集層24と、を備えている。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側が開口しているセル23(入口側セルとも称する)へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側が開口しているセル23(出口側セルとも称する)を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0019】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セル23は、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。ここでは、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されている場合について主として説明する。
【0020】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0021】
隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この気孔率は、水銀圧入法により測定した結果をいう。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいう。また、隔壁部22は、その厚さが150μm以上600μm以下であることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましい。厚さが150μm以上であれば、機械的強度を高めることができ、600μm以下であれば、圧力損失をより低減することができる。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0022】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集・除去する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。捕集層24は、平均細孔径が、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、気孔率が40体積%以上95体積%以下であることが好ましく、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均細孔径が0.2μm以上であればPMが堆積していない初期の圧力損失が過大になるのを抑制することができ、10μm以下であれば捕集効率が良好なものとなり、捕集層24を通り抜け隔壁部22の細孔内部にPMが到達するのを抑制可能であり、PM堆積時の圧力損失低減効果の低下を抑制することができる。また、気孔率が40体積%以上であると、PMが堆積していない初期の圧力損失が過大となるのを抑制することができ、95体積%以下では耐久性のある捕集層24としての表層を作製することができる。また、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができ、15μm以下であれば粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。このように、良好なPM捕集効率の維持、PM捕集開始直後の急激な圧力損失上昇防止、PM堆積時の圧力損失低減、捕集層の耐久性を実現することができる。この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。また、捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を70重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができ、このうちアルミノシリケートであることがより好ましい。なお、捕集層24の粒子群の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で捕集層24を観察し、撮影した画像に含まれる捕集層24の各粒子を計測して求めた平均値をいうものとする。また、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0023】
本発明のハニカムフィルタ20では、ハニカムセグメント21の最外周隔壁部22a上の捕集層24の厚さをA(μm)、内周領域隔壁部22b上の捕集層24の厚さをB(μm)とすると、A/Bが60%以下となるように捕集層24が形成されている(図1〜3参照)。このため、最外周隔壁部22aでは、内周領域隔壁部22bよりも捕集層24による流路抵抗が小さく、排ガスがより多く通過するから、PMがより多く堆積する(図3(a)参照)。そして、捕集したPMを燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる再生処理において、最外周隔壁部22aの温度が高くなる。一般的なハニカムフィルタ120では、再生処理において、ハニカムセグメントの中央部に近づくほど高温になる傾向にあるため、ハニカムセグメント121と接合層127との間には、その温度差による熱膨張差が生じやすい(図3(b)参照)。しかし、最外周隔壁部22aに捕集層が形成されていないハニカムフィルタ20では、再生処理において、最外周隔壁部22aから熱伝導によって図3(b)における熱量Qb(J)より大きな熱量Qa(J)を受け取ることによって接合層27の温度が高められ、ハニカムセグメント21と接合層27との温度差が低減し、熱膨張差をより軽減することができる(図3(a)参照)。このように、本発明のハニカムフィルタ20では、熱膨張の差を軽減することが可能であり、例えば、再生処理時に異常発熱が生じるなどした場合であっても、ハニカムセグメント21と接合層27との熱膨張差が大きくなりすぎず、ハニカムセグメント21と接合層27との接合強度の低下や、剥離などを抑制することができる。