(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不飽和ポリマーが、共役ジエンD、ニトリル基を含有する共重合可能なモノマーA、および任意のさらなる共重合可能なモノマーCから構成される、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ジエン系不飽和ポリマー、例えばアクリロニトリルとブタジエンの重合から製造されるNBRとしても知られているニトリルブタジエンゴムは、当分野においてよく知られている。アクリロニトリルとブタジエンを共重合するための方法は、例えば米国特許第3690349号および米国特許第5770660号に記載されている。製造条件に応じて、このようなポリマーは、水性媒体中のラテックスとして得ることができる。NBRなどの不飽和ジエン系ポリマーは、産業においてさまざまな目的で使用され、さらに、このような不飽和ポリマーを水素化するための方法は、当分野においてよく知られている。
【0003】
ジエン系ポリマー中の炭素-炭素二重結合は、ポリマーを触媒の存在下で水素と有機溶液中で処理することによって、選択的に水素化されて、十分に改善された最終用途の特性を有する飽和ポリマーを生成することが知られている。このような方法は、水素化される二重結合に選択的であり、例えば芳香族基またはナフテン基中の二重結合は水素化されず、炭素と窒素もしくは酸素などの他の原子との間の二重結合または三重結合は影響を受けない。この分野には、このような水素化に好適な触媒の多くの例が含まれ、これにはコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびイリジウムに基づく触媒が含まれる。触媒の適性は、必要とされる水素化の程度、水素化反応の速度、ならびにポリマー中のカルボキシル基およびニトリル基などの他の基の存在または不存在に依存する。
【0004】
ジエン系ポリマーの水素化は、有機金属触媒またはいくつかの特別な金属塩触媒および高圧ガス状水素を使用する場合に、非常に成功してきた。このような成功は、溶液水素化、バルク水素化、および直接的なラテックスの水素化で実現されてきた。ジエン系ポリマーの溶液水素化では、ポリマーは最初に有機溶媒中に溶解され、その後水素化が行われ、水素化後に後処理を適用して有機溶媒をリサイクルし、金属触媒を回収する。この分野において、すでに多くの特許および特許出願がされており、例えば米国特許第6410657号、米国特許第6020439号、米国特許第5705571号、米国特許第5057581号、および米国特許第3454644号である。
【0005】
直接的なラテックスの水素化において、触媒は、水素化操作のために直接ジエン系ポリマーのラテックス中に加えられる。多くのジエン系ポリマー、コポリマーまたはターポリマーがエマルション重合法によって製造され、これらは重合反応器から排出されたときにラテックス形態である。したがって、ここ十年間で注目を集めているラテックス形態のジエン系ポリマーを直接水素化することが非常に望ましい。多くの取り組みがこのような方法を実現するために行われている。米国特許第7385010号には、有機金属触媒および高圧ガス状水素を使用することによる、ジエン系ポリマーラテックスを直接水素化する方法が開示されている。
【0006】
バルク水素化において、触媒はジエン系ポリマーと直接混合されるか、または触媒はポリマー中に取り込まれ、その後水素化が適用される。米国特許第7345115号は、有機金属触媒および高圧ガス状水素を使用して、バルク状のジエン系ポリマーを100℃を超える温度で水素化する方法を教示し、このポリマーは粒子としての触媒と直接混合される。
【0007】
上記の方法の大きな特徴は、これらは全て貴金属が含まれる触媒を含み、これらは全て高圧水素を必要とし、かつ、これらは比較的長い反応時間を必要とすることである。
【0008】
貴金属を使用することを避け、高圧下で操作することを避けるために、酸素、空気または過酸化水素などの酸化剤と一緒に還元剤としてヒドラジンまたはヒドラジンの誘導体を使用する、C=C結合の水素化に大きな注目が払われている。C=C結合を飽和するための水素源は、ジイミドが中間体として形成されるレドックス反応の結果として、その後in-situで生成する。米国特許第4452950号において、ラテックスの水素化は、ヒドラジン水和物/過酸化水素(または酸素)のレドックス系を使用して行われ、in situでジイミドを生成する。CuSO
4またはFeSO
