特許第5714595号(P5714595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 好川産業株式会社の特許一覧

特許5714595刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維および製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714595
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/00 20060101AFI20150416BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A46D1/00 101
   D01F6/92 307A
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-535602(P2012-535602)
(86)(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公表番号】特表2013-509211(P2013-509211A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】CN2010075357
(87)【国際公開番号】WO2011050635
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】200910233420.3
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598109752
【氏名又は名称】好川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ハイボー
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−527198(JP,A)
【文献】 特開2002−161423(JP,A)
【文献】 特開2003−245133(JP,A)
【文献】 実開昭61−022578(JP,U)
【文献】 特開2005−334432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46D 1/00
D01F 6/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維の製造方法であって、前記ポリエステル単繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を合わせて作られ、長さの方向に沿って自然な湾曲があり、下記A〜Cの練り出し成形−引き伸ばし−熱定型工程を含むことを特徴とする。
A.練り出し成形工程:ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を重量比1:0.10−0.25で混合し、100−170℃の乾燥器に入れて、3−5時間乾燥させ、乾燥した原料を練り出し機械にいれて220−300℃で溶解させ練り出し、10−40℃の水槽にて冷却し単繊維の束を成形する。
B.引き伸ばし工程:50−70℃の水槽にて毎分10−60mの速さで1回目の引き伸ばしをする。さらに、毎分10−180mの速さで2回目の引き伸ばしをする。引き伸ばし比率が、1.5−3.0に達すると、単繊維の束には、規則性の無い、湾曲点、湾曲の幅、ねじれ方向が随意に現れる。
引き伸ばし工程は、通常の引き伸ばし比率より小さな比率で実施する。
C.熱定型工程:引き伸ばした後の単繊維の束を140−170℃の乾燥器に入れて1.5−3.0時間で熱定型して、偽獣毛ポリエステル単繊維を作る。
【請求項2】
請求項1に述べた偽獣毛ポリエステル単繊維を用いた刷毛であって、束にした前記偽獣毛ポリエステル単繊維を使用し、柄を組み合わせて偽獣毛ポリエステル単繊維の刷毛を形成する
ことを特徴とする偽獣毛ポリエステル単繊維を用いた刷毛。
【請求項3】
請求項1に述べた刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維であって、前記偽獣毛ポリエステル単繊維の長さの方向に沿って、湾曲点、湾曲の幅、ねじれ方向がいずれも随意に現れ、規則性がない
ことを特徴とする請求項1に記載の刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成糸およびその使用領域に属し、特に刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維およびその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
現行の刷毛に用いる原料の毛は天然の獣毛あるいは人工合成のポリエステル、ナイロン単繊維である。天然の獣毛は自然に湾曲した外観と柔らかい特性を持ち、それらで作った刷毛の使用時の塗料の含み量(刷毛使用時の吸粘性指標)は高い。しかし、その毛の直径、長さ、総合的品質の一致性は人工合成繊維とは匹敵しがたい。社会の進歩に伴い刷毛製造の毛の需要はますます増え、また同時に国家の草原に対する保護、家畜の放し飼いから囲い込み飼育への変更で刷毛に使用可能な動物の毛の供給が減少している。また獣毛の大量使用は、動物と人の共存共栄、生態環境保護の理念を脅かす。一般的な人工合成繊維は直線であり、欠点は製品の塗料の含み量が少ない事である。また人工的に機械で圧力をかけて巻き取った人工合成繊維はその形状が規則的な波形になり、刷毛の原料としての使用は難しい。このような点から、刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維、およびその製造方法を研究することは必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、現行の技術の不足部分を克服し、刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維およびその製造方法を講じる事である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は以下の技術的方法で以って実現する。刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維は、その特徴としてポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を合わせて作るものである。長さの方向に沿って、自然な湾曲があり、そのポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の配合重量比率は、1:0.05―0.35である。