このとき、内周領域隔壁部22b上の捕集層の厚さBは10μm以上80μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。捕集層の厚さが10μm以上ではPMを捕集しやすく、80μm以下では流体が隔壁を通過する抵抗をより低減可能であり、圧力損失をより低減することができる。ここで、最外周隔壁部22aとは、ハニカムセグメント21の最外周セル23aにおける外周面を構成する隔壁をいい、内周領域隔壁部22bとは、ハニカムセグメント21の中央部であってその外径が最外周隔壁の外径の1/2以下となるような領域にある内周領域セル23bにおける隔壁をいうものとする。ここでは、ハニカムセグメント21の断面形状が正方形であるため、ハニカムセグメント21の軸を中心とし、回転することなく一辺の長さを1/2とした正方形の内部にあるセルを内周領域セル23bとする。また、最外周隔壁部22a上の捕集層24の厚さA(μm)は、最外周隔壁部22aの内周面(接合層27が形成されていない側の面)に形成されている捕集層24の厚さの平均値をいい、内周領域隔壁部22b上の捕集層24の厚さB(μm)は、内周領域隔壁部22bのうち排ガス(流体)の入口側の面に形成されている捕集層24の厚さの平均値をいうものとする。なお、最外周隔壁部22aおよび内周領域隔壁部22bには、それぞれ、捕集層24が均一に形成されていてもよいし、流路方向や流路に直交する方向に傾斜やばらつきを持って形成されていてもよいし、一部に捕集層が形成されていない部分があってもよい。また、最外周隔壁部22aには、捕集層が形成されていなくてもよい。図1,2では、捕集層24は、最外周隔壁部22aには形成されず、内周領域隔壁部22bにのみ均一に形成されているものとした。
【0024】
捕集層24の形成方法は、気体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、極めて高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材を供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており、且つ、無機粒子同士、及び、無機粒子と隔壁部を構成する粒子とがシリカにより結合されていることが好ましい。コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合では焼結により粒子同士、及び粒子と隔壁部とが結合されているのが好ましい。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。
【0025】
最外周隔壁22aに形成されている捕集層の厚さを、内周領域隔壁部22bに形成されている捕集層の厚さより小さくする方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、ハニカムセグメントに捕集層を形成する際のチャッキング治具を利用して最外周セル23aの入り口を塞ぐことにより、内周領域隔壁部22bにのみ捕集層が形成され、最外周隔壁部22aに捕集層が形成されないようにしてもよい。あるいは、予め最外周セル23aの入り口をシール材(シールテープなど)により封じることにより、内周領域隔壁部22bにのみ捕集層が形成され、最外周隔壁部22aに捕集層が形成されないようにしてもよい。このように、予め最外周セル23aの入り口から捕集層の原料を流入しにくいようにすれば、最外周隔壁部22aに捕集層が形成することなく内周領域隔壁部22bに捕集層を形成することが容易である。また、気体を捕集層の原料の搬送媒体として用いて捕集層24を形成する場合には、ハニカムセグメント21の外周側面に透過抵抗を大きくするような処理を施してもよい。具体的には、ハニカムセグメント21の外周側面にシール材(シールテープなど)などを貼り付けてもよいし、樹脂成分などを塗布してもよい。シール材を貼り付ける方法では、焼成前に剥離することができるため、ハニカムフィルタへのシール材成分の残留などを抑制できる点で好ましい。一方、樹脂成分などを塗布する方法では、塗布量の調整などにより透過抵抗の調整が容易である点で好ましい。樹脂成分などを塗布する場合、樹脂成分は、塗布形成が容易であるものが好ましく、例えばエポキシ系樹脂などが好ましい。また、樹脂成分は、その後の加熱(例えば、捕集層としてのSiC粒子をSiC粒子同士や隔壁と結合させるための1200℃以上1500℃以下での熱処理など)によって滅失するものが好ましい。樹脂などを塗布する方法としては、例えば、ローラーなどを用いた塗布のほか、スプレー、ディッピングなどが挙げられる。エポキシ系樹脂を塗布する場合には、エポキシ系樹脂と硬化剤とをローラで塗布することが好ましい。この際、エタノールなどの有機溶剤をエポキシ系樹脂に添加することで、ハニカムセグメント21の外周側面への含浸量を調整して透過抵抗を制御することができる。
【0026】
ここで、捕集層24の厚さの測定方法について図4を用いて説明する。捕集層24の厚さ、換言すると捕集層を構成する粒子群の厚さは、以下のようにして求めるものとする。ここでは、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を樹脂埋めした後に研磨した観察用試料を用意し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い得られた画像を解析することによって捕集層の厚さを求める。まず、流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意する。次に、SEMの倍率を100倍〜500倍に設定し、後述する測定位置において、視野をおよそ500μm×500μmの範囲として用意した観察用試料の観察面を撮影する。次に、撮影した画像において、隔壁の最外輪郭線を仮想的に描画する。この隔壁の最外輪郭線とは、隔壁の輪郭を示す線であって、隔壁表面(照射面、図4上段参照)に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図4中段参照)。