特許第5714597号(P5714597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5714597
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】歯科用コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20150416BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20150416BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61B6/14 310
   A61B6/14 301
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 300X
   A61B6/03 331
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-540467(P2012-540467)
(86)(22)【出願日】2010年11月23日
(65)【公表番号】特表2013-512021(P2013-512021A)
(43)【公表日】2013年4月11日
(86)【国際出願番号】FI2010050951
(87)【国際公開番号】WO2011064449
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】20090444
(32)【優先日】2009年11月25日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591036309
【氏名又は名称】プランメカ オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ティモ
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−532666(JP,A)
【文献】 特開2008−114056(JP,A)
【文献】 特開2002−058665(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用コンピュータ断層撮影装置であって、
− 実質的に垂直な第1の回転軸(21)を中心にアクチュエータ(31,32,33)の動作によって回転可能に配置されている第1のアーム部(11)であって、前記回転軸(21)の両側に、放射線源(14)および画像情報の受信器(15)が互いに隔てて配置されている、前記第1のアーム部(11)と、
− 実質的に垂直な回転軸(22)を中心に回転可能に配置されている第2のアーム部(12)であって、前記第1のアーム部(11)を支持するようにされている、前記第2のアーム部(12)と、
− 前記アーム部(11,12)、前記放射線源(14)、および前記画像情報の受信器(15)を駆動する1つまたは複数のアクチュエータ(31,32,33)、を制御する制御システムであって、第1の制御ルーチンを備えており、前記第1の制御ルーチンが、撮影工程中、前記第1のアーム部(11)が前記実質的に垂直な回転軸(21)を中心に回転するように、前記少なくとも1つのアクチュエータ(31,32,33)を制御する、前記制御システムと、
を含んでいる、コンピュータ断層撮影装置において、
− 前記制御システムが第2の制御ルーチンを備えており、前記第2の制御ルーチンが、撮影工程中、前記第1のアーム部(11)が回転せず、前記第2のアーム部(12)に対して動かないままであり、前記第2のアーム部(12)がその回転軸(22)を中心に回転するように、前記少なくとも1つのアクチュエータ(31,32,33)を制御する、
ことを特徴とする、コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記第2の制御ルーチンが、
実際の撮影工程の前に、前記第1のアーム部(11)を前記第2のアーム部(12)の向きに対する所望の角度に駆動するステップ、
を備えている、ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の制御ルーチンが、
前記第2のアーム部(12)をその回転軸を中心に実質的に360度回転させるステップ、
を備えている、ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の制御ルーチンが、
実際の撮影工程の前に、前記第1のアーム部(11)を前記第2のアーム部(12)と実質的に平行になるように駆動するステップ、
を備えている、ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のアーム部(11)が、前記第1のアーム部(11)の回転軸(21)を介して前記第2のアーム部(12)によって支持されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第1のアーム部(11)および前記第2のアーム部(12)の回転軸(21,22)が、実質的に平行である、もしくは、互いの間の距離が一定である、またはその両方である、
ことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記制御システムが制御ルーチンを備えており、前記制御ルーチンが、
前記第1のアーム部(11)および前記第2のアーム部(12)を、プリセットされた撮影開始位置まで、または前記制御システムに事前に入力された撮影開始位置まで移動させるための制御コマンド、
を含んでいる、ことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記放射線源(14)および前記画像情報の受信器(15)が前記第1のアーム部(11)に配置されており、前記放射線源(14)および前記画像情報の受信器(15)が50〜60cmのオーダーの距離だけ互いに隔てられている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記画像情報の受信器(15)が、円形、方形、または二次曲面のエリアセンサであり、前記エリアセンサの直径または辺の長さが10cm〜20cmのオーダーである、
ことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記画像情報の受信器(15)が、受信した前記情報の保存もしくは転送またはその両方を、1秒間に複数回行うようにされている、
ことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御システムが、パルスとして放射線を生成するように前記放射線源(14)を制御するようにされている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
少なくとも前記第2の制御ルーチンが、
前記放射線源の陽極電流を測定し、前記電流の積分値がプリセット値に達した時点で前記パルスがつねに終了するように、前記放射線パルスの持続時間を調整するステップ、
を備えていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記制御システムが、前記画像情報の受信器(15)からの情報の読み取りを、照射が中断された瞬間に行われるように制御するようにされている、
ことを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の装置。
【請求項14】
1つの放射線パルスの持続時間が、
撮影する領域の中で、再構築において使用されるボクセルサイズに対応する距離を前記放射線が進むのにかかり得る最大時間よりも短い、または、撮影中に前記画像情報の受信器(15)がセンサの1ピクセルの距離を移動するのにかかる時間よりも短いようにされている、
ことを特徴とする、請求項11から請求項13のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用に設計されたコンピュータ断層撮影装置、特に、撮影工程時に撮影装置のアーム構造の動作を制御する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用X線撮影は長い歴史を持つ。最も初期の技術は、撮影する対象物を徹照する(transilluminating)ことに基づいていた。徹照法では、照射の方向に重なり合っている、撮影領域の組織構造すべてが、そのまま重なってフィルムに撮影される。これに対して、層撮影、いわゆる断層撮影では、形成される画像において、対象物の所望の層以外の層にぼやけ(blurring)を生じさせることによって、所望の層をよりクリアに撮影することが可能である。ぼやけは、撮影中に(撮影手順に応じて照射中または個々の照射の間に)、撮影手段と対象物の相対位置を制御式に変化させることによって達成される。特に、コンピュータおよびデジタル撮影の進歩に伴い、非常に多くの種類の断層撮影技術および装置が開発されている。
【0003】
歯科の分野においては、一般的に、口腔内撮影および頭部撮影(これらは徹照撮影によって行われるため撮影技術に関する限りは単純である)に加えて、特に、いわゆるパノラマ撮影(一般には、歯列弓全体を含む層が平面上に撮影される)が使用される。従来のフィルムベースのパノラマ撮影では、歯列弓をスリット状ビームで走査し、この場合、実質的に両端部に撮影手段が配置されている回転可能なアーム部が回転する間、アーム部の回転中心が直線的に移動し、アーム部と一緒に移動するフィルムは、放射線源によって形成されるスリット状ビームが当たるようにして、使用する撮影手順の撮影条件を満たす速度で送られる。デジタルパノラマ撮影では、撮影走査中にセンサから画像データを読み取る周波数は、フィルムのこの送り速度に対応する。
【0004】
さらに、コンピュータ(またはコンピュータ化された)断層撮影(CT)(初期には主として病院環境で使用された)が、歯科の分野でも応用され始めている。病院で使用される大型で高価なCT装置は、装置の大きさのみならず特にその価格のため、一般的な歯科医院の環境に導入することができない。
【0005】
撮影技術に関して、現在では何種類かのCT技術が知られている。CT撮影では、撮影する領域に複数の異なる方向から照射し、得られたデータから、必要な2次元または3次元の画像を後から再構築する。原理的には、この種類の技術を使用することで、特に、歯列弓の一部分または必要な場合には歯列弓全体を平面上に広げた2次元画像を再構築することができる。コンピュータ断層撮影の原理およびそのさまざまな用途に関しては、この技術分野の参考文献、例えば非特許文献1を参照されたい。