4が触媒として使用される。米国特許第5039737号および米国特許第5442009号は、より改良されたラテックスの水素化方法を提供し、これは、水素化ラテックスをオゾンで処理して、ジイミドの方法を使用するラテックスの水素化中または水素化後に形成する架橋ポリマー鎖を破壊する。米国特許第6552132号には、化合物をラテックスの水素化前、水素化中、または水素化後に加えて、ジイミドの水素化経路を使用する水素化中に形成する架橋を破壊することができることが開示されている。この化合物は、第一級または第二級アミン、ヒドロキシルアミン、イミン、アジン、ヒドラゾン、およびオキシムから選択することができる。米国特許第6635718号には、触媒として少なくとも4の酸化状態の金属原子(例えばTi(IV)、V(V)、Mo(VI)、およびW(VI))を含有する金属化合物の存在下でヒドラジンおよび酸化性化合物を使用することによって、水性分散体の形態の不飽和ポリマーのC=C結合を水素化するための方法が記載されている。Applied Catalysis A: General 276 (2004) 123〜128およびJournal of Applied Polymer Science Vol.96、(2005) 1122〜1125において、ジイミドの水素化経路を利用するニトリルブタジエンゴムラテックスの水素化に関する詳細な調査が提供されており、これは水素化効率および水素化度を試験することに及んでいる。
【0009】
ラテックス粒子の中間相において、およびポリマー相中で副反応が存在することが分かり、これはラジカルを発生してラテックス形態のポリマーの架橋を開始する。ラジカル捕捉剤を使用することによっては、ゲル形成の程度を抑制することの助けとなる証拠は示さなかった。架橋を低減するために開発された方法は存在するが、特に高い水素転換が達成される場合、それでも前述のジイミドの経路はゲル形成の問題に直面している。したがって、得られた水素化ゴム物質は、その巨視的な3次元架橋構造により、加工することが難しく、さらなる使用に適していない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I) 本発明による、水素化されるジエン系不飽和ポリマー粒子の調製
【0018】
ジエン系不飽和ポリマー粒子は、
a) 少なくとも1つのジエンD、および任意の少なくとも1つの共重合可能なモノマーAを重合する工程であって、
b) 水性媒体、好ましくは水中で、
c) 界面活性剤、好ましくはアルキルサルフェート、特にはジェミニ(Gemini)界面活性剤の存在下で
重合する工程であって、ここで、
d) ジエンDおよび任意の少なくとも1つの共重合可能なモノマーAは、好ましくはゆっくりとした定常的な供給速度で、水性媒体、重合開始剤および界面活性剤を含む反応器に連続的に入れられる工程
を含む方法によって、ラテックスとして調製されてもよい。
【0019】
好ましい一実施形態において、ジエンDおよび任意のモノマーAは、連続的にかつゆっくりと加えられる。加える時間の長さは反応条件に依存し、原則としてモノマーDとAは水相中の液滴中に蓄積され、通常は少なくとも10分である。さらなる好ましい実施形態において、反応器中の水相中の、1質量%未満(水の量に基づく)、好ましくは0.1質量%未満(水の量に基づく)の量の未反応のジエンDと任意のモノマーAが維持される。
【0020】
さらなる好ましい実施形態において、少量のレドックス重合開始剤が使用され、これはモノマーの全量に基づいて、0.05質量%から5質量%、好ましくは0.1質量%から1質量%の範囲である。用語「ジエンDおよび任意の少なくとも1つの共重合可能なモノマーAを連続的に反応器に入れる」は、全てまたはほとんど全ての量の反応物を、反応の非常に初期において、反応器に一緒に入れないことを意味する。この用語は、本質的に同じ供給速度および濃度で反応物を供給することを含み、このような速度が増加することおよび減少することを含む。さらに、この用語は反応中に少量の反応物を加えることを含む。
【0021】
この方法は、60nm未満のd
90直径を有するナノサイズの粒子を製造するために有用である。
【0022】
ジエン系ラテックス粒子は、少なくとも1つのジエンモノマー、好ましくは少なくとも1つの共役モノマーDに基づく。ジエンDは、任意の性質であり得る。一実施形態において、(C
4〜C
6)共役ジエンが使用される。好ましくは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1-メチルブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、またはこれらの混合物である。特に好ましくは、1,3-ブタジエンおよびイソプレンまたはこれらの混合物である。特別に好ましくは、1,3-ブタジエンである。