即ち、隔壁の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の隔壁上面の線分と、隣り合う高さの異なる隔壁上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この隔壁上面の線分は、例えば、100μmの長さの線分に対して5μmの長さ以下の凹凸については無視する「5%解像度」により描画するものとし、水平方向の線分が細かくなりすぎないようにするものとする。また、隔壁の最外輪郭線を描画する際には、捕集層の存在については無視するものとする。続いて、隔壁の最外輪郭線と同様に、捕集層を形成する粒子群の最外輪郭線を仮想的に描画する。この粒子群の最外輪郭線とは、捕集層の輪郭を示す線であって、捕集層表面(照射面、図4上段参照)に対して垂直の方向からこの捕集層表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(図4中段参照)。即ち、粒子群の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の粒子群上面の線分と、隣り合う高さの異なる粒子群上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この粒子群上面の線分は、例えば、上記隔壁と同じ「解像度」により描画するものとする。多孔性の高い捕集層では、樹脂埋めして研磨して観察用試料を作製すると、空中に浮いているように観察される粒子群もあることから、このように仮想平行光の照射による投影線を用いて最外輪郭線を描画するのである。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求める(図4下段参照)。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求める(図4下段参照)。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とする。このようにして、捕集層の厚さを求めることができる。
【0027】
また、捕集層の厚さの測定点を図5を用いて説明する。ハニカムフィルタ20のハニカムセグメント21において、最外周隔壁部22aの捕集層の厚さA(μm)は、ハニカムセグメント21の流路方向に対して上流側、中央側及び下流側で分割する。上流側では、上流側端面から流路方向のハニカムセグメント21の全長の10%の部位で輪切りにし、中央側では、上流側端面から流路方向のハニカムセグメント21の全長の50%の部位で輪切りにし、下流側では、下流側端面から流路方向のハニカムセグメント21の全長の10%の部位で輪切りにする。それぞれの断面について、最外周隔壁部22aによって形成される正方形の各辺の中央部4点について測定し、これら12点の厚さの平均値とする。また、内周領域隔壁部22bの捕集層の厚さB(μm)は、ハニカムセグメント21の流路方向に対して、上流側、中央側および下流側で分割した領域のそれぞれの断面について、ハニカムセグメント21の中心およびハニカムセグメント21の中心と最外周隔壁部22aの捕集層厚さ測定点とを結ぶ各線分の中央部4点との計5点について測定し、これら15点の厚さの平均値とする。このようにして、ハニカムセグメント21の最外周隔壁部22aの捕集層の厚さA(μm)および、内周領域隔壁部22bの捕集層の厚さB(μm)を求めることができる。
【0028】
また、捕集層24の平均細孔径及び気孔率は、SEM観察による画像解析によって求めるものとする。上述した捕集層の厚さと同様に、図4に示すように、ハニカムフィルタ20の断面をSEM撮影して画像を得る。次に、隔壁の最外輪郭線と粒子群の最外輪郭線との間に形成される領域を捕集層の占める領域(捕集層領域)とし、この捕集層領域のうち、粒子群の存在する領域を「粒子群領域」とすると共に、粒子群の存在しない領域を「捕集層の気孔領域」とする。そして、この捕集層領域の面積(捕集層面積)と、粒子群領域の面積(粒子群面積)とを求める。そして、粒子群面積を捕集層面積で除算し100を乗算することにより、得られた値を捕集層の気孔率とする。また、「捕集層の気孔領域」において、粒子群及び隔壁の最外輪郭線と粒子群の外周とに内接する内接円を直径が最大になるように描く処理を行う。このとき、例えばアスペクト比の大きい長方形の気孔領域など、1つの「捕集層の気孔領域」に複数の内接円を描くことができるときには、気孔領域が十分に埋められるように、できるだけ大きい内接円を複数描くものとする。そして、観察した画像範囲において、描いた内接円の直径の平均値を捕集層の平均細孔径とするものとする。このようにして、捕集層24の平均細孔径及び気孔率を求めることができる。
【0029】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、上述したものとしてもよく、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。接合層27は、気孔率が10体積%以上85体積%以下であることが好ましく、20体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この気孔率は、水銀圧入法、アルキメデス法、画像解析法のうちいずれか一種により測定した結果をいう。この接合層27は、その平均細孔径が10μm以上600μm以下の範囲であることが好ましい。この平均細孔径は水銀圧入法、画像解析法により測定した結果をいう。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0030】