【0006】
コンピュータ断層撮影の一形態として、いわゆるコーンビームCT(CBCT)があり、コーンビームCTでは、例えばパノラマ撮影および従来のCT撮影で使用されるスリット状ビームとは異なり、撮影する領域のサイズに実質的に等しいビームを使用し、スロットセンサ(slot sensor)の代わりに、ビームのサイズに対応する大きさの検出器を使用する。従来のいくつかのCT撮影技術と比較すると、CBCT技術では、放射線量の大幅な低減および撮影時間の短縮を達成することができる。
【0007】
歯科用としての初期段階のいくつかのCT撮影法では、比較的大型の安定した支持構造部に撮影手段が配置されており、患者は、撮影手段の間にイスに座る。所望の領域を撮影できるように撮影手段を位置決めするとき、患者の位置と撮影手段の相対的な位置は、イスを動かすことによって調整していた。これに対して、特許文献1には、従来の歯科用パノラマ装置に基づく構造が説明されており、この構造では、撮影手段を備えたアーム部の移動メカニズムによって、撮影手段を回転中心に対して回転させることに加えて、回転中心の位置を変更することができる。この装置の寸法、およびこの装置で使用される検出器の寸法は、頭蓋骨の特定部分の領域を再構築するための情報を集めることができるようなサイズであるが、より大きな領域、またはいくつかの(例えば隣接する)領域をこの装置によって再構築する必要がある場合、新たに撮影する対象領域に従って、対象物と撮影手段の相対位置をもう一度調整して撮影を繰り返さなければならない。
【0008】
撮影手段を1回転させることで撮影可能な領域のサイズは、いわゆるオフセット撮影によって大きくすることができる。このような撮影を実施する1つの公知の方法では、撮影する前に、可動の撮影センサを対象領域に対して特定の位置に配置し、すなわち、撮影手段を回転させるとき、各瞬間には撮影する対象の領域の一部のみがビームの照射野に入るが、回転全体が完了したとき、対象領域の部分領域すべてが本質的に少なくとも180度の角度範囲においてカバーされるような位置に、撮影センサを配置する。例えば、特許文献2に記載されている装置のように、撮影手段の回転中心の位置を動かすことによっても同じ結果が得られ、この明細書は、従来技術によるオフセット撮影の原理をより包括的に説明する目的で、本文書に組み込まれている。しかしながら、特許文献2に記載されている装置の1つの問題として、回転中心の位置を動かすための構造が機械的に複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,118,842号明細書
【特許文献2】米国特許第7,486,759号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Computed Tomography: Principles, Design, Artifacts and Recent Advantages, Jian Hsich, SPIE PRESS, 2003, Bellingham, Washington, USA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的および好ましい実施形態は、アーム部を使用する従来の方式、すなわち、放射線源と画像情報の受信器とが互いに隔てて配置されており、アーム部の回転中心とビームの中心軸線の両方が、撮影工程の全体にわたり、撮影する対象の領域の中央をつねに通るようにされている方式、で撮影するときに可能であるよりも大きな領域を、1回の照射工程によって撮影するための新規の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の本質的な特徴は、添付の請求項に記載されている。本発明による歯科用CT装置は、一連のアームと制御システムとを備えており、制御システムは、上述した対称型の撮影モードに加えて、さらなる撮影工程を可能にする。後者の撮影工程では、本装置の少なくとも1本のアーム部を回転させるようにされているアクチュエータを制御することによって、一連のアームのうち撮影手段を支持している第1のアーム部が回転せず、一連のアームのうちの第2のアーム部に対して動かないままである一方で、第2のアーム部を自身の回転軸を中心に回転させる。このような構造では、第1のアーム部の向きと第2のアーム部の向きとが平行ではないとき、先行技術による、アームの回転中心が固定されている従来の撮影よりも、対象物のより大きな領域から情報を集めることができる。
【0013】
従来技術の特定の構造と比較して、本発明では、例えば撮影センサを支持するアームに対して撮影センサを動かす手段を、装置の放射線源および撮影センサを支持するアーム部に配置する必要なしに、より大きな領域を撮影することができる。さらに、センサにビームが非対称的にコリメートされる、もしくは第1の撮影モードから第2の撮影モードに変更するときに撮影デバイスを再較正する、またはその両方に起因する問題を、回避することができる。さらには、撮影手段を支持するアーム部に、アーム部の回転軸の位置を移動させる手段を配置する必要がなく、それにもかかわらず、患者または患者支持手段を動かさずに撮影工程全体を実施することができる。本発明では、歯科のパノラマ撮影と、いくつかの異なるサイズの領域の撮影とを、同じ装置を使用して行うことができる。