【0023】
好適な共重合可能なモノマーAには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、アルファメチルスチレン、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ならびにフマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される不飽和カルボン酸が含まれる。
【0024】
共役ジエンDは、約15から約100質量%の炭素-炭素二重結合を含むラテックス形態のポリマーを形成する。共重合可能なモノマーAが使用され、スチレンおよびアルファメチルスチレンから選択される場合、スチレンおよび/またはメチルスチレンモノマーは、好ましくは、ポリマーの約15から約60質量%を形成する。他の共重合可能なモノマーAが使用され、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択される場合、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルモノマーは、好ましくはポリマーの約15から約50質量%を形成し、共役ジオレフィンはポリマーの約50から約85質量%を形成する。
【0025】
他の共重合可能なモノマーAが使用され、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、ならびにさらに不飽和カルボン酸から選択される場合、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルはポリマーの約15から約50質量%を形成し、不飽和カルボン酸はポリマーの約1から約10質量%を形成し、共役ジオレフィンはポリマーの約40から約85質量%を形成する。
【0026】
好ましい製品には、ランダムまたはブロックタイプのスチレン-ブタジエンポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルポリマー、およびブタジエン-アクリロニトリル-メタクリル酸ポリマーが含まれる。好ましいブタジエン-アクリロニトリルポリマーは、約25から約45質量%のアクリロニトリル含有量を有する。
【0027】
使用される特に好適なコポリマーはニトリルゴムであり、これはα,β-不飽和ニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルと、共役ジエン、特に好ましくは1,3-ブタジエンと、任意の1つ以上のさらなる共重合可能なモノマー、例えばα,β-不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、これらのエステルまたはアミドとのコポリマーである。
【0028】
このようなニトリルゴム中のα,β-不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸として、好ましくは、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0029】
このようなニトリルゴム中のα,β-不飽和カルボン酸のエステルとして、好ましくは、これらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用するものである。特に好ましいα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、およびオクチルアクリレートである。特に好ましいα,β-不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、およびメトキシエチル(メタ)アクリレートである。アルキルエステル、例えば上で挙げたものと、アルコキシアルキルエステル、例えば上で挙げた形態のものとの混合物を使用することもできる。
【0030】
好ましいターポリマーは、アクリロニトリルと、1,3-ブタジエンと、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、n-ブチルアクリレート、およびtert-ブチルアクリレートからなる群から選択される第三のモノマーとのターポリマーである。
【0031】
ポリマーの合成は、ラテックス形態で行うことができる。このポリマーは、ラテックス中のナノ粒子である。
【0032】