ハニカムフィルタ20において、ハニカムセグメント21および接合層27の40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。このとき、ハニカムセグメント21の熱膨張係数に対する接合層27の熱膨張係数の差は、0.01×10-6/℃以上3×10-6/℃以下であることが好ましく、0.05×10-6/℃以上2×10-6/℃以下であることがより好ましい。熱膨張係数の差が0.01×10-6/℃以上であれば、ハニカムセグメント21と接合層27との間で、異常発熱時に熱膨張差などによって亀裂や剥離が生じることが考えられ、本発明の適用の意義が高いからである。また、3×10-6/℃以下であれば、ハニカムセグメント21と接合層27との熱膨張差が大きくなりすぎないと考えられるからである。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22や捕集層24は、触媒を含むものとしてもよい。この触媒は、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒及びNOXを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、PMを効率よく燃焼することや未燃焼ガスを効率よく酸化することやNOXを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOx吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNOXを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0032】
以上説明した実施形態のハニカムフィルタによれば、最外周の隔壁に形成されている捕集層の厚さが、内周領域の隔壁に形成されている捕集層の厚さの60%以下であり、最外周隔壁により多く堆積したPMが再生処理時に接合層の温度を高める役割を果たし、ハニカムセグメントと接合層との熱膨張差をより軽減することができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0035】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0036】
[ハニカムフィルタの作製]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得て、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、断面が35mm×35mm、長さが152.4mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させたあと、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。得られたハニカムセグメント焼成体の排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。この際に、セグメントの側面にエポキシ系樹脂(商品名「スペシフィックスエポキシ系樹脂」(ストルアス社製))、硬化剤(商品名「スペシフィックス−20 硬化剤」(ストルアス社製))をローラーによりコートすることで、セグメント最外周の隔壁の透過抵抗を大きくし、捕集層形成時に捕集層形成粒子が最外周の隔壁に堆積しにくいように調整した。具体的には、上記エポキシ系樹脂へ有機溶剤(エタノール)を添加することで隔壁への含浸量を調整して透過抵抗を制御し、上述のようにして求めたセグメント最外周の隔壁に形成された捕集層の厚さA(μm)と、それ内周領域の隔壁に形成された捕集層の厚さB(μm)とを、A/Bが所定の値となるように調整した。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、隔壁部上に捕集層を形成したハニカムセグメントを作製した。このようにして得られたハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とした。また、後述する実施例1〜7及び比較例1〜6の隔壁部の気孔率は40体積%であり、平均細孔径は15μmであり、捕集層を形成する粒子の平均粒径は2.0μmであった。この際、表1に示すように、セルピッチ1.47mm,接合剤の気孔率30%のもの(サンプル1)、セルピッチ1.80mm,接合剤の気孔率50%のもの(サンプル2)、セルピッチ2.01mm、接合剤の気孔率70%のもの(サンプル3)の3水準を作成した。なお、隔壁部,接合材の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。また、捕集層の原料粒子の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0037】
【表1】
【0038】
[触媒担持]
まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、上述のように作成したハニカムフィルタの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量が30g/Lとなるようにした。
【0039】
(実施例1〜3)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、B=50μm,A/B=0%を目標値として捕集層を形成したものを実施例1とした。また、B=50μm,A/B=30%を目標値として捕集層を形成したものを実施例2とした。また、B=50μm,A/B=60%を目標値として捕集層を形成したものを実施例3とした。
【0040】
(比較例1,2)
上述したハニカムフィルタの作成工程において、B=50μm,A/B=70%を目標値として捕集層を形成したものを比較例1とした。また、B=50μm,A/B=100%を目標値として捕集層を形成したものを比較例2とした。
【0041】
(実施例4,5)
上述したハニカムフィルタの作成工程において、B=70μm,A/B=0%を目標値として捕集層を形成したものを実施例4とした。また、B=70μm,A/B=60%を目標値として捕集層を形成したものを実施例5とした。
【0042】
(比較例3,4)
上述したハニカムフィルタの作成工程において、B=70μm,A/B=70%を目標値として捕集層を形成したものを比較例3とした。また、B=70μm,A/B=100%を目標値として捕集層を形成したものを比較例4とした。