【0014】
以下では、本発明と、本発明の好ましい実施形態と、本発明の目的および利点について、添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来技術による撮影モードであって、撮影手段を支持するアーム部が、そのアーム部の回転中心の周りに回転する撮影モードを示している。
図2】本発明による撮影モードであって、撮影時の動作が、撮影手段を支持しているアーム部を支持する別のアーム部の回転運動によって実施される撮影モードを示している。
図3図2による構造の特殊な場合であって、撮影手段を支持しているアーム部の向きが、撮影手段を支持しているアーム部を支持する別のアーム部と平行である状況を示している。
図4】本発明において使用することのできるコンピュータ断層撮影装置の一実施形態の概略的な側面図を示している。
図5a】非対称型の撮影時における、本発明による放射線のパルス化を示している。
図5b】非対称型の撮影時における、本発明による放射線のパルス化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a〜cは、従来技術によるCT撮影モードを示しており、この装置は、撮影手段(放射線源14および画像情報の受信器15)を備えた第1のアーム部11と、このアーム部11を支持している第2のアーム部12とを備えている。第1のアーム部11は、アーム部11,12を連結している第1の回転軸21を中心に、第2のアーム部12に対して回転可能に配置されている。放射線源14および画像情報の受信器15は、第1のアーム部11に、回転軸21の両側に互いに隔てて配置されている。この装置は、制御システム(図面には示していない)と、少なくとも1つのアクチュエータ31(図4を参照)とを含んでおり、アクチュエータ31は、少なくとも第1のアーム部11をその回転軸21を中心に駆動するようにされている。撮影手段14,15を支持する第1のアーム部11を支持しているアーム部12は、支持アーム13を介して支持構造10にさらに支持されている。
【0017】
図1a〜cは、撮影手段14,15を支持しているアーム部11を、一定位置にある回転軸21を中心にアクチュエータ31によって回転させたときの状況を示している。所望の幅および高さを有するセンサ15(画像情報の受信器)と、従来技術によって行われるように、対応するサイズにビームをコリメートすることによって、撮影手段14,15を支持しているアーム部11の下、撮影装置において位置決めされた対象物を、複数の異なる方向から照射し、得られた画像情報の所望のコンピュータ断層撮影画像を、それ自体公知の方法によって再構築することが可能である(なお図を明瞭に、かつ一般性をもたせる目的で、撮影する対象物は、本発明を実際に使用するときに想定される頭蓋骨や歯ではなく、「骨」として描いてある)。
【0018】
図1a〜cによる構造においては、撮影手段14,15を支持する第1のアーム部11を支持しているアーム部12は、第2の回転軸22を介して支持アーム13に配置されている。この構造では、図には示していない撮影モードとして、撮影手段を支持しているアーム部11の回転中心21が撮影中に移動するモードも可能である(例えばパノラマ撮影)。さらには、支持アーム13も自身の回転軸23を中心に回転可能に配置されているならば、撮影手段14,15を支持しているアーム部11を、一連のアーム11,12,13の動作範囲の中で自由に位置決めすることができ、さまざまな撮影構造を実施できる汎用的なアーム構造が提供される。
【0019】
図2a〜cは、図1a〜cと同じアーム構造を示しているが、本発明による撮影モードを実施するようにされている。この構造では、撮影手段14,15を支持している第1のアーム部11は、第2のアーム部12に対して所望の角度に駆動され、撮影の間、第2のアーム部12に対して動かないように維持され、撮影中の撮影手段14,15の実際の動作は、第2のアーム部12をその回転軸22を中心に駆動することによって実施される。この構造においては、図1a〜cの場合とは異なり、ビームは、撮影する対象の領域全体をつねにカバーするのではなく、さらには、放射線源14によって生成される放射線ビームの中心軸線も、撮影する領域の中心をつねに通るのではなく、撮影する領域に対して非対称的に移動し、したがって、撮影する対象の領域全体をカバーするためにはアーム構造を360度完全に回転させなければならない。しかしながらこの非対称型の撮影構造では、360度回転させた後、図1a〜cの対称型の撮影の場合よりも広い領域から、逆投影のための情報が集められる。
【0020】