合成方法は、化学的なレドックス開始剤、例えば過硫酸アンモニウム(APS)の使用により達成することができる。さらなる重合開始剤には、過硫酸カリウム、ジアルキルペルオキシド、またはアゾ化合物などの熱開始剤、ならびに場合によってコール酸塩および好適な還元剤と組み合わされてもよいレドックス開始剤、例えばジイソプロピルベンジン、p-メンタンおよびピナンヒドロペルオキシドなどのアルキルヒドロペルオキシドが含まれる。
【0033】
開始剤は、少量で使用することができる。全モノマーに対するAPSの量は、モノマーの全量に基づいて、0.05質量%から5質量%、好ましくは0.1質量%〜1質量%の範囲である。
【0034】
合成方法は、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびジェミニ16-3-16などの界面活性剤と一緒に行われる。界面活性剤の量は、使用される全モノマー量に基づいて、約0.1質量%から約15質量%、好ましくは0.1から1質量%であり得る。
【0035】
好ましい実施形態において、水がモノマーのための媒体として使用される。水の量は、使用されるモノマーの量に基づいて、約2倍から約30倍、好ましくは5倍から10倍である。
【0036】
合成方法は、温度調整およびモノマー供給および攪拌手段を備えた好適な反応器中で行うことができる。
【0037】
一般的に、本発明に好適な反応温度は、約0℃から約100℃、好ましくは約15℃から約70℃である。
【0038】
好ましい実施形態によると、反応の過程において、反応時間は、操作条件に応じて、約0.25時間から約100時間、好ましくは約1時間から20時間である。
【0039】
好ましい実施形態によると、反応の過程において、モノマー供給時間は、操作条件に応じて、約0.25時間から約50時間、好ましくは約1時間から10時間である。
【0040】
好ましい実施形態によると、反応の過程において、モノマー供給が終了した後の攪拌時間は、操作条件に応じて、約15分間から約50時間、好ましくは約1時間から10時間である。
【0041】
好ましい実施形態によると、反応が終了した場合、所望の程度まで反応容器を冷却することができ(該当する場合)、ポリマーラテックスが得られる。
【0042】
II) 水素化
II.1 触媒
触媒の金属原子は、遷移金属、好ましくは貴金属である。好ましい一実施形態において、触媒は、RuおよびOsを含む原子番号44から76のVIII-B金属、特にはRhである。
【0043】
さらなる好ましい実施形態において、触媒は、少なくとも1つの有機配位子と遷移金属とを含む有機金属触媒である。
【0044】
水素化のために好ましい有機金属触媒は、以下の化合物を含む:
【0045】
Cat 1
米国特許第3454644号から知られている式L
nMX
2の化合物であって、ここで、Lは錯化配位子であり、nは3から4を含む全体数であり、Mは原子番号44から76、つまりルテニウムからオスミウムを含むVIII-A族金属であり、Xはハロゲンである。好ましい配位子Lは、オレフィン、フェノール類、チオフェノール類であり、より好ましくはカルボニル配位子または第三級ホスフィン配位子である。
【0046】
さらに好ましい実施形態において、米国特許第5057581号から知られている式RuXY(CO)ZL
2またはRuX(NO)(CO)L
2の二価のルテニウム触媒が好ましく、ここで、Xはハロゲン原子またはカルボキシレート基であり、Yはハロゲン原子、水素原子、フェニル基、カルボキシレート基、またはフェニルビニル基であり、ZはCO、ピリジン、ベンゾニトリル、亜リン酸トリメチルであり、Lは少なくとも1つのバルク状アルキル置換基を有するホスフィン配位子である。
【0047】
Cat 2
さらに好ましい実施形態において、有機金属触媒は、少なくとも1つの触媒(A)と少なくとも1つの触媒(B)とを含む、米国特許第5705571号から知られている触媒の組合せであり、ここで、触媒(A)は置換されていない、または置換されたビス(シクロペンタジエニル)VIII族の遷移金属化合物であり、これは以下の式によって表され:
(C
5R
nR’
5-n)(C
5R
mR’’
5-m)M
ここで、
R、R’、およびR’’は、同じまたは異なっており、水素、C
1〜C
8アルキル基およびアルコキシ基、C
6〜C
8アリール基およびアリールオキシ基、C
6〜C
8シクロアルキル基およびシクロアルコキシ基、C
1〜C
5ヒドロキシアルキル基、アルデヒド基、カルボキシル基、シリル基からなる群から選択される。
【0048】
mおよびnは、独立に、0から5である。
【0049】
C
5R