この偽獣毛ポリエステル単繊維は、束にしてそれと柄を合わせて偽獣毛ポリエステル単繊維の刷毛を形成することを特徴とする。この偽獣毛ポリエステル単繊維は、長さの方向に沿って自然な湾曲があり、その湾曲の湾曲点、湾曲の幅、ねじれ方向は、随意に現れるものであり、その湾曲の規則性の無い点が明らかである。
上記のポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)のもっとも優れた配合重量比率は、1:0.10―0.25である。
【0005】
刷毛に用いる偽獣毛ポリエステル単繊維の製造方法は、圧力をかけて成形−引き伸ばし−熱定型することを特徴とする。
A.練り出し成形工程:ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を配合重量比率1:0.05―0.35で混合し、100―170℃の乾燥器に入れ、3―5時間乾燥させる。乾燥後の原料は、練り出し機械に入れて、220―300℃で溶解させ、練り出しし、10―40℃の水槽の中に入れて冷却し単繊維の束に成形する。
B.引き伸ばし工程:50−70℃の水槽の中で、毎分10−60mの速さで、1回目の引き伸ばしをする。さらに毎分10−180mの速さで2回目の引き伸ばしをする。引き伸ばし比率が1―3.5になったとき、それを束にすると、その繊維には、規則性の無い、湾曲、湾曲点、ねじれ方向が現れ、それらの点は随意に現れ、獣毛の形状に非常に似ている。引き伸ばし工程では通常の一般的引き伸ばし比率より小さな比率でする。
C.熱定型工程:引き伸ばして束にした毛を140−170℃の乾燥器にいれて1.5−3時間で熱定型して、偽獣毛ポリエステル単繊維をつくる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)のもっとも優れた配合比率は1:0.10−0.25である。
引き伸ばし工程の実施においてもっとも優れた引き伸ばし比率は、1.5−3.0である。
束にした偽獣毛ポリエステル単繊維に人工的に毛先加工をして、一定の長さでカットし、柄と組み合わせて偽獣毛ポリエステル単繊維の刷毛を形成する。
【0006】
本発明の目的はさらに一歩進めた下記の方法で実現する。
偽獣毛ポリエステル単繊維の製造方法の中で、実施した通常の引き伸ばし工程より小さな比率とは、通常の引き伸ばし比率は、4.0以上である。この発明で行う引き伸ばし工程での引き伸ばし比率は、1−3.5であり、最も優れた引き伸ばし比率は1.5−3.0である。
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の混合比率は、1:0.05−0.35であり、最も優れた混合比率は、1:0.10−0.25である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施で得られる偽獣毛ポリエステル単繊維を使った刷毛で、試験を行った結果、下記のような有益な効果が現れた。
1.自然な湾曲の外観とやわらかい特性を持ち、天然の獣毛で形成した刷毛と類似し、使用時の塗料の含み量は、変わらない。直径、長さ、総合的品質の一致性が高く、これにより天然の獣毛で形成した刷毛に比べてその寿命は長く、生産コストは50%以上下がる。
2.通常の人工合成で表面が丸く、長さ方向で直線であるポリエステル単繊維で形成した刷毛と比べて、その湾曲点、湾曲の幅、ねじれの方向は随意に現れ、規則性の無い点が現れる。このため、ふんわりとしていて、同重量の偽獣毛ポリエステル単繊維の占める容積が大きくなる。一方では、同じサイズの刷毛の生産に使用する毛の量は、通常の直線のポリエステル繊維の3分の1になり、他方では、同じサイズの刷毛を使用したときの塗料の含み量は、3分の1増える。これにより、簡便に使用できるだけでなく、作業効率を高められる。
3.天然の獣毛の代替品を開発することは、生態環境保護の新しい道である。日々、減少している天然の獣毛の代替になり、ますます需要が増える毛の需要量をまかなうことで、必ずや大きな商業上の成功を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的な実施方法:
実施例をあげて、その本発明の詳細を説明する。
実施例1
一:練り出し成形工程:ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を重量比1:0.1で混合し、100−170℃の乾燥器で、3−5時間乾燥させる。乾燥した原料を練り出し機械にいれて、220−300℃の温度で溶解させ練り出し、10−40℃の水槽の中で冷却し、0.1−0.45mm直径の糸にして束にする。
二:引き伸ばし工程:50−70℃の水槽で毎分10−60mの速さで1回目の引き伸ばしを行う。
さらに、毎分10−180mの速さで2回目の引き伸ばしをする。引き伸ばし比率が3.0に達すると単繊維の束には規則性のない湾曲点、湾曲の幅、ねじれ方向が随意にあらわれ、獣毛にきわめて類似した形状になる。引き伸ばし後の単繊維の束の毛の直径は0.03−0.45mmである。
三:熱定型工程:引き伸ばした単繊維の束を140−170℃の乾燥器に入れ、1.5−3.0時間で熱定型させる。
【0009】
実施例2:
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の配合比率を重量比1:0.15とし、2回の引き伸ばし工程を行い、引き伸ばし比率を2.5とする。その他の工程は、実施例1と同じ。
【0010】
実施例3:
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の配合比率を重量比1:0.25とし、2回の引き伸ばし工程を行い、引き伸ばし比率を1.5とする。その他の工程は、実施例1と同じ。
【0011】
実施例4:
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の配合比率を重量比1:0.30とし、2回の引き伸ばし工程を行い、引き伸ばし比率を1.0とする。その他の工程は、実施例1と同じ。
【0012】
実施例5:
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の配合比率を重量比1:0.05とし、2回の引き伸ばし工程を行い、引き伸ばし比率を3.5とする。その他の工程は、実施例1と同じ。