図2a〜cによる撮影モードを使用して撮影することのできる領域のサイズは、撮影時に第1のアーム部11と第2のアーム部12とが互いに回転しない状態にあるときの互いになす角度に依存する。図3a〜cは、図2a〜cによる構造の特殊な場合であって、撮影時に第1のアーム部11と第2のアーム部12とが平行な向きにある状況を示している。図3a〜cによる構造は、図1a〜cによる構造と比較すると、より大きな領域を撮影することができ、なぜなら、撮影する領域におけるビームの幅が、図3a〜cによる状況の方が大きいためである。この差の程度は第2のアーム部12の長さに依存し、すなわち撮影する領域の中心は、図1a〜cの場合よりも、第2のアーム部12の長さの距離だけ放射線源14から遠くに位置している。
【0021】
図3a〜cによる撮影では、図1a〜cによる撮影とは倍率が異なり、これは第1のアーム部11および第2のアーム部12の長さに依存する。ただし、図3a〜cに示した構造において撮影される領域のサイズおよび倍率が、図1a〜cによる撮影よりも大きいとき、第1のアーム部11をそこから反対側に180度回転させたときのサイズおよび倍率は、当然ながら図3a〜cに示した場合よりも小さくなる。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態(図示していない)は、互いに反対の回転方向になされる2つの動作を備えており、最初の動作は、例えば図2によると、第1のアーム部11と第2のアーム部12との間の一定の角度「α」を維持して180度のみの回転角度を使用し、戻り動作は、アーム部の間の角度「−α」を維持して等しい回転角度だけ同様に行われる。この方式で動作するならば、一連のアームの回転メカニズムを、より単純に実施することができ、なぜなら360度の回転に伴う技術的な問題を考慮する必要がないためである。より一般的には、この撮影モードでは、第1の動作およびその戻り動作の回転角度は、特に180度である必要はなく、この回転角度と角度「α」を対応的に変化させることによって、同じ結果を得ることができる。当然ながら、図2a〜cに示した以外のアーム構造でも、同じ原理を実施することができる。
【0023】
本発明による装置は、図4に概略的に示したように実施することができる。支持構造10は、図4においては垂直部材10として実施されており、支持アーム13と、支持アーム13に連結されている第2のアーム部12と、第1のアーム部11とを支持している。撮影手段14,15を支持している第1のアーム部11は、第2のアーム部12に支持されている回転軸21を中心に回転可能に配置されており、第2のアーム部12は、同様に、支持アーム13に支持されている回転軸22を中心に回転可能に配置されている。図4において、回転軸21,22に関連して第1のアクチュエータ31および第2のアクチュエータ32が配置されており、これらのアクチュエータは、装置の制御システムによる制御下で第1のアーム部11および第2のアーム部12を駆動することができる。本発明によると、制御システムは、少なくとも図1a〜cによる撮影と、その一方で図2a〜cによる撮影を実施するための制御ルーチンを備えている。第1のアーム部11および第2のアーム部12の駆動は、原理的には、1つのみのアクチュエータによる適切な構造によって実施することもできる。支持アーム13も、支持構造10に対して回転可能にすることができ、図4による構造では、第3のアクチュエータ33によって駆動される。ハウジング部10が、図4には示していない垂直の動きを行うようにすることが可能である。さらに一般には、この装置は患者支持手段16を含んでおり、図4による構造では垂直部材10に配置されている。支持アーム13は、例えば天井や壁に取り付けることもでき、その場合、患者支持手段16は、装置の一連のアーム11,12,13に対して、別の固定位置に配置することができる。
【0024】
垂直部材部10を有する図4による装置においては、垂直動作は、例えば患者支持手段16がアーム構造11,12,13の垂直動作に沿って移動するように、または患者支持手段16とアーム構造11,12,13とが垂直方向に互いに独立して自由に動くことができるように、実施することができる。このような構造を使用すると、患者を動かすことなく、撮影する領域を、水平および垂直の両方向に、一連のアーム11,12,13の動作範囲内の所望の位置に配置することができる。
【0025】
本発明による撮影装置は、センサ15によって検出される情報を処理する手段をCT装置自体が備える必要がないように、個別のコンピュータに接続することができる。装置において使用されるセンサ15は、例えばCMOSセンサ、あるいはいわゆる直接検出式のセンサとすることができる。センサによって検出される情報から、それ自体公知の方法(例えばいわゆるフィルタ補正逆投影アルゴリズムまたは反復逆投影アルゴリズムなど)によって画像を再構築することが可能である。
【0026】
本発明による装置においては、回転軸21,22の所望の座標と、アーム部11,12,13の向きとを、ユーザインタフェースを介して装置の制御システムに入力できるようにすることができ、あるいは、例えばそれ自体公知の位置決め光、または所望の座標を制御システムに自動的に送信することのできる何らかの対応する構造を、装置に設けることができる。さらに、制御システムは、2種類以上の領域をカバーする目的で、撮影手段14,15の1つまたは複数のプリセット位置と制御ルーチンとを含んでいることができる。このような場合、制御ルーチンは、プリセットされた撮影開始位置、または制御システムに入力された撮影開始位置まで、第1のアーム部11および第2のアーム部12を駆動する制御コマンドを備えていることができる。