nR’
5-nおよびC
5R
mR’’
5-mは、同じまたは異なっている、置換されていない、または置換されたシクロペンタジエニル基である。
【0050】
Mは、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金、およびイリジウムからなる群から選択されるVIII族の遷移金属である。
【0051】
ここで、触媒(B)は、少なくとも1つのリチウム原子を有する有機リチウム化合物であるか、または水素化リチウムであり、
ここで、有機リチウム化合物は、R’’’LiおよびR’’’Li
2からなる群から選択され、
ここで、R’’’は、C
1〜C
30の炭化水素部分またはポリマー部分であり、
ここで、M原子に対するリチウム原子のモル比は、0.1から100である。
【0052】
Cat 3
さらなる好ましい実施形態において、有機金属触媒は、主触媒として以下の一般式I:
【化1】
(ここで、R
1、R
2およびR
3は、同じまたは異なっていてもよく、独立に、ハロゲン基、C
1〜C
8アルキル基、C
1〜C
8アルコキシ基、C
6〜C
20アリールオキシ基、C
6〜C
20シクロアルキル基、シリル基、およびカルボニル基からなる群から選択される)、
によって表されるモノシクロペンタジエニルチタン化合物、
ならびに、
共触媒として以下の一般式II:
R
4O-Li (II)
によって表されるアルコキシリチウム化合物、
(ここで、R
4は置換基である)
を含む触媒である。
【0053】
Cat 4
特に好ましい実施形態において、本発明の水素化方法は、ロジウムを含有する触媒の使用により達成することができる。好ましくは、触媒は、以下の式のものである:
RhQL
x
ここで、Qは水素またはアニオン、好ましくはハライド、より好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンであり、
Lは式R
mBの配位子化合物であり、
RはC
1〜C
8アルキル基、C
4〜C
8シクロアルキル基、C
6〜C
15アリール基、またはC
7〜C
15アラルキル基であり、
Bはリン、砒素、硫黄、またはスルホキシド基であり、
mは2または3であり、好ましくは、Bが硫黄またはスルホキシドである場合、mは2であり、Bがリンまたは砒素である場合、mは3であり、
xは2、3または4であり、好ましくは、Qがハロゲンである場合、xは3であり、Qが水素である場合、xは4である。
【0054】
好ましい触媒には、トリス-(トリフェニルホスフィン)-ロジウム(I)-クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)-ロジウム(III)-クロリドおよびトリス-(ジメチルスルホキシド)-ロジウム(III)-クロリド、ならびにテトラキス-(トリフェニルホスフィン)-ロジウムヒドリド、ならびにトリフェニルホスフィン部分がトリシクロヘキシルホスフィン部分で置換された対応する化合物が含まれる。触媒は、少量で使用することができる。ラテックスのポリマー固形分含有量の質量に基づいて、0.01から5.0質量%、好ましくは0.02質量%から2.0質量%の範囲の量である。
【0055】
触媒は、式:
R
mB
(ここで、R、mおよびBは上で定義したとおりであり、mは好ましくは3である)
の配位子である共触媒と一緒に使用することができる。
【0056】
好ましくは、Bはリンであり、R基は同じまたは異なっていることができる。したがって、トリアリール、トリアルキル、トリシクロアルキル、ジアリールモノアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノシクロアルキル、ジシクロアルキルモノアリール、またはジシクロアルキルモノアリール共触媒を使用することができる。好適な共触媒配位子の例は、米国特許第4631315号で与えられ、その開示は参照によって援用される。好ましい共触媒配位子は、トリフェニルホスフィンである。共触媒配位子は、好ましくは、触媒の質量に基づいて、0から5000質量%、より好ましくは500から3000質量%の量で使用される。好ましくは、ロジウム含有触媒化合物に対する共触媒の質量比は、0から50の範囲、より好ましくは5から30の範囲である。
【0057】
II.2 水素化方法
本発明の水素化方法は、好ましくは、約0.1から約20MPaの圧力、好ましくは約1から約16MPaの圧力で、本質的に純粋な水素ガスで行われる。
【0058】