【0043】
(実施例6,7)
上述したハニカムフィルタの作成工程において、B=30μm,A/B=0%を目標値として捕集層を形成したものを実施例6とした。また、B=30μm,A/B=60%を目標値として捕集層を形成したものを実施例7とした。
【0044】
(比較例5,6)
上述したハニカムフィルタの作成工程において、B=30μm,A/B=70%を目標値として捕集層を形成したものを比較例5とした。また、B=30μm,A/B=100%を目標値として捕集層を形成したものを比較例6とした。
【0045】
[捕集層厚さの測定]
実施例1〜7及び比較例1〜6の断面のSEM撮影を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製S−3200N)を用いて行い、最外周隔壁部上の捕集層の厚さA及び内周領域隔壁部上の捕集層の厚さBを測定した。まず、ハニカムセグメントの隔壁基材を樹脂埋めした後に流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意し、SEM観察を行い、得られた画像を解析することによって捕集層を形成する粒子群の厚さを求めた。最外周隔壁部の捕集層の厚さAの測定位置は、ハニカムセグメントの上流側端面から15mm、中央部、下流側端面から15mmの断面において、最外周隔壁部によって形成される正方形の各辺の中央部4箇所、合計12箇所とした(図5参照)。内周領域隔壁部の捕集層の厚さBの測定位置は、ハニカムセグメントの上流側端面から15mm、中央部、下流側端面から15mmの断面において、ハニカムフィルタの中心1箇所及びハニカムセグメントの中心と最外周隔壁部の捕集層厚さの測定箇所とを結ぶ各線分の中央部4箇所、合計15箇所とした(図5参照)。撮影した画像において、隔壁表面に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線を隔壁の最外輪郭線として仮想的に描画した。また、同様に、捕集層表面に対して垂直の方向からこの捕集層を形成する粒子群の表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線を粒子群の最外輪郭線として仮想的に描画した。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求めた。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求めた。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とした。求めた捕集層の厚さを平均してそれぞれ最外周隔壁部の捕集層厚さA及び内周領域隔壁部の捕集層厚さBを求めた。
【0046】
[PM堆積処理]
上記作製したハニカムフィルタを2.0Lディーゼルエンジンに搭載し、エンジン回転数2500rpm、トルク60Nmの定常状態にてPMを堆積させた。このとき、内周領域隔壁部へのPM堆積量が20g/L,30g/L,40g/Lとなるように堆積処理時間を調整した。堆積PM量の算出は、エンジン試験前後にハニカムフィルタの重量を測定し、試験後の重量から試験前の重量を引くことで行った。なお、上述したPM堆積量は、通常使用される際の再生限界値に比べて大きい、いわゆる過堆積の状態を再現するものである。
【0047】
[強制再生評価]
上述のようにPMを堆積させたあと、ポストインジェクションによりハニカムフィルタの入口ガス温度を680℃まで上昇させ、ハニカムフィルタに堆積しているPMが燃焼しはじめ、ハニカムフィルタの圧力損失が下がり始めたところでポストインジェクションを停止すると同時にエンジン状態をアイドル状態に切り替えた。その際、高い酸素濃度と低流量によりハニカムフィルタ内部で残存PMの異常燃焼が起こり、ハニカムフィルタ内部温度は急上昇する。この場合、ハニカムセグメントにおいても中央部分が最も早く燃焼するため、セグメント中央部分と接合部近傍との温度差により熱膨張差が生じるなどして、セグメントと接合層との界面にて熱膨張差による応力が発生し、セグメントの剥離が発生することがある。本実施例では、PMの過堆積と強制再生時の異常燃焼とが同時に発生するような異常状態においてセグメントの剥離の有無を目視によって観察して強制再生評価を行った。
【0048】
[実験結果]
実施例1〜7及び比較例1〜6についての測定結果等を表2に示した。なお、各結果は、上述した表1に示す3水準のサンプルについての平均値である。PM堆積量を20g/L,30g/Lとしたものでは、実施例1〜7及び比較例1〜6のいずれにおいてもセグメントの剥離は生じなかった。このことから、特にPM堆積量が大過剰でなければ、セグメントの剥離は生じないことが分かった。また、PM堆積量を40g/Lとしたものでは、A/Bが60%以下の実施例1〜7ではセグメントの剥離は生じなかった。以上のことから、A/Bが60%以下となるように捕集層を形成することでセグメントと接合層との間の熱膨張差をより軽減することができ、特にPM堆積量が過剰である場合であってもセグメントの剥離を抑制可能であることが分かった。この傾向は上述した表1に示す3水準のサンプルいずれにおいても同じ傾向を示した。なお、実施例及び比較例では、全てのセグメントについてA/Bが所定の値となるように作成したが、一部にこの要件を満たさないものがあっても、全体としては剥離等が生じにくく、同様の効果が得られるものと推察された。
【0049】
【表2】
【0050】
本出願は、2010年3月31日に出願された日本国特許出願第2010−81898号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、自動車用エンジン、建設機械用及び産業用の定置エンジン並びに燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するためのフィルターとして好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5