【0027】
本発明によるCT装置の撮影手段は、一般にCBCT撮影において使用されるエリアセンサ(いわゆるフレームセンサ)を含んでいる。センサの有効面は、円形、方形、または二次曲面とすることができ、その直径または辺の長さは、10cm〜20cmのオーダーである。放射線源によって生成されるビームを、このようなセンサの寸法に対応してコリメートし、例えば50〜60cmのオーダーのSID(線源−画像間距離)を使用することによって、本発明による装置は、歯列弓におけるいくつかのサイズの領域を撮影することができる。
【0028】
図2a〜cによる構造では、撮影する対象の領域の周りに360度回転させなければならないのに対して、図1a〜cおよび図3a〜cに従って動作させるときには、180度の動作でも逆投影のための十分な情報が得られる。回転角度が大きいほど撮影時間が長くなるため、特に、放射線量が増大する。このため、装置の制御システムは、放射線源14のパルス動作を可能にする一方で、撮影センサ15によって検出された情報の保存もしくは定期的な転送またはその両方を可能にする制御ルーチンを備えていることが好ましい。センサの情報は、毎秒数回読み取られる(例えば10回以上/秒)ようにされていることが好ましい。センサから情報が読み出されるときにつねに照射が中断されるように、照射の周期化とセンサの動作とを同期させることが好ましい。周波数(frequency rate)は、放射線パルスの持続時間と、撮影する領域中をビームが進む最大距離(再構築時に使用されるボクセルサイズに対応する)とが少なくとも対応するように設定されることが好ましい。言い換えれば、放射線パルスの持続時間は、撮影する領域の中で、再構築時に使用されるボクセルサイズに対応する距離をビームが進むのにかかり得る最大時間よりも短いように設定される。さらに、放射線パルスの持続時間は、撮影中に撮影センサがその1ピクセルの距離を移動するのに要する時間よりも短いように、あるいは相当に短いように設定ことができる。撮影センサのピクセルサイズは、200μmのオーダーとすることができ、今後の技術の進歩によってはさらに小さくなり得る。撮影センサは、機能に関してコンピュータに接続されており、コンピュータは、センサによって検出された情報から2次元画像もしくは3次元画像またはその両方を再構築するための手段を備えている。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によると、通常に使用される一定周期のパルス化の代わりに、パルスの開始周波数(starting frequency)は一定に維持するが、各パルスの持続時間がその陽極電流に基づいて決定されるように、放射線源のパルス化を調整する。このような構造とする理由は、放射線源によって生成されるスペクトルが一般には時間の関数として完全には一定ではないという技術的な問題があるためである。したがって、この構造では、放射線源の陽極電流を測定するが、従来技術による構造(そのような測定に基づいて例えば放射線源の加速電圧を調整する)とは異なり、パルスの持続時間を制御する。各パルスによって発生する放射線量(mA×s)が一定に維持されるように、すなわち、電流の積分値がプリセットレベルに達する瞬間にパルスが終了するように、制御が行われる。このような制御は、例えば上記の電圧制御よりも迅速であり、撮影においては、線量に間接的に影響する電圧よりも、実際の線量を一定に維持することがより直接的である。本発明によるオフセット撮影では、撮影手段が360度完全に回転する(これにより時間が要求される)ために撮影工程が極めて長く、したがって放射線量が増大するため、このように放射線源が正確に調整されることは特に有利である。
【0030】
図5aおよび図5bは、上述した制御を示している。図5aは、理想的な状況におけるパルス陽極電流を時間の関数として示しており、放射線源は、大きさおよび持続時間が一定であるパルスを一定周波数で生成する。図5bは、本発明による実際のパルス化を示しており、パルスは依然として一定の周波数で生成されるが、陽極電流の測定において設定値からの偏差が検出されたとき、積分値(図5bでは面積によって示される)が一定のままであるように、パルスの持続時間をより長く、またはより短く調整することによって補正される。
【0031】
図5bの最後のパルスが示すように、陽極電流は1つのパルスの間でも必ずしも一定ではなく、本発明のこの実施形態によると、1つのパルスの間に生じる変化も、各パルスにおける陽極電流の変化の状況に従って管電圧を遮断することによって補正することができる。
【0032】
当業者には明らかであるように、本発明の基本的な発想は、特に技術の進歩に伴って、数多くの異なる方法で実施することができ、本発明の複数の異なる実施形態は、上述した例に限定されず、添付の請求項によって定義される範囲内でさまざまなバリエーションを創案することができる。例として、本明細書において使用されている用語「回転軸」は、狭義の物理的な軸に限定されず、対応する機能を提供する何らかの仮想的な軸線、あるいは物理的な旋回軸、ベアリング、または他の何らかの構造も含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b