本発明の水素化方法は、温度調整および攪拌手段を備えた好適な反応器中で行うことができる。本発明によると、ポリマーラテックスを反応器に供給し、必要に応じて脱気することができ、その後触媒を純粋な材料として加えることができ、または、いくつかの場合には少量の有機溶媒を有する溶液として加えることができ、その後反応器は水素で圧力をかけられるか、代わりには、反応器は水素で圧力をかけられ、触媒を純粋な材料または溶液として加えることができる。または、本発明によると、触媒を反応器に純粋な材料として加えることができ、その後ポリマーラテックスを反応器中に供給し、必要に応じて脱気することができる。
【0059】
一般的に、本発明によると、反応装置およびポリマーラテックスを加熱した後、触媒を加えることが好ましい。本発明に好適な水素化温度は、約35℃から約180℃、好ましくは約80℃から約160℃である。
【0060】
本発明の水素化反応の過程において、水素を反応器に加えてもよい。反応時間は、操作条件に応じて、約15分間から約100時間である。ポリマー中の炭素-炭素二重結合が水素化される程度は、約80から約99.5%、好ましくは約90から約99.5%である。
【0061】
水素化反応が所望の程度まで終了したとき、反応容器を冷却し、ベントすることができる。得られた水素化ラテックスは、所望の場合、ラテックスの形態で使用することができ、または凝固され洗浄されて、固体形態の水素化ポリマーを得ることができる。
【0062】
好ましい実施形態において、得られたラテックスは、当分野において知られている添加剤、例えば抗酸化剤と混合されてもよく、凝集を避けるために十分に攪拌されながら凝固および洗浄容器に移されてもよい。続けて、生成物は最終的な脱水装置に供給され、ペレット化され、分割剤でコートされ、好適な乾燥機に移されてもよい。
【0063】
本発明によるナノサイズの水素化ジエン系ポリマーは、一般的に、ゴムとして、より大きい粒子径を有する、知られているラテックス粒子と同じ技術的用途に使用することができるが、特に熱、酸素、およびオゾンによる分解に対する耐性の点で改善された特性を示す。本発明は以下の実施例によってさらに例示されるが、限定されることを意図せず、他で特定されない限り、全ての部および割合は質量による。
【実施例】
【0064】
反応および分析に使用した材料を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
以下の実施低は、本発明の範囲を例示するものであり、これを限定することを意図しない。
【0067】
(実施例1)
NBRの調製:
0.2gのAPS、2gのジェミニ16-3-16、および80mLの水を、羽根攪拌機(impeller stirrer)、添加チューブ、および熱電対を備えた300mLのステンレス鋼の高圧反応器(Parr Instruments)に入れた。温度を70℃に上げた後、2.5mlのアクリロニトリルと7.5mlのブタジエンとの混合物を、少量ごとに60分間にわたって加えた。モノマー混合物を加えた後、さらに20分間適用した後、冷却して反応を停止した。
【0068】
水素化操作:
温度制御手段、攪拌機、および水素ガス添加点を有する、300mlのガラスで内張りされたステンレス鋼のオートクレーブを使用した。上のとおりに合成されたブタジエン-アクリロニトリルポリマーのラテックスを使用した。ラテックス中の固形分含有量は、13質量%であった。ラテックス中のポリマー粒子の平均直径は、約26nmであった。100mlのこのようなラテックス、0.13gの触媒RhCl(PPh
3)
3、および1.3gのPPh
3を反応器に入れた。攪拌速度は600rpmとした。その後、ラテックスを水素で脱気した。温度を160℃まで上げ、水素の圧力を1000psi(6.8MPa)まで上げた。反応時間は0.25時間とした。水素化度は43.2%であった。
【0069】
結果は、このようにナノサイズのジエン系ポリマー粒子のラテックスを合成した場合、水素化速度を十分に加速することができることを示す。
【0070】
(実施例2)
水素化反応時間を0.38時間とした以外は、実施例1に記載したものと同じ手順および反応条件を用いた。81.9%の水素化度を得た。
【0071】
(実施例3)
水素化反応時間を1時間とした以外は、実施例1に記載したものと同じ手順および反応条件を用いた。91%の水素化度を達成した。
【0072】
結果は、1時間以内に水素化度が90%超に達することを示した。
【0073】
本発明は例示の目的で詳細に記載されたが、このような詳細はその目的のためのみであり、特許請求の範囲によって限定される場合を除いて、本発明の精神および範囲から離れることなく、当業者によって変更され得ることが理解される。